説明

カバー部材

【課題】遮蔽性能を向上する。
【解決手段】カバー部材20は、乗員室に臨ませて設置されるインストルメントパネルとこのインストルメントパネルに対向して設置されるダッシュパネル12との間の隙間を塞いでいる。カバー部材は、本体部22のダッシュパネルに相対する端部に設けられ、ダッシュパネル12のフロアカーペット12aに当接する当接部24と、この当接部24にダッシュパネル12との当接辺と交差する方向に延在するよう設けられたスリット26とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インストルメントパネルと該インストルメントパネルに対向して設けられた仕切壁との間を塞ぐカバー部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の車両には、乗員室の前側に設けられるエンジンルームがダッシュパネル(仕切壁)で区切られ、このダッシュパネルに対向してインストルメントパネルが乗員室に臨ませて設置されている。ダッシュパネルとインストルメントパネルの間の空間には、送風ユニットおよびダクト等の空調装置や、エアバッグ装置等の各種の装置が設置されている。車両には、乗員室の底部に金属製のフロアパネルが設けられ、このフロアパネルからダッシュパネルの下部にかけて乗員室側にフロアカーペット等の敷物が貼り付けられている。また、車両は、ダッシュパネルとインストルメントパネルの下端部の間が開口するので、この開口部に配設した吸音構造体によって遮音が図られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示の吸音構造体は、合成樹脂からなる板状のフレーム体と、このフレーム体に設置されたシート状の吸音材とから構成される。吸音構造体は、フレーム体に形成されたリブによって剛性が担保され、不織布や発泡体等からなる柔軟な吸音材をフレーム体で支持している。また、吸音構造体は、ダッシュパネル側の端部に形成された延出部の係止突起を空調装置に挿入すると共に、インストルメントパネル側の端部に形成された延出部でインストルメントパネルの下端部にネジ止め固定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−55461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記吸音構造体は、インストルメントパネル側の端部をインストルメントパネルの下端部にねじ等で取り付け、ダッシュパネル側の端部を空調装置で支持する構成であり、吸音構造体とダッシュパネルとの間に隙間が生じている。このため、空調装置によって調温された乗員室の空気が、吸音構造体とダッシュパネルとの間の隙間から逃げたり、ダッシュパネルとインストルメントパネルとの間の空間にある空気が乗員室に隙間を介して流入し、空調効率を悪化する問題が指摘されている。
【0006】
すなわち本発明は、従来の技術に係るカバー部材に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、仕切壁とインストルメントパネルとの間を適切に塞ぐことができるカバー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明のカバー部材は、
乗員室に臨ませて設置されるインストルメントパネルとこのインストルメントパネルに対向して設置される仕切壁との間の隙間を塞ぐカバー部材において、
板状の本体部と、
前記本体部の前記仕切壁に相対する端部に設けられ、該仕切壁に弾力的に当接する当接部と、
前記当接部に前記仕切壁との当接辺と交差する方向に延在するよう設けられた複数のスリットとを有し、
前記スリットは、前記当接辺に沿う方向に互いに離間して並列に設けられることを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、当接部にスリットを設けることで、当接部がスリットで区分された部分毎で仕切壁に追従して変形するから、仕切壁との間を適切に遮蔽することができる。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記スリットは、前記当接部の先端から前記本体部との接続部位に亘って設けられることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、当接部のスリットで区分された部分を、より独立して変形し易くすることができる。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記当接部は、前記本体部との接続部位および前記仕切壁との当接面の間に該当接面の撓曲を許容する空間を画成するように曲げて形成されることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、当接部が本体部に邪魔されず、弾性変形し易くなっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るカバー部材によれば、インストルメントパネルと仕切壁との間を適切に塞ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好適な実施例に係るカバー部材を示す平面図である。
【図2】実施例のカバー部材の当接部を上側から示す概略斜視図である。
【図3】実施例のカバー部材の当接部を下側から示す概略斜視図である。
【図4】実施例のカバー部材の取り付け状態を示す概略図である。
【図5】変更例のカバー部材の当接部を上側から示す概略斜視図である。
【図6】変更例のカバー部材の当接部を下側から示す概略斜視図である。
【図7】図5のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係るカバー部材につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。実施例では、カバー部材について車両への取り付け姿勢で方向を指称し、仕切壁側が前側となり、インストルメントパネル側が後側となる。
【実施例】
【0013】
図4に示すように、カバー部材20は、乗員室14に臨ませて設置されるインストルメントパネル10の下端部とこのインストルメントパネル10の前側に設置されるダッシュパネル(仕切壁)12との間を塞ぐように取り付けられるものである。図1に示すように、実施例のカバー部材20は、板状の本体部22と、この本体部22のダッシュパネル12側の端部に設けられた当接部24と、この当接部24に設けられるスリット26とから基本的に構成される。
【0014】
前記カバー部材20は、不織布や合成樹脂の板材、またはこれらの組み合わせ等を材質とし、本体部22および当接部24が一体形成されている。カバー部材20の製造方法としては、例えば合成樹脂の板材であれば、インジェクション成形等が採用され、不織布であれば熱プレス成形等が採用される。本体部22は、カバー部材20の大部分を構成する板状部分であって、空調装置の乗員の足下用のエアアウトレットが配設される開口部22aが必要に応じて設けられる(図1参照)。また、実施例の本体部22には、インストルメントパネル10側の端部に、インストルメントパネル10に対する取り付け用の取付孔22bが車幅方向に離間して複数開設されている。
【0015】
前記当接部24は、本体部22のダッシュパネル12に相対する端部に形成され、カバー部材20を取り付けた際に、ダッシュパネル12の乗員室14側を構成するフロアカーペット12aに当接するようになっている(図4参照)。当接部24は、フロアカーペット12aへの突き当て方向に弾性変形可能に構成される。当接部24は、本体部22との接続部位で少なくとも曲がって、フロアカーペット12aとの当接面が本体部22の延在面と交差する方向に延在するよう形成されている。また、当接部24は、本体部22との接続部位およびフロアカーペット12aとの当接面の間に該当接面の撓曲を許容する空間24aを画成するように曲げて形成され、実施例の当接部24は、インストルメントパネル10とダッシュパネル12の間の内部空間16側が凸で、乗員室14側が凹になる断面U字状に形成されている(図2または3参照)。カバー部材20は、インストルメントパネル10側の端部をインストルメントパネル10に取り付けた際に、当接部24がフロアカーペット12aに干渉するように寸法設定され、干渉分を当接部24が撓むことで吸収するように構成される。なお、当接部24は、フロアカーペット12aに当接する面が平坦に形成されている。
【0016】
前記当接部24には、複数のスリット26が設けられている。スリット26は、当接部24の厚み方向に貫通するように形成される。なお、スリット26は、当接部24の成形後にレーザーやカッタ(例えばトムソン刃)等の切断手段によって形成しても、当接部24の成形時と同時に形成してもよい。複数のスリット26は、当接部24のフロアカーペット12aへの当接辺に沿う方向に互いに離間して並列に設けられている(図1参照)。すなわち、各スリット26は、当接部24のフロアカーペット12aへの当接辺と交差する方向(当接部24のフロアカーペット12aへの突き当て方向)へ延在するように形成されている。実施例のスリット26は、当接部24の先端から当接部24と本体部22との接続部位までに亘って形成され、隣り合うスリット26の間隔が2mm程度に設定されている。当接部24は、スリット26によって当接辺に沿う方向に並ぶ複数の当接片25に分割され、隣り合うスリット26の間に形成される当接片25が、互いに独立して撓曲変形可能になっている。
【0017】
前記カバー部材20は、本体部22におけるインストルメントパネル10側の端部をインストルメントパネル10の下端部に合わせ、前記取付孔22bにプッシュリベット等の取り付け手段を嵌合することで取り付けられる。また、カバー部材20は、当接部24がフロアカーペット12aに弾力的に当接することで、ダッシュパネル12とインストルメントパネル10の下端部との間を塞いでいる(図4参照)。
【0018】
前記カバー部材20は、フロアカーペット12aに対して当接部24が弾力的に当接するようになっている。カバー部材20は、インストルメントパネル10に取り付けた際に、当接部24がフロアカーペット12aに僅かに干渉するように設定され、当接部24の当接面が本体部22との接続部位側へ撓んだ状態に弾性変形している。このように、カバー部材20は、当接部24の変形によって、フロアカーペット12aの凹凸、ダッシュパネル12やインストルメントパネル10等の関連部材間の取り付けあるいは寸法誤差等に対して、当接部24が変形して追従することで、フロアカーペット12aとインストルメントパネル10の間の隙間を塞ぐことができる。また、カバー部材20は、車両走行時の振動等によるずれを当接部24が変形することで吸収することができ、フロアカーペット12aとインストルメントパネル10の間の隙間を塞いだ状態を維持することができる。
【0019】
前記当接部24は、スリット26によって分割された当接片25が互いに独立して変形可能であり、車両に取り付けた際に当接片25単位でフロアカーペット12aの凹凸に合わせて変形するので、フロアカーペット12aの凹凸への追従性に優れている。ここで、スリット26は、当接部24の先端から本体部22との接続部位に亘って設けられているので、各当接片25が独立して変形し易くなっている。また、カバー部材20は、フロアカーペット12aの凹凸に合わせて当接片25の変形度合いが異なり、当接片25がフロアカーペット12aの凹凸に引っ掛かるので、車両走行時の振動等によっても当接部24が位置ずれし難い。更に、カバー部材20は、繊維からなるフロアカーペット12aや表面に起毛しているフロアカーペット12aに当接した際に、繊維や毛等がスリット26に挟まることによっても、当接部24がずれ難くなる。このように、当接部24にスリット26を設けることで、カバー部材20の遮蔽性能を向上することができる。
【0020】
前記カバー部材20は、スリット26により分割された個々の当接片25が弾性変形可能に構成されているので、当接部24の特定箇所に力が偏って加わることが回避でき、個々の当接片25に力がおおよそ均等に加わる。よって、カバー部材20は、当接部24がへたり難く、経年変化による当接部24の当接状態の変化を抑えることができる。このように、カバー部材20は、ダッシュパネル12とインストルメントパネル10との間をより隙間なく塞ぐことができるので、乗員室14からの調温空気が内部空間16側へ逃げ難くすることができ、乗員室14の空調効率を向上できる。また、カバー部材20は、ダッシュパネル12とインストルメントパネル10との間をより隙間なく塞ぐことができるので、防音効果を向上できる。
【0021】
前記当接部24は、本体部22との接続部位と当接面との間に空間24aが画成される断面U字形状に形成されているので、フロアカーペット12aとの当接下に変形し易くなっている。しかも、当接部24は、当接面におけるフロアカーペット12aと反対側が開放されているので、当接面の変形が当該空間24aによって許容される。すなわち、実施例の当接部24によれば、フロアカーペット12aに対する追従性をより向上することができ、カバー部材20の遮蔽効果が増す。また、断面逆U字形状の当接部24は、凸部が内部空間16側となるようにフロアカーペット12aに当接するので、車両走行時等の振動によって当接部24が乗員室14側にずれることを防止することができる。
【0022】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、以下のように変更してもよい。
(1)実施例では、当接部を断面U字状に形成したが、フロアカーペットに対する突き当て方向に撓曲可能な形状であれば、断面L字状や凹凸が並ぶ蛇腹状であってもよい。
(2)カバー部材は、不織布または発泡体のシート材から形成する場合、図5〜図7に示すように、本体部22および当接部24の一般部分を、シート材に由来する空隙を有する吸音層L1とシート材の厚み方向の一部を圧縮して吸音層L1より密に形成した圧縮層L2とを厚み方向に重ねて構成してもよい。また、変更例のカバー部材40は、シート材の厚み方向全体を吸音層L1より密になるよう圧縮して形成される枠部42を設け、一般部分より剛性の高い枠部42によって補強されている。枠部42は、本体部22における当接部24との接続部位に設けたり、本体部22の一縁から他縁に向けて設けたり、格子状に設けたりする等、様々な態様で設けることが可能である。枠部42は、本体部22における当接部24との接続部位に該当接部24の当接辺に沿って延在するように設けることで、当接部24と本体部22との接続部分での屈曲を抑制することができる。カバー部材40は、当接部24と本体部22との接続部分での変形を抑制することで、当接部24自体の変形を優先して発現させることができ、当接部24の弾性変形に由来する前述したフロアカーペット12aに対する適切な当接状態を享受し得る。なお、当接部24に枠部を設けてもよい。
(3)変更例のカバー部材40は、図7に示すように、枠部42が一般部分より薄くなり、内部空間16側が凹むように形成されているが、乗員室側が凹むように形成してもよい。なお、枠部が一方の側に凹む構成だけでなく、内部空間側に凹む枠部と乗員室側に凹む枠部とが混在する構成であってもよい。
(4)前記変更例では、本体部に枠部を碁盤目状に形成したが、これに限定されず、前後方向にだけ並行形成する構成や、円や多角形が連なる形状等であってもよい。
(5)前記変更例では、ダッシュパネル12とインストルメントパネル10との間の内部空間16側に吸音層L1を配置し、乗員室14側に圧縮層L2を配置したが(図7参照)、内部空間側に圧縮層を配置してもよい。
(6)実施例および前記変更例では、本体部との接続部位およびフロアカーペットとの当接面の間に該当接面の撓曲を許容する空間を画成するように曲げて形成した当接部を、凸部が内部空間側(空間の開放端が乗員室側)となるように構成したが、凸部が乗員室側(空間の開放端が内部空間側)になるように構成してもよい。また、カバー部材は、内部空間側に凸部が向く当接部と乗員室側に凸部が向く当接部とを混在して設けてもよい。
【符号の説明】
【0023】
10 インストルメントパネル、12 ダッシュパネル(仕切壁)、14 乗員室、
22 本体部、24 当接部、24a 空間、26 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員室に臨ませて設置されるインストルメントパネルとこのインストルメントパネルに対向して設置される仕切壁との間の隙間を塞ぐカバー部材において、
板状の本体部と、
前記本体部の前記仕切壁に相対する端部に設けられ、該仕切壁に弾力的に当接する当接部と、
前記当接部に前記仕切壁との当接辺と交差する方向に延在するよう設けられた複数のスリットとを有し、
前記スリットは、前記当接辺に沿う方向に互いに離間して並列に設けられる
ことを特徴とするカバー部材。
【請求項2】
前記スリットは、前記当接部の先端から前記本体部との接続部位に亘って設けられる請求項1記載のカバー部材。
【請求項3】
前記当接部は、前記本体部との接続部位および前記仕切壁との当接面の間に該当接面の撓曲を許容する空間を画成するように曲げて形成される請求項1または2記載のカバー部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−218954(P2011−218954A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89717(P2010−89717)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】