カメラ装置の原点ずれ補正方法及びカメラ装置
【課題】 システムに複雑な画像処理機能を搭載しなくても、様々なシーンで利用可能なカメラ装置の原点ずれ補正を実現する。
【解決手段】 カメラ装置のカメラアングルを設定した際に、当該カメラアングルのパラメータとカメラ装置が撮影した映像とを記憶部に保存する。カメラ装置の原点ずれ補正を実行する際に、記憶部に保存されたカメラアングルのパラメータを取得し、カメラ装置の現在のカメラアングルのパラメータを取得する。そして、保存されたパラメータと、現在のパラメータとが一致する場合に、カメラ装置の現在の映像に記憶部に保存された映像を重畳して表示部に表示する。
【解決手段】 カメラ装置のカメラアングルを設定した際に、当該カメラアングルのパラメータとカメラ装置が撮影した映像とを記憶部に保存する。カメラ装置の原点ずれ補正を実行する際に、記憶部に保存されたカメラアングルのパラメータを取得し、カメラ装置の現在のカメラアングルのパラメータを取得する。そして、保存されたパラメータと、現在のパラメータとが一致する場合に、カメラ装置の現在の映像に記憶部に保存された映像を重畳して表示部に表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等の駆動位置を検出するためのエンコーダを搭載しないカメラ装置の原点ずれの発生をユーザが認識し易くしたカメラ装置の原点ずれ補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンコーダを搭載しないカメラ装置において、カメラアングルが直接手で変更されたり、地震等で大きな振動が加えられたりすると、カメラ装置側で理論上の駆動位置と実際の駆動位置のずれ、所謂「原点ずれ」が生じることがある。そこで、ユーザがパン、チルト、ズーム、ローテーション等のアングルパラメータを指定して原点ずれを修正するためにカメラアングルをモータ駆動によって制御しても、ユーザが意図した通りに制御されない、という問題が生じる。
【0003】
このような問題を解決するには、常に原点ずれが発生していない状態にする必要があるが、エンコーダを搭載しないカメラ装置で、これを行うには、カメラアングル制御を行う直前に、毎回原点ずれ補正を行う必要がある。しかし、原点ずれ補正は、通常各アングルパラメータを実際にモータ制御して端点まで動かし、端点で原点ずれがない状態にした上で、元のアングルパラメータに従って再びモータ制御することになるため、1回あたりの原点ずれ補正に時間がかかる。特に、パン、チルト、ズーム、ローテーションのように、複数のアングルパラメータ制御が可能なカメラ装置で且つ複数のパラメータの制御を1つのモータで共通化している場合は、それが顕著になる。
【0004】
上述の問題を解決する従来の技術として、雲台が所定の位置にあるときに撮影して記憶した登録画像と新たに撮影し直した画像とを比較し、比較結果が所定の条件を満たさない場合に、雲台を初期位置に駆動する雲台制御方法がある。このような制御方法を適用することで、原点ずれ補正を原点ずれが発生している場合にのみ実施することが可能になり、不要な原点ずれ補正を行わなくて済むようになる。
【0005】
また、予めプリセット登録時に位置情報と共にそのプリセットで撮影された画像を登録画像として記憶し、プリセット制御後に登録画像と現在の画像を比較した結果に基づいて画像のずれを低減する方向に雲台を駆動する雲台装置がある。
【0006】
画像の比較によって雲台を初期位置に駆動する雲台制御方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、プリセット制御後に画像のずれ量からずれを低減する方向に雲台を駆動する雲台装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−98576号公報
【特許文献2】特開2008−259056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の技術は、何れも画像の比較をシステム側で自動的に行うが、対応可能なシーンが限られてしまうことがある。例えば、比較対象となる登録画像が昼間に撮影された明るい画像の場合、夜間に原点ずれを補正する際に、2つの画像の明暗差が大きくなるため、画像比較アルゴリズムによっては、2つの画像中の対応点を見つけることすら困難となる。また、登録画像が撮影されたときは存在しなかった物体が登録画像の撮影後に設置された場合や、元の位置から物体が移動された場合も、物体の位置や大きさによっては、自動的な比較が困難になる可能性が高い。
【0009】
また、上述の問題を軽減させたアルゴリズムをシステムに搭載するには、アルゴリズム自体の開発コストだけでなく、そのアルゴリズムを搭載するためのCPU、メモリなどのフットプリントにかかるコストも必要となる。
【0010】
本発明は、システムに複雑な画像処理機能を搭載しなくても、様々なシーンで利用可能なカメラ装置の原点ずれ補正を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、カメラ装置における原点ずれ補正方法であって、
保存手段が、前記カメラ装置のカメラアングルを設定した際に、前記カメラ装置が撮影した映像を記憶手段に保存する保存工程と、
表示制御手段が、前記カメラ装置の原点ずれ補正を実行する際に、前記カメラ装置の現在の映像に前記記憶手段に保存された映像を重畳して表示手段に表示する表示制御工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、システムに複雑な画像処理機能を搭載することなく、様々なシーンで利用可能なカメラ装置の原点ずれを補正することができる。
【0013】
また、ユーザが原点ずれのずれ量を確認しながら原点ずれ補正を実行するか否かを決定することができるため、ずれ量が許容範囲内か否かを判断し、必要以上の原点ずれ補正を行わないようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】カメラアングル設定ツールの画面を示す図。
【図2】第一の実施形態におけるカメラ装置の構成例を示すブロック図。
【図3】第一の映像と第二の映像上に操作アシストを重畳表示した図。
【図4】パン制御により表示状態が変化した図。
【図5】カメラアングル設定ツールの処理を示すフローチャート。
【図6】(A)は原点ずれ補正を完了時の処理、(B)は原点ずれ補正によるカメラアングルの設定完了時の処理、をそれぞれ示すフローチャート。
【図7】第二の実施形態におけるカメラ装置の構成例を示すブロック図。
【図8】第二の実施形態における画像変換処理を含む処理を示すフローチャート。
【図9】第二の実施形態における画像変換部の処理を説明するための図。
【図10】第三の実施形態におけるカメラアングル設定ツールの画面を示す図。
【図11】第三の実施形態における処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら発明を実施するための形態について詳細に説明する。本実施形態では、モータなどの駆動位置を検出するためのエンコーダを搭載しないカメラ装置における原点ずれ補正方法について説明する。
【0016】
[第一の実施形態]
第一の実施形態として、同じカメラアングルパラメータで撮影した第一の映像と第二の映像とを重畳表示する場合について説明する。図2は、同じカメラアングルパラメータで撮影した第一の映像と第二の映像とを重畳表示するシステムのブロック図である。図1は、図2に示すカメラアングル設定ツール2の画面表示部26に表示される画面イメージである。
【0017】
このシステムは、ネットワーク機能と、パン、チルト、ズーム、ローテーション機構を備えたカメラサーバ装置1、そのカメラサーバ装置1のカメラアングルを、ネットワーク3を介して遠隔から設定するカメラアングル設定ツール2で構成される。
【0018】
カメラサーバ装置1は、映像を撮影するズーム機能付きビデオカメラ11、そのビデオカメラのパン、チルト、ローテーション機構を備えた可動雲台12、ビデオカメラ11と可動雲台12とを制御するカメラ・雲台制御部13を備える。また、ビデオカメラ11が撮影した映像を入力する画像入力部15、画像入力部15から入力された映像信号を配信しやすいデータサイズに圧縮する画像圧縮部16、圧縮された画像の送信やクライアントから受信したコマンドを受信する通信制御部14を備える。更に、クライアントから受信したコマンドに応じてカメラサーバ装置1内の各部を制御するコマンド解釈部17、各種データを保持する記憶部18を備える。
【0019】
一方、カメラアングル設定ツール2は、カメラサーバ装置1にコマンドを送信し、映像を受信する通信制御部21、カメラサーバ装置1へのコマンドを生成し、レスポンスを解釈してツールの各部を制御する操作コマンド生成・解釈部22を備える。また、ユーザが入力した操作を受け付けるカメラ操作入力部23、操作コマンド生成・解釈部22から得られたカメラ状態及び画像伸長部25によって伸長された映像から画面イメージを生成して画面表示部26に表示する表示制御部24を備える。これらの各部は必ずしも物理的に独立している必要はなく、パーソナルコンピュータ(PC)上のソフトウェアとして統合されていてもよい。また、カメラサーバ装置1及びカメラアングル設定ツール2が1つのカメラ装置として構成されていてもよい。
【0020】
ここで、カメラアングル設定ツール2の画面表示部26に表示される画面イメージを、図1を用いて説明する。図1に示すウィンドウ4には、第一の映像及び第二の映像を重畳表示する映像表示部410、ズーム位置を指定して制御するズームスライダー420、ローテーションを位置指定して制御するローテーションスライダー430がある。また、各アングルパラメータの方向制御を行う方向制御ボタン460、映像表示部410上にパン、チルトの目盛線である操作アシストを表示するか否かを設定する操作アシスト表示リスト450がある。更に、原点ずれを補正するアングルパラメータを選択するアングルパラメータリスト441、選択したアングルパラメータの原点ずれ補正を実行する原点ずれ補正ボタン440がある。
【0021】
また、映像表示部410には、カメラサーバ装置1から取得した現在の映像である第二の映像がライブ動画で表示されると共に、カメラサーバ装置1の記憶部18に保存された第一の映像が半透明で重畳表示される。ここで、パン、チルト、ズーム、ローテーションの何れかに原点ずれが発生している場合は、次の場合である。第一の映像と第二の映像の撮影時のパラメータが同じで且つ第一の映像中の物体411と第二の映像中の物体412が同じで且つ位置が変更されていないのに、表示上のずれが発生している場合である。
【0022】
この場合、アングルパラメータリスト441で「全て」を選択し、原点ずれ補正ボタン440を押下すると、パン、チルト、ズーム、ローテーション全ての原点ずれ補正が実行される。第一の映像撮影時に原点ずれが発生していなかった場合は、原点ずれ補正の実行が完了した時点で第一の映像中の物体411と第二の映像中の物体412が一致することになる。
【0023】
図1に示す状態から操作アシスト表示リスト450で「表示する」を選択すると、図3に示すように、第一の映像と第二の映像上に操作アシスト413が重畳表示される。この操作アシスト413は、映像をパノラマ平面に射影変換した際に、同じパン位置を表す線と同じチルト位置を表す線を映像上に破線で表したものである。図3に示す状態は、映像表示部中央の縦線が同じパン位置を表す線、それと直行する弧を描く線が同じチルト位置を表す線である。
【0024】
ここで、図4に示す第二の映像中の物体が映像51のように表示されている状態から、パン制御を行うと、映像52又は映像53の状態に変化する。この映像52は、チルトの原点ずれがなかった場合の映像であり、映像53はチルトの原点ずれがあった場合の映像である。ここで、映像52内の物体は、映像51での状態から同じチルト位置を表す線との位置関係を保ったままであるが、映像53内の物体は、映像51の状態から同じチルト位置を表す線との位置関係がずれている。この位置関係を利用して、第一の映像中の物体411が映像51のように表示され、且つ第二の映像中の物体412が映像52のように表示されている場合は、チルトの原点ずれが発生していないことを判定できる。
【0025】
これと同様に、パンの原点ずれの有無は、チルト方向に動かした場合に同じパン位置を表す線との位置関係がずれるか否かで判定できる。また、ズームの原点ずれの有無は同じパン位置を表す線及び同じチルト位置を表す線で囲まれた領域との相対的な大きさが等しいか否かで判定できる。更に、ローテーションの原点ずれの有無は、映像表示部の中央に対して物体が回転しているか否かで判定できるので、映像表示部の中央に同じパン位置を表す線及び同じチルト位置を表す線の交点が来るように操作アシストを表示すれば、判定がし易くなる。
【0026】
このように、第一の映像中の物体411と第二の映像中の物体422との位置関係から各アングルパラメータの原点ずれの有無がある程度個別に判定できる。従って、アングルパラメータリスト441で原点ずれが発生しているパラメータを選択して原点ずれ補正を実行することで、不要な原点ずれ補正を行わなくて済む。
【0027】
次に、カメラアングル設定ツール2がカメラサーバ装置1に接続された際に実行される処理を図5に示すフローチャートを用いて説明する。まず、カメラアングル設定ツール2がカメラサーバ装置1に接続されると、S101で、カメラサーバ装置1の記憶部18に保存された第一の映像を取得し、S102で、第一の映像撮影時のアングルパラメータを取得する。そして、S103で、ビデオカメラ11のライブ映像である第二の映像を撮影したときのアングルパラメータと第一の映像のアングルパラメータとを比較する。比較の結果、アングルパラメータが完全に一致する場合は(S104、YES)、第一の映像と第二の映像との比較による原点ずれの有無の判定が可能になる。従って、S105へ処理を進め、第一の映像と別途取得された第二の映像とを表示制御部24が重畳させた上で、画面表示部26に出力する。しかし、アングルパラメータが一致しない場合は(S104、NO)、原点ずれの有無が判定できないため、処理を終了する。尚、S101の処理は、S104の処理の直前に実行されてもよい。
【0028】
ここで、原点ずれ補正を完了時の処理を、図6に示す(A)のフローチャートを用いて説明する。図5に示す処理を実行し、原点ずれ補正を完了すると(S201、YES)、S202へ処理を進め、第一の映像が表示された状態か否かを判定する。ここで、第一の映像が表示された状態のまま、第二の映像が原点ずれ補正に伴うカメラアングルの変化を反映した状態で表示されていれば、第一の映像と第二の映像は何れも原点ずれが発生していない状態となる。従って、第一の映像が表示中の場合は(S202、YES)、第一の映像は表示する必要がなくなるため、S203へ処理を進め、第一の映像を非表示とし、第二の映像のみを表示した状態とする。
【0029】
次に、原点ずれ補正によるカメラアングルの設定完了時の処理を、図6に示す(B)のフローチャートを用いて説明する。第一の実施形態におけるシステムでは、第一の映像をカメラアングル設定完了時に保存する。そのため、カメラアングルの設定が完了したとき又はカメラアングルの設定後にカメラサーバ装置1との接続を終了する際に、S301で、第一の映像を保存する。そして、S302で、第一の映像撮影時のアングルパラメータの値を記憶部18に保存する。
【0030】
尚、第一の映像及び第一の映像撮影時のアングルパラメータの値は、必ずしもカメラサーバ装置1内の記憶部18に保存する必要はなく、カメラアングル設定ツール2内に記憶装置を設け、そこに保存してもよい。その場合、それぞれをIPアドレス等の接続先情報と関連付けて保存することで、複数のカメラサーバ装置に対応することが可能になる。
【0031】
また、アングルパラメータは保存せずにカメラアングル設定ツール1の起動後にカメラアングルを動かさない状態で映像を並べて表示するようにしてもよい。これは、以下の実施形態でも同様である。
【0032】
[第二の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明に係る第二の実施形態を詳細に説明する。第二の実施形態として、異なるカメラアングルパラメータで撮影された第一の映像と第二の映像とを重畳表示する場合を、図7に示すブロック図を用いて説明する。尚、基本的な構成は第一の実施形態で説明した図2に示すブロック図の構成と同様であるが、第二の実施形態ではカメラアングル設定ツール内に画像変換部27が追加されている点が異なる。
【0033】
図7のシステムにおいて、異なるカメラアングルパラメータで撮影された第一の映像と第二の映像とを重畳表示して原点ずれを補正する場合の処理を、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0034】
まず、カメラアングル設定ツール2がカメラサーバ装置1に接続されると、S401で、カメラサーバ装置1の記憶部18に保存された第一の映像を取得し、S402で、第一の映像撮影時のアングルパラメータを取得する。そして、S403で、ビデオカメラ11のライブ映像である第二の映像を撮影したときのアングルパラメータと第一の映像のアングルパラメータとを比較する。比較の結果、アングルパラメータが完全に一致する場合は(S404、YES)、第一の映像と第二の映像との比較による原点ずれの有無の判定が可能になる。従って、S405へ処理を進め、第一の映像と別途取得された第二の映像とを表示制御部24が重畳させた上で、画面表示部26に出力し、この処理を終了する。
【0035】
ここまでの処理の流れは第一の実施形態のシステムと同じである。しかし、第二の実施形態では、アングルパラメータが一致しない場合(S404、NO)、S406へ処理を進め、原点ずれの有無を判定できるように、画像変換部27が映像変換を行う。そして、S405へ処理を進め、一致する場合と同様に処理する。
【0036】
ここで、画像変換部27の処理(異なるカメラアングルパラメータで撮影された第一の映像と第二の映像とを重畳表示する場合に第一の映像を変換する)を、図9を用いて説明する。
【0037】
図9に示すように、第一の映像が映像62の状態で撮影され、その後、ユーザによってパン方向に制御されて第二の映像が映像61の状態で撮影されたものとする。このとき、第一の映像で原点ずれが発生していない場合、第二の映像でも原点ずれは発生していないことになるが、単純にこれらの映像を重畳表示して比較すると、撮影時のパン位置が異なるため、映像中の物体にずれが生じたように見える。
【0038】
そこで、図8に示すS405で、第一の映像を、第一の映像及び第二の映像の撮影時のアングルパラメータの値に基づいて第二の映像を含む平面に対して平面射影変換を行う。そして、第二の映像の撮影時と同じアングルパラメータで撮影した場合の映像63を生成する。尚、平面射影変換については公知のため、詳細な説明は割愛する。
【0039】
第一の映像を変換した映像63と第二の映像61は、原点ずれや物体の移動が発生していなければ、映像中の同じ物体が同じ位置に表示されるはずである。従って、第一の実施形態の図5で説明した方法により、異なるアングルパラメータで撮影された第一の映像と第二の映像とを用いて、各アングルパラメータの原点ずれの有無を判定することが可能になる。
【0040】
尚、通常は第一の実施形態のシステムで十分に原点ずれの有無を判定することが可能である。しかし、第一の映像をカメラアングル設定ツール内に記憶しておき、複数のカメラアングル設定ツールからカメラアングルを設定する場合は、必ずしも第一の映像と第二の映像の撮影時のカメラアングルパラメータの値が一致するとは限らない。そのような場合でも、第二の本実施形態のシステムを用いることで、原点ずれの有無を判定できるようになる。
【0041】
また、カメラサーバ装置1内の記憶部18に、第一の映像を保存する場合でも、第二の映像の原点ずれが大きく、第一の映像と撮影領域が重ならない場合、比較する物体が存在しなくなり、原点ずれの有無が判定できなくなってしまう。そのような場合でも、第二の実施形態のシステムで、第一の映像を複数のカメラアングルで撮影して複数保持し、それら全てを射影変換した上で、第二の映像と比較することで撮影領域が重複する確率を高めて原点ずれの有無を判定することが可能になる。
【0042】
[第三の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明に係る第三の実施形態を詳細に説明する。第三の実施形態では、第一の映像と第二の映像との重畳表示を、ユーザが原点ずれ確認モードに切り替えた場合にのみ行うものである。基本的なシステム構成は、第一の実施形態及び第二の実施形態と同様である。
【0043】
図10は、原点ずれ確認モード時のカメラアングル設定ツール2の画面イメージを示す図である。第三の実施形態におけるカメラアングル設定ツール2のメインウィンドウ4は、図1や図3に示すものとほぼ同様であるが、原点ずれ補正ボタン440の代わりに原点ずれ補正メニュー470が追加されている。
【0044】
また、第一の映像はメインウィンドウ4には表示されず、原点ずれ補正メニュー470を選択したときに表示される原点ずれ補正ダイアログ7内に表示される。ここで、第一の映像は映像71であり、第二の映像は映像72である。メインウィンドウ4では、第二の映像は動画で表示されるが、原点ずれ補正ダイアログ7ではライブで映像を表示する必要性が低いため、ダイアログを開いたとき映像が静止画で表示される。原点ずれ補正ダイアログには更に原点ずれ補正実行ボタン74と、原点ずれ補正をキャンセルするキャンセルボタン75も配置される。
【0045】
次に、原点ずれ確認モードの開始から終了までの処理を、図11に示すフローチャートを用いて説明する。ユーザが原点ずれ補正メニュー470を選択すると、原点ずれ確認モードに移行し、S501で、原点ずれ補正ダイアログ7が開いて第一の映像71と第二の映像72を表示する。ここで、ユーザが第一の映像と第二の映像とを比較して原点ずれが発生していると判定した場合は、原点ずれ補正実行ボタン74が押下される(S502、YES)。これにより、S504へ処理を進め、原点ずれ補正を実行する。
【0046】
この原点ずれ補正が完了するか、或いはユーザが原点ずれ補正が発生していないと判定してキャンセルボタン75が押下された場合は(S503、YES)、S505へ処理を進め、原点ずれ補正ダイアログ7を閉じてメインウィンドウ4に戻る。
【0047】
第三の実施形態では、カメラアングル設定ツール2のメインウィンドウ4に複数の映像を表示する必要がないため、原点ずれが発生している場合でも、カメラアングル設定には不要な映像や原点ずれ補正用のGUIを表示しなくても済む。
【0048】
[他の実施形態]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等の駆動位置を検出するためのエンコーダを搭載しないカメラ装置の原点ずれの発生をユーザが認識し易くしたカメラ装置の原点ずれ補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンコーダを搭載しないカメラ装置において、カメラアングルが直接手で変更されたり、地震等で大きな振動が加えられたりすると、カメラ装置側で理論上の駆動位置と実際の駆動位置のずれ、所謂「原点ずれ」が生じることがある。そこで、ユーザがパン、チルト、ズーム、ローテーション等のアングルパラメータを指定して原点ずれを修正するためにカメラアングルをモータ駆動によって制御しても、ユーザが意図した通りに制御されない、という問題が生じる。
【0003】
このような問題を解決するには、常に原点ずれが発生していない状態にする必要があるが、エンコーダを搭載しないカメラ装置で、これを行うには、カメラアングル制御を行う直前に、毎回原点ずれ補正を行う必要がある。しかし、原点ずれ補正は、通常各アングルパラメータを実際にモータ制御して端点まで動かし、端点で原点ずれがない状態にした上で、元のアングルパラメータに従って再びモータ制御することになるため、1回あたりの原点ずれ補正に時間がかかる。特に、パン、チルト、ズーム、ローテーションのように、複数のアングルパラメータ制御が可能なカメラ装置で且つ複数のパラメータの制御を1つのモータで共通化している場合は、それが顕著になる。
【0004】
上述の問題を解決する従来の技術として、雲台が所定の位置にあるときに撮影して記憶した登録画像と新たに撮影し直した画像とを比較し、比較結果が所定の条件を満たさない場合に、雲台を初期位置に駆動する雲台制御方法がある。このような制御方法を適用することで、原点ずれ補正を原点ずれが発生している場合にのみ実施することが可能になり、不要な原点ずれ補正を行わなくて済むようになる。
【0005】
また、予めプリセット登録時に位置情報と共にそのプリセットで撮影された画像を登録画像として記憶し、プリセット制御後に登録画像と現在の画像を比較した結果に基づいて画像のずれを低減する方向に雲台を駆動する雲台装置がある。
【0006】
画像の比較によって雲台を初期位置に駆動する雲台制御方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、プリセット制御後に画像のずれ量からずれを低減する方向に雲台を駆動する雲台装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−98576号公報
【特許文献2】特開2008−259056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の技術は、何れも画像の比較をシステム側で自動的に行うが、対応可能なシーンが限られてしまうことがある。例えば、比較対象となる登録画像が昼間に撮影された明るい画像の場合、夜間に原点ずれを補正する際に、2つの画像の明暗差が大きくなるため、画像比較アルゴリズムによっては、2つの画像中の対応点を見つけることすら困難となる。また、登録画像が撮影されたときは存在しなかった物体が登録画像の撮影後に設置された場合や、元の位置から物体が移動された場合も、物体の位置や大きさによっては、自動的な比較が困難になる可能性が高い。
【0009】
また、上述の問題を軽減させたアルゴリズムをシステムに搭載するには、アルゴリズム自体の開発コストだけでなく、そのアルゴリズムを搭載するためのCPU、メモリなどのフットプリントにかかるコストも必要となる。
【0010】
本発明は、システムに複雑な画像処理機能を搭載しなくても、様々なシーンで利用可能なカメラ装置の原点ずれ補正を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、カメラ装置における原点ずれ補正方法であって、
保存手段が、前記カメラ装置のカメラアングルを設定した際に、前記カメラ装置が撮影した映像を記憶手段に保存する保存工程と、
表示制御手段が、前記カメラ装置の原点ずれ補正を実行する際に、前記カメラ装置の現在の映像に前記記憶手段に保存された映像を重畳して表示手段に表示する表示制御工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、システムに複雑な画像処理機能を搭載することなく、様々なシーンで利用可能なカメラ装置の原点ずれを補正することができる。
【0013】
また、ユーザが原点ずれのずれ量を確認しながら原点ずれ補正を実行するか否かを決定することができるため、ずれ量が許容範囲内か否かを判断し、必要以上の原点ずれ補正を行わないようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】カメラアングル設定ツールの画面を示す図。
【図2】第一の実施形態におけるカメラ装置の構成例を示すブロック図。
【図3】第一の映像と第二の映像上に操作アシストを重畳表示した図。
【図4】パン制御により表示状態が変化した図。
【図5】カメラアングル設定ツールの処理を示すフローチャート。
【図6】(A)は原点ずれ補正を完了時の処理、(B)は原点ずれ補正によるカメラアングルの設定完了時の処理、をそれぞれ示すフローチャート。
【図7】第二の実施形態におけるカメラ装置の構成例を示すブロック図。
【図8】第二の実施形態における画像変換処理を含む処理を示すフローチャート。
【図9】第二の実施形態における画像変換部の処理を説明するための図。
【図10】第三の実施形態におけるカメラアングル設定ツールの画面を示す図。
【図11】第三の実施形態における処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら発明を実施するための形態について詳細に説明する。本実施形態では、モータなどの駆動位置を検出するためのエンコーダを搭載しないカメラ装置における原点ずれ補正方法について説明する。
【0016】
[第一の実施形態]
第一の実施形態として、同じカメラアングルパラメータで撮影した第一の映像と第二の映像とを重畳表示する場合について説明する。図2は、同じカメラアングルパラメータで撮影した第一の映像と第二の映像とを重畳表示するシステムのブロック図である。図1は、図2に示すカメラアングル設定ツール2の画面表示部26に表示される画面イメージである。
【0017】
このシステムは、ネットワーク機能と、パン、チルト、ズーム、ローテーション機構を備えたカメラサーバ装置1、そのカメラサーバ装置1のカメラアングルを、ネットワーク3を介して遠隔から設定するカメラアングル設定ツール2で構成される。
【0018】
カメラサーバ装置1は、映像を撮影するズーム機能付きビデオカメラ11、そのビデオカメラのパン、チルト、ローテーション機構を備えた可動雲台12、ビデオカメラ11と可動雲台12とを制御するカメラ・雲台制御部13を備える。また、ビデオカメラ11が撮影した映像を入力する画像入力部15、画像入力部15から入力された映像信号を配信しやすいデータサイズに圧縮する画像圧縮部16、圧縮された画像の送信やクライアントから受信したコマンドを受信する通信制御部14を備える。更に、クライアントから受信したコマンドに応じてカメラサーバ装置1内の各部を制御するコマンド解釈部17、各種データを保持する記憶部18を備える。
【0019】
一方、カメラアングル設定ツール2は、カメラサーバ装置1にコマンドを送信し、映像を受信する通信制御部21、カメラサーバ装置1へのコマンドを生成し、レスポンスを解釈してツールの各部を制御する操作コマンド生成・解釈部22を備える。また、ユーザが入力した操作を受け付けるカメラ操作入力部23、操作コマンド生成・解釈部22から得られたカメラ状態及び画像伸長部25によって伸長された映像から画面イメージを生成して画面表示部26に表示する表示制御部24を備える。これらの各部は必ずしも物理的に独立している必要はなく、パーソナルコンピュータ(PC)上のソフトウェアとして統合されていてもよい。また、カメラサーバ装置1及びカメラアングル設定ツール2が1つのカメラ装置として構成されていてもよい。
【0020】
ここで、カメラアングル設定ツール2の画面表示部26に表示される画面イメージを、図1を用いて説明する。図1に示すウィンドウ4には、第一の映像及び第二の映像を重畳表示する映像表示部410、ズーム位置を指定して制御するズームスライダー420、ローテーションを位置指定して制御するローテーションスライダー430がある。また、各アングルパラメータの方向制御を行う方向制御ボタン460、映像表示部410上にパン、チルトの目盛線である操作アシストを表示するか否かを設定する操作アシスト表示リスト450がある。更に、原点ずれを補正するアングルパラメータを選択するアングルパラメータリスト441、選択したアングルパラメータの原点ずれ補正を実行する原点ずれ補正ボタン440がある。
【0021】
また、映像表示部410には、カメラサーバ装置1から取得した現在の映像である第二の映像がライブ動画で表示されると共に、カメラサーバ装置1の記憶部18に保存された第一の映像が半透明で重畳表示される。ここで、パン、チルト、ズーム、ローテーションの何れかに原点ずれが発生している場合は、次の場合である。第一の映像と第二の映像の撮影時のパラメータが同じで且つ第一の映像中の物体411と第二の映像中の物体412が同じで且つ位置が変更されていないのに、表示上のずれが発生している場合である。
【0022】
この場合、アングルパラメータリスト441で「全て」を選択し、原点ずれ補正ボタン440を押下すると、パン、チルト、ズーム、ローテーション全ての原点ずれ補正が実行される。第一の映像撮影時に原点ずれが発生していなかった場合は、原点ずれ補正の実行が完了した時点で第一の映像中の物体411と第二の映像中の物体412が一致することになる。
【0023】
図1に示す状態から操作アシスト表示リスト450で「表示する」を選択すると、図3に示すように、第一の映像と第二の映像上に操作アシスト413が重畳表示される。この操作アシスト413は、映像をパノラマ平面に射影変換した際に、同じパン位置を表す線と同じチルト位置を表す線を映像上に破線で表したものである。図3に示す状態は、映像表示部中央の縦線が同じパン位置を表す線、それと直行する弧を描く線が同じチルト位置を表す線である。
【0024】
ここで、図4に示す第二の映像中の物体が映像51のように表示されている状態から、パン制御を行うと、映像52又は映像53の状態に変化する。この映像52は、チルトの原点ずれがなかった場合の映像であり、映像53はチルトの原点ずれがあった場合の映像である。ここで、映像52内の物体は、映像51での状態から同じチルト位置を表す線との位置関係を保ったままであるが、映像53内の物体は、映像51の状態から同じチルト位置を表す線との位置関係がずれている。この位置関係を利用して、第一の映像中の物体411が映像51のように表示され、且つ第二の映像中の物体412が映像52のように表示されている場合は、チルトの原点ずれが発生していないことを判定できる。
【0025】
これと同様に、パンの原点ずれの有無は、チルト方向に動かした場合に同じパン位置を表す線との位置関係がずれるか否かで判定できる。また、ズームの原点ずれの有無は同じパン位置を表す線及び同じチルト位置を表す線で囲まれた領域との相対的な大きさが等しいか否かで判定できる。更に、ローテーションの原点ずれの有無は、映像表示部の中央に対して物体が回転しているか否かで判定できるので、映像表示部の中央に同じパン位置を表す線及び同じチルト位置を表す線の交点が来るように操作アシストを表示すれば、判定がし易くなる。
【0026】
このように、第一の映像中の物体411と第二の映像中の物体422との位置関係から各アングルパラメータの原点ずれの有無がある程度個別に判定できる。従って、アングルパラメータリスト441で原点ずれが発生しているパラメータを選択して原点ずれ補正を実行することで、不要な原点ずれ補正を行わなくて済む。
【0027】
次に、カメラアングル設定ツール2がカメラサーバ装置1に接続された際に実行される処理を図5に示すフローチャートを用いて説明する。まず、カメラアングル設定ツール2がカメラサーバ装置1に接続されると、S101で、カメラサーバ装置1の記憶部18に保存された第一の映像を取得し、S102で、第一の映像撮影時のアングルパラメータを取得する。そして、S103で、ビデオカメラ11のライブ映像である第二の映像を撮影したときのアングルパラメータと第一の映像のアングルパラメータとを比較する。比較の結果、アングルパラメータが完全に一致する場合は(S104、YES)、第一の映像と第二の映像との比較による原点ずれの有無の判定が可能になる。従って、S105へ処理を進め、第一の映像と別途取得された第二の映像とを表示制御部24が重畳させた上で、画面表示部26に出力する。しかし、アングルパラメータが一致しない場合は(S104、NO)、原点ずれの有無が判定できないため、処理を終了する。尚、S101の処理は、S104の処理の直前に実行されてもよい。
【0028】
ここで、原点ずれ補正を完了時の処理を、図6に示す(A)のフローチャートを用いて説明する。図5に示す処理を実行し、原点ずれ補正を完了すると(S201、YES)、S202へ処理を進め、第一の映像が表示された状態か否かを判定する。ここで、第一の映像が表示された状態のまま、第二の映像が原点ずれ補正に伴うカメラアングルの変化を反映した状態で表示されていれば、第一の映像と第二の映像は何れも原点ずれが発生していない状態となる。従って、第一の映像が表示中の場合は(S202、YES)、第一の映像は表示する必要がなくなるため、S203へ処理を進め、第一の映像を非表示とし、第二の映像のみを表示した状態とする。
【0029】
次に、原点ずれ補正によるカメラアングルの設定完了時の処理を、図6に示す(B)のフローチャートを用いて説明する。第一の実施形態におけるシステムでは、第一の映像をカメラアングル設定完了時に保存する。そのため、カメラアングルの設定が完了したとき又はカメラアングルの設定後にカメラサーバ装置1との接続を終了する際に、S301で、第一の映像を保存する。そして、S302で、第一の映像撮影時のアングルパラメータの値を記憶部18に保存する。
【0030】
尚、第一の映像及び第一の映像撮影時のアングルパラメータの値は、必ずしもカメラサーバ装置1内の記憶部18に保存する必要はなく、カメラアングル設定ツール2内に記憶装置を設け、そこに保存してもよい。その場合、それぞれをIPアドレス等の接続先情報と関連付けて保存することで、複数のカメラサーバ装置に対応することが可能になる。
【0031】
また、アングルパラメータは保存せずにカメラアングル設定ツール1の起動後にカメラアングルを動かさない状態で映像を並べて表示するようにしてもよい。これは、以下の実施形態でも同様である。
【0032】
[第二の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明に係る第二の実施形態を詳細に説明する。第二の実施形態として、異なるカメラアングルパラメータで撮影された第一の映像と第二の映像とを重畳表示する場合を、図7に示すブロック図を用いて説明する。尚、基本的な構成は第一の実施形態で説明した図2に示すブロック図の構成と同様であるが、第二の実施形態ではカメラアングル設定ツール内に画像変換部27が追加されている点が異なる。
【0033】
図7のシステムにおいて、異なるカメラアングルパラメータで撮影された第一の映像と第二の映像とを重畳表示して原点ずれを補正する場合の処理を、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0034】
まず、カメラアングル設定ツール2がカメラサーバ装置1に接続されると、S401で、カメラサーバ装置1の記憶部18に保存された第一の映像を取得し、S402で、第一の映像撮影時のアングルパラメータを取得する。そして、S403で、ビデオカメラ11のライブ映像である第二の映像を撮影したときのアングルパラメータと第一の映像のアングルパラメータとを比較する。比較の結果、アングルパラメータが完全に一致する場合は(S404、YES)、第一の映像と第二の映像との比較による原点ずれの有無の判定が可能になる。従って、S405へ処理を進め、第一の映像と別途取得された第二の映像とを表示制御部24が重畳させた上で、画面表示部26に出力し、この処理を終了する。
【0035】
ここまでの処理の流れは第一の実施形態のシステムと同じである。しかし、第二の実施形態では、アングルパラメータが一致しない場合(S404、NO)、S406へ処理を進め、原点ずれの有無を判定できるように、画像変換部27が映像変換を行う。そして、S405へ処理を進め、一致する場合と同様に処理する。
【0036】
ここで、画像変換部27の処理(異なるカメラアングルパラメータで撮影された第一の映像と第二の映像とを重畳表示する場合に第一の映像を変換する)を、図9を用いて説明する。
【0037】
図9に示すように、第一の映像が映像62の状態で撮影され、その後、ユーザによってパン方向に制御されて第二の映像が映像61の状態で撮影されたものとする。このとき、第一の映像で原点ずれが発生していない場合、第二の映像でも原点ずれは発生していないことになるが、単純にこれらの映像を重畳表示して比較すると、撮影時のパン位置が異なるため、映像中の物体にずれが生じたように見える。
【0038】
そこで、図8に示すS405で、第一の映像を、第一の映像及び第二の映像の撮影時のアングルパラメータの値に基づいて第二の映像を含む平面に対して平面射影変換を行う。そして、第二の映像の撮影時と同じアングルパラメータで撮影した場合の映像63を生成する。尚、平面射影変換については公知のため、詳細な説明は割愛する。
【0039】
第一の映像を変換した映像63と第二の映像61は、原点ずれや物体の移動が発生していなければ、映像中の同じ物体が同じ位置に表示されるはずである。従って、第一の実施形態の図5で説明した方法により、異なるアングルパラメータで撮影された第一の映像と第二の映像とを用いて、各アングルパラメータの原点ずれの有無を判定することが可能になる。
【0040】
尚、通常は第一の実施形態のシステムで十分に原点ずれの有無を判定することが可能である。しかし、第一の映像をカメラアングル設定ツール内に記憶しておき、複数のカメラアングル設定ツールからカメラアングルを設定する場合は、必ずしも第一の映像と第二の映像の撮影時のカメラアングルパラメータの値が一致するとは限らない。そのような場合でも、第二の本実施形態のシステムを用いることで、原点ずれの有無を判定できるようになる。
【0041】
また、カメラサーバ装置1内の記憶部18に、第一の映像を保存する場合でも、第二の映像の原点ずれが大きく、第一の映像と撮影領域が重ならない場合、比較する物体が存在しなくなり、原点ずれの有無が判定できなくなってしまう。そのような場合でも、第二の実施形態のシステムで、第一の映像を複数のカメラアングルで撮影して複数保持し、それら全てを射影変換した上で、第二の映像と比較することで撮影領域が重複する確率を高めて原点ずれの有無を判定することが可能になる。
【0042】
[第三の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明に係る第三の実施形態を詳細に説明する。第三の実施形態では、第一の映像と第二の映像との重畳表示を、ユーザが原点ずれ確認モードに切り替えた場合にのみ行うものである。基本的なシステム構成は、第一の実施形態及び第二の実施形態と同様である。
【0043】
図10は、原点ずれ確認モード時のカメラアングル設定ツール2の画面イメージを示す図である。第三の実施形態におけるカメラアングル設定ツール2のメインウィンドウ4は、図1や図3に示すものとほぼ同様であるが、原点ずれ補正ボタン440の代わりに原点ずれ補正メニュー470が追加されている。
【0044】
また、第一の映像はメインウィンドウ4には表示されず、原点ずれ補正メニュー470を選択したときに表示される原点ずれ補正ダイアログ7内に表示される。ここで、第一の映像は映像71であり、第二の映像は映像72である。メインウィンドウ4では、第二の映像は動画で表示されるが、原点ずれ補正ダイアログ7ではライブで映像を表示する必要性が低いため、ダイアログを開いたとき映像が静止画で表示される。原点ずれ補正ダイアログには更に原点ずれ補正実行ボタン74と、原点ずれ補正をキャンセルするキャンセルボタン75も配置される。
【0045】
次に、原点ずれ確認モードの開始から終了までの処理を、図11に示すフローチャートを用いて説明する。ユーザが原点ずれ補正メニュー470を選択すると、原点ずれ確認モードに移行し、S501で、原点ずれ補正ダイアログ7が開いて第一の映像71と第二の映像72を表示する。ここで、ユーザが第一の映像と第二の映像とを比較して原点ずれが発生していると判定した場合は、原点ずれ補正実行ボタン74が押下される(S502、YES)。これにより、S504へ処理を進め、原点ずれ補正を実行する。
【0046】
この原点ずれ補正が完了するか、或いはユーザが原点ずれ補正が発生していないと判定してキャンセルボタン75が押下された場合は(S503、YES)、S505へ処理を進め、原点ずれ補正ダイアログ7を閉じてメインウィンドウ4に戻る。
【0047】
第三の実施形態では、カメラアングル設定ツール2のメインウィンドウ4に複数の映像を表示する必要がないため、原点ずれが発生している場合でも、カメラアングル設定には不要な映像や原点ずれ補正用のGUIを表示しなくても済む。
【0048】
[他の実施形態]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ装置における原点ずれ補正方法であって、
保存手段が、前記カメラ装置のカメラアングルを設定した際に、前記カメラ装置が撮影した映像を記憶手段に保存する保存工程と、
表示制御手段が、前記カメラ装置の原点ずれ補正を実行する際に、前記カメラ装置の現在の映像に前記記憶手段に保存された映像を重畳して表示手段に表示する表示制御工程と、
を有することを特徴とするカメラ装置の原点ずれ補正方法。
【請求項2】
前記保存工程では、前記カメラ装置のカメラアングルを設定した際に、当該カメラアングルのパラメータと前記カメラ装置が撮影した映像とを前記記憶手段に保存し、
前記表示制御工程では、前記カメラ装置の原点ずれ補正を実行する際に、前記記憶手段に保存された前記カメラアングルのパラメータを取得し、取得されたパラメータと前記カメラ装置の現在のカメラアングルのパラメータとが一致する場合に、前記カメラ装置の現在の映像に前記記憶手段に保存された映像を重畳して前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1に記載のカメラ装置の原点ずれ補正方法。
【請求項3】
変換手段が、前記保存されたパラメータと前記現在のパラメータとが一致しない場合に、前記記憶手段に保存された映像を前記現在の映像に変換する変換工程を更に有することを特徴とする請求項2に記載のカメラ装置の原点ずれ補正方法。
【請求項4】
前記表示制御工程では、前記カメラ装置のカメラアングルの原点ずれを補正する操作のための操作アシスト表示を更に重畳することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のカメラ装置の原点ずれ補正方法。
【請求項5】
前記カメラ装置のカメラアングルの設定は、パン、チルト、ズーム、ローテーションの何れかの設定であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のカメラ装置の原点ずれ補正方法。
【請求項6】
カメラ装置のカメラアングルを設定する機能を有するカメラ装置であって、
前記カメラ装置のカメラアングルを設定した際に、前記カメラ装置が撮影した映像を記憶手段に保存する保存手段と、
前記カメラ装置の原点ずれ補正を実行する際に、前記カメラ装置の現在の映像に前記記憶手段に保存された映像を重畳して表示手段に表示する表示制御手段と、
を有することを特徴とするカメラ装置。
【請求項7】
前記保存手段は、前記カメラ装置のカメラアングルを設定した際に、当該カメラアングルのパラメータと前記カメラ装置が撮影した映像とを前記記憶手段に保存し、
前記表示制御手段は、前記カメラ装置の原点ずれ補正を実行する際に、前記記憶手段に保存された前記カメラアングルのパラメータを取得し、取得されたパラメータと前記カメラ装置の現在のカメラアングルのパラメータとが一致する場合に、前記カメラ装置の現在の映像に前記記憶手段に保存された映像を重畳して前記表示手段に表示することを特徴とする請求項6に記載のカメラ装置。
【請求項8】
コンピュータに、請求項1乃至5の何れか1項に記載のカメラ装置の原点ずれ補正方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【請求項1】
カメラ装置における原点ずれ補正方法であって、
保存手段が、前記カメラ装置のカメラアングルを設定した際に、前記カメラ装置が撮影した映像を記憶手段に保存する保存工程と、
表示制御手段が、前記カメラ装置の原点ずれ補正を実行する際に、前記カメラ装置の現在の映像に前記記憶手段に保存された映像を重畳して表示手段に表示する表示制御工程と、
を有することを特徴とするカメラ装置の原点ずれ補正方法。
【請求項2】
前記保存工程では、前記カメラ装置のカメラアングルを設定した際に、当該カメラアングルのパラメータと前記カメラ装置が撮影した映像とを前記記憶手段に保存し、
前記表示制御工程では、前記カメラ装置の原点ずれ補正を実行する際に、前記記憶手段に保存された前記カメラアングルのパラメータを取得し、取得されたパラメータと前記カメラ装置の現在のカメラアングルのパラメータとが一致する場合に、前記カメラ装置の現在の映像に前記記憶手段に保存された映像を重畳して前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1に記載のカメラ装置の原点ずれ補正方法。
【請求項3】
変換手段が、前記保存されたパラメータと前記現在のパラメータとが一致しない場合に、前記記憶手段に保存された映像を前記現在の映像に変換する変換工程を更に有することを特徴とする請求項2に記載のカメラ装置の原点ずれ補正方法。
【請求項4】
前記表示制御工程では、前記カメラ装置のカメラアングルの原点ずれを補正する操作のための操作アシスト表示を更に重畳することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のカメラ装置の原点ずれ補正方法。
【請求項5】
前記カメラ装置のカメラアングルの設定は、パン、チルト、ズーム、ローテーションの何れかの設定であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のカメラ装置の原点ずれ補正方法。
【請求項6】
カメラ装置のカメラアングルを設定する機能を有するカメラ装置であって、
前記カメラ装置のカメラアングルを設定した際に、前記カメラ装置が撮影した映像を記憶手段に保存する保存手段と、
前記カメラ装置の原点ずれ補正を実行する際に、前記カメラ装置の現在の映像に前記記憶手段に保存された映像を重畳して表示手段に表示する表示制御手段と、
を有することを特徴とするカメラ装置。
【請求項7】
前記保存手段は、前記カメラ装置のカメラアングルを設定した際に、当該カメラアングルのパラメータと前記カメラ装置が撮影した映像とを前記記憶手段に保存し、
前記表示制御手段は、前記カメラ装置の原点ずれ補正を実行する際に、前記記憶手段に保存された前記カメラアングルのパラメータを取得し、取得されたパラメータと前記カメラ装置の現在のカメラアングルのパラメータとが一致する場合に、前記カメラ装置の現在の映像に前記記憶手段に保存された映像を重畳して前記表示手段に表示することを特徴とする請求項6に記載のカメラ装置。
【請求項8】
コンピュータに、請求項1乃至5の何れか1項に記載のカメラ装置の原点ずれ補正方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−253560(P2012−253560A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124463(P2011−124463)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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