説明

カラーフィルタ用インクジェットインキ

【課題】カラーフィルタ工程において、高い吐出安定性を提供し、ピクセル内のハジキのないインクジェットインキを提供すること。
【解決手段】ポリジメチルシロキサンを主骨格とし、ラクトン類により変成されたシリコーン系化合物を、インキに対し、0.01%〜1%の範囲で含有することを特徴とするカラーフィルタ用インクジェットインキ。また、ラクトン類による変性が、カプロラクトン変性、バレロラクトン変成、ブチロラクトン変成の少なくともいずれかであることを特徴とするカラーフィルタ用インクジェットインキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法により形成される、カラー液晶ディスプレイ用カラーフィルタ用インキに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、カラーフィルタの製造方法では、スピンコート法が用いられていたが、インキを必要以上に塗布する必要があり、インキコストがかさむ問題があった。
【0003】
この問題を改良するために、近年では、スピンレスコート法として、ダイコート法に代表されるインキ使用量を削減する塗工方法が主流になっている。しかし、このスピンレスコート法においも更なる歩留まりの向上が検討されている。
【0004】
カラーフィルタ作成時の外周膜厚差の改良方法として、特許文献1に記載される発明が挙げられる。概発明においては、動的表面張力をシリコーン系の添加剤を用いて改良を行っている。一般にスピンレスによる塗工方法においても、一旦ガラス全面にインキを塗工した後、UV露光や、アルカリ洗浄の工程によりパターン化される技術である点においては、スピン法と同じといえる。このため、各ブラックマトリックス(以下BM)間のピクセルへは、インキは強制的に塗工され、ピクセル内の濡れ性の点から言うと、以下説明するインクジェット式の塗工方法と比較して重要ではない。
【0005】
さらに近年、本発明で記述されるインクジェット方式を用いたカラーフィルタ製造方法は、インキを必要な量のみピクセル内に吐出させ、カラーフィルタを形成させるため、インキ使用量の低減だけでなく、UV露光、アルカリ洗浄のフォトレジスト工程を削減することが可能であり、製造時間や、設備投資削減の点から大幅なコストダウンが期待されている。
【0006】
しかしながら、インクジェット方式でカラーフィルタを製造するためには、幾つもの解決すべき技術的課題が存在した。一つはヘッドの吐出精度である。従来のグラフィックアーツ用に比べ、高い着弾精度を要求されるため、各ノズルの吐出速度を均一にコントロールする必要があり、さらに吐出後、着弾位置精度を高めるヘッドを構成する必要があった。これらの課題は、ノズル毎の電圧を制御することにより、吐出速度を均一にする、さらにはMEMS技術を駆使してヘッドモジュール構成を行うことにより解決されつつあるなど、ヘッドメーカーの多大な努力により、カラーフィルタや電子材料用途へ向けたヘッド設備の環境が整備され始めている。
【0007】
また、もう一つの技術的課題は、BMとインキのマッチングである。インクジェット方式では、ピクセル間の混色を防止するために、BMに対し、吐出されたインキをはじくいわゆる撥インキ性能を付与する必要がある。この撥インキ性能付与のため、BMインキに添加剤を加えるまたは、工程中に撥インキ性能を付与するなどのとり組みが行われている。
【0008】
さらにインクジェットインキとしての課題は、溶剤を乾燥させる際発生する画素形状の不均一性の解決である。たとえば、インクジェット法で作成されたカラーフィルタのムラを低減させるために、ポリシロキサンの側鎖をエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド変性したシリコーン系の添加剤を用い改良されるインキが開発されている。(特許文献2)
【0009】
しかしながら、概発明で使用されている溶剤に対して、または、本発明において使用される原料に対して相溶性が悪いため、おそらくは添加剤が大きなミセルを形成し一部エマルションとして挙動し、ガラス表面でインキハジキ発生が問題となることがある。
また、フッ素系の添加剤を用いることにより、表面荒れを改善する発明が公知とされている。(特許文献3,4)
概発明によれば、フッ素系の添加剤を使用することにより、表面荒れが低減され、且つリコート性が良好になるとされる。
【0010】
しかしながら、BMの上面にもフッ素が存在するにもかかわらず、インキにフッ素系の添加剤を使用するため、BM上面へインキが侵食し、場合によっては搬送中や、インキ吐出中に隣り合う色との混色が発生し、カラーフィルタの生産効率を著しく悪化させる。
【0011】
以上のようにカラーフィルタをインクジェット方式により作成する方法においては、現在も各社検討を進めている。しかし上記の通り、混色を防ぐためにBM表面に撥インキ性能が必要であることから、インキにはBM表面では適度にハジキ、ピクセル内では十分広がる性能が求められる。この結果、従来のインキではこれらの品質の両立が難しく、結果、ピクセル内でハジキが発生し、リペアする必要が発生し、本来のインクジェット方式で期待される工程時間の短縮や、コストの削減が得られにくい現状にある。
【0012】
また、インキのもう一つの課題として、連続で吐出した場合の着弾精度(吐出安定性)の改良である。
【0013】
本発明では、前記ハジキや色むらを解決し、且つ吐出安定性を解決することを目的としている。
【特許文献1】特開2006−215160号公報
【特許文献2】特開2007−204662号公報
【特許文献3】特開2007−003945号公報
【特許文献4】特開2007−072283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、インクジェット方式によるカラーフィルタ製造において、インクジェット吐出安定性の向上と、ピクセル内でのハジキを低減による、従来の生産性の低下原因を解決されたインクジェット用インキならびにこれを用いて得られたカラーフィルタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち本発明は、ポリジメチルシロキサンを主骨格とし、ラクトン類により変成されたシリコーン系化合物を、インキに対し、0.01%〜1%の範囲で含有することを特徴とするカラーフィルタ用インクジェットインキに関する。
【0016】
また本発明は、ラクトン類による変性が、カプロラクトン変性、バレロラクトン変成、ブチロラクトン変成の少なくともいずれかであることを特徴とする上記カラーフィルタ用インクジェットインキに関する。
また本発明は、上記変性部位が、ポリジメチルシロキサンの直鎖上であることを特徴とするカラーフィルタ用インクジェットインキに関する。
また本発明は、上記インキに用いる溶剤として、常圧における沸点が200℃〜300℃であるアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート系溶剤、またはアルキレングリコールジアセテート系溶剤を1種類の単独または2種類以上の混合溶剤として70%以上使用することを特徴とするカラーフィルタ用インクジェットインキに関する。
【0017】
また本発明は、上記溶剤が、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテートの少なくともいずれかであることを特徴とするカラーフィルタ用インクジェットインキに関する。
また本発明は、エステル変性樹脂を含有することを特徴とする上記カラーフィルタ用インクジェットインキに関する。
【0018】
さらに本発明は、上記インキを用いて形成される液晶ディスプレイ用カラーフィルタ、ならびに液晶パネルに関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のインクジェットインキは、カラーフィルタ工程において、高い吐出安定性を提供し、ピクセル内のハジキのないインクジェットインキを提供できる。結果、生産効率の極めて高いカラーフィルタを製造することができる。
さらに、泡問題の少ないインクジェット用インキを提供できる。
さらに、高コントラストを発現しうるインクジェット用インキを提供できる。
さらに、平滑性の良好なカラーフィルタ作成しうるインクジェット用インキを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
まず、本発明のインキに用いるポリジメチルシロキサンを主骨格としたラクトン類により変性したシリコーン系化合物について説明する。
【0021】
ポリジメチルシロキサンは、一般的にはシリコーンオイルとして呼ばれることもあり、現在では一般的なシリコーンである。ただし、これらシリコーンオイルは、そのままではオイルとしての性質が強すぎるため、一部のオイル系溶剤を用いる系以外への親和性は低く、用途が限定される。この中でもジメチルシロキサンは、典型的なシリコーンオイルの骨格であり、さらにSi−O結合上である直鎖上を変性可能なポリシリコーンや、Si−O結合に対し、側鎖に相当する部位を変性可能なポリシリコーンが知られる。これらを変性することにより溶剤やインキの使用原料に親和性のあるシリコーン系化合物を得ることができる。変性可能なシリコーンとして、具体的にはモノアミン変性、ジアミン変性、アミノ変性、エポキシ変性、脂環式エポキシ変性、カルビノール変性、メルカプト変性、カルボキシル変性、ハイドロジェン変性、アミノ・ポリエーテル変性、エポキシ・ポリエーテル変性、エポキシ・アラルキル変性など挙げることができるが、さらに変性などによりラクトン類と反応可能であれば、これを限定しない。なかでも、そのまま反応を行うことができるため、カルビノールや、シラノールなどの水酸基を有する反応性シリコーンを好適に用いることができる。
【0022】
また、カプロラクトン、バレロラクトン、ブチロラクトンは代表的な骨格として、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトンを挙げることができるが、これに限定しない。特に、開環重合により、エステル結合を形成しうるラクトン類であれば用いることができる。なかでも、上記のε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトンやその誘導体による重合反応は、既存技術として知られ、また、反応制御も行い易く、比較的容易に化合物に特性を付与することができる上、多くの溶剤や原料に相溶性が良いため、好適に用いることができる。また、これらラクトン類は、重合度を加減することで、さらに任意の特性を付加できる。なかでも、これら化合物を用いる場合、ラクトン類の重合度が1以上ないと、溶剤への相溶性が極めて悪く、30以上の重合度を有する場合、添加剤の動的な移動速度が極めて悪くなるため、高速での印刷、印字適性が悪化する。
【0023】
さらに、ポリジメチルシロキサンの変性部位は、主骨格であるSi−O結合に対して直鎖上であることが好ましい。直鎖上を変性したシリコーン系化合物を用いた場合、起泡性、または消泡性が良好となるためである。
【0024】
また、本発明のシリコーン系化合物は、インキ中に、0.01%〜1%含有されることが好ましい。これらの化合物をこの範囲内でインクジェット用インキに用いると、BM内でのハジキや色むらが解決し、且つ連続で吐出した場合、吐出した液滴が偏向せず、安定に飛行することにより、着弾精度を維持した生産性に優れるインキを提供することができる。0.01%未満の場合、シリコーン化合物の効果が得られにくく、ピクセル内の色むらを解決できない。また、1%以上である場合、ヘッド部材とインキの親和性が高くなりすぎるため、おそらくノズル周辺にインキが付着し始め、液滴の偏向が発生し着弾精度が低下するため吐出安定性が維持できない。
【0025】
また、本発明におけるシリコーン系化合物は、市販されている代表的な添加剤としては、直鎖変性型としてBYK-310,BYK-370、側鎖変性型としてBYK-315(いずれもビックケミー・ジャパン社)などが挙げられる。
【0026】
また、本発明にて用いられる溶剤として、樹脂に対する溶解性、装置部材に対する膨潤作用、粘度、及びノズルにおけるインキの乾燥性の点から選択され、例えば、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤等の1種類を単独で、又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0027】
アルコール系溶剤としては、例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、アミルアルコール等が挙げられる。
【0028】
グリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1−ブトキシエトキシプロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート等が挙げられる。
【0029】
エステル系溶剤としては、例えば、乳酸エチル、乳酸プロパン、乳酸ブチル等が挙げられる。
【0030】
ケトン系溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、イソホロン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン等が挙げられる。
なかでも、顔料の分散性能と、インクジェットインキの吐出性の点から、常温における沸点が200℃〜300℃であるアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート系溶剤乃至はアルキレングリコールジアセテート系溶剤を1種類の単独または2種類以上の混合溶剤として70%以上使用することが好ましい。さらに良好な顔料分散性や吐出性を得るためには、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテートを好適に用いることができる。
【0031】
また、さらにシラノール系化合物との相溶性や、顔料分散時の低粘度化の点からエステル変性された分散樹脂を用いることが好ましい。また、低粘度化は、インキ中の顔料濃度を向上させることができるため、インクジェット吐出工程での時間を短縮できることから、生産性を向上させることができるため、好ましい。
【0032】
さらに、バインダーとして樹脂を添加してもよい。バインダー樹脂の選定は、インクジェット適性や、カラーフィルタ適性から選択することができる。たとえば、国際公開番号WO2007/60790に記載されるリン酸基を含有するバインダー樹脂を用いることにより、顔料分散性や、分散ペーストの低粘度化効果が得られ、好適に用いることができる。また、さらに、上記バインダー樹脂に加え、上記エステル変性された樹脂を併用することにより、さらに低粘度化、高コントラスト化を実現可能となり、カラーフィルタ用インクジェットインキにより好適に用いることができる。
その他、単官能又は多官能モノマー、オリゴマー、プレポリマーなどの不飽和結合を有する原料や、オイル、レベリング剤などを適宜含有することができる。
【0033】
とくにカラーフィルタ用として用いる場合、各種耐性を付与させるため、例えば、エポキシ系モノマー、オキセタン環を有するモノマーなどを用いることができる。これらにより活性エネルギー線による架橋も可能となる。また、紫外線などのエネルギー線を用いる場合は、その反応に準じた開始剤も用いることができる。
【0034】
本発明のインクジェット用インキは、熱架橋剤を含有することが好ましい。UV露光工程を必要とせず、タクトタイムの低減につながるためである。熱架橋剤としては具体的にはメラミン化合物やベンゾグアナミン化合物、エポキシ化合物、多官能不飽和モノマー、アルキル化メラミン樹脂、ジアリルフタレート、イソシアネート化合物などが挙げられ、これらは単独または2種類以上混合して用いることができる。中でもメラミンまたはメラミン誘導体を含有することが好ましい。
【0035】
メラミン化合物としては、例えば、イミノ基、メチロール基、及び/又はアルコキシメチル基を有するものが挙げられ、特にアルコキシメチル基のみを含有するメラミン化合物が好ましい。アルコキシメチル基含有メラミン化合物の具体例としては、ヘキサメトキシメチロールメラミン、又はヘキサブトキシメチロールメラミン等を挙げることができる。
【0036】
メラミン化合物の市販品の具体例としては、以下のものを挙げることができる。但し、必ずしもこれらに限定されるものではない。三和ケミカル社製ニカラックMW−30M、MW−30、MW−22、MS−21、MX−45、MX−500、MX−520、MX−43、MX−302、日本サイテックスインダストリー社製サイメル300、301、303、350、285、232、235、236、238、マイコート506、508などである。
【0037】
本発明におけるインキ中には着色剤として染料または顔料を用いることができる。染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料、反応性染料、分散染料、含金属染料等が挙げられ、本発明の目的に反しない限り単独で、または混合して使用することができる。
また、顔料としては、顔料としては一般的に用いられているものや、特に耐光性、耐候性が求められる場合は、キナクリドン系、アンスラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、モノアゾ系、不溶性アゾ系、ナフトール系、フラバンスロン系、アンスラピリミジン系、キノフタロン系、ピランスロン系、ピラゾロン系、チオインジゴ系、アンスロン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系、インダンスロン系等の有機顔料やニッケルジオキシンイエロー、銅アゾメチンイエロー等の金属錯体、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等の金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属塩、カーボンブラック、アルミニウム、雲母等の無機顔料が挙げられる。またメタリック感やパール感を出すためにはアルミニウム等の金属微紛マイカ微紛が用いられる。染料としては、アゾ系、キノリン系、スチルベンゼン系、チアゾール系、インジゴイド系、アントラキノン系、オキサジン系等が挙げられる。
【0038】
カラーインデックスで記載すると、例えば、C.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、254、255、264、272、または、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、または、C.I.Pigment orange 36、43、51、55、59、61、C.I.Pigment Green 7、10、36、37、C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等の顔料を挙げることができるがこれに限定されない。
【0039】
本発明のインクジェット用インキは、上記の顔料を1種単独で含有するか、あるいは2種以上を混合して含有することができる。
また、耐光性や、耐水性などの点から顔料を用いることが好ましい。
また、上記顔料を安定に分散するために、顔料誘導体を用いることができる。顔料誘導体は、例えば、一般式(1):
G1−(E) (1)
(式中、G1は、色素原型化合物残基であり、Eは、塩基性置換基、酸性置換基、又は中性置換基である)
で表される化合物であり、本発明を達成するために必要であれば、単独で、または複数の顔料誘導体を混合して使用することができる。
【0040】
[実施例]
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」は、「重量部」を表す。
【0041】
・シリコーン系化合物の合成
オルガノシロキサンとラクトン類の共重合方法は多種検討されているが、本発明に於いては、特許文献特昭59−207922中の実施例1記載の合成方法に基づき、ラクトン変性のシリコーン化合物の合成を行った。ただし、この合成例は、この化合物の構造を限定するものではなく、他の手法により合成されるオルガノシロキサン/ラクトン類の共重合体であってもよい。
【0042】
具体的には、攪拌機、温度計及びコンデンサーを接続した500ml三口フラスコに、ε−カプロラクトン200g及び両末端水酸基で停止されたポリジメチルシロキサン100gをとり、窒素雰囲気中で撹拌する。徐々に反応温度を上昇させ、30分後に90℃になった時点で、触媒として0.5gの2−エチルヘキサン酸スズを添加する。さらに20分後に反応温度を140℃まで上昇させ、140〜150℃で4時間反応させた。その後2時間この温度で1mmHgに減圧し未反応のε−カプロラクトンを除去し、カプロラクトン変性シリコーン系化合物Aを得た。
【0043】
また、同様の方法を用いて、ε−カプロラクトンに変えて、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトンを用いて反応して得たラクトン変性シリコーン系化合物を各々化合物B、化合物Cとした。
【0044】
また、上記ポリジメチルシロキサンに変えて、両末端をメチル基で停止された、側鎖カルビノール変性シロキサン(X-22-4039:信越化学製)を用いて、ε−カプロラクトンを用いて同様に反応、製造された化合物を化合物Dとした。
【0045】
また、比較例として側鎖をエチレンオキサイドまたは、プロピレンオキサイドで変性してなるシリコーン系化合物として、特許公報特開2006−215160に記載の通り、ビックケミー社製「BYK−330」を化合物E,「BYK−333」を化合物Fとして使用した。
【0046】
・顔料分散剤の合成
国際公開番号WO2007/00765に記載される実施例1に従い、顔料分散用のエステル変性樹脂を合成した。
具体的にはガス導入管、温度計、コンデンサー、及び攪拌機を備えた反応容器に、1−ドデカノール62.6部、ε−カプロラクトン287.4部、及び触媒として、モノブチルスズ(IV)オキシド0.1部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱下に撹拌した。固形分測定により、98%が反応したことを確認し、第一の工程を終了した。この反応生成物にピロメリット酸二無水物36.6部を追加し、100℃で5時間反応させた。酸価の測定で97%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認して、第二の工程を終了し顔料分散用のエステル変性樹脂を作成した。得られたエステル変性樹脂を分散剤Aとした。
【0047】
・バインダー樹脂の合成
国際公開番号WO2007/60790の実施例中に<R1>と記載される製造方法に従い、バインダー樹脂を合成した。
具体的には、セパラブル4ロフラスコに温度制御用レギュレーター、冷却管、撹拌装置を取り付けて、溶剤(CBAc)100部を仕込み、100℃に昇温し反応容器内を窒素置換した後、滴下管より下記の原料を添加し、5時間反応を継続し、アクリル樹脂の溶液(固形分50%)を得た。
メタクリル酸 20部
2一ヒドロキシエチルメタクリレート 20部
n一ブチルメタクリレート 57部
ボスマーM 3部
2,2'一アゾビスイソブチロニトリル 4部
得られたバインダー樹脂を樹脂Aとした。
・顔料分散ペースト作成
以下記載の表1の原料と配合量を用いて顔料分散ペーストを作成した。
具体的には、分散剤と分散樹脂を溶剤に溶解させた後、顔料を充分混合し、同溶剤で固形分35%に希釈したのち、サンドミルで湿式分散を行い、顔料分散ペーストを作成した。
【0048】
【表1】

【0049】
・インクジェットインキ作成
以下記載の表2の原料と配合量を用いて、インクジェットインキを作成した。
具体的には、顔料分散ペーストに、記載されている原料を撹拌しながらゆっくり投入し、インキを作成した。
【0050】
【表2】

本発明に用いられたインキは、色度、膜厚のバランスを液晶ディスプレイ用に調整してあるため、顔料成分や、樹脂成分を加減する粘度の調整は、仕上がり時の粘度が15mPa.sを上回る場合に限り実施する。インキ中の溶剤を単独使用している場合はその溶剤を用いて、また、混合使用している場合は、インキ作成時に使用した主溶剤を用いて希釈し、粘度が15mPa.s以下になるように粘度調整を行った。得られたインキは、1μmのフィルターを用いて濾過を行い調整した。
【0051】
・インクジェット用BMの製造
カラーフィルタ用途としての評価のため、BMを以下の通りに作成した。
[BMの作成]
[アクリル樹脂溶液の調製]
反応容器にシクロヘキサノン800部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら100℃に加熱して、同温度でメタクリル酸60部、メタクリル酸ブチル65.部、メタクリル酸メチル65部、スチレン60部、及びアゾビスイソブチロニトリル10部の混合物を1時間かけて滴下し、更に100℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル2部をシクロヘキサノン50部で溶解させたものを添加し、更に100℃で1時間反応を続けて樹脂溶液を合成した。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃で20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20%となるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂溶液を調製した。尚、アクリル樹脂の重量平均分子量は40000であった。
[カーボンブラック分散体の調製]
カーボンブラック(デグサ社製「Printex 55」)9.3部、分散剤(ゼネカ社製「ソルスパース20000」)2部、上記アクリル樹脂溶液24部およびシクロヘキサノン40部と均一に混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて5時間分散することによりカーボンブラック分散体を調製した。
【0052】
[カーボンブラックレジストの調整]
カーボンブラック分散体を60部、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製「NKエステルATMPT」)4.3部、光重合開始剤2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバガイギー社製「イルガキュア369」)2部、増感剤(保土ヶ谷化学社製「EAB-F」)0.4部、及びシクロヘキサノン21.6部、撥インキ剤(東洋インキ製造株式会社製「フルシェードFSA−RCS001」)0.9部の混合物を均一に攪拌混合した後、1μmのフィルターで濾過して感光性黒色組成物を調製した。
[パターン形成]
感光性黒色組成物をスピンコート法により10cm×10cmのガラス基板に塗工した後、70℃で15分の乾燥により乾燥膜厚2μmの塗膜を作成した。その後、超高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介して紫外線を200mJ/cm2露光した。次いで、炭酸ナトリウム水溶液を用いて未露光部をスプレー現像した後、イオン交換水で洗浄し未露光部を取り除き、230℃、30分のポストベークを行い作成した。得られたBMは、およそ縦100μm、横300μmの開口部を有していた。
【0053】
・評価方法
[評価:インクジェット吐出によるカラーフィルタ製造]
得られたインキをSII社512ヘッド(公称12pl/1drop)に充填し、電圧15VでBM開口部に1滴ずつ吐出回数を増やしながらピクセルをインキで充填し、1滴〜50滴までインキを充填したピクセルを作成した。その後、このガラス基板を振動や風圧でインキがこぼれない様に100℃で5分乾燥させ、さらに230℃で30分焼き付けを行った。各ピクセルの色度は、CIE色度図上におけるNTSC方式で定められるRGBの三角形の色再現エリアを100%とした場合、テレビ用途として色再現性の基準と言える72%、できればそれ以上達成する色度を設定した。ただし、各色色バランスを考慮して72%を満たすことが好ましく、ターゲット色度は、特開2005−49791に記載されている色度を目安としてRed:x>0.63,Green:y>0.58、Blue:y<0.085となるピクセルをターゲットピクセルと設定した。できあがった各ピクセルの色度を測定し、上記ターゲットピクセルに達成される目標吐出回数を把握した。吐出回数を決定した上で、次に決定した吐出回数でBMからのインキのこぼれを確認しやすいように隣のピクセルが空白の状態で50ピクセル分吐出を行った。ただし、上記色度に関するスペックはパネル各社の光源や、液晶テレビを形成する部材により設定は著しく異なるため、ターゲット色度はこれを制限しない。
【0054】
・インキハジキ
この目標色度におけるピクセルのインキハジキの有無を透過型顕微鏡により目視観察をおこなった。ハジキは確率的に発生するため、この目標色度のピクセルは50回評価を行った。評価は以下の通りに記載した。
【0055】
○:ピクセル内にインキハジキなし
△:明確なハジキは観察されないが、色ムラが発生していた
×:1ピクセル以上ハジキが観察された。
【0056】
・平滑性
ピクセル
上記目標色度を有するピクセルをレーザー顕微鏡で表面形状観察を行ったのち、3次元解析を行い、ピクセル内の高低差を評価した。高低差はピクセルの長軸の中間点を短軸方向に切断したときの断面図から、ピクセル内の最も高い膜厚と最も低い部分の膜厚差により得た。
【0057】
○:0.2um未満
△:0.2-0.5um
×:0.5um以上
・吐出安定性
また、上記インクジェット設備を用いて、連続吐出安定性評価を行った。
【0058】
この評価は、128ノズル全部から吐出を連続で行い、5分ごとに普通紙に印字を行い、印字の様子を観察した。評価内容は、印字間隔にバラツキがでた場合、液滴が偏飛行していると判断した。評価には、印字間隔バラツキが発生した時間を記録し、30分まで評価を継続して行った。
30分まで安定に吐出を行うことができた場合○と記載し、偏飛行の場合、発生時間を記載した。
【0059】
・起泡性と消泡性
インキ自身の評価として、泡立ち性も評価した。インキを充填率60%程度にガラス瓶に充填し、振盪機で5分連続振盪を行ったのち、直後の泡立ち(起泡性)と5分後の泡の残り具合(消泡性)の両面から評価をおこなった。
○ :表面に泡なし
△ :表面に大きな泡のみ発生している。
×:細かい泡が多く発生している。
以上を評価基準としたが、実際、時間にともない泡の形状は変化する場合が多く、著しく泡が消えている場合は、10秒程度経過を観察し評価基準に照らし合わせた。
【0060】
・コントラスト比
分散性を評価する点から、カラーフィルタの代表値であるコントラスト比の評価を行った。目標色度のインキが塗工されたガラス基板を得るために、適した回転速度においてスピンコーターでガラスに塗工したのち、上記と同様の乾燥、焼き付け工程を行い、コントラスト測定用のガラス基板を得た。
【0061】
コントラスト比は、コントラスト計(CT−1:壷坂電機社製)により、ハロゲン光源を用いて測定を行った。また、測定の条件は、偏光板が完全に平行になった時の輝度を1000になるように光源電圧を調整し最大輝度とし、また、輝度が0.1となる、殆ど90°近くに偏光板を交差させたときを最小輝度として、
コントラスト比=最大輝度/最小輝度がブランク状態で10000になるように調整した状態で、偏光板の間に前記の通りに準備したガラス基板を挟み測定した。
【0062】
ただし、このコントラスト比の絶対値はCFの色度や、用いる偏光板、光源により異なる。このため、Red、Green、Blueは各々色別に評価すべきであり、本発明においても、同じ色、同じ色度について、相対的な比較として用いた。
評価結果も、表2に併せて記載した。
実施例1〜12で作成したインキは、インクジェット方式で吐出した際、精度が極めて優れている上に、すべてハジキが発生せず、良好なピクセルを作成することができた。この品質は、生産においても、リペアを行うことなく、パネルの生産性を著しく向上させうると期待できるレベルであった。なかでも実施例1〜3は連続吐出性、起泡性、消泡性に優れ、インクジェット適性に優れている上、平滑性やコントラスト比もレジスト法により得られるカラーフィルタに比べ遜色のない品質をえることができた。これに対し、比較例1〜6では、ピクセルの一部にハジキまたは色ムラが発生する、または連続吐出中に偏向が発生した。これらトラブルは、実際のカラーフィルタ生産において、廃棄もしくはリペアを行う必要があるレベルであった。
【0063】
また、加えて実施例1〜3、5〜12は、若干泡が発生するも、すぐに破泡し、インクジェット印刷の代表的トラブルである泡問題を回避しうる品質であり、インキ生産工程における脱泡工程を大幅に短縮することができた。
【0064】
また、加えて実施例1〜7、10〜11はインキの乾燥速度と必要色度を得るために必要とされる液滴量(インキ中の固形分)が適切であったため、ポストベーク後に観察された平滑性が良好であった。
【0065】
また、実施例1〜8、12は、顔料の分散性に優れた組み合わせであり、従来発現しうるコントラスト比を充分発揮することができた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリジメチルシロキサンを主骨格とし、ラクトン類により変成されたシリコーン系化合物を、インキに対し、0.01%〜1%の範囲で含有することを特徴とするカラーフィルタ用インクジェットインキ。
【請求項2】
ラクトン類による変性が、カプロラクトン変性、バレロラクトン変成、ブチロラクトン変成の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタ用インクジェットインキ。
【請求項3】
請求項1または2記載の変性部位が、ポリジメチルシロキサンの直鎖上であることを特徴とするカラーフィルタ用インクジェットインキ。
【請求項4】
上記インキに用いる溶剤として、常圧における沸点が200℃〜300℃であるアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート系溶剤、またはアルキレングリコールジアセテート系溶剤を1種類の単独または2種類以上の混合溶剤として70%以上使用することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のカラーフィルタ用インクジェットインキ。
【請求項5】
請求項4記載の溶剤が、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテートの少なくともいずれかであることを特徴とするカラーフィルタ用インクジェットインキ
【請求項6】
エステル変性樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のカラーフィルタ用インクジェットインキ
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載のインキを用いて形成される液晶ディスプレイ用カラーフィルタ。
【請求項8】
請求項1〜6いずれか記載のインキを用いて形成される液晶パネル。


【公開番号】特開2009−96898(P2009−96898A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270636(P2007−270636)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】