説明

カラーフィルタ、および液晶表示装置

【課題】白色LEDを用いた場合であっても赤色再現性に優れ、かつ、インクジェット方式によっても製造可能なカラーフィルタを提供すること。
【解決手段】基板上に赤色を含む複数色の着色層が形成されたカラーフィルタにおいて、赤色着色層の、430〜460nmの範囲における平均透過率を0.4%以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタおよびこれを用いた液晶表示装置に関する。より具体的には、白色LEDをバックライトとして用いた場合であっても赤色再現性に優れたカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー液晶ディスプレイは、低消費電力、省スペース等の利点から、パーソナルコンピュータのモニター、携帯電話のディスプレイ等の用途で使用される他、従来のブラウン管テレビに替わって液晶テレビにも使用されている。
【0003】
ここで、テレビにカラー液晶ディスプレイが用いられる場合には、視聴者の画質に関する拘りに応えるべく色再現性が重視される。また一方では、テレビの大型化に伴い、消費電力の問題が生じており、低消費電力化の要請も高まっている。
【0004】
現在、カラー液晶ディスプレイに対する低消費電力化の要請に対して、従来から光源として用いられていたCCFL(冷陰極蛍光ランプ)に変えて、白色LED(疑似白色LED)を用いることが行われている。従来の蛍光ランプに変えてLEDを用いることにより、消費電力の低減を実現できる。
【0005】
しかしながら、CCFLからの光と白色LEDからの光とは、その波長やスペクトルピークが異なるため、単純にCCFLと白色LEDとを交換したのみでは、CCFLを用いていた場合の色再現性を維持することができない場合があり、特に「赤色」にあっては、色再現性が低下するという問題が顕著であった。
【0006】
このような状況において、単純にCCFLと白色LEDとを交換した場合に生じる赤色再現性の低下を解消するためには、白色LEDに適したカラーフィルタ、特に、白色LEDに適した赤色着色層を有するカラーフィルタを開発することが必要であり、例えば特許文献1や2に記載されているように、既にいくつかのカラーフィルタが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2007/102386号公報
【特許文献2】特開2008−268739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示されているカラーフィルタは、白色LEDとの組み合わせで使用されることを前提としており、これを構成する赤色着色層(赤色フィルタセグメント)が、595〜610nmの範囲において透過率が50%であり、630nmにおける透過率が85%以上であることを特徴としている。
【0009】
また、上記特許文献2に開示されているカラーフィルタにあっても、特許文献1と同様白色LEDとの組み合わせで使用されることを前提としており、赤色の色度座標を所定の値に限定するとともに、430〜460nmの範囲における透過率が0.7%以上であることを特徴としている。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているカラーフィルタによれば赤色の純度を上げることはできるが、その一方で、ここで規定されている透過率を実現するためには、赤色着色層中の顔料濃度を大幅に高くするか、若しくは赤色着色層の層厚を大幅に厚くする必要が生じる。このように、顔料濃度を高くしたり、層厚を厚くしたりすることは、着色層の経時安定性やカラーフィルタの生産性、さらには、カラーフィルタとしての塗膜信頼性や光学特性など、種々の面で不利となる懸念がある。
【0011】
また、近年においては、生産性向上の観点から、カラーフィルタの着色層をインクジェット方式により形成されることが検討・実施されており、インクジェット方式を採用した場合、これに用いられるインクの粘度は、従来のフォトリソグラフィ方式のインクに比べて非常に制約を受けることがあり、顔料濃度を高くすることはインク粘度の観点からもあまり好ましくはない。さらには、インクジェット方式を採用した場合、従来のフォトリソグラフィ方式に比べて層厚を厚くできないという制約もあり、この観点からも特許文献1に開示されているカラーフィルタでは不十分である。
【0012】
一方で、特許文献2に開示されているカラーフィルタは、色度座標におけるy値が上がってしまうことを防止することにより赤色の純度の向上を狙っており、ここに規定されている透過率に設定することにより確かにy値の上昇は抑えられるが、これに伴い、色度座標におけるx値が下がってしまう可能性があり、その結果、全体として赤色の色純度が向上しないことが懸念される。
【0013】
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであり、色再現性に優れたカラーフィルタおよびこれを用いた液晶表示装置を提供すること、より具体的には、白色LEDを用いた場合であっても赤色再現性に優れ、かつ、インクジェット方式によっても製造可能なカラーフィルタおよびこれを用いた液晶表示装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、基板上に赤色を含む複数色の着色層が形成されたカラーフィルタであって、赤色着色層は、430〜460nmの範囲における平均透過率が0.4%以下であることを特徴とする。
【0015】
前記発明にあっては、前記赤色着色層は、さらに、550〜570nmの範囲における平均透過率が2.5%以下であることが好ましい。
【0016】
また、前記発明にあっては、前記赤色着色層が、有色顔料として、少なくともC.I.Pigment Red 254、C.I.Pigment Red 177、およびC.I.Pigment Yellow 150を含んでいてもよい。
【0017】
さらに、前記発明にあっては、前記赤色着色層が、有色顔料として、さらにC.I.Pigment Red 242 を含んでいてもよい。
【0018】
また、上記課題を解決するための本発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のカラーフィルタと、バックライトと、を備えることを特徴とする液晶表示装置である。
【0019】
ここで、前記バックライトが、白色LEDであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のカラーフィルタによれば、これを構成する赤色着色層における、430〜460nmの範囲の平均透過率が0.4%以下であるので、バックライトなどの光源から生じる光のうち、青色に分類される光の透過を抑えることができ、その結果として、赤色の再現性を向上することができる。つまり、本発明のカラーフィルタは、赤色の再現性を向上するにあたり、赤色自体に工夫を施すのではなく、赤色の色純度を阻害する青色の光を遮断することにより、結果として赤色の再現性の向上を図っている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)各色の再現性を評価するための色度座標図である。
【図2】CCFL光源、白色LED、および従来のカラーフィルタにおける赤色着色層、それぞれの分光スペクトルを示す図である。
【図3】本発明に係るカラーフィルタに属する液晶表示装置用カラーフィルタの一例を示す縦断面図である。
【図4】本発明の液晶表示装置の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のカラーフィルタについて図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
はじめに、図面を用いて本発明が解決しようとする課題について詳細に説明する。
【0024】
図1は、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)各色の再現性を評価するための色度座標図である。
【0025】
図1に示す符号aの三角形は、従来から存在する所定のカラーフィルタとCCFL光源との組み合わせであり、符号bの三角形は、前記aの三角形と同一の所定のカラーフィルタと白色LED光源とを組み合わせた場合を示している。
【0026】
図1に示した三角形は、その面積が大きいほど、つまり、三角形の各頂点(赤色(R)、緑色(G)、および青色(B))が外側に広がれば広がるほど色再現性が優れていることになる。ここで、図1の符号aとbとを比較すれば明らかなように、従来のカラーフィルタをそのままとし、単純に光源をCCFLから白色LEDに変えたのみでは、赤色を示す頂点(符号R参照)が内側にシフトしており、これは正に色再現性が低下していることに他ならない。なお、図1においては、光源の種類が異なる場合(CCFL光源と白色LED光源)を例に挙げて説明したが、当該問題は、この二種類の光源間にのみ生じるものではなく、CCFL光源同士、若しくは白色LED同士、さらには他の光源であっても、光源毎にその波長やスペクトルピークが異なるため、同様の問題が生じうる。
【0027】
そして、本発明は、このような現象が生じることがない、つまり、例えば白色LEDを光源として用いた場合であっても、赤色を示す頂点が内側にシフトし難い赤色着色層を有するカラーフィルタおよびこれを用いた液晶表示装置を提供することを課題としている。
【0028】
次に、図面を用いて本発明のメカニズムについて詳細に説明する。
【0029】
図2は、CCFL光源、白色LED、および従来のカラーフィルタにおける赤色着色層、それぞれの分光スペクトルを示す図である。
【0030】
図2の符号c(カラーフィルタにおける赤色着色層のスペクトル)に示すように、570〜700nmの波長の光が赤色であり、この範囲の光が妨害されることなくそのままの状態で観察者の目に届くことが理想であるところ、本発明者らは、符号d(CCFL光源のスペクトル)および符号e(白色LEDのスペクトル)を対比し、白色LED(e)はCCFL(d)に比べて青色の領域に鋭いピークを持っており、この領域の光が赤色着色層を通過してしまうことにより赤色の再現性が低下していることを見出し、本発明を完成させている。つまり、従来の開発は、カラーフィルタにおける赤色着色層のスペクトル(c)強度をより高めることに主眼をおいていたところ、発想を転換し、青色の領域の光の透過率を下げる、具体的には、430〜460nmの範囲における平均透過率を0.4%以下とすることにより、当該範囲の青色の光が赤色着色層を通過することを防止し、全体として色再現性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させている。
【0031】
また、本発明においては、同様のメカニズムにより、550〜570nmの範囲における平均透過率を2.5%以下とすることにより、当該範囲の緑色の光も赤色着色層を通過することを防止し、さらに全体として色再現性を向上させることができる。なお、赤色着色層を形成するにあたり、これに含有される複数の顔料の種類やそれぞれの含有割合によっては550〜570nmの範囲における平均透過率が上昇する可能性があるが、このような場合に特に有用である。
【0032】
次に、本発明のカラーフィルタを構成する着色層について説明する。
【0033】
本発明のカラーフィルタは、基板上に赤色を含む複数色の着色層が形成されている。これら複数色の着色層は、顔料と熱硬化性成分(いわゆるバインダー形成系)を主成分とし、複数色には、赤色(R)と、緑(G)および青(B)の組み合わせが最も一般的であるが、これらにイエロー、マゼンダ、シアン(Y、M、C)の組み合わせ、あるいはこれにオレンジを加えた組み合わせなどを挙げることができる。
【0034】
そして、本発明のカラーフィルタは、前述したように、赤色の着色層に特徴を有し、当該赤色着色層の、430〜460nmの範囲における平均透過率は0.4%以下であり、さらには、これに加えて、550〜570nmの範囲における平均透過率が2.5%以下である点が特徴である。また、550〜570nmの範囲における平均透過率にあっては、1.5%以下とするとさらに好ましい。
【0035】
また、本発明にあっては、430〜460nmの範囲における平均透過率、550〜570nmの範囲における平均透過率ともに小さければ小さいほど好ましいが、当該範囲の平均透過率を0(ゼロ)とすることは現実的に不可能であるため、可能な限り0(ゼロ)に近い値とすることが現実的かつ理想である。
【0036】
なお、本発明における「平均透過率」とは、透過率の平均値を示す。また、本発明における平均透過率の測定は、次の方法で行う。はじめに、塗膜を形成したカラーフィルタを特開2008−107824号公報に記載されている方法によって、可視波長域(400〜700nm)の分光透過スペクトル測定を行い、そこで得られた分光スペクトルおよび所定の疑似白色LED光源を用いてXYZ表色系に基づく色度(x,y)、輝度(Y)を算出する。次に、上記方法で測定した分光スペクトルを用い、「430〜460nmの範囲における平均透過率」にあっては、430〜460nmの波長を5nm刻みに分割し、430、435、440、445、450、455、460nmにおける透過率を平均する。同様に「550〜570nmの範囲における平均透過率」にあっては、550〜570nmの波長を5nm刻みに分割し、550、555、560、565、570nmにおける透過率を平均する。
【0037】
また、オーバーコート層、透明導電層または配向膜などが赤色着色層を覆うように形成されている場合にあっては、これらの層が形成されている状態で測定しても良いし、これらの層を剥離した状態で測定しても良い。
【0038】
ここで、本願のカラーフィルタにおける赤色着色層にあっては、上記所定の範囲における所定の透過率が実現されていればよく、その形成方法や、成分組成について限定されることはない。
【0039】
以下に、製造効率がよく、製造コストも安価であることから近年着目されているインクジェット方式により赤色着色層を形成する場合を例に挙げて説明する。
【0040】
インクジェット方式により赤色着色層を形成する場合に用いられるインクジェットインクは、顔料、顔料分散剤、溶剤、および熱硬化性成分(いわゆる、バインダー形成系)から構成される。
【0041】
(顔料)
ここで、赤色有機顔料としては、C.I.Pigment Red 254、7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、179、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、246、255、264、272、279等を挙げることができる。
【0042】
また、黄色有機顔料としては、C.I. Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、144、146、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214等を挙げることができる。
【0043】
橙色有機顔料としては、C.I. Pigment Orange 36、43、51、55、59、61、71、73等を挙げることができる。
【0044】
緑色有機顔料としては、C.I. Pigment Green 7、10、36、37、58等を挙げることができる。
【0045】
青色有機顔料としては、C.I. Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、80等を挙げることができる。
【0046】
さらに、紫色有機顔料としては、C.I. Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等を挙げることができる。
【0047】
以上の有機顔料は、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
そして、本発明のカラーフィルタにおいては、赤色着色層を形成する際に、所定の範囲の透過率を所定の数値とすべく、上記有機顔料を適宜配合すればよい。
【0049】
具体的には、例えば、C.I.Pigment Red 254、C.I.Pigment Red 177、およびC.I.Pigment Yellow 150の3種類の有機顔料を配合することが好ましく、さらには、これらにC.I.Pigment Red 242を含有して合計4種類の配合してもよい。また、この例の場合、C.I.Pigment Red 177とC.I.Pigment Yellow 150との配合割合(C.I.Pigment Red 177/C.I.Pigment Yellow 150の値)が1以下となるように、つまり、C.I.Pigment Yellow 150の配合量をC.I.Pigment Red 177の配合量以上とすることが好ましい。当該配合量とすることにより、所定の範囲の透過率を所定の数値とすることができる。
【0050】
本発明のカラーフィルタを構成する、赤色着色層以外の着色層については、何ら限定されることはなく、上記に挙げた種々の有機顔料を適宜選択して用いることができる。
【0051】
また、各色に共通して、上記有機顔料の他、必要に応じて無機顔料あるいは体質顔料を添加してもよい。これらの具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、アンバー等を挙げることができる。なお、これらについても、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0052】
インクジェットインクに含まれる顔料は、同じくインクジェットインク中に含まれるバインダー形成系、顔料及び顔料分散剤の合計量に対して、通常は1〜60質量%、好ましくは15〜40質量%の割合で配合される。顔料が少なすぎると、インクジェットインクを所定の膜厚(0.5〜3.0μm)に塗布した際の透過濃度が十分でないおそれがある。また、顔料が多すぎると、インクジェットインクを基板上へ塗布し硬化させた際の基板への密着性、硬化膜の表面荒れ、塗膜硬さ等の塗膜としての特性が不十分となるおそれがある。
【0053】
(顔料分散剤)
顔料分散剤は、上記顔料を良好に分散させるために顔料分散液中に更に配合されることが好ましい。顔料分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。また、溶剤に少量溶解するような顔料誘導体を顔料分散剤として用いてもよい。
【0054】
顔料分散剤は、使用される顔料を良好に分散させるために適宜選択して用いられる。顔料分散剤としては、具体例としては、ポリエチレンイミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体よりなる群から選択される1種以上を好適に用いることができる。なお、ポリアリルアミン誘導体の市販品としてはアジスパーPb821(味の素ファインテクノ株式会社製)、上記ポリエチレンイミン誘導体の市販品としてはSolsperse33500(日本ルーブリゾール社製)等を用いることができる。
【0055】
また、顔料分散剤にあっては、上記で挙げたものの他、例えば特開2010−134278号公報に開示されている顔料分散剤の中から適宜選択して用いることも可能である。
【0056】
(溶剤)
本発明におけるインクジェットインクに用いられる溶剤は、第一溶剤として沸点が180℃〜260℃で、好ましくは210℃〜260℃で且つ常温(特に18℃〜25℃の範囲)での蒸気圧が0.5mmHg以下、好ましくは0.1mmHg以下の溶剤成分を溶剤の全量に対して60〜95重量%含有し、更に第二溶剤として沸点が130℃以上180℃未満の溶剤成分を溶剤の全量に対して5〜40重量%含有することが好ましい。
【0057】
沸点が180℃〜260℃で且つ常温での蒸気圧が0.5mmHg以下の溶剤成分は適度な乾燥性及び蒸発性を有している。そのため、このような溶剤成分を第一溶剤として高い配合割合で含有するインクジェットインクは、間歇吐出及び連続吐出のいずれを行う場合でも急速には乾燥しないので、インクジェットヘッドのノズル先端において急激な粘度の上昇や目詰まりを起こし難く、オリフィス表面の濡れ広がりも生じ難く、吐出方向や吐出量の安定性に優れている。従って、このようなインクを用いてインクジェット方式により基板表面に所定のパターンに合わせて吐出することにより、着色層を正確且つ均一に形成することができる。
【0058】
更に、上記特定の第一溶剤に加えて、第二溶剤として沸点が130℃以上180℃未満の溶剤成分を適量組み合わせることにより、乾燥速度を最適化することができる。インクジェットヘッドのノズル先端においては急速に乾燥しないが、着色層乾燥時には乾燥速度が適度に速いことから溶質が流動することを抑制できる。従って、基板上に吐出された後は、基板表面になじんで十分にレベリングさせてから、適宜乾燥手段によって比較的短時間に且つ完全に乾燥させることができる。従って、このようなインクジェットインクを用いると、表面ムラが低減された膜厚の均一性の高い着色層が得られると共に、効率よく乾燥させることができる。
【0059】
第一溶剤として使用できる溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、及び、コハク酸ジエチルなどを例示することができる。これらの溶剤は、沸点が180℃〜260℃で且つ常温での蒸気圧が0.5mmHg以下の要求を満たしているだけでなく、顔料の分散性、分散安定性も比較的良好であり、3−メトキシブチルアセテートやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)のような従来から顔料分散体の調製に用いられている溶剤と混合し或いは混合せずそのまま分散溶剤として用い、顔料分散体を調製することができる。
【0060】
また、前記第二溶剤としては、上記沸点を有する溶剤であれば良いが、第一溶剤との相溶性に優れる溶剤を適宜選択して用いることが好ましい。
【0061】
中でも、グリコールエーテル類やグリセリンエーテル類などの多価アルコールエーテル類を含むエーテル類、およびグリコールエステル類やグリセリンエステル類などの多価アルコールエステル類、脂肪族エステル類、アルコキシカルボン酸エステル類、ケトカルボン酸エステル類を含むエステル類よりなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。上記のようなエステル類、およびエーテル類を用いる場合には、バインダー成分等に反応性が高い樹脂を用いた場合であっても、インクの経時安定性を良好に維持し、インクジェットヘッドからの吐出安定性が向上するという利点がある。また、グリコールエーテル類、グリコールエステル類を用いる場合には、ガラス基板に対する濡れ性が向上し、着色層形成領域全体の隅々にまで濡れ広がり易くなり、着色層の色抜け防止に効果的である。
【0062】
本発明において用いられるカラーフィルタ用インクジェットインクにおいては、前記第二溶剤の含有量は、中でも、溶剤全量に対して5〜30重量%、より更に5〜25重量%、特に8〜20重量%であることが、上記第一溶剤の効果を阻害することなく、インクジェットヘッドから吐出した時の安定性に優れ、更に効率よく乾燥させることができ、表面ムラが低減された良好な着色層を形成し易い点から好ましい。
【0063】
以上のような溶剤を、当該溶剤を含むインクの全量に対して、通常は40〜95重量%の割合で用いて吐出させるインクを調製する。溶剤が少なすぎると、インクの粘度が高く、インクジェットヘッドからの吐出が困難になる。また、溶剤が多すぎると、所定の着色層形成領域に対するインク盛り量(インク堆積量)が十分でないうちに、当該着色層形成領域に堆積させたインクの膜が決壊し、隣の着色層形成領域にまで濡れ広がってしまう。言い換えれば、インクを付着させるべき着色層形成領域からはみ出さないで堆積させることのできるインク盛り量が不十分となり、乾燥後の膜厚が薄すぎて、それに伴い十分な透過濃度を得ることができなくなる。
【0064】
なお、溶剤にあっても、顔料分散剤と同様、上記で挙げたものの他、例えば特開2010−134278号公報に開示されている溶剤の中から適宜選択して用いることも可能である。
【0065】
(熱硬化性成分)
インクジェットインクは、成膜性や被塗工面である基板表面に対する密着性を付与するために、バインダー形成系としての熱硬化性成分を含有する。バインダー形成系とはインク中に含まれる、顔料を所定の位置に付着させ、固定するために含有させる液状混合物であり、後の硬化プロセスにおいて反応性を有する硬化性化合物の他、それ自体反応性を有さない化合物も含むものである。熱硬化性成分としては、好ましくは、熱硬化性樹脂成分を用いることができる。
【0066】
インクジェット方式に用いるインクの場合、所定のパターンを形成するためには、所定の着色層形成領域にのみインクを選択的に付着させて固化すれば形成することができ、露光及び現像を行うことによりパターンを形成する必要がない。従って、バインダー形成系としては、必ずしも露光現像が可能な硬化性バインダー形成系を用いなくても良く、非硬化性の熱可塑性樹脂組成物を用いても良いが、硬化性の樹脂を含むバインダー形成系を用いることが硬化皮膜に充分な硬度を付与するため好ましい。
【0067】
硬化性バインダー形成系としては、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性樹脂を含む熱硬化性バインダー形成系を用いる。これは、インクジェットインクにおいては、P/V比を高くした場合であっても、耐溶剤性、密着性、ITO耐性等の着色層の膜物性をより良好にすることができるからである。なお、ここでITO耐性とは、ITO回路形成時又は配向膜形成時の不具合に対する耐性であり、具体的にはITO回路形成後の230〜250℃での耐熱性が挙げられる。また、熱硬化性バインダーを用いることには、光照射装置を始めとする特別な附帯設備が不要となり、生産性が高いというメリットもある。
【0068】
熱硬化性バインダー形成系としては、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物と硬化剤の組み合わせが通常用いられ、更に、熱硬化反応を促進できる触媒を添加しても良い。熱硬化性官能基としてはエポキシ基が好ましく用いられる。また、これらにそれ自体は重合反応性のない重合体を更に含有させても良い。
【0069】
1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物として、インクジェットの吐出安定性、及びインクジェットインクにより形成された着色層の耐溶剤性、密着性、ITO耐性等の膜物性の点から、1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物が好適に用いられる。1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物は、エポキシ基を2個以上、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個を1分子中に有するエポキシ化合物(エポキシ樹脂と称されるものを含む)である。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等を示すことができる。エポキシ化合物としては、カルボン酸により硬化しうる公知の多価エポキシ化合物を挙げることができ、このようなエポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。
【0070】
なお、熱硬化性成分にあっても、顔料分散剤や溶剤と同様、上記で挙げたものの他、例えば特開2010−134278号公報に開示されている熱硬化性成分の中から適宜選択して用いることも可能である。
【0071】
(その他の成分)
インクジェットインクには、必要に応じて、その他の添加剤を1種又は2種以上配合することができる。そのような添加剤としては、増感剤、硬化促進剤(連鎖移動剤)、分散助剤、充填剤、密着促進剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を例示することができる。
【0072】

次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。
【0073】
図3は、本発明に係るカラーフィルタに属する液晶表示装置用カラーフィルタの一例(カラーフィルタ103)を示す縦断面図である。
【0074】
図3(a)に示されたカラーフィルタ103は、透明基板5に所定のパターンで形成された遮光層6と、当該遮光層上に所定のパターンで形成した着色層7(7R,7G,7B)と、当該着色層を覆うように形成されたオーバーコート層8を備えている。オーバーコート層8上に必要に応じて液晶駆動用の透明導電層9が形成される場合もある。カラーフィルタ103の最表面、この場合には透明導電層9上には、配向膜10が形成される。
【0075】
柱状スペーサー12は凸状スペーサーの一形状であり、遮光層6が形成された領域(非表示領域)に合わせて、透明導電層9上の所定の複数箇所に形成されている。柱状スペーサー12は、透明導電層9上若しくは着色層7上若しくはオーバーコート層8上に形成される。カラーフィルタ103においては、オーバーコート層8上に透明導電層9を介して柱状スペーサーが海島状に形成されているが、オーバーコート層8と柱状スペーサー12を一体的に形成し、その上を覆うように透明導電層を形成しても良い。
【0076】
カラーフィルタ103の透明基板5としては、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、或いは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。
【0077】
遮光層6は、表示画像のコントラストを向上させるために、着色層7R,7G,7Bの間及び着色層形成領域の外側を取り囲むように設けられる。本発明においては、遮光層6は、遮光性粒子を含有する樹脂組成物を用いて形成することが好ましい。例えば、遮光層形成用樹脂組成物がアルカリ現像性を有する場合には、先ず、透明基板5上に、遮光層形成用樹脂組成物を塗布し、必要に応じて乾燥させて感光性塗膜を形成し、当該塗膜を遮光層用のフォトマスクを介して露光、現像し、必要に応じて加熱処理を施すことによって、遮光層6を形成することができる。一方、遮光層形成用樹脂組成物が、熱硬化性樹脂組成物である場合やアルカリ現像性を有しない場合には、遮光層形成用樹脂組成物を透明基板5上の所定領域に印刷や、熱転写等により選択的に付着させた後、加熱又は光照射して硬化させることによって、遮光層6を形成することができる。
【0078】
遮光層の厚さは、適応するカラーフィルタにより異なり、0.5〜2.5μm程度とする。
【0079】
着色層7は、赤色パターン、緑色パターン及び青色パターンがモザイク型、ストライプ型、トライアングル型、4着色層配置型等の所望の形態で配列されてなり、表示領域を形成する。ここで本発明においては、着色層7のうち、赤色着色層7Rが上述した特徴を有している。そして、これらの着色層7は、上述したインクジェットインクを用いて形成することができる。
【0080】
インクジェット方式によって選択的に付着させる方法としては、各着色層形成領域の基板表面上に所望の厚みの着色層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、通常、インクジェットヘッドを用い、インクジェットヘッドまたは基板を移動させながら上記各着色層形成領域の基板表面上にカラーフィルタ用インクジェットインクを滴下する方法が用いられる。
【0081】
着色層の厚さは、通常、0.5〜3.0μm程度とする。
【0082】
着色層の形成に用いられるインクジェットヘッドは、後述する遮光層が備える開口部内の基板表面上に、所望量のインクジェットインクを滴下できるものであれば特に限定されるものではない。このようなインクジェットヘッドとしては、例えば、帯電したインクジェットインクを連続的に吐出し磁場によって吐出量を制御する吐出方式のもの、圧電素子を用いて間欠的にインクジェットインクを吐出する吐出方式のもの、または、インクジェットインクを加熱しその発泡現象を利用して間欠的に吐出する吐出方式のもの等の一般的なインクジェットヘッドを用いることができる。
【0083】
詳細な着色層の形成方法としては、特願2006−268362の明細書中の96〜98段落に記載された方法を参考にすることができるが、これのみに限定されることはない。
【0084】
オーバーコート層8は、カラーフィルタの表面を平坦化すると共に、着色層7に含有される成分が液晶層に溶出するのを防止するために設けられる。オーバーコート層8は、公知のネガ型の光硬化性透明樹脂組成物又は熱硬化性透明樹脂組成物を、スピンコーター、ロールコーター、スプレイ、印刷等の方法により、遮光層6及び着色層7を覆うように塗布し、光又は熱によって硬化させることにより形成できる。
【0085】
オーバーコート層を形成する場合の層の厚さは、樹脂組成物の光透過率、カラーフィルタの表面状態等を考慮して設定し、例えば、0.1〜2.0μm程度とする。
【0086】
オーバーコート層上の透明導電層9は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等、およびそれらの合金等を用いて、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等の一般的な方法により形成され、必要に応じてフォトレジストを用いたエッチング又は治具の使用により所定のパターンとしたものである。この透明導電層の厚みは20〜500nm程度、好ましくは100〜300nm程度とすることできる。
【0087】
本発明のカラーフィルタとしては、上述した図3(a)に示された構成には必ずしも限定されない。他にも、図3(b)に示された構成のように、オーバーコート層8が存在せず、着色層7を直接透明導電層9が覆うように形成されていてもよいし、図3(c)に示された構成のように、透明導電層9が透明基板5をはさんで着色層7とは反対側に配置されていてもよい。また、図3(d)に示された構成のように、透明導電層9が存在しない構成でもよい。本発明のカラーフィルタは、少なくとも透明基板5と遮光層6と着色層7とを有しているものであればよい。オーバーコート層8や透明導電層9や柱状スペーサー12は適宜設けられていればよい。
【0088】
凸状スペーサーは、カラーフィルタ103をTFTアレイ基板等の液晶駆動側基板と貼り合わせた時にセルギャップを維持するために、基板上の非表示領域に複数設けられる。凸状スペーサーの形状及び寸法は、基板上の非表示領域に選択的に設けることができ、所定のセルギャップを基板全体に渡って維持することが可能であれば特に限定されない。凸状スペーサーとして図示したような柱状スペーサー12を形成する場合には、2〜10μm程度の範囲で一定の高さを持つ。また、柱状スペーサー12の太さは5〜20μm程度の範囲で適宜設定することができる。また、柱状スペーサー12の形成密度(密集度)は、適宜設定することができるが、例えば、赤色、緑色及び青色の各着色層の1組に1個の割合で必要充分なスペーサー機能を発現する。このような柱状スペーサーの形状は柱状であればよく、例えば、円柱状、角柱状、截頭錐体形状等であっても良い。
【0089】
凸状スペーサーは、硬化性樹脂組成物を用いて形成することができる。すなわち、先ず、硬化性樹脂組成物の塗工液をスピンコーター、ロールコーター、スプレイ、印刷、ダイコーター等の方法により透明基板上に直接、又は、透明導電層等の他の層を介して塗布し、乾燥して、光硬化性樹脂層を形成する。次に、この樹脂層を凸状スペーサー用フォトマスクを介して露光し、アルカリ液のような現像液により現像して所定の凸状パターンを形成し、この凸状パターンを必要に応じてクリーンオーブン等で加熱処理(ポストベーク)することによって凸状スペーサーが形成される。
【0090】
配向膜10は、着色層7を備える表示部及び遮光層6や柱状スペーサー12を備える非表示部を覆うように設けられる。配向膜は、ポリイミド樹脂等の樹脂を含有する塗工液をスピンコート等の公知の方法で塗布し、乾燥し、必要に応じて熱や光により硬化させた後、ラビングすることによって形成できる。
【0091】
図4は、本発明の液晶表示装置の一例を示す縦断面図である。
【0092】
図4に示すように、図3(a)に示した本発明のカラーフィルタ103を用い、これととTFT基板等の電極基板2とを対向させて1〜10μm程度の間隙部3を設け、当該間隙部3内に液晶化合物Lを充填し、その周囲をシール材4で密封した構造をとっている。これにより、本発明の液晶表示装置の典型例である、アクティブマトリックス方式のカラー液晶表示装置が得られる。
【0093】
液晶表示装置におけるその他の製造方法及び構成は、図4に示したものに限定されることはなく、通常用いられる方法及び構成を用いることができる。たとえば光源としては、CCFL光源や白色LED光源などを適宜選択しても用いることができるが、本発明の特徴を活かすためには、白色LED光源を採用することが好ましい。
【0094】
本発明の液晶表示装置としては、上述したカラーフィルタを有するものであれば特に限定はされず、公知の液晶表示装置を挙げることができる。具体的には、IPS(In−Plane Switching)型、STN(Super Twisted Nematic)型、TN(Twisted Nematic)型、強誘電性型、反強誘電性型、MVAモード型等を挙げることができる。
【0095】
本発明の液晶表示装置によれば、本発明のカラーフィルタが用いられていることから、例えば色再現性に優れたカラー液晶テレビを提供することができる。
【0096】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0098】
(実施例1)
以下の成分組成を有する赤色着色層のインクジェットインクを準備し、下記のようにしてカラーフィルタを作製した。
【0099】
厚み0.7mmで10cm×10cmのガラス基板(旭硝子(株)製)上に遮光層用硬化性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィ法により幅140μm×長手方向480μmの開口部、線幅30μm、膜厚2.4μmの遮光層を形成した。
【0100】
上記の遮光層付基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射し、遮光層上のみを撥インク化し、遮光層により区画された着色層形成領域に、各インクジェットインクをインクジェット方式によって付着させた。
【0101】
その後、減圧乾燥を行い、更にオーブンを用いてプレベークおよびポストベークを行った。インクジェットで付着させるインクの量はポストベーク後の塗膜の膜厚が1.9μmとなる量とした。
【0102】
得られた塗膜の乾燥後の膜厚の測定は、遮光層により区画された着色層形成領域を画定する開口部に含まれる着色層の全体、すなわち開口部全体に付着された着色層の塗膜について、光干渉方式の三次元非接触表面形状計測装置(米国マイクロマップ製 製品名Micromap557N)を用い、開口部内の膜厚分布を測定した。
【0103】
膜厚の計算は、(開口部に付着された塗膜の体積)/(開口部の面積)にて算出した。
【0104】
分光スペクトルの測定方法は、前述の通りであり、具体的には以下の通りである。
【0105】
塗膜を形成したカラーフィルタを特開2008−107824号公報に記載されている方法によって、可視波長域(400−700nm)の分光透過スペクトル測定を行った。そこで得られた分光スペクトルおよび所定の疑似白色LED光源を用いてXYZ表色系に基づく色度(x,y)、輝度(Y)を算出した。
【0106】
この赤色着色層に含まれる有機顔料の種類およびその割合とともに、色度座標の測定結果を以下の表1に示す。なお、本実施例における「平均透過率」は、前述の通り、透過率の平均値を示している。また、測定方法にあっても前述の通り、上記方法で測定した分光スペクトルを用いて行い、「430〜460nmの範囲における平均透過率」とは、430〜460nmの波長を5nm刻みに分割し、430、435、440、445、450、455、460nmにおける透過率を平均したものである。同様に「550〜570nmの範囲における平均透過率」とは、550〜570nmの波長を5nm刻みに分割し、550、555、560、565、570nmにおける透過率を平均したものである。
(実施例2〜9、比較例1〜3)
上記実施例1と同様の手順により、実施例2〜9、比較例1〜3の赤色着色層を形成した。なおそれぞれの違いは、赤色着色層に含まれる有機顔料の種類およびその割合と、430〜460nmの範囲および550〜570nmの範囲におけるにおける平均透過率である。
【0107】
【表1】

また、上記実施例1の赤色着色層の色度座標xの値である0.651を、実施例2〜9および比較例1〜3の赤色着色層の顔料組成のままで得るために、顔料濃度をどの程度変化させなければならないのか、およびその場合の、経時安定性、初期吐出性、間歇吐出安定性、耐薬品性、および密着性を調査した。
【0108】
その結果を以下の表2に示す。
【0109】
【表2】

なお、上記の表2中の各評価基準は以下の通りである。
【0110】
<経時安定性>
各インク組成物の調製直後、および23℃保存で1ヵ月後の粘度を測定した。粘度は山一電機社製回転振動型粘度計 ビスコメイトUM−1Gで23℃にて測定した。
経時安定性の評価基準
◎:1ヶ月後に0.3mPa・s未満の粘度増加
○:1ヶ月後に0.3mPa・s以上0.5mPa・s未満の粘度増加
△:1ヶ月後に0.5mPa・s以上1.0mPa・s未満の粘度増加
×:1ヶ月後に1.0mPa・s以上の粘度増加
<初期吐出性および間歇吐出安定性>
インクジェットヘッドに各インク組成物を充填し、当該ヘッドから吐出して、親疎水パターニングされた遮光層の着色層領域の中心部に、ドロップ径30μmで滴下した。さらに、初期吐出を停止してヘッドを30分間静止させた後、同じヘッドから別の着色層形成領域の中心部に、ドロップ径30μmで滴下した。このような間歇吐出において、最初に吐出動作を行った時の吐出性(初期吐出性)と、その後に再吐出を行った時の吐出性(間歇吐出安定性)を観察し、下記基準に従って評価した。
初期吐出性の評価基準
○:ヘッドの全部の穴(オリフィス)からインクを吐出する事が可能である。
△:ヘッドにインクの出ない穴が一部ある。
×:ヘッドのほとんどの穴からインクが出ない。
間歇吐出安定性の評価基準
○:ヘッドの全部の穴(オリフィス)からインクを再吐出する事が可能である。
△:ヘッドにインクの出ない穴が一部ある。
×:ヘッドのほとんどの穴からインクが出ない。
<耐薬品性>
各インク組成物の塗膜を形成した基板を、液温40℃のN−メチルピロリドンに1時間浸漬させ、浸漬前後の色差δEabをCIE1976規格に基づき算出した。測定は、オリンパス光学工業(株)製、顕微分光測定装置 OSP−200を用いた。
耐薬品性の評価基準
◎:δEab<1
○:1≦δEab<3
△:3≦δEab<5
×:5≦δEab
<密着性>
各インク組成物の塗膜を形成した基板に、カッターで直交する縦横11本ずつの切り傷を1mm間隔でつけた。さらに、スコッチテープをパターンに指で軽く密着させすばやくテープを剥がし、傷の状態を観察し、以下の基準で判定した。
密着性の評価基準
◎:切り傷の交線にわずかな剥がれがあり、欠損部の面積は全正方形面積の5%未満
○:切り傷の交線に剥がれがあり、欠損部の面積は全正方形面積の5%以上15%未満
△:切り傷による剥がれの幅が広く、欠損部の面積が全正方形面積の15%以上35%未満
×:切り傷による剥がれの幅が4点より広く、欠損部の面積は全正方形面積の35%以上
上記表1からも明らかなように、本発明のカラーフィルタは、従来のカラーフィルタと比べて赤色の色再現性が優れていることが分かる。
【0111】
また、上記表2からも明らかなように、本発明の実施例1のカラーフィルタと同程度の赤色を、従来のカラーフィルタで再現使用とした場合、経時安定性、初期吐出性、間歇吐出安定性、耐薬品性、および密着性など種々の性能が劣ってしまい、種々の支障をきたすことが分かる。
【符号の説明】
【0112】
a・・・従来のカラーフィルタとCCFL光源との組み合わせ
b・・・従来のカラーフィルタと白色LED光源との組み合わせ
c・・・カラーフィルタの赤色着色層のスペクトル
d・・・CCFL光源のスペクトル
e・・・白色LED光源のスペクトル
2・・・電極基板
3・・・間隙部
4・・・シール材
5・・・透明基板
6・・・遮光層
7・・・着色層
8・・・オーバーコート層
9・・・透明導電層
10・・・配向膜
12・・・柱状スペーサー
103・・・カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に赤色を含む複数色の着色層が形成されたカラーフィルタであって、
赤色着色層は、430〜460nmの範囲における平均透過率が0.4%以下であることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
前記赤色着色層は、さらに、550〜570nmの範囲における平均透過率が2.5%以下であることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ。
【請求項3】
前記赤色着色層が、有色顔料として、少なくともC.I.Pigment Red 254、C.I.Pigment Red 177、およびC.I.Pigment Yellow 150を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載のカラーフィルタ。
【請求項4】
前記赤色着色層が、有色顔料として、さらにC.I.Pigment Red 242 を含んでいることを特徴とする請求項3に記載のカラーフィルタ。
【請求項5】
前記C.I.Pigment Yellow 150の配合量がC.I.Pigment Red 177の配合量以上であることを特徴とする請求項3または4に記載のカラーフィルタ。
【請求項6】
カラーフィルタと、電極基板とを対向させて間隙部を設け、当該間隙部内に液晶化合物を充填し、その周囲をシール材で密封した構造を呈する液晶表示装置であって、
前記カラーフィルタが、基板上に赤色を含む複数色の着色層が形成されたカラーフィルタであって、かつ、赤色着色層が、430〜460nmの範囲における平均透過率が0.4%以下である、
ことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−83627(P2012−83627A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230929(P2010−230929)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】