説明

カラーフィルター用インクセット、カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器

【課題】明度およびコントラスト比に優れ、かつ、色むら、濃度むらの発生が抑制されたカラーフィルターをインクジェット方式により製造するのに好適に用いることのできるカラーフィルター用インクセットを提供すること。
【解決手段】本発明のインクセットは、着色剤と、着色剤が分散・溶解する第1の液性媒体と、単量体成分m1と単量体成分m2と単量体成分m3とを含む重合体Mとを含む第1のインクと、第1のインクと同一のセル内に吐出されることにより、単量体成分x1と単量体成分x3と量体成分x4とを含む重合体Xと、単量体成分y1を含む重合体Yと、重合体Xおよび重合体Yを分散・溶解する第2の液性媒体とを含む第2のインクとを備えるものであり、第2のインク中における重合体Xの含有率をC[wt%]、第2のインク中における重合体Yの含有率をC[wt%]としたとき、1.0≦C/C≦6.0の関係を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用インクセット、カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー表示を行う液晶表示装置(LCD)等には、一般に、カラーフィルターが用いられている。
カラーフィルターは、従来、着色剤、感光性樹脂、官能性モノマー、重合開始剤等を含む材料(着色部形成用組成物)で構成された塗膜を基板上に形成し、その後、フォトマスクを介して光を照射する感光処理、現像処理等を行う、いわゆるフォトリソグラフィー法を用いて製造されてきた。このような方法では、通常、基板のほぼ全面に、各色に対応する塗膜を形成し、その一部のみを硬化させ、それ以外の大部分を除去するという操作を繰り返すことにより、各色が重なり合わないようにカラーフィルターを製造する。このため、カラーフィルターの製造において形成される塗膜は、最終的に得られるカラーフィルターには、その一部のみが着色部として残存するのみで、その大部分が製造工程において除去されることとなる。このため、カラーフィルターの製造コストが上昇するばかりでなく、省資源の観点からも好ましくない。
【0003】
一方、近年、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)を用いて、カラーフィルターの着色部を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような方法は、着色部形成用組成物の無駄を少なくすることができるため、環境への負荷を低減することができ、また、製造コストも抑制することができる。
ところで、このように、インクジェット法を用いたカラーフィルターの製造方法は、生産性に優れている。しかしながら、インクジェットヘッドを用いて製造されたカラーフィルターでは、より高いコントラスト、より高い明度の画像を表示することが困難であり、表示画像にすじ状のむら(色むら、濃度むら)が発生しやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−2815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、インクジェット法を用いて製造され、明度およびコントラスト比に優れ、かつ、色むら、濃度むらの発生が抑制されたカラーフィルターを提供すること、前記カラーフィルターの製造に好適に用いることのできるカラーフィルター用インクセットを提供すること、前記カラーフィルターを効率よく製造することができカラーフィルターの製造方法を提供すること、また、前記カラーフィルターを備えた画像表示装置、電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のカラーフィルター用インクセットは、基板上に設けられた多数個のセル内に着色部を有するカラーフィルターを、インクジェット方式により製造するのに用いるカラーフィルター用インクセットであって、
着色部は、着色膜と樹脂膜とを有するものであり、
着色剤と、前記着色剤が分散および/または溶解する第1の液性媒体と、下記式(1)で表される単量体成分m1とカルボキシル基または酸無水物基を有する単量体成分m2と下記式(3)で表される単量体成分m3とを含む重合体Mとを含み、前記着色膜の形成に用いられる第1のインクと、
前記第1のインクと同一のセル内に吐出されることにより、前記樹脂膜を形成する第2のインクとを備え、
前記第2のインクは、下記式(11)で表される単量体成分x1と下記式(13)で表される単量体成分x3と下記式(14)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xと、下記式(15)で表される単量体成分y1を含む重合体Yと、前記重合体Xおよび前記重合体Yを分散および/または溶解する第2の液性媒体とを含むものであり、
前記第2のインク中における前記重合体Xの含有率をC[wt%]、前記第2のインク中における前記重合体Yの含有率をC[wt%]としたとき、1.0≦C/C≦6.0の関係を満足することを特徴とする。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【0007】
これにより、明度およびコントラスト比に優れ、かつ、色むら、濃度むらの発生が抑制されたカラーフィルターの製造に好適に用いることのできるインクジェット法に適用されるカラーフィルター用インクセットを提供することができる。
また、基板に対する着色膜の密着性を優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。
【0008】
また、着色膜とは別に、樹脂膜を形成することにより、製造されるカラーフィルターの耐溶剤性、当該カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率等を特に優れたものとすることができる。
また、形成すべき着色部の構成材料を2種のインクに分けて含有させることにより、インクの吐出安定性を向上させることができ、インクジェット法による高速描画が可能となるため、全体としての、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0009】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、前記着色剤として、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド254、および、これらの誘導体のうち少なくとも1種を含むインクを前記第1のインクとして備えることが好ましい。
従来、上記のような着色剤(顔料)を含む場合、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生という問題がより顕著に発生していたが、本発明においては、上記のような着色剤(顔料)を含む場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、上記のような着色剤(顔料)を用いた場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0010】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、前記着色剤として、C.I.ピグメントグリーン58を含むインクを前記第1のインクとして備えることが好ましい。
従来、上記のような着色剤(顔料)を含む場合、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生という問題がより顕著に発生していたが、本発明においては、上記のような着色剤(顔料)を含む場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、上記のような着色剤(顔料)を用いた場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0011】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、前記着色剤として、C.I.ピグメントブルー15:6を含むインクを前記第1のインクとして備えることが好ましい。
従来、上記のような着色剤(顔料)を含む場合、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生という問題がより顕著に発生していたが、本発明においては、上記のような着色剤(顔料)を含む場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、上記のような着色剤(顔料)を用いた場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0012】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、前記第1のインクは、前記第1の液性媒体として、沸点が250℃以上の高沸点成分を含まないものであることが好ましい。
これにより、形成される着色部内に気泡が含まれることをより確実に防止することができ、結果として、カラーフィルターを用いた表示画像のコントラスト等をより確実に優れたものとすることができる。
【0013】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、前記第1の液性媒体は、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、および、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであることが好ましい。
【0014】
これにより、第1のインクの液滴吐出性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。また、第2のインクの付与前に、第1の液性媒体を好適に除去することができ、最終的に形成される着色部内に気泡が含まれることをより確実に防止することができ、カラーフィルターを用いた表示画像のコントラスト等をより確実に優れたものとすることができる。また、形成される着色膜を耐溶剤性に優れたものとすることができるため、第1のインク中に含まれる着色剤が、第2のインクによって形成される樹脂膜中に拡散してしまうことをより確実に防止することができる。このようなことからも、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生をより効果的に防止することができる。また、カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率(VHR)も良好なものとすることができる。
【0015】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、前記第2のインクは、前記第2の液性媒体として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートとともに、メトキシブチルアセテートおよび/またはジプロピレングリコールジメチルエーテルを含むものであることが好ましい。
これにより、第2のインクの液滴吐出性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。また、第1のインクにより形成された着色膜から、着色剤が第2のインク(樹脂膜)中に拡散してしまうのをより確実に防止することができる。また、第2のインクに含まれる重合体(重合体X、重合体Y)を着色膜中に好適に浸透させることができ、形成される着色部における気泡の発生をより確実に防止することができる。このようなことから、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生をより効果的に防止することができるとともに、カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率(VHR)も良好なものとすることができる。
【0016】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、前記第2のインク中におけるジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートの含有率をC[wt%]、前記第2のインク中におけるメトキシブチルアセテートの含有率とジプロピレングリコールジメチルエーテルの含有率との和をC[wt%]としたとき、0.15≦C/C≦0.43の関係を満足することが好ましい。
【0017】
これにより、第2のインクの液滴吐出性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。また、第1のインクにより形成された着色膜から、着色剤が第2のインク(樹脂膜)中に拡散してしまうのをより確実に防止することができる。また、第2のインクに含まれる重合体(重合体X、重合体Y)を着色膜中に好適に浸透させることができ、形成される着色部における気泡の発生をより確実に防止することができる。このようなことから、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生をより効果的に防止することができるとともに、カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率(VHR)も良好なものとすることができる。
【0018】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、複数種の前記第1のインクと、少なくとも1種の前記第2のインクとを備えるものであることが好ましい。
これにより、色再現域の広いカラーフィルターの製造に好適に用いることができる。また、製造されるカラーフィルター全体としての表示画像についての明度、コントラスト比を特に優れたものとすることができ、色むら、濃度むらの発生をより効果的に防止することができる。また、製造されるカラーフィルター全体としての耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
【0019】
本発明のカラーフィルターの製造方法は、多数個のセルが設けられた基板上に、インクをインクジェット方式で吐出して、カラーフィルターを製造する方法であって、
着色剤と、着色剤が分散および/または溶解する第1の液性媒体と、下記式(1)で表される単量体成分m1とカルボキシル基または酸無水物基を有する単量体成分m2と下記式(3)で表される単量体成分m3とを含む重合体Mとを含む第1のインクを前記セル内に吐出する第1のインク付与工程と、
前記セル内に吐出された第1のインクから前記第1の液性媒体を除去し、着色膜を形成する第1の液性媒体除去工程と、
前記第1のインクが吐出された前記セル内に、下記式(11)で表される単量体成分x1と下記式(13)で表される単量体成分x3と下記式(14)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xと、下記式(15)で表される単量体成分y1を含む重合体Yと、前記重合体Xおよび前記重合体Yを分散および/または溶解する第2の液性媒体とを含み、前記重合体Xの含有率をC[wt%]、前記重合体Yの含有率をC[wt%]としたとき、1.0≦C/C≦6.0の関係を満足する第2のインクを吐出する第2のインク付与工程と、
前記セル内に吐出された前記第2のインクから前記第2の液性媒体を除去し、樹脂膜を形成する第2の液性媒体除去工程とを有することを特徴とする。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【0020】
これにより、明度およびコントラスト比に優れ、かつ、色むら、濃度むらの発生が抑制されたカラーフィルターを効率よく製造することができる、インクジェット法を用いたカラーフィルターの製造方法を提供することができる。
また、基板に対する着色膜の密着性を優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。
【0021】
また、1つの着色部を形成するために、インクを分割して付与することにより、誤差拡散によってインク体積量のばらつきが抑えられ、すじむらの発生をより効果的に防止することができる。
また、着色膜とは別に、樹脂膜を形成することにより、製造されるカラーフィルターの耐溶剤性、当該カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率等を特に優れたものとすることができる。
【0022】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記第1の液性媒体除去工程は、230℃以上の温度で、30分以上の加熱処理を行うものであることが好ましい。
これにより、形成される着色部内に気泡が含まれることをより確実に防止することができ、結果として、カラーフィルターを用いた表示画像のコントラスト等をより確実に優れたものとすることができる。
【0023】
本発明のカラーフィルターは、本発明のカラーフィルター用インクセットを用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、インクジェット法を用いて製造され、明度およびコントラスト比に優れ、かつ、色むら、濃度むらの発生が抑制されたカラーフィルターを提供することができる。
また、基板に対する着色膜の密着性を優れたものとすることができ、カラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。
また、着色膜とは別に、樹脂膜を有することにより、カラーフィルターの耐溶剤性、当該カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率等を特に優れたものとすることができる。
【0024】
本発明のカラーフィルターは、本発明の方法を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、インクジェット法を用いて製造され、明度およびコントラスト比に優れ、かつ、色むら、濃度むらの発生が抑制されたカラーフィルターを提供することができる。
また、基板に対する着色膜の密着性を優れたものとすることができ、カラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。
また、着色膜とは別に、樹脂膜を有することにより、カラーフィルターの耐溶剤性、当該カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率等を特に優れたものとすることができる。
【0025】
本発明の画像表示装置は、本発明のカラーフィルターを備えたことを特徴とする。
これにより、明度およびコントラスト比に優れ、かつ、色むら、濃度むらの発生が抑制された画像を安定的に表示することができる画像表示装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の画像表示装置を備えたことを特徴とする。
これにより、明度およびコントラスト比に優れ、かつ、色むら、濃度むらの発生が抑制された画像を安定的に表示することができる電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明のカラーフィルターの製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。
【図3】カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図4】液晶表示装置の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【図8】実施例1のカラーフィルター用インクセットを用いて製造されたカラーフィルターの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図9】比較例2のカラーフィルター用インクセットを用いて製造されたカラーフィルターの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《カラーフィルター用インクセット》
本発明のインクセット(カラーフィルター用インクセット)は、カラーフィルターの製造(カラーフィルターの着色部の形成)に用いられるものであり、特に、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるものである。
【0028】
ところで、近年検討されているインクジェット法を用いたカラーフィルターの製造方法は生産性に優れているものの、インクジェットヘッドを用いて製造されたカラーフィルターでは、より高いコントラスト、より高い明度の画像を表示することが困難であり、表示画像にすじ状のむら(色むら、濃度むら)が発生しやすいという問題があった。
そこで、発明者は、上記のような問題を解決する目的で鋭意研究を行った結果、本発明に至った。すなわち、本発明のカラーフィルター用インクセットは、着色剤と、着色剤が分散および/または溶解する第1の液性媒体と、下記式(1)で表される単量体成分m1とカルボキシル基または酸無水物基を有する単量体成分m2と下記式(3)で表される単量体成分m3とを含む重合体Mとを含み、着色膜の形成に用いられる第1のインクと、第1のインクと同一のセル内に吐出されることにより、樹脂膜を形成する第2のインクとを備え、第2のインクが、下記式(11)で表される単量体成分x1と下記式(13)で表される単量体成分x3と下記式(14)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xと、下記式(15)で表される単量体成分y1を含む重合体Yと、重合体Xおよび重合体Yを分散および/または溶解する第2の液性媒体とを含むものであり、第2のインク中における重合体Xの含有率をC[wt%]、第2のインク中における重合体Yの含有率をC[wt%]としたとき、1.0≦C/C≦6.0の関係を満足するものである。
【0029】
【化13】

【0030】
【化14】

【0031】
【化15】

【0032】
【化16】

【0033】
【化17】

【0034】
【化18】

【0035】
このように、着色剤と重合体Mとを含む第1のインクを用いて着色膜を形成し、重合体Xと重合体Yとを所定の割合で含む第2のインクを用いて樹脂膜をそれぞれ形成し、着色膜および樹脂膜を有する着色部を形成することで、着色部の表面の平坦性、着色膜の表面の平坦性を高いものとすることができるとともに、着色部内に気泡が発生するのを確実に防止することができ、製造されるカラーフィルターの表示画像の明度およびコントラスト比を優れたものとし、かつ、色むら、濃度むらの発生を効果的に防止することができる。また、基板に対する着色膜の密着性を優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。また、着色膜とは別に、樹脂膜を有することにより、製造されるカラーフィルターの耐溶剤性、当該カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率等を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルターの製造に用いるインクは、一般に、プリンターに適用されるもの(民生用)とは全く異なるものであり、高沸点の液体を液性媒体として含み、高い含有率で着色剤、樹脂材料を含むものであるため、粘度が高くなりやすく、インクの液滴の安定吐出が困難であるという問題があるが、本発明のカラーフィルター用インクセットでは、形成すべき着色部の構成材料を2種のインクに分けて含有させることにより、インクの吐出安定性を向上させることができ、インクジェット法による高速描画が可能となるため、全体としての、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0036】
本発明のカラーフィルター用インクセットは、少なくとも1種の第1のインクと、少なくとも1種の第2のインクを備えるものであればよいが、複数種の第1のインクと、少なくとも1種の第2のインクとを備えるものであるのが好ましい。これにより、色再現域の広いカラーフィルターの製造に好適に用いることができる。また、製造されるカラーフィルター全体としての表示画像についての明度、コントラスト比を特に優れたものとすることができ、色むら、濃度むらの発生をより効果的に防止することができる。また、製造されるカラーフィルター全体としての耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
【0037】
また、本発明のカラーフィルター用インクセットは、光の三原色を構成する3色である、赤色の第1のインク(レッドインク)と、緑色の第1のインク(グリーンインク)と、青色の第1のインク(ブルーインク)とを備えるものであるのが好ましい。これにより、色再現域の広いカラーフィルターを容易かつ効率よく製造することができる。以下の説明では、カラーフィルター用インクセットが、「レッドインク(Rインク)」、「グリーンインク(Gインク)」、「ブルーインク(Bインク)」の3種の第1のインクを備える場合について代表的に説明する。
また、カラーフィルター用インクセットは、第2のインクを少なくとも1種備えるものであればよく、複数種備えるものであってもよいが、以下の説明では、カラーフィルター用インクセットが、第2のインクを1種備え、全てのセルに当該第2のインクを用いる場合について代表的に説明する。
【0038】
《第1のインク》
カラーフィルター用インクセットを構成する第1のインクは、着色剤、当該着色剤が分散および/または溶解する液性媒体(第1の液性媒体)等を含むものであり、後述するカラーフィルターの着色膜の形成に用いるものである。上述したように本発明では、着色剤を多く含む第1のインクと、樹脂材料を多く含む第2のインクとを分けて用いることにより、第1のインクおよび第2のインクの粘度を低いものとすることができ、これらのインクの吐出性を優れたものとすることができる。すなわち、着色剤を含む第1のインクに含まれる樹脂材料が少ないことで、着色剤と樹脂材料との相互作用による粘度上昇を防ぐことができる。また、着色部の構成材料としての樹脂材料(重合体Xおよび重合体Y)を後述する第2のインクに含ませることにより、第1のインクにより形成される着色膜の表面の平坦性を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターの表示画像の明度およびコントラスト比を優れたものとし、かつ、色むら、濃度むらの発生を効果的に防止することができる。
【0039】
<着色剤>
カラーフィルターは、通常、異なる複数色の着色部(一般に、RGBに対応する3色の着色部)を有している。そして、カラーフィルター用インクセットを構成する各第1のインクは、それぞれ、形成すべき着色部の色調に応じた着色剤を含むものである。第1のインクを構成する着色剤としては、例えば、各種顔料、各種染料を用いることができるが、第1のインクは、着色剤として顔料を含むものであるのが好ましい。これにより、製造されるカラーフィルターの耐光性、耐熱性等を特に優れたものとすることができる。また、従来のインクジェット法を用いて製造されたカラーフィルターでは、着色剤として顔料を含む場合に、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生という問題がより顕著に発生していたが、本発明においては、着色剤として顔料を含む場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、着色剤として顔料を用いた場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0040】
(レッドインク)
レッドインクは、通常、赤色の着色剤を含むものである。
レッドインク中に含まれる着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2,3,5,17,22,23,38,81,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,52:1,53:1,57:1,63:1,112,122,144,146,149,166,170,176,177,178,179,185,202,207,209,254,101,102,105,106,108,108:1等の顔料や、C.I.ダイレクトレッド2,4,9,23,26,28,31,39,62,63,72,75,76,79,80,81,83,84,89,92,95,111,173,184,207,211,212,214,218,221,223,224,225,226,227,232,233,240,241,242,243,247、C.I.アシッドレッド35,42,51,52,57,62,80,82,111,114,118,119,127,128,131,143,145,151,154,157,158,211,249,254,257,261,263,266,289,299,301,305,319,336,337,361,396,397、C.I.リアクティブレッド3,13,17,19,21,22,23,24,29,35,37,40,41,43,45,49,55、C.I.ベーシックレッド12,13,14,15,18,22,23,24,25,27,29,35,36,38,39,45,46等の染料が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
レッドインクを構成する着色剤としては、上記のようなものが挙げられるが、中でも、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド254、および、これらの誘導体のうち少なくとも1種を含むレッドインクを備えるものであるのが好ましい。従来、上記のような着色剤(顔料)を含む場合、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生という問題がより顕著に発生していたが、本発明においては、上記のような着色剤(顔料)を含む場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、上記のような着色剤(顔料)を用いた場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。
C.I.ピグメントレッド177の誘導体、C.I.ピグメントレッド254の誘導体として、下記式(30)または下記式(31)で示される化合物(誘導体)を含有するものである場合、上述したような効果がさらに顕著に発揮される。
【0042】
【化19】

【0043】
【化20】

【0044】
また、レッドインクは、上記のような着色剤に加え、例えば、ピグメントイエロー1,3,12,13,14,15,16,17,20,24,31,34,35,35:1,37,37:1,42,43,53,55,60,61,65,71,73,74,81,83,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,116,117,119,120,126,127,128,129,138,139,150,151,152,153,154,155,156,157,166,168,175,180,184,185等の顔料を含むものであってもよい。これにより、形成される着色部の色調をより好適に調整することができる。中でも、ピグメントイエロー138,139,150,184,185が好ましく、ピグメントイエロー150がより好ましい。これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
【0045】
レッドインク中における着色剤の含有率は、7.0wt%以上30.0wt%以下であるのが好ましく、7.5wt%以上25.0wt%以上であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクセットを用いて製造されるカラーフィルターにおいて、より高い色濃度を確保することができ、より鮮明な画像表示に用いることができる。また、従来のインクジェット法を用いた製造方法においては、インク中における着色剤の含有率が上記のように比較的高い場合には、吐出安定性が特に低いものとなり、インクの液滴を吐出する際に、飛行曲がりや液滴吐出量の不安定化等の問題が特に発生し易かった。また、従来においては、特に、大型基板(例えば、G5以上)上に液滴吐出をして着色部を形成する場合に、面内の各部位での吐出量ばらつきによる不良品の発生が顕著となり、カラーフィルターの生産性が著しく低下するという問題があった。これに対し、本発明では、比較的高濃度で着色剤を含む場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができ、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等や、個体間での特性のばらつきの発生を確実に防止することができ、優れた生産性で、カラーフィルターを製造することができる。すなわち、第1のインクが、上記のように比較的高濃度の着色剤を含む場合、本発明の効果がより顕著に発揮される。また、製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0046】
(グリーンインク)
グリーンインクは、通常、緑色の着色剤を含むものである。
グリーンインク中に含まれる着色剤としては、特に限定されず、例えば、C.I.ピグメントグリーン7,36,15,17,18,19,26,50、58等の顔料や、C.I.アシッドグリーン16等の染料が挙げられる。
【0047】
グリーンインクを構成する着色剤としては、上記のようなものが挙げられるが、中でも、C.I.ピグメントグリーン58を含むグリーンインクを備えるものであるのが好ましい。従来、上記のような着色剤(顔料)を含む場合、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生という問題がより顕著に発生していたが、本発明においては、上記のような着色剤(顔料)を含む場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、上記のような着色剤(顔料)を用いた場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0048】
また、グリーンインクが、C.I.ピグメントグリーン58を含む場合、さらに、スルホン化された顔料誘導体を副顔料として含むのが好ましい。これにより、第1のインクとしてグリーンインクを用いて形成される着色部の発色性をさらに優れたものとすることができる。
グリーンインクが、C.I.ピグメントグリーン58とスルホン化された顔料誘導体とを含む場合、スルホン化された顔料誘導体として、下記式(32)で示される化合物(誘導体)を含有するのが好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
【0049】
【化21】

【0050】
グリーンインクが、C.I.ピグメントグリーン58と上記のような顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)とを含む場合、顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)の含有率は、特に限定されないが、C.I.ピグメントグリーン58(主顔料):100重量部に対して、10重量部以上80重量部以下であるのが好ましく、30重量部以上70重量部以下であるのがより好ましい。これにより、製造されるカラーフィルター1の表示画像のコントラスト、明度を特に優れたものとすることができる。
【0051】
また、グリーンインクは、上記のような着色剤に加え、例えば、ピグメントイエロー1,3,12,13,14,15,16,17,20,24,31,34,35,35:1,37,37:1,42,43,53,55,60,61,65,71,73,74,81,83,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,116,117,119,120,126,127,128,129,138,139,150,151,152,153,154,155,156,157,166,168,175,180,184,185等の顔料を含むものであってもよい。これにより、形成される着色部の色調をより好適に調整することができる。中でも、ピグメントイエロー138,139,150,184,185が好ましく、ピグメントイエロー150がより好ましい。これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
【0052】
グリーンインク中における着色剤の含有率は、8.0wt%以上25.0wt%以下であるのが好ましく、8.5wt%以上18.0wt%以下であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクセットを用いて製造されるカラーフィルターにおいて、より高い色濃度を確保することができ、より鮮明な画像表示に用いることができる。また、従来のインクジェット法を用いた製造方法においては、インク中における着色剤の含有率が上記のように比較的高い場合には、吐出安定性が特に低いものとなり、インクの液滴を吐出する際に、飛行曲がりや液滴吐出量の不安定化等の問題が特に発生し易かった。また、従来においては、特に、大型基板(例えば、G5以上)上に液滴吐出をして着色部を形成する場合に、面内の各部位での吐出量ばらつきによる不良品の発生が顕著となり、カラーフィルターの生産性が著しく低下するという問題があった。これに対し、本発明では、比較的高濃度で着色剤を含む場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができ、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等や、個体間での特性のばらつきの発生を確実に防止することができ、優れた生産性で、カラーフィルターを製造することができる。すなわち、第1のインクが、上記のように比較的高濃度の着色剤を含む場合、本発明の効果がより顕著に発揮される。また、製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0053】
(ブルーインク)
ブルーインクは、通常、青色の着色剤を含むものである。
ブルーインク中に含まれる着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,17:1,18,27,28,29,35,36,60,80等の顔料や、C.I.アシッドブルー9,45,80,83,90,185等の染料が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
ブルーインクを構成する着色剤としては、上記のようなものが挙げられるが、中でも、C.I.ピグメントブルー15:6を含むブルーインクを備えるものであるのが好ましい。従来、上記のような着色剤(顔料)を含む場合、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生という問題がより顕著に発生していたが、本発明においては、上記のような着色剤(顔料)を含む場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、上記のような着色剤(顔料)を用いた場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。
また、ブルーインクが、C.I.ピグメントブルー15:6を含む場合、さらに、C.I.ピグメントバイオレット23を含むのが好ましい。これにより、第1のインクとしてブルーインクを用いて形成される着色部の発色性をさらに優れたものとすることができる。
【0055】
ブルーインク中における着色剤の含有率は、6.0wt%以上20.0wt%以下であるのが好ましく、6.5wt%以上15.0wt%以下であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター製造用の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)からの、ブルーインクの吐出性を優れたものとしつつ、製造されるカラーフィルターにおいて、十分な色濃度を確保することができ、色再現範囲を広いものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターにおいて、異なる色の着色部間における色濃度の均一性を特に優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。
【0056】
<第1の液性媒体>
第1の液性媒体(第1の液状媒質)は、上述したような着色剤を、分散および/または溶解する機能を有するものである。すなわち、第1の液性媒体は、分散媒および/または溶媒として機能するものである。そして、通常、第1の液性媒体は、カラーフィルターを製造する過程において、その大部分が除去されるものである。
【0057】
第1の液性媒体を構成する液体としては、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ヒドロキシケトン、炭酸ジエステル、環状アミド化合物等を用いることができ、中でも、〔1〕多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等)の縮合物としてのエーテル(多価アルコールエーテル)や、多価アルコールまたは多価アルコールエーテルのアルキルエーテル(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、エステル(例えば、ホルメート、アセテート、プロピオネート等)、アセテート類、〔2〕多価カルボン酸(例えば、こはく酸、グルタル酸等)のエステル(例えば、メチルエステル等)、〔3〕分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有する化合物(ヒドロキシ酸)のエーテル、エステル等、〔4〕多価アルコールとホスゲンとの反応で得られるような化学構造を有する炭酸ジエステルが好ましい。
【0058】
中でも、第1の液性媒体は、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、および、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであることが好ましい。これにより、第1のインクの液滴吐出性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。また、第2のインクの付与前に、第1の液性媒体を好適に除去することができ、形成される着色膜を耐溶剤性に優れたものとすることができるため、第1のインク中に含まれる着色剤が、第2のインクによって形成される樹脂膜中に拡散してしまうことをより確実に防止することができる。その結果、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生をより効果的に防止することができるとともに、カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率(VHR)も良好なものとすることができる。
【0059】
また、第1のインクは、第1の液性媒体として、沸点が250℃以上の高沸点成分を含まないものであるのが好ましい。これにより、形成される着色部内に気泡が含まれることをより確実に防止することができ、結果として、カラーフィルターを用いた表示画像のコントラスト等をより確実に優れたものとすることができる。
また、第1のインクにおける第1の液性媒体の含有率(複数種の成分を含む場合は、これらの含有率の総和)は、60wt%以上91wt%以下であるのが好ましく、65wt%以上90wt%以下であるのがより好ましい。第1の液性媒体の含有率が前記範囲内の値であると、第1のインクの液滴吐出ヘッドからの吐出性を特に優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターの着色膜の厚さを確実に均一にでき、各部位での色むら、濃度むら等をより効果的に抑制することができるとともに、個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターにおいて、十分な色濃度を確保することができ、色再現範囲を広いものとすることができる。
【0060】
<重合体M>
第1のインクは、単量体成分として、上記式(1)で表される単量体成分m1とカルボキシル基または酸無水物基を有する単量体成分m2と上記式(3)で表される単量体成分m3とを含む重合体Mを含むものである。
このような重合体Mを含むことにより、第1のインクの吐出安定性、第1のインクの保存安定性等を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって安定的にカラーフィルターを製造することができ、結果として、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。また、第1のインクが重合体Mを含むことにより、第2のインクを付与する前に形成される着色膜の耐溶剤性を特に優れたものとすることができ、第1のインク中に含まれる着色剤が、第2のインクによって形成される樹脂膜中に拡散してしまうことをより確実に防止することができるとともに、第1のインクを用いて形成される着色膜は、平坦性に特に優れたものとなる。また、第1のインクが重合体Mを含むことにより、第1のインクを用いて形成される着色膜と、第2のインク中に含まれる重合体Xおよび重合体Yとの親和性やこれらの硬化物との親和性を優れたものとすることができ、最終的に形成される着色部に、気泡が含まれてしまうことを効果的に防止することができる。このようなことから、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生をより効果的に防止することができる。また、カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率(VHR)も良好なものとすることができる。また、着色膜の基板に対する密着性を優れたものとすることができ、カラーフィルターの耐久性を十分に優れたものとすることができる。また、第1のインクの長期保存性(第1のインクの寿命)が非常に優れたものとなり、大量生産した第1のインクの作り置きによる品質の低下等の問題の発生が効果的に防止され、カラーフィルターの製造に際して第1のインクの交換頻度を減らすことができるため、カラーフィルターの生産性、製造されるカラーフィルターの信頼性を優れたものとすることができる。
なお、重合体Mは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。
【0061】
(単量体成分m1)
重合体Mは、上記式(1)で表される単量体成分m1、すなわち、ブロックされたイソシアネート基(以下、「ブロックイソシアネート基」ともいう)を有する化合物を単量体成分として含有してなるものである。なお、第1のインクを構成する重合体Mは、分子内に、上記一般式(1)で表される単量体成分m1を複数種含むものであってもよい。
【0062】
式(1)で表される単量体成分m1において、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1以上8以下の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示す。Rはイソシアネート基のブロック剤RHの残基を示す。
における炭素数1以上8以下の2価の飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状の2価の飽和脂肪族炭化水素基(アルキレン基)が挙げられるが、エチレン、トリメチレン、プロピレン基等の炭素数2以上4以下の2価の飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0063】
イソシアネート基のブロック剤RHとしては、例えば、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、メチルイソブチルケトキシム、ジエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム系ブロック剤;3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール系ブロック剤;メタノール、エタノール等のアルコール系ブロック剤;フェノール、クレゾール等のフェノール系ブロック剤;ブチルメルカプタン等のメルカプタン系ブロック剤;アセトアニリド、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタム等の酸アミド系ブロック剤;マロン酸ジメチル、アセト酢酸メチル等の活性メチレン系ブロック剤;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;尿素系ブロック剤;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸系ブロック剤;ジフェニルアミン、アニリン等のアミン系ブロック剤;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等のイミン系ブロック剤等が挙げられる。
イソシアネート基のブロック剤としては、オキシム系ブロック剤、ピラゾール系ブロック剤が好ましく、下記式(5)で表されるものがより好ましい。
【0064】
【化22】

【0065】
式(5)中のRおよびRにおける炭素数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状アルキル基が挙げられるが、メチル、エチル、プロピル基等の炭素数1以上4以下の直鎖状または分岐鎖状アルキル基が好ましい。RおよびRが互いに結合して隣接する炭素原子とともに結合する環としては、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の3〜12員程度(好ましくは5または6員)のシクロアルカン環等が挙げられる。
【0066】
式(1)で表される単量体成分m1の具体例としては、メタクリル酸2−[O−(1′−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル(=2−(1−メチルプロピリデンアミノオキシカルボニルアミノエチル)メタクリレート)(下記式(6)で表されるもの)、メタクリル酸2−(3,5−ジメチルピラゾール−1−イル)カルボニルアミノエチル(下記式(7)で表されるもの)等が挙げられる。
【0067】
【化23】

【0068】
【化24】

【0069】
重合体M中における単量体成分m1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、1wt%以上99wt%以下(例えば10wt%以上95wt%以下)であるのが好ましく、20wt%以上90wt%以下であるのがより好ましく、25wt%以上88wt%以下であるのがさらに好ましい。なお、重合体Mが複数種の単量体成分m1を含むものである場合、当該複数種の単量体成分m1の含有率の和が上記のような条件を満足するのが好ましい。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分m1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分m1を含有しているのが好ましい。
【0070】
(単量体成分m2)
重合体Mは、カルボキシル基または酸無水物基を有する単量体成分m2を単量体成分として含有してなるものである。なお、第1のインクを構成する重合体Mは、分子内に複数種の単量体成分m2を含むものであってもよい。
このような単量体成分m2を重合体M中に単量体成分として含有することにより、基板上への第1のインクの濡れ広がりを良好なものとすることができ、気泡の混入等が確実に防止され、基板との密着性に優れた着色膜を好適に形成することができる。また、単量体成分m2を単量体成分として含有することにより、第1のインクの長期保存性等を特に優れたものとすることができる。
【0071】
単量体成分m2としては、不飽和カルボン酸またはその酸無水物が挙げられる。単量体成分m2の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等)等が挙げられ、中でも、アクリル酸、メタクリル酸(下記式(2)で表されるもの)が特に好ましい。
【0072】
【化25】

【0073】
重合体M中における単量体成分m2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、0.5wt%以上98wt%以下(例えば2.5wt%以上70wt%以下)であるのが好ましく、3wt%以上50wt%以下であるのがより好ましく、5wt%以上40wt%以下であるのがさらに好ましい。重合体M中における単量体成分m2の含有率が前記範囲内の値であると、上述した単量体成分m1や後に詳述する単量体成分m3等の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体M中における単量体成分m2の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分m2を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体M中における単量体成分m2の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分m1、m3等の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。なお、重合体Mが複数種の単量体成分m2を含むものである場合、当該複数種の単量体成分m2の含有率の和が上記のような条件を満足するのが好ましい。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分m2の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分m2を含有しているのが好ましい。
【0074】
(単量体成分m3)
重合体Mは、上記式(3)で表される単量体成分m3((メタ)アクリル酸エステル)を単量体成分として含有してなるものである。なお、第1のインクを構成する重合体Mは、分子内に、上記一般式(3)で表される単量体成分m3を複数種含むものであってもよい。
【0075】
このような単量体成分m3を重合体M中に単量体成分として含有することにより、第1のインクを用いて形成される着色膜の平坦性を高いものとすることができる。また、単量体成分m3を重合体M中に単量体成分として含有することにより、第1のインクの吐出安定性を優れたものとすることができる。また、単量体成分m3を重合体M中に単量体成分として含有することにより、第1のインクの保存安定性(長期保存性)等を優れたものとすることができる。
【0076】
における炭素数16以上25以下の炭化水素基としては、例えば、ヘキサデシル(セチル)、ヘプタデシル、オクタデシル(ステアリル)、ノナデシル、イコシル、ドコシル(ベヘニル)基等のアルキル基;10−シクロヘキシルデシル、12−シクロヘキシルドデシル、14−シクロヘキシルテトラデシル、16−シクロヘキシルヘキサデシル基等の脂環式炭化水素基とアルキル基とが結合した基;10−フェニルデシル、12−フェニルドデシル、14−フェニルテトラデシル、16−フェニルヘキサデシル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0077】
炭素数16以上25以下の炭化水素基が有していてもよい炭化水素基置換オキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基(例えば、炭素数1以上10以下のアルコキシ基);フェノキシ基等のアリールオキシ基;シクロヘキシルオキシ基、ジシクロペンタニルオキシ基等の脂環式炭化水素基置換オキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等の炭素数1以上15以下(好ましくは、炭素数1以上12以下)の炭化水素基置換オキシ基等が挙げられる。
単量体成分m3の具体例としては、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0078】
上記のように、重合体Mを構成する単量体成分m3が有する炭化水素基(炭化水素基置換オキシ基を有していてもよい)の炭素数(以下、Rの炭素数ともいう)は、16以上25以下であるが、特に、16以上22以下であるのが好ましく、16以上20以下であるのがより好ましい。これにより、上述した効果は、さらに顕著に発揮される。これに対し、Rの炭素数が前記下限値未満である場合、または、前記上限値を超える場合には、上述したような優れた効果が得られない。このように、重合体Mは、所定の炭素数を有する基(R)を備えた単量体成分(単量体成分m3)を含む点に大きな一つの特徴を有するものである。
【0079】
重合体M中における単量体成分m3の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、0.5wt%以上98wt%以下(例えば2.5wt%以上70wt%以下)であるのが好ましく、3wt%以上50wt%以下であるのがより好ましく、5wt%以上40wt%以下であるのがさらに好ましい。重合体M中における単量体成分m3の含有率が前記範囲内の値であると、上述した単量体成分m1、m2等の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体M中における単量体成分m3の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分m3を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体M中における単量体成分m3の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分m1、m2等の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。なお、重合体Mが複数種の単量体成分m3を含むものである場合、当該複数種の単量体成分m3の含有率の和が上記のような条件を満足するのが好ましい。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分m3の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分m3を含有しているのが好ましい。
【0080】
重合体Mにおける単量体成分m1の比率(Cm1[wt%])と単量体成分m2の比率(Cm2[wt%])は、以下のような関係を満足するのが好ましい。すなわち、Cm1/Cm2は、2/98以上98/2以下であるのが好ましく、20/80以上95/5以下であるのがより好ましく、40/60以上95/5以下であるのがさらに好ましい。
また、重合体Mにおける単量体成分m1の比率(Cm1[wt%])と単量体成分m3の比率(Cm3[wt%])は、以下のような関係を満足するのが好ましい。すなわち、Cm1/Cm3は、2/98以上98/2以下であるのが好ましく、20/80以上95/5以下であるのがより好ましく、40/60以上95/5以下であるのがさらに好ましい。
重合体Mとしては、例えば、下記式(8)で表されるものがある。
【0081】
【化26】

【0082】
また、重合体Mは、上述した単量体成分m1、m2およびm3以外の成分を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体成分の化学構造に由来する効果も得ることができる。このような成分としては、例えば、以下に述べるような単量体成分m4、単量体成分m5、単量体成分m6、単量体成分m7等が挙げられる。
【0083】
(単量体成分m4)
重合体Mは、下記式(4)で表される単量体成分m4((メタ)アクリル酸エステル)を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
【0084】
【化27】

【0085】
重合体Mが単量体成分m4を含むことにより、第1のインクを構成する第1の液性媒体が親水性の高い場合であっても、第1のインク中における重合体Mの溶解性を優れたものとすることができ、第1のインクを用いて形成される着色膜の透明性を優れたものとすることができる。
単量体成分m4において、Rは、炭化水素基置換オキシ基を有していてもよい炭素数1以上15以下の炭化水素基を示すが、当該炭化水素基の炭素数は、1以上12以下であるのが好ましい。Rで示される炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル基等のアルキル基;シクロヘキシル、ジシクロペンタニル、イソボルニル基等の脂環式炭化水素基;フェニル基等のアリール基;ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;これらが2以上結合した基等が挙げられる。
【0086】
炭素数1以上15以下の炭化水素基が有していてもよい炭化水素基置換オキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基(例えば、炭素数1以上10以下のアルコキシ基);フェノキシ基等のアリールオキシ基;シクロヘキシルオキシ基、ジシクロペンタニルオキシ基等の脂環式炭化水素基置換オキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等の炭素数1以上15以下(好ましくは、炭素数1以上12以下)の炭化水素基置換オキシ基等が挙げられる。
【0087】
単量体成分m4の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0088】
上記のように、単量体成分m4が有する炭化水素基(炭化水素基置換オキシ基を有していてもよい)の炭素数(以下、Rの炭素数ともいう)は、1以上15以下であるが、特に、1以上8以下であるのが好ましく、1以上4以下であるのがより好ましい。これにより、上述した効果は、さらに顕著に発揮される。
上記のような単量体成分m4を含む重合体Mとしては、例えば、下記式(9)で表されるものがある。
【0089】
【化28】

【0090】
(単量体成分m5)
重合体Mは、芳香族ビニル化合物である単量体成分m5を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
重合体Mが単量体成分m5を含むことにより、第1のインクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、第1のインクを用いて形成される着色膜は、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が特に生じにくいものとなる。
単量体成分m5の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル等が挙げられる。
【0091】
(単量体成分m6)
重合体Mは、ヒドロキシル基含有化合物である単量体成分m6を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
単量体成分m6の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物、上記多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物やエチレンオキサイド、もしくはプロピレンオキサイドを開環重合したヒドロキシル基含有化合物等が挙げられる。
【0092】
(単量体成分m7)
重合体Mは、3〜5員の環状エーテル基を有するビニル化合物である単量体成分m7を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
単量体成分m7(3〜5員の環状エーテル基を有するビニル化合物)には、オキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物、オキセタン環(オキセタニル基)含有重合性不飽和化合物、オキソラン環(オキソラニル基)含有重合性不飽和化合物が含まれる。
重合体Mが単量体成分m7を含むことにより、第1のインクを用いて形成される着色膜の耐溶剤性や、基板に対する密着性等の更なる向上を図ることができる。
【0093】
オキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物としては、例えば、オキシラニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−オキシラニルエチル(メタ)アクリレート、2−グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート等のオキシラン環(単環)を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体等);3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の3,4−エポキシシクロヘキサン環等のエポキシ基含有脂環式炭素環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体等);5,6−エポキシ−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(メタ)アクリレート等の5,6−エポキシ−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体等);エポキシ化ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート[3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−9−イル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(メタ)アクリレート、またはこれらの混合物]、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート[2−(3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−9−イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、またはこれらの混合物]、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシブチル(メタ)アクリレート、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシヘキシル(メタ)アクリレート等の3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体等)等が挙げられる。他のオキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物として、エポキシ基を含むビニルエーテル化合物、エポキシ基を含むアリルエーテル化合物、エポキシ基を含む芳香族ビニル化合物等を用いることもできる。エポキシ基を含む芳香族ビニル化合物としては、4−ビニルベンジルグリシジルエーテル、4−ビニルベンジルオキシラン、4−ビニルフェネチルオキシラン等のスチレン誘導体が挙げられる。
【0094】
オキセタン環(オキセタニル基)含有重合性不飽和化合物としては、例えば、オキセタニル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2−(3−メチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−エチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2−[(3−メチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、2−[(3−エチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、3−[(3−メチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3−エチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレートや、オキセタニル基を含むビニルエーテル化合物、オキセタニル基を含むアリルエーテル化合物等が挙げられる。
オキソラン環(オキソラニル基)含有重合性不飽和化合物としては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートや、オキソラニル基を含むビニルエーテル化合物、オキソラニル基を含むアリルエーテル化合物等が挙げられる。
【0095】
第1のインクを構成する重合体Mが、上述したような単量体成分m7を含むものである場合、3〜5員の環状エーテル基(オキシラン環(エポキシ基)、オキセタン環(オキセタニル基)、オキソラン環(オキソラニル基))は硬化性基として作用する。3〜5員の環状エーテル基は、主に耐薬品性(耐溶剤性、耐アルカリ性等)の向上に寄与する。
重合体Mが、単量体成分m1、m2、m3に加え、さらに、単量体成分m4、m5、m6およびm7よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体成分を含むものである場合、重合体M中における単量体成分m4、m5、m6およびm7の含有率の総和は、60wt%以下であるのが好ましく、50wt%以下であるのがより好ましく、40wt%以下であるのがさらに好ましい。これにより、上述した単量体成分m1、m2、m3を含むことによる効果を十分に発揮させつつ、単量体成分m4、m5、m6、m7を含むことによる効果が発揮される。
【0096】
重合体Mの重量平均分子量は、500以上100000以下であるのが好ましく、1000以上40000以下であるのがより好ましく、2000以上30000以下であるのがさらに好ましい。これにより、カラーフィルター用インクセットを用いて製造されるカラーフィルターについてのコントラスト比、明度を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。また、第1のインクの保存安定性(長期安定性)、吐出安定性、形成される着色膜の耐溶剤性等を優れたものとすることができる。
【0097】
また、重合体Mの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1以上3以下であるのが好ましい。
第1のインク中における重合体Mの含有率は、0.6wt%以上9.0wt%以下であるのが好ましく、0.9wt%以上7.5wt%以下であるのがより好ましい。これにより、他の成分の機能を十分に発揮させつつ、重合体Mを含むことによる効果をより効果的に発揮させることができる。
【0098】
<その他の成分>
第1のインクは、着色剤と、第1の液性媒体と、重合体Mとを含むものであればよいが、さらに、上記以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。
このような成分としては、例えば、各種架橋剤、熱酸発生剤、光酸発生剤、各種重合開始剤、酸架橋剤、界面活性剤、増感剤、光安定剤、各種分散剤、発光材料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、各種重合促進剤、各種光安定化剤、ガラス、ジルコニア、アルミナ、酸化チタン等のセラミックス、密着促進剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を用いることができる。
【0099】
レベリング剤は、第1のインクの表面張力を低下させることにより、セル内に付与された第1のインクの表面を平滑化し、着色膜を平坦化させるものである。このため、第1のインクがレベリング剤を有することにより、上述したような重合体Mの効果と相乗的に作用し、セル内の第1のインクの表面をより平坦なものとすることができる。このため、形成される着色膜はより平坦なものとなる。
【0100】
レベリング剤としては、アクリル系レベリング剤、ビニルエーテル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素−ケイ素系レベリング剤、アセチレングリコール系レベリング剤等が挙げられる。このようなレベリング剤の中でも、アクリル系レベリング剤、ビニルエーテル系レベリング剤、アセチレングリコール系レベリング剤を用いることが好ましい。特に、LHP−95、LHP−90、LF1970、サーフィノールDF−58から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。これにより、形成される着色膜の表面がより平坦化され、得られるカラーフィルターは、各部位での色むら、濃度むらが特に小さいものとなる。
【0101】
酸化防止剤は、第1のインクの酸化等による変質を防止するとともに、第1のインクによって形成された着色膜内において着色剤等の熱や光等による劣化を防止することができる。
酸化防止剤としては、各種リン系酸化防止剤、各種イオウ系酸化防止剤、各種ヒンダードフェノール系酸化防止剤、各種ヒンダーアミン系酸化防止剤等の各種酸化防止剤等が挙げられる。この中でも、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤のうち少なくとも一種を用いることが好ましく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることがより好ましく、TINUVIN152を用いることがさらに好ましい。このような酸化防止剤は、好適に第1のインク、着色膜の変質を効果的に防止するとともに、形成される着色膜において、色、明度、コントラスト比等の光学特性に影響しにくいものである。
【0102】
また、第1のインクは、重合体M以外の重合体成分(以下、「その他の重合体成分」という)を含むものであってもよいが、その他の重合体成分を含む場合、第1のインク中に含まれるその他の重合体成分は、3.0wt%以下であるのが好ましく、2.0wt%以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果を確実に発揮させることができる。
【0103】
第1のインク中に含まれる固形分の含有率をC[wt%]、第1のインク中に含まれる着色剤の含有率をC[wt%]としたとき、0.40≦C/C≦0.90の関係を満足するのが好ましく、0.45≦C/C≦0.85の関係を満足するのがより好ましい。これにより、第1のインクの吐出安定性を特に優れたものとしつつ、第1のインクを用いて形成される着色膜の平坦性を特に優れたものとすることができる。
【0104】
第1のインクの25℃における粘度(振動式粘度計を用いて測定される粘度)は、特に限定されないが、3mPa・s以上12mPa・s以下であるのが好ましく、4mPa・s以上11mPa・s以下であるのがより好ましい。第1のインクの粘度が前記範囲内の値であると、インクジェット方式による液滴吐出において、吐出される第1のインクの液適量のばらつきを特に小さいものとしつつ、液滴吐出ヘッドにおける目詰まりの発生等をより確実に防止することができる。なお、第1のインク(後述する第2のインクも同様)の粘度の測定は、例えば、振動式粘度計を用いて行うことができ、特に、JIS Z8809に準拠して行うことができる。
【0105】
《第2のインク》
次に、カラーフィルター用インクセットを構成する第2のインクについて説明する。
第2のインクは、上記式(11)で表される単量体成分x1と上記式(13)で表される単量体成分x3と上記式(14)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xと、上記式(15)で表される単量体成分y1を含む重合体Yとを所定の比率で含み、さらに、重合体Xおよび重合体Yを分散および/または溶解する第2の液性媒体を含むものである。このような、第2のインクを用いることで、上述した第1のインクを用いて形成される着色膜の表面に、硬化性樹脂材料(重合体Xおよび重合体Y)の硬化物で構成された樹脂膜を形成することができ、着色部の表面(樹脂膜の表面)を平坦性に優れたものとすることができる。また、第2のインクが重合体Xと重合体Yとを所定の割合で含むことにより、上述した第1のインクを用いて形成される着色膜と、第2のインクとの親和性や、第2のインクを用いて形成される樹脂膜との親和性を優れたものとすることができ、最終的に形成される着色部に、気泡が含まれてしまうことを効果的に防止することができる。このようなことから、製造されるカラーフィルターの表示画像を、明度およびコントラスト比に優れ、色むら、濃度むらの発生が抑制されたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。また、着色膜とは別に、樹脂膜を形成することにより、製造されるカラーフィルターの耐溶剤性、当該カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率等を特に優れたものとすることができる。また、形成すべき着色部の構成材料を2種のインクに分けて含有させることにより、インクの吐出安定性を向上させることができ、インクジェット法による高速描画が可能となるため、全体としての、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0106】
上記のような効果は、第1のインクにより形成される着色膜中の着色剤の含有率よりも、第2のインクにより形成される樹脂膜中の着色剤の含有率を低いものとすることにより得られるものであるが、特に、第2のインクとして実質的に着色剤を含まないものを用いること、樹脂膜中に実質的に着色剤を含まないものとすることにより、より顕著に発揮される。
【0107】
上述したように本発明では、第2のインク中における重合体Xの含有率をC[wt%]、第2のインク中における重合体Yの含有率をC[wt%]としたとき、1.0≦C/C≦6.0の関係を満足するが、1.8≦C/C≦5.5の関係を満足するのが好ましく、2.5≦C/C≦5.0の関係を満足するのがより好ましい。これにより、上述したような効果はより顕著に発揮される。
【0108】
以下、第2のインクの構成成分について詳細に説明する。
上記のように、第2のインクは、硬化性樹脂材料として重合体Yおよび重合体Yを含む。
[重合体X]
重合体Xは、上記式(11)で表される単量体成分x1と上記式(13)で表される単量体成分x3と上記式(14)で表される単量体成分x4とを含むものである。重合体Xとしては、例えば、下記式(17)で表されるものがある。
【0109】
【化29】

【0110】
第2のインクがこのような重合体Xを含むことにより、形成される着色部の表面の平坦性を高いものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクセットを用いて製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むらの発生やコントラスト、明度の低下等を防止することができる。また、第2のインクを構成する硬化性樹脂材料(重合体Xおよび重合体Yを含む混合物)全体としての、所定温度以下では実質的に硬化反応を進行させず、それ以上の温度で効率よく硬化反応を進行させることができる特性(以下、「硬化反応のスイッチング特性」ともいう)等を十分に優れたものとしつつ、カラーフィルター用インクセットを用いて形成される着色部の耐溶剤性等を特に優れたものとすることができ、カラーフィルターの耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率(VHR)を良好なものとすることができる。また、重合体Xを含むことにより、重合体Yとの親和性、相溶性を十分に優れたものとすることができるため、重合体Xの特長を十分に発揮させつつ、第2のインクの吐出安定性を優れたものとし、第2のインクを用いて形成される樹脂膜の透明性を高いとすることができる。
なお、重合体Xは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Xが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分x1、x3およびx4を含有するものである。
【0111】
(単量体成分x1)
重合体Xは、上記式(11)で表される単量体成分x1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、第2のインクの保存時や液滴吐出時等における硬化性樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う硬化処理においては、硬化性樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。すなわち、単量体成分x1を含有することにより、硬化性樹脂材料についての硬化反応のスイッチング特性を優れたものとすることができる。また、単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、例えば、第2のインクの長期保存性、吐出安定性を優れたものとすることができる。また、単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、形成される樹脂膜(着色部)の硬度等を優れたものとすることができる。
【0112】
重合体X中における単量体成分x1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、30wt%以上90wt%以下であるのが好ましく、40wt%以上80wt%以下であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x1の含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する単量体成分x2、x3、x4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体X中における単量体成分x1の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分x1を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体X中における単量体成分x1の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分x2、x3、x4の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。また、重合体Xの高温での反応速度が低下し、十分に優れた生産性でカラーフィルターを製造するのが困難となる。なお、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分x1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x1を含有しているのが好ましい。
【0113】
(単量体成分x2)
重合体Xは、下記式(12)で表される単量体成分x2を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
【0114】
【化30】

【0115】
このような単量体成分x2を単量体成分として含有すること(特に、上述した単量体成分x1や後に詳述する単量体成分x3とともに含有すること)により、第2のインクの保存時や液滴吐出時等における硬化性樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う硬化処理においては、硬化性樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。特に、加熱環境下での硬化処理において、硬化性樹脂材料の重合反応の立ち上がりをより良好なものとすることができるとともに、継続的に重合反応の進行させることができる。また、単量体成分x2を単量体成分として含有することにより、形成される樹脂膜(着色部)の硬度等を特に優れたものとすることができる。
単量体成分x2を単量体成分として含有する重合体Xとしては、例えば、下記式(19)で表されるものがある。
【0116】
【化31】

【0117】
重合体X中における単量体成分x2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、5wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、10wt%以上50wt%以下であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1および後に詳述する単量体成分x3、x4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体X中における単量体成分x2の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分x2を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体X中における単量体成分x2の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分x1、x3、x4の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。また、重合体Xの比較的低温での反応性が増し、第2のインクの保存安定性が低下する傾向が現れる。なお、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分x2の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x2を含有しているのが好ましい。
【0118】
(単量体成分x3)
重合体Xは、上記式(13)で表される単量体成分x3を単量体成分として含有してなるものである。
重合体Xが単量体成分x3を単量体成分として含有することにより、形成される着色部(樹脂膜)の耐薬品性、耐溶剤性等を特に優れたものとすることができる。これにより、硬化処理の後に、薬品塗布や洗浄等の後処理を行った場合であっても、これらによる悪影響の発生を確実に防止することができる。
【0119】
また、単量体成分x3は、重合体Xにおいて、上述した単量体成分x1と同様に、比較的低い温度(例えば、100℃以下)での反応性が十分に低いのに対し、硬化処理で施す熱処理のような加熱環境下では、十分な反応性を示すものである。このため、第2のインクの保存時や液滴吐出時等における硬化性樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う硬化処理においては、硬化性樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。
また、単量体成分x3を単量体成分として含有することにより、例えば、第2のインクの長期保存性、吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。
【0120】
重合体X中における単量体成分x3の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、2wt%以上20wt%以下であるのが好ましく、3wt%以上15wt%以下であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x3の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1、x2および後に詳述する単量体成分x4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体X中における単量体成分x3の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分x3を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体X中における単量体成分x3の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分x1、x2、x4の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。また、第2のインクを用いて形成される樹脂膜が硬くなりすぎ、温度変化に伴う基板等の変形に対する追従性が低下する傾向が現れる。なお、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分x3の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x3を含有しているのが好ましい。
【0121】
(単量体成分x4)
重合体Xは、上記式(14)で表される単量体成分x4を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分x4を単量体成分として含有することにより、着色部(樹脂膜)の形成時、第2のインクから第2の液性媒体を除去する際に、固形分濃度の上昇に伴って第2のインクのチキソトロピック性および粘度が上昇し、形成される着色部(樹脂膜)の表面に不本意な凹凸が生じることを確実に防止することができる。
【0122】
また、単量体成分x4は、その末端に水酸基を有している。このような構造を有することにより、比較的低い温度(例えば、100℃以下)における反応性を十分に低いものとしつつ、硬化処理のような加熱環境下における反応性を高めることができる。これにより、第2のインクの保存時や液滴吐出時等における硬化性樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う硬化処理においては、硬化性樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。
また、単量体成分x4を単量体成分として含有することにより、例えば、第2のインクの長期保存性、吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。
【0123】
重合体X中における単量体成分x4の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、2wt%以上20wt%以下であるのが好ましく、3wt%以上15wt%以下であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x4の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1、x2、x3の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体X中における単量体成分x4の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分x4を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体X中における単量体成分x4の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分x1、x2、x3の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。また、第2のインクを用いて形成される樹脂膜(着色部)の硬度が低下する傾向が現れる。なお、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分x4の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x4を含有しているのが好ましい。
【0124】
なお、重合体Xは、上述した単量体成分x1、x2、x3、x4以外の単量体成分(その他の単量体成分)を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体成分の化学構造に由来する効果も得ることができる。
重合体Xが、その他の単量体成分(単量体成分x1、x2、x3、x4以外の単量体成分)を含むものである場合、重合体X中におけるその他の単量体成分の含有率(複数種のその他の単量体成分を含む場合にはこれらの含有率の和)は、15wt%以下であるのが好ましく、10wt%以下であるのがより好ましい。
【0125】
重合体Xの重量平均分子量は、1000以上50000以下であるのが好ましく、1200以上10000以下であるのがより好ましく、1500以上5000以下であるのがさらに好ましい。これにより、第2のインクの経時的安定性(長期保存性)、第2のインクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、第2のインクを用いて形成される着色部(樹脂膜)の平坦性をより確実に高いものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
また、重合体Xの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1以上3以下であるのが好ましい。
【0126】
[重合体Y]
重合体Yは、上記式(15)で表される単量体成分y1を含むものである。重合体Yとしては、例えば、下記式(18)で表されるものがある。
【0127】
【化32】

【0128】
このような重合体Yを含むことにより、第2のインクの吐出安定性等を優れたものとしつつ、樹脂膜の隔壁等に対する密着性、耐溶剤性を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターの耐久性、信頼性を優れたものとすることができる。また、カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率(VHR)を良好なものとすることができる。
なお、重合体Yは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Yが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分y1を含有するものである。
【0129】
(単量体成分y1)
重合体Yは、上記式(15)で表される単量体成分y1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分y1を単量体成分として含有することにより、形成される樹脂膜の隔壁等に対する密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0130】
重合体Y中における単量体成分y1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、30wt%以上90wt%以下であるのが好ましく、40wt%以上80wt%以下であるのがより好ましい。重合体Y中における単量体成分y1の含有率が前記範囲内の値であると、例えば、重合体Yが単量体成分として後に詳述する単量体成分y2を含む場合において、当該単量体成分y2の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体Y中における単量体成分y1の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分y1を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体Y中における単量体成分y1の含有率が前記上限値を超えると、例えば、重合体Yが単量体成分として後に詳述する単量体成分y2を含む場合において、相対的に単量体成分y2の含有率が低下し、単量体成分y2の機能が十分に発揮されない可能性がある。また、着色部(樹脂膜)の形成時、第2のインクから第2の液性媒体を除去する際に、固形分濃度の上昇に伴って第2のインクの粘度が上昇する傾向が現れ、形成される着色部(樹脂膜)の表面に不本意な凹凸が生じ易くなる。なお、重合体Yが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分y1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Yが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分y1を含有しているのが好ましい。
【0131】
(単量体成分y2)
重合体Yは、下記式(16)で表される単量体成分y2を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
【0132】
【化33】

【0133】
このような単量体成分y2を単量体成分として含有すること(特に、上述した単量体成分y1とともに含有すること)により、第2のインクの保存時や液滴吐出時等における硬化性樹脂材料の不本意な反応(重合反応)をより確実に防止しつつ、加熱環境下で行う硬化処理においては、硬化性樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。特に、加熱環境下での硬化処理において、硬化性樹脂材料の重合反応の立ち上がりを良好なものとすることができるとともに、継続的に重合反応の進行させることができる。また、単量体成分y2を単量体成分として含有することにより、形成される樹脂膜(着色部)の硬度等を優れたものとすることができる。
【0134】
また、重合体Yが単量体成分y2を含有することにより、前述した重合体Xとの親和性、相溶性を十分に優れたものとすることができる。その結果、第2のインクの吐出安定性を優れたものとすることができ、また、第2のインクを用いて形成される樹脂膜は、透明性に優れ(硬化性樹脂材料の不透明性による光透過率の低下が防止され)、隔壁等に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が生じにくいものとなる。これに対し、単量体成分y2を単量体成分として含有しないと、重合体Xとの親和性、相溶性を十分に優れたものとすることが困難となり、第2のインクは、吐出安定性に劣ったものとなり、また、製造されるカラーフィルターは、色むら等が発生し易く、コントラストや耐久性、信頼性等を十分に優れたものとするのが困難となる可能性がある。
単量体成分y2を単量体成分として含有する重合体Yとしては、例えば、下記式(20)で表されるものがある。
【0135】
【化34】

【0136】
重合体Y中における単量体成分y2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、10wt%以上70wt%以下であるのが好ましく、20wt%以上60wt%以下であるのがより好ましい。重合体Y中における単量体成分y2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分y1の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体Y中における単量体成分y2の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分y2を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体Y中における単量体成分y2の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分y1の含有率が低下し、単量体成分y1の機能が十分に発揮されない可能性がある。また、重合体Yの比較的低温での反応性が増し、第2のインクの保存安定性が低下する傾向が現れる。なお、重合体Yが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分y2の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Yが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分y2を含有しているのが好ましい。
【0137】
なお、重合体Yは、上述した単量体成分y1、y2以外の単量体成分(その他の単量体成分)を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体成分の化学構造に由来する効果も得ることができる。
重合体Yが、その他の単量体成分(単量体成分y1、y2以外の単量体成分)を含むものである場合、重合体Y中におけるその他の単量体成分の含有率(複数種のその他の単量体成分を含む場合にはこれらの含有率の和)は、15wt%以下であるのが好ましく、10wt%以下であるのがより好ましい。
【0138】
重合体Yの重量平均分子量は、1000以上50000以下であるのが好ましく、1200以上10000以下であるのがより好ましく、1500以上5000以下であるのがさらに好ましい。これにより、第2のインクの経時的安定性(長期保存性)、第2のインクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、第2のインクを用いて形成される樹脂膜の平坦性をより確実に高いものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
また、重合体Yの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1以上3以下であるのが好ましい。
【0139】
また、第2のインク中における硬化性樹脂材料(重合体Xおよび重合体Yを含む)の含有率は、2.0wt%以上30.0wt%以下であるのが好ましく、3.0wt%以上28.0wt%以下であるのがより好ましい。これにより、形成される樹脂膜の表面の平坦性をより高いものとしつつ、第2のインクの粘度上昇を抑制して、液滴吐出ヘッドからの第2のインクの吐出性を特に優れたものとすることができる。また、形成される樹脂膜の厚さを容易に調整することができる。
【0140】
また、第2のインクを構成する硬化性樹脂材料は、上述した以外の重合体を含むものであってもよい。例えば、第2のインクは、前述した第1のインクの構成成分として説明した重合体Mを含むものであってもよい。
また、第2のインクは、硬化性樹脂材料に加え、各種熱可塑性樹脂を含むものであってもよい。
【0141】
<第2の液性媒体>
第2の液性媒体(第2の液状媒質)は、上述したような重合体Xおよび重合体Yを、分散および/または溶解する機能を有するものである。すなわち、第2の液性媒体は、分散媒および/または溶媒として機能するものである。そして、通常、第2の液性媒体は、カラーフィルターを製造する過程において、その大部分が除去されるものである。
【0142】
第2の液性媒体を構成する液体としては、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ヒドロキシケトン、炭酸ジエステル、環状アミド化合物等を用いることができ、中でも、〔1〕多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等)の縮合物としてのエーテル(多価アルコールエーテル)や、多価アルコールまたは多価アルコールエーテルのアルキルエーテル(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、エステル(例えば、ホルメート、アセテート、プロピオネート等)、アセテート類、〔2〕多価カルボン酸(例えば、こはく酸、グルタル酸等)のエステル(例えば、メチルエステル等)、〔3〕分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有する化合物(ヒドロキシ酸)のエーテル、エステル等、〔4〕多価アルコールとホスゲンとの反応で得られるような化学構造を有する炭酸ジエステルが好ましい。
【0143】
第2のインクは、上述した中でも、第2の液性媒体として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートとともに、メトキシブチルアセテートおよび/またはジプロピレングリコールジメチルエーテルを含むものであるのが好ましい。これにより、第2のインクの液滴吐出性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。また、第1のインクにより形成された着色膜から、着色剤が第2のインク(樹脂膜)中に拡散してしまうのをより確実に防止することができる。また、第2のインクに含まれる重合体(重合体X、重合体Y)を着色膜中に好適に浸透させることができ、形成される着色部における気泡の発生をより確実に防止することができる。このようなことから、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生をより効果的に防止することができるとともに、カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率(VHR)も良好なものとすることができる。
【0144】
第2のインクがジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートとともに、メトキシブチルアセテートおよび/またはジプロピレングリコールジメチルエーテルを含むものである場合、第2のインク中におけるジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートの含有率をC[wt%]、第2のインク中におけるメトキシブチルアセテートの含有率とジプロピレングリコールジメチルエーテルの含有率との和をC[wt%]としたとき、0.15≦C/C≦0.43の関係を満足するのが好ましく、0.16≦C/C≦0.40の関係を満足するのがより好ましく、0.17≦C/C≦0.35の関係を満足するのがさらに好ましい。これにより、第2のインクの液滴吐出性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。また、第1のインクにより形成された着色膜から、着色剤が第2のインク(樹脂膜)中に拡散してしまうのをより確実に防止することができる。また、第2のインクに含まれる重合体(重合体X、重合体Y)を着色膜中に好適に浸透させることができ、形成される着色部における気泡の発生をより確実に防止することができる。このようなことから、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生をより効果的に防止することができるとともに、カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率(VHR)も良好なものとすることができる。
【0145】
また、第2のインクは、第2の液性媒体として、ジエチレングリコールフェニルエーテルおよび/またはエチレングリコールフェニルエーテルを含むものであってもよい。
第2のインクにおける第2の液性媒体の含有率は、40wt%以上95wt%以下であるのが好ましく、60wt%以上88wt%以下であるのがより好ましい。第2の液性媒体の含有率が前記範囲内の値であると、第2のインクの液滴吐出ヘッドからの吐出性を特に優れたものとし、製造されるカラーフィルターの着色部の厚さの均一性をより高いものとすることができる。このため、得られるカラーフィルターは、各部位での濃度むら、色むらが特に効果的に抑制されたものとなり、また、画像表示装置に用いた際に、特に鮮明な画像を表示できるものとなる。
【0146】
第2の液性媒体の25℃における粘度は、特に限定されないが、1.0mPa・s以上4.0mPa・s以下であるのが好ましく、1.5mPa・s以上3.5mPa・s以下であるのがより好ましい。第2の液性媒体の25℃における粘度が前記範囲内の値であると、第2のインクの液滴吐出ヘッドからの吐出性を特に優れたものとし、製造されるカラーフィルターの着色部の厚さの均一性をより高いものとすることができる。このため、得られるカラーフィルターは、各部位での濃度むら、色むらが特に効果的に抑制されたものとなり、また、画像表示装置に用いた際に、特に鮮明な画像を表示できるものとなる。
【0147】
また、カラーフィルター用インクセットを構成する第2のインクの25℃における粘度は、いずれも、2.0mPa・s以上9.0mPa・s以下であるのが好ましく、3.0mPa・s以上7.0mPa・s以下であるのがより好ましい。これにより、後述するようなインクジェット方式による液滴吐出において、吐出される第2のインクの液滴量のばらつきを特に小さいものとしつつ、液滴吐出ヘッドにおける目詰まりの発生等をより確実に防止することができる。この結果、得られるカラーフィルターは、各着色部の均一性をより高いものとすることができ、画像表示装置に用いた際に、特に鮮明な画像を表示できるものとなる。
【0148】
また、第2のインクは、上述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、第1のインクの構成成分としてのその他の成分で例示したような成分が挙げられる。また、例えば、第2のインクは、着色剤を含むものであってもよいが、含まないものであるのが好ましい。また、第2のインクが着色剤を含む場合、第2のインク中に含まれる着色剤の含有率は、0.5wt%以下であるのが好ましく、0.2wt%以下であるのがより好ましい。
【0149】
《カラーフィルター》
次に、上述したようなカラーフィルター用インクセットを用いて製造されるカラーフィルターの一例について説明する。
図1は、本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、カラーフィルター1は、基板11と、上述したカラーフィルター用インクセットを用いて成形された着色部12とを備えている。着色部12としては、互いに異なる種類のインクを用いて形成された第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cが設けられている。そして、隣接する着色部12の間には、隔壁13が設けられている。なお、第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cは、第2のインクと、互いに異なる種類の第1のインクとを用いて形成されたものであればよいが、以下の説明では、各着色部は、第2のインクに加え、第1の着色部12Aがレッドインクを用いて形成され、第2の着色部12Bがグリーンインクを用いて形成され、第3の着色部12Cがブルーインクを用いて形成された場合について、中心的に説明する。
【0150】
<基板>
基板11は、光透過性を有する板状の部材で、着色部12、隔壁13を保持する機能を有している。
基板11は、実質的に透明な材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター1を透過する光により、より鮮明な画像を形成することができる。
【0151】
また、基板11は、耐熱性、機械的強度に優れたものであるのが好ましい。これにより、例えば、カラーフィルター1の製造時に加わる熱による変形等を確実に防止することができる。このような条件を満足する基板11の構成材料としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ノルボルネン系開環重合体やその水素添加物等が挙げられる。
【0152】
<着色部>
着色部12は、上述したようなカラーフィルター用インクセットを用いて形成されたものである。
各着色部12(第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12C)は、上述したようなカラーフィルター用インクセットを用いて形成されたものである。 各着色部12は、後述する隔壁13により囲まれた領域であるセル14内に設けられている。
【0153】
また、各着色部12は、それぞれ、上記の第1のインクを用いて形成された着色膜121と上記の第2のインクを用いて形成された樹脂膜122とを有している。これにより、カラーフィルター1の表示画像は、明度およびコントラスト比に優れ、かつ、色むら、濃度むらの発生が抑制されたものとなる。また、基板11に対する着色膜121の密着性を優れたものとすることができ、カラーフィルター1の耐久性を優れたものとすることができる。また、着色膜121とは別に、樹脂膜122を有することにより、カラーフィルター1の耐溶剤性、当該カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率等を特に優れたものとすることができる。また、上記のような構成であると、各着色部での着色剤の含有率を好適なものとしつつ、表示画像の色味にほとんど影響を与えない樹脂膜122の厚さを調整することができ、各色の着色部(12A、12B、12C)の厚さを容易かつ確実に均一なものとすることができる。このため、後述するような画像表示装置にこのようなカラーフィルター1を用いた際に、着色部12および隔壁13の基板11に対向する面とは反対の面側に設けられる共通電極が、各着色部12と隔壁13との段差によって、断線するなどの不具合が発生するのを確実に防止することができる。
【0154】
ところで、上記のような共通電極の断線を防止するために、着色部および隔壁と共通電極との間に、透明の樹脂材料からなる平坦化膜を形成し、共通電極の断線を防止することも考えられる。しかしながら、このようなカラーフィルターを画像表示装置に用いた場合、カラーフィルターを光が通過する際に、平坦化膜において光の一部が反射しやすいものとなり、反射を繰り返した光が、他の着色部を透過するものとなる。この結果、反射を繰り返した光が、透過すべき着色部以外の他の着色部を透過するものとなり、得られる画像は、形状、色調が不鮮明となる。これに対し、本発明では、このような問題の発生を確実に防止することができる。
また、着色膜121は、着色部12中において、それぞれ、基板11と接する部分に配されている。このように、基板11に沿って着色膜121が配されることにより、着色膜121は特に平滑なものとなり、カラーフィルター1は、各部位での濃度むら、色むらが特に抑制されたものとなる。
【0155】
第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cは、互いに異なる色のものである。例えば、第1の着色部12Aを赤色フィルター領域(R)、第2の着色部12Bを緑色フィルター領域(G)、第3の着色部12Cを青色フィルター領域(B)とすることができる。そして、一組の異なる色の着色部12A、12B、12Cで1画素を構成している。そして、カラーフィルター1においては、その横方向および縦方向に、着色部12が所定数配置されている。例えば、カラーフィルター1が、ハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1366×768個の画素が配置されており、フルハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1920×1080個の画素が配置されており、スーパーハイビジョン用のカラーフィルターである場合には7680×4320個の画素が配置されている。なお、カラーフィルター1は、例えば、有効領域外に予備の画素を備えたものであってもよい。
【0156】
<隔壁>
隣接する着色部12の間には、隔壁(バンク)13が設けられている。これにより、隣接する着色部12同士が混色してしまうのを確実に防止することができ、その結果、鮮明な画像を確実に表示することができる。
隔壁13は、透明な材料で構成されたものであってもよいが、遮光性を有する材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、コントラストに優れた画像を表示することができる。隔壁(遮光部)13の色は、特に限定されないが、黒色であるのが好ましい。これにより、表示される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
【0157】
隔壁13の高さは、特に限定されないが、着色部12の膜厚とほぼ同じであるのが好ましい。これにより、隣接する着色部12の間での混色を確実に防止することができる。隔壁13の具体的な厚さは、0.1μm以上10μm以下であるのが好ましく、0.5μm以上3.5μm以下であるのがより好ましい。これにより、隣接する着色部12の間での混色を確実に防止することができるとともに、カラーフィルター1を備えた画像表示装置、電子機器における視野角特性を優れたものとすることができる。
【0158】
隔壁13は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、例えば、主として樹脂材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、後述するような方法で、隔壁13を容易に所望の形状を有するものとして形成することができる。また、隔壁13が遮光部としての機能を有するものである場合、その構成材料として、カーボンブラック等の光吸収性の材料を含むものであってもよい。
【0159】
《カラーフィルターの製造方法》
次に、本発明のカラーフィルターの製造方法について説明する。
図2は、カラーフィルターの製造方法の好適な実施形態を示す断面図、図3は、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図である。
本発明のカラーフィルターの製造方法は、上述したような第1のインクを隔壁で囲まれた領域(セル)内に吐出する第1のインク付与工程と、セル内に吐出された第1のインクから第1の液性媒体を除去し、着色膜を形成する第1の液性媒体除去工程と、第1のインクが吐出されたセル内に、上述したような第2のインクを吐出する第2のインク付与工程と、セル内に吐出された第2のインクから第2の液性媒体を除去し、樹脂膜を形成する第2の液性媒体除去工程とを有するものである。これにより、明度およびコントラスト比に優れ、かつ、色むら、濃度むらの発生が抑制されたカラーフィルターを効率よく製造することができる。また、基板に対する着色膜の密着性を優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。また、1つの着色部を形成するために、インクを分割して付与することにより、誤差拡散によってインク体積量のばらつきが抑えられ、すじむらの発生をより効果的に防止することができる。また、着色膜とは別に、樹脂膜を形成することにより、製造されるカラーフィルターの耐溶剤性、当該カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率等を特に優れたものとすることができる。また、第1のインクと第2のインクとを分けてセル内に吐出することにより、各インクの粘度が高くなることを確実に防止することができ、各インクの吐出安定性を優れたものとすることができる。また、画像表示装置に用いた場合、各着色部の厚さが均一であるため、共通電極を設けた際にも、共通電極の断線を確実に防止するものとなり、適正で鮮明な表示が得られるものとなる。
【0160】
特に、本実施形態のカラーフィルターの製造方法は、図2に示すように、基板11を準備する基板準備工程(1a)と、基板11上に隔壁13を形成する隔壁形成工程(1b、1c)と、インクジェット方式により第1のインク21を隔壁13で囲まれた領域(セル)に付与する第1のインク付与工程(1d)と、セル内に吐出された第1のインク21から第1の液性媒体を除去する第1の液性媒体除去工程(1e)と、第1のインク21が吐出されたセル内に第2のインク22を吐出する第2のインク付与工程(1f)と、セル内に吐出された第2のインク22から第2の液性媒体を除去する第2の液性媒体除去工程(1g)とを有している。
【0161】
以下、各工程について詳細に説明する。
<基板準備工程>
まず、基板11を準備する(1a)。本工程で準備する基板11は、洗浄処理が施されたものであるのが好ましい。また、本工程で準備する基板11は、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理が施されたものであってもよい。
【0162】
<隔壁形成工程>
次に、基板11の隔壁形成用の感放射線性組成物を基板11の一方の面のほぼ全体に付与し、塗膜3を形成する(1b)。なお、基板11上に感放射線性組成物を付与した後、必要に応じて、プリベーク処理を行ってもよい。
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、さらに、アルカリ現像液を用いた現像処理を行うことにより、隔壁13が形成される(1c)。
【0163】
また、現像処理の前に、塗膜3に対して撥液化処理を行ってもよい。例えば、現像処理の前に、塗膜3に対してフッ素樹脂をスタンプ法などで付与してもよいし、フッ素をプラズマ重合処理で塗膜3(感放射線性組成物)の表面にドープしてもよい。そのような処理をすることで、バンク表面(図中の上面。内壁面を除く部位)のみ撥液化して、後の工程で形成される着色部12の表面のさらなる平坦化に寄与する。また、感放射線性組成物のなかに、表面のみに配向するように、比重の軽いフッ素樹脂を添加しておいてもよい。
【0164】
<第1のインク付与工程>
次に、インクジェット方式により、上述したカラーフィルター用インクセットを構成する第1のインク21を、隔壁13で囲まれたセル14内に付与する(1d)。
本工程は、形成すべき複数色の着色膜121に対応する複数種の第1のインク21を用いて行う。この際、隔壁13が設けられているため、2種以上の第1のインク21が混ざり合うことが確実に防止される。
第1のインク21の吐出は、図3に示すような液滴吐出装置を用いて行う。
【0165】
図3に示すように、本工程で用いる液滴吐出装置100は、第1のインク21を保持するタンク101と、チューブ110と、チューブ110を介してタンク101から第1のインク21が供給される吐出走査部102とを備える。吐出走査部102は、複数の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)をキャリッジに搭載してなる液滴吐出手段103と、液滴吐出手段103の位置を制御する第1位置制御装置104(移動手段)と、前記工程で隔壁13が形成された基板11(以下、単に「基板11」とも言う。)を保持するステージ106と、ステージ106の位置を制御する第2位置制御装置108(移動手段)と、制御手段112とを備えている。タンク101と、液滴吐出手段103における複数の液滴吐出ヘッドとは、チューブ110で連結されており、タンク101から複数の液滴吐出ヘッドのそれぞれに第1のインク21が圧縮空気によって供給される。
【0166】
第1位置制御装置104は、制御手段112からの信号に応じて、液滴吐出手段103をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させる。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段103を回転させる機能も有する。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。第2位置制御装置108は、制御手段112からの信号に応じて、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動させる。さらに、第2位置制御装置108は、Z軸に平行な軸の回りでステージ106を回転させる機能も有する。
ステージ106は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ106は、第1のインク21を付与すべきセル14を有する基板11をその平面上に固定、または保持できるように構成されている。
【0167】
上述のように、液滴吐出手段103は、第1位置制御装置104によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ106は、第2位置制御装置108によってY軸方向に移動させられる。つまり、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108によって、ステージ106に対する液滴吐出ヘッドの相対位置が変わる(ステージ106に保持された基板11と、液滴吐出手段103とが相対的に移動する)。
制御手段112は、第1のインク21を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。
【0168】
上記のような液滴吐出装置100を用いて、カラーフィルター1が有する複数色の着色膜121に対応する第1のインク21を、セル14内に付与する。上記のような装置を用いることにより、セル14内に、効率よくかつ選択的に第1のインク21を付与することができる。また、上述したように、第1のインク21は、優れた吐出安定性を有しており、長期間、液滴吐出を行った場合であっても、飛行曲がりや、液滴の吐出量が不安定化する等の問題が極めて発生しにくいものである。したがって、異なる色の着色膜121を形成するのに用いられる複数種の第1のインク21が混ざり合って(混色して)しまったり、本来同一の着色濃度であることが求められる複数個の着色部12の間での着色濃度のばらつきが発生する等の問題を確実に防止することができる。なお、図示の構成では、液滴吐出装置100は、第1のインク21を保持するタンク101、チューブ110等を1色分しか有していないが、これらの部材を、カラーフィルター1が有する複数色の着色部12に対応する複数色分有するものであってもよい。また、カラーフィルター1の製造においては、複数色の第1のインク21に対応する複数の液滴吐出装置100を用いてもよい。
【0169】
また、上述したように、本発明のカラーフィルターの製造方法では、着色部の構成材料を第1のインクと第2のインクに分けて含有させることにより、第1のインクおよび第2のインクの吐出安定性を、いずれも優れたものとすることができる。このため、上記のような液滴吐出を行った場合において、各セル14に付与される第1のインク21の液滴量の不本意なばらつきが発生することを確実に防止することができる。
なお、本発明では、液滴吐出ヘッドは、駆動素子として、ピエゾ素子の代わりに静電アクチュエータを用いるものでもよい。また、液滴吐出ヘッドは、駆動素子として電気熱変換素子を用い、この電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して第1のインク21を吐出する構成であってもよい。
【0170】
<第1の液性媒体除去工程>
次に、セル14内の第1のインク21から、第1の液性媒体を除去する(1e)。このように、第1のインク21から第1の液性媒体を除去することにより、第1のインク21の流動性を失わせることができる。そして、本工程において第1の液性媒体が除去されて着色膜121が形成されると、引き続く第2のインク付与工程において第2のインク22を付与した際にも、第1のインク21の構成材料が、付与された第2のインク22中に拡散してしまうことが確実に防止される。その結果、着色膜121と樹脂膜122とを有する構成の着色部12を形成することができ、上述したような効果が発揮される。特に、第1のインク21が着色剤として顔料を含むものである場合、第1の液性媒体が除去されることにより、着色剤としての顔料粒子が強固に凝集するため、上記のような効果は、より確実に発揮される。
【0171】
第1の液性媒体の除去は、通常、加熱により行う。
本工程は、230℃以上の温度で、30分以上の加熱処理を行うものであるのが好ましい。これにより、形成される着色部内に気泡が含まれることをより確実に防止することができ、結果として、カラーフィルターを用いた表示画像のコントラスト等をより確実に優れたものとすることができる。また、本工程において、第1の液性媒体が確実に除去され、第2のインク22中への成分の溶出が生じにくい着色膜121をより確実に形成することができる。また、基板11等への悪影響の発生を確実に防止することができる。
【0172】
また、本工程においては、第1のインク21が付与された基板11を減圧環境下においてもよい。これにより、基板11等への悪影響の発生を防止しつつ、第1の液性媒体の除去を効率よく行うことができる。特に、第1のインク21が付与された基板11を減圧環境下において本工程を行うことにより、本工程での処理温度を比較的低いものとすることができ、有機物の分解等を効果的に防止しつつ、第1の液性媒体を確実に除去することができる。
また、本工程においては、紫外線や電子線、もしくは放射線等のエネルギー照射を行ってもよい。
【0173】
<第2のインク付与工程>
次に、セル14内に第2のインク22を付与する(1e)。
上述したように、セル14内の第1のインク21からは第1の液性媒体が除去され、着色膜121が形成されている。このため、第1のインク21が付与されたセル14(着色膜121が形成されたセル14)内に第2のインク22を付与した際に、第1のインク21の成分と第2のインク22の成分とが混ざり合ってしまうことが防止され、着色膜121と樹脂膜122との積層構造をなす着色部12を確実に形成することができる。また、上述したように、着色部12の構成成分の一部を第1のインク21中に含むものとしているため、第2のインク22の液滴の吐出安定性を優れたものとすることができる。その結果、所望量の第2のインク22を目的の位置に、確実に着弾させることができるため、最終的なカラーフィルター1での各着色部12の不本意な厚さのばらつきを防止することができる。また、インクジェット法による高速描画が可能となるため、全体としての、カラーフィルター1の生産性を特に優れたものとすることができる。
【0174】
ところで、前述した工程で形成される着色膜は、着色剤を多く含むものであり、通常、微小な空孔を多数有するものである。このような着色膜に、単に樹脂膜を形成した場合、最終的に形成される着色部(特に、樹脂膜)は、気泡を多く含むものとなり、これが光を散乱し、結果として、カラーフィルターの表示画像のコントラストの低下等を招き、表示画像の高画質化に悪影響を与える。上記のような気泡は、着色膜中に存在する空孔により発生するものである。これに対し、本発明では、第2のインクが、上述したような重合体Xおよび重合体Yを所定の割合で含むものである。これにより、着色膜の上面に着色膜との密着性に優れた樹脂膜を好適に形成することができるとともに、着色膜内の空孔にも侵入し、当該空孔を、重合体Xおよび重合体Yの硬化物で充填することができる。その結果、上述したような問題の発生を効果的に防止することができ、製造されるカラーフィルターの表示画像をコントラスト等に優れたものとすることができる。
これに対し、第2のインクが、重合体X、重合体Yを両方とも含まない場合、重合体X、重合体Yのうち一方のみしか含まない場合、また、重合体Xおよび重合体Yを含む場合であっても上述したような比率の関係を満足しない場合には、上記のような優れた効果は得られない。
【0175】
第2のインク22のセル14内への付与は、インクジェット方式の液滴吐出装置により行われるものであり、上記のような液滴吐出装置100を用い、第1のインク21と同様の方法で行うことができる。
また、第2のインク22は、複数の第1のインク21が付与されるセルのうち、複数の第1のインク21のうち最も固形分の少ない第1のインク21が付与されたセルに対し最も多く付与されることが好ましい。これにより、容易かつ確実に着色部12の厚さを調整することができ、着色部12の厚さが特に均一なカラーフィルターを製造することができる。このため、得られるカラーフィルター1は、各部位の濃度むら、色むらが特に抑制されたものとなる。また、後述するような画像表示装置にこのようなカラーフィルター1を用いた際に、着色部12および隔壁13の基板11に対向する面とは反対の面側に設けられる共通電極が、各着色部12と隔壁13との段差によって、断線するなどの不具合が発生するのを確実に防止することができる。
また、特に、複数種の第1のインク21が付与されたセル14で、付与された第1のインク21の固形分が少ないセル14ほど、第2のインク22は、多く付与されることが好ましい。これにより、形成される着色部12の厚さを特に均一にすることができる。
【0176】
<第2の液性媒体除去工程>
次に、セル14内の第2のインク22から、第2の液性媒体を除去し、樹脂膜122を形成し、着色膜121と樹脂膜122とを備えた着色部12を得る(1g)。これにより、カラーフィルター1が得られる。
上述したように、着色部12の構成成分の一部を第1のインク21中に含むものとしているため、第2のインク22を用いて形成される樹脂膜122は表面の平坦性が高いものとなる。また、第2のインクが、上述したような重合体Xおよび重合体Yを所定の割合で含むものであることにより、着色膜の上面に着色膜121との密着性に優れた樹脂膜122を好適に形成することができるとともに、着色膜121内の空孔にも侵入し、当該空孔を、重合体Xおよび重合体Yの硬化物で充填することができる。その結果、製造されるカラーフィルター1は、表示画像の明度およびコントラスト比に優れ、かつ、色むら、濃度むらの発生が抑制されたものとなる。また、着色剤を含む材料で構成された着色膜121の表面を、樹脂膜122で被覆することにより、カラーフィルター1の耐溶剤性、カラーフィルター1を備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率等を特に優れたものとすることができる。また、各着色部12が均一な厚さを有するカラーフィルター1を得ることができる。
【0177】
第2の液性媒体の除去は、例えば、加熱により行うことができる。
第2の液性媒体の除去を加熱により行う場合、基板11の温度は、例えば、60℃以上260℃以下であることが好ましく180℃以上250℃以下であることがより好ましい。これにより、第2のインク22から効率よく第2の液性媒体を除去することができる。また、基板11等への悪影響の発生を確実に防止することができる。また、第2のインクに含まれる硬化性樹脂材料(重合体X、重合体Y)の硬化反応を確実に進行させることができ、製造されるカラーフィルター1の信頼性、耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0178】
また、本工程においては、第2のインク22が付与された基板11を減圧環境下においてもよい。これにより、基板11等への悪影響の発生を防止しつつ、第1の液性媒体の除去を効率よく行うことができる。
また、本工程においては、紫外線や電子線、もしくは放射線等のエネルギー照射を行ってもよい。
【0179】
《画像表示装置》
次に、カラーフィルター1を有する画像表示装置(電気光学装置)である液晶表示装置の好適な実施形態について説明する。
図4は、液晶表示装置の好適な実施形態を示す断面図である。同図に示すように、液晶表示装置60は、カラーフィルター1と、カラーフィルター1の着色部12が設けられた面側に配された基板(対向基板)66と、カラーフィルター1と基板66との間の空隙に封入された液晶よりなる液晶層62と、カラーフィルター1の基板11の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図4中下側)に設けられた偏光板67と、基板66の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図4中上側)に設けられた偏光板68とを有している。そして、カラーフィルター1の着色部12および隔壁13が設けられた面(着色部12および隔壁13の基板11に対向する面とは反対の面)には、共通電極61が設けられており、基板(対向基板)66の液晶層62、カラーフィルター1に対向する面には、カラーフィルター1の各着色部12に対応する位置に、マトリクス状に、画素電極65が配されている。さらに、共通電極61と液晶層62との間には配向膜64が設けられ、基板66(画素電極65)と液晶層62との間には配向膜63が設けられている。
基板66は、可視光に対して光透過性を有する基板であり、例えば、ガラス基板である。
共通電極61、画素電極65は、可視光に対して光透過性を有する材料で構成されたものであり、例えば、ITO等で構成されている。
【0180】
このように、カラーフィルター1を備えた液晶表示装置60では、カラーフィルター1を構成する各着色部12が均一な厚さを有するものである。このようなカラーフィルター1を備えた液晶表示装置60では、各着色部12と隔壁13との高さの差(段差)が、カラーフィルター1全体において均一である。したがって、共通電極61は断線しにくいものとなっており、液晶表示装置60は、確実かつ適正に画像表示を行うことできる。また、液晶表示装置60に熱や外部からの衝撃が加わった際にも、カラーフィルター1の液晶層62側に配された共通電極61が断線するなどの不具合が発生するのを確実に防止することができ、液晶表示装置60の耐久性は優れたものとなる。また、液晶表示装置60のカラーフィルター1は、隔壁13上において基板11全面を覆うような平坦化膜を有しておらず、このため、目的とする着色部のみに確実に光を照射できるものとなる。この結果、液晶表示装置は、色再現範囲を広いものとすることができ、形状、色調等が鮮明な画像を適正に表示できるものとなる。
【0181】
また、図中省略しているが、各画素電極65に対応するように、複数のスイッチング素子(例えば、TFT:薄膜トランジスター)が設けられている。そして、各着色部12に対応する各画素電極65について、共通電極61との間での電圧の印加状態を制御することにより、各着色部12(各画素電極65)に対応する領域での、光の透過性を制御することができる。
【0182】
液晶表示装置60では、図示しないバックライトから発せられた光が、偏光板68側(図4中上側)から入射するようになっている。そして、液晶層62を透過し、カラーフィルター1の各着色部12(12A、12B、12C)に入射した光は、各着色部12(12A、12B、12C)に対応する色の光として、偏光板67(図4中下側)から出射する。
液晶表示装置60は、上述したような本発明のカラーフィルター用インクセット、方法を用いて製造されたカラーフィルター1を備えるものであるため、色むら、濃度むら等の発生が防止され、明度およびコントラスト比に優れた画像を、長期間にわたって安定的に表示することができる。
【0183】
《電子機器》
前述したようなカラーフィルター1を有する液晶表示装置等の画像表示装置(電気光学装置)1000は、各種電子機器の表示部に用いることができる。
図5は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピューターの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピューター1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピューター1100においては、表示ユニット1106が画像表示装置1000を備えている。
図6は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、画像表示装置1000を表示部に備えている。
【0184】
図7は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0185】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、画像表示装置1000が表示部に設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダーとして機能する。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリーが設置されている。
【0186】
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッターボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリーに転送・格納される。
【0187】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニター1430が、データ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピューター1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリーに格納された撮像信号が、テレビモニター1430や、パーソナルコンピューター1440に出力される構成になっている。
【0188】
なお、本発明の電子機器は、上述したパーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター)、携帯電話機、ディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビ(例えば、液晶テレビ)や、ビデオカメラ、ビューファインダー型、モニター直視型のビデオテープレコーダー、ラップトップ型パーソナルコンピューター、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニター類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。中でも、テレビは、近年の表示部の大型化の傾向が顕著であるが、このような大型の表示部(例えば、対角線長80cm以上の表示部)を有する電子機器では、色むら、濃度むらが目立ちやすいという傾向を有しているが、本発明を適用すれば、このような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、上記のような大型の表示部を有する電子機器に適用した場合に、本発明の効果は、より顕著に発揮される。
【0189】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態においては、各色の着色部に対応する第1のインクを、セル内に付与した後に、一括で、セル内の第1のインクから第1の液性媒体を除去するもの、すなわち、第1の液性媒体除去工程を1回のみ行うものとして説明したが、第1のインク付与工程、第1の液性媒体除去工程は、各色に対応して、繰り返し行うものであってもよい。
また、例えば、第1のインク付与工程および第2のインク付与工程は、それぞれ、複数回行われるものであってもよい。
また、カラーフィルター、画像表示装置、電子機器を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
【0190】
また、前述した実施形態では、カラーフィルター用インクセットが、光の三原色に対応する3種(3色)の第1のインクおよび1種の第2のインクを備える場合について中心的に説明したが、カラーフィルター用インクセットを構成する第1のインクおよび第2のインクの数、種類(色)は、上述したものに限定されない。例えば、本発明のカラーフィルター用インクセットは、4種以上の第1のインクを備えるものであってもよい。
【0191】
また、前述した実施形態では、カラーフィルター用インクセットは、1種の第2のインクのみを備えるものとして説明したが、複数種の第2のインクを備えるものであってもよい。例えば、カラーフィルター用インクセットは、複数種の第1のインクにそれぞれ対応する複数種の第2のインクを備え、第2のインク毎に組成が異なるものであってもよい。特に第2のインク毎に硬化性樹脂材料(重合体X、重合体Y)の含有量を調整することにより、複数の第2のインクの吐出量を全て同じものとしつつ、第2のインク毎に付与する硬化性樹脂材料の量を異なるものとすることができる。これにより、液滴吐出時における吐出条件の設定がより簡易なものとなる。
【実施例】
【0192】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]重合体の合成
(合成例1)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(溶剤)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:100重量部を入れて、80℃に加熱した。続いて、該フラスコ内に、単量体成分m1としてのメタクリル酸2−[O−(1′−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル(=2−(1−メチルプロピリデンアミノオキシカルボニルアミノエチル)メタクリレート):60重量部、単量体成分m2としてのメタクリル酸:20重量部、単量体成分m3としてのステアリルメタクリレート:20重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:30重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて4時間かけてフラスコ内に滴下した。一方、ラジカル開始剤(重合開始剤)としてのアゾビスジメチルバレロニトリル:5重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:90重量部に溶解させた溶液を、別の滴下ポンプを用いて4時間かけてフラスコ内に滴下した。重合開始剤の滴下が終了した後、4時間同温度に保持(熟成)し、その後、室温まで冷却して、単量体成分m1、m2、m3を含み上記式(8)で表される重合体Mとしての重合体M1を得た。
(合成例2〜8)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)および単量体成分の種類、各成分の比率を調整し、重合体の組成を表1に示すように変更した以外は、前記合成例1と同様の操作を行った。その結果、7種の重合体M(重合体M2〜M8)が得られた。
【0193】
(合成例9)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(溶剤)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:314重量部を入れて、90℃に加熱した。続いて、ラジカル開始剤としての2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):20重量部、および、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(溶媒):30重量部を加えた後、該フラスコ内に、上記式(11)で表される単量体成分(化合物)x1:180重量部、上記式(12)で表される単量体成分(化合物)x2:90重量部、上記式(13)で表される単量体成分(化合物)x3:15重量部、上記式(14)で表される単量体成分(化合物)x4:15重量部、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):50重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:200重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに4時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、単量体成分x1、x2、x3、x4を含み上記式(19)で表される重合体Xとしての重合体X1を得た。
(合成例10〜16)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類、各成分の比率を調整し、重合体の組成を表1に示すように変更した以外は、前記合成例9と同様の操作を行った。その結果、7種の重合体X(重合体X2〜X8)が得られた。
【0194】
(合成例17)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(溶剤)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:314重量部を入れて、90℃に加熱した。続いて、ラジカル開始剤としての2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):20重量部、および、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(溶媒):30重量部を加えた後、該フラスコ内に、上記式(15)で表される単量体成分(化合物)y1:200重量部、上記式(16)で表される単量体成分(化合物)y2:100重量部、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):50重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:200重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに4時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、単量体成分y1、y2を含み上記式(20)で表される重合体Yとしての重合体Y1を得た。
(合成例18、19)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類、各成分の比率を調整し、重合体の組成を表1に示すように変更した以外は、前記合成例17と同様の操作を行った。その結果、2種の重合体Y(重合体Y2、Y3)が得られた。
【0195】
表1には、合成例1〜19で合成した各重合体を構成する各単量体成分の比率、各重合体の重量平均分子量Mwをまとめて示した。表中、メタクリル酸2−[O−(1′−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル(=2−(1−メチルプロピリデンアミノオキシカルボニルアミノエチル)メタクリレート)を「m1a」で示し、メタクリル酸2−(3,5−ジメチルピラゾール−1−イル)カルボニルアミノエチルを「m1b」で示し、アクリル酸2−(3,5−ジメチルピラゾール−1−イル)カルボニルアミノエチルを「m1c」で示し、メタクリル酸を「m2a」で示し、アクリル酸を「m2b」で示し、ステアリルメタクリレートを「m3a」で示し、ベヘニルメタクリレートを「m3b」で示し、パルミチルアクリレートを「m3c」で示し、リグノセリルメタクリレートを「m3d」で示し、メタクリル酸メチルを「m4a」で示し、アクリル酸エチルを「m4b」で示し、アクリル酸ペンチルを「m4c」で示し、スチレンを「m5」で示し、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを「m6」で示し、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−9−イルアクリレートと3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルアクリレートの混合物を「m7」で示した。なお、上記のようにして合成した重合体は、いずれも、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1以上3以下の範囲内であった。
【0196】
【表1】

【0197】
[2]カラーフィルター用インクセットの調製
(実施例1)
以下のようにして、3種の第1のインクと1種の第2のインクとからなるカラーフィルター用インクセットを調製した。
<第1のインクセットの調製>
分散剤としてのディスパービック166と、重合体M1と、重合体M1を溶解する溶媒(第1のインクにおける第1の液性媒体の構成成分)として機能するジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートとを、攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌することにより、重合体M1が溶媒に溶解した重合体M溶液を得た(重合体M溶液調製工程)。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
【0198】
次に、以下に述べるようにして、重合体M溶液調製工程で得られた重合体M溶液に、顔料を添加し、攪拌機(ビーズミル)を用いて、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行う微分散工程を施した。
まず、得られた重合体M溶液に、顔料を添加し、10分間攪拌を行った。このとき、ビーズミル(攪拌機)が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、顔料としては、C.I.ピグメントグリーン58の粉末と、下記式(34)で示される化学構造を有するスルホン化顔料誘導体(副顔料)の粉末と、C.I.ピグメントイエロー150の粉末との混合物を用いた。また、このとき、重合体M溶液と顔料との混合物中における顔料の含有率が16wt%となるように、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートで希釈した。
【0199】
【化35】

【0200】
次に、平均粒径0.8mmの無機ビーズ(第1の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加して、室温下、30分間攪拌し1段目の分散処理(第1の処理)を行った。このとき、ビーズミル(攪拌機)が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
次に、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第1の無機ビーズ)を除去し、その後、平均粒径0.1mmの無機ビーズ(第2の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加し、更に30分間攪拌し第2段目の分散処理(第2の処理)を行った。このとき、ビーズミル(攪拌機)が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、このとき、得られる顔料分散体中における顔料の含有率が13wt%となるように、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートで希釈した。
その後、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」(商品名)、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第2の無機ビーズ)を除去し、顔料分散体を得た。
【0201】
次に、希釈用の液性媒体(第1の液性媒体)として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルを加え、混合した(希釈工程)。本工程は、上記の各材料を内容量400ccの攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌することにより行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。これにより、目的とする緑色の第1のインク(Gインク)を得た。
また、顔料の種類、各成分の使用量を変更した以外は、前記緑色の第1のインクと同様にして、赤色の第1のインク(Rインク)、青色の第1のインク(Bインク)を調製した。
【0202】
<第2のインクの調製>
重合体X1と、重合体Y1と、LHP−95(楠本化成社製)と、第2の液性媒体としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートおよびメトキシブチルアセテートとを混合することにより、第2のインクを得た。
このようにして得られた第2のインクと、第1のインクセットを組み合わせることで、4種のインクからなるカラーフィルター用インクセットを得た。
【0203】
(実施例2〜10)
カラーフィルター用インクセットを構成する第1のインクおよび第2のインクの調製に用いる材料の種類・使用量を表2、表3に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にしてカラーフィルター用インクセットを調製した。
(比較例1)
分散剤としてのディスパービック111およびディスパービック166と、重合体M7と、顔料と、重合体X8と、重合体Y3と、液性媒体としての1,3−ブチレングリコールジアセテートおよびトリエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルとを混合することにより、緑色のインク(Gインク)を調製した。また、顔料の種類、各成分の使用量を変更した以外は、前記緑色のインク(Gインク)と同様にして、赤色のインク(Rインク)、青色のインク(Bインク)を調製し、3種のインクからなるカラーフィルター用インクセットを得た。
(比較例2〜6)
カラーフィルター用インクセットを構成する第1のインクおよび第2のインクの調製に用いる材料の種類・使用量を表3、表4に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にしてカラーフィルター用インクセットを調製した。
【0204】
前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インクセットを構成する各インクの構成成分の種類、含有量を表2〜表4にまとめて示した。なお、表中、C.I.ピグメントグリーン58を「PG58」、C.I.ピグメントグリーン36を「PG36」、上記式(34)で表される顔料誘導体(分子内のスルホ基が1個)で構成された粉末を「SPD1」、下記式(35)で表される顔料誘導体(分子内のスルホ基が2個)で構成された粉末を「SPD2」、C.I.ピグメントレッド177を「PR177」、C.I.ピグメントレッド254を「PR254」、C.I.ピグメントレッド177と式(30)で表される顔料誘導体との混合物を「PR177D」、C.I.ピグメントレッド254と式(31)で表される顔料誘導体との混合物を「PR254D」、C.I.ピグメントブルー15:6を「PB15:6」、C.I.ピグメントイエロー150を「PY150」、C.I.ピグメントバイオレット23を「PV23」、ディスパービック111を「DA1」、ディスパービック2095を「DA2」、ディスパービックP104を「DA3」、ディスパービック166を「DA4」、ディスパービック9075を「DA5」、ディスパービック2001を「DA6」、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを「S1」、1,3−ブチレングリコールジアセテートを「S2」、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテートを「S3」、ビス(2−ブトキシエチル)エーテルを「S4」、オクタン酸エチルを「S5」、ジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルを「S6」、トリエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルを「S7」、3−エトキシプロピオン酸エチルを「S8」、メトキシブチルアセテートを「S9」、ジプロピレングリコールジメチルエーテルを「S10」、レベリング剤としてのLHP−95(楠本化成社製)を「LHP95」で示した。
【0205】
また、前記各実施例で用いた、C.I.ピグメントレッド177と式(30)で表される顔料誘導体との混合物中における式(30)で表される顔料誘導体の含有率は、いずれも、0.1wt%以上10wt%以下であった。また、前記各実施例で用いた、C.I.ピグメントレッド254と式(31)で表される顔料誘導体との混合物中における式(31)で表される顔料誘導体の含有率は、いずれも、0.1wt%以上10wt%以下であった。また、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された前記各実施例のカラーフィルター用インクセットを構成する第1のインクの25℃における粘度は、いずれも、4mPa・s以上11mPa・s以下の範囲内の値であった。また、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された前記各実施例のカラーフィルター用インクセットを構成する第2のインクの25℃における粘度は、いずれも、1.5mPa・s以上3.5mPa・s以下の範囲内の値であった。
【0206】
【化36】

【0207】
【表2】

【0208】
【表3】

【0209】
【表4】

【0210】
[3]液滴吐出の安定性評価(吐出安定性評価)
前記各実施例および比較例のカラーフィルター用インクセットを構成する各インクについて、下記に示すような試験による評価を行った。
[3.1]着弾位置精度評価
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3に示すような液滴吐出装置および前記各実施例および比較例のカラーフィルター用インクセットを用意し、ピエゾ素子の振動数を5kHzとし、その駆動波形を最適化した状態で、各インクについて、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、1500000発(1500000滴)の液滴の連続吐出を行った。液滴吐出ヘッドの中央部付近の指定したノズルから吐出された1500000発の液滴について、着弾した各液滴の中心位置の中心狙い位置からのズレ量dの平均値を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。この値が小さいほど飛行曲がりの発生が効果的に防止されていると言える。
【0211】
A:ズレ量dの平均値が0.05μm未満。
B:ズレ量dの平均値が0.05μm以上0.10μm未満。
C:ズレ量dの平均値が0.10μm以上0.13μm未満。
D:ズレ量dの平均値が0.13μm以上0.16μm未満。
E:ズレ量dの平均値が0.16μm以上。
【0212】
[3.2]液滴吐出量の安定性評価
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3に示すような液滴吐出装置および前記各実施例および比較例のカラーフィルター用インクセットを用意し、ピエゾ素子の振動数を5kHzとし、その駆動波形を最適化した状態で、各インクについて、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、2000000発(2000000滴)の液滴の連続吐出を行った。液滴吐出ヘッドの左右両端の指定の2つのノズルについて、吐出された液滴の総重量を求め、上記2つのノズルから吐出された液滴の平均吐出量の差の絶対値ΔW[ng]を求めた。このΔWの、液滴の目標吐出量W[ng]に対する比率(ΔW/W)を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。ΔW/Wの値が小さいほど、液滴吐出量の安定性に優れていると言える。
【0213】
A:ΔW/Wの値が、0.050未満。
B:ΔW/Wの値が、0.050以上0.250未満。
C:ΔW/Wの値が、0.250以上0.550未満。
D:ΔW/Wの値が、0.550以上0.780未満。
E:ΔW/Wの値が、0.780以上。
【0214】
[3.3]間欠印字性能評価
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3に示すような液滴吐出装置および前記各実施例および比較例のカラーフィルター用インクセットを用意し、ピエゾ素子の振動数を5kHzとし、その駆動波形を最適化した状態で、各インクについて、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、10000発(10000滴)の液滴の連続吐出を行い、その後、300秒間、液滴の吐出を中断した(1シーケンス目)。その後、同様に、液滴の連続吐出、および、滴々の吐出の中断の操作を繰り返し行った。液滴吐出ヘッドの中央部付近の指定したノズルについて、1シーケンス目に吐出された液滴の平均重量W[ng]と、100シーケンス目に吐出された液滴の平均重量W100[ng]とを求めた。そして、WとW100との差の絶対値の、液滴の目標吐出量W[ng]に対する比率(|W−W100|/W)を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。|W−W100|/Wの値が小さいほど、間欠印字性能(液滴吐出量の安定性)に優れていると言える。
【0215】
A:|W−W100|/Wの値が、0.040未満。
B:|W−W100|/Wの値が、0.040以上0.100未満。
C:|W−W100|/Wの値が、0.100以上0.400未満。
D:|W−W100|/Wの値が、0.400以上0.650未満。
E:|W−W100|/Wの値が、0.650以上。
【0216】
[3.4]連続吐出試験
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3に示すような液滴吐出装置、前記各実施例および比較例のカラーフィルター用インクセットを用いて、25℃、40%RHの環境下で、液滴吐出装置を480時間、連続で運転させることにより、カラーフィルター用インクセットを構成する各インクの吐出を行った。
連続運転後における、液滴吐出ヘッドを構成するノズルの目詰まりの発生率([(目詰まりノズル数)/(全ノズル数)]×100)を求め、ノズルの目詰まりが発生しているものについては、可塑材料で構成されたクリーニング部材により、目詰まりの解消が可能であるか否かを調べた。その結果を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0217】
A:ノズルの目詰まりの発生がない。
B:ノズルの目詰まりの発生率が0.4%未満(ただし、ゼロを除く)であり、かつ、クリーニングによる目詰まりの解消が可能。
C:ノズルの目詰まりの発生率が0.4%以上0.8%未満であり、かつ、クリーニングによる目詰まりの解消が可能。
D:ノズルの目詰まりの発生率が0.8%以上1.1%未満であり、かつ、クリーニングによる目詰まりの解消が可能。
E:ノズルの目詰まりの発生率が1.1%以上、または、クリーニングによる目詰まりの解消が不可能。
なお、上記の評価は、各実施例および比較例について、同様の条件で行った。
【0218】
[4]インクの保存安定性評価(長期安定性評価)
[4.1]顔料を含むインクの保存安定性評価(長期安定性評価)
前記各実施例および比較例のカラーフィルター用インクセットを構成するインクのうち顔料を含むインク(各実施例での第1のインクおよび比較例1のインク)について、50℃の環境下に、80日間放置した後、目視による観察を行い、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0219】
A:加熱前からの変化が全く認められない。
B:顔料粒子の凝集・沈降がほとんど認められない。
C:顔料粒子の凝集・沈降がわずかに認められる。
D:顔料粒子の凝集・沈降がはっきりと認められる。
E:顔料粒子の凝集・沈降が顕著に認められる。
【0220】
[4.2]第2のインクの保存安定性評価(長期安定性評価)
前記各実施例のカラーフィルター用インクセットを構成する第2のインクについて、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)により、調製直後の状態(加熱前)、および、55℃の環境下に80日間放置した後の状態(加熱後)での、MwおよびMnを求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0221】
A:加熱前後でのMw/Mnの変化率が5%未満。
B:加熱前後でのMw/Mnの変化率が5%以上10%未満。
C:加熱前後でのMw/Mnの変化率が10%以上15%未満。
D:加熱前後でのMw/Mnの変化率が15%以上20%未満。
E:加熱前後でのMw/Mnの変化率が20%以上。
【0222】
[5]カラーフィルターの製造
前記各実施例については、以下の[5.1]〜[5.7]の工程を経て、それぞれ、8000枚のカラーフィルターを製造した。
[5.1]基板準備工程
まず、両面にナトリウムイオンの溶出を防止するシリカ(SiO)膜が形成されたソーダガラス製の基板(G5サイズ:1100×1300mm)を用意し、洗浄処理を施した。
次に、カーボンブラックを含む隔壁形成用の感放射線性組成物を、洗浄済の基板の一方の面の全体に付与し、塗膜を形成した。
次に、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒という条件でプリベーク処理を行った。
【0223】
[5.2]隔壁形成工程
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、引き続き、CFとHeガスとを1:9(体積比)で混合したガスを導入した大気圧プラズマ重合装置で、出力800W、プラズマ発生装置からテーブルまでの距離:0.5mm、処理テーブル速度:10m/sという条件で、プリベーク処理、ポストエキスポジャーベーク処理の施された塗膜の表面だけにフッ素をドーピングした。その後、アルカリ現像液を用いた現像処理を行い、さらに、ポストベーク処理を行うことにより、隔壁を形成した。PEBは、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒、放射線照射強度:150mJ/cmという条件で行った。また、現像処理は、例えば、振動浸漬法により行った。現像処理時間は、60秒とした。また、ポストベーク処理は、加熱温度:140℃、加熱時間:10分という条件で行った。形成された隔壁の厚さは、2.0μmであった。
【0224】
[5.3]第1のインク付与工程
次に、図3に示すような液滴吐出装置を用いて、隔壁で囲まれた領域としてのセル内に、第1のインクを吐出した。この際、3色の第1のインクを用い、各色の第1のインクが混色しないようにした。また、第1のインクの吐出は、液滴吐出装置のピエゾ素子の振動数を5kHzとし、その駆動波形を最適化した上で行った。
[5.4]第1の液性媒体除去工程
その後、ホットプレート上にて230℃で60分間の加熱処理を施すことにより、第1の液性媒体を除去し、3色(赤色(R)、緑色(G)、青色(B))の着色膜を形成した。
【0225】
[5.5]第2のインク付与工程
次に、図3に示すような液滴吐出装置を用いて、第1のインクが吐出されたセル内に、第2のインクを吐出した。この際、各セル内には、形成される着色部(着色部と樹脂膜との積層体)の平均厚さが2.0μmとなるような量の第2のインクを付与した。第2のインクの吐出は、液滴吐出装置のピエゾ素子の振動数を5kHzとし、その駆動波形を最適化した上で行った。
[5.6]第2の液性媒体除去工程
その後、ホットプレート上にて110℃で60分間の加熱処理を施し、さらに210℃のオーブン内で15分間の加熱処理を施すことにより、それぞれ着色膜と樹脂膜とからなる3色の着色部が形成された。
【0226】
[5.7]洗浄工程
その後、N−メチル−2−ピロリドンおよびγ−ブチロラクトンを用いた洗浄を行い、図1に示すようなカラーフィルターが得られた。
前記比較例1については、上記の[5.3]第1のインク付与工程でのインク(顔料および硬化性樹脂材料としての重合体X、重合体Yを含むインク)の付与量を、当該インク中の固形分により形成される着色部の厚さが2.0μmとなるように変更し、さらに、[5.5]第2のインク付与工程および[5.6]第2の液性媒体除去工程を省略した以外は、前記実施例と同様にして、8000枚のカラーフィルターを製造した。
【0227】
また、前記実施例および比較例について、それぞれ、着色剤を含むインクとして1種のみを用いて、全てのセルに同色の着色部が形成されるようにした以外は、上記と同様の方法を用いることにより、着色部として緑色の着色部のみを備えた緑色単色カラーフィルター、着色部として赤色の着色部のみを備えた赤色単色カラーフィルター、着色部として青色の着色部のみを備えた青色単色カラーフィルターを製造した。
【0228】
[6]カラーフィルターの評価
上記のようにして得られた各カラーフィルターを用いて、以下のような評価を行った。
[6.1]着色部の平坦性
前記各実施例および比較例のカラーフィルター用インクセットを用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、6000枚目に製造されたカラーフィルターを用意した。
これらのカラーフィルターについて、触針式粗さ計(Tencor社製、P−15)を用いて、着色部の最大高さと最小高さとの差ΔDを求め、以下の6段階の基準に従い、評価した。
【0229】
A:ΔDが0.14μm未満。
B:ΔDが0.14μm以上0.26μm未満。
C:ΔDが0.26μm以上0.36μm未満。
D:ΔDが0.36μm以上0.43μm未満。
E:ΔDが0.43μm以上0.51μm未満。
F:ΔDが0.51μm以上。
【0230】
[6.2]コントラスト比の評価
前記各実施例および比較例について、上記のようにして製造した3種の単色カラーフィルター(緑色単色カラーフィルター、赤色単色カラーフィルター、青色単色カラーフィルター)に関して、コントラストテスター(壺坂電機社製、CT−1)を用いて、コントラスト比(CR)を求め、下記のようにして評価を行った。
【0231】
赤色単色カラーフィルターについては、x=0.651のときのCRを、以下の6段階の基準に従い、評価した。
A:CRが3100以上。
B:CRが2700以上3100未満。
C:CRが2400以上2700未満。
D:CRが2100以上2400未満。
E:CRが1900以上2100未満。
F:CRが1900未満。
【0232】
緑色単色カラーフィルターについては、y=0.600のときのCRを、以下の6段階の基準に従い、評価した。
A:CRが4000以上。
B:CRが3700以上4000未満。
C:CRが3400以上3700未満。
D:CRが3000以上3400未満。
E:CRが3000未満。
【0233】
青色単色カラーフィルターについては、y=0.141のときのCRを、以下の6段階の基準に従い、評価した。
A:CRが3300以上。
B:CRが3000以上3300未満。
C:CRが2800以上3000未満。
D:CRが2600以上2800未満。
E:CRが2400以上2600未満。
F:CRが2400未満。
【0234】
[6.3]明度の評価
前記各実施例および比較例のカラーフィルター用インクセットを用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、8000枚目に製造されたカラーフィルターを用いて、同条件で図4に示すような液晶表示装置を製造した。これらの液晶表示装置について、下記に示すような評価を行った。液晶表示装置について、各色の単色表示を行い、色度計(ミノルタ社製、CM−3700d、光源としてC光源使用)を用いて、xyY表色法による三刺激値を求め、下記のようにして評価を行った。
すなわち、赤色の単色表示については、x=0.651の時のY値を、以下の6段階の基準に従い、評価した。
【0235】
A:明度Yが21.5以上。
B:明度Yが21.1以上21.5未満。
C:明度Yが20.7以上21.1未満。
D:明度Yが20.3以上20.7未満。
E:明度Yが18.8以上20.3未満。
F:明度Yが18.8未満。
【0236】
また、緑色の単色表示については、y=0.600の時のY値を、以下の6段階の基準に従い、評価した。
A:明度Yが57.5以上。
B:明度Yが56.1以上57.5未満。
C:明度Yが54.3以上56.1未満。
D:明度Yが53.2以上54.3未満。
E:明度Yが51.5以上53.2未満。
F:明度Yが51.5未満。
【0237】
また、青色の単色表示については、y=0.141の時のY値を、以下の6段階の基準に従い、評価した。
A:明度Yが12.0以上。
B:明度Yが11.6以上12.0未満。
C:明度Yが11.2以上11.6未満。
D:明度Yが10.8以上11.2未満。
E:明度Yが10.3以上10.8未満。
F:明度Yが10.3未満。
【0238】
[6.4]色むら、濃度むら
前記[6.3]で製造した前記各実施例および比較例の液晶表示装置について、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示、白色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、各部位での色むら、濃度むらの発生状況を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0239】
A:色むら、濃度むらが全く認められない。
B:色むら、濃度むらがほとんど認められない。
C:色むら、濃度むらがわずかに認められる。
D:色むら、濃度むらがはっきりと認められる。
E:色むら、濃度むらが顕著に認められる。
【0240】
[6.5]液晶層の電圧保持率
前記[6.3]で製造した前記各実施例および比較例の液晶表示装置を用意し、液晶層に、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、16.5ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から16.5ミリ秒後の電圧保持率(VHR)を、液晶用電圧保持率測定システム(マイクロニクス社製、製品名「MZ1800」)を用いて測定し、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:VHRが98%以上。
B:VHRが96%以上98%未満。
C:VHRが91%以上96%未満。
D:VHRが91%未満。
【0241】
[6.6]すじむらの発生
前記各実施例および比較例のカラーフィルター用インクセットを用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、5000枚目に製造されたカラーフィルターについて、以下のようにしてすじむら(すじ状のむら)の発生状況を評価した。
[6.6.1]透過すじ
点灯したNaランプ上に、カラーフィルターを載置し、目視による観察を行い、カラーフィルターにすじむら(透過すじ)の発生状況について、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:すじむらが全く認められない。
B:10mm未満の微細なすじがわずかに発生していた。
C:10mm未満の微細なすじがはっきりと確認できる程度に発生していた。
D:10mm未満の微細なすじが顕著に認められる。または、10mm以上のすじ
が発生していた。
【0242】
[6.6.2]反射すじ
黒色の板上に、カラーフィルターを載置し、カラーフィルターの法線方向から30°傾斜した方向からキセノンランプからの光を照射した状態で、目視による観察を行い、カラーフィルターにすじむら(反射すじ)の発生状況について、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:すじむらが全く認められない。
B:10mm未満の微細なすじがわずかに発生していた。
C:10mm未満の微細なすじがはっきりと確認できる程度に発生していた。
D:10mm未満の微細なすじが顕著に認められる。または、10mm以上のすじ
が発生していた。
【0243】
[6.7]個体間での特性差
前記各実施例および比較例のカラーフィルター用インクセットを用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、1〜20枚目、および、7980〜7999枚目に製造されたカラーフィルターを用意し、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示、白色の単色表示を行い、分光光度計(大塚電子社製、MCPD3000)を用いて測色した。その結果から、各実施例および比較例について、それぞれ、1〜20枚目、7980〜7999枚目に製造されたカラーフィルター(合計40枚のカラーフィルター)で最大となる色差(Lab表示系での色差ΔE)を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0244】
A:色差(ΔE)が1.5未満。
B:色差(ΔE)が1.5以上2.7未満。
C:色差(ΔE)が2.7以上3.6未満。
D:色差(ΔE)が3.6以上4.6未満。
E:色差(ΔE)が4.6以上。
【0245】
[6.8]ヒートサイクル試験
前記各実施例および比較例のカラーフィルター用インクセットを用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、5021〜5030枚目に製造されたカラーフィルターを用いて、同条件で図4に示すような液晶表示装置を製造した。
これらの液晶表示装置を用いて、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、光漏れ(白抜け、輝点)が発生していないことを確認した。
【0246】
次に、上記の液晶表示装置からカラーフィルターを取り外した。
取り外した各カラーフィルターを、20℃の環境下に1.5時間、次いで、55℃の環境下に2.5時間、次いで、20℃の環境下に1.5時間、次いで、−20℃の環境下に2.5時間静置した。その後、再び、環境温度を20℃に戻し、これを1サイクル(8時間)とし、このサイクルを合計60回繰り返した(合計480時間)。
【0247】
その後、これらのカラーフィルターを用いて、再び、図4に示すような液晶表示装置を組み立てた。
これらの液晶表示装置を用いて、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、光漏れ(白抜け、輝点)の発生状況を、以下の6段階の基準に従い、評価した。
【0248】
A:光漏れ(白抜け、輝点)の発生したカラーフィルターはない。
B:1〜2枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
C:3〜4枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
D:5〜7枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
E:8〜9枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
F:10枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
【0249】
[6.9]耐溶剤性評価
前記各実施例および比較例のカラーフィルター用インクセットを用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、4001〜4005枚目に製造されたカラーフィルターを用いて、同条件で図4に示すような液晶表示装置を製造した。これらの液晶表示装置について、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行い、分光光度計(大塚電子社製、MCPD3000)を用いて測色した。
次に、上記の液晶表示装置からカラーフィルターを取り外した。
取り外した各カラーフィルターを、50℃の溶剤中に60分間浸漬した後、再び、図4に示すような液晶表示装置を組み立てた。
【0250】
これらの液晶表示装置について、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行い、分光光度計(大塚電子社製、MCPD3000)を用いて測色した。
これらの結果から、各実施例および比較例について、カラーフィルターの溶剤への浸漬前後での色差(Lab表示系での色差ΔE)を求め、以下の3段階の基準に従い、評価した。
【0251】
A:色差(ΔE)が3.0未満。
B:色差(ΔE)が3.0以上3.5未満。
C:色差(ΔE)が3.5以上。
溶剤としては、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、イソプロピルアルコール(IPA)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、0.5N塩酸(HCl)、0.5N水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)を用いた。
【0252】
これらの結果を表5〜表7に示す。なお、表中、インクの吐出安定性評価および長期安定性評価については、「R」の欄にRインクについての評価結果、「G」の欄にGインクについての評価結果、「B」の欄にBインクについての評価結果、「第2」の欄に第2のインクについての評価結果を示し、また、カラーフィルターの評価については、「R」の欄に赤色着色部または赤色表示についての評価結果、「G」の欄に緑色着色部または緑色表示についての評価結果、「B」の欄に青色着色部または青色表示についての評価結果を示した。
【0253】
【表5】

【0254】
【表6】

【0255】
【表7】

【0256】
表5〜表7から明らかなように、本発明では、優れた結果が得られたのに対し、比較例では、満足な結果が得られなかった。また、本発明では、インクの高速描画が可能であり、全体としてのカラーフィルターの生産性を優れたものとすることができたのに対し、比較例では、このような効果が得られなかった。より具体的には、ピエゾ素子の振動数を20kHzと高めたとき、前記各実施例(本発明)のインクセットでは、いわゆるサテライトや尾引き等の問題を生じることなく、安定的な液滴吐出が可能で、カラーフィルターの製造を行うことができたのに対し、比較例では、上記のような問題の発生がより顕著となり、カラーフィルターの製造に適用することができなかった。
【0257】
また、市販の液晶テレビを分解し、液晶表示装置部分を、上記のようにして製造したものと交換して、上記と同様の評価を行ったところ、上記と同様な結果が得られた。
また、前記各実施例で得られたカラーフィルターについて、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察を行ったところ、各実施例(本発明)では、着色部内での気泡の存在が認められなかったのに対し、比較例では、着色部内に多数の気泡が存在することが確認された。実施例1のカラーフィルター用インクセットを用いて製造されたカラーフィルター(7000枚目)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図8に、比較例2のカラーフィルター用インクセットを用いて製造されたカラーフィルター(7000枚目)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図9に示した。
【符号の説明】
【0258】
1…カラーフィルター 11…基板 12…着色部 12A…第1の着色部 12B…第2の着色部 12C…第3の着色部 13…隔壁 14…セル 21…第1のインク 22…第2のインク 121…着色膜 122…樹脂膜 3…塗膜 60…液晶表示装置 61…共通電極 62…液晶層 63、64…配向膜 65…画素電極 66…基板(対向基板) 67、68…偏光板 100…液滴吐出装置 101…タンク 102…吐出走査部 103…液滴吐出手段 104…第1位置制御装置(移動手段) 106…ステージ 108…第2位置制御装置(移動手段) 110…チューブ 112…制御手段 1000…画像表示装置 1100…パーソナルコンピューター 1102…キーボード 1104…本体部 1106…表示ユニット 1200…携帯電話機 1202…操作ボタン 1204…受話口 1206…送話口 1300…ディジタルスチルカメラ 1302…ケース(ボディー) 1304…受光ユニット 1306…シャッターボタン 1308…回路基板 1312…ビデオ信号出力端子 1314…データ通信用の入出力端子 1430…テレビモニター 1440…パーソナルコンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた多数個のセル内に着色部を有するカラーフィルターを、インクジェット方式により製造するのに用いるカラーフィルター用インクセットであって、
着色部は、着色膜と樹脂膜とを有するものであり、
着色剤と、前記着色剤が分散および/または溶解する第1の液性媒体と、下記式(1)で表される単量体成分m1とカルボキシル基または酸無水物基を有する単量体成分m2と下記式(3)で表される単量体成分m3とを含む重合体Mとを含み、前記着色膜の形成に用いられる第1のインクと、
前記第1のインクと同一のセル内に吐出されることにより、前記樹脂膜を形成する第2のインクとを備え、
前記第2のインクは、下記式(11)で表される単量体成分x1と下記式(13)で表される単量体成分x3と下記式(14)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xと、下記式(15)で表される単量体成分y1を含む重合体Yと、前記重合体Xおよび前記重合体Yを分散および/または溶解する第2の液性媒体とを含むものであり、
前記第2のインク中における前記重合体Xの含有率をC[wt%]、前記第2のインク中における前記重合体Yの含有率をC[wt%]としたとき、1.0≦C/C≦6.0の関係を満足することを特徴とするカラーフィルター用インクセット。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【請求項2】
前記着色剤として、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド254、および、これらの誘導体のうち少なくとも1種を含むインクを前記第1のインクとして備える請求項1に記載のカラーフィルター用インクセット。
【請求項3】
前記着色剤として、C.I.ピグメントグリーン58を含むインクを前記第1のインクとして備える請求項1または2に記載のカラーフィルター用インクセット。
【請求項4】
前記着色剤として、C.I.ピグメントブルー15:6を含むインクを前記第1のインクとして備える請求項1ないし3のいずれかに記載のカラーフィルター用インクセット。
【請求項5】
前記第1のインクは、前記第1の液性媒体として、沸点が250℃以上の高沸点成分を含まないものである請求項1ないし4のいずれかに記載のカラーフィルター用インクセット。
【請求項6】
前記第1の液性媒体は、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、および、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである請求項1ないし5のいずれかに記載のカラーフィルター用インクセット。
【請求項7】
前記第2のインクは、前記第2の液性媒体として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートとともに、メトキシブチルアセテートおよび/またはジプロピレングリコールジメチルエーテルを含むものである請求項1ないし6のいずれかに記載のカラーフィルター用インクセット。
【請求項8】
前記第2のインク中におけるジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートの含有率をC[wt%]、前記第2のインク中におけるメトキシブチルアセテートの含有率とジプロピレングリコールジメチルエーテルの含有率との和をC[wt%]としたとき、0.15≦C/C≦0.43の関係を満足する請求項1ないし7のいずれかに記載のカラーフィルター用インクセット。
【請求項9】
複数種の前記第1のインクと、少なくとも1種の前記第2のインクとを備えるものである請求項1ないし8のいずれかに記載のカラーフィルター用インクセット。
【請求項10】
多数個のセルが設けられた基板上に、インクをインクジェット方式で吐出して、カラーフィルターを製造する方法であって、
着色剤と、着色剤が分散および/または溶解する第1の液性媒体と、下記式(1)で表される単量体成分m1とカルボキシル基または酸無水物基を有する単量体成分m2と下記式(3)で表される単量体成分m3とを含む重合体Mとを含む第1のインクを前記セル内に吐出する第1のインク付与工程と、
前記セル内に吐出された第1のインクから前記第1の液性媒体を除去し、着色膜を形成する第1の液性媒体除去工程と、
前記第1のインクが吐出された前記セル内に、下記式(11)で表される単量体成分x1と下記式(13)で表される単量体成分x3と下記式(14)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xと、下記式(15)で表される単量体成分y1を含む重合体Yと、前記重合体Xおよび前記重合体Yを分散および/または溶解する第2の液性媒体とを含み、前記重合体Xの含有率をC[wt%]、前記重合体Yの含有率をC[wt%]としたとき、1.0≦C/C≦6.0の関係を満足する第2のインクを吐出する第2のインク付与工程と、
前記セル内に吐出された前記第2のインクから前記第2の液性媒体を除去し、樹脂膜を形成する第2の液性媒体除去工程とを有することを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【請求項11】
前記第1の液性媒体除去工程は、230℃以上の温度で、30分以上の加熱処理を行うものである請求項10に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし9のいずれかに記載のカラーフィルター用インクセットを用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。
【請求項13】
請求項10または11に記載の方法を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。
【請求項14】
請求項12または13に記載のカラーフィルターを備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項15】
請求項14に記載の画像表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−227420(P2011−227420A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99534(P2010−99534)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】