説明

カバー固定構造

【課題】 開口部を有する部材にカバーを固定する場合に、カバーの着脱作業性を良好にしながら、衝撃力が作用した際のカバーの脱落を抑制する。
【解決手段】 開口部11の周縁部に座面15を形成する。座面15には、係合孔17aと切欠部15aとを形成する。カバー20の裏側における係合孔17aに対応する部位には、係合部21bを有する第1突状部を設ける。カバー20の裏側における切欠部15aに対応する部位には、第2突状部23を設ける。第1突状部の突出方向を第2突状部23との突出方向と異なる方向にする。カバー20の第1突状部を係合孔17aに挿入して係合部21bを係合孔17aに係合させるとともに、第2突状部23を切欠部15aに嵌入して、カバー20を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を有する部材に、該開口部を閉塞するカバーを固定するカバー固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のカバー固定構造として、例えば、ランプ取付用開口部を有する自動車のドアトリムに、照光用レンズとなるカバーを固定して上記開口部を閉塞するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。上記ドアトリムの開口部の周縁部には、カバーの周縁部が重なる座面が形成されている。一方、上記カバーの裏側には、4つの係合片が同じ方向に突出するように設けられている。カバーの係合片を開口部の周縁部に係合させることで、カバーが座面に重なった状態でドアトリムに固定されるようになっている。
【特許文献1】特開2002−347515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1のようなカバーには、乗員の足や荷物等が当たることがあり、様々な方向の力が作用する場合が考えられる。このような場合に、特許文献1のカバーの係合片は、4つとも同じ方向に突出しているため、例えば、係合片の突出方向と反対側に向かうような衝撃力が作用した際には、その力が小さくても係合片が簡単に抜けてしまい、カバーが脱落してしまう虞れがある。
【0004】
このことに対し、カバーの4つの係合片の係合力を強くすることが考えられるが、こうした場合には、カバーの固定時や、修理のための取り外し時に大きな力を要することになって、作業性が悪化してしまう。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、カバーの着脱作業性を良好にしながら、カバーに様々な方向から力が作用した場合に該カバーの脱落を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、開口部を有する部材に、該開口部を閉塞するカバーを固定するカバー固定構造において、上記開口部の周縁部には、上記カバーの周縁部が重なる座面が形成され、該座面には、係合孔と、上記開口部に連なる切欠部とが互いに間隔をあけて形成され、上記カバーの裏側における上記係合孔に対応する部位には、該係合孔に係合する係合部を有する第1突状部が、該係合孔に挿入される第1の方向に突出するように設けられ、上記カバーの裏側における上記切欠部に対応する部位には、該切欠部に嵌入する第2突状部が上記第1の方向とは異なる第2の方向に突出するように設けられ、上記カバーの第1突状部が上記係合孔に挿入されて上記係合部が該係合孔の周縁部に係合するとともに、上記第2突状部が上記切欠部に嵌入して上記カバーが上記部材に固定される構成とする。
【0007】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、カバーの形状が、3次元形状である構成とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、開口部を有する部材にカバーを固定した状態で、カバーの第1突状部が座面の係合孔に挿入されて係合部が係合孔の周縁部に係合するとともに、第2突状部が切欠部に嵌入する。このとき、第2突状部の突出方向が第1突状部の突出方向と異なっており、第2突状部は第1突状部の突出方向とは異なる方向から切欠部に嵌入している。これにより、第1突状部の突出方向と反対側に向かうような衝撃力が作用した場合に、第2突状部が切欠部から外れ難く、また、第2突状部の突出方向と反対側に向かうような衝撃力が作用した場合に、第1突状部が係合孔から抜け難くなる。よって、第1突状部の係合力や第2突状部の嵌入力を小さめに設定してカバーの着脱作業性を良好にしながら、カバーの脱落を抑制できる。
【0009】
請求項2の発明によれば、カバーの形状が3次元形状で立体的な場合であっても、カバーの着脱作業性を良好にしながら、脱落を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るカバー固定構造Aが適用された車両用内装材を示すものである。この車両用内装材は、乗用自動車のインストルメントパネル(図示せず)の左側下方に配設されるものであり、車両左側のサイドシルB前部と前側ピラーC下部との結合部分を覆うように形成されたフロントサイドトリム10と、フロントサイドトリム10に形成された開口部11(図2に示す)を覆うためのカバー20とを備えている。これらフロントサイドトリム10及びカバー20は、樹脂材を射出成形してなるものである。
【0012】
フロントサイドトリム10は、略車幅方向に延びる第1板部12と、第1板部12の車幅方向内縁部に連なって略下方に延びる第2板部13とで構成されている。第1板部12は、インストルメントパネルの左側下端部近傍から下方へ向けてサイドシルB前部の上面に達するまで湾曲して延びており、その下端部はサイドシルBの上面に沿って車両後方へ延びている。この第1板部12の車幅方向の寸法は、下端部へ向かって次第に短くなるように設定されている。
【0013】
第2板部13の上部には、車体に固定される固定部14が設けられている。第2板部13の下側は、上記第1板部12の下側の形状に対応するように、下端部に近づくに従って車幅方向外側に位置するように湾曲している。このように第1板部12及び第2板部13が湾曲していることから、フロントサイドトリム10の形状は、立体的な3次元形状となっている。
【0014】
図2に示すように、上記開口部11は、フロントサイドトリム10の中央部近傍に、第1板部12の湾曲部分から第2板部13の湾曲部分に亘るように形成されている。この開口部11の内方には、図示しないが、車体に固定されたヒューズボックスが設けられている。
【0015】
上記カバー20は、図1に示すように、フロントサイドトリム10の開口部11を閉塞した状態で該フロントサイドトリム10に固定されるようになっている。このカバー20により、ヒューズボックスが車室内に露出しないようになっている。また、ヒューズボックスのヒューズを交換することがあるため、カバー20は、フロントサイドトリム10に対し着脱可能となっている。
【0016】
図2に示すように、フロントサイドトリム10の開口部11の周縁部は、車室内側から見たときに大略矩形状をなすように形成されており、上辺部11aと、下辺部11bと、上辺部11a及び下辺部11bをつなぐように延びる前側辺部11c及び後側辺部11dとで構成されている。前側辺部11cは第2板部13に形成されており、後側辺部11dは第1板部12に形成されている。上辺部11a、下辺部11b及び後側辺部11dは、フロントサイドトリム10の3次元形状に対応して湾曲している。一方、前側辺部11cは、上下方向に略直線状に延びている。
【0017】
フロントサイドトリム10の開口部11の周縁部には、カバー20の周縁部が重なる座面15が設けられている。この座面15は、フロントサイドトリム10の裏面側へ窪むように形成されている。この窪みの深さは、カバー20の厚みに対応している。フロントサイドトリム10の第2板部13には、開口部11の前側近傍に、カバー20を取り外す際に指を挿入するための凹部16が形成されている。この凹部16は、座面15に連続している。
【0018】
座面15には、前側辺部11cから開口部11の内方へ向けて延出する上側延出部17及び下側延出部18が形成されている。上側延出部17は上辺部11aにも連なっており、下側延出部18は下辺部11bにも連なっている。上側延出部17及び下側延出部18には、上側係合孔17a及び下側係合孔18aが厚み方向に貫通形成されている。これら上側係合孔17a及び下側係合孔18aは、上下方向に長い矩形状をなしている。
【0019】
座面15における上辺部11a及び下辺部11bには、上側切欠部15a及び下側切欠部15bが開口部11に連なるように形成されている。上側切欠部15a及び下側切欠部15bは、上側係合孔17a及び下側係合孔18aから離れて後側辺部11d寄りに位置付けられ、車幅方向に長い形状とされている。また、座面15における後側辺部11dには、上下方向に離れた2つの後側切欠部15c、15dが開口部11と連なるように形成されている。上側に位置する後側切欠部15cは、上辺部11a近傍に位置付けられ、下側に位置する後側切欠部15dは、下辺部11b近傍に位置付けられている。これら後側切欠部15c、15dは、後側辺部11dの延びる方向に長い形状とされている。
【0020】
一方、上記カバー20の形状は、図3にも示すように、開口部11の形状に対応した大略矩形状をなすとともに、フロントサイドトリム10の開口部11が形成された部位の形状に対応するように3次元形状となっている。
【0021】
カバー20の裏面における上側係合孔17a及び下側係合孔18aに対応する部位には、上側第1突状部21及び下側第1突状部22がそれぞれ形成されている。上側第1突状部21及び下側第1突状部22の突出方向は、カバー20の周縁部を座面15に重ねた状態(図7に示す状態)で、車室外方となっている。これら上側第1突状部21及び下側第1突状部22の突出方向(第1の方向)を、図4及び図5に矢印Yで示す。上側第1突状部21は、カバー20の裏面に一体成形された門型部21aと、門型部21aの突出方向先端部から門型部21aの内方をその基端側へ延びる板状の係合部21bとを備えている。係合部21bの基端側は、門型部21aの突出方向先端部に一体成形され、係合部21bの先端側は、門型部21aの内周部及びカバー20の裏面から離れている。従って、係合部21bは、その基端側を中心にして先端側が門型部21aの内方をその車両前後方向に揺動可能となっている。また、係合部21bの先端側には、カバー20の車前側へ向けて突出する突出部21cが形成されている。下側第1突状部22も、上側第1突状部21と同様に、門型部22a、係合部22b及び突出部22cを有している。
【0022】
カバー20の裏面における上側切欠部15a及び下側切欠部15bに対応する部位には、上側第2突状部23及び下側第2突状部24がそれぞれ形成されている。上側第2突状部23及び下側第2突状部24の突出方向(第2の方向)は、図5に矢印Zで示すように、第1突状部21、22の突出方向とは異なっており、具体的には、カバー20の周縁部を座面15に重ねた状態(図7に示す状態)で、車両前方となっている。第2突状部23、24は、第1突状部21、22の突出高さよりも低いリブ形状とされ、切欠部15a、15bに対応するように車幅方向に長く延びている。図5に示すように、上記上側第1突状部21及び下側第1突状部22の突出方向Yと、上側第2突状部23及び下側第2突状部24の突出方向Zとは、交差しており、この交差角度αは、例えば、80゜以上100゜以下に設定するのが好ましい。
【0023】
カバー20の裏面における後側切欠部15c、15dに対応する部位には、2つの後側突状部25、26が形成されている。後側突状部25、26は、上側第2突状部23と下側第2突状部24との間に位置している。後側突状部25、26は、カバー20の車両後縁部から外方へ向けて突出する板状をなしている。後側突状部25、26の基端部には、座面15の周縁部が嵌合する嵌合凹部25a、26aが形成されている。また、後側突状部25、26には、複数のリブ25b、26bが一体成形されている。
【0024】
次に、上記のように構成されたカバー20をフロントサイドトリム10に固定する要領について説明する。まず、図4に示すように、カバー20を、その周縁部がフロントサイドトリム10の座面15に対向するように配置した後、矢印Yの方向に移動させ、後側突状部25、26を後側切欠部15c、15dの内方に入れた後、上側第1突状部21及び下側第1突状部22を上側係合孔17a及び下側係合孔18aに挿入していく。
【0025】
図5に示すように、上側第1突状部21及び下側第1突条部22を上側係合孔17a及び下側係合孔18aに深く挿入していくと、係合部21b、22bの突出部21c、22cが係合孔17a、18aの周縁部にそれぞれ摺接する。これにより、係合部21b、22bは、その基端側を中心にして揺動するように弾性変形し、図6に示すように、係合孔17a、18aの周縁部を乗り越える。その後、係合部21b、22bの形状が復元して、図7に示すように、係合孔17a、18aの周縁部に係合した状態となる。また、後側突状部25、26が後側切欠部15c、15dに深く挿入されていき、座面15の周縁部が後側突状部25、26の嵌合凹部25a、26aに入り込んで嵌合する。また、第1突状部21、22の挿入動作と、後側突状部25、26の挿入動作に並行して、上側第2突状部23及び下側第2突状部24が、上側切欠部15a及び下側切欠部15bにそれぞれ嵌入する。このとき、図7に示すように、第2突状部23、24は、上側切欠部15a及び下側切欠部15bの車幅方向内縁部に接する一方、外縁部からは離れている。上記カバー20の取付時には、カバー20自体が若干、弾性変形することで、第1突状部21、22の挿入や、第2突状部23、24の嵌入が容易に行われるようになっている。
【0026】
フロントサイドトリム10にカバー20を固定した状態では、第2突状部23、24の突出方向Zが第1突状部21、22の突出方向Yと異なっており、第2突状部23、24は第1突状部21、22の突出方向Yとは異なる方向から切欠部15a、15bに嵌入している。これにより、第1突状部21、22の突出方向Yと反対側に向かうような衝撃力が作用した場合に、第2突状部23、24が切欠部15c、15dから外れ難く、また、第2突状部23、24の突出方向Zと反対側に向かうような衝撃力が作用した場合に、第1突状部21、22が係合孔17a、18aから抜け難くなる。よって、第1突状部21、22の係合力や第2突状部23、24の嵌入力を小さめに設定しても、カバー20の脱落が抑制される。
【0027】
次に、上記フロントサイドトリム10に固定されたカバー20を取り外す要領について説明する。まず、フロントサイドトリム10の凹部16に指を差し込んでカバー20の車両前側を車室内方へ引っ張る。これにより、第1突状部21、22の係合部21b、22bが弾性変形して、係合孔17a、18aから抜けるとともに、第2突状部23、24が切欠部15a、15bから離脱する。カバー20の前側をさらに引っ張っていくと、後側突状部25、26の嵌合凹部25a、26a近傍を中心として、カバー20全体が車両後側へ回動し、嵌合凹部25a、26aから座面15の周縁部が離脱する。これにより、カバー20がフロントサイドトリム10から取り外される。
【0028】
以上説明したように、この実施形態に係るカバー固定構造Aによれば、カバー20の第2突状部23、24を第1突状部21、22とは異なる方向から切欠部15a、15bに嵌入するようにしている。これにより、第1突状部21、22の係合力や第2突状部23、24の嵌入力を小さめに設定しても、カバー20の脱落を抑制できる。よって、カバー20を固定する際及び取り外す際の力を小さくでき、着脱作業性を良好にできる。
【0029】
尚、この実施形態では、本発明を内装材に適用した場合について説明したが、本発明は、内装材以外にも、外装材にも適用することが可能である。また、本発明は、車両用内装材や外装材以外のカバーを固定する場合にも適用することができる。
【0030】
また、第1突状部21、22及び第2突状部23、24の数や突出方向は、上記したものに限られず、任意に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明したように、本発明に係るカバー固定構造は、例えば、自動車の内装部材に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係るカバーが固定されたフロントサイドトリムを車室内側から見た斜視図である。
【図2】カバーを取り外した状態の図1相当図である。
【図3】カバーを裏側から見た斜視図である。
【図4】図2のX−X線における断面図であり、カバーを座面に対向するように配置した状態を示す。
【図5】第1突状部及び後側突状部を係合孔及び後側切欠部に挿入する途中の状態を示す図4相当図である。
【図6】第1突状部及び後側突状部をより深く挿入した状態を示す図4相当図である。
【図7】カバーがフロントサイドトリムに完全に固定された状態を示す図4相当図である。
【符号の説明】
【0033】
10 フロントサイドトリム
11 開口部
15 座面
15a 上側切欠部
15b 下側切欠部
17a 上側係合孔
18a 下側係合孔
20 カバー
21 上側第1突状部
21b 係合部
22 下側第1突状部
22b 係合部
23 上側第2突状部
24 下側第2突状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する部材に、該開口部を閉塞するカバーを固定するカバー固定構造において、
上記開口部の周縁部には、上記カバーの周縁部が重なる座面が形成され、該座面には、係合孔と、上記開口部に連なる切欠部とが互いに間隔をあけて形成され、
上記カバーの裏側における上記係合孔に対応する部位には、該係合孔に係合する係合部を有する第1突状部が、該係合孔に挿入される第1の方向に突出するように設けられ、
上記カバーの裏側における上記切欠部に対応する部位には、該切欠部に嵌入する第2突状部が上記第1の方向とは異なる第2の方向に突出するように設けられ、
上記カバーの第1突状部が上記係合孔に挿入されて上記係合部が該係合孔の周縁部に係合するとともに、上記第2突状部が上記切欠部に嵌入して上記カバーが上記部材に固定されることを特徴とするカバー固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載のカバー固定構造において、
カバーの形状が、3次元形状であることを特徴とするカバー固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−230396(P2008−230396A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72726(P2007−72726)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】