カメラモジュール
【課題】正確に移動体を変位できかつ小型化が可能なカメラモジュールを提供する。
【解決手段】カメラモジュールでは、レンズ1Aを含む光学系1を介して、被写体の像が撮像素子2上で結像される。また、当該カメラモジュールでは、連結部材21を介して光学系1が移動体20に連結されている。アクチュエータ6は、電気的に制御されることにより変位し、これにより、移動体20は矢印R2方向に移動され、これに伴って、光学系1と撮像素子2の相対距離が変更される。
【解決手段】カメラモジュールでは、レンズ1Aを含む光学系1を介して、被写体の像が撮像素子2上で結像される。また、当該カメラモジュールでは、連結部材21を介して光学系1が移動体20に連結されている。アクチュエータ6は、電気的に制御されることにより変位し、これにより、移動体20は矢印R2方向に移動され、これに伴って、光学系1と撮像素子2の相対距離が変更される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモジュールに関し、特に、圧電素子を利用したアクチュエータを含むカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の機器にカメラ機能が取り入られた製品が少なくない。これらの製品には、通常カメラモジュールと云われる部品が搭載されている。カメラモジュールは、画像撮像用のCCD(Charge Coupled Devices)等の撮像素子、画像を撮像素子に結像する為のレンズ等を含む光学系、これらを支持しかつ保護するための筐体等から成る。
【0003】
従来の製品は、撮像画像のフォーカス制御が不要なパンフォーカス式のカメラモジュールが採用されていた。しかしながら、最近では、撮像素子の画素数が増え、撮像性能が向上してきたことを受けて、カメラモジュールにおいて撮像画像のフォーカス制御が必要となって来た。フォーカス制御が行なわれる際には、カメラモジュール内の光学系の一部または全部を変位可能に構成する必要がある。
【0004】
レンズを変位させるためには、駆動源(アクチュエータ)が必要である。カメラのフォーカス制御においては、既にフィルムカメラ或いはデジタルスチルカメラ等に搭載されているアクチュエータに関する技術が多数存在する。なお、携帯電話機向けとなると、カメラモジュールに要求されるサイズは、通常のカメラとは比較にならないほど小さくなる。つまり、携帯電話機には、サイズの大きいアクチュエータの搭載は不可能であり、特殊な小型アクチュエータが必要となる。
【0005】
小型という点で利用されるアクチュエータとして、圧電素子を利用したアクチュエータが挙げられる。なお、圧電素子を利用したアクチュエータについての従来技術としては、例えば特許文献1(特開2006−189648号公報)に開示されるものがある。当該公報では、圧電素子の伸縮性を利用して移動体を変位させる技術が開示されている。より具体的には、圧電素子に駆動電圧を与えて電気的に伸縮させて当該圧電素子に固定された駆動部材を振動させ、これにより、駆動部材と摩擦係合された移動体との間の摩擦関係を利用して、移動体を変位させようとする技術が開示されている。
【特許文献1】特開2006−189648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したようなカメラモジュールが搭載される機器の一つである携帯電話機は、このところ多機能化が進み、携帯電話機内に占める各部品のスペース確保が厳しくなってきている。また、ユーザからは携帯電話機の更なる小型化および薄型化の要求が強く、使用部品の小型化に拍車が掛かっている。そして、この様な状況はカメラモジュールに於いても例外ではない。
【0007】
一方、上述したカメラモジュールを構成する部品である撮像素子・光学系・レンズ駆動用アクチュエータ・筐体は必須の部品であり、工夫により小型化は可能であっても、省略は不可能である。
【0008】
なお、特許文献1では、上述のように、圧電素子を利用した駆動システムが記載されているが、このシステムでは、移動体の位置を知る為に位置センサが配設されている。これは、摩擦係合された移動体(および当該移動体に固定された光学系)を摩擦力で動かす場合は、摩擦部材の経年変化等により摩擦力が変動するため、圧電素子への入力に対する移動体の変位量にバラつきが生じる。特許文献1に開示された技術において、目的の位置に移動体を変位させるために、カメラモジュールに移動体の変位量を検出する位置センサが必要とされるのは、このような理由からである。位置センサが備えられた場合、摩擦部材の経年変化等によって移動体の変位量が低下した場合でも、圧電素子への入力に対する変位量が把握出来るので、圧電素子への電力の入力量を制御することで移動体の駆動速度の低下を低減できる。つまり、正確に、移動体を変位させることができる。
【0009】
しかしながら、上記システムでは、位置センサ、当該センサに通電する為の基板やコネクタ類、これらを支持する為の支持部材等が必要とされる。そして、このことが、カメラモジュールのサイズの小型化を阻んでいた。
【0010】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、正確に移動体を変位できかつ小型化が可能なカメラモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に従ったカメラモジュールは、レンズを介して入力される画像を撮像素子で結像させるカメラモジュールにおいて、電気的に制御されることにより変位する駆動部と、前記駆動部に摩擦係合された移動部と、前記レンズまたは前記撮像素子と前記移動部を連結させる連結部と、前記撮像素子で結像された画像のフォーカスを評価するフォーカス評価手段と、前記駆動部を電気的に制御することにより前記レンズと前記撮像素子の相対的な距離を変更させながら前記フォーカス評価手段にフォーカスの評価をさせ、これにより、前記撮像素子で結像される画像のフォーカスが合う前記レンズと前記撮像素子の相対的な位置を決定する、フォーカス制御を実行するフォーカス制御手段と、前記フォーカス制御に関わる履歴情報を記憶する履歴記憶手段と、前記履歴情報と前記駆動部に対する制御態様との関係を記憶する制御態様関係記憶手段とを備え、前記フォーカス制御手段は、前記制御態様関係記憶手段に記憶された制御態様の中から、前記履歴記憶手段に記憶された履歴情報に対応する制御態様に従って、前記駆動部を電気的に制御することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記履歴情報は、前記移動部と前記駆動部の摩擦係合部分の磨耗の指標となる情報であることが好ましい。
【0013】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記履歴情報は、1回の前記フォーカス制御に要した時間の情報であることが好ましい。
【0014】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記履歴情報は、前記フォーカス制御に費やした累積時間の情報であることが好ましい。
【0015】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記履歴情報は、前記フォーカス制御を実施した累積回数の情報であることが好ましい。
【0016】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記履歴情報は、前記駆動部に対して電気的に制御を実行した累積時間の情報であることが好ましい。
【0017】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記履歴情報は、前記駆動部に対して電気的に制御を実行した累積回数の情報であることが好ましい。
【0018】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記制御態様は、前記駆動部に入力する電圧の値を特定することが好ましい。
【0019】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記制御態様は、前記駆動部に入力する電圧の値を変化させる速度を特定することが好ましい。
【0020】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記制御態様は、前記駆動部に入力する電圧の周波数を特定することが好ましい。
【0021】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記制御態様は、前記駆動部と前記移動部の摩擦係合部分の摩擦力を調整する態様であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
フォーカス制御手段が、制御態様関係記憶手段に記憶された制御態様の中から、履歴記憶手段に記憶された履歴情報に対応する制御態様に従って駆動部を電気的に制御するため、移動部の位置を検出するセンサが設けられなくとも、当該移動部の位置を、履歴に基づいて正確に変位することができる。
【0023】
したがって、カメラモジュールにおいて、正確に移動体を変位でき、かつ、移動体の位置を検知するセンサを省略できるので、小型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態であるカメラモジュールの概略構成を模式的に示す図であり、図2は、当該カメラモジュールの制御ブロック図を示す。
【0025】
図1および図2を参照して、カメラモジュール10は、主に、光学系1、撮像素子2、移動体20、および、当該移動体20を駆動するアクチュエータ6からなる。光学系1は、被写体像を撮像素子2に結像するための要素であり、レンズ1A、ミラー(図示せず)、およびこれらを支持する部材等の、一般的な光学系において備えられる要素を含む。撮像素子2は、光学系1によって結像された像を受光する要素であり、たとえば、CCDまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を利用したイメージセンサによって構成される。光学系1と撮像素子2は、筐体7に収容されている。
【0026】
本実施の形態のカメラモジュール10では、被写体像を撮像素子2に結像させるために、アクチュエータ6により、撮像素子2に対する光学系1の相対位置が変更される。アクチュエータ6は、たとえば、圧電素子を利用した小型のアクチュエータによって構成される。なお、アクチュエータ6と光学系1は、連結部材21によって連結されている。
【0027】
撮像素子2で得られた画像は、被写体に対してフォーカスが得られているかどうか(合焦しているか否か)を判断する必要がある。なお、撮影者が、カメラモジュール10の、フォーカスを調整する部分を操作することが出来る場合には、撮影者自身が合焦の判断をしつつ調整すればよい。しかしながら、カメラモジュール10側で判断がなされる場合には、当該カメラモジュール10側で、合焦しているか否かを評価する何らかの手段が必要となる。
【0028】
本実施の形態では、フォーカス評価部3によって、合焦しているか否かが評価される。なお、フォーカス評価部3がどのように合焦しているか否かを評価するかについては、後述する。
【0029】
アクチュエータ制御部4は、フォーカス評価部3による合焦しているか否かの評価に関する情報に基づいて、(光学系1を駆動する)アクチュエータ6の動きを制御する。
【0030】
駆動部5は、アクチュエータ制御部4からの情報に基づいて、アクチュエータ6を電気的に駆動する部分である。
【0031】
履歴記憶部8には、過去のフォーカス制御時における、フォーカス制御に関する結果が格納される。また、制御態様関係記憶部9には、後述するような、フォーカス制御に関わる履歴情報(たとえば、平均フォーカス制御時間)とアクチュエータ6に対する制御態様(たとえば、アクチュエータ6に入力する電圧の振幅)の関係を特定する情報が格納される。
【0032】
図3に、カメラモジュール10のハードウェア構成を模式的に示す。
カメラモジュール10は、上記した当該カメラモジュール10の動作を全体的に制御するCPU(Central Processing Unit)91、半導体メモリからなる主記憶装置92、CPU91のワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)94、アクチュエータ6への電圧の入力を後述するように制御するアクチュエータ駆動部95、および、カメラモジュール10が搭載される機器本体等とのインターフェースである外部I/F(外部インターフェース)96を含む。なお、外部I/F96は、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等の外部メディアに対する情報の読み込みおよび書き込みも行なう。CPU91は、主記憶装置92(および/または外部メディア)に記憶されたプログラムを実行することにより、カメラモジュール10の動作を制御する。図22中のフォーカス評価部3およびアクチュエータ制御部4はCPU91によって構成され、駆動部5はアクチュエータ駆動部95によって構成され、履歴記憶部8は主記憶装置92によって構成される。また、カメラモジュール10では、撮像素子2上で結像された画像データがファインダ画像として連続的にCPU91に入力され、さらに、たとえば外部I/F96を介して入力される、シャッタボタンが操作された旨の情報の応じて、当該画像データが主記憶装置92(および/または外部メディア)に撮影画像として格納される。
【0033】
アクチュエータ6は、バイモルフ圧電素子を利用したものである。ここで、図4〜図8を参照して、アクチュエータ6の構成について詳細に説明する。
【0034】
図4および図5には、バイモルフ圧電素子の構成の一例が示されている。板状の圧電素子12の主面およびその裏面のそれぞれに、電極11と電極13が設けられている。圧電素子12は、電圧+Vを印加されると、図4中の矢印で示されるように、収縮するように分極処理が施されている。このことから、当該圧電素子12は、図5に示されるように、図4で印加されたのとは逆の電圧(−V)を印加されると、当該図5中の矢印で示されるように伸張する。
【0035】
図6には、図4または図5で示したような圧電素子が、芯材17を介して2つ重ねられつつ、静止物14に固定された状態が示されている。なお、図6では、上側の圧電素子12に設けられた電極11と下側の圧電素子12に設けられた電極13とに、同じ電位の電圧が印加され、また、上側の圧電素子12に設けられた電極13と下側の圧電素子12に設けられた電極11とに、同じ電位の電圧が印加される状態が示されている。そして、このような状態で、電源から交流電圧が加えられると、(上側または下側の)一方の圧電素子12が収縮したとき、もう一方の圧電素子12が伸張する。これにより、図中の両矢印R12のように、交流電圧の半周期毎に、芯材17の一端(図6の右端)が上下に、つまり、図7(A)に示された状態と図7(B)に示された状態とを交互にとるように、変位する。
【0036】
このような、圧電素子12の電極11,13に電圧が印加された際の挙動を利用したアクチュエータ6の構成の一例を図8に示す。
【0037】
図8に示されたアクチュエータ6では、リンク材16の両端に2組のバイモルフアクチュエータ100,200が配設されている。リンク材16は弾性体であり、その両端を静止物14に固定されていると共に、その中央には駆動部15が取り付けられている。なお、図8に示されたアクチュエータ6では、2つのバイモルフアクチュエータ100,200の芯材として、リンク材16が共通に使用されているが、必ずしもその必要は無い。
【0038】
各圧電素子12の電極11および電極13は、図8に示されるように結線されている。バイモルフアクチュエータ100に対する入力電圧を電圧V1とし、バイモルフアクチュエータ200に対する入力電圧を入力V2とする。そして、この電圧V1,V2を、それぞれ図9に示すように時間に対して変化させると、図8のバイモルフアクチュエータ100,200は、互いに逆位相に変位する。図10に、バイモルフアクチュエータ100とバイモルフアクチュエータ200が互いに逆位相に変位する状態を示す。
【0039】
図10を参照して、この状態では、アクチュエータ6において、リンク材16は、バイモルフアクチュエータ100とバイモルフアクチュエータ200が異なる位相に変位しているために、N字状に変形している。なお、図10では、バイモルフアクチュエータ100、バイモルフアクチュエータ200、駆動部15、移動体20のそれぞれの変位を示す、実線の矢印と破線の矢印が示されている。図9において、「往時」と記された期間では、アクチュエータ6の各部は図10中の実線で示した方向に変位をする。また、図9において「復時」と記された期間では、アクチュエータ6の各部は図10中の破線で示した方向に変位をする。つまり、アクチュエータ6に対して、図9中の「往時」と「復時」で示される態様で一回ずつ電圧が入力されることにより、当該アクチュエータ6において、図10の実線で示される変位と破線で示される変位が実現される。図9では、「往時」と「復時」の1セットが「1ステップ」として示されている。そして、アクチュエータ6に対して、図9の「往時」と「復時」の電圧の入力態様が繰り返されることにより、アクチュエータ6は、図10中の実線方向の変位と破線方向の変位を繰り返し、これにより、駆動部15は、実線方向の変位と破線方向の変位を繰り返すように往復運動をする。
【0040】
なお、図10は、アクチュエータ6が、図8に示された状態から「往時」の期間で変位した状態を示す図である。一方、図11に、アクチュエータ6が、「復時」の期間で変位した状態を示す。
【0041】
そして、図10に矢印R1として示すように、移動体20は、アクチュエータ6の駆動部15に摩擦係合するように与圧をかけられて配置されることにより、駆動部15の変位に伴って、左右方向に(図10中の移動体20の矢印R21,R22で示される方向に)移動する。
【0042】
なお、図10中の矢印R21と矢印R22の長さが異なるのは、図9に示された態様でアクチュエータ6に電圧が入力されることによって、移動体20の各方向の変位量が異なることを意味している。ここで、矢印R21は、図9の往時の移動体20の変位に対応し、矢印R22は、図9の復時の移動体20の変位に対応しているとする。そして、以下に、往時と復時で、(駆動部15の変位量は同じであるのに対し)移動体20の変位量が異なる理由を説明する。
【0043】
駆動部15の上部には移動体20が配置されており、駆動部15と摩擦係合するように移動体20が与圧されている。図9に示すように、往時の期間と復時の期間とを異ならせることにより、移動体20を左右方向に移動させることが可能となる。
【0044】
すなわち、往時と復時とでは駆動部15の変位量は同じであるが、変位に要する時間が異なっているため、往時と復時とでは駆動部15の速度が異なっている。図9の様に電圧を加えると、往時の方が復時よりも速度が遅くなっている。そのため、往時の期間の方が復時の期間よりも駆動部15の加速度が小さくなり、駆動部15にかかる力も弱くなる。この往復時の駆動部15の駆動力と、移動体20と駆動部15との間の摩擦力との関係から移動体20を変位させることが可能である。
【0045】
往時において、駆動部15の駆動力が、移動体20と駆動部15との間の摩擦力よりも小さい場合、移動体20は駆動部15の動きに同期して右方向に移動する。
【0046】
また、復時において、駆動部15の駆動力が、移動体20と駆動部15との間の静止摩擦力よりも大きい場合、移動体20は駆動部15の動きに対して滑るような格好でやや左方向に移動するが、このときの変位量は往時の変位量よりも小さい。
【0047】
図12は、図9に示す交流電圧を繰返しアクチュエータ6に与えたときの移動体20の変位を示す図である。移動体20は、往時における変位と復時における変位とを繰り返しながら、右方向に移動していく。往時と復時とを合わせて1ステップとすると、1ステップで移動体20が移動する移動量は、往時における変位量と復時における変位量との差である。
【0048】
本実施の形態では、移動体20と光学系1が、連結部材21で結合されていることにより、アクチュエータ6に電圧が入力すれば、光学系1を駆動することができる。なお、移動体20を図9および図10を参照して説明した「往時の移動方向」とは逆の方向に移動させる場合は、図9を参照して説明した、入力する電圧を変化させる時間を、「往時」の期間と「復時」の期間で逆転すれば良い。
【0049】
次に、本実施の形態のカメラモジュール10における、撮像素子2において結像される画像に対するフォーカスの評価について説明する。
【0050】
図13に示されるように、カメラモジュール10を搭載された撮像装置500によって、当該撮像装置500の視野A1内の存在する被写体Sの撮影が行なわれると、被写体Fの画像が撮像素子2上で結像される。カメラモジュール10では、撮像素子2において結像される画像に対するフォーカスの評価は、当該画像の明度ヒストグラムに基づいて行なわれる。
【0051】
図14(A)および図14(B)は、それぞれ、撮像素子2からCPU91に入力される画像データの明度ヒストグラムである。図14(A)は、フォーカスが合った状態での明度ヒストグラムの一例であり、図14(B)は、フォーカスが合っていない状態での明度ヒストグラムの一例である。図14(A)および図14(B)に示される明度ヒストグラムでは、横軸に画素の明るさが、縦軸に画素の度数が、それぞれ定義されている。
【0052】
カメラモジュール10では、明度ヒストグラムに対して、フォーカス評価の判断とする為の度数Moが予め設定されている。なお、当該度数Moの値は、フォーカス評価における一般的な技術や撮像素子2の特定に基づいて適宜設定され、また、たとえば主記憶装置92に記憶されている。
【0053】
図14(A)および図14(B)に示された明度ヒストグラムカーブでは、Mo以上の度数を持つ明るさ(画像の明度)の範囲の最大値をフォーカス評価値Cとする。ここでは、フォーカスが合っている画像の明度ヒストグラムである図14(A)に基づいて得られた評価値CをCoとし、フォーカスが合っていない画像の明度ヒストグラムである図14(B)に基づいて得られた評価値CをCoとする。
【0054】
一般に、フォーカスの合った画像はコントラストが高く、同じ画像でフォーカスが合っていない画像はコントラストが低い。フォーカスが合っていない画像では、明度が全体的に中程度の値となるためである。つまり、Co>Cxとなる。
【0055】
図15に、光学系−撮像素子間距離(光学系1と撮像素子2との間の距離)とフォーカス評価値Cの関係を示す。光学系−撮像素子間距離Foで撮像画像のフォーカスが合ったとすると、その点でのフォーカス評価値が最大になり、その値がCoになると考えられる。なお、図14(A)および図15を参照した説明では、撮像画像全体の画素について明度ヒストグラムを作ったが、撮像画像の一部で同様の処理を行なっても同様の結果が得られる。
【0056】
ここで、カメラモジュール10においてフォーカスを合わせるために実行されるフォーカス制御処理のフローチャートである図16を参照して説明する。
【0057】
撮影時には、最初に光学系の位置を基準位置に移動しておく必要がある。そこで、フォーカス制御処理では、まずステップS1において、CPU91は、光学系1を予め定められた基準となる位置(初期位置)に移動させる。この移動は、たとえば、光学系1が最大移動位置であるMAX位置(筐体7において光学系1が移動体20によって移動され得る初期位置から最も離れた位置)にあると想定して、当該MAX位置から初期位置に移動させるのに必要な駆動量(電力)をアクチュエータ6に与えることにより実現される。
【0058】
もし、ステップS1が実行される時点で光学系1が上記MAX位置以外の位置に存在している場合には、アクチュエータ6は、光学系1が初期位置に戻った後も駆動される(電圧を入力される)ことになる。ただし、アクチュエータ6は、駆動部15と移動体20の間の摩擦力に移動体20(即ちこれに結合する光学系1)を駆動する。また、カメラモジュール10では、光学系1が上記初期位置に戻った後さらに移動体20が駆動されても、当該初期位置からそれ以上移動しないように光学系1を支持する機構が備えられている。これにより、上記のようにアクチュエータ6に対して(光学系1が上記初期位置に戻った後も)過剰に電圧が入力されても、単に駆動部15が移動体20に対して滑るだけであり、カメラモジュール10(のたとえば光学系1)が破損するようなことにはならない。
【0059】
上記したように、カメラモジュール10において、光学系1は、上記初期位置から、移動体20が駆動されることにより、設計上設定される最大移動位置である上記MAX位置まで移動可能に構成されている。図17に示されるように、横軸を光学系1を移動させるアクチュエータ6の駆動量(=ステップ数)とし、縦軸を光学系1の位置とした場合の、駆動数に応じた光学系1の位置の変化は、初期位置F1から、位置F2、位置F3を経て、MAX位置まで変化する。図17では、フォーカスが合っているときの光学系1の位置がフォーカス位置Ffとして示されている。光学系1がフォーカス位置Ffで特定される場合、光学系1と撮像素子2の間の距離は、図16中の光学系−撮像素子間距離Fo(またはそれに近い値)となる。
【0060】
本実施の形態では、徐々に光学系1を移動させてゆき、移動する毎にフォーカス評価を行なうものとする。なお、移動させる前に、まず、CPU91は、ステップS2で、その時点で撮像素子2から入力されている画像に基づいて、初期位置F1に於ける評価値C1を算出し、図16に示したようなグラフを生成するために当該評価値C1をRAM94に格納する。
【0061】
次に、CPU91は、アクチュエータ6に適宜電圧を入力することにより光学系1を所定変位量Lだけ移動させ(ステップS3)、そして、その位置Fnでの評価値Cnを算出するとともに当該評価値をRAM94に格納する(ステップS4)。
【0062】
次に、CPU91は、ステップS5で、直前のステップS4でRAM94に格納した評価値(Cn)とその前の回に格納した評価値(Cn−1)とを比較する。たとえば、直前のステップS4で上記初期位置F1からLだけ移動された位置F2に移動されてC2がRAM94に格納された場合、ステップS5では、C1とC2が比較される。そして、比較の結果、CPU91は、Cn−1≦Cnであると判断すればステップS3に処理を戻し、Cn−1>Cnであると判断すればステップS6に処理を進める。
【0063】
なお、図15から理解されるように、Cn−1≦Cnである間は、Cnは未だフォーカス点に達していないと考えられ、そして、Cn−1>Cnとなれば、フォーカス点に達した(フォーカス点を通過した)と考えられる。ステップS5の処理は、このような考えに基づいて行なわれる処理である。
【0064】
ステップS6では、CPU91は、Cn−1を格納したときの位置Fn−1に光学系1を移動させて、フォーカス制御処理を終了させる。
【0065】
光学系1を移動させる単位である所定変位量Lについては、光学系1の大きさ等に基づいて、任意の値が設定されれば良い。
【0066】
次に、フォーカス制御される際の、光学系1の移動について説明する。
カメラモジュール10では、図1を参照して説明したように、光学系1は、アクチュエータ6に摩擦係合された移動体20と連結部材21により連結されている。これにより、移動体20の移動に伴って、光学系1が、撮像素子2との距離を変化させるように、移動することができる。
【0067】
フォーカス制御が行なわれる場合、上記したように、光学系1の位置を上記初期位置から徐々に(たとえば、撮像素子2に近づけるように)移動させてゆき、光学系1が所定変位量Lだけ移動するためにアクチュエータ6に電圧が入力される毎に、フォーカスの評価が行なわれる。
【0068】
ただし、アクチュエータ6に光学系1が所定変位量Lだけ移動するように電圧が入力されても、実際に光学系1が所定変位量Lだけ移動するとは限らない。その理由は、アクチュエータ6は、摩擦係合された移動体20を摩擦力で動かすので、摩擦部材(両者の摩擦係合する部位)の経年変化等により摩擦力が変動する為、アクチュエータ6への電圧の入力に対する移動体20の移動量がバラつくことによる。なお、経年変化としては、摩擦部材の劣化或いは磨耗による摩擦力の低下が挙げられる。
【0069】
本実施の形態では、上記係合部位においてどの程度摩擦力の低下が起こっているかを検出するために、たとえば1回のフォーカス制御に要する時間が検出される。これは、摩擦力が低下すると、アクチュエータに同じ時間だけ同じパターンで電圧が入力されても、アクチュエータ6による移動体20の移動量が小さくなり、これにより、制御終了まで(フォーカス位置に光学系1が到達するまで)に要する時間が長くなると考えられることに起因している。
【0070】
しかしながら、フォーカス制御において光学系1が移動することを必要とされる距離は、カメラモジュール10が搭載される撮像装置と被写体との距離(位置関係)等の(上記摩擦力の低下以外の)他の要因によっても異なるため、上記摩擦力に変化がなくとも、アクチュエータ駆動時間(即ち、フォーカス制御に要する時間。以下、フォーカス制御時間とも言う。)は変化するものである。
【0071】
このことから、1回のフォーカス制御時間を以って上記摩擦力の低下を判断する事は出来ない。この不具合を避ける為に、例えば、過去のフォーカス制御時間の何回かの平均値を以って平均フォーカス制御時間としてアクチュエータの摩擦力の低下を判断する。この様にすれば、使用者が撮影する被写体までの距離が撮影毎に違っていても判断を誤る可能性が低くなる。
【0072】
フォーカス制御時間のカウントは、例えば、フォーカス制御処理の開始時から終了時までのCPU91のクロック数をカウントすることで実現できる。このカウント数をフォーカス制御時間として履歴記憶部8に格納すればよい。平均フォーカス制御時間を得るのに、例えば、過去10回のフォーカス制御時間の平均を得るには、履歴記憶部8に10件分の記憶領域を用意しておき、最新の10件分のフォーカス制御時間を格納しておく。そして、次にフォーカス制御が行なわれる際には、その回のフォーカス制御処理に要した時間と履歴記憶部8に格納された最新の10件分のフォーカス制御時間の平均値とに基づいて、上記係合部位の摩擦力の低下量が判断される。
【0073】
摩擦力の低下による移動体20の移動量低下を低減する方法として、アクチュエータ6に与える入力電圧の振幅を増やすという方法がある。バイモルフ型アクチュエータの変位は入力電圧に比例するという事実から、入力電圧の振幅を増やすことで、駆動部15の(図10中の実線または破線の矢印で示す方向の)変位量を増やすことが出来る。駆動部15の変位量を増やすことが出来れば、移動体20に対して摩擦駆動できる距離が増え、1ステップ当たりの移動体20の移動量を増やすことが出来る。これにより、摩擦力の低下による移動量の低下を低減出来る。
【0074】
なお、アクチュエータ6に入力する電圧の振幅を制御する場合、平均フォーカス制御時間に対する摩擦力の関係が図18のようであったとすると、摩擦力低減による移動体20の移動量低下を低減させるのには、平均フォーカス制御時間に対する、入力電圧振幅(アクチュエータ6に入力される電圧の振幅)の関係が、図19に示されるように設定されれば良い。
【0075】
また、アクチュエータに与える入力電圧の振幅を制御する場合、平均フォーカス制御時間に対する摩擦力の関係が図18のようである場合、摩擦力低減による移動体20の移動量低下を低減させるために、図20に示すように、一定の平均フォーカス制御時間範囲に対して、入力電圧振幅を段階的に変化させても良い。
【0076】
なお、図18は、平均フォーカス制御時間と摩擦力との関係を模式的に示す図であって、具体的な摩擦力の計測結果ではない。ただし、予めカメラモジュールにおいて、図18に示されるような関係を履歴記憶部8等に格納しておき、これにより、平均フォーカス制御時間を算出することによって、CPU91が算出値と格納された関係とを参照することにより、上記係合部位の摩擦力がどの程度低下しているかを予測することができる。
【0077】
また、摩擦力の低下による移動体20の移動量低下を低減する他の方法として、アクチュエータ6に与える、図9に示す入力電圧の1周期内(1ステップ内)の復時期間を減らすという方法がある。これは上記で説明したように、圧電素子12の伸縮の速度を制御することになる。すなわち、駆動部15の往時と復時の速度を制御することになる。
【0078】
具体的には、復時期間を減らすことにより、復時の駆動部15の移動速度が大きくなり、これにより、駆動部15に与えられる加速度が大きくなるため、駆動部15が移動体20を滑りながら復時方向へ移動させる力が働く時間が小さくなる。この為、1ステップ内で移動体20が復時方向へ移動する距離が小さくなる。したがって、1ステップ内での移動体20の往時方向への移動量が増えることになる。これにより、摩擦力の低下による移動量の低下を低減出来る。アクチュエータ6に与える往復時期間を制御する場合、復時期間に対する往時期間の割合を「往時期間率」とすると、平均フォーカス制御時間に対する摩擦力の関係が図18のようであったとすると、摩擦力低減による移動体の移動量の低下を低減するのには、平均フォーカス制御時間に対する往時期間率の関係を図19のように設定すれば良く、または、図20のように一定の平均フォーカス制御時間範囲に対して往時期間率をステップ的に変化させても良い。
【0079】
また、本実施の形態では、上記係合部位の摩擦力の低下による移動体20の移動量低下を低減する他の方法として、アクチュエータ6に与える入力電圧の周波数を増やすという方法も考えられる。入力電圧の周波数を増やすことで、単位時間当たりの駆動部15の駆動量(アクチュエータ6に入力する電力量)を増やし、これにより、移動体20の移動量を増やすことが出来る。したがって、摩擦力の低下による移動量の低下を低減できる。アクチュエータ6に入力する電圧の周波数を制御する場合、平均フォーカス制御時間に対する摩擦力の関係が図18のようであったとすると、摩擦力低減による移動体20の移動量低下を低減するのには、平均フォーカス制御時間に対する入力電圧周波数の関係を図19のように設定すれば良い。或いは、図20のように一定の平均フォーカス制御時間範囲に対して入力電圧周波数をステップ的に変化させても良い。
【0080】
また、本実施の形態における上記係合部位の摩擦力の低下による移動体20の移動量低下を低減する他の方法として、アクチュエータ6の駆動部15と移動体20との間の摩擦力を増やすという方法がある。図21に、摩擦力を増やすためのカメラモジュール10の変形例の一例を示す。
【0081】
図21に示された変形例では、図1に示したカメラモジュールに対して、当該アクチュエータ6を移動体20に向けて押し付ける機構が追加されている。具体的には、与圧用圧電素子22を与圧用圧電素子固定部材23に取り付けたものが、アクチュエータ6の、移動体20と対向する側とは反対側に取り付けられている。与圧用圧電素子固定部材23は、移動体20を支持しているものと連結されていることが望ましい。与圧用圧電素子22は、図示しない電源(電源90)から電圧の供給を受けて、アクチュエータ6が移動体20に向かう方向(両矢印R4が示す方向)に伸縮するように配設されている。与圧用圧電素子22に、両矢印R4方向に伸張するように電圧が加えられると、アクチュエータ6は、移動体20に押し付けられるようになる。実際にはアクチュエータ6の駆動部15が移動体20に押し付けられる。すなわち、与圧用圧電素子22が移動体15の方向に伸張するように電圧を加えると駆動部15と移動体20との間の摩擦力が増加する。これにより、摩擦力の低下による移動量の低下を低減出来る。CPU91が与圧用圧電素子22に与える入力電圧を制御する場合、与圧用圧電素子22の伸縮量は印加する電圧の値に比例するので、平均フォーカス制御時間に対する摩擦力の関係が図18の様であったとすると、摩擦力低減による移動体20の移動量低下を低減するためには、平均フォーカス制御時間に対する与圧用圧電素子22に与える入力電圧の値の関係を、図19のように設定すれば良く(ただし、与圧用圧電素子22が伸張する方向に与える入力電圧を正とする)、または、図20のように一定の平均フォーカス制御時間範囲に対して与圧用圧電素子22に与える入力電圧を段階的に変化させても良い。
【0082】
以上説明したカメラモジュール10において、図19〜図20を参照して説明したような関係を特定する情報は、制御態様関係記憶部9に格納されている。
【0083】
[他の変形例]
カメラモジュール10では、CPU91は、アクチュエータ6と移動体20との間で、どの程度摩擦力の低下が起こっているかを検出するために、たとえば、累積フォーカス制御回数(フォーカス制御処理が実行された累積回数)、あるいは、累積フォーカス制御時間(フォーカス制御処理が実行された時間を累積した時間)をカウントし、当該カウントした値に基づいてどの程度摩擦力が低下しているかを判断することができる。これは、フォーカス制御するということは、アクチュエータ6の動作を伴うということから関連付けられ、フォーカス制御回数または制御時間が増えると、駆動部15および移動体20の係合部位が摩擦する時間が増え、これにより、磨耗が進み、摩擦力が低下すると考えられるからである。
【0084】
摩擦力の低下による駆動力低下を低減する方法として、図18〜図20を用いて説明したのと同様の方法を適用すれば良い。即ち、図18〜図20の各横軸を、フォーカス制御累積回数または累積制御時間に置換することにより、同様の効果を得ることが出来る。
【0085】
つまり、CPU91は、フォーカス制御処理において、入力電圧振幅、往時期間率、(入力電圧の)周波数、または、与圧用圧電素子22への入力電圧が、横軸を置換後の図19または図20の関係に基づいて、その時点でのフォーカス制御累積回数(または累積制御時間)に対応する値へと変更される。
【0086】
累積フォーカス制御回数をカウントするには、CPU91は、フォーカス制御を行なう度に、履歴記憶部8に記憶するカウント値に対して「+1」を足し込んでゆく。
【0087】
また、累積フォーカス制御時間をカウントするには、CPU91は、フォーカス制御処理を実行する際に、当該処理が開始されてから終了するまでの時間を履歴記憶部8に足し込んでゆく。時間は、たとえば当該CPU91のクロック数とすることができる。そして、次にアクチュエータを駆動する際に履歴記憶部8の値を参照し、その結果に基づいてアクチュエータ6への入力電圧等を制御を実行すればよい。
【0088】
[さらに他の変形例について]
また、CPU91は、カメラモジュール10のアクチュエータ6と移動体20の係合部位においてどの程度摩擦力の低下が起こっているかを検出するために、例えばアクチュエータ6の駆動部15の累積駆動回数または累積駆動時間をカウントすることで推し量る事ができる。これは、駆動部駆動回数または駆動時間が増えると、駆動部15および移動体20の接触部が磨耗することで摩擦力が低下するからである。
【0089】
摩擦力の低下による駆動力低下を低減する方法として、図18〜図20を用いて説明したのと同様の方法を適用すれば良い。即ち、図18〜図20の各横軸を、駆動部累積駆動回数或いは累積駆動時間に置換することにより、同様の効果を得ることが出来る。
【0090】
駆動部累積駆動回数或いは累積駆動時間をカウントするには、アクチュエータ6に与えた駆動量(=ステップ数)或いは駆動時間を累積的にカウントすれば良く、アクチュエータ6を駆動する度にその時駆動したステップ数或いは駆動時間を履歴記憶部に足し込んでゆく。そして、次にアクチュエータを駆動する際に履歴記憶部の値を参照し、その結果に基づいてアクチュエータへの入力電圧を制御すればよい。
【0091】
以上、本説明したカメラモジュール10では、光学系1を撮像素子2に対して変位させることでフォーカスを合わせていたが、図22に示すように、撮像素子2を光学系1に対して変位させても良い。この場合、光学系1の代わりに撮像素子2が、移動体20と連結部材21で連結される。なお、具体的な制御内容は、上記説明の「光学系1」を「撮像素子2」と適宜読み換えることで対応出来る。
【0092】
また、上記した実施の形態は、アクチュエータ6として圧電素子を用いた例が採用されて、説明がなされたが、駆動部15を電気的に同様に変位制御させることができれば、圧電素子以外のデバイスを用いても同様のことを行なえる。
【0093】
また、摩擦力の低下による駆動力低下を低減する方法として、アクチュエータ6への入力電圧振幅を増加する、アクチュエータ6の駆動部15の変位の速度を制御する、アクチュエータ6を駆動する信号周波数を増加する、または、アクチュエータ6の駆動部15と移動体20の間の摩擦力を制御する、という各方法を上記に述べたが、これらの手法を摩擦力の低下が推測されないで実行された場合には、問題が生じる。その理由は、これらの手法が実行されることによって、フォーカス制御の最小分解能が大きくなってしまい、フォーカス精度の低下を招くからである。なお、アクチュエータ6の駆動1ステップ分で移動体20が変位する量は、フォーカス制御処理の最小分解能となる。したがって、本実施の形態では、各方法は、上記係合部位の摩擦力の低下が検出された場合にのみ、実行されることが好ましい。
【0094】
また、以上説明した本実施の形態では、カメラモジュール10は、他の機器に組み込まれるものとして説明されたが、当該カメラモジュール10は、撮像装置500のように、単体で撮像装置として機能するように構成されても良い。つまり、カメラモジュール10は、たとえば図23に示されるように、外部からの操作内容を受け付ける入力部97をさらに含むことにより、他の機器に組み込まれるのではなく、単体で、撮像装置として機能するように構成されてもよい。
【0095】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一実施の形態であるカメラモジュールの概略構成を模式的に示す図である。
【図2】図1のカメラモジュールの制御ブロック図である。
【図3】図1のカメラモジュールのハードウェア構成を模式的に示す図である。
【図4】バイモルフ圧電素子の構成の一例を示す図である。
【図5】バイモルフ圧電素子の構成の一例を示す図である。
【図6】図4または図5の圧電素子が静止物に固定された状態を示す図である。
【図7】図6の圧電素子に電圧が印加された場合の挙動を説明するための図である。
【図8】本実施の形態のカメラモジュールで利用されるアクチュエータの一例の構成を模式的に示す図である。
【図9】図8に示された2つのバイモルフアクチュエータに入力される電圧の変化を示す図である。
【図10】図8に示されたアクチュエータの、図9の往時の電圧が入力された状態を示す図である。
【図11】図8に示されたアクチュエータの、図9の復時の電圧が入力された状態を示す図である。
【図12】図9に示されたようにアクチュエータに電圧が入力された場合の、駆動部と移動体の変位量の変化を示す図である。
【図13】図1のカメラモジュールを搭載した撮像装置によって被写体を撮影する状態を模式的に示す図である。
【図14】図1のカメラモジュールの撮像素子において結像される画像についての明度ヒストグラムの一例を示す図である。
【図15】図1のカメラモジュールにおける、光学系−撮像素子間距離とフォーカス評価値の関係を示す。
【図16】図1のカメラモジュールにおいて実行されるフォーカス制御処理のフローチャートである。
【図17】図1のカメラモジュールにおける、アクチュエータを駆動するステップ数と、光学系の位置との関係を示す図である。
【図18】図1のカメラモジュールにおける、平均フォーカス制御時間に対する摩擦力の関係の一例を示す図である。
【図19】図1のカメラモジュールにおける、平均フォーカス制御時間に対する、入力電圧振幅等の種々の値の関係の一例を示す図である。
【図20】図1のカメラモジュールにおける、平均フォーカス制御時間に対する、入力電圧振幅等の種々の値の関係の他の例を示す図である。
【図21】図1のカメラモジュールの変形例を示す図である。
【図22】図2の制御ブロック図の変形例を示す図である。
【図23】本発明の撮像装置の一実施の形態のハードウェア構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1 光学系、1A レンズ、2 撮像素子、3 フォーカス評価部、4 アクチュエータ制御部、5 駆動部、6 アクチュエータ、7 筐体、9 制御態様関係記憶部、10 カメラモジュール、11,13 電極、12 圧電素子、14 静止物、15 駆動部、16 リンク部材、17 芯材、20 移動体、21 連結部材、22 与圧用圧電素子、23 与圧用圧電素子固定部材、91 CPU、92 主記憶装置、94 RAM、95 アクチュエータ駆動部、96 外部I/F、97 入力部、100,200 バイモルフアクチュエータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモジュールに関し、特に、圧電素子を利用したアクチュエータを含むカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の機器にカメラ機能が取り入られた製品が少なくない。これらの製品には、通常カメラモジュールと云われる部品が搭載されている。カメラモジュールは、画像撮像用のCCD(Charge Coupled Devices)等の撮像素子、画像を撮像素子に結像する為のレンズ等を含む光学系、これらを支持しかつ保護するための筐体等から成る。
【0003】
従来の製品は、撮像画像のフォーカス制御が不要なパンフォーカス式のカメラモジュールが採用されていた。しかしながら、最近では、撮像素子の画素数が増え、撮像性能が向上してきたことを受けて、カメラモジュールにおいて撮像画像のフォーカス制御が必要となって来た。フォーカス制御が行なわれる際には、カメラモジュール内の光学系の一部または全部を変位可能に構成する必要がある。
【0004】
レンズを変位させるためには、駆動源(アクチュエータ)が必要である。カメラのフォーカス制御においては、既にフィルムカメラ或いはデジタルスチルカメラ等に搭載されているアクチュエータに関する技術が多数存在する。なお、携帯電話機向けとなると、カメラモジュールに要求されるサイズは、通常のカメラとは比較にならないほど小さくなる。つまり、携帯電話機には、サイズの大きいアクチュエータの搭載は不可能であり、特殊な小型アクチュエータが必要となる。
【0005】
小型という点で利用されるアクチュエータとして、圧電素子を利用したアクチュエータが挙げられる。なお、圧電素子を利用したアクチュエータについての従来技術としては、例えば特許文献1(特開2006−189648号公報)に開示されるものがある。当該公報では、圧電素子の伸縮性を利用して移動体を変位させる技術が開示されている。より具体的には、圧電素子に駆動電圧を与えて電気的に伸縮させて当該圧電素子に固定された駆動部材を振動させ、これにより、駆動部材と摩擦係合された移動体との間の摩擦関係を利用して、移動体を変位させようとする技術が開示されている。
【特許文献1】特開2006−189648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したようなカメラモジュールが搭載される機器の一つである携帯電話機は、このところ多機能化が進み、携帯電話機内に占める各部品のスペース確保が厳しくなってきている。また、ユーザからは携帯電話機の更なる小型化および薄型化の要求が強く、使用部品の小型化に拍車が掛かっている。そして、この様な状況はカメラモジュールに於いても例外ではない。
【0007】
一方、上述したカメラモジュールを構成する部品である撮像素子・光学系・レンズ駆動用アクチュエータ・筐体は必須の部品であり、工夫により小型化は可能であっても、省略は不可能である。
【0008】
なお、特許文献1では、上述のように、圧電素子を利用した駆動システムが記載されているが、このシステムでは、移動体の位置を知る為に位置センサが配設されている。これは、摩擦係合された移動体(および当該移動体に固定された光学系)を摩擦力で動かす場合は、摩擦部材の経年変化等により摩擦力が変動するため、圧電素子への入力に対する移動体の変位量にバラつきが生じる。特許文献1に開示された技術において、目的の位置に移動体を変位させるために、カメラモジュールに移動体の変位量を検出する位置センサが必要とされるのは、このような理由からである。位置センサが備えられた場合、摩擦部材の経年変化等によって移動体の変位量が低下した場合でも、圧電素子への入力に対する変位量が把握出来るので、圧電素子への電力の入力量を制御することで移動体の駆動速度の低下を低減できる。つまり、正確に、移動体を変位させることができる。
【0009】
しかしながら、上記システムでは、位置センサ、当該センサに通電する為の基板やコネクタ類、これらを支持する為の支持部材等が必要とされる。そして、このことが、カメラモジュールのサイズの小型化を阻んでいた。
【0010】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、正確に移動体を変位できかつ小型化が可能なカメラモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に従ったカメラモジュールは、レンズを介して入力される画像を撮像素子で結像させるカメラモジュールにおいて、電気的に制御されることにより変位する駆動部と、前記駆動部に摩擦係合された移動部と、前記レンズまたは前記撮像素子と前記移動部を連結させる連結部と、前記撮像素子で結像された画像のフォーカスを評価するフォーカス評価手段と、前記駆動部を電気的に制御することにより前記レンズと前記撮像素子の相対的な距離を変更させながら前記フォーカス評価手段にフォーカスの評価をさせ、これにより、前記撮像素子で結像される画像のフォーカスが合う前記レンズと前記撮像素子の相対的な位置を決定する、フォーカス制御を実行するフォーカス制御手段と、前記フォーカス制御に関わる履歴情報を記憶する履歴記憶手段と、前記履歴情報と前記駆動部に対する制御態様との関係を記憶する制御態様関係記憶手段とを備え、前記フォーカス制御手段は、前記制御態様関係記憶手段に記憶された制御態様の中から、前記履歴記憶手段に記憶された履歴情報に対応する制御態様に従って、前記駆動部を電気的に制御することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記履歴情報は、前記移動部と前記駆動部の摩擦係合部分の磨耗の指標となる情報であることが好ましい。
【0013】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記履歴情報は、1回の前記フォーカス制御に要した時間の情報であることが好ましい。
【0014】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記履歴情報は、前記フォーカス制御に費やした累積時間の情報であることが好ましい。
【0015】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記履歴情報は、前記フォーカス制御を実施した累積回数の情報であることが好ましい。
【0016】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記履歴情報は、前記駆動部に対して電気的に制御を実行した累積時間の情報であることが好ましい。
【0017】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記履歴情報は、前記駆動部に対して電気的に制御を実行した累積回数の情報であることが好ましい。
【0018】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記制御態様は、前記駆動部に入力する電圧の値を特定することが好ましい。
【0019】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記制御態様は、前記駆動部に入力する電圧の値を変化させる速度を特定することが好ましい。
【0020】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記制御態様は、前記駆動部に入力する電圧の周波数を特定することが好ましい。
【0021】
また、本発明のカメラモジュールでは、前記制御態様は、前記駆動部と前記移動部の摩擦係合部分の摩擦力を調整する態様であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
フォーカス制御手段が、制御態様関係記憶手段に記憶された制御態様の中から、履歴記憶手段に記憶された履歴情報に対応する制御態様に従って駆動部を電気的に制御するため、移動部の位置を検出するセンサが設けられなくとも、当該移動部の位置を、履歴に基づいて正確に変位することができる。
【0023】
したがって、カメラモジュールにおいて、正確に移動体を変位でき、かつ、移動体の位置を検知するセンサを省略できるので、小型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態であるカメラモジュールの概略構成を模式的に示す図であり、図2は、当該カメラモジュールの制御ブロック図を示す。
【0025】
図1および図2を参照して、カメラモジュール10は、主に、光学系1、撮像素子2、移動体20、および、当該移動体20を駆動するアクチュエータ6からなる。光学系1は、被写体像を撮像素子2に結像するための要素であり、レンズ1A、ミラー(図示せず)、およびこれらを支持する部材等の、一般的な光学系において備えられる要素を含む。撮像素子2は、光学系1によって結像された像を受光する要素であり、たとえば、CCDまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を利用したイメージセンサによって構成される。光学系1と撮像素子2は、筐体7に収容されている。
【0026】
本実施の形態のカメラモジュール10では、被写体像を撮像素子2に結像させるために、アクチュエータ6により、撮像素子2に対する光学系1の相対位置が変更される。アクチュエータ6は、たとえば、圧電素子を利用した小型のアクチュエータによって構成される。なお、アクチュエータ6と光学系1は、連結部材21によって連結されている。
【0027】
撮像素子2で得られた画像は、被写体に対してフォーカスが得られているかどうか(合焦しているか否か)を判断する必要がある。なお、撮影者が、カメラモジュール10の、フォーカスを調整する部分を操作することが出来る場合には、撮影者自身が合焦の判断をしつつ調整すればよい。しかしながら、カメラモジュール10側で判断がなされる場合には、当該カメラモジュール10側で、合焦しているか否かを評価する何らかの手段が必要となる。
【0028】
本実施の形態では、フォーカス評価部3によって、合焦しているか否かが評価される。なお、フォーカス評価部3がどのように合焦しているか否かを評価するかについては、後述する。
【0029】
アクチュエータ制御部4は、フォーカス評価部3による合焦しているか否かの評価に関する情報に基づいて、(光学系1を駆動する)アクチュエータ6の動きを制御する。
【0030】
駆動部5は、アクチュエータ制御部4からの情報に基づいて、アクチュエータ6を電気的に駆動する部分である。
【0031】
履歴記憶部8には、過去のフォーカス制御時における、フォーカス制御に関する結果が格納される。また、制御態様関係記憶部9には、後述するような、フォーカス制御に関わる履歴情報(たとえば、平均フォーカス制御時間)とアクチュエータ6に対する制御態様(たとえば、アクチュエータ6に入力する電圧の振幅)の関係を特定する情報が格納される。
【0032】
図3に、カメラモジュール10のハードウェア構成を模式的に示す。
カメラモジュール10は、上記した当該カメラモジュール10の動作を全体的に制御するCPU(Central Processing Unit)91、半導体メモリからなる主記憶装置92、CPU91のワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)94、アクチュエータ6への電圧の入力を後述するように制御するアクチュエータ駆動部95、および、カメラモジュール10が搭載される機器本体等とのインターフェースである外部I/F(外部インターフェース)96を含む。なお、外部I/F96は、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等の外部メディアに対する情報の読み込みおよび書き込みも行なう。CPU91は、主記憶装置92(および/または外部メディア)に記憶されたプログラムを実行することにより、カメラモジュール10の動作を制御する。図22中のフォーカス評価部3およびアクチュエータ制御部4はCPU91によって構成され、駆動部5はアクチュエータ駆動部95によって構成され、履歴記憶部8は主記憶装置92によって構成される。また、カメラモジュール10では、撮像素子2上で結像された画像データがファインダ画像として連続的にCPU91に入力され、さらに、たとえば外部I/F96を介して入力される、シャッタボタンが操作された旨の情報の応じて、当該画像データが主記憶装置92(および/または外部メディア)に撮影画像として格納される。
【0033】
アクチュエータ6は、バイモルフ圧電素子を利用したものである。ここで、図4〜図8を参照して、アクチュエータ6の構成について詳細に説明する。
【0034】
図4および図5には、バイモルフ圧電素子の構成の一例が示されている。板状の圧電素子12の主面およびその裏面のそれぞれに、電極11と電極13が設けられている。圧電素子12は、電圧+Vを印加されると、図4中の矢印で示されるように、収縮するように分極処理が施されている。このことから、当該圧電素子12は、図5に示されるように、図4で印加されたのとは逆の電圧(−V)を印加されると、当該図5中の矢印で示されるように伸張する。
【0035】
図6には、図4または図5で示したような圧電素子が、芯材17を介して2つ重ねられつつ、静止物14に固定された状態が示されている。なお、図6では、上側の圧電素子12に設けられた電極11と下側の圧電素子12に設けられた電極13とに、同じ電位の電圧が印加され、また、上側の圧電素子12に設けられた電極13と下側の圧電素子12に設けられた電極11とに、同じ電位の電圧が印加される状態が示されている。そして、このような状態で、電源から交流電圧が加えられると、(上側または下側の)一方の圧電素子12が収縮したとき、もう一方の圧電素子12が伸張する。これにより、図中の両矢印R12のように、交流電圧の半周期毎に、芯材17の一端(図6の右端)が上下に、つまり、図7(A)に示された状態と図7(B)に示された状態とを交互にとるように、変位する。
【0036】
このような、圧電素子12の電極11,13に電圧が印加された際の挙動を利用したアクチュエータ6の構成の一例を図8に示す。
【0037】
図8に示されたアクチュエータ6では、リンク材16の両端に2組のバイモルフアクチュエータ100,200が配設されている。リンク材16は弾性体であり、その両端を静止物14に固定されていると共に、その中央には駆動部15が取り付けられている。なお、図8に示されたアクチュエータ6では、2つのバイモルフアクチュエータ100,200の芯材として、リンク材16が共通に使用されているが、必ずしもその必要は無い。
【0038】
各圧電素子12の電極11および電極13は、図8に示されるように結線されている。バイモルフアクチュエータ100に対する入力電圧を電圧V1とし、バイモルフアクチュエータ200に対する入力電圧を入力V2とする。そして、この電圧V1,V2を、それぞれ図9に示すように時間に対して変化させると、図8のバイモルフアクチュエータ100,200は、互いに逆位相に変位する。図10に、バイモルフアクチュエータ100とバイモルフアクチュエータ200が互いに逆位相に変位する状態を示す。
【0039】
図10を参照して、この状態では、アクチュエータ6において、リンク材16は、バイモルフアクチュエータ100とバイモルフアクチュエータ200が異なる位相に変位しているために、N字状に変形している。なお、図10では、バイモルフアクチュエータ100、バイモルフアクチュエータ200、駆動部15、移動体20のそれぞれの変位を示す、実線の矢印と破線の矢印が示されている。図9において、「往時」と記された期間では、アクチュエータ6の各部は図10中の実線で示した方向に変位をする。また、図9において「復時」と記された期間では、アクチュエータ6の各部は図10中の破線で示した方向に変位をする。つまり、アクチュエータ6に対して、図9中の「往時」と「復時」で示される態様で一回ずつ電圧が入力されることにより、当該アクチュエータ6において、図10の実線で示される変位と破線で示される変位が実現される。図9では、「往時」と「復時」の1セットが「1ステップ」として示されている。そして、アクチュエータ6に対して、図9の「往時」と「復時」の電圧の入力態様が繰り返されることにより、アクチュエータ6は、図10中の実線方向の変位と破線方向の変位を繰り返し、これにより、駆動部15は、実線方向の変位と破線方向の変位を繰り返すように往復運動をする。
【0040】
なお、図10は、アクチュエータ6が、図8に示された状態から「往時」の期間で変位した状態を示す図である。一方、図11に、アクチュエータ6が、「復時」の期間で変位した状態を示す。
【0041】
そして、図10に矢印R1として示すように、移動体20は、アクチュエータ6の駆動部15に摩擦係合するように与圧をかけられて配置されることにより、駆動部15の変位に伴って、左右方向に(図10中の移動体20の矢印R21,R22で示される方向に)移動する。
【0042】
なお、図10中の矢印R21と矢印R22の長さが異なるのは、図9に示された態様でアクチュエータ6に電圧が入力されることによって、移動体20の各方向の変位量が異なることを意味している。ここで、矢印R21は、図9の往時の移動体20の変位に対応し、矢印R22は、図9の復時の移動体20の変位に対応しているとする。そして、以下に、往時と復時で、(駆動部15の変位量は同じであるのに対し)移動体20の変位量が異なる理由を説明する。
【0043】
駆動部15の上部には移動体20が配置されており、駆動部15と摩擦係合するように移動体20が与圧されている。図9に示すように、往時の期間と復時の期間とを異ならせることにより、移動体20を左右方向に移動させることが可能となる。
【0044】
すなわち、往時と復時とでは駆動部15の変位量は同じであるが、変位に要する時間が異なっているため、往時と復時とでは駆動部15の速度が異なっている。図9の様に電圧を加えると、往時の方が復時よりも速度が遅くなっている。そのため、往時の期間の方が復時の期間よりも駆動部15の加速度が小さくなり、駆動部15にかかる力も弱くなる。この往復時の駆動部15の駆動力と、移動体20と駆動部15との間の摩擦力との関係から移動体20を変位させることが可能である。
【0045】
往時において、駆動部15の駆動力が、移動体20と駆動部15との間の摩擦力よりも小さい場合、移動体20は駆動部15の動きに同期して右方向に移動する。
【0046】
また、復時において、駆動部15の駆動力が、移動体20と駆動部15との間の静止摩擦力よりも大きい場合、移動体20は駆動部15の動きに対して滑るような格好でやや左方向に移動するが、このときの変位量は往時の変位量よりも小さい。
【0047】
図12は、図9に示す交流電圧を繰返しアクチュエータ6に与えたときの移動体20の変位を示す図である。移動体20は、往時における変位と復時における変位とを繰り返しながら、右方向に移動していく。往時と復時とを合わせて1ステップとすると、1ステップで移動体20が移動する移動量は、往時における変位量と復時における変位量との差である。
【0048】
本実施の形態では、移動体20と光学系1が、連結部材21で結合されていることにより、アクチュエータ6に電圧が入力すれば、光学系1を駆動することができる。なお、移動体20を図9および図10を参照して説明した「往時の移動方向」とは逆の方向に移動させる場合は、図9を参照して説明した、入力する電圧を変化させる時間を、「往時」の期間と「復時」の期間で逆転すれば良い。
【0049】
次に、本実施の形態のカメラモジュール10における、撮像素子2において結像される画像に対するフォーカスの評価について説明する。
【0050】
図13に示されるように、カメラモジュール10を搭載された撮像装置500によって、当該撮像装置500の視野A1内の存在する被写体Sの撮影が行なわれると、被写体Fの画像が撮像素子2上で結像される。カメラモジュール10では、撮像素子2において結像される画像に対するフォーカスの評価は、当該画像の明度ヒストグラムに基づいて行なわれる。
【0051】
図14(A)および図14(B)は、それぞれ、撮像素子2からCPU91に入力される画像データの明度ヒストグラムである。図14(A)は、フォーカスが合った状態での明度ヒストグラムの一例であり、図14(B)は、フォーカスが合っていない状態での明度ヒストグラムの一例である。図14(A)および図14(B)に示される明度ヒストグラムでは、横軸に画素の明るさが、縦軸に画素の度数が、それぞれ定義されている。
【0052】
カメラモジュール10では、明度ヒストグラムに対して、フォーカス評価の判断とする為の度数Moが予め設定されている。なお、当該度数Moの値は、フォーカス評価における一般的な技術や撮像素子2の特定に基づいて適宜設定され、また、たとえば主記憶装置92に記憶されている。
【0053】
図14(A)および図14(B)に示された明度ヒストグラムカーブでは、Mo以上の度数を持つ明るさ(画像の明度)の範囲の最大値をフォーカス評価値Cとする。ここでは、フォーカスが合っている画像の明度ヒストグラムである図14(A)に基づいて得られた評価値CをCoとし、フォーカスが合っていない画像の明度ヒストグラムである図14(B)に基づいて得られた評価値CをCoとする。
【0054】
一般に、フォーカスの合った画像はコントラストが高く、同じ画像でフォーカスが合っていない画像はコントラストが低い。フォーカスが合っていない画像では、明度が全体的に中程度の値となるためである。つまり、Co>Cxとなる。
【0055】
図15に、光学系−撮像素子間距離(光学系1と撮像素子2との間の距離)とフォーカス評価値Cの関係を示す。光学系−撮像素子間距離Foで撮像画像のフォーカスが合ったとすると、その点でのフォーカス評価値が最大になり、その値がCoになると考えられる。なお、図14(A)および図15を参照した説明では、撮像画像全体の画素について明度ヒストグラムを作ったが、撮像画像の一部で同様の処理を行なっても同様の結果が得られる。
【0056】
ここで、カメラモジュール10においてフォーカスを合わせるために実行されるフォーカス制御処理のフローチャートである図16を参照して説明する。
【0057】
撮影時には、最初に光学系の位置を基準位置に移動しておく必要がある。そこで、フォーカス制御処理では、まずステップS1において、CPU91は、光学系1を予め定められた基準となる位置(初期位置)に移動させる。この移動は、たとえば、光学系1が最大移動位置であるMAX位置(筐体7において光学系1が移動体20によって移動され得る初期位置から最も離れた位置)にあると想定して、当該MAX位置から初期位置に移動させるのに必要な駆動量(電力)をアクチュエータ6に与えることにより実現される。
【0058】
もし、ステップS1が実行される時点で光学系1が上記MAX位置以外の位置に存在している場合には、アクチュエータ6は、光学系1が初期位置に戻った後も駆動される(電圧を入力される)ことになる。ただし、アクチュエータ6は、駆動部15と移動体20の間の摩擦力に移動体20(即ちこれに結合する光学系1)を駆動する。また、カメラモジュール10では、光学系1が上記初期位置に戻った後さらに移動体20が駆動されても、当該初期位置からそれ以上移動しないように光学系1を支持する機構が備えられている。これにより、上記のようにアクチュエータ6に対して(光学系1が上記初期位置に戻った後も)過剰に電圧が入力されても、単に駆動部15が移動体20に対して滑るだけであり、カメラモジュール10(のたとえば光学系1)が破損するようなことにはならない。
【0059】
上記したように、カメラモジュール10において、光学系1は、上記初期位置から、移動体20が駆動されることにより、設計上設定される最大移動位置である上記MAX位置まで移動可能に構成されている。図17に示されるように、横軸を光学系1を移動させるアクチュエータ6の駆動量(=ステップ数)とし、縦軸を光学系1の位置とした場合の、駆動数に応じた光学系1の位置の変化は、初期位置F1から、位置F2、位置F3を経て、MAX位置まで変化する。図17では、フォーカスが合っているときの光学系1の位置がフォーカス位置Ffとして示されている。光学系1がフォーカス位置Ffで特定される場合、光学系1と撮像素子2の間の距離は、図16中の光学系−撮像素子間距離Fo(またはそれに近い値)となる。
【0060】
本実施の形態では、徐々に光学系1を移動させてゆき、移動する毎にフォーカス評価を行なうものとする。なお、移動させる前に、まず、CPU91は、ステップS2で、その時点で撮像素子2から入力されている画像に基づいて、初期位置F1に於ける評価値C1を算出し、図16に示したようなグラフを生成するために当該評価値C1をRAM94に格納する。
【0061】
次に、CPU91は、アクチュエータ6に適宜電圧を入力することにより光学系1を所定変位量Lだけ移動させ(ステップS3)、そして、その位置Fnでの評価値Cnを算出するとともに当該評価値をRAM94に格納する(ステップS4)。
【0062】
次に、CPU91は、ステップS5で、直前のステップS4でRAM94に格納した評価値(Cn)とその前の回に格納した評価値(Cn−1)とを比較する。たとえば、直前のステップS4で上記初期位置F1からLだけ移動された位置F2に移動されてC2がRAM94に格納された場合、ステップS5では、C1とC2が比較される。そして、比較の結果、CPU91は、Cn−1≦Cnであると判断すればステップS3に処理を戻し、Cn−1>Cnであると判断すればステップS6に処理を進める。
【0063】
なお、図15から理解されるように、Cn−1≦Cnである間は、Cnは未だフォーカス点に達していないと考えられ、そして、Cn−1>Cnとなれば、フォーカス点に達した(フォーカス点を通過した)と考えられる。ステップS5の処理は、このような考えに基づいて行なわれる処理である。
【0064】
ステップS6では、CPU91は、Cn−1を格納したときの位置Fn−1に光学系1を移動させて、フォーカス制御処理を終了させる。
【0065】
光学系1を移動させる単位である所定変位量Lについては、光学系1の大きさ等に基づいて、任意の値が設定されれば良い。
【0066】
次に、フォーカス制御される際の、光学系1の移動について説明する。
カメラモジュール10では、図1を参照して説明したように、光学系1は、アクチュエータ6に摩擦係合された移動体20と連結部材21により連結されている。これにより、移動体20の移動に伴って、光学系1が、撮像素子2との距離を変化させるように、移動することができる。
【0067】
フォーカス制御が行なわれる場合、上記したように、光学系1の位置を上記初期位置から徐々に(たとえば、撮像素子2に近づけるように)移動させてゆき、光学系1が所定変位量Lだけ移動するためにアクチュエータ6に電圧が入力される毎に、フォーカスの評価が行なわれる。
【0068】
ただし、アクチュエータ6に光学系1が所定変位量Lだけ移動するように電圧が入力されても、実際に光学系1が所定変位量Lだけ移動するとは限らない。その理由は、アクチュエータ6は、摩擦係合された移動体20を摩擦力で動かすので、摩擦部材(両者の摩擦係合する部位)の経年変化等により摩擦力が変動する為、アクチュエータ6への電圧の入力に対する移動体20の移動量がバラつくことによる。なお、経年変化としては、摩擦部材の劣化或いは磨耗による摩擦力の低下が挙げられる。
【0069】
本実施の形態では、上記係合部位においてどの程度摩擦力の低下が起こっているかを検出するために、たとえば1回のフォーカス制御に要する時間が検出される。これは、摩擦力が低下すると、アクチュエータに同じ時間だけ同じパターンで電圧が入力されても、アクチュエータ6による移動体20の移動量が小さくなり、これにより、制御終了まで(フォーカス位置に光学系1が到達するまで)に要する時間が長くなると考えられることに起因している。
【0070】
しかしながら、フォーカス制御において光学系1が移動することを必要とされる距離は、カメラモジュール10が搭載される撮像装置と被写体との距離(位置関係)等の(上記摩擦力の低下以外の)他の要因によっても異なるため、上記摩擦力に変化がなくとも、アクチュエータ駆動時間(即ち、フォーカス制御に要する時間。以下、フォーカス制御時間とも言う。)は変化するものである。
【0071】
このことから、1回のフォーカス制御時間を以って上記摩擦力の低下を判断する事は出来ない。この不具合を避ける為に、例えば、過去のフォーカス制御時間の何回かの平均値を以って平均フォーカス制御時間としてアクチュエータの摩擦力の低下を判断する。この様にすれば、使用者が撮影する被写体までの距離が撮影毎に違っていても判断を誤る可能性が低くなる。
【0072】
フォーカス制御時間のカウントは、例えば、フォーカス制御処理の開始時から終了時までのCPU91のクロック数をカウントすることで実現できる。このカウント数をフォーカス制御時間として履歴記憶部8に格納すればよい。平均フォーカス制御時間を得るのに、例えば、過去10回のフォーカス制御時間の平均を得るには、履歴記憶部8に10件分の記憶領域を用意しておき、最新の10件分のフォーカス制御時間を格納しておく。そして、次にフォーカス制御が行なわれる際には、その回のフォーカス制御処理に要した時間と履歴記憶部8に格納された最新の10件分のフォーカス制御時間の平均値とに基づいて、上記係合部位の摩擦力の低下量が判断される。
【0073】
摩擦力の低下による移動体20の移動量低下を低減する方法として、アクチュエータ6に与える入力電圧の振幅を増やすという方法がある。バイモルフ型アクチュエータの変位は入力電圧に比例するという事実から、入力電圧の振幅を増やすことで、駆動部15の(図10中の実線または破線の矢印で示す方向の)変位量を増やすことが出来る。駆動部15の変位量を増やすことが出来れば、移動体20に対して摩擦駆動できる距離が増え、1ステップ当たりの移動体20の移動量を増やすことが出来る。これにより、摩擦力の低下による移動量の低下を低減出来る。
【0074】
なお、アクチュエータ6に入力する電圧の振幅を制御する場合、平均フォーカス制御時間に対する摩擦力の関係が図18のようであったとすると、摩擦力低減による移動体20の移動量低下を低減させるのには、平均フォーカス制御時間に対する、入力電圧振幅(アクチュエータ6に入力される電圧の振幅)の関係が、図19に示されるように設定されれば良い。
【0075】
また、アクチュエータに与える入力電圧の振幅を制御する場合、平均フォーカス制御時間に対する摩擦力の関係が図18のようである場合、摩擦力低減による移動体20の移動量低下を低減させるために、図20に示すように、一定の平均フォーカス制御時間範囲に対して、入力電圧振幅を段階的に変化させても良い。
【0076】
なお、図18は、平均フォーカス制御時間と摩擦力との関係を模式的に示す図であって、具体的な摩擦力の計測結果ではない。ただし、予めカメラモジュールにおいて、図18に示されるような関係を履歴記憶部8等に格納しておき、これにより、平均フォーカス制御時間を算出することによって、CPU91が算出値と格納された関係とを参照することにより、上記係合部位の摩擦力がどの程度低下しているかを予測することができる。
【0077】
また、摩擦力の低下による移動体20の移動量低下を低減する他の方法として、アクチュエータ6に与える、図9に示す入力電圧の1周期内(1ステップ内)の復時期間を減らすという方法がある。これは上記で説明したように、圧電素子12の伸縮の速度を制御することになる。すなわち、駆動部15の往時と復時の速度を制御することになる。
【0078】
具体的には、復時期間を減らすことにより、復時の駆動部15の移動速度が大きくなり、これにより、駆動部15に与えられる加速度が大きくなるため、駆動部15が移動体20を滑りながら復時方向へ移動させる力が働く時間が小さくなる。この為、1ステップ内で移動体20が復時方向へ移動する距離が小さくなる。したがって、1ステップ内での移動体20の往時方向への移動量が増えることになる。これにより、摩擦力の低下による移動量の低下を低減出来る。アクチュエータ6に与える往復時期間を制御する場合、復時期間に対する往時期間の割合を「往時期間率」とすると、平均フォーカス制御時間に対する摩擦力の関係が図18のようであったとすると、摩擦力低減による移動体の移動量の低下を低減するのには、平均フォーカス制御時間に対する往時期間率の関係を図19のように設定すれば良く、または、図20のように一定の平均フォーカス制御時間範囲に対して往時期間率をステップ的に変化させても良い。
【0079】
また、本実施の形態では、上記係合部位の摩擦力の低下による移動体20の移動量低下を低減する他の方法として、アクチュエータ6に与える入力電圧の周波数を増やすという方法も考えられる。入力電圧の周波数を増やすことで、単位時間当たりの駆動部15の駆動量(アクチュエータ6に入力する電力量)を増やし、これにより、移動体20の移動量を増やすことが出来る。したがって、摩擦力の低下による移動量の低下を低減できる。アクチュエータ6に入力する電圧の周波数を制御する場合、平均フォーカス制御時間に対する摩擦力の関係が図18のようであったとすると、摩擦力低減による移動体20の移動量低下を低減するのには、平均フォーカス制御時間に対する入力電圧周波数の関係を図19のように設定すれば良い。或いは、図20のように一定の平均フォーカス制御時間範囲に対して入力電圧周波数をステップ的に変化させても良い。
【0080】
また、本実施の形態における上記係合部位の摩擦力の低下による移動体20の移動量低下を低減する他の方法として、アクチュエータ6の駆動部15と移動体20との間の摩擦力を増やすという方法がある。図21に、摩擦力を増やすためのカメラモジュール10の変形例の一例を示す。
【0081】
図21に示された変形例では、図1に示したカメラモジュールに対して、当該アクチュエータ6を移動体20に向けて押し付ける機構が追加されている。具体的には、与圧用圧電素子22を与圧用圧電素子固定部材23に取り付けたものが、アクチュエータ6の、移動体20と対向する側とは反対側に取り付けられている。与圧用圧電素子固定部材23は、移動体20を支持しているものと連結されていることが望ましい。与圧用圧電素子22は、図示しない電源(電源90)から電圧の供給を受けて、アクチュエータ6が移動体20に向かう方向(両矢印R4が示す方向)に伸縮するように配設されている。与圧用圧電素子22に、両矢印R4方向に伸張するように電圧が加えられると、アクチュエータ6は、移動体20に押し付けられるようになる。実際にはアクチュエータ6の駆動部15が移動体20に押し付けられる。すなわち、与圧用圧電素子22が移動体15の方向に伸張するように電圧を加えると駆動部15と移動体20との間の摩擦力が増加する。これにより、摩擦力の低下による移動量の低下を低減出来る。CPU91が与圧用圧電素子22に与える入力電圧を制御する場合、与圧用圧電素子22の伸縮量は印加する電圧の値に比例するので、平均フォーカス制御時間に対する摩擦力の関係が図18の様であったとすると、摩擦力低減による移動体20の移動量低下を低減するためには、平均フォーカス制御時間に対する与圧用圧電素子22に与える入力電圧の値の関係を、図19のように設定すれば良く(ただし、与圧用圧電素子22が伸張する方向に与える入力電圧を正とする)、または、図20のように一定の平均フォーカス制御時間範囲に対して与圧用圧電素子22に与える入力電圧を段階的に変化させても良い。
【0082】
以上説明したカメラモジュール10において、図19〜図20を参照して説明したような関係を特定する情報は、制御態様関係記憶部9に格納されている。
【0083】
[他の変形例]
カメラモジュール10では、CPU91は、アクチュエータ6と移動体20との間で、どの程度摩擦力の低下が起こっているかを検出するために、たとえば、累積フォーカス制御回数(フォーカス制御処理が実行された累積回数)、あるいは、累積フォーカス制御時間(フォーカス制御処理が実行された時間を累積した時間)をカウントし、当該カウントした値に基づいてどの程度摩擦力が低下しているかを判断することができる。これは、フォーカス制御するということは、アクチュエータ6の動作を伴うということから関連付けられ、フォーカス制御回数または制御時間が増えると、駆動部15および移動体20の係合部位が摩擦する時間が増え、これにより、磨耗が進み、摩擦力が低下すると考えられるからである。
【0084】
摩擦力の低下による駆動力低下を低減する方法として、図18〜図20を用いて説明したのと同様の方法を適用すれば良い。即ち、図18〜図20の各横軸を、フォーカス制御累積回数または累積制御時間に置換することにより、同様の効果を得ることが出来る。
【0085】
つまり、CPU91は、フォーカス制御処理において、入力電圧振幅、往時期間率、(入力電圧の)周波数、または、与圧用圧電素子22への入力電圧が、横軸を置換後の図19または図20の関係に基づいて、その時点でのフォーカス制御累積回数(または累積制御時間)に対応する値へと変更される。
【0086】
累積フォーカス制御回数をカウントするには、CPU91は、フォーカス制御を行なう度に、履歴記憶部8に記憶するカウント値に対して「+1」を足し込んでゆく。
【0087】
また、累積フォーカス制御時間をカウントするには、CPU91は、フォーカス制御処理を実行する際に、当該処理が開始されてから終了するまでの時間を履歴記憶部8に足し込んでゆく。時間は、たとえば当該CPU91のクロック数とすることができる。そして、次にアクチュエータを駆動する際に履歴記憶部8の値を参照し、その結果に基づいてアクチュエータ6への入力電圧等を制御を実行すればよい。
【0088】
[さらに他の変形例について]
また、CPU91は、カメラモジュール10のアクチュエータ6と移動体20の係合部位においてどの程度摩擦力の低下が起こっているかを検出するために、例えばアクチュエータ6の駆動部15の累積駆動回数または累積駆動時間をカウントすることで推し量る事ができる。これは、駆動部駆動回数または駆動時間が増えると、駆動部15および移動体20の接触部が磨耗することで摩擦力が低下するからである。
【0089】
摩擦力の低下による駆動力低下を低減する方法として、図18〜図20を用いて説明したのと同様の方法を適用すれば良い。即ち、図18〜図20の各横軸を、駆動部累積駆動回数或いは累積駆動時間に置換することにより、同様の効果を得ることが出来る。
【0090】
駆動部累積駆動回数或いは累積駆動時間をカウントするには、アクチュエータ6に与えた駆動量(=ステップ数)或いは駆動時間を累積的にカウントすれば良く、アクチュエータ6を駆動する度にその時駆動したステップ数或いは駆動時間を履歴記憶部に足し込んでゆく。そして、次にアクチュエータを駆動する際に履歴記憶部の値を参照し、その結果に基づいてアクチュエータへの入力電圧を制御すればよい。
【0091】
以上、本説明したカメラモジュール10では、光学系1を撮像素子2に対して変位させることでフォーカスを合わせていたが、図22に示すように、撮像素子2を光学系1に対して変位させても良い。この場合、光学系1の代わりに撮像素子2が、移動体20と連結部材21で連結される。なお、具体的な制御内容は、上記説明の「光学系1」を「撮像素子2」と適宜読み換えることで対応出来る。
【0092】
また、上記した実施の形態は、アクチュエータ6として圧電素子を用いた例が採用されて、説明がなされたが、駆動部15を電気的に同様に変位制御させることができれば、圧電素子以外のデバイスを用いても同様のことを行なえる。
【0093】
また、摩擦力の低下による駆動力低下を低減する方法として、アクチュエータ6への入力電圧振幅を増加する、アクチュエータ6の駆動部15の変位の速度を制御する、アクチュエータ6を駆動する信号周波数を増加する、または、アクチュエータ6の駆動部15と移動体20の間の摩擦力を制御する、という各方法を上記に述べたが、これらの手法を摩擦力の低下が推測されないで実行された場合には、問題が生じる。その理由は、これらの手法が実行されることによって、フォーカス制御の最小分解能が大きくなってしまい、フォーカス精度の低下を招くからである。なお、アクチュエータ6の駆動1ステップ分で移動体20が変位する量は、フォーカス制御処理の最小分解能となる。したがって、本実施の形態では、各方法は、上記係合部位の摩擦力の低下が検出された場合にのみ、実行されることが好ましい。
【0094】
また、以上説明した本実施の形態では、カメラモジュール10は、他の機器に組み込まれるものとして説明されたが、当該カメラモジュール10は、撮像装置500のように、単体で撮像装置として機能するように構成されても良い。つまり、カメラモジュール10は、たとえば図23に示されるように、外部からの操作内容を受け付ける入力部97をさらに含むことにより、他の機器に組み込まれるのではなく、単体で、撮像装置として機能するように構成されてもよい。
【0095】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一実施の形態であるカメラモジュールの概略構成を模式的に示す図である。
【図2】図1のカメラモジュールの制御ブロック図である。
【図3】図1のカメラモジュールのハードウェア構成を模式的に示す図である。
【図4】バイモルフ圧電素子の構成の一例を示す図である。
【図5】バイモルフ圧電素子の構成の一例を示す図である。
【図6】図4または図5の圧電素子が静止物に固定された状態を示す図である。
【図7】図6の圧電素子に電圧が印加された場合の挙動を説明するための図である。
【図8】本実施の形態のカメラモジュールで利用されるアクチュエータの一例の構成を模式的に示す図である。
【図9】図8に示された2つのバイモルフアクチュエータに入力される電圧の変化を示す図である。
【図10】図8に示されたアクチュエータの、図9の往時の電圧が入力された状態を示す図である。
【図11】図8に示されたアクチュエータの、図9の復時の電圧が入力された状態を示す図である。
【図12】図9に示されたようにアクチュエータに電圧が入力された場合の、駆動部と移動体の変位量の変化を示す図である。
【図13】図1のカメラモジュールを搭載した撮像装置によって被写体を撮影する状態を模式的に示す図である。
【図14】図1のカメラモジュールの撮像素子において結像される画像についての明度ヒストグラムの一例を示す図である。
【図15】図1のカメラモジュールにおける、光学系−撮像素子間距離とフォーカス評価値の関係を示す。
【図16】図1のカメラモジュールにおいて実行されるフォーカス制御処理のフローチャートである。
【図17】図1のカメラモジュールにおける、アクチュエータを駆動するステップ数と、光学系の位置との関係を示す図である。
【図18】図1のカメラモジュールにおける、平均フォーカス制御時間に対する摩擦力の関係の一例を示す図である。
【図19】図1のカメラモジュールにおける、平均フォーカス制御時間に対する、入力電圧振幅等の種々の値の関係の一例を示す図である。
【図20】図1のカメラモジュールにおける、平均フォーカス制御時間に対する、入力電圧振幅等の種々の値の関係の他の例を示す図である。
【図21】図1のカメラモジュールの変形例を示す図である。
【図22】図2の制御ブロック図の変形例を示す図である。
【図23】本発明の撮像装置の一実施の形態のハードウェア構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1 光学系、1A レンズ、2 撮像素子、3 フォーカス評価部、4 アクチュエータ制御部、5 駆動部、6 アクチュエータ、7 筐体、9 制御態様関係記憶部、10 カメラモジュール、11,13 電極、12 圧電素子、14 静止物、15 駆動部、16 リンク部材、17 芯材、20 移動体、21 連結部材、22 与圧用圧電素子、23 与圧用圧電素子固定部材、91 CPU、92 主記憶装置、94 RAM、95 アクチュエータ駆動部、96 外部I/F、97 入力部、100,200 バイモルフアクチュエータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを介して入力される画像を撮像素子で結像させるカメラモジュールにおいて、
電気的に制御されることにより変位する駆動部と、
前記駆動部に摩擦係合された移動部と、
前記レンズまたは前記撮像素子と前記移動部を連結させる連結部と、
前記撮像素子で結像された画像のフォーカスを評価するフォーカス評価手段と、
前記駆動部を電気的に制御することにより前記レンズと前記撮像素子の相対的な距離を変更させながら前記フォーカス評価手段にフォーカスの評価をさせ、これにより、前記撮像素子で結像される画像のフォーカスが合う前記レンズと前記撮像素子の相対的な位置を決定する、フォーカス制御を実行するフォーカス制御手段と、
前記フォーカス制御に関わる履歴情報を記憶する履歴記憶手段と、
前記履歴情報と前記駆動部に対する制御態様との関係を記憶する制御態様関係記憶手段とを備え、
前記フォーカス制御手段は、前記制御態様関係記憶手段に記憶された制御態様の中から、前記履歴記憶手段に記憶された履歴情報に対応する制御態様に従って、前記駆動部を電気的に制御する、カメラモジュール。
【請求項2】
前記履歴情報は、前記移動部と前記駆動部の摩擦係合部分の磨耗の指標となる情報である、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項3】
前記履歴情報は、1回の前記フォーカス制御に要した時間の情報である、請求項1または請求項2に記載のカメラモジュール。
【請求項4】
前記履歴情報は、前記フォーカス制御に費やした累積時間の情報である、請求項1または請求項2に記載のカメラモジュール。
【請求項5】
前記履歴情報は、前記フォーカス制御を実施した累積回数の情報である、請求項1または請求項2に記載のカメラモジュール。
【請求項6】
前記履歴情報は、前記駆動部に対して電気的に制御を実行した累積時間の情報である、請求項1のカメラモジュール。
【請求項7】
前記履歴情報は、前記駆動部に対して電気的に制御を実行した累積回数の情報である、請求項1のカメラモジュール。
【請求項8】
前記制御態様は、前記駆動部に入力する電圧の値を特定する、請求項1〜請求項7のいずれかに記載のカメラモジュール。
【請求項9】
前記制御態様は、前記駆動部に入力する電圧の値を変化させる速度を特定する、請求項1〜請求項7のいずれかに記載のカメラモジュール。
【請求項10】
前記制御態様は、前記駆動部に入力する電圧の周波数を特定する、請求項1〜請求項7のいずれかに記載のカメラモジュール。
【請求項11】
前記制御態様は、前記駆動部と前記移動部の摩擦係合部分の摩擦力を調整する態様である、請求項1〜請求項7のいずれかに記載のカメラモジュール。
【請求項1】
レンズを介して入力される画像を撮像素子で結像させるカメラモジュールにおいて、
電気的に制御されることにより変位する駆動部と、
前記駆動部に摩擦係合された移動部と、
前記レンズまたは前記撮像素子と前記移動部を連結させる連結部と、
前記撮像素子で結像された画像のフォーカスを評価するフォーカス評価手段と、
前記駆動部を電気的に制御することにより前記レンズと前記撮像素子の相対的な距離を変更させながら前記フォーカス評価手段にフォーカスの評価をさせ、これにより、前記撮像素子で結像される画像のフォーカスが合う前記レンズと前記撮像素子の相対的な位置を決定する、フォーカス制御を実行するフォーカス制御手段と、
前記フォーカス制御に関わる履歴情報を記憶する履歴記憶手段と、
前記履歴情報と前記駆動部に対する制御態様との関係を記憶する制御態様関係記憶手段とを備え、
前記フォーカス制御手段は、前記制御態様関係記憶手段に記憶された制御態様の中から、前記履歴記憶手段に記憶された履歴情報に対応する制御態様に従って、前記駆動部を電気的に制御する、カメラモジュール。
【請求項2】
前記履歴情報は、前記移動部と前記駆動部の摩擦係合部分の磨耗の指標となる情報である、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項3】
前記履歴情報は、1回の前記フォーカス制御に要した時間の情報である、請求項1または請求項2に記載のカメラモジュール。
【請求項4】
前記履歴情報は、前記フォーカス制御に費やした累積時間の情報である、請求項1または請求項2に記載のカメラモジュール。
【請求項5】
前記履歴情報は、前記フォーカス制御を実施した累積回数の情報である、請求項1または請求項2に記載のカメラモジュール。
【請求項6】
前記履歴情報は、前記駆動部に対して電気的に制御を実行した累積時間の情報である、請求項1のカメラモジュール。
【請求項7】
前記履歴情報は、前記駆動部に対して電気的に制御を実行した累積回数の情報である、請求項1のカメラモジュール。
【請求項8】
前記制御態様は、前記駆動部に入力する電圧の値を特定する、請求項1〜請求項7のいずれかに記載のカメラモジュール。
【請求項9】
前記制御態様は、前記駆動部に入力する電圧の値を変化させる速度を特定する、請求項1〜請求項7のいずれかに記載のカメラモジュール。
【請求項10】
前記制御態様は、前記駆動部に入力する電圧の周波数を特定する、請求項1〜請求項7のいずれかに記載のカメラモジュール。
【請求項11】
前記制御態様は、前記駆動部と前記移動部の摩擦係合部分の摩擦力を調整する態様である、請求項1〜請求項7のいずれかに記載のカメラモジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2008−256800(P2008−256800A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96687(P2007−96687)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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