説明

カメラモジュール、画像処理装置及び画像処理方法

【課題】複数の視点から被写体を同時に撮影可能とする複眼構成を使用して高品質な画像を得ることを可能とするカメラモジュール、画像処理装置及び画像処理方法を提供すること。
【解決手段】実施形態によれば、第2の撮像光学系は、複数の画素セルからなる画素ブロックごとに画像片を結像させるサブレンズを有する。アライメント調整部31は、画像片について、サブレンズの個体差に起因するずれを補正するためのアライメント調整を実施する。第1の解像度復元部32は、サブレンズが備えるレンズ特性を基に、画像片の解像度復元を実施する。第1のシェーディング補正部33は、サブレンズについてのシェーディング補正を実施する。スティッチング部43は、アライメント調整、解像度復元及びシェーディング補正の少なくともいずれかを経た画像片を繋ぎ合わせて被写体像とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、カメラモジュール、画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の視点から被写体を同時に撮影可能とする複眼構成のカメラモジュールが提案されている。カメラモジュールは、複眼構成を使用して撮影した画像群の画像処理により、被写体距離の推定や、画像の繋ぎ合わせによる二次元画像の再構成処理等を行うことができる。互いに異なる視点からの画像により、被写体の奥行き情報が得られる。カメラモジュールは、かかる奥行き情報を利用することで、例えば、リフォーカス等の画像処理が可能となる。
【0003】
カメラモジュールの複眼構成としては、例えば、イメージセンサと、被写体からの光をイメージセンサへ取り込むメインレンズとの間に、サブレンズアレイを設けるものが知られている。サブレンズアレイを構成するサブレンズは直径が例えば140μm程度と小型である上に、サブレンズアレイとイメージセンサとの間の距離が例えば350μm程度と短いことから、サブレンズの製造誤差や取り付け誤差、光学性能等が画質に大きく影響を及ぼすこととなる。このため、高品質な画像を得るには、カメラモジュールの歩留まり低下や、サブレンズの製造誤差及び取り付け誤差の抑制のための製造コストの増大等が課題となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ren Ng, Marc Levoy, Mathieu Bredif, Gene Duval, Mark Horowiz, and Pat Hanrahan, “Light Field Photography with a Hand-held Plenoptic Camera”, Stanford Tech Report CTSR 2005-02
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの実施形態は、複数の視点から被写体を同時に撮影可能とする複眼構成を使用して高品質な画像を得ることを可能とするカメラモジュール、画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態によれば、カメラモジュールは、撮像部と、第1の撮像光学系と、第2の撮像光学系と、画像処理部とを有する。撮像部は、アレイ状に配列された画素セルを備える。撮像部は、被写体像を撮像する。第1の撮像光学系は、被写体からの光を撮像部へ取り込むメインレンズを備える。第2の撮像光学系は、撮像部及び第1の撮像光学系の間の光路中に設けられている。第2の撮像光学系は、複数の画素セルからなる画素ブロックごとに、被写体像の一部分に相当する画像片を結像させる。画像処理部は、撮像部における被写体像の撮像により得られた画像信号の信号処理を実施する。第2の撮像光学系は、サブレンズにより画像片を結像させる。サブレンズは、画素ブロックの各々に対応させて設けられている。画像処理部は、アライメント調整部と、解像度復元部と、シェーディング補正部と、の少なくともいずれかと、スティッチング部とを有する。アライメント調整部は、画像片について、サブレンズの個体差に起因するずれを補正するためのアライメント調整を実施する。解像度復元部は、サブレンズが備えるレンズ特性を基に、画像片の解像度復元を実施する。シェーディング補正部は、サブレンズについてのシェーディング補正を実施する。スティッチング部は、アライメント調整、解像度復元及びシェーディング補正の少なくともいずれかを経た画像片を繋ぎ合わせて被写体像とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態にかかるカメラモジュールの概略構成を示すブロック図。
【図2】図1に示すカメラモジュールを備える電子機器であるデジタルカメラの構成を示すブロック図。
【図3】撮像光学系及びイメージセンサの断面構成の模式図。
【図4】イメージセンサのうち入射側平面構成の模式図。
【図5】イメージセンサにより生成される画像片についての説明図。
【図6】カメラモジュールによる被写体像の再構成処理についての説明図。
【図7】カメラモジュールのうち画像処理のための構成を示すブロック図。
【図8】アライメント調整部におけるアライメント調整のためのアライメント調整用補正係数を設定する手順を示すフローチャート。
【図9】アライメント調整用チャートの例を示す図。
【図10】第1の解像度復元部及び第2の解像度復元部における解像度復元のためのデコンボルーション行列を設定する手順を示すフローチャート。
【図11】第1のシェーディング補正部及び第2のシェーディング補正部におけるシェーディング補正のためのシェーディング補正係数を設定する手順を示すフローチャート。
【図12】レンズごとに取得される相対照度データの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるカメラモジュール、画像処理装置及び画像処理方法を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態にかかるカメラモジュールの概略構成を示すブロック図である。図2は、図1に示すカメラモジュールを備える電子機器であるデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【0010】
デジタルカメラ1は、カメラモジュール2、記憶部3及び表示部4を有する。カメラモジュール2は、被写体像を撮像する。記憶部3は、カメラモジュール2により撮影された画像を格納する。表示部4は、カメラモジュール2により撮影された画像を表示する。表示部4は、例えば、液晶ディスプレイである。
【0011】
カメラモジュール2は、被写体像の撮像により、記憶部3及び表示部4へ画像信号を出力する。記憶部3は、ユーザの操作等に応じて、表示部4へ画像信号を出力する。表示部4は、カメラモジュール2あるいは記憶部3から入力される画像信号に応じて、画像を表示する。
【0012】
カメラモジュール2は、撮像モジュール部5及びイメージシグナルプロセッサ(image signal processor;ISP)6を有する。撮像モジュール部5は、撮像光学系11、イメージセンサ12、撮像回路13及びOTP(one time programmable memory)14を有する。撮像光学系11は、被写体からの光をイメージセンサ12へ取り込み、イメージセンサ12にて被写体像を結像させる。イメージセンサ12は、撮像光学系11により取り込まれた光を信号電荷に変換する。イメージセンサ12は、被写体像を撮像する撮像部として機能する。
【0013】
撮像回路13は、イメージセンサ12を駆動し、かつイメージセンサ12からの画像信号を処理する。撮像回路13は、R(赤)、G(緑)、B(青)の信号値をベイヤー配列に対応する順序で取り込むことによりアナログ画像信号を生成し、得られた画像信号をアナログ方式からデジタル方式へ変換する。OTP14は、画像信号の信号処理のためのパラメータを格納する。
【0014】
ISP6は、カメラモジュールI/F(インターフェース)15、画像取り込み部16、信号処理部17及びドライバI/F(インターフェース)18を有する。撮像モジュール部5での撮像により得られたRAW画像は、カメラモジュールI/F15から画像取り込み部16へ取り込まれる。
【0015】
信号処理部17は、画像取り込み部16へ取り込まれたRAW画像について、信号処理を実施する。ドライバI/F18は、信号処理部17での信号処理を経た画像信号を、不図示の表示ドライバへ出力する。表示ドライバは、カメラモジュール2によって撮像された画像を表示する。
【0016】
図3は、撮像光学系及びイメージセンサの断面構成の模式図である。図4は、イメージセンサのうち入射側平面構成の模式図である。イメージセンサ12は、アレイ状に配列された画素セル24を備える。イメージセンサ12には、複数の画素セル24からなる画素ブロック25が設定されている。画素ブロック25は、例えば、行方向へ5個、列方向へ5個のアレイ状に配列された25個の画素セル24からなる。
【0017】
撮像光学系11は、メインレンズ21とサブレンズアレイ22とを有する。メインレンズ21は、被写体からの光をイメージセンサ12へ取り込む第1の撮像光学系として機能する。サブレンズアレイ22は、イメージセンサ12及びメインレンズ21の間の光路中、例えば、メインレンズ21の結像面に設けられている。
【0018】
サブレンズアレイ22は、アレイ状に配列されたサブレンズ23を備える。サブレンズ23は、画素ブロック25の各々に対応させて設けられている。メインレンズ21によって結像された被写体像は、各サブレンズ23により、被写体像の一部分に相当する画像片として画素ブロックへ結像する。なお、サブレンズ23の配列は、正方格子配列、六方細密配列等のいずれであっても良いものとする。
【0019】
カメラモジュール2は、被写体から撮像光学系11へ入射した光を複数のサブレンズ23によって分割し、イメージセンサ12においてサブレンズ23と同数の画像片を生成する。イメージセンサ12は、サブレンズ23の配置位置に応じた視差を生じさせることで、互いに異なる視点による情報を持つ画像片を生成する。
【0020】
図5は、イメージセンサにより生成される画像片についての説明図である。図6は、カメラモジュールによる被写体像の再構成処理についての説明図である。ここでは、カメラモジュール2により「ABCD」の文字列を撮像し、再構成処理を実施する場合を例とする。
【0021】
画像片26として各サブレンズ23が結像する視野は、メインレンズ21の結像面においては、視差に応じた重複範囲を持つこととなる。「ABCD」の文字列は、例えば図5に示すように、重複する部分が少しずつ異なるような画像片26として、イメージセンサ12で撮像される。そして、カメラモジュール2は、重複部分が一致するように画像片26を繋ぎ合わせることで、被写体像を再構成する。図5に示す画像片26は、「A」、「B」、「C」、「D」の各文字がそれぞれ一致するような信号処理により、図6に示すように「ABCD」の文字列を含む被写体像27へと再構成される。
【0022】
図7は、カメラモジュールのうち画像処理のための構成を示すブロック図である。
カメラモジュール2の信号処理は、撮像モジュール部5での処理と、ISP6での処理とに大別される。撮像モジュール部5の撮像回路13と、ISP6の信号処理部17とは、イメージセンサ12における被写体像の撮像により得られた画像信号の信号処理を実施する画像処理部(画像処理装置)として機能する。
【0023】
撮像回路13は、アライメント調整部31、第1の解像度復元部32及び第1のシェーディング補正部33を有する。アライメント調整部31、第1の解像度復元部32及び第1のシェーディング補正部33は、イメージセンサ12での撮像により得られた複数の画像片26であるRAW画像30について、信号処理を実施する。
【0024】
アライメント調整部31は、サブレンズ23の個体差に起因する画像片26のずれを補正するための、画像片26のアライメント調整を実施する。サブレンズ23の個体差とは、例えば、サブレンズ23の製造誤差や、サブレンズ23の取り付け誤差等、サブレンズ23ごとに生じ得る差であるものとする。アライメント調整部31は、OTP14に予め格納されているアライメント調整用補正係数を用いて、画像片26の座標変換を実施する。
【0025】
第1の解像度復元部32は、サブレンズ23が備えるレンズ特性を基に、画像片26ごとの解像度復元を実施する。レンズ特性としては、例えば、点像分布関数(point spread function;PSF)を用いる。第1の解像度復元部32は、例えば、PSFのデコンボルーション行列を乗算することで、ぼけが低減された像を復元する。PSFのデコンボルーション行列は、OTP14に予め格納されている。解像度復元の効果は、復元に用いるアルゴリズムに依存する。第1の解像度復元部32は、元の被写体像に近い画像を復元するために、例えば、Richardson−Lucy法を使用する。
【0026】
第1のシェーディング補正部33は、サブレンズ23に起因して生じる照度ムラ、特に、画像片26の中央部と周辺部との光量差を補正するための、シェーディング補正を実施する。第1のシェーディング補正部33は、OTP14に予め格納されているシェーディング補正係数を用いて、画像片26のシェーディング補正を実施する。
【0027】
信号処理部17は、デモザイキング部41、第1のスケーリング部42、スティッチング部43、第2のシェーディング補正部44、ノイズリダクション部45、第2の解像度復元部46、クロップ部47及び第2のスケーリング部48を有する。
【0028】
デモザイキング部41は、撮像回路13でのアライメント調整、解像度復元、シェーディング補正を経たRAW画像30のデモザイキング処理により、カラーのビットマップ画像を合成する。第1のスケーリング部42は、画像片26のスケーリング処理を実施する。スティッチング部43は、画像片26を繋ぎ合わせて、被写体像であるビットマップ画像40とする。
【0029】
第2のシェーディング補正部44は、メインレンズ21に起因して生じる照度ムラ、特に、被写体像の中央部と周辺部との光量差を補正するための、シェーディング補正を実施する。第2のシェーディング補正部44は、OTP14に予め格納されているシェーディング補正係数を用いて、被写体像のシェーディング補正を実施する。ノイズリダクション部45は、被写体像のノイズを除去する。
【0030】
第2の解像度復元部46は、メインレンズ21が備えるレンズ特性と、サブレンズ23が備えるレンズ特性とを基に、被写体像の解像度復元を実施する。第2の解像度復元部46は、第1の解像度復元部32と同様、OTP14に予め格納されているPSFのデコンボルーション行列を用いる。また、第2の解像度復元部46は、第1の解像度復元部32と同様、例えば、Richardson−Lucy法を使用する。
【0031】
クロップ部47は、被写体像の一部を切り取るクロップ処理を実施する。第2のスケーリング部48は、被写体像のスケーリング処理を実施する。なお、本実施形態で説明する処理の手順は一例であって、他の処理の追加、省略可能な処理の省略、処理の順序の変更などを適宜しても良い。また、各要素による信号処理は、撮像回路13及び信号処理部17のいずれで実施することとしても良く、双方で分担して実施することとしても良い。例えば、アライメント調整部31、第1の解像度復元部32及び第1のシェーディング補正部33は、信号処理部17に設けても良い。
【0032】
図8は、アライメント調整部におけるアライメント調整のためのアライメント調整用補正係数を設定する手順を示すフローチャートである。アライメント調整用補正係数の設定は、例えば、カメラモジュール2の製造工程において実施される。ステップS11では、アライメント調整用チャートを配置し、カメラモジュール2によりアライメント調整用チャートを撮影する。
【0033】
図9は、アライメント調整用チャートの例を示す図である。アライメント調整用チャート50には、複数の調整用マーカー51が記されている。調整用マーカー51は、例えば、縦方向に5個、横方向に5個のマトリクス状に配列している。アライメント調整用チャート50内の調整用マーカー51の数は、適宜変更しても良い。
【0034】
調整用マーカー51は、例えば、黒塗りされた二つの正方形の角同士を合わせたマークであって、角同士を合わせた位置を調整用マーカー51の座標とする。調整用マーカー51は、調整用チャート50上の位置を特定可能であれば良く、いずれの形状であっても良い。さらに、調整用マーカー51の配置は、適宜変更しても良い。例えば、特に高精細な撮影を望む範囲が存在するような場合は、その範囲に多くの調整用マーカー51を配置することとしても良い。
【0035】
ステップS12では、得られた画像片26をスティッチング部43において一つの被写体像とし、R、G、BのうちGの信号からなる画像(適宜、「G画像」と称する)を生成する。イメージセンサ12のうち、R用画素及びB用画素については、周囲のG用画素の信号値を補間することにより、Gの信号値を生成する。なお、低照度での撮影の場合やイメージセンサ12の感度が低い場合は、ノイズリダクションの実施後にG画像を生成しても良い。
【0036】
ステップS13では、ステップS12で生成したG画像から、各調整用マーカー51の座標を算出する。ステップS14では、ステップS13で算出した調整用マーカー51の座標から、アライメント調整用補正係数を算出する。ステップS15では、ステップS14で算出したアライメント調整用補正係数を、OTP14へ書き込む。
【0037】
アライメント調整用補正係数は、行列演算の係数とする。アライメント調整用補正係数は、例えば最小二乗法により、以下に示す式により求められる。
Y=kX
k=YX[XX−1
【0038】
なお、kはアライメント調整用補正係数、YはステップS13において算出した調整用マーカー51の座標、Xは予め標準として設定されている座標とする。Xは、Xの転置行列とする。[XX−1は、XXの逆行列とする。アライメント調整用補正係数は、最小二乗法により求める他、非線形最適化手法等、他のアルゴリズムを使用して求めることとしても良い。
【0039】
アライメント調整部31は、カメラモジュール2による撮影のごとに、OTP14からアライメント調整用補正係数を読み出す。また、アライメント調整部31は、イメージセンサ12で得られたRAW画像30に対して、OTP14から読み出したアライメント調整用補正係数を用いた座標変換を実施する。
【0040】
アライメント調整部31は、例えば、以下に示す演算により、座標変換を実施する。なお、kijはアライメント調整用補正係数、(x,y)は補正前の座標、(x’,y’)は補正後の座標とする。
【0041】
【数1】

【0042】
カメラモジュール2は、アライメント調整部31での座標変換により、サブレンズの製造誤差や取り付け誤差に起因する画像片26のずれを抑制させることが可能となる。なお、アライメント調整部31は、行列演算により一括して座標変換を実施する他、像高に応じて適宜変更されたアライメント調整用補正係数を用いた演算により、一部ずつの座標変換を実施しても良い。なお、像高とは、レンズの光軸に対して垂直な垂直軸を想定した場合に、当該垂直軸と光軸との交点から当該垂直軸に沿った距離とする。
【0043】
また、アライメント調整部31は、行列演算に代えて、例えば、ルックアップテーブルの参照による座標変換を行うこととしても良い。アライメント調整用補正係数は、RAW画像からのG画像の生成を経て算出する場合に限られない。アライメント調整用補正係数は、例えば、カラーのビットマップ画像から抽出されたG画像を基にして算出しても良い。
【0044】
図10は、第1の解像度復元部及び第2の解像度復元部における解像度復元のためのデコンボルーション行列を設定する手順を示すフローチャートである。デコンボルーション行列の設定は、例えば、カメラモジュール2の製造工程において実施される。ステップS21では、カメラモジュール2により検査用チャートを撮影し、撮影により取得された撮影データを演算することにより、PSFデータを取得する。PSFデータは、例えば、ぼけが生じていない標準像を仮定し、標準像に対する観察像のぼけの程度を計測することにより求められる。検査用チャートは、イメージセンサ12の結像面を例えば3行3列の9領域に仮想的に分割するものであって、複数の点像からなる点像チャートとする。
【0045】
ステップS22では、ステップS21で取得したPSFデータを基に、像高ごとのデコンボルーション行列を算出する。ここでは、画像片26から再構成された被写体像に対するデコンボルーション行列と、画像片26ごとに対するデコンボルーション行列とを算出する。画像片26に対するデコンボルーション行列には、サブレンズ23の像高ごとのPSFデータを反映させる。被写体像に対するデコンボルーション行列には、メインレンズ21の像高ごとのPSFデータと、サブレンズ23ごとにまとめられたPSFデータとを反映させる。ステップS23では、ステップS22で算出したデコンボルーション行列を、OTP14へ書き込む。
【0046】
第1の解像度復元部32は、カメラモジュール2による撮影のごとに、画像片26に対するデコンボルーション行列をOTP14から読み出す。また、第1の解像度復元部32は、サブレンズ23の像高ごとのデコンボルーション行列を、画像片26のRAWデータに乗算する。
【0047】
第2の解像度復元部46は、カメラモジュール2による撮影のごとに、被写体像に対するデコンボルーション行列をOTP14から読み出す。また、第2の解像度復元部46は、メインレンズ21の像高ごと、及びサブレンズ23ごとのデコンボルーション行列を、被写体像のビットマップデータに乗算する。
【0048】
デコンボルーション行列の乗算による解像度復元の手法は、観察像が、真の像と、像の劣化の原因であるPSF関数のコンボルーションにより表現可能であるという理論に基づいている。カメラモジュール2は、第1の解像度復元部32でのデコンボルーション行列の乗算により、サブレンズ23のレンズ特性に起因する画像片26ごとのぼけを抑制させることができる。
【0049】
また、カメラモジュール2は、第2の解像度復元部46でのデコンボルーション行列の乗算により、メインレンズ21のレンズ特性及びサブレンズ23のレンズ特性に起因する被写体像のぼけを抑制させることができる。第1の解像度復元部32及び第2の解像度復元部46の少なくとも一方は、行列演算に代えて、例えば、ルックアップテーブルの参照によるデータ変換を行うこととしても良い。
【0050】
図11は、第1のシェーディング補正部及び第2のシェーディング補正部におけるシェーディング補正のためのシェーディング補正係数を設定する手順を示すフローチャートである。シェーディング補正係数の設定は、例えば、カメラモジュール2の製造工程において実施される。ステップS31では、メインレンズ21の相対照度データを取得する。ステップS32では、サブレンズ23ごとの相対照度データを取得する。なお、ステップS31及びステップS32の順序は任意であるものとする。
【0051】
図12は、レンズごとに取得される相対照度データの例を示す図である、相対照度データは、像高ごとの相対照度とする。相対照度は、像高ゼロにおける照度を100%とした場合の相対的な照度とする。通常、レンズの相対照度は、像高が増大するに従って低くなる。
【0052】
ステップS33では、メインレンズ21についてのシェーディング補正係数と各サブレンズ23についてのシェーディング補正係数とを求め、OTP14へ書き込む。メインレンズ21についてのシェーディング補正係数としては、ステップS31で取得した相対照度データを基に、被写体像の像高ごとの照度差を相殺するような係数が設定される。サブレンズ23についてのシェーディング補正係数としては、ステップS32において取得した相対照度データを基に、画像片26の像高ごとの照度差を相殺するような係数がサブレンズ23ごとに設定される。
【0053】
第1のシェーディング補正部33は、カメラモジュール2による撮影のごとに、各サブレンズ23についてのシェーディング補正係数をOTP14から読み出す。また、第1のシェーディング補正部33は、各画像片26のRAWデータに、各々に対応するサブレンズ23のシェーディング補正係数を乗算する。
【0054】
第2のシェーディング補正部44は、カメラモジュール2による撮影のごとに、メインレンズ21についてのシェーディング補正係数をOTP14から読み出す。また、第2のシェーディング補正部44は、被写体像のビットマップデータにメインレンズ21についてのシェーディング補正係数を乗算する。
【0055】
カメラモジュール2は、第1のシェーディング補正部33でのシェーディング補正係数の乗算により、サブレンズ23に起因して生じる各画像片26の照度ムラを抑制させることができる。また、カメラモジュール2は、第2のシェーディング補正部44でのシェーディング補正係数の乗算により、メインレンズ21に起因して生じる被写体像の照度ムラを抑制させることができる。
【0056】
第1のシェーディング補正部33及び第2のシェーディング補正部44の少なくとも一方は、シェーディング補正係数の乗算に代えて、例えば、ルックアップテーブルの参照によるデータ変換を行うこととしても良い。
【0057】
カメラモジュール2は、アライメント調整部31、第1の解像度復元部32及び第1のシェーディング補正部33を備えることで、サブレンズ23の製造誤差や取り付け誤差、光学性能等の画質への影響を抑制させる。これにより、カメラモジュール2は、複数の視点から同じ被写体を同時に撮影可能とする複眼構成を使用して高品質な画像を得ることが可能となる。
【0058】
カメラモジュール2は、アライメント調整部31、第1の解像度復元部32及び第1のシェーディング補正部33の全てを備えるものに限られない。カメラモジュール2は、アライメント調整部31、第1の解像度復元部32及び第1のシェーディング補正部33の少なくとも1つを備えるものであれば良い。これにより、カメラモジュール2は、サブレンズ23の個体差、光学性能等の少なくともいずれかの影響を抑制させ、良好な画質を得ることができる。
【0059】
実施形態にかかるカメラモジュールは、デジタルカメラ以外の電子機器、例えばカメラ付き携帯電話等に適用しても良い。
【0060】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
2 カメラモジュール、12 イメージセンサ、13 撮像回路、17 信号処理部、21 メインレンズ、23 サブレンズ、24 画素セル、25 画素ブロック、26 画像片、31 アライメント調整部、32 第1の解像度復元部、33 第1のシェーディング補正部、47 クロップ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ状に配列された画素セルを備え、被写体像を撮像する撮像部と、
被写体からの光を前記撮像部へ取り込むメインレンズを備える第1の撮像光学系と、
前記撮像部及び前記第1の撮像光学系の間の光路中に設けられ、複数の前記画素セルからなる画素ブロックごとに、前記被写体像の一部分に相当する画像片を結像させる第2の撮像光学系と、
前記撮像部における前記被写体像の撮像により得られた画像信号の信号処理を実施する画像処理部と、を有し、
前記第2の撮像光学系は、前記画素ブロックの各々に対応させて設けられたサブレンズにより前記画像片を結像させ、
前記画像処理部は、
前記画像片について、前記サブレンズの個体差に起因するずれを補正するためのアライメント調整を実施するアライメント調整部と、
前記サブレンズが備えるレンズ特性を基に、前記画像片の解像度復元を実施する解像度復元部と、
前記サブレンズについてのシェーディング補正を実施するシェーディング補正部と、の少なくともいずれかと、
前記アライメント調整、前記解像度復元及び前記シェーディング補正の少なくともいずれかを経た前記画像片を繋ぎ合わせて前記被写体像とするスティッチング部と、を有することを特徴とするカメラモジュール。
【請求項2】
前記サブレンズに起因して生じる照度ムラを補正するためのシェーディング補正を実施する前記シェーディング補正部である第1のシェーディング補正部と、
前記メインレンズに起因して生じる照度ムラを補正するためのシェーディング補正を実施する第2のシェーディング補正部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項3】
前記サブレンズが備えるレンズ特性を基に、前記画像片の解像度復元を実施する前記解像度復元部である第1の解像度復元部と、
前記メインレンズが備えるレンズ特性と、前記サブレンズが備えるレンズ特性とを基に、前記被写体像の解像度復元を実施する第2の解像度復元部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラモジュール。
【請求項4】
撮像部における被写体像の撮像により得られた画像信号の信号処理を実施する画像処理装置であって、
前記撮像部においてアレイ状に配列された複数の画素セルからなる画素ブロックごとに、前記画素ブロックに対応するサブレンズにより結像された画素片について、前記サブレンズの個体差に起因するずれを補正するためのアライメント調整を実施するアライメント調整部と、
前記サブレンズが備えるレンズ特性を基に、前記画像片の解像度復元を実施する解像度復元部と、
前記サブレンズについてのシェーディング補正を実施するシェーディング補正部と、の少なくともいずれかと、
前記アライメント調整、前記解像度復元及び前記シェーディング補正の少なくともいずれかを経た前記画像片を繋ぎ合わせて前記被写体像とするスティッチング部と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
前記サブレンズに起因して生じる照度ムラを補正するためのシェーディング補正を実施する前記シェーディング補正部である第1のシェーディング補正部と、
被写体からの光を前記撮像部へ取り込むメインレンズに起因して生じる照度ムラを補正するためのシェーディング補正を実施する第2のシェーディング補正部と、を有することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記サブレンズが備えるレンズ特性を基に、前記画像片の解像度復元を実施する前記解像度復元部である第1の解像度復元部と、
被写体からの光を前記撮像部へ取り込むメインレンズが備えるレンズ特性と、前記サブレンズが備えるレンズ特性とを基に、前記被写体像の解像度復元を実施する第2の解像度復元部と、を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
撮像部における被写体像の撮像により得られた画像信号の信号処理を実施する画像処理方法であって、
前記撮像部においてアレイ状に配列された複数の画素セルからなる画素ブロックごとに、前記画素ブロックに対応するサブレンズにより結像された画素片を繋ぎ合わせて前記被写体像とするスティッチングに先立って、
前記画像片について、前記サブレンズの個体差に起因するずれを補正するためのアライメント調整と、
前記サブレンズが備えるレンズ特性を基にする前記画像片の解像度復元と、
前記サブレンズについてのシェーディング補正と、の少なくともいずれかを実施することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−195902(P2012−195902A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60155(P2011−60155)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】