説明

カフェオフランまたはその類縁体からなる柑橘類含有飲食品用添加剤

【発明の課題】搾り立ての柑橘類の持つ良質な香りを持った飲食品を提供することを目的とする。
【解決手段】カフェオフランまたはその類縁体を10−6〜10−1ppb柑橘類含有飲食品に添加することにより、柑橘類が持つ深みのある本来、搾り立ての柑橘果汁が持つ良質な香気・香味のバランスを崩すことなく、自然な甘味と程よい酸味感の増強、及び各々柑橘特有の果汁感を有する香気および良質な香味を持った柑橘類含有飲食品を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は柑橘類含有飲食品用添加剤、および該柑橘類含有飲食品用添加剤を添加した香味料組成物および該柑橘類含有飲食品用添加剤または該香味料組成物を添加した柑橘類含有飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、柑橘果実由来の多種多様な香料が既に使用されているが、近年の食品や香粧品の多様化に伴ってさらなる特徴をもった素材の発見が望まれている。例えば、搾り立ての柑橘果汁が持つ良質な香気・香味のバランスを崩すことなく、自然な甘味と程よい酸味感の増強された香料などの開発が求められている。
【0003】
果実本来がもつフレッシュな果実感を与えるのにエポキシアルカナールを含有する香味改良剤を用いる方法(例えば、特許文献1参照)や、みずみずしい果汁感を有するシス−4,5−エポキシ−2E−デセナールを使用すると果汁感が強調され天然感を賦与できることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−115754号公報
【特許文献2】特開2005−082771号公報
【0005】
しかし、これらの方法では、搾り立ての柑橘果汁が持つ良質な香気・香味のバランスを崩すことなく、自然な甘味と程よい酸味感の増強した良好な香味を付与することはできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、自然な甘味と程よい酸味感を伴い、本来柑橘類の持つ特有の果汁感をイメージする香気および良質な香味を付与する柑橘類含有飲食品用添加剤、および該柑橘類含有飲食品用添加剤を添加した香味料組成物および該柑橘類含有飲食品用添加剤または該香味料組成物を添加した柑橘類含有飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、カフェオフランまたはその類縁体を柑橘類含有飲食品、殊に柑橘果汁入り飲料あるいは柑橘果汁入りゼリー等に添加することにより、本来、搾り立ての果汁が持つ良質な香気・香味のバランスを崩すことなく、自然な甘味と程よい酸味感の増強、および各々柑橘特有の果汁感を有する柑橘類含有飲食品が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明はカフェオフランまたはその類縁体よりなる柑橘類含有飲食品用添加剤からなる。更に本発明はカフェオフランまたはその類縁体を10−4〜10ppb濃度添加したことを特徴とする香味料組成物からなる。本発明は更に、カフェオフランまたはその類縁体を10−6〜10−1ppb濃度添加したことを特徴とする柑橘類含有飲食品からなる。
【0008】
すなわち、本発明は、下記に掲げるものである:
項1.一般式(1)で示されるカフェオフランまたはその類縁体からなる柑橘類含有飲食品用添加剤。
【0009】
【化1】

(式中、RおよびRはそれぞれ同一または異なって水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す(但し、RおよびRが同時に水素原子であるものは除く))
項2.一般式(1)で示されるカフェオフランまたはその類縁体を10−4〜10ppbの濃度添加したことを特徴とする柑橘類含有飲食品用香味料組成物。
項3.一般式(1)で示されるカフェオフランまたはその類縁体を10−6〜10−1ppbの濃度添加したことを特徴とする柑橘類含有飲食品。
項4.柑橘類含有飲食品が柑橘果汁または果肉入り飲料である項3記載の柑橘類含有飲食品。
【0010】
本発明の柑橘類含有飲食品用添加剤は、カフェオフランまたはその類縁体を用いることを特徴とする。
【0011】
ここで、カフェオフラン(化合物名:6−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン)とは、コーヒー中に存在する特徴的な香気成分物質として1963年、M.Stollらにより単離された化合物である(Helv.Chim.Acta,50,628,(1967))。その構造決定は、G.Buchiらによって行われ、下式に示される構造を有することが明らかにされ、カフェオフランと命名された(J.Org.Chem., 36,199,(1971))
【0012】
【化2】

カフェオフランの合成法は、G.Buchiらによる方法(J.Org.Chem., 36,199,(1971))、E.Brennaらによる方法(J.Chem.Research(S),74,(1998)、J.Chem.Research(M),551,(1998))などが知られている。本発明は、カフェオフランだけでなく、下式に示される構造をもつカフェオフランの類縁体を含むものである。カフェオフラン誘導体およびのその製法は、例えば特願2006−045391を例示することができる。
【0013】
【化3】

(式中、RおよびRはそれぞれ同一または異なって水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す(RおよびRが同時に水素原子であるものは除く))
【0014】
およびRの炭素数1乃至4の低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられるが、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
【0015】
好ましいカフェオフランの類縁体としては、例えば、6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン、4,6−ジメチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン、4−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン、4−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン、4−メチル−6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン、4−エチル−6−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン、4,6−ジエチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フランを挙げることができる。
【0016】
カフェオフラン類(2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン化合物)は、化合物の種類に応じて固有の香気を有しており、例えば、カフェオフランは、0.000005質量%の希釈水溶液とした場合、焙煎したナッツ様香気、または野菜様のグリーン香、またはカラメル様の甘い香りを奏する。
【0017】
またRが水素、Rがエチル基であるエチルカフェオフランは、0.000005質量%の希釈水溶液とした場合、甘味のあるロースト感のある香りを奏し、またR、Rともにメチル基であるジメチルカフェオフランは、0.000005質量%の希釈水溶液とした場合、青みのある生豆様の香り、または野菜のグリーン香、またはみずみずしさのある香りを奏する。
【0018】
これらカフェオフランまたはその類縁体を柑橘果汁および/または果肉入り飲料に添加したときに本来、搾り立ての果汁が持つ良質な香気・香味のバランスを崩すことなく、自然な甘味と程よい酸味感の増強、及び各々柑橘特有の果汁感を付与することは知られていなかった。
【0019】
本発明のカフェオフランまたはその類縁体は、上記のような香気を有するが、柑橘類含有飲食品、殊に柑橘果汁入り飲料に対し、10−6〜10−1ppb、より好ましくは10−5〜10−2ppb、更に好ましくは10−4〜10−3ppbの範囲で用いられたときに限り、本来、搾り立ての果汁が持つ良質な香気・香味のバランスを崩すことなく、自然な甘味と程よい酸味感の増強、及び各々柑橘特有の果汁感を付与することができた。含有量が10−6ppbより低いと自然な甘味と程よい酸味感の増強、及び果汁感のある香気および良質な香味を付与することはできず、含有量が10−1ppbより高いと、不快臭が強くなり柑橘果汁飲料には適さなくなる。
【0020】
本発明の柑橘類含有飲食品とは、ミカン科ミカン亜科に属する植物(ミカン類、雑カン類、オレンジ類、グレープフルーツ類、香酸カンキツ類、ブンタン類、タンゼロ類、タンゴール類、キンカン類、カラタチ類)の果実そのもの、果汁、およびそれらの粉末、抽出液(エキス)等を添加した飲食品、例えば、アイスクリーム、シャーベット等の冷菓、ゼリー、プリン、ジャム等のデザート類、クッキー、ケーキ、チョコレート、チューインガム、キャンディー等の菓子類、菓子パン、食パン等のパン類、フラワーペースト等のフィリング類、饅頭、羊かん、ういろう等の柑橘類含有の和菓子類、錠菓類等が挙げられ、特に柑橘果汁および/または果肉入り飲料、清涼飲料、炭酸飲料、アルコール飲料等が挙げられる。
【0021】
本発明の柑橘類含有飲食品用添加剤は、カフェオフランまたはその類縁体を含有するものであればよく、カフェオフランまたはその類縁体のみを用いるか、これら以外の成分として希釈剤、担体またはその他の添加物を含有していてもよい。
【0022】
希釈剤または担体としては、本発明の効果を妨げないものであれば特に制限されず、例えば砂糖、果糖、ブドウ糖、デキストリン、澱粉類、サイクロデキストリン、トレハロース、乳糖、マルトース、水飴、液糖などの糖類;エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール類;アラビアガム、キサンタンガム、カラギーナン、グァーガム、ジェランガム等の多糖類;または水を挙げることができる。また添加剤としては、抗酸化剤、キレート剤等の助剤、香料、香辛料抽出物、防腐剤などを挙げることができる。
【0023】
使用上の利便等から、これらの希釈剤、担体または添加剤を用いて柑橘類含有飲食品用添加剤を調製する場合は、カフェオフランまたはその類縁体が、柑橘類含有飲食品用添加剤中に
10−4〜10ppb、好ましくは10−3〜1ppbで含まれるように調製することが望ましい。
【0024】
なお、ここで添加剤として用いられる抗酸化剤としては、食品添加物として用いられるものを広く例示することができる。例えば、制限はされないが、エリソルビン酸及びその塩(例えばエリソルビン酸ナトリウム)等のエリソルビン酸類;亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムまたはピロ亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩類;α−トコフェロールやミックストコフェロール等のトコフェロール類;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシアニソール(BHA)等;エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウムやエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等のエチレンジアミン四酢酸類;没食子酸や没食子酸プロピル等の没食子酸類;アオイ花抽出物、アスペルギルステレウス抽出物、カンゾウ油性抽出物、食用カンナ抽出物、グローブ抽出物、精油除去ウイキョウ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、チャ抽出物、テンペ抽出物、ドクダミ抽出物、生コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、ピメンタ抽出物、ブドウ種子抽出物、ブルーベリー葉抽出物、プロポリス抽出物、ヘゴ・イチョウ抽出物、ペパー抽出物、ホウセンカ抽出物、ユーカリ葉抽出物、リンドウ根抽出物、ルチン(抽出物)(小豆全草,エンジュ,ソバ全草抽出物)、ローズマリー抽出物、チョウジ抽出物、リンゴ抽出物等の各種植物の抽出物;その他、酵素処理ルチン、クエルセチン、ルチン酵素分解物(イソクエルシトリン)、酵素処理イソクエルシトリン、酵素分解リンゴ抽出物、ごま油抽出物、菜種油抽出物、コメヌカ油抽出物、コメヌカ酵素分解物等を挙げることができる。好ましくは、エンジュ抽出物、ルチン(抽出物)、生コーヒー豆抽出物、ローズマリー抽出物等の植物抽出物;酵素処理ルチン、ルチン酵素分解物(イソクエルシトリン)、酵素処理イソクエルシトリン等を挙げることができる。
【0025】
本発明において特に好ましい抗酸化剤として、フラボノール類を挙げることができる。このフラボノール類としては、フラボノール並びにアグリコン部にフラボノールを有するフラボノール配糖体を広く挙げることができる。例えば、エンジュ、ダッタンソバ、ドクダミなどの植物体から抽出することにより入手できるもの、さらにそれを精製した精製物、並びにそれらに酵素処理若しくは加水分解等の各種処理を施したものを挙げることができる。具体的には、ルチン、及びイソクエルシトリン等、並びにルチン、イソクエルシトリンと澱粉質の共存下において糖転移酵素を用いて公知の方法で処理することにより得られる糖転移ルチン等を例示することができる。これらのフラボノール類は1種単独で使用されてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0026】
またフラボノール類そのものに代えて、上記に掲げる各種フラボノール類を含む植物抽出物をそのまま用いることもできる。かかるものとしてはエンジュ抽出物、ダッタンソバ抽出物及びドクダミ抽出物を例示することができる。なお、かかる植物抽出物は、フラボノール類を比較的多量に含む植物の該当部位を水、アルコールまたはその他の有機溶剤を用いて抽出することによって得ることができ、そのままで使用しても、またさらに酵素処理して使用することもできる。なお、これらの植物抽出物も1種単独で使用されても、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0027】
また、前述するフラボノール類の中には水難溶性で取り扱いにくい物質があるため、必要に応じて、フラボノール類をエタノールなどの低級アルコールやグリセリンまたはプロピレングリコールなどの多価アルコールに溶かして用いてもよい。
【0028】
抗酸化剤を用いる場合、柑橘類含有飲食品用添加剤100質量%中に配合される当該抗酸化剤の割合としては、制限されないが、例えば、酵素処理イソクエルシトリンを用いる場合、0.0001〜20質量%、好ましくは0.001〜10質量%を挙げることができる。他の抗酸化剤もこれに準じて用いることができる。
【0029】
本発明の柑橘類含有飲食品用添加剤はその形態を特に制限するものではなく、例えば粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体状;液状、乳液状等の溶液状;またはペースト状等の半固体状などの、任意の形態に調製することができる。
【0030】
本発明の柑橘類含有飲食品用添加剤は、香味料組成物に予め添加しておいてもよく、その例としては、上記柑橘類果汁・果肉や精油といった天然素材及び合成素材等、柑橘類の香味成分を調合して得られる香料組成物などがあげられる。調合に使用される柑橘類の香味成分には特に制限はなく、シトラール、シトロネラール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ペリラアルデヒド、α―シネンサール、β―シネンサール、シトロネロール、ゲラニオール、リナロール、ネロール、オクタノール、α―ターピネオール、チモール、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、リナリルアセテート、ネリルアセテート、ヌートカトン、カルボン、1,8−シネオール、1−p−メンテン−8−チオール等、公知の柑橘類用香味成分が目的に応じて適宜混合して用いることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の柑橘類含有飲食品用添加剤を含有飲食品に添加することにより、本来、搾り立ての柑橘果汁が持つ良質な香気・香味のバランスを崩すことなく、自然な甘味と程よい酸味感の増強、及び各々柑橘特有の果汁感を有する香味を持った柑橘類含有飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、特に記載のない限り「%」とは「質量%」を、「部」とは、「質量部」を意味するものとする。
【実施例】
【0033】
実施例1 オレンジ果汁入り飲料
最初に、表1のオレンジ飲料用香味料組成物100部に、カフェオフランまたはその類縁体の中から6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン、4−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フランの1ppbエタノール溶液をそれぞれ1部加え、カフェオフランまたはその類縁体を0.01ppb含有する本発明の香味料組成物3種類を得た。このものを水100部に対しそれぞれ0.000001部から10000部まで加えていき添加効果範囲を決定した。同様に、それぞれ5部加え、カフェオフランまたはその類縁体2種類を0.05ppb含有する本発明の香味料組成物3種類を得た。このものを表2にあるオレンジ果汁入り飲料100部に対しそれぞれ1部加え、カフェオフランまたはその類縁体2種類を0.0005ppb含有したオレンジ果汁入り飲料計3種類を調製した。
【0034】
比較例1
表1のオレンジ飲料用香味料組成物100部に、カフェオフランまたはその類縁体の中から6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン、4−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フランの1ppbエタノール溶液をそれぞれ1部加え、カフェオフランまたはその類縁体2種類を0.01ppb含有する本発明の香味料組成物3種類を得た。このものを表2のオレンジ果汁入り飲料100部に対しそれぞれ0.001部加え、過少量であるカフェオフランまたはその類縁体2種類を0.0000001ppb含有し、そしてオレンジ果汁入り飲料の飲料計3種類を調製した。また、それぞれの100ppmエタノール溶液をそれぞれ2部ずつ加え、カフェオフランまたはその類縁体2種類を2ppm含有する香味料組成物3種類を得た。このものを表2のオレンジ果汁入り飲料100部に対しそれぞれ1部加え、過剰量であるカフェオフランまたはその類縁体2種類を20ppb含有し、そしてオレンジ果汁入り飲料計3種類を調製した。
【0035】
【表1】

攪拌→静置→油層分液(一昼夜冷却−10℃〜−20℃)→油層部分除去→水層部分濾過 これにより得られた溶液を香味料組成物とした。
【0036】
【表2】

【0037】
試験例1
実施例1及び比較例1のオレンジ果汁入り飲料を、8名のパネルで4段階評価を行い、適量濃度、香調等の結果を表3に示した。
【0038】
【表3】


◎:本来、搾り立てのオレンジが持つ良質な香気・香味のバランスを崩すことなく、自然な甘味と程よい酸味感が得られるオレンジ果汁入り飲料
○:やや物足りないが、搾り立てのオレンジ果汁の香味のバランスを保ち、自然な甘味と程よい酸味感が得られるオレンジ果汁入り飲料
△:通常見受けられるオレンジ果汁入り飲料
×:本来持つ、オレンジのイメージが損なわれたオレンジ果汁入り飲料
【0039】
以上のように、カフェオフラン、6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フランおよび4−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン0.000001〜0.1ppbをそれぞれオレンジ果汁入り飲料に用いることにより、本来、搾り立てのオレンジが持つ良質な香気・香味のバランスを崩すことなく、自然な甘味と程よい酸味感が得られるオレンジ果汁入り飲料ができた。
【0040】
実施例2 レモン果汁入り飲料
最初に、表4のレモン飲料用香味料組成物100部に、カフェオフランまたはその類縁体の中から6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン、4−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フランの1ppbエタノール溶液をそれぞれ1部加え、カフェオフランまたはその類縁体を0.01ppb含有する本発明の香味料組成物3種類を得た。このものを水100部に対しそれぞれ0.000001部から10000部まで加えていき添加効果範囲を決定した。同様に、それぞれ5部加え、カフェオフランまたはその類縁体2種類を0.05ppb含有する本発明の香味料組成物3種類を得た。このものを表5にあるレモン果汁入り飲料100部に対しそれぞれ1部加え、カフェオフランまたはその類縁体2種類を0.0005ppb含有したレモン果汁入り飲料計3種類を調製した。
【0041】
比較例2
表4のレモン飲料用香味料組成物100部に、カフェオフランまたはその類縁体の中から6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン、4−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フランの1ppbエタノール溶液をそれぞれ1部加え、カフェオフランまたはその類縁体2種類を0.01ppb含有する本発明の香味料組成物3種類を得た。このものを表2のレモン果汁入り飲料100部に対しそれぞれ0.001部加え、過少量であるカフェオフランまたはその類縁体2種類を0.0000001ppb含有し、そしてレモン果汁入り飲料の飲料計3種類を調製した。また、それぞれの100ppmエタノール溶液をそれぞれ2部ずつ加え、カフェオフランまたはその類縁体2種類を2ppm含有する香味料組成物3種類を得た。このものを表5のレモン果汁入り飲料100部に対しそれぞれ1部加え、過剰量であるカフェオフランまたはその類縁体2種類を20ppb含有し、そしてレモン果汁入り飲料計3種類を調製した。
【0042】
【表4】

攪拌→静置→油層分液(一昼夜冷却−10℃〜−20℃)→油層部分除去→水層部分濾過 これにより得られた溶液を香味料組成物とした。
【0043】
【表5】

【0044】
試験例2
実施例2及び比較例2のレモン果汁入り飲料を、8名のパネルで4段階評価を行い、適量濃度、香調等の結果を表3に示した。
【0045】
【表6】


◎:本来、搾り立てのレモンが持つ良質な香気・香味のバランスを崩すことなく、自然な甘味と程よい酸味感が得られるレモン果汁入り飲料
○:やや物足りないが、搾り立てのレモン果汁の香味のバランスを保ち、自然な甘味と程よい酸味感が得られるレモン果汁入り飲料
△:通常見受けられるレモン果汁入り飲料
×:本来持つ、レモンのイメージが損なわれたレモン果汁入り飲料
【0046】
以上のように、カフェオフラン、6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フランおよび4−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン0.000001〜0.1ppbをそれぞれレモン果汁入り飲料に用いることにより、本来、搾り立てのレモンが持つ良質な香気・香味のバランスを崩すことなく、自然な甘味と程よい酸味感が得られるレモン果汁入り飲料ができた。
【0047】
実施例3 グレープフルーツ果汁入り飲料
最初に、表7のグレープフルーツ飲料用香味料組成物100部に、カフェオフランまたはその類縁体の中から6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン、4−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フランの1ppbエタノール溶液をそれぞれ1部加え、カフェオフランまたはその類縁体を0.01ppb含有する本発明の香味料組成物3種類を得た。このものを水100部に対しそれぞれ0.000001部から10000部まで加えていき添加効果範囲を決定した。同様に、それぞれ5部加え、カフェオフランまたはその類縁体2種類を0.05ppb含有する本発明の香味料組成物3種類を得た。このものを表8にあるグレープフルーツ果汁入り飲料100部に対しそれぞれ1部加え、カフェオフランまたはその類縁体2種類を0.0005ppb含有したグレープフルーツ果汁入り飲料計3種類を調製した。
【0048】
比較例3
表7のグレープフルーツ飲料用香味料組成物100部に、カフェオフランまたはその類縁体の中から6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン、4−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フランの1ppbエタノール溶液をそれぞれ1部加え、カフェオフランまたはその類縁体2種類を0.01ppb含有する本発明の香味料組成物3種類を得た。このものを表8のグレープフルーツ果汁入り飲料100部に対しそれぞれ0.001部加え、過少量であるカフェオフランまたはその類縁体2種類を0.0000001ppb含有し、そしてグレープフルーツ果汁入り飲料の飲料計3種類を調製した。また、それぞれの100ppmエタノール溶液をそれぞれ2部ずつ加え、カフェオフランまたはその類縁体2種類を2ppm含有する香味料組成物3種類を得た。このものを表5のグレープフルーツ果汁入り飲料100部に対しそれぞれ1部加え、過剰量であるカフェオフランまたはその類縁体2種類を20ppb含有し、そしてグレープフルーツ果汁入り飲料計3種類を調製した。
【0049】
【表7】

攪拌→静置→油層分液(一昼夜冷却−10℃〜−20℃)→油層部分除去→水層部分濾過 これにより得られた溶液を香味料組成物とした。
【0050】
【表8】

【0051】
試験例3
実施例3及び比較例3のグレープフルーツ果汁入り飲料を、8名のパネルで4段階評価を行い、適量濃度、香調等の結果を表3に示した。
【0052】
【表9】


◎:本来、搾り立てのグレープフルーツが持つ良質な香気・香味のバランスを崩すことなく、自然な甘味と程よい酸味感が得られるグレープフルーツ果汁入り飲料
○:やや物足りないが、搾り立てのグレープフルーツ果汁の香味のバランスを保ち、自然な甘味と程よい酸味感が得られるグレープフルーツ果汁入り飲料
△:通常見受けられるグレープフルーツ果汁入り飲料
×:本来持つ、グレープフルーツのイメージが損なわれたグレープフルーツ果汁入り飲料
【0053】
以上のように、カフェオフラン、6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フランおよび4−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン0.000001〜0.1ppbをそれぞれグレープフルーツ果汁入り飲料に用いることにより、本来、搾り立てのグレープフルーツが持つ良質な香気・香味のバランスを崩すことなく、自然な甘味と程よい酸味感が得られるグレープフルーツ果汁入り飲料ができた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の柑橘類含有飲食品用添加剤を柑橘類含有飲食品に添加することにより、本来、搾り立ての柑橘果汁が持つ良質な香気・香味のバランスを崩すことなく、自然な甘味と程よい酸味感の増強、及び各々柑橘特有の果汁感を有する香味を持った柑橘類含有飲食品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるカフェオフランまたはその類縁体からなる柑橘類含有飲食品用添加剤。
【化1】

(式中、RおよびRはそれぞれ同一または異なって水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す(但し、RおよびRが同時に水素原子であるものは除く))
【請求項2】
一般式(1)で示されるカフェオフランまたはその類縁体を10−4〜10ppb濃度添加したことを特徴とする柑橘類含有飲食品用香味料組成物。
【請求項3】
一般式(1)で示されるカフェオフランまたはその類縁体を10−6〜10−1ppb濃度添加したことを特徴とする柑橘類含有飲食品。
【請求項4】
柑橘類含有飲食品が柑橘果汁または果肉入り飲料である請求項3記載の柑橘類含有飲食品。

【公開番号】特開2008−194015(P2008−194015A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35580(P2007−35580)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】