説明

カメラ用像ブレ補正装置

【課題】光軸周りの回転ブレ補正時のブレ量検出センサの誤差成分を含んだ出力に基づく静止画撮影画像の傾きを軽減するとともに、撮影前の液晶モニタ画像や、動画撮影した画像は傾かないようにしたカメラ用像ブレ補正装置を提供する。
【解決手段】カメラ用像ブレ補正装置は、撮像装置のブレ量を検出するセンサ部を備える。撮像素子ISを有し、ブレ量に基づいて、撮像装置の光軸に垂直な平面上を移動する可動部を備える。可動部の移動制御を行う制御部(制御演算部)13を備える。制御部13が可動部の移動制御を行う場合、静止画撮影モードで且つ画像電荷蓄積期間は、可動部について平面上の回転運動と直交2方向への直線運動による移動制御を行い、スルー画像表示の時及び動画撮影時には、可動部について平面上の直交2方向への直線運動による移動制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置におけるカメラ用像ブレ補正装置に関し、特にジャイロセンサ等による手ブレ量検出センサの誤差特性による悪影響を軽減したカメラ用像ブレ補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラなどの撮像装置において撮像中に生じた手ブレ量に応じて、像ブレ補正レンズまたは撮像素子を光軸と垂直な平面上を移動させることにより結像面上での像ブレを抑制するカメラ用像ブレ補正装置が提案されている。
【0003】
特許文献1は、ピッチングジャイロセンサ、ローリングジャイロセンサ、ヨーイングジャイロセンサの3軸方向のジャイロセンサを用いて、ブレ量を検出し、xy平面上を、回転を含む移動可能な撮像素子を駆動するカメラ用像ブレ補正装置を開示する。
【特許文献1】特開2005−351917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば特許文献1の装置で、ローリングジャイロセンサを用いて光軸周りの回転ブレ補正を行おうとすると、ローリングジャイロセンサからのオフセット出力のため、光軸周りに画像が大きく傾く。特に、撮影前の構図を液晶モニタで観察中は、使用者が違和感を感じることになり、そのまま静止画撮影を行うと、傾いた撮影画像が得られてしまうことになる。同じように、動画を撮影した場合も、大きく傾いてしまう。またジャイロセンサ等の手ブレ検出センサにおいて、オフセット等の誤差を完全になくすことは技術的に難しい。
【0005】
したがって本発明の目的は、光軸周りの回転ブレ補正時のブレ量検出センサの誤差成分を含んだ出力に基づく静止画撮影画像の傾きを軽減するとともに、撮影前の液晶モニタ画像や、動画撮影した画像は傾かないようにしたカメラ用像ブレ補正装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るカメラ用像ブレ補正装置は、撮像装置のブレ量を検出するセンサ部と、撮像素子を有し、ブレ量に基づいて、撮像装置の光軸に垂直な平面上を移動する可動部と、可動部の移動制御を行う制御部とを備え、制御部が可動部の移動制御を行う場合、静止画撮影モードで且つ画像電荷蓄積期間は、可動部について平面上の回転運動と直交2方向への直線運動による移動制御を行い、スルー画像表示の時及び動画撮影時には、可動部について平面上の直交2方向への直線運動による移動制御を行う。
【0007】
好ましくは、センサ部は、ピッチング検出センサ、ローリング検出センサ、及びヨーイング検出センサを有し、制御部は、静止画撮影モードで且つ画像電荷蓄積期間に、ピッチング検出センサ、ローリング検出センサ、及びヨーイング検出センサからの信号に基づいてブレ量の検出を行う第1ブレ量検出状態と、スルー画像表示の時及び動画撮影時に、ピッチング検出センサとヨーイング検出センサからの信号に基づいてブレ量の検出を行う第2ブレ量検出状態との切り替え制御を行う。
【0008】
さらに好ましくは、ピッチング検出センサ、ローリング検出センサ、ヨーイング検出センサは、ジャイロセンサである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、光軸周りの回転ブレ補正時のブレ量検出センサの誤差成分を含んだ出力に基づく撮影画像の傾きを軽減するとともに、撮影前には、撮影前の液晶モニタ画像は傾かないようにしたカメラ用像ブレ補正装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本実施形態について、図を用いて説明する。カメラ本体1はデジタルカメラであるとして説明する。なお、方向を説明するために、カメラ本体1において、レンズ鏡筒2内に収容されている撮影レンズ(不図示)の光軸Oと直交する水平方向を第1方向x、光軸Oと直交する鉛直方向を第2方向y、光軸Oと平行な水平方向を第3方向zとして説明する。
【0011】
カメラ本体1は、レンズ鏡筒2、及び撮像素子ISを有する(図1参照)。カメラ本体1は、像ブレ補正部10、制御演算部13、表示部20、及び記憶部21を有する(図2参照)。
【0012】
被写体像は、CCDなどの撮像素子ISによって撮影レンズを介した光学像が電荷として蓄積され、蓄積された信号が転送されA/D変換された後、制御演算部13によって画像処理され、表示部20によって撮像された画像が表示される。また、撮像により得られた画像信号は、メモリーカードなどの記憶部21により記録される。
【0013】
レリーズボタン16は、半押しすることにより測光スイッチ17aがオン状態にされ測光や測距及び合焦動作が行われ、全押しすることによりレリーズスイッチ17bがオン状態にされ撮像が行われ、撮影像が記憶部21に記録される。カメラ本体1が静止画撮影モードでレリーズスイッチ17bがオン状態にされると続いて撮像素子ISに光学像が電荷蓄積される。電荷蓄積される期間(画像電荷蓄積期間te)は、ローリングジャイロセンサGSRからの角速度に関する信号に基づく像ブレ補正制御が行われる。表示部20におけるスルー画像表示される時及び動画撮影時は、ローリングジャイロセンサGSRからの角速度に関する信号に基づく像ブレ補正制御は行われない。
【0014】
ローリングジャイロセンサGSRからの角速度に関する信号に基づく像ブレ補正がオン状態の時、ピッチングジャイロセンサGSYとヨーイングジャイロセンサGSXとローリングジャイロセンサGSRからの角速度に関する信号に基づいて像ブレ補正が行われる(第1ブレ量検出状態)。ローリングジャイロセンサGSRからの角速度に関する信号に基づく像ブレ補正がオフ状態の時、ピッチングジャイロセンサGSYとヨーイングジャイロセンサGSXからの角速度に関する信号に基づいて像ブレ補正が行われる(第2ブレ量検出状態)。
【0015】
像ブレ補正部10は、手ブレ量に対応して、可動部15aについて光軸Oに垂直な平面上の回転運動と直交2方向への直線運動による移動制御を行い、手ブレによって生じた被写体像の結像面におけるずれを無くし、被写体像と結像面位置を一定に保つことで、像ブレを補正する装置である。像ブレ補正部10は、手ブレ量を検出するブレ量検出部11と、手ブレ量に基づいて可動部15aを光軸Oに垂直な基準平面上(以下、xy平面上とする)の回転運動及び第1方向x及び第2方向yへの直線運動させる駆動部15とを有する。手ブレ量に基づく可動部15aの移動制御は、制御演算部13によって行われる。
【0016】
ブレ量検出部11は、ジャイロセンサなどの角速度センサによるブレ量検出を行う。ブレ量検出部11のうちピッチングジャイロセンサGSY、及びヨーイングジャイロセンサGSXは、カメラメイン基板7に取り付けられ、ローリングジャイロセンサGSRは、カメラメイン基板7に対して垂直に配置されたサブ基板8に取り付けられる。サブ基板8とカメラメイン基板7との間は、フレキシブル基板9で接続される。
【0017】
制御演算部13は、像ブレ補正制御を公知の制御方式であるPID制御方式で行うために、第1、第2鉛直方向誤差増幅回路63A、63B、水平方向誤差増幅回路65、第1、第2鉛直方向PID(比例・積分・微分)演算回路66A、66B、水平方向PID演算回路68、第1、第2鉛直方向PWMドライバ69A、69B、及び水平方向PWMドライバ71を有する。制御演算部13は、カメラ本体1が静止画撮影モード設定か動画撮影モード設定か、撮像素子ISが画像電荷蓄積中か否か、及びスルー画像表示時か否かから、像ブレ補正動作を如何に行うかを制御する。
【0018】
駆動部15は、可動部15aと固定部15bとから構成される(図1、8〜10参照)。可動部15aは、カメラ本体1に固定された固定部15bに対して、xy平面上に移動可能である。可動部15aは、撮像素子ISが取り付けられた撮像板基板45、第1、第2水平方向駆動用コイルCXA、CXB、第1、第2鉛直方向駆動用コイルCYA、CYB、第1、第2鉛直方向ホールセンサSYA、SYB、及び水平方向ホールセンサSXを有する。固定部15bは、枠18、第1、第2水平方向枠連結部FXA、FXB、第1、第2鉛直方向枠固定部FYA、FYB、第1、第2水平方向駆動及び位置検出用ヨークYXA、YXB、鉛直方向駆動及び位置検出用ヨークYY、第1、第2水平方向駆動及び位置検出用磁石MXA、MXB、及び第1、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYA、MYBを有する。駆動部15の固定部15bは、後ろ側はカメラメイン基板7に、前側はレンズ鏡筒2に取り付けられる。
【0019】
まず、ブレ量検出部11について説明する(図1〜7参照)。ブレ量検出部11は、ピッチングジャイロセンサGSY、ローリングジャイロセンサGSR、ヨーイングジャイロセンサGSX、ピッチング積分回路60、ローリング積分回路61、及びヨーイング積分回路62を有する。
【0020】
ピッチングジャイロセンサGSYは、ジャイロセンサ軸GSYOが第1方向xと平行に配置され、カメラ本体1の第1方向x軸周りの回転運動(ピッチング)の角速度を検出する。ローリングジャイロセンサGSRは、ジャイロセンサ軸GSROが第3方向zと平行に配置され、カメラ本体1の第3方向z軸周りの回転運動(ローリング)の角速度を検出する。ヨーイングジャイロセンサGSXは、ジャイロセンサ軸GSXOが第2方向yと平行に配置され、カメラ本体1の第2方向y軸周りの回転運動(ヨーイング)の角速度を検出する。
【0021】
ピッチングジャイロセンサGSY、及びヨーイングジャイロセンサGSXは、それぞれカメラメイン基板7上に取り付けられた、ピッチングジャイロセンサベース基板7Y、及びヨーイングジャイロセンサベース基板7Xに実装される。
【0022】
ローリングジャイロセンサGSRは、サブ基板8上に取り付けられた、ローリングジャイロセンサベース基板8Rに実装される。
【0023】
ピッチングジャイロセンサGSYからの角速度に関する信号は、ピッチング積分回路60で積分される。ピッチング積分回路60は、ピッチングに基づく角度ブレ量に対応した出力値として、ピッチング角度信号Pyhを出力する。
【0024】
ピッチング積分回路60は、ピッチング積分抵抗RY、ピッチング積分キャパシタCY、ピッチング放電抵抗RDY、及び第1、第2ピッチング積分オペアンプAY1、AY2を有する(図4参照)。ピッチング積分回路60は、ソフトウエアで同じ動作を実現させてもよい。
【0025】
ピッチング積分抵抗RYの一端は、ピッチングジャイロセンサGSYと接続され、ピッチングジャイロセンサGSYからの角速度に関する信号が入力される。ピッチング積分抵抗RYの他端は、ピッチング積分キャパシタCYの一端、ピッチング放電抵抗RDYの一端、及び第1ピッチング積分オペアンプAY1の反転入力端子と接続される。
【0026】
ピッチング積分キャパシタCYの他端、及びピッチング放電抵抗RDYの他端は、第1ピッチング積分オペアンプAY1の出力端子、及び第2ピッチング積分オペアンプAY2の反転入力端子と接続される。第1、第2ピッチング積分オペアンプAY1、AY2の非反転入力端子は、基準電圧Vrefの電源に接続される。第2ピッチング積分オペアンプAY2の出力端子は、第1、第2鉛直方向誤差増幅回路63A、63Bと接続される。
【0027】
ピッチング積分抵抗RY、及びピッチング積分キャパシタCYは、積分の為に使用され、ピッチング放電抵抗RDYは、ピッチングジャイロセンサGSYからの角速度に関する信号がゼロでも発生するオフセット電圧Vof(基準電圧Vrefとの差出力)を放電するために使用される。ピッチング放電抵抗RDYが無い場合には、オフセット電圧も積分され、時間tの経過に伴い積分出力は式:Vof×t/(CY×RY)で増大する(図5、点線グラフ参照)。この場合、積分出力に追従して可動部15aが変位し、可動範囲の端点に到達した時点で制御不能になる。
【0028】
ピッチング放電抵抗RDYが有る場合には、ピッチング積分回路60は、ピッチング放電抵抗RDYにより、直流利得RDY/RYを有し、Vof×RDY/RYの電圧を出力する。従って、ピッチングジャイロセンサGSYからの角速度に関する信号がゼロの場合には、積分出力(ピッチング角度信号Pryの値)は、Vof×RDY/RYに収束し、可動部15aの変位は、可動範囲内で中心位置から変位した位置で停止する(図5、実線グラフ参照)。ピッチング放電抵抗RDYの値が小さいほど、放電が早く、積分は正確でなくなるため、放電の時定数(CY×RDY)が通常の画像電荷蓄積期間teに対して十分に長くなるように設定される(例えば2秒以上)。画像電荷蓄積期間teは、被写体の明るさに応じて制御演算部13によって決められ、撮像素子ISが制御される。ピッチング角度信号Pyhは、ピッチングジャイロセンサGSYからの角速度に関する信号がゼロ(手ブレ量がゼロ)の場合の積分出力(Vof×RDY/RY)も含まれた信号である。
【0029】
そのため、ブレ量のピッチング成分(第1方向x軸周りの回転運動(ピッチング)による手ブレ量)がゼロであっても、ピッチング角度信号Pyhは一定の値を有し、可動部15aは中心位置から第2方向yに変位する。しかし、この変位は、レンズの光軸Oと撮像素子ISの中心位置が少しずれるにすぎずこれによる違和感を使用者が感ずることはない。
【0030】
ローリングジャイロセンサGSRからの角速度に関する信号は、ローリング積分回路61で積分され、ローリング積分回路61は、ローリングに基づく角度ブレ量に対応した出力値として、ローリング角度信号Prhを出力する。
【0031】
ローリング積分回路61は、ローリング積分抵抗RR、ローリング積分キャパシタCR、ローリング放電抵抗RDR、第1、第2ローリング積分オペアンプAR1、AR2、及びスイッチSWを有する(図6参照)。ローリング積分回路61は、ソフトウエアで同じ動作を実現させてもよい。
【0032】
ローリング積分抵抗RRの一端は、ローリングジャイロセンサGSRと接続され、ローリングジャイロセンサGSRからの角速度に関する信号が入力される。ローリング積分抵抗RRの他端は、スイッチSWのb端と接続され、スイッチSWを介してローリング積分キャパシタCRの一端、ローリング放電抵抗RDRの一端、及び第1ローリング積分オペアンプAR1の反転入力端子と接続される。
【0033】
スイッチSWは、レリーズスイッチ17bのオンオフ切り換えに基づいて、ローリング積分回路61への、ローリングジャイロセンサGSRからの角速度に関する信号供給のオンオフ制御(レリーズスイッチ17bがオン状態で、信号供給し、オフ状態で、信号供給しない)を行う。
【0034】
カメラ本体1が静止画撮影モードに設定されていて、レリーズスイッチ17bがオン状態にされ、ついで撮像素子ISに画像電荷蓄積が行われ、この画像電荷蓄積期間te中は、スイッチSWはb端側に切り替えられ、それ以外の時はa端側に接続される。これにより、静止画の撮像動作(画像信号の電荷蓄積動作)の時は、ピッチングジャイロセンサGSYとヨーイングジャイロセンサGSXとローリングジャイロセンサGSRからの角速度に関する信号に基づいて像ブレ補正が行われる。それ以外の時、特にスルー画像表示時は、ピッチングジャイロセンサGSYとヨーイングジャイロセンサGSXからの角速度に関する信号に基づいて像ブレ補正が行われる。カメラ本体1が動画撮影モードに設定されているときは、レリーズスイッチ17bがオン状態にされても、スイッチSWはa端側に接続されたままであり、ピッチングジャイロセンサGSYとヨーイングジャイロセンサGSXからの角速度に関する信号に基づいて像ブレ補正が行われる。
【0035】
制御演算部13は、ピッチングジャイロセンサGSY、及びヨーイングジャイロセンサGSXからの角速度に関する信号に基づいて像ブレ補正が行われる場合、可動部15aは、xy平面上の第1方向x、及び第2方向yの直線運動による移動制御を行う。制御演算部13は、ローリングジャイロセンサGSR、ピッチングジャイロセンサGSY、及びヨーイングジャイロセンサGSXからの角速度に関する信号に基づいて像ブレ補正が行われる場合、可動部15aは、xy平面上の回転運動、及び第1方向x、及び第2方向yの直線運動による移動制御を行う。
【0036】
ローリング積分キャパシタCRの他端、及びローリング放電抵抗RDRの他端は、スイッチSWのa端、第1ローリング積分オペアンプAR1の出力端子、及び第2ローリング積分オペアンプAR2の反転入力端子と接続される。第1、第2ローリング積分オペアンプAR1、AR2の非反転入力端子は、基準電圧Vrefの電源に接続される。第2ローリング積分オペアンプAR2の出力端子は、第1、第2鉛直方向誤差増幅回路63A、63Bと接続される。
【0037】
ローリング積分抵抗RR、及びローリング積分キャパシタCRは、積分の為に使用され、ローリング放電抵抗RDRは、ローリングジャイロセンサGSRからの角速度に関する信号がゼロでも発生するオフセット電圧Vof(基準電圧Vrefとの差出力)を放電するために使用される。ローリング放電抵抗RDRが無い場合には、オフセット電圧も積分され、時間tの経過に伴い積分出力は式:Vof×t/(CR×RR)で増大する(図5、点線グラフ参照)。この場合、積分出力に追従して可動部15aが変位し、可動範囲の端点に到達した時点で制御不能になる。
【0038】
ローリング放電抵抗RDRが有る場合には、ローリング積分回路61は、ローリング放電抵抗RDRにより、直流利得RDR/RRを有し、Vof×RDR/RRの電圧を出力する。従って、ローリングジャイロセンサGSRからの角速度に関する信号がゼロの場合には、積分出力(ローリング角度信号Prhの値)は、Vof×RDR/RRに収束し、可動部15aの変位は、可動範囲内で中心位置から変位した(傾いた)位置で停止する(図5、実線グラフ参照)。ローリング放電抵抗RDRの値が小さいほど、放電が早く、積分は正確でなくなるため、放電の時定数(CR×RDR)が通常の画像電荷蓄積期間teに対して十分に長くなるように設定される(例えば2秒以上)。ローリング角度信号Prhは、ローリングジャイロセンサGSRからの角速度に関する信号がゼロ(手ブレ量がゼロ)の場合の積分出力(Vof×RDR/RR)も含まれた信号である。
【0039】
そのため、ブレ量のローリング成分(第3方向z軸周りの回転運動(ローリング)による手ブレ量)がゼロであっても、ローリング角度信号Prhは一定の値を有し、可動部15aは中心位置から変位する(傾く)。この変位は、撮像素子ISの傾きであるので、僅かな変位量(傾き)でも違和感を使用者が感ずる。但し、本実施形態では、積分時間が長くなる動画撮影モードにおけるレリーズスイッチ17bのオン状態の時、及びスルー画像表示の時には、積分演算が行われず、ローリング角度信号Prhがゼロ出力であるので、この傾き現象は生じない(第2ブレ量検出状態)。静止画撮影モードにおける画像電荷蓄積期間te中は、積分演算が行われるが、放電の時定数CR×RDRに比べ、静止画の画像電荷蓄積期間teは十分に短いため、この値(ローリング角度信号Prhの値:Ve)は小さく抑えられ、不必要な傾きを最小限に抑えることが可能になる(第1ブレ量検出状態、図7参照)。
【0040】
ヨーイングジャイロセンサGSXからの角速度に関する信号は、ヨーイング積分回路62で積分される。ヨーイング積分回路62は、ヨーイングに基づく角度ブレ量に対応した出力値として、ヨーイング角度信号Pxhを出力する。
【0041】
ヨーイング積分回路62は、ヨーイング積分抵抗RX、ヨーイング積分キャパシタCX、ヨーイング放電抵抗RDX、及び第1、第2ヨーイング積分オペアンプAX1、AX2を有する。ヨーイング積分回路62は、ソフトウエアで同じ動作を実現させてもよい。
【0042】
ヨーイング積分抵抗RXの一端は、ヨーイングジャイロセンサGSXと接続され、ヨーイングジャイロセンサGSXからの角速度に関する信号が入力される。ヨーイング積分抵抗RXの他端は、ヨーイング積分キャパシタCXの一端、ヨーイング放電抵抗RDXの一端、及び第1ヨーイング積分オペアンプAX1の反転入力端子と接続される。
【0043】
ヨーイング積分キャパシタCXの他端、及びヨーイング放電抵抗RDXの他端は、第1ヨーイング積分オペアンプAX1の出力端子、及び第2ヨーイング積分オペアンプAX2の反転入力端子と接続される。第1、第2ヨーイング積分オペアンプAX1、AX2の非反転入力端子は、基準電圧Vrefの電源に接続される。第2ヨーイング積分オペアンプAX2の出力端子は、水平方向誤差増幅回路65と接続される。
【0044】
ヨーイング積分抵抗RX、及びヨーイング積分キャパシタCXは、積分の為に使用され、ヨーイング放電抵抗RDXは、ヨーイングジャイロセンサGSXからの角速度に関する信号がゼロでも発生するオフセット電圧Vof(基準電圧Vrefとの差出力)を放電するために使用される。ヨーイング放電抵抗RDXが無い場合には、オフセット電圧も積分され、時間tの経過に伴い積分出力は式:Vof×t/(CX×RX)で増大する(図5、点線グラフ参照)。この場合、積分出力に追従して可動部15aが変位し、可動範囲の端点に到達した時点で制御不能になる。
【0045】
ヨーイング放電抵抗RDXが有る場合には、ヨーイング積分回路62は、ヨーイング放電抵抗RDXにより、直流利得RDX/RXを有し、Vof×RDX/RXの電圧を出力する。従って、ヨーイングジャイロセンサGSXからの角速度に関する信号がゼロの場合には、積分出力(ヨーイング角度信号Prxの値)は、Vof×RDX/RXに収束し、可動部15aの変位は、可動範囲内で中心位置から変位した位置で停止する(図5、実線グラフ参照)。ヨーイング放電抵抗RDXの値が小さいほど、放電が早く、積分は正確でなくなるため、放電の時定数(CX×RDX)が通常の画像電荷蓄積期間teに対して十分に長くなるように設定される(例えば2秒以上)。ヨーイング角度信号Pxhは、ヨーイングジャイロセンサGSXからの角速度に関する信号がゼロ(手ブレ量がゼロ)の場合の積分出力(Vof×RDX/RX)も含まれた信号である。
【0046】
そのため、ブレ量のヨーイング成分(第2方向y軸周りの回転運動(ヨーイング)による手ブレ量)がゼロであっても、ヨーイング角度信号Pxhは一定の値を有し、可動部15aは中心位置から第1方向xに変位する。しかし、この変位は、レンズの光軸Oと撮像素子ISの中心位置が少しずれるにすぎずこれによる違和感を使用者が感ずることはない。
【0047】
ピッチング角度信号Pyhは、第1方向x軸周りの回転運動(ピッチング)による手ブレ量を特定する信号として、ローリング角度信号Prhは、第3方向z軸周りの回転運動(ローリング)による像ブレ量を特定する信号として、ヨーイング角度信号Pxhは、第2方向y軸周りの回転運動(ヨーイング)による像ブレ量を特定する信号として、後述する制御演算部13におけるブレ量に基づいて可動部15aの移動制御に使用される。
【0048】
次に、制御演算部13について説明する(図3参照)。なお、CPUで制御する場合は、積分回路、誤差増幅回路、PID演算回路、PWMドライバの動作はソフトウエアによっても実現可能である。
【0049】
ピッチング角度信号Pyh、ローリング角度信号Prhは、第1、第2鉛直方向誤差増幅回路63A、63Aに入力される。第1鉛直方向誤差増幅回路63Aには、ピッチング角度信号Pyhとローリング角度信号Prhとの加算値、及び第1鉛直方向ホールセンサSYAの出力値とが入力され、第2鉛直方向誤差増幅回路63Bには、ピッチング角度信号Pyhからローリング角度信号Prhの減算値、及び第2鉛直方向ホールセンサSYBの出力値とが入力される。ヨーイング角度信号Pxhは、水平方向誤差増幅回路65に入力される。水平方向誤差増幅回路65には、ヨーイング角度信号Pxh、及び水平方向ホールセンサSXの出力値とが入力される。
【0050】
第1鉛直方向誤差増幅回路63Aは、ピッチング角度信号Pyhとローリング角度信号Prhとの加算値と、第1鉛直方向ホールセンサSYAの出力値とを比較する(差異を算出する)。第2鉛直方向誤差増幅回路63Bは、ピッチング角度信号Pyhからローリング角度信号Prhの減算値と、第2鉛直方向ホールセンサSYBの出力値とを比較する(差異を算出する)。水平方向誤差増幅回路65は、ヨーイング角度信号Pxhと、水平方向ホールセンサSXの出力値とを比較する(差異を算出する)。
【0051】
第1、第2鉛直方向PID演算回路66A、66Bは、第1、第2鉛直方向誤差増幅回路63A、63Bの出力値(差異値)に基づいて、PID演算を行う。具体的には、第1鉛直方向PID演算回路66Aは、ピッチング角度信号Pyhとローリング角度信号Prhの加算値と、第1鉛直方向ホールセンサSYAの出力値との差異が小さくなるように(第1鉛直方向誤差増幅回路63Aの出力値が小さくなるように)、第1鉛直方向駆動用コイルCYAに印加する電圧に関する値(PWMパルスのデューティ比など)を演算する。第2鉛直方向PID演算回路66Bは、ピッチング角度信号Pyhからローリング角度信号Prhの減算値と、第2鉛直方向ホールセンサSYBの出力値との差異が小さくなるように(第2鉛直方向誤差増幅回路63Bの出力値が小さくなるように)、第2鉛直方向駆動用コイルCYBに印加する電圧に関する値(PWMパルスのデューティ比など)を演算する。
【0052】
第1鉛直方向PWMドライバ69Aは、第1鉛直方向PID演算回路66Aの演算結果に基づくPWMパルスを、第1鉛直方向駆動用コイルCYAに印加する。第2鉛直方向PWMドライバ69Bは、第2鉛直方向PID演算回路66Aの演算結果に基づくPWMパルスを、第2鉛直方向駆動用コイルCYBに印加する。これにより、第1、第2鉛直方向駆動用コイルCYA、CYBには第2方向yに駆動力が発生し、この駆動力によって可動部15aのxy平面上に第2方向yへの移動が可能になる。第1鉛直方向駆動用コイルCYAと、第2鉛直方向駆動力CYBへの駆動力が異なる場合は、駆動力差に基づき可動部15aのxy平面上に回転移動が可能になる。
【0053】
ローリング積分回路61において積分演算が行われない場合には、ローリング角度信号Prhがゼロ出力であるので、第1、第2鉛直方向駆動用コイルCYA、CYBへの第2方向yの駆動力が同じになる。この時、可動部15aについてxy平面上の第2方向yへの直線移動が行われるが、回転移動は行われない。
【0054】
水平方向PID演算回路68は、水平方向誤差増幅回路65の出力値(差異値)に基づいて、PID演算を行う。具体的には、水平方向PID演算回路68は、ヨーイング角度信号Pxhと、水平方向ホールセンサSXとの差異が小さくなるように(水平方向誤差増幅回路65の出力値が小さくなるように)、第1、第2水平方向駆動用コイルCXA、CXBに印加する電圧に関する値(PWMパルスのデューティ比など)を演算する。
【0055】
水平方向PWMドライバ71は、水平方向PID演算回路68の演算結果に基づくPWMパルスを、第1、第2水平方向駆動用コイルCXA、CXBに印加する。これにより、第1、第2水平方向駆動用コイルCXA、CXBには、第1方向xへの駆動力が発生し、この駆動力によって、可動部15aのxy平面上に第1方向xへの移動が可能になる。
【0056】
次に、駆動部15について説明する(図3、8〜10参照)。第1、第2水平方向駆動用コイルCXA、CXB、第1、第2鉛直方向駆動用コイルCYA、CYB、第1、第2水平方向枠連結部FXA、FXB、第1、第2鉛直方向ホールセンサSYA、SYB、及び水平方向ホールセンサSXは、撮像板基板45上に取り付けられる。
【0057】
枠18は、xy平面に垂直な薄板の帯で構成される口状の枠であり、弾性体で構成される。枠18は、第1、第2水平方向枠連結部FXA、FXBを介して撮像板基板45に取り付けられ(連結され)、第1、第2鉛直方向枠固定部FYA、FYBを介して固定部15b(レンズ鏡筒2)に取り付けられる(固定される)。枠18は、撮像素子ISを囲む位置関係にある。
【0058】
第1水平方向枠連結部FXAは、第1水平方向枠連結部用取付穴FXA1、FXA2を介して撮像板基板45にネジ止めされる。第2水平方向枠連結部FXBは、第2水平方向枠連結部用取付穴FXB1、FXB2を介して撮像板基板45にネジ止めされる。第1鉛直方向枠固定部FYAは、第1鉛直方向枠固定部用取付穴FYA1、FYA2を介してレンズ鏡筒2にネジ止めされる。第2鉛直方向枠固定部FYBは、第2鉛直方向枠固定部用取付穴FYB1、FYB2を介してレンズ鏡筒2にネジ止めされる。
【0059】
枠18は、第3方向zから見て、第1方向xに平行な2辺と第2方向yに平行な2辺を有する矩形形状を有するが、この矩形形状は撮像板基板45のxy平面上の移動に伴って、xy平面に沿って弾性変形する。これにより、撮像板基板45は、固定部15b、及びレンズ鏡筒2によって、枠18を介して、xy平面上を、回転を含めた移動可能な状態で保持される。
【0060】
第1水平方向枠連結部FXAは、枠18を構成する第2方向yに平行な1辺の中央近傍に、第2水平方向枠連結部FXBは、枠18を構成する第2方向yに平行な他の1辺の中央近傍に取り付けられる。第1、第2水平方向枠連結部FXA、FXBは、第3方向zから見て、第1方向xで撮像素子ISを挟む位置関係にある。
【0061】
第1鉛直方向枠固定部FYAは、枠18を構成する第1方向xに平行な1辺の中央近傍に、第2鉛直方向枠固定部FYBは、枠18を構成する第1方向xに平行な他の1辺の中央近傍に取り付けられる。第1、第2鉛直方向枠連結部FYA、FYBは、第3方向zから見て、第2方向yで撮像素子ISを挟む位置関係にある。
【0062】
枠18は、金属で構成され、第1、第2水平方向枠連結部FXA、FXB、及び第1、第2鉛直方向枠固定部FYA、FYBは、少なくとも一部が樹脂で構成される。枠18第1、第2水平方向枠連結部FXA、FXB、及び第1、第2鉛直方向枠固定部FYA、FYBは、インサート成形される。枠18が樹脂で構成される場合には、枠18、第1、第2水平方向矩形枠連結部FXA、FXB、及び第1、第2鉛直方向矩形枠固定部FYA、FYBは、一体成形されてもよい。
【0063】
第1水平方向駆動及び位置検出用ヨークYXAは、板状の磁性金属部材で、第3方向zに垂直に並べられ、レンズ鏡筒2側から見て右側で、レンズ鏡筒2に取り付けられる(接着される)。第2水平方向駆動及び位置検出用ヨークYXBは、板状の磁性金属部材で、第3方向zに垂直に並べられ、レンズ鏡筒2側から見て左側で、レンズ鏡筒2に取り付けられる(接着される)。鉛直方向駆動及び位置検出用ヨークYYは、板状の磁性金属部材で、第3方向zに垂直に並べられ、レンズ鏡筒2側から見て上側で、第1鉛直方向枠固定部FYAに取り付けられる(接着される)。
【0064】
第1、第2水平方向駆動及び位置検出用ヨークYXA、YXBは、第3方向zから見て、第1方向xで、撮像素子ISを挟む位置関係にある。
【0065】
第1水平方向駆動及び位置検出用磁石MXAは、第1水平方向駆動及び位置検出用ヨークYXAに取り付けられる。第2水平方向駆動及び位置検出用磁石MXBは、第2水平方向駆動及びIT検出用ヨークYXBに取り付けられる。第1、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYA、MYBは、鉛直方向駆動及び位置検出用ヨークYYに取り付けられる。
【0066】
撮像板基板45は、重力の影響を受けない状態で、可動部15aが移動を開始する前の初期状態において、光軸Oが撮像素子ISの有効撮像領域の中心を通り、有効撮像領域の矩形を構成する辺が第1方向xまたは第2方向yに平行である位置関係に配置されるのが望ましい。枠18は、重力の影響を受けない状態で、可動部15aが移動を開始する前の初期状態において、弾性変形せず矩形形状を有する状態であるのが望ましい。撮像素子ISは、撮像板基板45上で且つレンズ鏡筒2と対向する側に配置される。
【0067】
第1水平方向駆動用コイルCXA、及び水平方向ホールセンサSXは、第1水平方向駆動及び位置検出用磁石MXAと第3方向z上で対向する位置関係にある。第2水平方向駆動用コイルCXBは、第2水平方向駆動及び位置検出用磁石MXBと第3方向z上で対向する位置関係にある。
【0068】
第1鉛直方向駆動用コイルCYA、及び第1鉛直方向ホールセンサSYAは、第1鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYAと第3方向z上で対向する位置関係にある。第2鉛直方向駆動用コイルCYB、及び第2鉛直方向ホールセンサSYBは、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYBと第3方向z上で対向する位置関係にある。
【0069】
第1、第2水平方向駆動及び位置検出用磁石MXA、MXBは、厚み方向すなわち第3方向zに着磁されており、N極面とS極面とが、第1方向xに並べられる。第1水平方向駆動及び位置検出用磁石MXAの第2方向yの長さは、可動部15aが第2方向yに移動した際に第1水平方向駆動用コイルCXA及び水平方向ホールセンサSXに及ぼす磁界が変化しない程度に、第1水平方向駆動用コイルCXAの第2方向yの有効長に比べて長めに設定される。第2水平方向駆動及び位置検出用磁石MXBの第2方向yの長さは、可動部15aが第2方向yに移動した際に第2水平方向駆動用コイルCXBに及ぼす磁界が変化しない程度に、第2水平方向駆動用コイルCXBの第2方向yの有効長に比べて長めに設定される。
【0070】
第1、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYA、MYBは、厚み方向すなわち第3方向zに着磁されており、N極面とS極面とが、第2方向yに並べられる。第1鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYAの第1方向xの長さは、可動部15aが第1方向xに移動した際に第1鉛直方向駆動用コイルCYA及び第1鉛直方向ホールセンサSYAに及ぼす磁界が変化しない程度に、第1鉛直方向駆動用コイルCYAの第1方向xの有効長に比べて長めに設定される。第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYBの第1方向xの長さは、可動部15aが第1方向xに移動した際に第2鉛直方向駆動用コイルCYB及び第2鉛直方向ホールセンサSYBに及ぼす磁界が変化しない程度に、第2鉛直方向駆動用コイルCYBの第1方向xの有効長に比べて長めに設定される。
【0071】
第1水平方向駆動用コイルCXAのコイルパターンは、自身に流れる電流と、第1水平方向駆動及び位置検出用磁石MXAの磁界から生ずる電磁力により、第1水平方向駆動用コイルCXAを含む可動部15aを第1方向xに移動させる駆動力を発生すべく、第2方向yに平行な線分を有する。第2水平方向駆動用コイルCXBのコイルパターンは、自身に流れる電流と、第2水平方向駆動及び位置検出用磁石MXBの磁界から生ずる電磁力により、第2水平方向駆動用コイルCXBを含む可動部15aを第1方向xに移動させる駆動力を発生すべく、第2方向yに平行な線分を有する。
【0072】
第1鉛直方向駆動用コイルCYAのコイルパターンは、自身に流れる電流と、第1鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYAの磁界から生ずる電磁力により、第1鉛直方向駆動用コイルCYAを含む可動部15aを第2方向yに移動させる駆動力を発生すべく、第1方向xに平行な線分を有する。第2鉛直方向駆動用コイルCYBのコイルパターンは、自身に流れる電流と、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYBの磁界から生ずる電磁力により、第2鉛直方向駆動用コイルCYBを含む可動部15aを第2方向yに移動させる駆動力を発生すべく、第1方向xに平行な線分を有する。
【0073】
第1、第2鉛直方向ホールセンサSYA、SYBは、ホール効果を利用した磁電変換素子であるホール素子であり、可動部15aの第2方向yの位置変化に伴う第1、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYA、MYBからの磁束密度変化を検出し、可動部15aの第2方向yの位置検出を行う。水平方向ホールセンサSXは、ホール効果を利用した磁電変換素子であるホール素子であり、可動部15aの第1方向xの位置変化に伴う第1水平方向駆動及び位置検出用磁石MXAからの磁束密度変化を検出し、可動部15aの第1方向xの位置検出を行う。
【0074】
第1鉛直方向ホールセンサSYAは、第1鉛直方向駆動用コイルCYAの内側で且つ第2鉛直方向ホールセンサSYBから離れた位置に、第2鉛直方向ホールセンサSYBは、第2鉛直方向駆動用コイルCYBの内側で且つ第1鉛直方向ホールセンサSYAから離れた位置に、水平方向ホールセンサSXは、第1水平方向駆動用コイルCXAの内側に配置される。
【0075】
第1水平方向駆動及び位置検出用ヨークYXAは、第1水平方向駆動及び位置検出用磁石MXAの磁界が周囲に漏れにくくし、第1水平方向駆動用コイルCXA及び水平方向ホールセンサSXと、第1水平方向駆動及び位置検出用磁石MXAとの間の磁束密度を高める役割を果たす。第2水平方向駆動及び位置検出用ヨークYXBは、第2水平方向駆動及び位置検出用磁石MXBの磁界が周囲に漏れにくくし、第2水平方向駆動用コイルCXBと、第2水平方向駆動及び位置検出用磁石MXBとの間の磁束密度を高める役割を果たす。
【0076】
鉛直方向駆動及び位置検出用ヨークYYは、第1、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYA、MYBの磁界が周囲に漏れにくくし、第1鉛直方向駆動用コイルCYA及び第1鉛直方向ホールセンサSYAと、第1鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYAとの間の磁束密度を高め、第2鉛直方向駆動用コイルCYB及び第2鉛直方向ホールセンサSYBと、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYBとの間の磁束密度を高める役割を果たす。
【0077】
本実施形態では、可動部15aの移動の為の構造物としてガイド機構またはボールで挟み込む機構を必要とせず、枠18の弾性変形を介して可動部15aを移動可能な状態で保持することが可能になる。そのため、ガイド機構のクリアランスに起因するガタや摩擦を考慮する必要がないため、高精度で且つ安定性の高い手ブレ補正制御が可能である。また、複数の弾性手段を用いて保持する場合に比べて、構造が単純で一体成形やインサート成形が可能になるため、製造コストを低く抑えることが可能になる。
【0078】
なお、本実施形態では、可動部15aの移動について枠18の弾性変形を利用するが、移動制御の際に、枠18の弾性力を考慮する必要はない。変位量をフィードバックして所望の変位量を得る制御方法(制御演算部13のPID制御)を使用するため、予め弾性力を考慮した複雑な演算を行う必要はないからである。
【0079】
なお、本実施形態では、磁界変化検出素子としてホール素子を利用したホールセンサによる位置検出を説明したが、磁界変化検出素子として別の検出素子を利用してもよい。具体的には、磁界の変化を検出することにより可動部の位置検出情報を求めることが可能なMIセンサ(高周波キャリア型磁界センサ)、または磁気共鳴型磁界検出素子、MR素子(磁気抵抗効果素子)であり、ホール素子を利用した本実施形態と同様の効果が得られる。
【0080】
また、可動部15aの移動のためのアクチュエータとして、磁石とコイルによる電磁力による駆動を説明したが、他のアクチュエータであってもよい。
【0081】
また、可動部15aを保持する機構として枠18を使用する形態を説明したが、ガイド機構またはボールで挟み込む機構であってもよい。
【0082】
ブレ量検出は、角速度を検出するジャイロセンサによる形態が最も一般的であるが、これに限られない。例えば、本発明と同一出願人による実用新案登録251978号に記載の角加速度センサでもよい。なお、角加速度センサの場合は、角度ブレ量に対応した出力値を得るためには2度の積分が必要なので、図4や図6の積分回路は2つ直列に配置される。
【0083】
本実施形態では、制御演算部13の切り替え制御により、静止画撮影モードであって撮像素子ISが画像電荷蓄積中においては、ピッチングジャイロセンサGSY、ローリングジャイロセンサGSR、及びヨーイングジャイロセンサGSXを使った第1ブレ量検出状態で、ブレ量を検出し、可動部15aを、xy平面に沿って回転運動及び直交2方向への直線運動をさせて、像ブレ補正動作が行われる。この場合、ローリングジャイロセンサGSRの誤差成分を含んだ出力による画像の傾きは生ずるが、放電時定数CR×RDRの設定により(画像電荷蓄積期間teに比べて十分長い)、傾きが最小限に抑えられる。
【0084】
また、動画撮影モード、及びスルー画像表示時においては、ピッチングジャイロセンサGSY、及びヨーイングジャイロセンサGSXを使った第2ブレ量検出状態で、ブレ量を検出し、可動部15aを、xy平面に沿って直交2方向への直線運動をさせて、像ブレ補正動作が行われる。この時、可動部15aの回転運動は行われない。この場合、ローリングジャイロセンサGSRの誤差成分を含んだ出力による画像の傾き現象は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施形態におけるカメラ本体の斜視図である。
【図2】カメラ本体の構成図である。
【図3】カメラ本体の像ブレ補正部の回路構成図である。
【図4】ピッチング積分回路(又はヨーイング積分回路)の回路図である。
【図5】放電抵抗の有無により異なる積分回路からの出力値を示すグラフである。
【図6】ローリング積分回路の回路図である。
【図7】ローリング積分回路からの画像電荷蓄積期間に対する出力値を示すグラフである。
【図8】像ブレ補正部の駆動部の正面図である。
【図9】駆動部の分解斜視図である。
【図10】駆動部の斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
1 カメラ本体
2 レンズ鏡筒
7 カメラメイン基板
7X ヨーイングジャイロセンサベース基板
7Y ピッチングジャイロセンサベース基板
8 サブ基板
8R ローリングジャイロセンサベース基板
9 フレキシブル基板
10 像ブレ補正部
11 ブレ量検出部
13 制御演算部
15 駆動部
15a、15b 可動部、固定部
18 枠
20 表示部
21 記憶部
45 撮像板基板
60 ピッチング積分回路
61 ローリング積分回路
62 ヨーイング積分回路
63A、63B 第1、第2鉛直方向駆動用誤差増幅回路
65 水平方向駆動用誤差増幅回路
66A、66B 第1、第2鉛直方向駆動用PID演算回路
68 水平方向駆動用PID演算回路
69A、69B 第1、第2鉛直方向駆動用PWMドライバ
71 水平方向駆動用PWMドライバ
AR1、AR2 第1、第2ローリング積分オペアンプ
AX1、AX2 第1、第2ヨーイング積分オペアンプ
AY1、AY2 第1、第2ピッチング積分オペアンプ
CR ローリング積分キャパシタ
CX ヨーイング積分キャパシタ
CXA、CXB 第1、第2水平方向駆動用コイル
CY ピッチング積分キャパシタ
CYA、CYB 第1、第2鉛直方向駆動用コイル
FXA、FXB 第1、第2水平方向枠連結部
FXA1、FXA2 第1水平方向枠連結部用取付穴
FXB1、FXB2 第2水平方向枠連結部用取付穴
FYA、FYB 第1、第2鉛直方向枠固定部
FYA1、FYA2 第1鉛直方向枠固定部用取付穴
FYB1、FYB2 第2鉛直方向枠固定部用取付穴
GSR ローリングジャイロセンサ
GSX ヨーイングジャイロセンサ
GSY ピッチングジャイロセンサ
GSRO、GSXO、GSYO ジャイロセンサ軸
IS 撮像素子
MXA、MXB 第1、第2水平方向駆動及び位置検出用磁石
MYA、MYB 第1、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石
O 光軸
Prh ローリング角度信号
Pxh ヨーイング角度信号
Pyh ピッチング角度信号
RDR ローリング放電抵抗
RR ローリング積分抵抗
RDX ヨーイング放電抵抗
RX ヨーイング積分抵抗
RDY ピッチング放電抵抗
RY ピッチング積分抵抗
SX 水平方向ホールセンサ
SYA、SYB 第1、第2鉛直方向ホールセンサ
SW スイッチ
YXA、YXB 第1、第2水平方向駆動及び位置検出用ヨーク
YY 鉛直方向駆動及び位置検出用ヨーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置のブレ量を検出するセンサ部と、
撮像素子を有し、前記ブレ量に基づいて、前記撮像装置の光軸に垂直な平面上を移動する可動部と、
前記可動部の移動制御を行う制御部とを備え、
前記制御部が前記可動部の前記移動制御を行う場合、静止画撮影モードで且つ画像電荷蓄積期間は、前記可動部について前記平面上の回転運動と直交2方向への直線運動による移動制御を行い、スルー画像表示の時及び動画撮影時には、前記可動部について前記平面上の直交2方向への直線運動による移動制御を行うことを特徴とするカメラ用像ブレ補正装置。
【請求項2】
前記センサ部は、ピッチング検出センサ、ローリング検出センサ、及びヨーイング検出センサを有し、
前記制御部は、前記静止画撮影モードで且つ画像電荷蓄積期間に、前記ピッチング検出センサ、前記ローリング検出センサ、及び前記ヨーイング検出センサからの信号に基づいて前記ブレ量の検出を行う第1ブレ量検出状態と、前記スルー画像表示の時及び動画撮影時に、前記ピッチング検出センサと前記ヨーイング検出センサからの信号に基づいて前記ブレ量の検出を行う第2ブレ量検出状態との切り替え制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のカメラ用像ブレ補正装置。
【請求項3】
前記ピッチング検出センサ、前記ローリング検出センサ、前記ヨーイング検出センサは、ジャイロセンサであることを特徴とする請求項2に記載のカメラ用像ブレ補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−67135(P2008−67135A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243779(P2006−243779)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】