説明

カプセル型フィルタの配管構造

【課題】 大型の油圧ショベルに搭載される作動油用のタンクケーシング1に、カプセルエレメント4が挿脱自在に内装されるカプセル型の第一、第二フィルタ2、3を内装するにあたり、戻り油配管10が接続され、第一、第二フィルタにそれぞれ戻り油を供給すべく分岐する分岐配管Aをタンクケーシング1内にはない構成とする。
【解決手段】 分岐配管Aを、タンクケーシング1の外側に配してタンクケーシング1に取り付けるようにして、タンクケーシング1内の構造を簡略化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダ等の油圧アクチュエータを備えた各種機械装置に設けられるカプセル型フィルタの配管構造の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧アクチュエータを備えた作業機械において、油圧アクチュエータから作動油タンクに戻る戻り油を濾過するためのフィルタ装置が設けられるが、この様なフィルタ装置として、例えば、濾過材が組込まれたエレメントと、該エレメントが着脱自在に装着され、且つ油の流入出口が設けられたフィルタ本体とを用いて構成したものがある。しかるにこのものは、使用済のエレメントを交換すべくフィルタ本体から取外した際に、エレメントに付着している油等が周辺部にこぼれ落ちてしまうという問題がある。そこで従来、封止可能なカプセル内にエレメントを内蔵したカプセルエレメントをフィルタケーシングに挿脱自在に内装せしめて、エレメントを交換するときにはカプセルエレメントごとフィルタケーシングから取出すように構成した所謂カプセル型のフィルタ装置が知られている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−170422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで多量の作動油を必要とする大型機では、多量の作動油が戻り油として戻ってくるため、これに対応するには大量の戻り油をカプセル型フィルタで濾過する必要があり、このためには大型のカプセル型フィルタを形成することが提唱される。この様にした場合、小型から大型の仕様の機械に取り付けようとする場合、濾過能力の関係からそれぞれの大きさに対応した大小多数のカプセル型フィルタの品揃えが必要になり、部品の兼用化(共用化)の妨げになるという問題がある。
そこで小型の機械に設けられるカプセル型フィルタを、機械の大きさに対応して複数用いるようにすれば、カプセルフィルタの兼用化が計れることになる。ところがカプセル型フィルタを作動油タンクに内蔵する形式のものでは、作動油タンク内に引き込んだ戻り油配管をタンク内で分岐して前記設けた複数のカプセル型フィルタのそれぞれに接続する必要があって、タンク内の構造が複雑になって製造が面倒かつ煩雑になるだけでなく、配管がある分、タンク容量が少なくなるという問題があり、ここに解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、カプセルエレメントがフィルタケーシングに挿脱自在に内装され、戻り油配管から供給される戻り油を濾過するためのカプセル型フィルタの複数を作動油タンクのタンクケーシングに内装するにあたり、前記戻り油配管から供給される戻り油を各カプセル型フィルタにそれぞれ供給するための分岐配管を、タンクケーシング外に設けたことを特徴とするカプセル型フィルタの配管構造である。
請求項2の発明は、請求項1において、前記分岐配管は、各カプセル型フィルタから突出する外部接続用パイプにそれぞれ連通連結され、かつタンクケーシングの外部に突出するようにして設けられる各配管ブロックと、これら配管ブロック同士を連通連結する弾性ホースとを備えていることを特徴とするカプセル型フィルタの配管構造である。
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記分岐配管は、タンクケーシングの外面に組み付けられていることを特徴とするカプセル型フィルタの配管構造である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、作動油タンクケーシングに複数のカプセル型フィルタを内装するものでありながら、戻り油配管からの戻り油を各カプセル型フィルタに分岐供給するための分岐配管がタンクケーシング外に設けられることになってタンクケーシング内で面倒な配管をする必要がないうえ、タンクケーシング内の容量が配管によって少なくなってしまうことを回避できる。さらに、容量の異なる作動油タンクには、分岐配管を用いて接続されるカプセル型フィルタの数を増減することで対応できるので、部品の共通化が図れることになる。
請求項2の発明とすることにより、分岐配管が弾性ホースで連通連結して構成されることになって、タンクケーシングやカプセル型フィルタ、各種配管、配管ブロック等の各種構成部材の製作公差や取付け誤差を容易に吸収できることになって製作作業性や取付け作業性の向上が図れる。
請求項3の発明とすることにより、タンクケーシングの外面を有効に利用して分岐配管の組み付けができることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次ぎに、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図中、1は大型の油圧ショベルに搭載される作動油タンクを構成するタンクケーシングであって、該タンクケーシング1は矩形状に形成され、天井板1aに開設された一対の取り付け孔1bに、カプセル型の第一、第二フィルタ2、3の上面部が取付け座1cを介在する状態でそれぞれ組付けられている。前記フィルタ2、3は、円筒状をしたフィルタケーシング2a、3a内にエレメントをカプセルに封入したカプセルエレメント4が挿脱自在に内装され、上端部に設けたキャップ5を取り外した状態でカプセルエレメント4の上端部に設けた把手4aを把持して所定方向に回すことでフィルタケーシング2a、3aから外れるようになっていること等を含む内部機構については、前記特許文献1に記載されているものと同様であるのでその詳細は省略する。
【0007】
フィルタ2、3の下端部に設けられる戻り油流入側の継手6には、水平方向を向いた外部接続用パイプ7の基端部が連結されているが、該外部接続用パイプ7の先端部は、取付け座1dを介してタンクケーシング側面板1eにそれぞれ開設の取り付け孔1fの側面板1e外面に位置するようにして取り付けた第一、第二フランジ8、9に連通状に支持されている。そしてフィルタ2、3は、後述する戻り油配管10から供給される戻り油が外部接続用パイプ7、継手6を経由してそれぞれフィルタ2、3内に入り、カプセルエレメント4によって濾過されて不純物が除去されたものが流出用パイプ11を介してタンクケーシング1内に供給されるようになっている。
【0008】
前記第一、第二フランジ8、9はタンクケーシング側面板1eに水平方向に対向するようにして設けられるが、これら第一、第二フランジ8、9には、外部接続用パイプ7の先端部に連通するようにして第一、第二配管ブロック12、13がそれぞれ設けられている。つまり、第一配管ブロック12は、本実施の形態では矩形状をし、第一フランジ8に対向する側の面、第二配管ブロック13に対向する側の面、そしてこれ以外の面(本実施の形態では上面)にそれぞれ油路12a、12b、12cが互いに連通状に設けられ、前記第一配管ブロック12を第一フランジ8に取り付けた状態では、油路12aが第一フィルタ2の外部接続用パイプ7の先端部に連通連結するようになっている。
【0009】
一方、第二配管ブロック13には、第二フランジ9に対向する側の面、第一配管ブロック12に対向する側の面にそれぞれ油路13a、13bが互いに連通状に設けられ、前記第二配管ブロック13を第二フランジ9に取付けた状態では、油路13aが第二フィルタ3の外部接続用パイプ7の先端部に連通連結するようになっている。さらに互いに対向する油路12b、13bには、筒状の口金12d、13dがそれぞれ突出するようにして取付けられ、該口金12d、13d同士が弾性(または可撓性)を有するホース14によって連通連結されている。
【0010】
また、第一配管ブロック12の油路12cが形成される面には、第三の配管ブロック15が取付けられるが、該第三配管ブロック15には、第一配管ブロック12と対向する側の面とこれ以外の面(本実施の形態では第二配管ブロックと対向する側の面とは反対側の面)とに互いに連通するようにして油路15a、15bが形成されているが、油路15aは、第三配管ブロック15と第一配管ブロック12とを取付けることで、第一配管ブロック油路12cが連通連結するようになっている。さらに第三配管ブロック油路15bには筒状の口金15cが突出するようにして設けられ、該口金15cに前記戻り油配管10が連通連結されており、このように形成することでタンクケーシング1外で分岐形成された分岐配管Aが構成され、前記タンクケーシング1に内装の第一、第二フィルタ2、3同士は、戻り油配管10に対して前記タンクケーシング1外で分岐された分岐配管Aを介して連通連結されることになって、第一、第二フィルタ2、3に対してそれぞれ戻り油の分岐供給がなされるようになっている。
【0011】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、タンクケーシング1には、一対(複数)のカプセル型の第一、第二フィルタ2、3が内装されているが、該第一、第二フィルタ2、3に戻り油を分岐してそれぞれに供給するための分岐配管Aが、タンクケーシング1内ではなく、タンクケーシング1外に設けられているため、タンクケーシング1内に複雑な分岐配管を設ける必要がなく、この結果、分岐配管Aの組み付けがタンク外でできることになって簡単になるばかりでなく、分岐配管Aが外付けになった分、タンクケーシング1の作動油容量を多くすることができる。
【0012】
そのうえ、容量の異なる作動油タンクに対しては、前記外部接続される分岐配管Aを用いて接続されるカプセル型フィルタ2、3の数を増減することで自在に対応できるので、部品の共通化が図れることになる。
また分岐配管Aは、弾性を有するホース14を介して連通連結されているため、タンクケーシング1やカプセル型フィルタ2、3、各種配管や配管ブロック等の各種構成部材の製作公差や取付け誤差を容易に吸収できることになって製作作業性と取付け作業性の向上が図れる。
しかも分岐配管Aは、タンクケーシング1の外面に組み付けられることになるため、該タンクケーシング外面を有効に利用しての組み付けができて好都合である。
【0013】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、タンクケーシングに内装されるカプセル型フィルタの数としては2個に限らず、3個以上、必要において適数個とすることができることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】タンクケーシングの斜視図である。
【図2】タンクケーシングの正面図である。
【図3】タンクケーシングの一部断面側面図である。
【図4】タンクケーシングの部分拡大断面側面図である。
【図5】分岐配管の斜視図である。
【符号の説明】
【0015】
1 タンクケーシング
2 第一フィルタ
2a フィルタケーシング(本発明のカプセル型フィルタ)
3 第二フィルタ
3a フィルタケーシング(本発明のカプセル型フィルタ)
4 カプセルエレメント
7 外部接続用パイプ
10 戻り油配管
12 第一配管ブロック
13 第二配管ブロック
14 ホース
15 第三配管ブロック
A 分岐配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセルエレメントがフィルタケーシングに挿脱自在に内装され、戻り油配管から供給される戻り油を濾過するためのカプセル型フィルタの複数を作動油タンクのタンクケーシングに内装するにあたり、前記戻り油配管から供給される戻り油を各カプセル型フィルタにそれぞれ供給するための分岐配管を、タンクケーシング外に設けたことを特徴とするカプセル型フィルタの配管構造。
【請求項2】
請求項1において、前記分岐配管は、各カプセル型フィルタから突出する外部接続用パイプにそれぞれ連通連結され、かつタンクケーシングの外部に突出するようにして設けられる各配管ブロックと、これら配管ブロック同士を連通連結する弾性ホースとを備えていることを特徴とするカプセル型フィルタの配管構造。
【請求項3】
請求項1または2において、前記分岐配管は、タンクケーシングの外面に組み付けられていることを特徴とするカプセル型フィルタの配管構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−226315(P2006−226315A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37608(P2005−37608)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】