説明

カメラ用光量調整装置

【課題】
絞り羽根に光学フィルタを固定したカメラ用光量調整装置において、NDフィルタの使用面積を削減して、装置の小型化、薄型化を図ると共に、NDフィルタを絞り羽根へ正確に固定する。
【解決手段】
支持孔21を中心に回動して開口部31を覆うことにより光量を調整する絞り羽根20を樹脂材料にて射出成形する際、光量を調整するNDフィルタ10の外周端面11にインサート成形することによって、NDフィルタ10と絞り羽根20とを一体的に形成し、NDフィルタ10の略全面の領域を光量調整のために使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等に適用されて光量の調整を行うカメラ用光量調整装置に関し、特に、絞り羽根あるいは絞り兼用シャッタ羽根等の羽根部材に対して光量を調整する光学フィルタ(NDフィルタ)を固定したカメラ用光量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プレス成型等により形成された絞り羽根に対して、光学フィルタ(NDフィルタ)を固定するにあたり、光学フィルタには絞り羽根と重なる部分が形成され、一部に接着剤溜まり用の凹部を形成し、この凹部内に接着剤を溜めて、光学フィルタを絞り羽根に貼着するものが知られている(例えば、実開昭60−135729号公報参照)。
また、絞り羽根に対して、光学フィルタ(NDフィルタ)を位置決め固定するにあたり、光学フィルタには絞り羽根と重なる部分が形成され、一部に固定用孔と位置決め孔を形成し、絞り羽根の固定用突起と位置決め突起の協働によって、光学フィルタを絞り羽根に位置決めするとともに固定するものが知られている(例えば、特開2002−365693号公報参照)。
【0003】
【特許文献1】実開昭60−135729号公報
【特許文献2】特開2002−365693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成においては、上記特許文献1では接着剤を用いて絞り羽根に光学フィルタを固定するので、接着作業に際して、接着剤が糸状に伸びて絞り羽根の開口部近傍に付着し、あるいは、接着剤溜まりからはみ出た接着剤が他の領域に付着する等の問題があり、接着部の周囲に比較的大きな余裕代を設けて広い面積で両者を重ね合わす必要があった。そのため、光学フィルタは、絞り羽根の開口に対して大きく形成する必要があった。また、接着剤が固化する前に光学フィルタが動いてしまうと、位置ずれ、浮き等の取付け不良となる問題があった。また、治具を用いて両者の位置合わせを行う必要があった。上記特許文献2では光学フィルタを絞り羽根に位置決めしつつ固定するために、少なくとも2箇所の突起部並びに突起部に対応する孔部を絞り羽根と光学フィルタの重ね合わせた部分に設置しており、そのため、光学フィルタは、絞り羽根の開口に対して大きく形成する必要があった。
【0005】
さらに、近年、光学フィルタの厚さが薄くなってきており、光学フィルタが一箇所で固定されている場合では、絞り羽根駆動時、外的振動、温度変化等によって固定されていない部分が浮いてしまう恐れがある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光学フィルタの使用面積を削減して、装置の小型化、薄型化を図ると共に、光学フィルタを羽根部材へ正確に固定できるカメラ用光量調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカメラ用光量調整装置は、光学フィルタが固定される羽根部材によって光量を調整するカメラ用光量調整装置であって、上記羽根部材は、樹脂材からなり、且つ光学フィルタの外周端面に樹脂材を成型することにより一体的に形成される、ことを特徴としている。この構成によれば、羽根部材と光学フィルタを接着固定するための両者の重ね合わせが必要なくなり、光学フィルタは、羽根部材の開口と同様の大きさであれば良いので、光学フィルタの使用面積を削減することができる。また、光学フィルタに羽根部材を金型で一体成型するので、光学フィルタを取り付ける際の不良を防止できると共に、羽根部材と光学フィルタを正確に固定できる。
【0008】
上記構成において、羽根部材は、光学フィルタをインサート成型することにより形成されることを特徴とする。この構成によれば、光学フィルタを金型内に装填し、羽根部材を成型するので、羽根部材と光学フィルタの相対的な位置を金型によって位置決めでき、取り付け作業による不良を防止できると共に、羽根部材と光学フィルタを正確に固定できる。
【0009】
上記構成において、羽根部材は、光学フィルタが羽根部材から突出しないことを特徴とする。この構成によれば、羽根部材が作動したとき、光学フィルタに基板等との擦れによる傷が付くことを確実に防止できる。
【0010】
上記構成において、羽根部材は、光学フィルタの外周縁部に張出部が設けられていることを特徴とする。この構成によれば、成型後の光学フィルタの反り及び羽根部材からの浮きが防止され、羽根部材に光学フィルタを確実に固定できる。羽根部材が動作したとき、光学フィルタに基板等との擦れによる傷が付くことを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
光学フィルタは、絞り羽根の開口と同様の大きさであれば良いので、両者の重ね合わせが必要なく、光学フィルタの使用面積を削減することができ、装置の小型化、薄型化が可能である。さらに、金型で光学フィルタと絞り羽根を固定するので、光学フィルタの取付け不良を防止できると共に、両者を正確且つ確実に固定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の最良の実施形態について、図面参照しつつ説明する。図1は、本発明に係るカメラ用光量調整装置の一実施例を示す図である。ここで、図1(b)は、図1(a)の破線で切断してAから見た断面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のカメラ用光量調整装置は、光学フィルタとしてのND(ニュートラル デンシティー)フィルタ10と、羽根部材としての露光用の開口部を絞る絞り羽根20とを備えている。NDフィルタ10は、略円板状で、約0.1ミリメートル程の厚さに形成されており、光の色を変化させることなく光の強度すなわち光量を減少させる(調整する)ものである。NDフィルタ10は濃度フィルタとも称されている。絞り羽根20は、約0.1ミリメートル程の厚さに形成されたものであり、基板の支持軸等に回動自在に軸支される支持孔21と、駆動源の駆動ピン等が挿入される円弧状の長孔22が形成される。絞り羽根20は、樹脂材料を射出成形したものであり、NDフィルタ10をインサート成形することにより、NDフィルタ10と絞り羽根20とが一体的に形成される。そして、絞り羽根20と一体的に形成されたNDフィルタ10は、カメラ等に組み込むことにより、露光用の開口を通過する光量を調整して、光の回析現象等を防止する役割をなす。
【0014】
図1(a)及び図1(b)のように、NDフィルタ10はNDフィルタ10の外周端面11で、且つ全周に及んで、光の漏れの無いように隙間無く絞り羽根20が形成される。NDフィルタ10の外周端面11に絞り羽根20を形成することにより、NDフィルタ10の全面の領域を光の回析現象を防止することに使用でき、無駄が無い。通常NDフィルタは大きな一枚のシート状から所望の大きさに型抜きするものであり、NDフィルタの面積が小さいほど一枚のシート状からの抜き数は多く取れることになり、製造コストの削減になる。さらに、図1(b)に示すように、絞り羽根20の厚さはNDフィルタ10の厚さと同一に形成され、その表面は均一な平面になっている。
【0015】
ここで、NDフィルタ10を絞り羽根20に一体化するインサート成形について説明する。絞り羽根20を射出成形する金型は、略円板状のNDフィルタ10を金型内の定位置に位置決めされて装填できるように形成され、NDフィルタ10を装填後、金型を組み立てて樹脂材を金型内に射出する。このとき金型の温度は約100度であって、射出する樹脂材料はそれより高い。そして、金型の温度が下がって樹脂材料が凝固すれば、NDフィルタ10の外周端面11が羽根部材20に一体化される。つまり、NDフィルタ10の外周端面11に羽根部材20が成形される。このように、NDフィルタ10と絞り羽根20は、絞り羽根20を成形する金型で一体成形されるので、絞り羽根20に対してNDフィルタ10を正確な位置に一体化でき、さらに一体化の際に絞り羽根20に対してNDフィルタ10の位置がずれることが無い。
【0016】
図2は、図1に示すカメラ用光量調整装置を基板30に取り付けた状態を示す図である。基板30は、基板30の略中央部に露光用の開口部31、駆動源の駆動ピン等が挿通される円弧状の長孔32が形成される。さらに、支持軸33、規制突部34、規制突部35が突設され、支持軸33には絞り羽根20の支持孔21が挿入される。絞り羽根20は、基板30の面上を摺動するように、支持軸33を中心として規制突部34と規制突部35の間を回動し、絞り羽根20の側面23が規制突部35に当接したとき、NDフィルタ10が開口部31の全体を覆うようにされている。
【0017】
図3は、図2(a)に示す基板30の裏側を紙面裏側から見た状態を示す図であって、駆動源であるアイリスモータ40を示す。アイリスモータ40は、磁性体からなるヨーク41、ヨーク41に巻回されるコイル42、ヨーク41の間に介在するマグネットアーム43で構成され、これらは図示しないブラケットに支持される。ヨーク41は、磁性体をU字状に形成されおり、U字状の各端部45、46は、間隔をあけて対向している。マグネットアーム43は、基部である回動軸47側がN極及びS極に着磁されたマグネットになっており、端部側に図3の紙面裏面に向かって駆動ピン44が突設されている。そして、駆動ピン44は、基板30の長孔32を挿通し、絞り羽根20の長孔22に係合されている。
【0018】
図示しない外部からコイル42に電圧を供給すると、ヨーク41のU字状の各端部45、46は磁気化し、各端部45、46の間に介在するマグネットアーム43のマグネットとの磁力により、マグネットアーム43が回動軸47を中心に回動する。そして、このマグネットアーム43の回動によって、駆動ピン44が長孔22内を摺動し、絞り羽根20が回動する。これにより、NDフィルタ10は、開口部31を覆う位置と、開口部31から退避した位置との間を移動可能となっている。
【0019】
前述の実施例では、NDフィルタ10と絞り羽根20は均一な面を構成しているとしたが、絞り羽根20の摺動する面からNDフィルタ10が突出しなければ良い。また、NDフィルタ10の厚さは絞り羽根20の厚さと同一としたが、絞り羽根20の摺動する面からNDフィルタ10が突出しなければ同一でなくとも良い。絞り羽根20の摺動する面からNDフィルタ10の面が少しでも窪んでいると好適である。
【0020】
図4及び図5は、本発明に係るカメラ用光量調整装置の他の実施例を示すものである。前述の実施形態の光学フィルタとしてのNDフィルタと、羽根部材としての露光用の開口部を絞る絞り羽根を変更した以外は同様の構成をなすものであり、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。ここで、図4(b)は、図4(a)の破線で切断してBから見た断面図である。
【0021】
NDフィルタ50は、略円板状に形成される。絞り羽根60は、約0.1ミリメートル程の厚さに形成されたものであり、NDフィルタ50の厚さよりも厚くなっている。絞り羽根60は、樹脂材料を射出成形したものであり、NDフィルタ50をインサート成形することにより、NDフィルタ50と絞り羽根60とが一体的に形成される。そして、絞り羽根60と一体的に形成されたNDフィルタ50は、カメラ等に組み込むことにより、露光用の開口を通過する光量を調整して、光の回析現象等を防止する役割をなす。
【0022】
図4(b)に示すように、NDフィルタ50はNDフィルタ50の外周端面51に絞り羽根60が形成され、絞り羽根60はNDフィルタ50の外周縁部の上下に張出部61が延在している。さらに、略円板上のNDフィルタ50の全周に及んで、光の漏れの無いように隙間無く絞り羽根60が形成される。つまり、NDフィルタ50の外周縁部を絞り羽根60の凹状部で挟んでいる状態にされる。このようにすることにより、NDフィルタ50が絞り羽根60に強固に固定される。また、NDフィルタ50の略全面の領域を光の回析現象を防止することに使用でき、無駄が無い。通常NDフィルタは大きな一枚のシート状から所望の大きさに型抜きするものであり、NDフィルタの面積が小さいほど一枚のシート状からの抜き数は多く取れるので、製造コストの削減になる。
【0023】
図4(b)に示すように、絞り羽根60の厚さはNDフィルタ50の厚さより厚く形成され、絞り羽根60の表面は均一な平面にされている。このようにNDフィルタ50をインサート成形した絞り羽根60を、図2に示す基板30に組み込むことにより、NDフィルタ50が基板30に擦れて、擦り傷等が発生することを防止できる(図5参照)。
【0024】
絞り羽根60は、図4(b)に示すようにNDフィルタ50の上下両面の外周縁部に張出部61を形成したが、どちらか片面側のみに設けても良い。また、絞り羽根60は、略円板状の全周に亘って張出部61を形成したが、一部のみでも良い(図10参照)。
【0025】
図6及び図7は、本発明に係るカメラ用光量調整装置の他の実施例を示すものである。前述の実施形態の光学フィルタとしてのNDフィルタと、羽根部材としての露光用の開口部を絞る絞り羽根を変更した以外は同様の構成をなすものであり、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。ここで、図6(b)は、図6(a)の破線で切断してCから見た断面図である。
【0026】
NDフィルタ10は、略円板状で、約0.1ミリメートル程の厚さに形成され、絞り羽根70は、約0.1ミリメートル程の厚さに形成される。絞り羽根70は、樹脂材料を射出成形したものであり、NDフィルタ10をインサート成形することにより、NDフィルタ10と絞り羽根70とが一体的に形成される。そして、絞り羽根70と一体的に形成されたNDフィルタ10は、カメラ等に組み込むことにより、露光用の開口を通過する光量を調整して、光の回析現象等を防止する役割をなす。
【0027】
図6(b)に示すように、NDフィルタ10の外周端面11には全周に亘って絞り羽根70が形成される。さらに、NDフィルタ10の主面の上下外周縁部には、NDフィルタ10の全周に亘って外周端面11から中心部に向かって張り出した張出部としての上リブ71、下リブ72が形成される。つまり、NDフィルタ10の外周縁部を絞り羽根70の凹状部で挟んでいる状態にされる。絞り羽根70の上リブ71、下リブ72の部分は、絞り羽根70の他の部分より厚みが厚くなっている。これにより、NDフィルタ10には光の漏れのないように隙間無く絞り羽根70が形成されると共に、NDフィルタ10が絞り羽根70に強固に固定される。そして、一部厚みの増した絞り羽根70は強度がアップされる。また、NDフィルタ10の略全面の領域を光の回析現象を防止することに使用でき、無駄が無い。通常NDフィルタは大きな一枚のシート状から所望の大きさに型抜きするものであり、NDフィルタの面積が小さいほど一枚のシート状からの抜き数は多く取れるので、製造コストの削減になる。
【0028】
下リブ72の下端はNDフィルタ10の主面と平行であって、表面が均一な平面にされている。このようにNDフィルタ50をインサート成形した絞り羽根70を、図2に示す基板30に組み込むことにより、NDフィルタ10が基板30に擦れて、擦り傷等が発生することを防止できる(図7参照)。
【0029】
絞り羽根70は、上リブ71、下リブ72を形成したが、どちらか一方のみを設けても良い(図8及び図9参照)。また、絞り羽根70は、略円板状の全周に亘って張出部としてのリブ71、72を形成したが、一部のみでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るカメラ用光量調整装置の一実施形態を示すものであり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図2】図1に示すカメラ用光量調整装置を基板に取り付けて絞り装置として構成した実施形態を示すものであり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図3】図2に示す絞り装置の裏面を示す図である。
【図4】本発明に係るカメラ用光量調整装置の他の実施形態を示すものであり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図5】図4に示すカメラ用光量調整装置を基板に取り付けて絞り装置として構成した実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明に係るカメラ用光量調整装置のさらに他の実施形態を示すものであり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図7】図6に示すカメラ用光量調整装置を基板に取り付けて絞り装置として構成した実施形態を示す断面図である。
【図8】図6に示すカメラ用光量調整装置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図9】図6に示すカメラ用光量調整装置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図10】図4に示すカメラ用光量調整装置のさらに他の実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0031】
10,50・・・NDフィルタ(光学フィルタ)
20,60,70・・・絞り羽根(羽根部材)
11,51・・・外周端面
61・・・張出部
71・・・上リブ(張出部)
72・・・下リブ(張出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルタが固定される羽根部材によって光量を調整するカメラ用光量調整装置であって、
前記羽根部材は、樹脂材からなり、且つ前記光学フィルタの外周端面に樹脂材を成型することにより一体的に形成されることを特徴とするカメラ用光量調整装置。

【請求項2】
前記羽根部材は、前記光学フィルタをインサート成型することにより形成されることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用光量調整装置。

【請求項3】
前記羽根部材は、光学フィルタが羽根部材から突出していないことを特徴とする請求項2に記載のカメラ用光量調整装置。

【請求項4】
前記羽根部材は、前記光学フィルタの外周縁部に張出部が設けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項3に記載のカメラ用光量調整装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−225719(P2007−225719A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44282(P2006−44282)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】