説明

カバー部材および建具

【課題】各種の建具に対応して取付可能で結露の発生を抑制することができるカバー部材および建具を提供すること。
【解決手段】結露水等をカバー部材10の傾斜面部14によって屋外側に流して下枠溝部55へ排水するとともに、立上面部18によって屋内側への流入を防止することができる。さらに、カバー部材10の第1当接部16および第2当接部17が固定片部57の上面に当接されるとともに、先端カバー部15が下枠5の見付け片部53の上端を覆って設けられることで、傾斜面部14を屋外側に流れた結露水等が下枠5とカバー部材10との間に浸入することを防止することができる。さらに、ベース部材10Bの有無等を適宜に選択することで、固定片部57の形状や寸法が異なる各種の下枠5に対してカバー部材10を取付可能とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー部材および建具に係り、詳しくは、建物開口部に設けられる窓枠のうちの下枠の一部を覆う樹脂製のカバー部材、このカバー部材を備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミ形材等の金属製枠材を有した窓枠において、屋内空間に露出する枠材表面の結露を防止するための防露材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の防露材は、合成樹脂等からなる帯状体と、この帯状体を枠材に接着する接着剤層とで構成され、枠材のうち建物躯体や内装材等に固定される屋内側固定片(アングル)の見込み面(下枠の場合、上面)および屋内側端面を覆って取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭57−140589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の防露材のようなカバー部材は、屋内側固定片の見込み方向幅寸法や形状に合わせて形成されているため、幅寸法や形状が異なる屋内側固定片に対しては取り付けることが難しい。すなわち、新設の建具であれば屋内側固定片ごとにカバー部材を準備しておくことも可能であるものの、既設の建具では、様々な寸法や形状の屋内側固定片が存在することから、各種の建具に対応したカバー部材を準備するとなると、部品点数が膨大になり製造コストが増加することとなる。
【0005】
本発明の目的は、各種の建具に対応して取付可能で結露の発生を抑制することができるカバー部材および建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカバー部材は、建物開口部に設けられる下枠の一部を覆う樹脂製のカバー部材であって、前記下枠の屋内側にて内装材に固定される下枠固定片の上面を覆うカバー部と、このカバー部の屋内側に連続するとともに前記内装材に固定される固定部とを備え、前記カバー部には、前記下枠固定片の上面に当接する当接部が形成され、前記固定部には、前記下枠固定片の上面または前記内装材の上面に載置されるか、あるいは別体のベース部材を介して前記内装材の上面に載置される載置部が形成され、この載置部は、前記当接部よりも屋内側にて上方に凹んだ載置凹部を有して形成されていることを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、固定部に設けた載置部を下枠固定片や内装材の上面に載置するか、あるいはベース部材を介して内装材の上面に載置することで、下枠固定片の形状や寸法が異なる各種の下枠に対してカバー部材を取付可能とすることができる。従って、新設の窓に限らず、既設の窓に対して後付けでカバー部材を取り付ける場合であっても、ベース部材を使用するか使用しないかを選択したり、載置部の載置位置を選択したりすることで、単一のカバー部材における取付形態の選択幅を拡げることができる。
【0008】
この際、本発明のカバー部材では、前記載置部は、下方に突出するとともに前記ベース部材と係合可能な載置凸部を有して形成され、前記載置凹部は、前記載置凸部の屋内側および屋外側に隣り合って一対で設けられ、前記載置凸部は、その底面が前記当接部と略同一高さ位置に設けられ、前記ベース部材を用いない場合には、当該載置凸部の底面が前記下枠固定片の上面または前記内装材の上面に載置可能に構成され、前記載置凹部は、前記ベース部材を前記載置凸部に係合させて用いる場合には、前記載置凸部および載置凹部の少なくとも一方の底面が当該ベース部材を介して前記内装材の上面に載置可能に構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、載置凸部の底面を当接部と略同一高さ位置に設けておき、この載置凸部を下枠固定片や内装材の上面に載置するか、あるいは載置凸部に係合させたベース部材を介して内装材の上面に載置することで、カバー部材の固定状態を確保することができる。
【0009】
また、本発明のカバー部材では、前記固定部には、前記載置部よりも屋内側にて下方に突出する屋内カバー部が形成され、この屋内カバー部は、前記ベース部材を用いない場合には、前記下枠固定片の屋内側端面または前記内装材の上面に当接可能に構成され、前記ベース部材を用いる場合には、当該ベース部材の上面または屋内側端面に当接可能に構成され、前記一対の載置凹部のうち、屋内側の載置凹部は、弾性変形した前記屋内カバー部を受け入れ可能に構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、屋内カバー部を下枠固定片の屋内側端面や内装材の上面に当接させるか、あるいはベース部材の上面または屋内側端面に当接させることで、各種の取付形態において、屋内カバー部と下枠固定片や内装材、ベース部材との隙間が形成されないようにでき、カバー部材の屋内側における結露水の浸入を確実に防止することができる。また、水蒸気量の高い室内空気が下枠固定片に直接触れることを防止することができ、下枠固定片での結露発生を防止することができる。
【0010】
さらに、本発明のカバー部材では、前記一対の載置凹部は、前記下枠固定片の屋内側端縁から上方に立ち上がる下枠立上片を受け入れ可能に構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、下枠固定片に下枠立上片が形成された下枠にカバー部材を取り付ける場合であっても、下枠立上片を載置凹部で受け入れることで、下枠立上片に対応した加工をカバー部材に施したり別形態のカバー部材を用意したりする必要がなく、下枠立上片を有さない下枠と同一形態のカバー部材を用いることができる。
【0011】
また、本発明のカバー部材は、建物開口部に設けられる下枠の一部を覆う樹脂製のカバー部材であって、前記下枠の屋内側にて内装材に固定される下枠固定片の上面を覆うカバー部と、このカバー部の屋内側に連続するとともに前記内装材に固定される固定部とを備え、前記カバー部には、前記下枠固定片の上面に当接する当接部と、当該カバー部の上面を構成するとともに屋外側に下がり勾配を有する傾斜面部と、この傾斜面部の屋外側に連続するとともに前記下枠固定片から立ち下がる下枠立下片の上端を覆う先端カバー部とが形成され、前記固定部には、前記傾斜面部の屋内側端部に連続して当該傾斜面部から立ち上がる立上面部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
以上の本発明によれば、カバー部材がカバー部と固定部とを備え、カバー部に屋外側に下がり勾配を有する傾斜面部が形成され、固定部に傾斜面部から立ち上がる立上面部が形成されているので、カバー部に落下した結露水等を傾斜面部によって屋外側に流して排水するとともに、立上面部によって屋内側への流入を防止することができる。また、傾斜面部の屋外側に連続して先端カバー部を形成し、下枠固定片から立ち下がる下枠立下片の上端を先端カバー部で覆うことで、屋外側に流れた結露水等が下枠とカバー部材との間に浸入することを防止しつつ、下枠立下片よりも屋外側の下枠底面等へ確実に排水することができる。
【0013】
この際、本発明のカバー部材では、前記先端カバー部は、前記傾斜面部よりも大きな下がり勾配を有するとともに弾性変形可能な軟質樹脂から形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、先端カバー部を下枠立下片の上端に確実に当接させて隙間ができないようにでき、結露水の浸入を防止することができる。
【0014】
また、本発明のカバー部材では、前記カバー部には、前記下枠固定片の上面に対向しかつ上方に凹んで形成されるとともに、当該カバー部の弾性変形によって平坦状に変形して前記下枠固定片の上面に密接可能な凹状底面部が設けられ、この凹状底面部の屋内側部分および屋外側部分によって前記当接部が構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、カバー部に凹状底面部を形成し、この凹状底面部を平坦状に変形させつつ下枠固定片の上面に当接させることで、凹状底面部の屋内側および屋外側の当接部と下枠固定片の上面とを確実に密接させることができる。従って、万一、先端カバー部の位置から下枠との間に水が浸入した場合でも、さらに屋内側への浸入を防止することができる。
【0015】
この際、本発明のカバー部材では、前記凹状底面部の屋外側の当接部は、下向き凸な断面を有して軟質樹脂から形成される弾性凸部で構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、凹状底面部の屋外側の当接部を軟質樹脂からなる弾性凸部とすることで、この弾性凸部と下枠固定片の上面との密接性を高めることができ、カバー部材と下枠との間への水の浸入をさらに確実に防止することができる。
【0016】
一方、本発明の建具は、建物開口部に設けられるとともに下枠を有する窓枠と、前記下枠の屋内側にて内装材に固定される下枠固定片の上面を覆う前記いずれかのカバー部材とを備えたことを特徴とする。
【0017】
ここで、本発明の建具としては、窓枠に支持される適宜な面材(障子)を備え、面材としては、引違い形式や片引き形式、開き形式など各種の開閉形式で支持されたものでもよいし、開閉不能な嵌め殺し形式で支持されたものでもよい。
このような本発明の建具によれば、前述したカバー部材と同様の効果を奏することができ、すなわち、カバー部材で覆った下枠固定片における結露が抑制できるとともに、縦枠や面材等からカバー部材に落下した結露水を屋外側に排水して、カバー部材と下枠との間への水の浸入や屋内側の内装材位置への水の浸入を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建具の一部を示す縦断面図である。
【図2】前記建具の下枠部分を拡大して示す縦断面図である。
【図3】前記下枠に設けられるカバー部材を示す断面図である。
【図4】前記カバー部材の取付形態例を示す断面図である。
【図5】前記カバー部材の取付形態例を示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る建具の下枠部分を示す縦断面図である。
【図7】前記下枠に設けられるカバー部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0020】
〔第1実施形態〕
図1において、本実施形態に係る建具としての引違い窓1は、建物開口部に設置される窓枠2と、この窓枠2に開閉自在に支持される室内外一対の障子3,4とを備え、窓枠2は、図示しない建物躯体に固定されるとともに、開口部の屋内部分を構成する内装材に固定されている。窓枠2は、それぞれアルミ形材製の上枠(不図示)、下枠5および左右の縦枠6を四周枠組みして構成されている。下枠5は、障子3,4を案内する内外のレール5A,5Bを有する下枠本体51と、この下枠本体51の屋内側に固定されるとともに内装材としての額縁(窓台)7に固定されるアングル材52とを備えて構成されている。下枠本体51は、その屋内側端部にて上下に延びる見付け片部(下枠立下片)53と、この見付け片部53と屋内側のレール5Aとを連結する下枠底面部54とを有し、これらの見付け片部53、レール5Aおよび下枠底面部54によって上方に開口した下枠溝部55が形成されている。この下枠溝部55には、その内部に入った結露水等を屋外側に排水するための図示しない排水口が形成されている。
【0021】
アングル材52は、見付け片部53の屋内側にビス止め固定される鉛直片部56と、この鉛直片部56の上端から屋内側に延びて額縁7に固定される固定片部(下枠固定片)57とを有して断面略L字形に形成されている。固定片部57には、下方に突出して額縁7の上面に当接する2本の突条片58と、屋内側端縁の突条片58と連続して当該固定片部57よりも上方に突出する立上片(下枠立上片)59とが形成されている。このようなアングル材52は、2本の突条片58の中間にて固定片部57を貫通するビスによって額縁7に固定されている。また、アングル材52の固定片部57は、樹脂製のカバー部材10で覆われ、屋内空間に露出しないようになっており、冬期などにおけるアングル材52表面の結露発生が抑制できるようになっている。
【0022】
カバー部材10は、図2、図3にも示すように、カバー部材本体10Aとベース部材10Bと固定ビス10Cとを備えて構成され、下枠5の長手方向(紙面奥行き方向)全長に渡って取り付けられている。カバー部材10の長手方向両端部には、図示しないシール材が設けられ、シール材を介して縦枠6のアングル部6A(図1参照)に密接されている。カバー部材本体10Aは、半硬質(硬度90°±5°)樹脂と軟質(硬度60°±5°)樹脂との押出二色成形によって形成され、ベース部材10Bは、硬質(硬度100°±5°)樹脂から押出成形されている。ここで、カバー部材10を形成する樹脂材料としては、通常の熱可塑性樹脂が広く利用でき、成形性や断熱性から塩化ビニルが好適である。
【0023】
カバー部材本体10Aは、アングル材52の固定片部57上面を覆うカバー部11と、このカバー部11の屋内側に連続するとともにベース部材10Bおよび固定ビス10Cを介して額縁7に固定される固定部12とを備えて形成されている。カバー部11は、固定片部57上面と対向するとともに上方に凹んだ曲面状に形成される凹状底面部13と、凹状底面部13の反対側(上面側)にて屋外側に下がり勾配を有する傾斜面部14と、この傾斜面部14の屋外側に連続するとともに傾斜面部14よりも大きな下がり勾配を有する先端カバー部15とを有して形成されている。凹状底面部13の屋内側および屋外側には、それぞれ固定片部57の上面に当接可能な当接部としての第1当接部16および第2当接部17が形成されている。このカバー部11のうち、先端カバー部15と第2当接部17とが軟質樹脂から形成され、他の部分が半硬質樹脂から形成されている。
【0024】
そして、カバー部11は、図2、図3に示すように、固定片部57に押圧された凹状底面部13が平坦状(フラット)になるように弾性変形し、これによって第1当接部16が固定片部57に当接されるとともに、下向き凸な断面を有した弾性凸部としての第2当接部17が押しつぶされつつ固定片部57に密接されるように構成されている。また、先端カバー部15は、下向きに湾曲した曲面状に形成され、取付状態において、下枠5の見付け片部53に当接して弾性変形し、この見付け片部53の上端を覆うとともに、先端が下枠溝部55側に若干突出して設けられるようになっている。
【0025】
カバー部材本体10Aの固定部12は、傾斜面部14の屋内側端部に連続して立ち上がる立上面部18と、この立上面部18から屋内側に延びる上面部19と、この上面部19の屋内側端縁から立ち下がる側面部20と、この側面部20の下端縁に連続して下方に突出する屋内カバー部21と、当該固定部12の底面側にてベース部材10Bを介して額縁7の上面に載置される載置部22とが形成されている。上面部19には、当該カバー部材本体10Aの長手方向に連続して固定ビス10Cのビス頭を収納可能な溝部23が形成されている。この固定部12のうち、屋内カバー部21が軟質樹脂から形成され、他の部分が半硬質樹脂から形成されている。この屋内カバー部21は、側面部20側に連続して断面略三角形状の基端部21Aと、この基端部21Aに薄肉部を介して連結された先端変形部21Bとを有し、取付状態において、先端変形部21Bが屋外側に折れ曲がるように弾性変形するとともに、ベース部材10Bの上面に当接するように構成されている。
【0026】
また、固定部12の載置部22は、下方に突出するとともにベース部材10Bと係合可能な載置凸部24と、この載置凸部24の屋内側に隣り合う第1載置凹部25および屋外側に隣り合う第2載置凹部26とを有して形成されている。載置凸部24は、第1当接部16と略同一高さ位置に設けられる底面24Aと、ベース部材10Bと係合可能な屋内外一対の係合ヒレ24Bとを有して形成されている。第1載置凹部25は、載置凸部24と屋内カバー部21との間にて上方に凹んで形成され、変形した屋内カバー部21の先端変形部21Bを受け入れ可能に構成されるとともに、載置凸部24の底面24Aよりも上方に位置する底面25Aにベース部材10Bが当接可能に構成されている。第2載置凹部26は、載置凸部24とカバー部11との間にて上方に凹むとともに、載置凸部24の底面24Aよりも上方に位置する段付き状の底面26A,26Bを有して形成され、底面26Aにベース部材10Bが当接可能、底面26B側の空間にアングル材52の立上片59を受け入れ可能に構成されている。
【0027】
ベース部材10Bは、上方に開口した断面略コ字形で載置凸部24と係合可能な係合部27と、この係合部27から屋内側に延びる延出部28とを有して一体形成されている。係合部27は、上方に延びて載置凸部24の係合ヒレ24Bと係合する屋内外一対の係合片27Aと、各係合片27Aに連続して下方に突出し額縁7の上面に可能な一対の突出片27Bと有し、各係合片27Aの上端に第1および第2の載置凹部25,26の底面25A,26Aが当接可能に構成されている。延出部28は、その屋内側端部から上下に突出する屋内見付け片28Aを有し、この屋内見付け片28Aの下端が額縁7の上面に可能に構成されている。また、屋内見付け片28Aは、カバー部材本体10Aの側面部20と略同一見込み位置に設けられるとともに、その上端面に屋外側に下がる傾斜を有し、この傾斜で屋内カバー部21の先端変形部21Bを案内することで、先端変形部21Bを延出部28の上面側に当接させるように構成されている。
【0028】
以上のカバー部材10の取付手順としては、先ず、下枠5の長手方向寸法(左右の縦枠6間の距離)に合わせてカバー部材本体10Aおよびベース部材10Bを適宜な長さに切断し、切断したカバー部材本体10Aの両端縁にシール材を貼り付けるとともに、載置凸部24を係合部27に係合させてカバー部材本体10Aをベース部材10Bに取り付けておく。次に、第2載置凹部26の底面26B側の空間にアングル材52の立上片59を受け入れるとともに、この立上片59にベース部材10Bの屋外側側面を当接させてカバー部材10を位置決めしてから、固定部12の溝部23から固定ビス10Cをねじ込み、固定部12、載置凸部24およびベース部材10Bの係合部27を貫通させるとともに、この固定ビス10Cを額縁7に螺合させる。この際、カバー部材本体10Aが下向きに押圧されることで、凹状底面部13が固定片部57に押圧されて平坦状に弾性変形し、第1および第2の当接部16,17が固定片部57に密接される。また、第1および第2の載置凹部25,26の底面25A,26Aにベース部材10Bの係合片27A上端が当接し、突出片27Bおよび屋内見付け片28Aが額縁7上面に当接することで、カバー部材本体10Aがベース部材10Bを介して額縁7に載置固定されるようになっている。
【0029】
なお、カバー部材10の取付手順は、上述に限らず、ベース部材10Bを額縁7に仮止めしてから、このベース部材10Bに対してカバー部材本体10Aを係合させ、その後に固定ビス10Cでカバー部材本体10Aおよびベース部材10Bを額縁7に本固定するようにしてもよい。また、固定ビス10Cの本数は、下枠5の長手方向寸法に応じて適宜に設定可能であり、比較的小型の窓枠2の場合には、カバー部材10の両端部付近と中央とで計3本の固定ビス10Cで固定してもよいし、4本以上の固定ビス10Cを用いてもよい。
また、本実施形態のカバー部材10の取付形態としては、図1〜図3で説明したものに限らず、以下の図4および図5に示す取付形態を採用することが可能である。
【0030】
図4(A)〜(C)に示す取付形態では、額縁7の上面における屋外側端部に切欠き部(しゃくり)7Aが形成されており、この切欠き部7Aにアングル材52の固定片部57A,57B,57Cが位置して固定されることから、その高さ位置が前述した図1〜図3の場合と相違し、ベース部材10Bを用いずにカバー部材10が取り付けられている。また、図4(A),(B)に示す固定片部57A,57Bと図4(C)に示す固定片部57Cとでは、その見込み方向長さが異なり、例えば、固定片部57A,57Bの見込み方向長さが20mmであるのに対し、固定片部57Cの見込み方向長さが30mmと他の場合と比較して屋内側に長く延びて形成されている。さらに、図4(A),(B)に示す固定片部57A,57Bでは、互いの板厚が異なり、立上片59との納まりが相違している。以下、図4(A)〜(C)に示す取付形態をそれぞれ説明する。
【0031】
図4(A)において、カバー部材本体10Aは、カバー部11で固定片部57Aを覆うとともに、ベース部材を介さずに固定部12が額縁7に直接固定されている。すなわち、固定部12における載置凸部24の底面24Aが額縁7の上面に当接された状態で、固定部12を貫通させた固定ビス10Cを額縁7に螺合してカバー部材本体10Aが固定されている。また、屋内カバー部21は、その先端変形部21Bが額縁7の上面に当接して設けられており、屋外側に折れ曲がった先端変形部21Bが第1載置凹部25に受け入れられている。一方、固定片部57Aの立上片59は、前述と同様に底面26B側の空間に受け入れられている。
【0032】
図4(B)において、固定片部57Aと板厚が異なる固定片部57Bの立上片59も底面26B側の空間に受け入れ可能に構成され、この点以外は、図4(A)の取付形態と略同様である。
【0033】
図4(C)において、固定片部57Cは、カバー部材本体10Aのカバー部11よりも屋内側まで延びるとともに、立上片59が第1載置凹部25に受け入れられており、この固定片部57Cの上面に載置凸部24の底面24Aが当接されている。そして、カバー部材本体10Aは、固定部12を貫通させた固定ビス10Cをさらに固定片部57Cに貫通させ、この固定ビス10Cを額縁7に螺合して固定されている。また、屋内カバー部21は、その先端変形部21Bが額縁7の上面と固定片部57Cの立上片59とに当接して設けられている。
【0034】
次に、図5(A)〜(C)に示す取付形態は、図4(A)〜(C)に示すような切欠き部7Aが形成されない額縁7に対してカバー部材10が取り付けられている。
図5(A)に示す固定片部57Bは、図4(B)のものと同一形態であり、カバー部材本体10Aは、ベース部材10Bを介して額縁7に固定されている。また、固定片部57Bの立上片59は、ベース部材10Bの底面26B側の空間に受け入れられている。その他の構成は、前述の図1〜図3で説明したものと同様である。
図5(B)に示す固定片部57Cは、図4(C)のものと同一形態であり、カバー部材本体10Aは、ベース部材10Bを用いずに固定片部57Cを介して額縁7に固定されている。また、固定片部57Cの上面に載置凸部24の底面24Aが当接されるとともに、固定片部57Bの立上片59は、第1載置凹部25に受け入れられている。さらに、屋内カバー部21は、その先端変形部21Bが折れ曲がらずに下方に延びて額縁7の上面に当接して設けられている。
図5(C)において、固定片部57Dは、その屋内側端部に立上片を有していない点以外は図1〜図3で説明したものと同様であり、このような固定片部57Dに対しても前述した取付形態によってカバー部材10が取付可能に構成されている。
【0035】
このような本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
すなわち、障子3や縦枠6から落下した結露水等をカバー部材10の傾斜面部14によって屋外側に流して下枠溝部55へ排水するとともに、立上面部18によって屋内側への流入を防止することができる。さらに、カバー部材10の第1当接部16および第2当接部17が固定片部57,57A,57B,57C,57Dの上面に当接されるとともに、先端カバー部15が下枠5の見付け片部53の上端を覆って設けられることで、傾斜面部14を屋外側に流れた結露水等が下枠5とカバー部材10との間に浸入することを防止することができる。さらに、屋内カバー部21の先端変形部21Bがベース部材10Bや額縁7、固定片部57Cに当接して設けられることで、カバー部材10の屋内側においても額縁7との間への水の浸入が防止できるとともに、屋内側からの外観意匠性を向上させることができる。さらに、水蒸気量の高い室内空気が固定片部57,57A,57B,57C,57Dに直接触れることを防止することができ、固定片部57,57A,57B,57C,57Dでの結露発生を防止することができる。また、固定片部57,57A,57B,57C,57Dの形状が異なる各種の下枠5に対して、カバー部材10が取付可能であることから、新設の窓に限らず、既設の窓に対して後付けでカバー部材10を取り付けて、結露防止性能および排水性能を高めることができる。
【0036】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係るカバー部材30について、図6および図7を参照して説明する。本実施形態のカバー部材30は、前記第1実施形態と形態が相違するものの、各種形態の固定片部57,57A,57B,57C,57Dを有した下枠5に取付可能な点は、前記第1実施形態のカバー部材10と同様である。以下、相違点を詳しく説明する。
カバー部材30は、カバー部材本体30Aとベース部材30Bと固定ビス30Cとを備えて構成され、カバー部材本体30Aは、半硬質樹脂と軟質樹脂との押出二色成形によって形成され、ベース部材30Bは、硬質樹脂から押出成形されている。
【0037】
カバー部材本体30Aは、カバー部材10と略同様のカバー部31と固定部32とを備えて形成されている。カバー部31は、凹状底面部33、傾斜面部34、および先端カバー部35を有し、凹状底面部33は、屋内側の第1当接部36および屋外側の第2当接部37の間にて上方に凹んだ凹部33Aを有して形成されている。また、カバー部31において、先端カバー部35のみが軟質樹脂から形成され、第2当接部37を含む他の部分が半硬質樹脂から形成されている。このようなカバー部31は、凹部33Aに設けられる両面テープ33Bを介して固定片部57に接着されるとともに、第1および第2の当接部36,37が固定片部57に当接し、先端カバー部35が下枠5の見付け片部53に当接して弾性変形しつつ見付け片部53の上端を覆って設けられるようになっている。
【0038】
固定部32は、立上面部38、上面部39、側面部40、屋内カバー部41、および載置部42を有し、屋内カバー部41が軟質樹脂から形成され、他の部分が半硬質樹脂から形成されている。この屋内カバー部41は、側面部40側に連続して下方に延びるとともに下端部が屋外側に折れ曲がって形成され、ベース部材30Bや額縁7に当接して弾性変形可能に構成されている。載置部42は、ベース部材30Bと係合可能な載置凸部44と、この載置凸部44の屋内側に隣り合う第1載置凹部45および屋外側に隣り合う第2載置凹部46とを有して形成されている。載置凸部44は、第1および第2の当接部36,37と略同一高さ位置に設けられる底面44Aと、ベース部材30Bと係合可能な屋内外一対の係合ヒレ44Bとを有して形成されている。第1載置凹部45は、変形した屋内カバー部41およびベース部材30Bの係合片47Aを受け入れ可能に構成され、第2載置凹部46は、アングル材52の立上片59およびベース部材30Bの係合片47Aを受け入れ可能に構成されている。
【0039】
ベース部材30Bは、載置凸部44と係合可能な係合部47と、屋内側に延びる延出部48とを有し、その下面がフラットに形成されて額縁7の上面に当接可能に構成されている。係合部47には、係合ヒレ44Bと係合する屋内外一対の係合片47Aが形成され、各係合片47Aの上端に第1および第2の載置凹部45,46が当接して載置可能に構成されている。延出部28の屋内側端縁は、カバー部材本体30Aの側面部40と略同一見込み位置に設けられるとともに、この延出部28の上面に屋内カバー部41が当接可能に構成されている。
以上のカバー部材30の取付手順としては、前記カバー部材10と略同様であり、適宜な長さに切断したカバー部材本体30Aとベース部材30Bとを係合させてから、下枠5の適宜な位置に合わせつつ両面テープ33Bを固定片部57に接着してカバー部材本体30Aおよびベース部材30Bを仮止めし、その後、固定ビス30Cを固定部32、載置凸部44およびベース部材30Bに貫通させて額縁7に螺合する。
以上の本実施形態によっても、前記実施形態と略同様の効果、すなわち結露防止性能および排水性能が高められるという効果を奏することができる。
【0040】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、建具として引違い窓1を例示したが、本発明の建具は、引違い窓1に限定されるものではなく、適宜な開閉形式を有した窓であってもよいし、開閉不能な嵌め殺し窓であってもよい。面材の開閉形式としては、例えば、片引き窓や開き窓、外倒し窓、上げ下げ窓、縦または横の辷出し窓、上げ下げ窓などが例示できる。さらに、本発明の建具は、前記引違い窓1などを外窓として、その屋内側に内窓を有した二重窓であってもよく、例えば、前記額縁7などの内装材に内窓が固定される後付けの内窓が例示できる。このような後付けの内窓を設ける場合であっても、本発明のカバー部材を用いることで、内窓とカバー部材との干渉を避けつつ、内窓およびカバー部材ともに良好な取付手順で確実に取り付けて、二重窓の結露防止性能および排水性能を高めることができる。
【0041】
また、前記実施形態では、カバー部材10,30の固定部12,32が固定される内装材として額縁7を例示したが、内装材としては、床材であってもよいし、内壁の一部であってもよく、建物の開口部の形態に応じてカバー部材の固定対象を適宜選択すればよい。
また、前記実施形態の下枠5では、下枠本体51とアングル材52とが別体で構成され、アングル材52に固定片部(下枠固定片)57が形成されていたが、これに限らず、下枠固定片を一体に有した下枠であってもよい。
また、前記実施形態では、カバー部材10,30を半硬質樹脂と軟質樹脂との押出二色成形や硬質樹脂の押出成形で製造するものとしたが、カバー部材の製造方法や、樹脂の硬度や樹種などは特に限定されるものではなく、適宜に選択可能である。
【0042】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
1…引違い窓(建具)、2…窓枠、5…下枠、7…額縁(内装材)、10,30…カバー部材、10A,30A…カバー部材本体、10B,30B…ベース部材、11,31…カバー部、12,32…固定部、13,33…凹状底面部、14,34…傾斜面部、15,35…先端カバー部、16,36…第1当接部、17,37…第2当接部、18,38…立上面部、19,39…上面部、20,40…側面部、21,41…屋内カバー部、22,42…載置部、24,44…載置凸部、24A,44A…底面、25,45…第1載置凹部、26,46…第2載置凹部、53…見付け片部(下枠立下片)、57,57A,57B,57C,57D…固定片部(下枠固定片)、59…立上片(下枠立上片)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物開口部に設けられる下枠の一部を覆う樹脂製のカバー部材であって、
前記下枠の屋内側にて内装材に固定される下枠固定片の上面を覆うカバー部と、このカバー部の屋内側に連続するとともに前記内装材に固定される固定部とを備え、
前記カバー部には、前記下枠固定片の上面に当接する当接部が形成され、
前記固定部には、前記下枠固定片の上面または前記内装材の上面に載置されるか、あるいは別体のベース部材を介して前記内装材の上面に載置される載置部が形成され、この載置部は、前記当接部よりも屋内側にて上方に凹んだ載置凹部を有して形成されているカバー部材。
【請求項2】
前記載置部は、下方に突出するとともに前記ベース部材と係合可能な載置凸部を有して形成され、前記載置凹部は、前記載置凸部の屋内側および屋外側に隣り合って一対で設けられ、
前記載置凸部は、その底面が前記当接部と略同一高さ位置に設けられ、前記ベース部材を用いない場合には、当該載置凸部の底面が前記下枠固定片の上面または前記内装材の上面に載置可能に構成され、
前記載置凹部は、前記ベース部材を前記載置凸部に係合させて用いる場合には、前記載置凸部および載置凹部の少なくとも一方の底面が当該ベース部材を介して前記内装材の上面に載置可能に構成されている請求項1に記載のカバー部材。
【請求項3】
前記固定部には、前記載置部よりも屋内側にて下方に突出する屋内カバー部が形成され、この屋内カバー部は、前記ベース部材を用いない場合には、前記下枠固定片の屋内側端面または前記内装材の上面に当接可能に構成され、前記ベース部材を用いる場合には、当該ベース部材の上面または屋内側端面に当接可能に構成され、
前記一対の載置凹部のうち、屋内側の載置凹部は、弾性変形した前記屋内カバー部を受け入れ可能に構成されている請求項2に記載のカバー部材。
【請求項4】
前記一対の載置凹部は、前記下枠固定片の屋内側端縁から上方に立ち上がる下枠立上片を受け入れ可能に構成されている請求項2または請求項3に記載のカバー部材。
【請求項5】
建物開口部に設けられる下枠の一部を覆う樹脂製のカバー部材であって、
前記下枠の屋内側にて内装材に固定される下枠固定片の上面を覆うカバー部と、このカバー部の屋内側に連続するとともに前記内装材に固定される固定部とを備え、
前記カバー部には、前記下枠固定片の上面に当接する当接部と、当該カバー部の上面を構成するとともに屋外側に下がり勾配を有する傾斜面部と、この傾斜面部の屋外側に連続するとともに前記下枠固定片から立ち下がる下枠立下片の上端を覆う先端カバー部とが形成され、
前記固定部には、前記傾斜面部の屋内側端部に連続して当該傾斜面部から立ち上がる立上面部が形成されているカバー部材。
【請求項6】
前記先端カバー部は、前記傾斜面部よりも大きな下がり勾配を有するとともに弾性変形可能な軟質樹脂から形成されている請求項5に記載のカバー部材。
【請求項7】
前記カバー部には、前記下枠固定片の上面に対向しかつ上方に凹んで形成されるとともに、当該カバー部の弾性変形によって平坦状に変形して前記下枠固定片の上面に密接可能な凹状底面部が設けられ、この凹状底面部の屋内側部分および屋外側部分によって前記当接部が構成されている請求項1から請求項6のいずれかに記載のカバー部材。
【請求項8】
前記凹状底面部の屋外側の当接部は、下向き凸な断面を有して軟質樹脂から形成される弾性凸部で構成されている請求項7に記載のカバー部材。
【請求項9】
建物開口部に設けられるとともに下枠を有する窓枠と、前記下枠の屋内側にて内装材に固定される下枠固定片の上面を覆う請求項1から請求項8のいずれかに記載のカバー部材とを備えた建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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