説明

カプセル型医療機器回収システム

【課題】被検者の行動範囲を特定の回収機能付きトイレの近傍に制約することなく、被検者からカプセル内視鏡を回収する。
【解決手段】被検者10に携帯される携帯電話15と、被検者10内を通過して被検者10の体内情報を収集するカプセル内視鏡11と、被検者10から排出されたカプセル内視鏡11を回収する回収装置C1、C2、…CNと、被検者10内におけるカプセル内視鏡11の位置を検出する位置検出装置12と、位置検出装置12により検出された位置の情報に基づいて、カプセル内視鏡11が被検者10の外部に排出されるまでの排出予想時間を推定し、携帯電話15に、推定された排出予想時間および被検者10を回収装置C1、C2、…CNのいずれかへ誘導するための誘導情報を提供する管理サーバー16とを備えたカプセル内視鏡回収システム1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の体内検査等に用いられ、体外に排出されるカプセル型医療機器を回収するためのカプセル型医療機器回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小型カメラを内蔵したカプセル状の内視鏡(カプセル内視鏡)が知られている。口から飲み込んだカプセルが消化管を通過しながらその内部を撮影し、肛門から排出される。カプセルにはCMOSやCCDで構成されたカメラ及び無線装置を内蔵する。被検者が内服したカプセル内視鏡は、蠕動運動によって消化管内を運ばれ、前進しながら非侵襲的に消化管内を撮影し、画像データを体外に送信する。画像データの受信は、被検者が装着するベストに内蔵された受信機で行う。このようなカプセル内視鏡による検査では、被検者は、カプセル内視鏡を飲み込んだ後排出されるまでの間であっても、不自由を被ることなく自由に行動が可能である利点がある。
【0003】
近年では、たとえば体液を抽出したり、臓器内のペーハー(pH)を検出したりするカプセル内視鏡も考案されている。このようなカプセル内視鏡では、検出した体内情報を検出するために、検査が終了し被検体の外部に排出されるカプセル内視鏡を回収する必要がある。
【0004】
特許文献1では、被検体内の直腸付近に近接して固定される体外装置が提案されており、この体外装置は、カプセル内視鏡が大腸に達しているか否かを判別し、達している場合には、その体外装置に備えるスピーカーやLEDなどから音声や光を出力して、次回の排便時にカプセル内視鏡が排泄される可能性が高いことを被検体に知らせる。この知らせを受けた被検体は、特許文献2に記載されているような、カプセル内視鏡回収機能付きトイレなどで次回の排便を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−329749号公報
【特許文献2】特開2008−22969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、回収機能付きトイレは病院など限られた場所にしか設置されていないのが現状であり、被検者は、上記カプセル内視鏡が大腸に達している旨の知らせを待っている間も、その知らせを受けたら回収機能付きトイレにすぐにアクセスできるように、回収機能付きトイレの付近で待機しなければならないため、行動範囲が制約されてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、被検体の行動範囲を特定の回収機能付きトイレの近傍に制約することなく、被検体からカプセル内視鏡を回収することができるカプセル内視鏡回収システムを提供することを目的とするものである。
【0008】
また本発明は、さらに広く、この技術を応用できる種々のカプセル型医療機器を回収する際に、被検体の行動範囲を特定の回収機能付きトイレの近傍に制約することなく、被検体からカプセル型医療機器を回収することができるカプセル型医療機器回収システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカプセル型医療機器回収システムは、被検体に携帯される携帯端末と、被検体内を通過して被検体の体内情報を収集するカプセル型医療機器と、被検体から排出されたカプセル型医療機器を回収する回収装置と、被検体内におけるカプセル型医療機器の体内位置を検出する体内位置検出装置と、体内位置検出装置により検出された体内位置の情報に基づいて、カプセル型医療機器が被検体の外部に排出されるまでの排出予想時間を推定し、携帯端末に、推定された排出予想時間および被検体を回収装置へ誘導するための誘導情報を提供する情報提供装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
ここで誘導情報とは、例えば回収装置の位置情報、回収装置までの経路情報など、被検体を回収装置へ誘導するための情報を広く意味するものである。
【0011】
上記装置においては、体内位置検出装置または携帯端末が、被検体の現在地を検出する機能をさらに備えたものであり、情報提供装置が、検出された現在地から回収装置までの経路情報を誘導情報として提供するものであってもよい。
【0012】
また、情報提供装置は、回収装置が複数ある場合に、現在地から回収装置まで移動するのに要する所要時間が短い回収装置への誘導情報を優先させて提供するものであってもよい。
【0013】
また、情報提供装置は、回収装置が複数ある場合に、現在地から回収装置までの道のり距離が短い回収装置への誘導情報を優先させて提供するものであってもよい。
【0014】
また、回収装置は、人感センサを備えたものであり、情報提供装置が、前記人感センサによる人間の所在が検出されていない回収装置への誘導情報を人感センサによる人間の所在が検出されている回収装置への誘導情報に優先させて提供するものであってもよい。
【0015】
ここで回収装置とは、便器を含む概念であり、被検体が便器において排泄した排泄物からカプセル型医療機器を回収するものである。
【0016】
また、回収装置が人感センサを備えたというのは、便器のところに人がいるかどうかを検知するセンサを備えたことを意味する。
【0017】
また、情報提供装置は、被検体内におけるカプセル型医療機器の体内位置と該体内位置の単位時間当たりの変化量を用いて排出予想時間を推定するものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のカプセル型医療機器回収システムによれば、被検体に携帯される携帯端末と、被検体内を通過して被検体の体内情報を収集するカプセル型医療機器と、被検体から排出されたカプセル型医療機器を回収する回収装置と、被検体内におけるカプセル型医療機器の体内位置を検出する体内位置検出装置と、体内位置検出装置により検出された体内位置の情報に基づいて、カプセル型医療機器が被検体の外部に排出されるまでの排出予想時間を推定し、携帯端末に、推定された排出予想時間および被検体を回収装置へ誘導するための誘導情報を提供する情報提供装置とを備えているので、被検体は、その携帯端末に提供された情報を用いて、自分の位置や予定などに合った回収装置に容易にアクセスできる。これにより、被検体の行動範囲を特定の回収装置の近傍に制約することなく、被検体からカプセル型医療機器を回収することができる。
【0019】
上記装置において、体内位置検出装置または携帯端末が、被検体の現在地を検出する機能をさらに備えたものであり、情報提供装置が、検出された現在地から回収装置までの経路情報を誘導情報として提供するものであれば、被検体は、その提供された経路情報を基に、所望の回収装置に容易にたどり着くことができる。
【0020】
また、情報提供装置が、被検体内におけるカプセル型医療機器の体内位置と該体内位置の単位時間当たりの変化量を用いて排出予想時間を推定するものであれば、カプセル型医療機器が被検体の外部に排出されるまでの排出予想時間をより正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のカプセル型医療機器回収システムの一実施形態を示す概略構成図
【図2】図1のカプセル回収装置の一構成例を示す図
【図3】収納ネットの拡開縮小構造を説明するための図
【図4】洗浄ノズルの回転機構を説明するための図
【図5】図2のカプセル回収装置の上面図
【図6】洗浄ノズルの他の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明によるカプセル内視鏡回収システムの一実施の形態について説明する。
【0023】
図1に示すように、カプセル内視鏡回収システム1は、被検者10の口部から人体内に嚥下されて肛門から排出されるカプセル内視鏡11と、被検者10がベルトなどに取り付けて携帯する体外ユニット12(体内位置検出装置)と、被検者10が携帯する携帯電話15(携帯端末)と、被検者が排泄した排泄物からカプセル内視鏡を回収するカプセル回収装置C1、C2、…CNと、各カプセル回収装置C1、C2、…CNや携帯電話15、体外ユニット12などと通信可能な状態で接続され、カプセル内視鏡の回収処理を管理する管理サーバー16(情報提供装置)などを備えている。
【0024】
カプセル内視鏡11は、人体内管路を通過する際に管路の内壁面を撮像して画像データを無線送信したり、体液を抽出したり、臓器内のペーハー(pH)を検出したりして、その被検体の体内情報や体内物質を収集する。
【0025】
体外ユニット12は、被検者10が身に付けたアンテナユニット13内に設けられた複数のアンテナ14を介して、カプセル内視鏡11からそのカプセル内視鏡11を特定する識別情報(たとえば、カプセル内視鏡の型番)や被検者10の体内を撮影した画像データなどを受信し、これをメモリに記憶する。アンテナ14には、カプセル内視鏡11からの電波の電界強度を測定するセンサが内蔵されており、電界強度の測定結果を体外ユニット12に出力する。
【0026】
体外ユニット12は、アンテナ14から入力される電波の電界強度の測定結果を元に、被検者10内におけるカプセル内視鏡11の体内位置を検出する。具体的には、複数のアンテナ14による電波の電界強度分布と、被検者10内のカプセル内視鏡11の体内位置とを対応させたデータを予め記憶しておき、これを参考にして体内位置の特定を行う。この検出結果(以下、体内位置情報という。)は管理サーバー16に出力される。
【0027】
携帯電話15は、管理サーバー16から提供される各種情報を表示画面上に表示する表示手段と、人工衛星から位置測定用のGPS信号を受信して、被検者の現在地を検出する現在地検出手段などを備えている。この被検者の現在地を検出した結果(以下、現在地情報という。)は管理サーバー16に出力される。
【0028】
カプセル回収装置C1、C2、…CNは、それぞれ例えば特開2008−22969号公報に記載されているような、被検者が便器において排泄した排泄物からカプセル内視鏡を回収する機能を有するトイレである。カプセル内視鏡を口から飲み込んだ被検者がこのカプセル回収装置C1、C2、…CNのいずれかにおいてカプセル内視鏡を含む排泄物を排泄すると、その排泄物からカプセル内視鏡が自動回収される。
【0029】
各カプセル回収装置C1、C2、…CNには、その便器のところに人がいるかどうかを検知する人感センサが設けられており、この人感センサによる検知結果(以下、混雑状況情報という。)は管理サーバー16に出力される。なお、人感センサとしては、赤外線センサ、重量センサなどが用いられる。
【0030】
管理サーバー16は、カプセル内視鏡の回収処理を管理するものであって、送受信部17、排出予想時間推定部18、誘導情報生成部19、データベースDBなどを有している。
【0031】
送受信部17は、体外ユニット12、携帯電話15、およびカプセル回収装置C1、C2、…CNとの間で各種情報の送受信を行う。具体的には、体外ユニット12からは体内位置情報を受信し、携帯電話15からは被検者の現在地情報を受信し、各カプセル回収装置C1、C2、…CNからは混雑状況情報やそのカプセル回収装置において回収処理がなされたカプセル内視鏡11の識別情報などを受信する。なお、体外ユニット12と携帯電話15で通信し、体外ユニット12の情報を携帯電話15経由で管理サーバー16に伝送するようにしてもよい。
【0032】
また、被検者に投与されたカプセル内視鏡が全て回収されるまで、その被検者に投与されたカプセル内視鏡に関し、排出予想時間推定部18において推定された排出予想時間、および経路情報生成部19において生成された誘導情報などをその被検者の携帯電話15に送信する。
【0033】
排出予想時間推定部18は、体外ユニット12から受信した体内位置情報に基づいて、カプセル内視鏡が被検者の外部に排出されるまでの排出予想時間を推定するものであり、具体的には、被検者10内のカプセル内視鏡11の体内位置と、カプセル内視鏡が排出されるまでの平均時間とを対応させたデータを予め記憶しておき、これを参考にして排出予想時間の推定を行う。なお、被検者10内におけるカプセル内視鏡の体内位置に加え、その体内位置の単位時間当たりの変化量(カプセル内視鏡の移動速度)をさらに用いて排出予想時間の推定を行うようにすることがより好ましい。これにより、カプセル内視鏡が被検者の外部に排出されるまでの排出予想時間をより正確に推定することができる。
【0034】
誘導情報生成部19は、携帯電話15から受信した被検者10の現在地情報と、データベースDBに記憶されている地図データや各カプセル回収装置C1、C2、…CNの位置情報などを用いて、被検者を回収機能付きトイレへ誘導するための誘導情報を生成する。たとえば、被検者10の現在地から、カプセル回収装置C1、C2、…CNのうち最短時間でたどり着くことができる、あるいは道のり距離が最も短い回収機能付きトイレまでの移動経路を探索し、その経路情報を誘導情報として生成する。このように生成された誘導情報は、送受信部17により携帯電話15に提供される。
【0035】
なお、誘導情報生成部19は、移動経路の探索条件として、少なくとも最短経路、指定時間経路、徒歩優先、各種交通機関別優先の条件を有し、該条件の指定に応じて1以上の移動経路を探索することができる。被検者10は、携帯電話15において探索条件や案内形態を指定することにより、歩行速度や能力に応じた移動経路の探索、案内を要求したり、複数の回収機能付きトイレまでの移動経路や、目的地までの複数の移動経路の情報を要求したりすることができる。
【0036】
また、誘導情報生成部19は、各カプセル回収装置C1、C2、…CNから受信した混雑状況情報に基づき、空いている回収機能付きトイレ(人感センサによる人間の所在が検出されていない回収機能付きトイレ)を混雑している回収機能付きトイレ(人感センサによる人間の所在が検出されている回収機能付きトイレ)に優先させた条件で移動経路を探索し、その経路情報を誘導情報として生成することもできる。これにより、例えば、最短時間でたどり着くことができる回収機能付きトイレが混雑していて、待ち時間が長くなるような場合には、その回収機能付きトイレよりは若干遠くても空いている回収機能付きトイレへ被検者10を誘導することにより、最短時間でたどり着くことができる回収機能付きトイレへ被検者10を誘導した場合よりもカプセル内視鏡を早く回収できる場合がある。
【0037】
上記の構成により、カプセル内視鏡を回収する際に、被検者10は、その携帯電話15に提供された排出予想時間および回収機能付きトイレへの誘導情報を用いて、自分の位置や予定などに合った回収装置に容易にアクセスできる。これにより、被検体の行動範囲を特定の回収機能付きトイレの近傍に制約することなく、被検体からカプセル内視鏡を回収することができる。
【0038】
なお、上記実施の形態では、携帯電話15に被検体の現在地を検出する機能を備え、その検出結果を管理サーバー16に出力するようにした場合について説明したが、体外ユニット12に被検体の現在地を検出する機能を備え、その検出した被検者の現在地情報を体外ユニット12から管理サーバー16に出力するようにしてもよい。
【0039】
また、カプセル回収装置C1、C2、…CNとしては、特開2008−22969号公報に記載されているような、便器に排泄された排泄物が流される排水路の途中に流路切換弁を設け、カプセルを検知したときには、排泄物をそのまま下水に流し、カプセルを検知しないときには、一旦カプセル回収用排水路に流してカプセル回収用のボックスに導いた後に下水に流すよう、流路を切り替える回収装置を用いてもよいが、例えば図2に示すような、カプセル内視鏡を通さない大きさの開口が複数設けられた、排泄物を受けてカプセル内視鏡を捕捉する捕捉手段と、洗浄水を噴出する噴出口を有し、被検体の肛門および捕捉手段に向けて選択的に洗浄水を噴出する洗浄手段とを備えたカプセル回収装置を用いるようにすれば、別途カプセル回収専用の洗浄手段を設けることなく、水洗便器において従来から広く使用されている肛門洗浄用の洗浄手段を用いてカプセル型医療機器の洗浄作業を行うことができ、回収装置の小型化・低コスト化を図ることができる。
【0040】
以下、図2に示すカプセル回収装置Ci(i=1、2、…N)の構成について詳細に説明する。カプセル回収装置Ciは、被検者10が排泄した排泄物からカプセル内視鏡を回収する機能を有する洋式水洗便器であり、便器20、便座21、蓋22などを備えている。また、便座21には、制御ユニット30、洗浄機構40、回収機構50、吸引機構60などが取り付けられている。
【0041】
制御ユニット30は、管理サーバー16との間で情報の送受信を行う送受信部31と、回収装置Ciのところに利用者がいるかどうかを検知する人感センサ33と、その利用者が回収装置Ciにおいて排泄物を排泄する前にカプセル内視鏡の所在を検知するカプセル検知手段32とを備える。
【0042】
人感センサ33は、赤外線センサ、重量センサなどから構成され、その検知結果(混雑状況情報)は、送受信部31により管理サーバー16に出力される。
【0043】
カプセル検知手段32は、被検者10がカプセル内視鏡11を含む排泄物を排泄する前にそのカプセル内視鏡11の体内位置を検知し、その体内位置情報に基づいて今回の排便時にカプセルが排出される可能性を推定するものである。たとえば、体外ユニット12との通信により体外ユニット12が導出した体内位置情報を取得する方法、体外ユニット12が導出した体内位置情報を体外ユニット12の識別情報とともに管理サーバー16に所定時間毎に伝送し、カプセル検知手段32が体外ユニット12に備えるRFIDタグから識別情報を読取り、該当する被検者10におけるカプセルの体内位置情報を管理サーバー16から取得する方法、または直腸およびその近傍の大腸の位置において所定以上のカプセルからの電波強度を検知する方法等によりカプセル内視鏡11の体内位置を検知する。
【0044】
排出可能性の判定方法として、1回あたりの排泄物の体内位置に関するデータ(肛門または直腸までの管路内通過距離)を被検者特性(性別、年齢、身長等)の分類に応じて管理サーバー16側でデータベース化しておき、排出可能性の有無を判定する閾値を設定するものとする。また、この閾値情報をカプセル検知手段32に設定しておく。被検者特性に応じて閾値が異なる場合は、体外ユニット12または管理サーバー16から該当する被検者の特性情報もカプセル検知手段32に伝送するようにする。
【0045】
あるいは、カプセル検知手段32側で判定せずに、体外ユニット12または管理サーバー16にて排出可能性を導出し、その排出可能性情報を通信によりカプセル検知手段32側で取得することでもよい。
【0046】
上記各方法により、カプセル検知手段32において、今回の排便により排出可能性が有りと判定した場合、カプセル検知手段32からの回収指示信号が洗浄機構40、回収機構50、および吸引機構60に通知され、カプセル内視鏡の回収モードが自動セットされる。
【0047】
洗浄機構40は、先端に洗浄水を噴出する噴出口hを有する洗浄ノズル41(洗浄手段)と、洗浄ノズル41を収容するための洗浄ノズル収容部42と、洗浄ノズル41を洗浄水を噴出しない待機位置(洗浄ノズル収容部42に収容された位置)と洗浄水を噴出する洗浄位置との間で進退させるとともに、噴水口hを人体の肛門または収納ネット51に向けさせるよう、洗浄ノズルの先端部41aを回転させる洗浄ノズル駆動手段43(第2の進退制御手段)と、後述する測定手段54における測定結果に基づき、洗浄ノズルによる洗浄水の噴出を制御する洗浄制御手段44などを備える。
【0048】
回収機構50は、排泄物を受けてカプセル型医療機器を捕捉する収納ネット51(捕捉手段)と、待機時に収納ネット51を収容するための収納ネット収容部52と、収納ネット51を排泄物を受けない待機位置(収納ネット収容部52に収容された位置)と排泄物を受ける捕捉位置との間で進退させる進退制御手段53(第1の進退制御手段)と、収納ネット51により捕捉された物の重量を測定する測定手段54と、収納ネット51に向けて温風を噴出する不図示の乾燥手段とを備える。
【0049】
収納ネット51は、楕円形の枠に格子状の網が椀状の曲面で張設してなる。また、この網目の大きさは、カプセル型医療機器を通さない範囲において、できるだけ大きい方がよい。また、収納ネット51は、拡開縮小可能な形状記憶材料で形成されており、排泄物を受ける時には、捕捉位置において、図3の上図のような拡開した状態となり、待機時には、図3の下図のように、筒状の収納ネット収容部52内に後退し、その収納ネット収容部52の形状に沿って縮小した状態で収容される。なお、収納ネット51により排泄物を受ける時には、不図示の電気エネルギ供給手段により収納ネット51に電気エネルギを供給して、形状記憶材料からなる収納ネット51を形状回復温度に加熱し、収納ネット51を拡開させる。
【0050】
吸引機構60は、収納ネット51に保持されたカプセル内視鏡11を吸引して収納容器65に収納するものであり、吸引ノズル61と、待機時に吸引ノズル61を収容するための吸引ノズル収容部62と、吸引ノズル61を待機位置(吸引ノズル収容部62に収容された位置)とカプセル内視鏡を吸引する吸引位置との間で進退させる進退制御手段63と、吸引ノズル61より収納容器65にカプセル内視鏡11吸引する吸引ポンプ64と、吸引されたカプセル内視鏡11が収納される収納容器65とを備える。
【0051】
上記構成により、カプセル検知手段32から、カプセル内視鏡の回収指示信号が通知されると、人感センサ33により被検者が便座に座ったことを確認次第、進退制御手段53がモータを作動させて収納ネット51を待機位置から排泄物を受ける捕捉位置に前進させる。ここで、収納ネットが完全に開くタイミング以前に、被検者が便座に座ったことを検知した場合は、例えば“お待ちください”等の排便を待機させるための音声メッセージを、収納ネットが完全に開いた後は、排便を促す音声メッセージを、カプセル検知手段から発信することが望ましい。
【0052】
被検者による排便の後に、回収装置Ciに備える図示しない操作パネルで肛門洗浄用のスイッチが押し操作されると、駆動手段43が洗浄ノズル41を洗浄ノズル収容部42に格納されていた状態から被検体の肛門に向けて洗浄水を噴出する洗浄位置に前進させ、洗浄制御手段44が洗浄ノズルに洗浄水を噴出させ、肛門を洗浄する。
【0053】
その後、被検者が便座から立った時(人感センサで検知)、あるいは、便座のフタを閉めた時(開閉検知センサがあると前提)、自動での収納ネット洗浄モードとなる。なお、カプセル収納処理中には水を流さないように水洗スイッチにロックを掛ける、あるいは、“終了まで流さないでください”と音声ガイダンスを出すことが望ましい。
【0054】
上記収納ネット洗浄モードでは、図4に示すような、洗浄ノズル41に設けられている回転機構Rにより、洗浄ノズル41の先端部41aを回転させ、噴水口hを収納ネット51に向けさせる。次いで、洗浄制御手段44は、測定手段54において測定された重量に基づき、収納ネット51に捕捉されたカプセル内視鏡11以外の物の重量が所定の値以下になるまで洗浄ノズル41に洗浄水を噴出させ、収納ネット51に捕捉されたカプセル内視鏡11を洗浄する。ここで、収納ネット51に捕捉されたカプセル内視鏡11以外の物の重量は、測定手段54において測定された重量の全体から、既知であるカプセル内視鏡11の重量を引いたものをいう。このとき、収納ネットが水に濡れた状態での初期重量は設計値として保持しており、この初期重量をキャンセルした上で、収納ネット内の物体のみの重量を計測できることはいうまでもない。
【0055】
なお、カプセル内視鏡11の重量は、カプセル回収装置Ciまたは管理サーバー16においてカプセル内視鏡の機種(タイプ)毎にその重量を予め記憶しておき、体外ユニット12との通信により取得したカプセル内視鏡11の識別情報に基づいてそのカプセル内視鏡の機種を判定することにより取得できる。
【0056】
ここで、被検者が複数タイプのカプセルで検査している場合を想定する。各カプセルの発信情報にはカプセル識別情報を含ませるようにし、体外ユニット12が排便前後における電波強度の変化から排出されたカプセルの識別情報を取得し、それをカプセル検知手段32に伝送するようにすれば、収納ネット51内に存在するカプセルのタイプおよび個数を把握することができる。または、管理サーバー16経由で伝送するようにしてもよい。あるいは、カプセル検知手段32が直接に収納ネット方向に存在するカプセルの発信情報を受信し、カプセルのタイプおよび個数を把握するようにしてもよい。
【0057】
次いで、洗浄機構40によるカプセル内視鏡11の洗浄が終了すると、洗浄ノズル駆動手段43は、洗浄ノズル41を収容部42内に後退させ、収容状態とする。また、乾燥手段が収納ネット51に向けて温風を噴出して乾燥させる。乾燥処理が終了すると、進退制御手段63が、図5に示すように、モータを作動させて吸引ノズル61を待機位置から吸引位置に前進させ、吸引ポンプ64による吸引力でカプセル内視鏡11を吸引し、収納容器65に収納する。なお、図5は図2のカプセル回収装置の上面図である。吸引機構60によりカプセル内視鏡11が吸引されると、収納ネット51は収納ネット収容部52内に、吸引ノズル61は吸引ノズル収容部62内に後退され、収容状態となる。
【0058】
なお、収納容器65に収納されたカプセル内視鏡11の識別情報は、送受信部31により管理サーバー16に出力される。ここで、確実に収納したことを確認できるように、収納容器内65にカプセルからの信号を認識する受信部を設置してもよい。この受信信号はカプセル検知手段32経由で管理サーバー16に出力される。
【0059】
最後に、カプセルが全て回収されたことを確認した後、排泄物を水洗する。これは、自動で水洗スイッチを作動させる方式でもよいし、被検者に“水洗OKです。”と音声で促す処理でもよい。このとき、カプセル回収処理中は、水洗スイッチをロックすることが望ましい。
【0060】
なお、ここでは、カプセル回収処理後に、水洗処理を行う手順としたが、これに限定されるものではなく、収納ネットを広げた状態で回収前に一旦水洗処理を行い、カプセル回収処理後に、再度水洗処理を行うようにしてもよい。
【0061】
また、洗浄ノズル41に設けられた回転機構Rにより、単一の噴水口hを人体の肛門または収納ネット51に向けさせるよう、洗浄ノズル41の先端部41aを回転させるようにした場合について説明したが、図6に示すように、洗浄ノズル41Aに、人体の肛門に向けて洗浄水を噴出させるための水路W1および噴水口h1と、収納ネット51に向けて洗浄水を噴出するための水路W2および噴水口h2とを設け、外部から洗浄水が供給される水路W0と各水路W1、W2との連結部に設けられ切替制御部44Aにより、流路を切替制御することにより、人体の肛門および収納ネット51に向けて選択的に洗浄水を噴出するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 カプセル内視鏡回収システム
11 カプセル内視鏡
12 体外ユニット(体内位置検出装置)
15 携帯電話(携帯端末)
16 管理サーバー
18 排出予想時間推定部
19 誘導情報生成部
33 人感センサ
DB データベース
Ci カプセル回収装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に携帯される携帯端末と、
前記被検体内を通過して前記被検体の体内情報を収集するカプセル型医療機器と、
前記被検体から排出された前記カプセル型医療機器を回収する回収装置と、
前記被検体内における前記カプセル型医療機器の体内位置を検出する体内位置検出装置と、
前記体内位置検出装置により検出された体内位置の情報に基づいて、前記カプセル型医療機器が前記被検体の外部に排出されるまでの排出予想時間を推定し、前記携帯端末に、前記推定された排出予想時間および前記被検体を前記回収装置へ誘導するための誘導情報を提供する情報提供装置と
を備えたことを特徴とするカプセル型医療機器回収システム。
【請求項2】
前記体内位置検出装置または前記携帯端末が、前記被検体の現在地を検出する機能をさらに備えたものであり、
前記情報提供装置が、前記検出された現在地から前記回収装置までの経路情報を前記誘導情報として提供するものであることを特徴とする請求項1記載のカプセル型医療機器回収システム。
【請求項3】
前記情報提供装置が、前記回収装置が複数ある場合に、前記現在地から前記回収装置まで移動するのに要する所要時間が短い回収装置への誘導情報を優先させて提供するものであることを特徴とする請求項2記載のカプセル型医療機器回収システム。
【請求項4】
前記情報提供装置が、前記回収装置が複数ある場合に、前記現在地から前記回収装置までの道のり距離が短い回収装置への誘導情報を優先させて提供するものであることを特徴とする請求項2記載のカプセル型医療機器回収システム。
【請求項5】
前記回収装置が、人感センサを備えたものであり、
前記情報提供装置が、前記人感センサによる人間の所在が検出されていない回収装置への誘導情報を前記人感センサによる人間の所在が検出されている回収装置への誘導情報に優先させて提供するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のカプセル型医療機器回収システム。
【請求項6】
前記情報提供装置が、前記被検体内における前記カプセル型医療機器の体内位置と該体内位置の単位時間当たりの変化量を用いて前記排出予想時間を推定するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のカプセル型医療機器回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−246702(P2010−246702A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98739(P2009−98739)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】