説明

カラオケ装置

【課題】ハウリングが生じたとしても、利用者へのサービス性の低下を防止することができ、利便性を向上する。
【解決手段】カラオケ装置100は、楽曲データを再生する音源106等と、利用者によるカラオケ歌唱の音声信号が出力されるマイクロフォン105と、楽曲データの再生による演奏音とマイクロフォン105から入力された音声信号による音声とをスピーカ108に出力可能な音声制御部107と、を備え、スピーカ108から放音された音声のマイクロフォン105への入力によるハウリング現象が発生した場合に、楽曲データの再生を実行しないように音源106等を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラオケ楽曲音の再生サービスを提供するカラオケ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
利用者に対してカラオケ楽曲音の再生サービスを提供するカラオケ楽曲装置として、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。この従来のカラオケ装置では、カラオケ楽曲の再生サービスの実行時には、シンセサイザによる楽曲データが再生されるとともに、利用者によるカラオケ歌唱の音声信号がマイクロフォン(ワイヤレスマイク)から出力される。そして、上記楽曲データの再生による演奏音と上記音声信号による音声とがミキシングアンプで合成され、それらの音がスピーカから周囲環境へ放音される。また、この従来技術では、マイクロフォンに利用者による音声の入力があるまでは前奏を繰り返し、音声入力があったときに前奏のあとの本演奏を開始するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−57836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、マイクロフォンの向きや、スピーカからの音声の音量や、その他の周囲環境の状況等によっては、上記マイクロフォンからの音声を含むスピーカからの発音が再びマイクロフォンへと入力されて(いわゆる回り込みの発生)無限ループによる耳障りな騒音を生む、ハウリング現象が発生する場合がある。このようなハウリング現象が発生すると、上記耳障りな騒音により利用者に不快感を与えるのみならず、楽曲の演奏音や利用者の音声が聞き取り不可能となる。この結果、カラオケ楽曲データの再生が行われていたとしても利用者は実質的に上記サービスを受けることができず、利用者にとって意味のない再生が無駄に続行するばかりか、利用者が歌唱したかった部分が歌唱できないままに過ぎてしまうこととなり、サービス性が低下する。上記従来技術では、このような点に特に配慮されず、音声入力がありさえすれば、上記のようにハウリングが生じていたとしても演奏が進行してしまうため、不便であった。
【0005】
本発明の目的は、ハウリングが生じたとしても、利用者へのサービス性の低下を防止することができ、利便性を向上できるカラオケ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明は、少なくとも楽曲データを用いて、利用者に対してカラオケ楽曲の再生サービスを提供するカラオケ装置であって、前記楽曲データを再生する楽曲再生手段と、前記利用者によるカラオケ歌唱の音声信号が出力されるマイクロフォンと、前記楽曲再生手段での前記楽曲データの再生による演奏音と前記マイクロフォンから入力された前記音声信号による音声とをスピーカに出力可能な音声出力手段と、前記スピーカから放音された前記音声の前記マイクロフォンへの入力によるハウリング現象が発生したか否かを判定するハウリング判定手段と、前記ハウリング判定手段により前記ハウリング現象が発生したと判定された場合に、前記楽曲データの再生を実行しないように前記楽曲再生手段を制御可能な第1再生制御手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
本願第1発明のカラオケ装置では、楽曲再生手段と、マイクロフォンと、音声出力手段と、が設けられる。カラオケ楽曲の再生サービスの実行時には、楽曲再生手段により楽曲データが再生されるとともに、利用者によるカラオケ歌唱の音声信号がマイクロフォンから出力される。そして、楽曲データの再生による演奏音と上記音声信号による音声とが音声出力手段からスピーカへと出力され、それらの音がスピーカから周囲環境へ放音される。
【0008】
このとき、マイクロフォンの向きや、スピーカからの音声の音量や、その他の周囲環境の状況等によっては、ハウリング現象が発生する場合がある。そこで本願第1発明では、ハウリング判定手段と、第1再生制御手段と、が設けられている。ハウリング判定手段が上記のようなハウリング現象が発生したと判定した場合には、第1再生制御手段が楽曲再生手段を制御し、楽曲データの再生を行わないようにする。これにより、ハウリング現象発生時に、利用者にとって意味のない再生が無駄に行われるのを防止することができるとともに、利用者が歌唱したかった部分が歌唱できないままに過ぎることもなくなる。この結果、サービス性の低下を防止することができる。
【0009】
第2発明は、上記第1発明において、前記楽曲再生手段によって前記楽曲データの再生が行われている際に、その時点での再生内容が、前記利用者の歌唱期間に対応する楽曲データであるか前記利用者の非歌唱期間に対応する楽曲データであるかを判定する楽曲データ判定手段を有し、前記第1再生制御手段は、前記ハウリング判定手段により前記ハウリング現象が発生したと判定され、かつ、前記楽曲データ判定手段により前記利用者の歌唱期間に対応する楽曲データであると判定された場合に、前記楽曲データの再生を実行しないように前記楽曲再生手段を制御することを特徴とする。
【0010】
カラオケ楽曲には、通常、利用者が歌唱を行う部分(演奏が歌の伴奏となっている部分)と、利用者が歌唱を行わない部分(イントロ部分、間奏部分、エンディング部分等)と、が含まれている。上記のように、ハウリング現象発生時におけるサービス性低下の一番の原因は、利用者が歌唱したくても、楽曲の演奏が聞き取れず歌えないことにある。逆に言うと、利用者が歌唱を行わない部分であれば、仮にハウリング現象が生じたとしても、(耳障りではあっても)利用者が歌唱したかった部分が歌唱できず過ぎてしまうという弊害はない。そこで本願第2発明においては、楽曲データ判定手段を設け、ハウリング現象発生時であって、かつ、当該楽曲データ判定手段が利用者の歌唱期間に相当していると判定した場合に限り、楽曲再生手段が楽曲データの再生を不実行とする。このように、実質的にサービス低下が生じる場面でのハウリング現象発生時に限定することで、楽曲データの再生不実行を必要最小限にすることができる。
【0011】
第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記ハウリング判定手段により前記ハウリング現象が発生したと判定され、前記第1再生制御手段により前記楽曲生成手段が前記楽曲データの再生を実行しないように制御された後、前記ハウリング判定手段により前記ハウリング現象が発生していないと判定された場合には、前記楽曲データの再生を実行するように前記楽曲再生手段を制御する第2再生制御手段を有することを特徴とする。
【0012】
これにより、ハウリング現象の発生が解消したら速やかに楽曲データの再生を実行し、本来のカラオケ楽曲の再生サービスを利用者に提供することができる。
【0013】
第4発明は、上記第3発明において、前記楽曲再生手段によって前記楽曲データの再生中は、前記楽曲データの再生位置を計測し、前記ハウリング判定手段により前記ハウリング現象が発生したと判定されて前記第1再生制御手段の制御により前記楽曲生成手段が前記楽曲データの再生を中断したときには、前記楽曲データの再生が中断したときの再生位置を記憶し、前記ハウリング判定手段により前記ハウリング現象が発生していないと判定された場合には、前記第2再生制御手段は、前記第1再生制御手段の制御により再生を中断したときの再生位置から、予め定めた区間を差し引いた再生位置のデータ部分から前記楽曲データの再生を再開するように、前記楽曲再生手段を制御することを特徴とする。
【0014】
これにより、利用者が歌唱中にハウリング現象が発生してカラオケ楽曲の演奏及び利用者の歌唱が途中で中断したとき、カラオケ楽曲の演奏は当該中断した箇所より少し前から再開される。この結果、利用者は歌唱を中断した箇所から確実に歌い直すことができ、歌い漏れが無くなるので気分よく歌唱を続行することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ハウリングが生じたとしても、利用者へのサービス性の低下を防止することができ、利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態のカラオケ装置を備えたカラオケ楽曲再生システムの全体構成を表すシステム構成図である。
【図2】楽曲データ構造とハウリング発生時のデータ再生の再開法を表す説明図である。
【図3】カラオケ装置の制御部によって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態のカラオケ装置を備えたカラオケ楽曲再生システムの全体構成を表す機能ブロック図である。カラオケ再生システム1は、カラオケ装置100と、リモコン200と、認証サーバ300とを、備えている。カラオケ装置100及びリモコン200は、カラオケ演奏曲の再生サービスを提供するカラオケ店舗等のカラオケルームKRに設置されている。
【0019】
カラオケ装置100とリモコン200とは、例えば無線又は有線のLocal Area Network(LAN)等のネットワークNW1を介し、互いに情報送受信可能に接続されている。また、カラオケ装置100及びリモコン200と、認証サーバ300とは、上記ネットワークNW1と、例えば通信ネットワーク等のネットワークNW2とを介し、互いに情報送受信可能に接続されている。
【0020】
カラオケ装置100は、楽曲データとしてのMusical Instrument Digital Interface(MIDI;登録商標)データ、及び、背景映像データを用いて、カラオケ演奏曲の再生サービスを提供する装置である。このカラオケ装置100は、制御部101と、この制御部101にそれぞれ接続された、大容量記憶装置103と、操作部104と、マイクロフォン105と、音源106と、音声制御部107と、表示部109と、通信制御部110と、ハウリング検出部112と、を備えている。
【0021】
制御部101は、図示しないCPU及びRAM、ROM等のメモリを備えている。この制御部101は、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、ROMや上記大容量記憶装置103に予め記憶された各種プログラムを実行する。これにより、カラオケ装置100全体の制御を行う。特に、制御部101は、CPUが備える時計機能を利用して、後述の音源106等によってMIDIデータの再生が行われた際に、MIDIデータの再生位置、すなわち再生開始後の時間位置を計測する(詳細は後述)。また制御部101は、スピーカ108から放出される音声にハウリング現象が生じ、再生が中断された際に、RAM等のメモリに、再生が中断したときの再生位置、すなわち再生開始後の中断時間位置を記憶する(詳細は後述)。
【0022】
大容量記憶装置103は、例えばHard Disk Drive(HDD)などから構成される。この大容量記憶装置103には、MIDIデータ、背景映像データ、及び、歌詞データ等の各種情報が記憶されている。
【0023】
操作部104は、例えば複数のキーやスイッチなどから構成される。利用者は、この操作部104又は後述のリモコン200の操作部204を用いて、カラオケ演奏曲の予約操作等の各種操作を行うことができる。
【0024】
マイクロフォン105は、利用者によるカラオケ歌唱の音声を音声信号に変換して出力する。
【0025】
音源106は、上記制御部101によって大容量記憶装置103から読み出されたMIDIデータを再生して音声制御部107へ出力する。
【0026】
音声制御部107は、音源106から出力されたMIDIデータの再生による演奏音と、マイクロフォン105により入力された音声信号とを、合成・増幅してスピーカ108へ出力する。音声制御部107のこの機能が、各請求項記載の音声出力手段として機能する。
【0027】
スピーカ108は、音声制御部107に接続されており、音声制御部107から出力されたMIDIデータ及び音声信号を音声出力、すなわち音として放出する。
【0028】
ハウリング検出部112は、スピーカ108からの音声がマイクロフォン105へ入力したことによるハウリング現象を検出する。ハウリング現象の検出は、公知の適宜の手法、例えば、特開平4−233361号公報に記載の手法により行うことができる。すなわち、ハウリング検出部112に検波用ダイオードとコンパレータとによりハウリング検出回路を構成する。そして、マイクロフォン205から出力された音声信号をダイオードで検波し、検波された信号のレベルと基準電位とをコンパレータで比較して、検波された信号のレベルがハウリングに対応した所定の基準電位以上のとき、コンパレータからハウリングの検出を示す信号をパルスとして出力させるものである。ハウリング検出部112のコンパレータから出力されたパルスを制御部101で検知することにより、スピーカ108からの音声がマイクロフォン105へ入力することで発生するハウリング現象を検出することができる。
【0029】
なお、音源106及び音声制御部107が、各請求項記載の楽曲再生手段として機能する。以下適宜、これら音源106及び音声制御部107を、省略して「音源106等」と称する。
【0030】
表示部109は、例えば液晶ディスプレイなどから構成され、各種映像を表示する。特に、表示部109は、上記音源106等によるMIDIデータの再生に同期して、言い換えれば、音源106等によりMIDIデータの再生が行われるのにしたがい、大容量記憶装置103から読み出された、背景映像データ、及び、歌詞データに対応したテロップ等を表示することができる。
【0031】
通信制御部110は、リモコン200や認証サーバ300との間で、上記ネットワークNW1,NW2を介し行われる情報通信の制御を行う。
【0032】
リモコン200は、利用者がカラオケ演奏曲の予約操作等の各種操作を行うための操作端末である。このリモコン200は、制御部201と、記憶装置203と、操作部204と、表示部209と、通信制御部210と、を備えている。
【0033】
制御部201は、図示しないCPU及びRAM、ROM等のメモリを備えている。この制御部201は、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、ROMや上記記憶装置203に予め記憶された各種プログラムを実行する。これにより、リモコン200全体の制御を行う。
【0034】
記憶装置203は、例えば不揮発性メモリなどから構成され、各種情報を記憶する。
【0035】
操作部204は、例えば複数のキーやスイッチなどから構成される。利用者は、この操作部204又は上記カラオケ装置100の操作部104を用いて、カラオケ演奏曲の予約操作等の各種操作を行うことができる。
【0036】
表示部209は、例えば液晶ディスプレイなどから構成され、各種表示を行う。
【0037】
通信制御部210は、カラオケ装置100や認証サーバ300との間で、上記ネットワークNW1,NW2を介し行われる情報通信の制御を行う。なお、この例では、通信制御部210とネットワークNW1との間の接続は無線接続となっている。
【0038】
認証サーバ300は、制御部301と、大容量記憶装置303と、通信制御部310とを有している。
【0039】
制御部301は、図示しないCPU及びRAM、ROM等のメモリを備えている。この制御部301は、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、ROMや上記大容量記憶装置303に予め記憶された各種プログラムを実行する。これにより、認証サーバ300全体の制御を行う。
【0040】
ここで、本実施形態の特徴は、楽曲データを再生している際に、ハウリングが発生した場合には当該楽曲データの再生を行わない(開始しない、あるいは中断する)ようにし、利用者にとって意味のない再生が無駄に行われるのを防ぐことにある。以下、これについて詳述する。
【0041】
図2は、楽曲データ構造と、本実施形態における上記ハウリング発生時のデータ再生の再開手法を表す説明図である。
【0042】
図2(a)に示すように、楽曲データ20は、曲名等の曲識別情報(曲ID)21と、楽曲データの再生開始後時間位置データ22と、歌詞データ23と、演奏データとしてのMIDIデータ24と、を備えている。
【0043】
曲識別情報21は、楽曲データ20のヘッダとして置かれ、曲識別情報21に続く楽曲データ20のデータ部は、時間軸上対応するように上下3段に区分されている。すなわち、図示の上から下に向かって、再生開始後時間位置データ22、歌詞データ23、MIDIデータ24のように、配置されている。
【0044】
MIDIデータ24は、図2(b)に示すように、イントロ部分や間奏部分等となる非歌唱演奏データ24a(図2(b)中、非歌唱演奏データ24aを「♭1」「♭2」・・等の「♭」つきデータで示す)と、利用者の歌の伴奏となる歌唱演奏データ24b(図2(b)中、歌唱演奏データ24bを「#1」「#2」・・等の「#」つきデータで示す)と、を備えている。
【0045】
MIDIデータ24は前述したように上記音源106等によって再生され、音声としてスピーカ108から放出される。また、歌詞データ23は前述したように歌詞テロップとして表示部109に表示される。MIDIデータ24の再生中は、MIDIデータの再生位置、すなわち再生開始後時間位置が、制御部101によって計測される。
【0046】
図2(b)において、再生開始後時間位置t1〜t3は非歌唱区間であり、再生開始後時間位置t1〜t3が経過する間、MIDIデータ23は、音源106等によってイントロ部分の非歌唱演奏データ24a(「♭1」〜「♭3」)が再生される。また歌詞データ23は、歌詞のないブランク(空白)((図2(b)〜図2(d)においてブランクを「−−−−−」で示す)が表示部109に表示される。
【0047】
再生開始後時間位置t4から歌唱区間となり、再生開始後時間位置がt4から進むにつれて、MIDIデータ24は歌詞に対応した歌唱演奏データ24bが順に再生され、歌詞データ23は歌詞の文字が順に表示される。歌唱者(利用者)が、MIDIデータ24の再生に併せて、マイクロフォン105を通して歌い始めると、そのマイクロフォン105から入力された歌唱者の音声信号による音声は、MIDIデータ24の歌唱演奏データを再生した演奏音とともに、音声制御部107を介してスピーカ108に出力され、スピーカ108から放出(放音)される。
【0048】
そして、歌唱区間の途中、すなわち歌唱者が歌っている途中で、スピーカ105から放出される音声にハウリング現象が発生したとする。この例では、上記図2(b)に示すように、再生開始後時間位置t9の終端位置で、ハウリング現象が発生したことを例示している。スピーカ105から放出される音声にハウリングが発生すると、ハウリング検出部112によりその発生したハウリングが検出される。そして、音源106等による歌唱演奏データ24bの再生が不実行となって中断(中止)し、その再生を中断した位置(この例では、再生開始後時間位置t9の終端位置)を制御部101が記憶する。
【0049】
その後、ハウリング現象が解消すると、MIDIデータ24の再生を再開する。本実施形態では、図2(c)に示すような再開手法(再開例1)と、図2(d)に示すような再開手法(再開例2)との、いずれかが実行される。いずれが実行されるかは、カラオケ装置1ごとに一意的に設定しておいてもよいし、1つのカラオケ装置において適宜のモード選択等によりいずれかが選択的に行われるようにしてもよい。すなわち、図2(c)の再開例1では、MIDIデータ24における歌唱演奏データ24bの再生が中断後、ハウリング現象が解消すると、その中断した際の再生位置(この例では再生開始後時間位置t9の終端位置であり、以下、再生停止位置と称す)の直後の再生位置(すなわち再生開始後時間位置t10の始端位置)から、歌唱演奏データ24bの再生を再開する。一方、図2(d)の再開例2では、MIDIデータ24における歌唱演奏データ24bの再生が中断後、その中断した際の再生位置(再生開始後時間位置t9の終端位置)より予め定めた区間を差し引いて前にさかのぼった再生位置(この例では再生開始後時間位置t9の始端位置)から、歌唱演奏データ24bの再生を再開する。
【0050】
なお、上記予め定めた区間については、一定時間であってもよいが、ハウリングが発生した歌唱区間の最初の歌唱位置であってもよい。例えば、再生停止位置t9に表示部109に画面表示されている歌唱区間の歌詞データを、再生停止位置t9の時間情報とともに記憶して、その歌唱区間の最初の歌詞データから再開すれば、画面の最初から歌唱を再開するので、歌い易くなる。具体的に、歌唱区間が、表示部109の1画面に同時に表示される歌詞データである場合、を一例として、以下に説明する。
【0051】
図2(b)(後述するステップS40も参照)において、再生停止位置t9に対応する歌詞データは「・・・漂う・・」であり、そのとき、表示部109に画面表示されている歌詞区間の歌詞データは、時間位置t4〜t12に対応する歌詞データ「秋の・・・千鳥よ」となる。そして、再生停止位置t9の時間情報とともに記憶した歌唱区間の歌詞データで、最初に歌唱する歌詞データは時間位置t4に対応する「秋の・・・」であるから、演奏の再開は、時間位置t4から行うようにすればよい。
【0052】
その後、ハウリングの発生がなければ、非歌唱区間及び歌唱区間を経て、MIDIデータ24の再生を最後のエンディング部分の非歌唱演奏データ24aの終わりまで行った後、再生を終了する。
【0053】
次に、上記手法を実行するために、カラオケ装置100の制御部101によって実行される制御手順を、図3により説明する。例えば図示しないシステム管理者によりカラオケ装置100の電源がオンにされることによって、このフローが開始される。
【0054】
図3において、まず、ステップS10で、制御部101は、歌唱者(利用者)による操作部104又はリモコン200の操作部204を介したカラオケ演奏曲の予約操作に基づき、カラオケ演奏曲の予約を受け付けたかどうかを判定する。歌唱者によるカラオケ演奏曲の予約を受け付けるまで判定が満たされず(ステップS10:NO)、ループ待機する。そして、歌唱者によるカラオケ演奏曲の予約を受け付けたら判定が満たされ(ステップS10:YES)、ステップS20に移る
【0055】
ステップS20では、制御部101は、ハウリング検出部112での検出結果に基づき、スピーカ108から放出される音声にハウリングが発生したか否かを判定する。上述したように、スピーカ108から放出される音声にハウリングが発生すると、ハウリング検出部112により、ハウリングの発生が検出される。ハウリングの発生が検出された場合は判定が満たされ(ステップS20:YES)、制御部101は、ステップS30に移る。ハウリングの発生が検出されない場合は判定が満たされず(ステップS20:NO)、制御部101は、後述のステップS70に移る。
【0056】
ステップS30では、制御部101は、音源106等による楽曲データ20の再生が歌唱区間であるか否かを判定する。音源106等によりMIDIデータ24における上記歌唱演奏データ24bが再生されていれば判定が満たされ(ステップS30:YES)、ステップS40に移る。音源106等によりMIDI24における非歌唱演奏データ24aが再生されていれば判定が満たされず(ステップS30:NO)、後述のステップS70に移る。
【0057】
ステップS40では、制御部101は、音源106等によるMIDIデータ24の再生を不実行(すなわち、再生が行われていたら再生を中断し、再生が行われていなければ再生を開始しない)とし、その再生不実行による再生停止位置(図2(b)の例ではt9)を記憶する。その後、ステップS50に移る。
【0058】
なおこのとき、時間位置データ22、歌詞データ23、MIDIデータ24は、お互い対応付けられている。このため、停止位置は、時間位置データ22を記憶してもよいが、停止した位置に対応する歌詞の歌詞データ23、又は、停止した位置に対応するMIDIデータ24を記憶し、演奏の再開はそのデータを読出して、時間位置データ、歌詞データ、MIDIデータ、いずれか1つから、お互いの再開位置を特定してもよい。
【0059】
ステップS50では、制御部101は、ハウリング検出部112での検出結果に基づき、ハウリングが解消したか否かを判定する。ハウリングが解消されなければ判定が満たされず(ステップS50:NO)、ループ待機する。ハウリングが解消されれば判定が満たされ(ステップS50:YES)、ステップS60に移る。
【0060】
ステップS60では、制御部101は、上記ステップS40で記憶した再生を中断(中止)した際のMIDIデータ24の歌唱演奏データ24bの再生位置(停止位置)に基づき、歌唱演奏データ24bの再生を実行する。その際、上記再開例1を実行する場合には、前述したように、上記再生中断の際の歌唱演奏データ24bの再生位置(停止位置)の直後の再生位置から、歌唱演奏データ24bの再生を実行する。一方、上記再開例2を実行する場合には、前述したように、上記再生中断の際の歌唱演奏データ24bの再生位置(停止位置)より少し前の、予め定めた区間を差し引いて前にさかのぼった再生位置から、歌唱演奏データ24bの再生を実行する。その後、ステップS80に移る。
【0061】
一方、上記ステップS20、S30から移行した、ステップS70では、制御部101は、音源106等によるMIDIデータ24の再生を実行する。すなわち、ハウリングが発生していない場合(ステップS20の判定が満たされない場合)は、ハウリングがない通常状態なので、そのままMIDIデータ24の再生を実行する。また、ハウリングが発生していても歌唱区間での発生ではない場合(ステップS30での判定が満たされない場合)、すなわち非歌唱区間での発生の場合は、利用者の歌唱に対する弊害を問題にする必要がないので、MIDIデータ24の非歌唱演奏データ24aを再生するのである。ステップS70が終了すると、ステップS80に移る。
【0062】
ステップS80では、制御部101は、MIDIデータ24の最後まで再生が行われ、楽曲の演奏が終了したか否かを判定する。楽曲の演奏が終了していない場合は判定が満たされず(ステップS80:NO)、上記ステップS20に戻って、同様の手順を繰り返す。楽曲の演奏が終了した場合は判定が満たされ(ステップS80:YES)、このフローを終了する。
【0063】
以上において、上記ステップS20及びステップS50の手順は各請求項記載のハウリング判定手段として機能し、ステップS30の手順は各請求項記載の楽曲データ判定手段として機能し、ステップS40の手順は各請求項記載の第1再生制御手段として機能し、ステップS50の手順は各請求項記載の第2再生制御手段として機能する。
【0064】
以上説明したように、本実施形態のカラオケ装置100では、ハウリング現象が発生した場合には、ステップS40において、楽曲データの再生を行わないようにすることができる。これにより、ハウリング現象発生時に、利用者にとって意味のない再生が無駄に行われるのを防止することができるとともに、利用者が歌唱したかった部分が歌唱できないままに過ぎることもなくなる。この結果、サービス性の低下を防止することができる。
【0065】
但し、カラオケ楽曲には、通常、歌唱演奏データ24bのように、利用者が歌唱を行う部分(演奏が歌の伴奏となっている部分)と、非歌唱演奏データ24aのように、に対応した利用者が歌唱を行わない部分(イントロ部分、間奏部分、エンディング部分等)と、が含まれる。上記のように、ハウリング現象発生時におけるサービス性低下の一番の原因は、利用者が歌唱したくても、楽曲の演奏が聞き取れず歌えないことにある。逆に言うと、利用者が歌唱を行わない部分であれば、仮にハウリング現象が生じたとしても、(耳障りではあっても)利用者が歌唱したかった部分が歌唱できず過ぎてしまうという弊害はない。
【0066】
そこで、本実施形態では特に、ステップS30での判定結果に基づき、ハウリング現象発生時であって、かつ、そのハウリング現象発生時が利用者の歌唱期間に相当している場合に限り、楽曲データの再生を不実行としている。このように、実質的にサービス低下が生じる場面でのハウリング現象発生時に限定することで、楽曲データの再生不実行を必要最小限にすることができる。
【0067】
また、本実施形態では特に、ステップS50を経たステップS60において、ハウリング現象が発生した場合に、楽曲データの再生を実行しないように制御し、その後、ハウリング現象が解消した場合に、楽曲データの再生を実行する。これにより、ハウリング現象の発生が解消したら速やかに楽曲データの再生を実行し、本来のカラオケ楽曲の再生サービスを利用者に提供することができる。
【0068】
また、本実施形態では特に、上記再開例2においては、ハウリング現象が解消された場合には、再生を中断したときの再生位置から、予め定めた区間を差し引いた再生位置のデータ部分から楽曲データの再生を再開する。これにより、利用者が歌唱中にハウリング現象が発生し利用者の歌唱が途中で中断したとき、カラオケ楽曲の演奏の再開時には、当該中断した箇所より少し前から演奏が再開される。この結果、利用者は歌唱を中断した箇所から確実に歌い直すことができ、歌い漏れが無くなるので気分よく歌唱を続行することができる。
【0069】
なお、図3に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0070】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0071】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0072】
1 カラオケ楽曲再生システム
20 楽曲データ
22 再生開始後時間位置データ
23 歌詞データ
24 MIDIデータ
24a 非歌唱演奏データ
24b 歌唱演奏データ
101 制御部
100 カラオケ装置
105 マイクロフォン
106 音源(楽曲再生手段)
107 音声制御部(楽曲再生手段、音声出力手段)
108 スピーカ
109 表示部
112 ハウリング検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも楽曲データを用いて、利用者に対してカラオケ楽曲の再生サービスを提供するカラオケ装置であって、
前記楽曲データを再生する楽曲再生手段と、
前記利用者によるカラオケ歌唱の音声信号が出力されるマイクロフォンと、
前記楽曲再生手段での前記楽曲データの再生による演奏音と前記マイクロフォンから入力された前記音声信号による音声とをスピーカに出力可能な音声出力手段と、
前記スピーカから放音された前記音声の前記マイクロフォンへの入力によるハウリング現象が発生したか否かを判定するハウリング判定手段と、
前記ハウリング判定手段により前記ハウリング現象が発生したと判定された場合に、前記楽曲データの再生を実行しないように前記楽曲再生手段を制御可能な第1再生制御手段と、
を有することを特徴とするカラオケ装置。
【請求項2】
請求項1記載のカラオケ装置において、
前記楽曲再生手段によって前記楽曲データの再生が行われている際に、その時点での再生内容が、前記利用者の歌唱期間に対応する楽曲データであるか前記利用者の非歌唱期間に対応する楽曲データであるかを判定する楽曲データ判定手段を有し、
前記第1再生制御手段は、
前記ハウリング判定手段により前記ハウリング現象が発生したと判定され、かつ、前記楽曲データ判定手段により前記利用者の歌唱期間に対応する楽曲データであると判定された場合に、前記楽曲データの再生を実行しないように前記楽曲再生手段を制御する
ことを特徴とするカラオケ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のカラオケ装置において、
前記ハウリング判定手段により前記ハウリング現象が発生したと判定され、前記第1再生制御手段により前記楽曲生成手段が前記楽曲データの再生を実行しないように制御された後、前記ハウリング判定手段により前記ハウリング現象が発生していないと判定された場合には、前記楽曲データの再生を実行するように前記楽曲再生手段を制御する第2再生制御手段を有する
ことを特徴とするカラオケ装置。
【請求項4】
請求項3記載のカラオケ装置において、前記楽曲再生手段によって前記楽曲データの再生中は、前記楽曲データの再生位置を計測し、前記ハウリング判定手段により前記ハウリング現象が発生したと判定されて前記第1再生制御手段の制御により前記楽曲生成手段が前記楽曲データの再生を中断したときには、前記楽曲データの再生が中断したときの再生位置を記憶し、前記ハウリング判定手段により前記ハウリング現象が発生していないと判定された場合には、
前記第2再生制御手段は、
前記第1再生制御手段の制御により再生を中断したときの再生位置から、予め定めた区間を差し引いた再生位置のデータ部分から前記楽曲データの再生を再開するように、前記楽曲再生手段を制御する
ことを特徴とするカラオケ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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