説明

カメラ装置の位置算出方法

【課題】CG座標系におけるカメラ装置の位置を特別な治具を用いることなく、簡易に算出することができ、移動できないカメラ装置にも適用することができるカメラ装置の位置算出方法を提供すること。
【解決手段】CG座標系での位置がわかっている2点を設定する工程と、第1点をカメラ装置により撮像する工程と、その際のカメラ装置のパン角度、チルト角度、テレビカメラの高さに基づいてカメラ装置座標系での前記第1点の位置を求める工程と、第2点をカメラ装置により撮像する工程と、その際の前記カメラ装置のパン角度、チルト角度、テレビカメラの高さに基づいてカメラ装置座標系での第2点の位置を求める工程と、カメラ装置座標系における第1点および第2点の位置から、カメラ装置座標系に対するCG座標系の回転角度を求める工程と、回転角度に基づいて、CG座標系におけるカメラ装置の位置を算出する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映画、テレビ等で撮影を行う際に用いられるカメラ装置の位置算出方法および位置算出装置に関し、特に、コンピュータグラフィック(CG)画像と実写像の合成に好適なカメラ装置の位置算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、バーチャルスタジオにおいては、スタジオ内にてカメラがとらえた実写映像と、その背景として、あるいは演出として生成されたコンピューターグラフィックス(CG)とを、そのカメラ位置から見た三次元的位置関係を維持しながら連動させる場合、CG座標系の中でカメラの位置を算出する必要がある。すなわち、CG座標系の中でカメラの位置が決定されれば、カメラ、被写体、CGの相互位置関係を計算することができ、カメラの被写体とCGとを三次元的位置関係を維持しながら連動させることができる。
【0003】
このようなことを考慮した技術として、特許文献1には、床面に基準位置を設定し、基準位置から互いに直交するように床面に第1および第2のラインを形成し、第1のラインを検出する2つの第1のセンサーと第2のラインを検出する1つの第2のセンサーとをカメラの移動架台に取り付け、2つの第1のセンサーがそれぞれ第1のラインを通過したときの移動量、および第2のセンサーが第2のラインを通過したときの移動量に基づいてカメラ位置および自転角度を算出して位置合わせ(キャリブレーション)を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−204378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術を用いることにより、CG座標系において正確にカメラ装置の位置を把握してキャリブレーションすることができるが、以下のような問題点がある。
【0006】
すなわち、基準位置から互いに直交するように床面に第1および第2のラインを精度良く形成するために、特別なシート(原点シート)を設置する必要があり、このようなシートを設置できるスペースのあるところに適用が限定されてしまうとともに、この原点シートを番組収録時にカメラの視野に入らないように設置する等の配慮が必要となる。
【0007】
また、キャリブレーションの度、原点シートが設置してある位置までカメラ装置の架台を移動する必要があり、複数台のカメラ装置の位置合わせを行う場合には、全てのカメラ装置を原点シートが設置してある位置まで移動させなければならず、煩雑である。複数の原点シートを設置することも可能であるが、原点シート相互の座標系を合わせることは手間と時間がかかってしまう。また、この特許文献1の技術は、移動できないカメラ装置には適用できない。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、CG座標系におけるカメラ装置の位置を特別な治具を用いることなく、簡易に算出することができ、移動できないカメラ装置にも適用することができるカメラ装置の位置算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、テレビカメラを有するカメラ装置による実写映像とコンピュータグラフィック(CG)映像とを合成する際の、CG座標系におけるカメラ装置の位置を算出するカメラ装置の位置算出方法であって、CG座標系での位置がわかっている2点を設定する工程と、前記2点のうち第1点を前記カメラ装置により撮像する工程と、前記第1点を撮像した際の前記カメラ装置のパン角度、チルト角度、テレビカメラの高さを検出し、これらに基づいてカメラ装置座標系での前記第1点の位置を求める工程と、前記2点のうち第2点を前記カメラ装置により撮像する工程と、前記第2点を撮像した際の前記カメラ装置のパン角度、チルト角度、テレビカメラの高さを検出し、これらに基づいてカメラ装置座標系での前記第2点の位置を求める工程と、前記カメラ装置座標系における前記第1点および前記第2点の位置から、カメラ装置座標系に対するCG座標系の回転角度を求める工程と、前記回転角度に基づいて、前記CG座標系における前記カメラ装置の位置を算出する工程とを有することを特徴とするカメラ装置の位置算出方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、CG座標系での位置がわかっている2点を設定し、これらに基づいて、CG座標系におけるカメラ装置の位置を算出するので、原点シートのような治具やセンサーを用いる必要がなく、カメラ装置により映像を捕らえられる場所ならばどこでも簡易にキャリブレーションを行うことができる。キャリブレーションの度、原点シートが設置してある位置までカメラ装置を移動する必要がなく、CG座標系での2点が撮像できれば、いつでも、何台のカメラ装置でも、その場所でキャリブレーションを実行することができる。さらに、2点が撮像できればよいので、移動できないカメラ装置にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るカメラ装置の位置算出方法が適用されるCG合成システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るカメラ装置の位置算出方法に用いられるカメラ装置の一例を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るカメラ装置の位置算出方法に用いられるカメラ装置の一例を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るカメラ装置の位置算出方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】カメラ装置により点Aを撮像したときのカメラ装置座標系でのA点の位置と、パン角度α、チルト角度β、カメラ高さhとの関係を説明するための図である。
【図6】カメラ装置座標系におけるA点およびB点の位置から、カメラ装置座標系に対するCG座標系の回転角度θを求める方法を説明するための図である。
【図7】CG座標系におけるカメラ装置の位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。
ここでは、本発明の一実施形態に係るカメラ装置の位置算出方法が適用されるCG合成システムについて説明する。
【0013】
図1は、このようなCG合成システムの概略構成を示すブロック図である。このCG合成システムは、実写映像を撮像するカメラ装置1と、カメラ装置1のパ
ラメータ(パン角度、チルト角度、カメラ高さ)を検出するパラメータ検出部2と、カメラ装置1のCG座標系での位置を算出する位置算出部3と、制御部4と、実写像とCGとを合成するモニタからなる画像合成部5とを有しており、CG座標系にある被写体7をカメラ装置1で撮像し、その実写映像及びCG座標系に配置されたCG画像を合成した映像を出力するものである。
【0014】
カメラ装置1は、図2、3に示すように、スタジオの床面を走行する移動架台としてのペデスタル12と、その上に設けられた雲台13と、雲台13の上に搭載されたTVカメラ14とを有し、TVカメラ14は雲台13により旋回および傾動可能となっている。なお、参照符号15はペデスタルの移動方向を変えるハンドルであり、16はTVカメラ14を傾動または旋回させるときのレバーである。ペデスタル12には、その底部に3つの走行用の車輪17が設けられている。
【0015】
このようなCG合成システムによる撮影では、カメラ装置1を予め外部より入力された位置に配置するが、カメラ装置1がとらえた実写映像と、CGとを、カメラ装置1の位置から見た三次元的位置関係を維持しながら連動させる場合、CG座標系の中でカメラ装置1の位置を算出する必要がある。そのため、本実施形態では、位置算出部3において、カメラ装置1により撮像した映像とパラメータ検出部2により検出したカメラ装置1のパラメータとに基づいてカメラ装置1のCG座標系での位置を算出し、キャリブレーションを行う。具体的には、位置算出部3は、後述するように、CG座標系での位置がわかっているA、B2点を所定位置にあるカメラ装置1で撮像した際に、パラメータ検出部2で検出されたパラメータ情報と、A点およびB点のCG座標系での位置情報とに基づいて、カメラ装置1のCG座標系での位置を算出する。
【0016】
制御部4は、外部より指令を受けて、カメラ装置1と画像合成部5とを制御する。また、撮影開始時または撮影の途中で、外部からの指令により位置算出部3にキャリブレーション実行指令を出力する。具体的には、パラメータ検出部2で検出したパラメータまたは画像合成部5においてモニタされた映像に基づいてカメラ装置1の位置および角度を制御し、画像合成部5における画像合成を制御する。また、受け取ったパラメータ検出部2の検出情報を位置算出部3に送出する。
【0017】
次に、このように構成されるCG合成システムにおけるカメラ装置1の位置算出方法について図4のフローチャートを参照して説明する。
【0018】
まず、CG座標系での位置が分かっているA点、B点の2点を設定する(ステップ1)。このとき、第1点であるA点をCG座標系の原点(0,0)にとり、第2点であるB点をCG座標系のX軸の点(0,x)にとることが好ましい。具体的には、これらA点、B点を例えばスタジオ床面にとり、Pタイルの目地上にテープなどで目印をつける。
【0019】
次に、制御部4によりカメラ装置1のパラメータ(パン角度、チルト角度、カメラ高さ)を制御し、あるいはカメラマンの操作によって、TVカメラ14の中央にA点を位置させるようにしてカメラ装置1によりA点を撮像する(ステップ2)。
【0020】
その時得られるパラメータ(パン角度α、チルト角度β、カメラ高さh)を検出し、これらに基づいて位置検出部3で演算し、移動架台12の座標系(カメラ装置座標系)でのA点の位置を求める(ステップ3)。
【0021】
具体的には、カメラ装置1の位置をカメラ装置座標系の原点とすると、カメラ装置座標系での点A(x、y)を以下のようにして求めることができる。つまり、図5(a)に示すように、A点はパン角度がαであるから、カメラ装置座標系の点Aは、Y軸から角度α傾いた原点を通る直線上の長さLの位置に位置し、図5(b)に示すように、長さLは、カメラ高さhとチルト角度βからL=h/tanβと算出することができる。したがって、カメラ装置座標系での点A(x,y)のx、yは以下のようになる。
x=L・sinα/tanβ
y=L・cosα/tanβ
【0022】
次に、制御部4によりカメラ装置1のパラメータ(パン角度、チルト角度、カメラ高さ)を制御し、あるいはカメラマンの操作によって、TVカメラ14の中央にB点を位置させるようにしてB点を撮像する(ステップ4)。
【0023】
その時得られるパラメータ(パン角度α′、チルト角度β′、カメラ高さh′)を検出し、これらに基づいて位置検出部3で演算し、カメラ装置座標系でのB点の位置を求める(ステップ5)。
【0024】
このときは、カメラ装置座標系での原点からB点までの長さをL′とし、A点の場合と同様にして、カメラ装置座標系での点B(x′,y′)を求めると、x′、y′は、以下のようになる。
x′=L′・sinα′/tanβ′
y′=L′・cosα′/tanβ′
【0025】
次に、カメラ装置座標系におけるA点およびB点の位置から、カメラ装置座標系に対するCG座標系の回転角度θを求める(ステップ6)。すなわち、カメラ装置座標系におけるA点およびB点を求めることにより、図6に示すように、カメラ装置座標系にCG座標系のx軸が描かれ、カメラ装置座標系に対するCG座標系の回転角度θは、以下の式から算出される。
tanθ=(y′−y)/(x′−x)
【0026】
そして、CG座標系におけるカメラ装置1の平面位置は図7に示すようになり、回転角度θと上記計算結果から、CG座標系におけるカメラ装置1の位置C(Cx,Cy)を求める(ステップ7)。
【0027】
このときのCx,Cyは、図7からも明らかなように、以下の式から算出することができる。
Cx=−L・sin(α+θ)=−h・sin(α+θ)/tanβ
Cy=−L・cos(α+θ)=−h・cos(α+θ)/tanβ
【0028】
以上のようにして、CG座標系におけるカメラ装置1の位置Cを把握することができる。
【0029】
そして、このCG座標系におけるカメラ装置1の位置算出結果に基づいてキャリブレーションを行い、制御部4による制御により、あるいはカメラマンの操作により、カメラ装置1による実写映像とCGとを合成する。このとき、CG座標系におけるカメラ装置1の位置が求められているので、実写映像とCGとがずれることなくこれらを合成することができる。
【0030】
本実施形態では、このようにカメラ装置1の映像を利用してCG座標系でのカメラ装置1の位置を算出してキャリブレーションを行うので、上述した特許文献1の技術のように、原点シートのような治具やセンサーを用いる必要がなく、カメラ装置1により映像を捕らえられる場所ならばどこでも簡易にキャリブレーションを行うことができる。また、本実施形態のように、CG原点位置を第1点としてキャリブレーションを行うことができ、これにより、特許文献1の技術では必要であった、原点シート上での基準位置とCG原点とを合わせる作業を不要とすることができる。
【0031】
また、本実施形態では、特許文献1の技術のように、キャリブレーションの度、原点シートが設置してある位置までカメラ装置の架台を移動する必要がなく、CG座標系での2点が撮像できれば、いつでも、何台のカメラ装置でも、その場所でキャリブレーションを実行することができる。さらに、特許文献1では、カメラ装置が移動することを前提としていたため、移動できないカメラ装置を用いることはできなかったが、本実施形態では2点が撮像できればよいので、移動できないカメラ装置にも適用が可能である。
【0032】
また、従来、キャリブレーションは、画像合成部の操作によってCGの座標と実写の三次元的位置関係を合わせることで行なってきたが、本発明によれば、専門知識を必要とする画像合成部の操作も不要となる上、カメラ装置座標系の
原点とCG座標系の原点との位置関係の測量も不要となる。
【0033】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では床面の点をCG座標系の基準の2点として用いたが、被写体が移動し床面の基準点をカメラで捕らえられない場合等には、これに限らず背景のセットのある点を基準の2点としてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、バーチャルスタジオのCG座標系のCG画像を合成する場合を例示したが、これに限らず、スタジアムの中継において、スタジアムの実写映像とCG画像を合成するような用途等、カメラ装置位置の測量が困難な運用においても、スタジアムの中に寸法の分かっている2点を基準点として設定すれば、カメラ装置のCG座標での位置を算出することができ、手軽に精度よくキャリブレーションすることが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1…カメラ装置
2…パラメータ検出部
3…位置算出部
4…制御部
5…画像合成部
12…ペデスタル(移動架台)
14…TVカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレビカメラを有するカメラ装置による実写映像とコンピュータグラフィック(CG)映像とを合成する際の、CG座標系におけるカメラ装置の位置を算出するカメラ装置の位置算出方法であって、
CG座標系での位置がわかっている2点を設定する工程と、
前記2点のうち第1点を前記カメラ装置により撮像する工程と、
前記第1点を撮像した際の前記カメラ装置のパン角度、チルト角度、テレビカメラの高さを検出し、これらに基づいてカメラ装置座標系での前記第1点の位置を求める工程と、
前記2点のうち第2点を前記カメラ装置により撮像する工程と、
前記第2点を撮像した際の前記カメラ装置のパン角度、チルト角度、テレビカメラの高さを検出し、これらに基づいてカメラ装置座標系での前記第2点の位置を求める工程と、
前記カメラ装置座標系における前記第1点および前記第2点の位置から、カメラ装置座標系に対するCG座標系の回転角度を求める工程と、
前記回転角度に基づいて、前記CG座標系における前記カメラ装置の位置を算出する工程と
を有することを特徴とするカメラ装置の位置算出方法。
【請求項2】
前記第1点はCG座標系の原点であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ装置の位置算出方法。
【請求項3】
前記第2点はCG座標系のX軸の任意の点であることを特徴とする請求項2に記載のカメラ装置の位置算出方法。
【請求項4】
前記第1点または前記第2点を撮像する際に、前記第1点または前記第2点が前記テレビカメラの中央に位置するようにすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカメラ装置の位置算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−77780(P2011−77780A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226450(P2009−226450)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(591247765)株式会社昭特製作所 (4)
【Fターム(参考)】