説明

カメラスタビライザ

【課題】操作性に優れたカメラスタビライザを提供する。
【解決手段】ズーム倍率Zinについての広義単調減少関数g(Zin)に検出されたズーム倍率Zinを入力した場合の出力値をカメラの回転指令woutとして、その回転指令woutで上記カメラを回転させる。ここで、ズーム倍率Zinのテレ端において、ズーム倍率Zinの変化に対する広義単調減少関数g(Zin)の出力値の変化の割合は0に収束している。このため、ズーム倍率Zinを徐々に上げて行き、ズーム倍率Zinがテレ端に達して、ズーム倍率Zinの変化が止まる場合であっても、回転指令woutの変化は徐々に0に近づき、急には0にならない。したがって、テレ端において対象物をカメラの画面に捕らえるのが従来よりも容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばヘリコプター等に搭載されて空中撮影を行うカメラを回転駆動するカメラスタビライザに関する。
【背景技術】
【0002】
図9に、特許文献1に記載された従来のカメラスタビライザの機能ブロック図を示す。従来のカメラスタビライザは、カメラのレンズのズーム倍率Zinを検出するズーム倍率検出手段1と、カメラを支持し回転させるジンバル機構2と、ジンバル機構2を回転制御するジンバル機構制御手段3と、操作者からのカメラを回転させるための入力を受け付ける入力手段4とを備える。
【0003】
ズーム倍率を上げると画面が拡大される。ここで、ズーム倍率を上げてもジンバル機構2による回転指令woutによる回転速度が一定のままだとすると、そのカメラの回転指令woutは拡大された画面に対して速すぎてしまい、操作者がカメラの画面を対象物に合わせるのが困難となる。このため、ズーム倍率Zinが大きい程ジンバル機構2によるカメラの回転指令woutを下げる必要がある。
【0004】
特許文献1に記載されたカメラスタビライザにおいては、G1をジンバル機構制御手段3の任意のゲインとし、Jinを入力手段4への入力の大きさとして、下記式によりジンバル機構2によるカメラの回転指令woutを計算していた。
【0005】
wout=G1×Jin/Zin
このように、ズーム倍率Zinに反比例させた回転指令woutでカメラを回転させることにより、操作者がカメラの画面を対象物に合わせるのを容易にしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−221571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ズーム倍率Zinを徐々に上げて行き、ズーム倍率Zinがテレ端に達してズーム倍率Zinの最大値となった場合、ズーム倍率Zinは最大値のまま変化しなくなり、回転指令woutも急に変化しなくなる。操作者は、回転指令woutの変化が急に0になることを予想し辛いため、ズーム倍率Zinのテレ端においてカメラの画面から対象物を外してしまう可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、ズーム倍率Zinについての広義単調減少関数g(Zin)に検出されたズーム倍率Zinを入力した場合の出力値をカメラの回転指令woutとして、その回転指令woutでカメラを回転させる。ここで、ズーム倍率Zinのテレ端において、関数g(Zin)の出力値の変化の割合は0に収束している。
【発明の効果】
【0009】
ズーム倍率Zinの変化に対する関数g(Zin)の出力値の変化の割合は0に収束しているため、ズーム倍率Zinを徐々に上げて行き、ズーム倍率Zinがテレ端に達して、ズーム倍率Zinの変化が止まる場合であっても、回転指令woutの変化は徐々に0に近づき、急には0にならない。したがって、テレ端において対象物をカメラの画面に捕らえるのが従来よりも容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】カメラスタビライザの例の機能ブロック図。
【図2】関数f(Zin)の具体例を示す図(正弦曲線)。
【図3】関数f(Zin)の具体例を示す図(部分曲線)。
【図4】関数f(Zin)の具体例を示す図(従来)。
【図5】関数g(Zin)の具体例を示す図(正弦曲線)。
【図6】関数g(Zin)の具体例を示す図(部分曲線)。
【図7】関数g(Zin)の具体例を示す図(従来)。
【図8】図5から図7の関数g(Zin)のテレ端における拡大図。
【図9】従来のカメラスタビライザの例の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0012】
図1は、この発明によるカメラスタビライザの例の機能ブロック図である。この発明によるカメラスタビライザは、カメラのレンズのズーム倍率Zinを検出するズーム倍率検出手段1と、カメラを支持し回転させるジンバル機構2と、ジンバル機構2を回転制御するジンバル機構制御手段3と、操作者からのカメラを回転させるための入力を受け付ける入力手段4と、検出したズーム倍率Zinを変換してズーム倍率変換値Z’を出力するズーム倍率値変換器5を例えば含む。入力手段4は、例えばジョイスティックであり、ジョイスティックの倒れ角が入力手段4への入力の大きさJinとなる。
【0013】
ズーム倍率検出手段1は、カメラのレンズのズーム倍率Zinを検出する。
【0014】
ズーム倍率値変換器5は、ズーム倍率Zinを関数f(Zin)に入力し、ズーム倍率変換値Z’を出力する。
【0015】
ジンバル機構制御手段3は、ズーム倍率変換値Z’を関数h(Z’)に入力した場合の出力値をカメラの回転指令woutとして決定する。そして、その回転指令woutでカメラを回転させるようにジンバル機構2を制御する。
【0016】
従来のカメラスタビライザとの違いはズーム倍率値変換器5を有することである。従来はズーム倍率値変換器5を持たないため、ズーム倍率検出手段1が検出したズーム倍率はそのままジンバル機構制御手段3に入力される。この特性はf(Zin)、つまり入力をズーム倍率Zin、出力をズーム倍率変換値Z’とする関係で表すと図4のようになる。この従来の方式に対し、テレ端において対象物を外さないために、テレ端でのズーム倍率の変化率を0に近づけることで、テレ端に達するときの回転指令woutの変化を徐々に0にする。関数f(Zin)の具体例を図2、図3に示す。関数f(Zin)として図2に例示するような正弦曲線を用いてもよいし、図3のようなテレ端において曲線であるがテレ端手前の部分で直線である部分曲線を用いてもよい。
【0017】
ここで、ズーム倍率Zinと回転指令woutとの関係を見るため、ズーム倍率Zinを入力、回転指令woutを出力とする関数g(Zin)を考える。
【0018】
関数g(Zin)は、ズーム倍率Zinが大きくなったときに回転指令woutを小さくしゆっくり回転させるように制御することから広義単調減少関数であり、ズーム倍率Zinのテレ端においてズーム倍率Zinの変化ΔZinに対する関数g(Zin)の出力値の変化Δg(Zin)の割合、すなわち回転指令woutの変化率Δg(Zin)/ΔZinが0に収束している関数である。広義単調減少関数とは、x1≦x2であればF(x1)≧F(x2)となる関数Fのことである。テレ端とは、ズーム倍率Zinが最大値となる位置のことである。
【0019】
G1をジンバル機構制御手段3の任意のゲインとし、Jinを入力手段4への入力の大きさとし、関数f(Zin)はこの例ではズーム倍率Zinについての広義単調増加関数であり、関数g(Zin)は例えば以下の式(1)のように与えられる。なお、広義単調増加関数は、x1≦x2であればF(x1)≦F(x2)となる関数Fのことである。関数f(Zin)は、ズーム倍率Zinのテレ端においてズーム倍率Zinの変化ΔZinに対する関数f(Zin)の出力値の変化Δf(Zin)の割合Δf(Zin)/ΔZinが0に収束している関数である。
【0020】
g(Zin)=G1×Jin/f(Zin) …(1)
図2の関数f(Zin)に対応する関数g(Zin)の具体例を図5に示し、図3の関数f(Zin)に対応する関数g(Zin)の具体例を図6に示す。なお、図5,6においてG1=1、Jin=60とした。また、参考のために、従来の方式での回転指令woutを出力する関数g(Zin)=G1×Jin/Zinを図7に示す。
【0021】
さらに、図5から図7の関数g(Zin)のテレ端における拡大図を図8に示す。図8に示すように、本発明による関数g(Zin)においては回転指令woutの変化率Δg(Zin)/ΔZinのズーム倍率Zinの最大値Zinmaxの左極限値は0であるが、従来の関数g(Zin)においてはΔg(Zin)/ΔZinのズーム倍率Zinの最大値Zinmaxの左極限値は0ではないことがわかる。
【0022】
ジンバル機構制御手段3は、関数h(Z’)の値を計算して、カメラの回転指令woutとする。そのために、図1の例では、ズーム倍率値変換器5が関数f(Zin)の計算を行い、ジンバル機構制御手段3はf(Zin)の出力値を用いて関数h(Z’)の計算を行う。
【0023】
すなわち、ズーム倍率値変換器5が、関数f(Zin)にズーム倍率Zinを入力したときの出力値を計算して、ズーム倍率変換値Z’とする。ズーム倍率変換値Z’はジンバル機構制御手段3に送られる。ジンバル機構制御手段3は、ズーム倍率変換値Z’についての広義単調減少関数h(Z’)に、ズーム倍率値変換器5が計算したズーム倍率変換値Z’を入力したときの出力値を計算して、カメラの回転指令woutとする。上記(1)式の関数g(Zin)に対応する関数h(Z’)は、次のようになる。
【0024】
h(Z’)=G1×Jin/Z’ …(2)
このように、ズーム倍率のテレ端において、関数f(Zin)の出力値の変化の割合を0に収束させることにより、関数g(Zin)の出力値の変化の割合も0に収束するので、ズーム倍率Zinを徐々に上げて行き、ズーム倍率Zinがテレ端に達して、ズーム倍率Zinの変化が止まる場合であっても、回転指令woutの変化は徐々に0に近づき、急には0にならない。したがって、従来は回転指令woutの変化が急に0になることを予想し辛かったが、この発明では回転指令woutの変化は急には0にはならないので、テレ端において対象物をカメラの画面に捕らえるのが従来よりも容易になる。
【0025】
図2、図3、図5及び図6に示した例では、関数f(Zin)及び関数g(Zin)は、テレ端のみならずワイド端においても、ズーム倍率Zinの変化に対する関数の出力値の変化の割合は0に収束している。ワイド端とは、ズーム倍率Zinが最小値となる位置のことである。このように、ワイド端においても、ズーム倍率Zinの変化に対する関数の出力値の変化の割合が0に収束する関数f(Zin)及び関数g(Zin)を用いることで、ワイド端における操作性が増す。すなわち、ズーム倍率Zinを徐々に下げて行き、ズーム倍率Zinがワイド端に達して、ズーム倍率Zinの変化が止まる場合であっても、回転指令woutの変化は徐々に0に近づき、急には0にならない。したがって、ワイド端において対象物をカメラの画面に捕らえるのが従来よりも容易になる。
【0026】
上記(1)式の関数g(Zin)及び上記(2)式の関数h(Z’)に代えて、次の関数g(Zin)及び関数h(Z’)を用いてもよい。
【0027】
g(Zin)=G1×Jin/f(Zin)
h(Z’)=G1×Jin/Z’
図2、図3、図5及び図6に示した例では、関数f(Zin)及び関数g(Zin)は連続関数として表現されているが、これらの関数f(Zin)及び関数g(Zin)は連続である必要はなく離散関数であってもよい。
【0028】
この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 ズーム倍率検出手段
2 ジンバル機構
3 ジンバル機構制御手段
4 入力手段
5 ズーム倍率値変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを回転させるジンバル機構と、
上記カメラのレンズのズーム倍率(Zin)を検出するズーム倍率検出手段と、
ズーム倍率についての広義単調減少関数g(Zin)に上記検出されたズーム倍率を入力した場合の出力値を上記カメラの回転指令として、その回転指令で上記カメラを回転させるように上記ジンバル機構を制御するジンバル機構制御手段と、を含み、
ズーム倍率の最大値において、ズーム倍率の変化に対する上記広義単調減少関数g(Zin)の出力値の変化の割合は0に収束している、
ことを特徴とするカメラスタビライザ。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラスタビライザにおいて、
ズーム倍率の最小値において、ズーム倍率の変化に対する上記広義単調減少関数g(Zin)の出力値の変化の割合は0に収束している、
ことを特徴とするカメラスタビライザ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカメラスタビライザにおいて、
ズーム倍率についての広義単調増加関数f(Zin)に上記検出されたズーム倍率を入力した場合の出力値を計算しズーム倍率変換値(Z’)とするズーム倍率値変換器を更に含み、
上記ジンバル機構制御手段は、ズーム倍率変換値についての広義単調減少関数h(Z’)に上記計算されたズーム倍率変換値を入力した場合の出力値を計算し上記カメラの回転指令とし、
ズーム倍率の最大値、最小値の少なくとも一方において、ズーム倍率の変化に対する上記広義単調増加関数f(Zin)の出力値の変化の割合は0に収束している、
ことを特徴とするカメラスタビライザ。
【請求項4】
請求項3に記載のカメラスタビライザにおいて、
上記カメラを回転させるための入力を受け付ける入力手段を更に含み、
G1を任意のゲインとし、Jinを上記入力手段への入力の大きさとして、上記広義単調減少関数h(Z’)は、
h(Z’)=G1×Jin/Z’
であることを特徴とするカメラスタビライザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−83680(P2012−83680A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232112(P2010−232112)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】