説明

カプセル封入化二色ボールの製造法

【課題】本発明は、カプセル封入化二色ボールの製造方法と、これにより製造された二色ボールを提供する。
【解決手段】カプセル封入化二色ボールの製造法であって、前記製造法は、電気泳動性粒子を準備する工程と、前記粒子を、(i)誘電性流体と、(ii)効果的な量のゲル化剤と、混合する工程と、シェル材料を準備する工程と、前記粒子と誘電性流体とゲル化剤とを、前記シェル材料から成るシェル内に封入することによりカプセルを形成する工程と、前記カプセルを高めた温度に加熱する工程と、前記カプセルに界(field)を印加して前記粒子を分離する工程と、前記界を保持したまま前記カプセルを冷却して、前記カプセル内でゲル化を起こす工程と、前記界を除く工程と、を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件では、カプセル封入化二色ボール(encapsulated bichromal balls)の製造法と、これにより製造されたボールに関する。この方法は、フォトクロミック(光互変性:photochromic)ディスプレイなどのディスプレイデバイス、また“電子ペーパー(electric papaer)”などの基材(substrates)におけるこのようなボールの使用に関して特に用途を見出すものであり、特にこれについて述べるものであるが、実施の形態は他の同様の用途にも使用できる。
【背景技術】
【0002】
二色(bichromal)で回転可能なエレメント、例えば二色ボール、あるいは当該技術で時にはビーズと呼ばれるものは、ミクロンサイズのワックスビーズのように小さな球で、光学的および電気的異方性を備えている。このような特性は一般に、各半球体表面または側面が、例えば片側が黒でもう一方が白など異なる色を持ち、また、異なる電荷を持つ、すなわち正または負であることによる。発生させる電界に応じて、これらのビーズの配向が変わって異なる色(例えば黒または白)を示し、全体で可視画像を作り出す。
【0003】
このようなものでは、球形粒子は一般に、各ボールの間にわずかな隙間を空けて固体基材に埋め込まれ、基材には液体が満たされていて、ボールは電界の変化に応じて自由に回転するが他の場所へ移動することはできない。一方の半球体が黒で他方が白ならば、その位置に印加する電界によって、各ピクセルを明滅させることができる。この結果、各ピクセルを個々にアドレスして全ページ画像を作り出すことが可能である。
【0004】
例えば、小さな二色ビーズを、例えば可撓性エラストマーの薄いシートの間に挟み、エマルション中に懸濁させることによって基材中に組み込み、再使用可能な信号またはディスプレイを作ることができる。ビーズは、材料の可撓性シート内のそれぞれの窪みの中に留まっている。表面に印加した電圧の作用を受けてビーズは回転し、見る者にその一方または他方を向けて画像を作り出す。この画像は、ソフトウェアを用いて新しい電圧パターンを印加し、以前の画像を消して新しい画像を生じるまでその場に留まっている。このようにして、電子的に書き込みおよび消去可能な、再使用可能な信号またはディスプレイができる。
【0005】
従来のディスプレイデバイス、ディスプレイデバイス用部品、およびこのようなディスプレイデバイスとその部品の製造は、その内容を全て本件に引用して援用する、米国特許第5,604,027号(シェリドン)、米国特許第5,961,804号(ジェイコブソンら)、米国特許第5,930,026号(ジェイコブソンら)、米国特許第6,067,185号(アルバートら)、米国特許第5,262,098号(クロウリーら)、米国特許第5,344,594号(シェリドン)、および米国特許第5,723,204号(ステフィク)に一般的に述べられている。
【0006】
これらのディスプレイに用いられるジリコン(Gyricon)あるいは二色ボールまたはビーズは、一般にスピンディスク法で製造され、通常、広い粒度分布、すなわち約50〜約200μmの粒度分布を示す。ジリコンディスプレイの解像度はビーズの大きさに依存する。現在のディスプレイで用いられるジリコンビーズは約75〜約110ミクロン(μm)である。しかし多くの用途においては、より高い解像度と、更により低いスイッチング電圧を達成するため、より粒径の小さな二色ビーズを用いる必要がある。二色性、相補性、真球度、等、また製造収率などの良好な特性を保ちながらより小さなビーズを製造することは非常に困難であることがわかっている。
【0007】
現在のジリコンディスプレイでは、その中にジリコンビーズを分散させた膨潤したエラストマーシートを用いている。最近の研究より、油で満たしたカプセル中にジリコンビーズを封入することで、膨潤性流体を含む必要がなく、また高価なエラストマーも不要にできることがわかった。しかし、カプセル封入法でも空のカプセルが多少発生する。ディスプレイの光学的コントラストの低下を防ぐにはこれを完全に除かなければならない。これは更に製造を複雑にしてコストを押し上げる。従って、このような問題が現在知られているものより少ない、または無いような、二色ボールをカプセルに封入するための改良された方法が求められている。
【0008】
二色ボールの製造におけるゲル化(gelation/gelling)技術の使用はあまり知られていない。(特許文献1)、(特許文献2)の技術は、二色ボールを保持するためのゲル基材に関するものであるが、この研究では二色ボールを収容するゲル化した基材を用いているだけである。つまりこの記述は、二色ボール自体の実際の製造に関するものではない。(特許文献3)、(特許文献4)は、二色ボール周囲のシェル(殻:shell)の形成を述べており、ある実施の形態では、二色ボールは一つのゲル化法で作られている。しかしこれらの研究は実際の二色ボールまたはビーズの製造法に直接関わるものではない。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,604,027号明細書
【特許文献2】米国再発行特許第37,085号明細書
【特許文献3】米国特許第6,488,870号明細書
【特許文献4】米国特許第6,492,025号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、カプセル封入化二色ボールの製造方法と、これにより製造された二色ボールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書の一つの態様に従って、カプセル封入化二色ボールの製造法を提示する。この方法は、電気泳動性粒子を準備する工程と、この粒子を誘電性流体と効果的な量のゲル化剤と混合する工程とを含む。この方法はまた、粒子と誘電性流体とゲル化剤とをカプセルまたはシェル構造の中に封入する工程も含む。更にこの方法は、カプセルを高めた温度に加熱する工程と、カプセルに界(すなわち、電界、磁界、重力場など)を印加する工程とを含む。この方法はまた、界を保持したままカプセルを冷却して、カプセル内でゲル化を起こす工程も含む。更にこの方法は、電界を除いてカプセル封入化二色ボールを回収する工程を含む。
【発明の効果】
【0012】
この方法により、カプセルの内壁から離れた二色ゲルがカプセル内に作られる。この方法で生成したカプセル封入化二色ボールまたはビーズは、画像を形成する電界が印加されるとカプセル内で回転することができる。本明細書はまた、この方法で製造されたカプセル封入化二色ビーズ、および/またはこれを用いたディスプレイデバイスを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本明細書は、カプセル封入化二色ジリコンビーズ、または本件で時にはボールと呼ばれるものの、カプセルまたはシェル構造内での、移動した着色電気泳動粒子(または磁気的に分極した粒子)のゲル化による製造法に関する。カプセルまたはシェル構造内での二色ボールのゲル化は、界(すなわち、電界、磁界、重力場など)を印加しつつ加熱および冷却サイクルを行うことで起こる。冷却の間に二色ゲルはカプセルの内側より離れて、カプセル封入化二色ボールとなる。
【0014】
本発明のカプセル封入化法によって製造されたカプセルは、1種類以上の、荷電し着色した電気泳動性粒子の他に、炭化水素溶媒またはシロキサン油を少量のゲル化剤と共に含んでいる。加工パラメータを調節することで、本発明のカプセル化法は、粒径の小さな(すなわち約2〜約750μm、例えば約5〜約200μm、典型的に約10〜約120μm)カプセルを狭い粒度分布で製造することができる。
【0015】
本法はまた、空カプセルの発生数を少なくし、このためより高い収率でカプセル封入化二色ボールを製造する。
【0016】
更に本件では、電子ディスプレイデバイスに使用される、誘電性流体または油などの流体中に封入された粒子を開示する。この粒子は、各半球面に異なる色(例えば、一方の半球が白で他の半球が黒)および電荷を持つことにより、光学的および電気的異方性を備えた半球型二色ボールである。二色ボールは、印加した電界に応じてカプセル内で自由に回転する。二色ボールは、例えば次に示すような材料から成るものであって、マトリックスとしては、ポリマーまたはワックス様(wax-like)ポリエチレンなどの分極可能な材料を使用し、白色顔料は二酸化チタンであり、黒色顔料はマグネタイト(Fe)またはカーボンブラックである。二色ボールとその製造法は、その内容を全て本件に引用して援用する、米国特許第5,262,098号、米国特許第5,344,594号、および米国特許第5,604,027号に述べられている。他の実施の形態では、印加した磁界に応じてマイクロカプセル内で自由に回転するよう、二色ボールが磁気的異方性を持つように製造することができる。
【0017】
誘電性を持つどのような流体または流体混合物も、電気泳動性粒子と共にカプセルシェル内に封入される誘電性流体として使用できる。誘電性流体の例としては、部分フッ素化炭化水素、ISOPAR M または ISPOPAR L、ポリジメチルシロキサン油、植物油、等、またそれらの組み合わせが挙げられる。
【0018】
ISOPARは、エクソン(Exxon)より入手可能な、沸点範囲の狭い様々なグレードの高純度イソパラフィン(isoparaffinic)溶媒の商品名である。ISOPARはきわめて純度が高いため、低臭気、選択的溶解性、良好な酸化安定性、低導電率、および低皮膚刺激性などの好ましい性質を備えている。ISOPARの本質的に低い表面張力も、ISOPARを用いた配合物に優れた展着性を与える。他の市販のイソパラフィン溶媒、例えばオハイオ州コロンバス、アシュランド・ケミカル・インク(Ashland Chemical, Inc.,)製のAshparなども使用可能である。更に、適当な流体の例としては、その内容を全て本件に引用して援用する、米国特許第6,067,185号に記載のものが挙げられる。
【0019】
流体の示すべき性質をいくつか挙げると、電気泳動性粒子、カプセル材料、更に使用するゲル化剤との化学的適合性;低い比誘電率;高い体積抵抗;低い粘度;低い毒性;低い水溶解度;電気泳動性粒子と同じ密度および屈折率を持つ、などである。
【0020】
電気泳動性粒子は適当などのような材料から成るものでも良く、粒子の組成はその用途に応じて変わる。本件での使用に適した電気泳動性粒子の異なる種類の例は、以下に更に詳しく述べる。
【0021】
ゼラチン剤の量と種類も重要である。ゼラチン剤は、誘電性流体中で、特にカプセル封入化温度に適したものでなければならない。更にゼラチン剤の量も重要で、ゼラチン剤が多すぎると粘度が上がって混合物全体がゲル化してしまう。しかしゼラチン剤の量が少なすぎると有効な生成物ができない。望ましくは、誘電性流体または油に対するゼラチン剤の比率は約0.1〜約10重量%、例えば約0.5〜約5重量%、また約1.0〜約3.0重量%である。この範囲は、最終的には具体的な試剤と系に応じて決まる。
【0022】
多くのゲル化剤が使用できる。使用されるゲル化剤の種類は、炭化水素有機溶媒および疎水性有機またはポリマー液体用の熱可逆性ゲル化剤とすることができる。ゲル化剤は、暖めると疎水性有機またはポリマー液体に溶解し、その後冷却するとほぼ透明のゲルとなるものでなければならない。このゲルは、疎水性有機またはポリマー液体中では安定であるが、加熱すると明瞭な融点で溶解できるものである。ゲルの融点は溶媒の極性とゲル化剤の濃度に応じて決まる。望ましくは、ゲル化剤の融点は約45〜約70℃の範囲であり、ゲル化点は約20〜約40℃の範囲でなければならない。
【0023】
本明細書での使用に有効なゲル化またはゼラチン剤としては、次のように生成される、trans−4−t−ブチル−1−フェニルシクロヘキサノール(すなわち、化合物2)が挙げられる。
【化1】

【0024】
興味深いことに、アキシアルアリール基を持つジアステレオマーだけが何らかのゲル化能を示す。化合物2は非極性溶媒に対する溶解度の低い固体である。しかし暖めると固体は溶解し、その後冷却するとほぼ透明なゲルとなる。このゲルは追加の非極性溶媒が存在しても安定であるが、暖めると明瞭な“融点”で再び液体となる。この融点は溶媒の極性とゲル化剤の濃度によって決まり、極性の低い溶媒は低い濃度で非流動化し、化合物2の濃度が高いと常に融点が高くなる。
【0025】
電気泳動性粒子と炭化水素溶媒またはシロキサン油とゲル化剤とを含むカプセルの製造には、いくつかの異なる種類のカプセル化法(例えば、錯体コアセルべーション)を用いることができる。以下にこれらをより詳細に示す。
【0026】
カプセル封入化後、カプセルを高めた温度、例えば約35〜約100℃に加熱し、界、望ましくは電界を印加して二色ボールの形成を行う。これにより、着色した荷電粒子がカプセル内で片側に寄る。これ以外の、例えば、磁界、重力場などの界を印加しても良い。界を保持したままカプセルを、例えば室温まで冷やすと溶媒相がゲル化して、凝固した二色ビードが得られる。次に、界を除いてカプセル封入化二色ビーズまたはボールを回収する。
【0027】
この工程の間の加熱温度は、用いた誘電性流体とゲル化剤との混合物のゲル化温度より高くなければならない。更に、界は少なくとも電気泳動性粒子を移動させるのに十分な大きさでなければならない。
【0028】
この工程が終わると、驚くべきことに二色ゲルはカプセル壁から離れる。このため、この方法で製造した二色ボールは、スピナ(spinner)で製造したジリコン二色ボールと非常によく似た方法で、画像を形成する電界に応じてカプセル中で回転可能である。回転するものは、多くの小粒子の継続的な移動を必要とする類似の電気泳動性デバイスに比べて丈夫で寿命が長いという長所を持つ。本明細書の方法で製造したカプセル封入化二色ディスプレイは、従来の電気泳動性ディスプレイに比べ、より優れた画像安定性を示す。
【0029】
粒子移動/ゲル化工程が、二色ボール製造工程の一部として、あるいはディスプレイ製造工程の一部として行えることが注目される。
【0030】
幅広い種類の電気泳動性粒子が使用可能である。使用される粒子の種類は、必要とされるディスプレイ画像の色に応じて変わる。粒子の大きさはサブミクロンである。粒子は、荷電する、または電荷を獲得できるもの、すなわち電気泳動性を示すものでなければならない。使用される粒子は、チタニア、カーボンブラックなど(これらに限定するものではない)の顔料類または着色顔料類、ポリマー類、または顔料/ポリマー複合物を含む。
【0031】
液体トナーまたは電気泳動性ディスプレイ技術において有用な電気泳動性粒子も本発明で使用する。これらは顔料と樹脂とから成る複合粒子を含むものである。適当な樹脂の例としては、ポリエチレンおよびポリプロピレンとその共重合体、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、またそれらの組み合わせが挙げられる。適当な顔料の例としては、ルチル型チタニア、アナタース型チタニア、硫酸バリウム、酸化亜鉛、カーボンブラック、Sudan blue、Hostaperm pink、等、またそれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
ある実施の形態において、電気泳動性粒子は、顔料そのもの、着色(レーキ染色:laked)顔料、または顔料/ポリマー複合物、あるいは荷電する、または電荷を獲得できるどのような他の成分でも良い。電気泳動性粒子について通常考慮すべきことは、その光学的性質、電気的性質、および表面化学である。粒子は有機または無機化合物であり、光を吸収するもの、あるいは光を散乱するもののいずれでも良い。粒子は更に、散乱性顔料、吸収性顔料、および発光粒子を含んでも良い。粒子は、コーナーキューブのように再帰反射性であり、あるいはAC電界で励起すると発光する硫化亜鉛粒子のようにエレクトロルミネッセンス(電界発光性)であり、または光ルミネッセンスである。最後に、荷電性または荷電剤との相互作用を向上させ、あるいは分散性を高めるため、粒子に表面処理を行っても良い。
【0033】
代表的な粒子の種類の一つはチタニアである。チタニア粒子に、例えば酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素などの金属酸化物を被覆しても良い。チタニア粒子は、1層、2層、またはそれ以上の金属酸化物コーティングの層を持つものでも良い。例えば、酸化アルミニウムのコーティングと酸化ケイ素のコーティングとを備えたチタニア粒子である。コーティングはどの順で粒子に加えても良い。
【0034】
電気泳動性粒子は一般に、顔料、ポリマー、レーキ染色顔料、または上記のもののいくつかを組み合わせたものである。純顔料はどのような顔料でも良く、また一般に明色の粒子には、例えば、ルチル(チタニア)、アナタース(チタニア)、硫酸バリウム、カオリン、または酸化亜鉛などの顔料が有用である。代表的な粒子の一部は、高屈折率、高散乱係数、および低吸収係数を持つ。他の粒子は、塗料やインキに使われるカーボンブラックまたは着色顔料などの吸収性のものである。顔料は更に、懸濁に用いる流体に不溶でなければならない。diarylide yellow、hansa yellow、およびbenzidin yellowなどの黄色顔料類も、同様のディスプレイ類に使用できることがわかっている。明色の粒子には、金属粒子などの非顔料材料を含むその他の反射性材料がいずれも使用できる。
【0035】
染色型の暗色粒子は、カーボンブラックなどの光吸収材料または無機性の黒色材料のいずれかで構成されている。暗色材料は、選択的に吸収するものでも良い。例えば、暗緑色顔料を用いる。黒色粒子は、ラテックスを金属酸化物で着色して作ったものでも良い。このようなラテックス共重合体は、ブタジエン、スチレン、イソプレン、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、塩化ビニル、アクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、酢酸ビニル、クロロスチレン、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリル酸イソシアノエチル、メタクリル酸イソシアナトエチル、およびN−(イソブトキシメタクリルアミド)、N−(イソブトキシメチル)アクリルアミドのいずれかから成り、また必要に応じて、ジアクリラート、トリアクリラート、ジメチルアクリラート、ジメタクリラート、およびトリメタクリラートなどの共役ジエン化合物を含む。黒色粒子は分散重合法でも製造できる。
【0036】
顔料類とポリマー類とを含む系の中では、顔料類とポリマー類は、電気泳動性粒子の中に多数の領域を形成し、またはより小さな顔料/ポリマー結合粒子の集合体である。あるいは、中央の顔料コアをポリマーシェルが覆っている。顔料、ポリマー、またはその両方は染料を含むことができる。粒子の光学的目標は、光を散乱するもの、光を吸収するもの、またはその両者である。有用な大きさの範囲は、取り巻くカプセルより粒子が小さい限り、1nmから約100μmまでである。電気泳動性粒子の密度は、懸濁する(すなわち、電気泳動性)流体のそれとほぼ釣り合うものである。本件では、懸濁流体と粒子の密度の差が約0〜約2g/mlならば、それぞれは“ほぼ釣り合う”密度を持つと定義する。この差は、望ましくは約0〜約0.5g/mlである。
【0037】
顔料−ポリマー複合物は、物理的処理(例えば、アトリションまたはボールミル)、化学的処理(例えば、マイクロカプセル封入化または分散重合)、あるいは当該技術で公知のその他の粒子製造法のいずれかで生成される。以下の非制限的な例からは、粒子の製造とその荷電の両方に用いられる方法と材料は、一般に液体トナーまたは液浸現像の技術に由来することがわかる。液体現像に関して知られる全ての方法は特に(これに限定するものではないが)関連している。
【0038】
新しく有用な電気泳動性粒子が開発されつつあるが、電気泳動性ディスプレイおよび液体トナーの技術において当業者に既に知られている多くの粒子も有用であることが立証可能である。一般に、液体トナーおよびカプセル封入化電気泳動性インキに使用されるポリマーに必要な要件は同じであって、物理的、化学的、または物理化学的処理のいずれかにより、顔料または染料がその中に容易に混じり合い、コロイドの安定化を助け、また荷電部位を含み、あるいは荷電部位を持つ材料を組み入れることのできるものでなければならない。液体トナー技術においては一般に必要とされるが、カプセル封入化電気泳動性インキには必要でない要件は、トナーは画像を“定着”、すなわち、トナー粒子を置いた後に互いに熱定着させて均一な塗膜を作ることが可能なものでなければならないということである。
【0039】
電気泳動性粒子は、フェライト、ニッケル、コバルト、鉄、またはそれらの様々な酸化物、例えばマグネタイトなど(但し、これらに限定するものではない)の微粉磁性材料のコロイド状分散物を、適当なポリマー性バインダ中に加えたものでも良い。これらの粒子は、磁界の印加に応じて流体中を移動することができる。
【0040】
いくつかの公知の方法(例えば、真空蒸着、凝縮、および化学的沈殿または化合)により非常に小さい粒径のものが得られるが、磁性鉄粒子のコロイド懸濁物を得るには、粉砕が簡単で十分な方法であることがわかっている。粉砕の進行に伴う微小粒子の凝集または融合を防ぐための粉砕剤の存在下で、ボールミル中で市販の粉末化マグネタイト(粒径約30μm)を粉砕し、分散を行う。一般に、粉砕助剤は2〜10重量%の金属粒子を含み、粉砕処理は、コロイド溶液が0.5〜10重量%の懸濁した磁性粒子を含むようになるまで行う。より詳細については、本件に引用して援用する、米国特許第3,215,572号を参照のこと。
【0041】
使用する粒子の種類は、所望する画像の色に応じて決まる。これらの粒子は一般にサブミクロンの大きさである。これは非常に良く光を散乱する(チタニアなど)が、一方他の粒子は吸収性が高い(カーボンブラックなど)。この粒子は、特定の電荷制御剤と混合した場合に、所望の極性と大きさに荷電する、または電荷を獲得できるものでなければならない。顔料は効果的にポリマー性樹脂材料を分散させるものである。
【0042】
電荷制御剤は、電気泳動性粒子に荷電性を与え、および/または荷電性を高めて良好な電気泳動度とするために必要に応じて使用する。本発明に適した電荷制御剤としては、ナフテン酸鉄およびオクチル酸ジルコニウム、レシチン、バリウム=ペトロナート(petronate)、等が挙げられるがこれらに限定するものではない。
【0043】
カプセル封入化工程は、望ましくは錯体コアセルべーション(complex coacervation)で行う。錯体コアセルべーションを用いる場合、カチオンおよびアニオン材料を用いてカプセル材料を作る。カチオン材料とアニオン材料は、反対極性に荷電した高分子電解質であって、これらを混合すると対水溶解度の低い高分子電解質錯体を形成してコアセルべーションを起こし、それぞれの液滴の周囲に保護性のマイクロカプセル封入化シェルを形成する。カチオン材料およびアニオン材料に適した高分子電解質としては、例えば、ポリリン酸類(例えば、ポリリン酸化炭水化物)、およびポリカルボキシラート類(例えば、ポリアクリラート類およびポリメタクリラート類)が挙げられ、これらは、ポリ−N−エチル−4−ビニルピリジン、またはポリ−2,5−イオネン=ブロミド(poly-2,5-ionene bromide)などのカチオンポリマー類と結合する。
【0044】
本件に示すように、電気泳動性粒子のカプセル封入化には一般に錯体コアセルべーションが用いられるが、これに代わるカプセル封入化法も使用できる。カプセル封入化ジリコンエレメントのシェルとしては、ポリマー性のシェルが一般的である。シェルとしてはどのような適当なポリマー材料も制限されることなく使用できるが、シェルは、2つの互いに混和しない溶媒(例えば、有機溶媒と水など)それぞれに可溶な2種類のモノマーから誘導したポリマーでも良い。これにより、以下に更に詳しく述べるように、界面縮合重合によって2つの溶媒の界面でポリマーを生成することができる。
【0045】
本件に示す実施の形態での使用に適したシェルポリマー類としては、界面縮合重合法で生成されるものが挙げられる。典型的なシェルポリマー類としては、ポリ尿素類、ポリウレタン類、ポリエステル類、サーモトロピック液晶ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリスルホン類、等、またはこれらのポリマー類の混合物が挙げられる。ポリマー類の混合物は、例えば、ポリ(尿素−ウレタン)類、ポリ(エステル−アミド)類、等であって、これらは、適当な末端基を持つプレポリマー類またはマクロマー(macromer)類と、異なる縮合モノマー類との重縮合反応より生成することができる。
【0046】
詳細には、ポリマーシェル材料は、ポリアミド(例えば、二酸塩化物とジアミンモノマー類から)、ポリエステル(例えば、二酸塩化物とジオールモノマー類から)、ポリ尿素(例えば、ジイソシアナートとジアミンモノマー類から)、ポリウレタン類(例えば、ジイソシアナートとジオールモノマー類から)、またはそれらの混合物を含む。二酸塩化物モノマー類とジイソシアナートモノマー類は有機相に溶解するが、ジアミンとジオールモノマー類は水相に溶解する。
【0047】
適当なシェルモノマー類は通常、分子当たりの化学反応基の数が2以上のモノマー類より選ばれる。分子当たりの反応基の数は、化学官能性と呼ばれる。本発明の実施の形態においては、2以上の官能性を持つ有機可溶性シェルモノマーと、2以上の官能性を持つ水溶性シェルモノマーとが、界面縮合重合により反応してシェルポリマーを生成する。
【0048】
1つ以上の有機相モノマーを1つ以上の水相モノマーとの反応に用いることができる。実施の形態において、シェルの形成には、有機相に可溶なものと水相に可溶なものの少なくとも2つのシェルモノマー間の反応を必要とするが、有機相に可溶な5つ以上のモノマー類と水相に可溶な5つものモノマーとを反応させてシェルを形成することができる。一部の望ましい例では、有機相に可溶な2つのモノマー類と水相に可溶な2つのモノマー類とを反応させてシェルを形成することができる。
【0049】
更に、所望ならば、触媒または硬化剤などの必要に応じた反応助剤を溶液のどちらに加えても良い。例えば、所望ならば、Desmodur RF(バイエル(Bayer)製)などのシェル架橋剤を有機相に、効果的な量、例えばモノマー類の約0〜約3重量%加えても良い。
【0050】
誘電性流体とジリコン球とを包むカプセル封入化シェルの誘導にはいくつかの方法が使用できるが、一般的には錯体コアセルべーション法が用いられる。別の方法、例えば界面縮合重合も使用できる。上述のように、界面縮合重合は、2つの互いに混和しない溶媒、一般に有機性溶媒と水性溶媒(すなわち、水を主とする溶液)との界面で起こる。
【0051】
実施の形態において、この方法は、有機溶媒と、その中に溶解した、例えば二酸塩化物またはジイソシアナートモノマーであるモノマーと、必要に応じて更に誘電性流体とを含む溶液中に、ジリコン球を分散させて、有機溶液/分散液を生成する工程を含む。望ましくは、溶媒はそれ自体が脂肪族炭化水素(ISOPAR L、またはISOPAR M)などの誘電性流体である。しかし、この工程は、溶媒が誘電性流体でない場合は溶液に誘電性流体を加えるなどして、誘電性であるなしに拘わらず、炭化水素液体などどのような有機溶媒を用いても同様に行うことができる。
【0052】
有機相分散液中でのジリコン球に対する溶媒の量は、例えば、球表面周囲の流体の表面エネルギー引力によって、ジリコン球のそれぞれを誘電性流体で覆える量でなければならない。例えば、約10〜約95重量%のジリコン球を有機相分散液に加えることができる。有機相中のモノマー濃度は、例えば約1〜約100%(100%とは、純モノマーが溶媒であることを意味する)である。
【0053】
次に、有機相分散液を、有機相中に溶解したモノマーと共に反応するモノマー、例えば、ジアミンまたはジオールモノマーを含む水相溶液と接触させる。この溶液は、モノマーを水、望ましくは脱イオン水に溶解して調製する。水相中のモノマー濃度の上限は、有機相がちょうど僅かに水相と混和可能となる濃度とする。このためモノマー濃度は、例えば、水溶液中においてモノマーが約1〜約50%である。
【0054】
ポリマーシェル中の有機可溶性モノマーと水可溶性モノマーとのモル比は約1:1〜約1:4、望ましくは約1:1〜約1:1.5である。
【0055】
一般的には、界面縮合重合は、まず、有機溶媒に溶解した第1モノマーと必要に応じて誘電性流体とを含む第1の有機相組成物でジリコン球を被覆し、次に、被覆したジリコン球を水性溶媒に溶解した第2モノマーを含む第2の水相組成物に接触させて行い、これにより第1モノマーと第2モノマーとを反応させてカプセル封入化シェルを形成する。
【0056】
ある実施の形態では、これを、最初にジリコン球を有機相組成物に混合し、次に、被覆した球を水相組成物に接触させて行う。この実施の形態では、例えば、撹拌中の水相溶液に有機相分散液を滴下して加えることによって、有機相を水相に接触させる。接触するとモノマー類が反応し(縮合反応により)、液滴の周りにポリマー被膜が生じる。この結果、ジリコン球と誘電性流体とから成るコアの周囲にポリマーシェルが形成される。この反応は通常、かき混ぜ、例えば撹拌下で起こる。ポリマーシェルは一般に二つの相が接すると非常に早く生成するが、所望ならば撹拌と接触を、例えば約1分〜約2時間、またはそれ以上続けても良い。
【0057】
もうひとつの実施の形態では、有機相での被覆と水相組成物との接触を、例えば、その内容を全て本件に引用して援用する、米国特許出願第09/772,565号、現在、米国特許第6,406,747号に詳細に示されているような、インクジェット装置を用いて行うこともできる。この方法はまず、正確な量の有機相組成物をジリコン球上に吹き付ける工程を含み、これは、例えばインクジェットノズルと交差するようジリコン球を落下させて行う。表面エネルギーによって、コーティングはジリコン球表面全体を濡らす。有機相組成物で覆われたジリコン球を、次に水相組成物を噴射/噴霧するインクジェットノズルに交差するよう移動させて、これにより反応とカプセル封入化を起こす。
【0058】
更に他の実施の形態では、有機相での被覆と水相組成物との接触を、ジリコン球を有機相組成物の霧の中を落下させ、続いて、被覆したジリコン球を水相組成物の霧の中を落下させて行う。この方法も、その内容を全て本件に引用して援用する、米国特許出願第09/772,565号、現在、米国特許第6,406,747号に詳細に示されている。つまりこの実施の形態では、有機相と水相組成物の二つの霧を別々に作り、ジリコン球を最初に有機相の霧の中、次に水相の霧の中に続けて通す。水相の霧の周りに有機相の霧があるように霧を作ると、ジリコン球は2つの霧の中を続けて通って落下する。上記のインクジェットを用いた実施の形態のように、霧を用いた実施の形態は、球の上に被覆する組成物の量をより正確に調節でき、このため生成するカプセル封入化球をより正確な大きさとし、また材料の損失を少なくすることができる。
【0059】
縮合反応は、経済的には室温で行うことができるが、所望ならば反応を促進するため温度を高くしても良い。カプセル封入化後、カプセル封入化ジリコンエレメントを当該技術で公知のどれか適当な方法で集める。収集後、所望ならばカプセル封入化ジリコンエレメントを洗浄する。更に詳細な材料および方法については、本件に引用して援用する、米国特許第6,445,490号に述べられている。
【0060】
カプセル生成後、次にこれを加熱し、更に電界を印加する。界によって、それぞれのカプセルの中で各粒子が分極する。次に、界を保ったままカプセルを冷却して、ゲル化を起こす。十分にゲル化すると、電気泳動性粒子はゲル化した媒体中に固定され、すなわちカプセルとカプセル内の二色ボールが形成される。
【0061】
本発明は、移動した着色電気泳動性粒子または磁気により分極した粒子をカプセル内でゲル化することによる、カプセル封入化二色ボールの新たな製造法を提示する。生成した二色ボールは球形またはほぼ球形で、カプセル壁より離れており、双極子モーメントを持ち、また電界の印加に応じて自由に回転する。
【0062】
生成したカプセルの粒度範囲は約2〜約350μmである。一般的な粒度範囲は約5〜約200μmであり、典型的な粒度範囲は約10〜約100μmである。
【0063】
本発明のカプセル封入化二色ボールを、液体、固体、または気体である適当な媒体中に分散してディスプレイまたはディスプレイ面を形成する。これらのカプセル封入化二色ボールが電圧感受性部材を構成する場合、電界を印加するどのような媒体中にこのカプセルを分散しても良い。最も一般的には、この媒体は固体であって、この固体が液相であるうちに粒子または粒子類をその中に分散する。次にこれを化学反応、冷却などによって硬化する。媒体は、液体、または液体と固体粒子から成るスラリー、あるいはカプセルの不動化を目的とする固体粒子であっても良い。実際、カプセルのシェルを損なわず、またはシェルを通って好ましくない化学物質を拡散するものでなければ、カプセルを入れるためにどのような媒体を用いても良い。
【0064】
一連の実験を行って、本発明を更に検討した。以下の非制限的な方法によってマイクロカプセルの集合を製造した。
【実施例】
【0065】
500mlのモートン(Morton)反応フラスコに、5gのゼラチン(300ブルーム(broom)ブタ由来)と、110mlの冷蒸留水とを加え、60℃の湯浴中でこの混合物を約0.5時間撹拌した。10gの5重量%ポリリン酸ナトリウムを加え、酢酸を用いて混合物のpH値を約4.0〜4.5に調整して、コアセルベートの生成を促した。コアセルベートの生成後、0.216gのゲル化剤、trans−4−t−ブチル−1−フェニルシクロヘキサノールを加えたISOPAR M(約5重量%)に、少量の染料(blue Nile)と、TiOである白色の電気泳動性粒子とを加えた混合物21.6gを加えた。この混合物を60〜30℃の温度範囲で約6時間撹拌してカプセルを生成した。カプセル壁は、グルタルジアルデヒドと尿素−ホルムアルデヒドとの反応により架橋した。カプセルを水で洗浄し、濾過して集め、凍結乾燥法で乾燥した。
【0066】
粘着性ラベル(ゼロックス(Xerox)より市販)の剥離ライナを剥いだ。得られたシートは、白紙上に被覆した接着層から成る。上記のように製造したカプセルを接着面上に何度か振りかけて非常に均一な被覆とした。電極として酸化インジウムスズ伝導被覆を備えた2枚の伝導性ガラスの間に被覆した紙を挟んでディスプレイデバイスとした。デバイスを顕微鏡で検査したところ、空のカプセルはみられなかった。
【0067】
ホットプレートを用いて、デバイスを約50℃の温度に加熱した。一方の極性の約300〜500Vの電圧を印加して、着色荷電電気泳動性粒子をカプセルの反対側に移動させた。デバイスを室温まで放冷後、電界を除いて二色ボールを得た。
【0068】
ディスプレイの作動性を以下のようにして確認した。一方の極性の電圧(約200〜300V)を印加すると二色ボールは選択的に一方向(青)に配向した。電界の極性を変えると二色ボールは逆向き(白)に配向した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル封入化二色ボールの製造法であって、
前記製造法は、
電気泳動性粒子を準備する工程と、
前記粒子を、(i)誘電性流体と、(ii)効果的な量のゲル化剤と、混合する工程と、
シェル材料を準備する工程と、
前記粒子と誘電性流体とゲル化剤とを、前記シェル材料から成るシェル内に封入することによりカプセルを形成する工程と、
前記カプセルを高めた温度に加熱する工程と、
前記カプセルに界(field)を印加して前記粒子を分離する工程と、
前記界を保持したまま前記カプセルを冷却して、前記カプセル内でゲル化を起こす工程と、
前記界を除く工程と、
を含むことを特徴とするカプセル封入化二色ボールの製造法。

【公開番号】特開2006−163410(P2006−163410A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351607(P2005−351607)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】