説明

カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法及びカラーフィルタの製造方法

【課題】カラーフィルタ製造工程における高温加熱工程時に着色層表面の顔料凝集体の析出を抑制し、高コントラストで、位相差の小さい着色層を作製可能で、顔料分散性及び分散安定性に優れたカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を提供する。
【解決手段】結晶析出抑制剤前駆物質と、ジケトピロロピロール系顔料と、顔料分散剤と、硬化性バインダ成分と、溶媒とを含有するカラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法であって、溶媒中、顔料分散剤の存在下で、ジケトピロロピロール系顔料を分散させる顔料分散液を調製する工程と、少なくとも、前記顔料分散液と、前記結晶析出抑制剤前駆物質と、硬化性バインダ成分とを混合する工程を有する、カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法及び、カラーフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。また、家庭用の液晶テレビの普及率も高まっており、益々液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にある。また、最近においては、自発光により視認性が高い有機ELディスプレイのような有機発光表示装置も、次世代画像表示装置として注目されている。これらの画像表示装置の性能においては、コントラストや色再現性の向上といったさらなる高画質化や消費電力の低減が強く望まれている。
これらの液晶表示装置や有機発光表示装置には、カラーフィルタが用いられる。例えば液晶表示装置のカラー画像の形成は、カラーフィルタを通過した光がそのままカラーフィルタを構成する各画素の色に着色されて、それらの色の光が合成されてカラー画像を形成する。また、有機発光表示装置では、白色発光の有機発光素子にカラーフィルタを用いた場合は液晶表示装置と同様にカラー画像を形成する。
このような状況下、カラーフィルタにおいても、高輝度化や高コントラスト化、色再現性の向上といった要望が高まっている。
【0003】
カラーフィルタは、一般的に、透明基板と、透明基板上に形成され、赤、緑、青の着色パターンからなる着色層と、各着色パターンを区画するように透明基板上に形成された遮光部とを有している。
このような着色層の形成方法としては、顔料分散法、染色法、電着法、印刷法などが知られている。中でも、分光特性、耐久性、パターン形状及び精度等の観点から、平均的に優れた特性を有する顔料分散法が最も広範に採用されている。
【0004】
顔料分散法に用いられる顔料分散液は、顔料の分散性、分散安定性の他、カラーフィルタの高輝度化、高コントラスト化等、多くの要求を実現するため、顔料や分散剤等、広く検討されている。その試みの一つとして、顔料誘導体を用いる方法が挙げられる。
【0005】
一方、液晶表示装置はその特有の問題点として、液晶セルや偏光板の屈折率異方性に起因する視野角依存性の問題点がある。この視野角依存性の問題は、液晶表示装置を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合とで視認される画像の色味やコントラストが変化してしまう問題である。このような視野角特性の問題は、近年の液晶表示装置の大画面化に伴って、さらにその重大性を増している。
このような視野角依存性の問題を改善するため、従来、位相差フィルムを液晶表示装置に組み込む方法が広く用いられてきた。しかしながら、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタは、着色層の各色の着色パターンによって異なる位相差を有するため、上記の位相差フィルムを用いた場合、各色の着色パターンが有する位相差の差異は補償することができないという問題があり、視野角依存性の問題点を完全に解決することは困難であった。
そこで、液晶ディスプレイの視野角依存性の問題を改善するために、カラーフィルタにおいても、各着色層自体の位相差の値をゼロに近づけることが求められている。
【0006】
特許文献1では、顔料分散性とその安定性に優れ、コントラストに優れた着色膜を形成し得る顔料分散組成物として、ジケトピロロピロール系顔料と、フタルイミドアルキル化ジケトピロロピロールと、フタルイミドアルキル化キナクリドンと有機溶剤を含有する顔料分散組成物が開示されている。しかしながら、特許文献1の手法によれば、フタルイミドアルキル化顔料誘導体が溶媒に難溶なため、顔料分散性及び分散安定性が低下し、そのためコントラストも低下し、また、後述する比較例のように、得られた着色膜の位相差が大きくなるという問題があった。
【0007】
特許文献2では、有機溶剤に溶解する染料の構造であるが、加熱により構造変化し顔料化する化合物を着色剤として用いることにより、経時での保存安定性、ノズルでの吐出安定性、再溶解性という染料型インキの性質と、記録物の優れた耐光性という顔料型インキの性質とを併せ持つインクジェットインキが得られると記載されている。
【0008】
特許文献3では、特定の有機顔料前駆体化合物を原料として用いることにより、これを変換して得られる有機顔料の粒径が極めて小さく、粒径分布ピークがシャープで、単分散性及び溶媒分散安定性が高い有機顔料微粒子とすることができると記載されている。
【0009】
また、特許文献4では、脱離可能な溶解性基を有する可溶性発色団が記載されている。当該発色団は溶解性が高く、基質に比較的高濃度で配合できるため、高い色強度が達成できると記載されている。
しかしながら、特許文献2〜4に記載のインク組成物は、カラーフィルタ用途として用いた場合のコントラストは不十分であった。また、着色層の位相差については着目されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−251586号公報
【特許文献2】特開平11−293166号公報
【特許文献3】特開2010−83926号公報
【特許文献4】特許第4558106号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、従来より分散を強化することでジケトピロロピロール系顔料の微細化を進め、このような微細化されたジケトピロロピロール系顔料を用いることにより、高輝度で且つ高コントラストな赤色着色層(塗膜)が得られることをつきとめた。
しかしながら、微細化されたジケトピロロピロール系顔料においては、ジケトピロロピロール系顔料の微細化に伴い、カラーフィルタ製造工程における高温加熱工程後、塗膜表面に顔料の結晶乃至凝集体が異物のように発生することがわかった(以下、本発明において、当該現象を結晶析出と称することがある)。この様な顔料の結晶乃至凝集体が塗膜表面に異物のように析出した場合には、カラーフィルタは不良品として用いることができなくなってしまう。
【0012】
本発明者らは、ジケトピロロピロール系顔料と、特定の結晶析出抑制剤とを組み合わせて用いることにより、上記のような塗膜表面に顔料の凝集体が析出する問題を解決できるとの知見を得た。
しかしながら、ジケトピロロピロール系顔料と特定の結晶析出抑制剤とを組み合わせた樹脂組成物を用いて形成された塗膜は、位相差が大きくなるという問題が生じることがわかった。
【0013】
本発明は、このような状況下になされたものであり、カラーフィルタ製造工程における高温加熱工程時に着色層(塗膜)表面の顔料凝集体の析出を抑制し、高コントラストで、位相差の小さい着色層を作製可能なカラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法、及び、高コントラストで位相差が小さい着色層を有するカラーフィルタが得られるカラーフィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、溶媒に可溶で、且つ、熱又は光の作用により結晶析出抑制剤を発生する特定の結晶析出抑制剤前駆物質を用いることにより、高温加熱工程時に顔料凝集体の析出が抑制され、高コントラストで、位相差の小さい着色層が作製可能なカラーフィルタ用赤色樹脂組成物が得られることを見出した。
更に、本発明者らは、当該結晶析出抑制剤前駆物質を顔料の処理時や顔料分散時に用いるのではなく、顔料分散液とは独立にカラーフィルタ用赤色樹脂組成物に添加することにより、コントラストを向上し、位相差を小さくすることができるとの知見を得た。
本発明は、かかる知見に基づいた完成したものである。
【0015】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色樹脂組成物は、下記化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質と、ジケトピロロピロール系顔料と、顔料分散剤と、硬化性バインダ成分と、溶媒とを含有するカラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法であって、
前記溶媒中、前記顔料分散剤の存在下で、前記ジケトピロロピロール系顔料を分散させる顔料分散液を調製する工程と、
少なくとも、前記顔料分散液と、前記結晶析出抑制剤前駆物質と、前記硬化性バインダ成分とを混合する工程を有することを特徴とする。
【0016】
【化1】

(化学式(1)中、Aは、塩素原子、臭素原子、メチル基、スルホ基、又はフェニル基を表し、mは0〜5の整数を表し、mが2以上の整数の場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。B及びBは、それぞれ独立に、水素原子、又は下記化学式(2)で表される基であり、B及びBの少なくとも1つは下記化学式(2)で表される基である。PCyは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい縮合環基、又は、下記化学式(3)で表される多環式化合物基である。)
【0017】
【化2】

(化学式(2)中、Rは、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。)
【0018】
【化3】

(化学式(3)中、Xは、直接結合又はメチレン基を表し、Cyは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい環式化合物基を表し、nは、1〜5の整数を表し、nが2以上の整数の場合、複数のX−Cyは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Aは、塩素原子、臭素原子、メチル基、又はスルホ基を表し、n’は0〜4の整数を表し、n’が2以上の整数の場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、n+n’は1〜5の整数である。)
【0019】
本発明のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法においては、前記結晶析出抑制剤前駆物質が、前記ジケトピロロピロール系顔料の100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが、顔料分散性及び分散安定性を向上し、高コントラストで位相差が小さい着色層が作製可能なカラーフィルタ用赤色樹脂組成物が得られる点から好ましい。
【0020】
本発明に係るカラーフィルタの製造方法は、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタの製造方法であって、
透明基板上に、前記本発明のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法で得られたカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を用いて赤色樹脂組成物層を形成する工程と、
前記赤色樹脂組成物層を、前記化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質におけるB及び/又はBを脱離して、下記化学式(4)で表される結晶析出抑制剤とし、赤色着色層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0021】
【化4】

(化学式(4)中、Aは、塩素原子、臭素原子、メチル基、スルホ基、又はフェニル基を表し、mは0〜5の整数を表し、mが2以上の整数の場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。PCyは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい縮合環基、又は、下記化学式(3)で表される多環式化合物基である。)
【0022】
【化5】

(化学式(3)中、Xは、直接結合又はメチレン基を表し、Cyは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい環式化合物基を表し、nは、1〜5の整数を表し、nが2以上の整数の場合、複数のX−Cyは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Aは、塩素原子、臭素原子、メチル基、又はスルホ基を表し、n’は0〜4の整数を表し、n’が2以上の整数の場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、n+n’は1〜5の整数である。)
【0023】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、前記本発明のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法で得られたカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を用いて赤色樹脂組成物層を形成する工程と、
前記赤色樹脂組成物層を、マスクを介して露光する工程と、
露光後の前記赤色樹脂組成物層を現像し、加熱することにより、所定パターンの赤色着色層を形成する工程とを含むことを特徴とする製造方法とすることができる。
【0024】
また、本発明のカラーフィルタの製造方法は、透明基板上の所定領域に、前記本発明のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法で得られたカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を、インクジェット方式によって選択的に付着させて赤色樹脂組成物層を形成する工程と、
前記赤色樹脂組成物層を加熱することにより硬化させて所定パターンの赤色着色層を形成する工程とを含むことを特徴とする製造方法とすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、カラーフィルタ製造工程における高温加熱工程時に着色層(塗膜)表面の顔料凝集体の析出を抑制し、高コントラストで、位相差の小さい着色層を作製可能で、顔料分散性及び分散安定性に優れたカラーフィルタ用赤色樹脂組成物が得られるカラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法、及び、高コントラストで位相差が小さい着色層を有するカラーフィルタが得られるカラーフィルタの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】フォトリソグラフィー方式により製造されたカラーフィルタの一例を示す概略図である。
【図2】インクジェット方式により製造されたカラーフィルタの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法及び、カラーフィルタの製造方法について順に説明する。
【0028】
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことを言う。また本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルのいずれかであることを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートのいずれかであることを意味する。
本発明において、着色層の位相差としては、以下の式で計算される厚み方向のリタデーション(Rth)を指標とした。
Rth=((Nx+Ny)/2−Nz)d
Nx:面内遅相軸方向の屈折率
Ny:面内進相軸方向の屈折率
Nz:厚み方向の屈折率
d:膜厚(nm)
【0029】
1.カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法
本発明に係るカラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法は、下記化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質と、ジケトピロロピロール系顔料と、顔料分散剤と、硬化性バインダ成分と、溶媒とを含有するカラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法であって、
前記溶媒中、前記顔料分散剤の存在下で、前記ジケトピロロピロール系顔料を分散させる顔料分散液を調製する工程と、
少なくとも、前記顔料分散液と、前記結晶析出抑制剤前駆物質と、前記硬化性バインダ成分とを混合する工程を有することを特徴とする。
【0030】
【化6】

(化学式(1)中、Aは、塩素原子、臭素原子、メチル基、スルホ基、又はフェニル基を表し、mは0〜5の整数を表し、mが2以上の整数の場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。B及びBは、それぞれ独立に、水素原子、又は下記化学式(2)で表される基であり、B及びBの少なくとも1つは下記化学式(2)で表される基である。PCyは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい縮合環基、又は、下記化学式(3)で表される多環式化合物基である。)
【0031】
【化7】

(化学式(2)中、Rは、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。)
【0032】
【化8】

(化学式(3)中、Xは、直接結合又はメチレン基を表し、Cyは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい環式化合物基を表し、nは、1〜5の整数を表し、nが2以上の整数の場合、複数のX−Cyは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Aは、塩素原子、臭素原子、メチル基、又はスルホ基を表し、n’は0〜4の整数を表し、n’が2以上の整数の場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、n+n’は1〜5の整数である。)
【0033】
本発明のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法により、カラーフィルタ製造工程における高温加熱工程時に着色層(塗膜)表面の顔料凝集体の析出を抑制し、高コントラストで、位相差の小さい着色層が作製可能で分散性及び分散安定性に優れたカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を得ることができる。
【0034】
本発明の製造方法により製造されたカラーフィルタ用赤色樹脂組成物が、上記のような効果を発揮する作用としては、未解明ではあるが、以下のように推定される。
顔料分散液の調製において、溶媒中での顔料の分散時間を長くすることにより、顔料を微細化できる。顔料分散剤を用いる場合には、微細化されて露出された顔料表面に顔料分散剤が適切に吸着して溶媒中での顔料の安定化を図ることができ、顔料をより均一に微細化することができると推定される。その結果、コントラストが向上した塗膜を得ることができる。
しかしながら、均一に微細化されていた顔料が塗膜にされた後、カラーフィルタ製造工程における加熱工程で200℃もの高温が塗膜にかけられると、顔料に吸着されていた顔料分散剤の熱運動により顔料分散剤の吸着が弱まり、微細化されて露出された顔料表面同士の凝集力が強まって、顔料の凝集体が析出してしまうのではないかと推定される。例えば、微細化したジケトピロロピロール系顔料は、加熱によって、ジケトピロロピロール環の窒素原子が、分子間水素結合を形成することにより、当該水素結合方向に結晶成長し、また、ジケトピロロピロール環同士の重なり方向に、結晶成長するものと推定される。
本発明者らは、顔料と特定の結晶析出抑制剤を組み合わせて用いることにより、高温加熱時においても顔料の結晶乃至凝集体が析出せず、高コントラストな塗膜を形成し得ることを見出した。しかしながら、顔料と結晶析出抑制剤を組み合わせた樹脂組成物は、顔料分散性及び分散安定性が不十分であり、また、当該樹脂組成物を用いて形成された塗膜は、位相差が大きくなるという問題が生じることがわかった。
【0035】
従来の結晶析出抑制剤は、溶媒に難溶なため、余剰のものが、ジケトピロロピロール骨格のNHにおいて水素結合を形成し、結晶成長するため、位相差が上昇するものと推定される。また、従来の結晶析出抑制剤の結晶は、ジケトピロロピロール結晶に対して位相差を増大させる異方性を持ち、溶媒に難溶な為、ジケトピロロピロール顔料表面に作用できない余剰なものや粗大なものが位相差を増大させていると推定される。
これに対し、上記化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質は、化学式(2)で表される置換基を少なくとも1つ有している。当該置換基を有することにより、当該結晶析出抑制剤前駆物質は、溶媒への溶解性が向上する。これにより、加熱又は露光前は、結晶化或いは凝集体化することなく溶媒中に溶解し、加熱又は露光時に溶媒溶解性の低い結晶析出抑制剤を生ずるものである。
この機構によると、従来の結晶析出抑制剤のように、加熱又は露光前には結晶析出抑制剤の結晶が形成されることがないため、加熱又は露光時に、微細な結晶析出抑制剤が分子レベルで生ずると同時にジケトピロロピロール顔料最表面と効率良く水素結合を形成できる。また、ジケトピロロピロール顔料最表面で水素結合を形成した結晶化抑制剤がジケトピロロピロール結晶型にそった結晶構造をとる為、位相差の増大が抑えられるものと推定される。
また、当該結晶析出抑制剤は、流動性の低い硬化膜中で発生することから、お互いが接近しにくく、結晶析出抑制剤の結晶化が進行せず、その結果、位相差が増大し難いものと推定される。
【0036】
また、従来の結晶析出抑制剤は、当該結晶析出抑制剤が有する芳香環のうち少なくとも1つに剛直な構造を有している。このため、当該結晶析出抑制剤で処理された顔料を使用したり、顔料分散時に当該結晶析出抑制剤を添加すると、当該結晶析出抑制剤が吸着した顔料は、その表面に上記のような剛直な構造が存在することとなり、顔料分散剤への吸着が弱くなるものと推定される。その結果、顔料分散性及び分散安定性が低下し、得られる顔料の粒径は大きくなり、位相差が増大するものと推定される。このような問題は、上記化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質を用いた場合も同様であった。
【0037】
これに対して、本発明においては、顔料分散液を調製するまでの工程においては、結晶析出抑制剤前駆物質を添加しないので、顔料分散時に顔料表面の極性が弱まることなく、適宜顔料分散剤や顔料誘導体を選択することにより顔料分散性や分散安定性を向上することができる。
次いで、微細化した顔料分散液を調製後に、結晶析出抑制剤前駆物質を添加することにより、高温加熱工程において熱運動により顔料分散剤の吸着が弱まった際には、相対的に顔料表面との吸着力が強い結晶析出抑制剤前駆物質が、代わりに顔料表面に吸着し、更に加熱により結晶析出抑制剤を生じるのではないかと推定される。その結果、カラーフィルタ製造工程における高温加熱工程時に着色層(塗膜)表面の顔料凝集体の析出を抑制することができ、カラーフィルタの高コントラスト化が達成可能で、且つ、着色層の位相差が上昇し難いものと推定される。
【0038】
化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質は、上述のとおり溶媒に可溶であるため、上記のように顔料分散液の調製後に添加しても、上述のように、その機能を発揮することができるものと推定される。一方、従来の結晶析出抑制剤は溶媒に難溶であるため、顔料分散液の調製後に添加した場合には、当該結晶析出抑制剤は分散されずに結晶のまま存在することとなり、結晶析出抑制剤の機能を十分に得ることができず、また、当該結晶は、塗膜形成時に異物として存在し、コントラストの低下や、位相差の増大といった問題を生ずるものと推定される。
【0039】
以下、本発明の製造方法により得られるカラーフィルタ用赤色樹脂組成物について説明し、次いで、本発明の製造方法の各工程を説明する。
【0040】
[カラーフィルタ用赤色樹脂組成物]
本発明の製造方法により得られるカラーフィルタ用赤色樹脂組成物は、前記化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質と、ジケトピロロピロール系顔料と、顔料分散剤と、硬化性バインダ成分と、溶媒とを必須成分として含有するものであり、必要に応じて他の成分を含有してもよいものである。
以下、カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の各成分について順に説明する。
【0041】
<結晶析出抑制剤前駆物質>
本発明に用いられる結晶析出抑制剤前駆物質は、下記化学式(1)で表される化合物である。
【0042】
【化9】

(化学式(1)中、Aは、塩素原子、臭素原子、メチル基、スルホ基、又はフェニル基を表し、mは0〜5の整数を表し、mが2以上の整数の場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。B及びBは、それぞれ独立に、水素原子、又は下記化学式(2)で表される基であり、B及びBの少なくとも1つは下記化学式(2)で表される基である。PCyは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい縮合環基、又は、下記化学式(3)で表される多環式化合物基である。)
【0043】
【化10】

(化学式(2)中、Rは、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。)
【0044】
【化11】

(化学式(3)中、Xは、直接結合又はメチレン基を表し、Cyは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい環式化合物基を表し、nは、1〜5の整数を表し、nが2以上の整数の場合、複数のX−Cyは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Aは、塩素原子、臭素原子、メチル基、又はスルホ基を表し、n’は0〜4の整数を表し、n’が2以上の整数の場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、n+n’は1〜5の整数である。)
【0045】
本発明に用いられる結晶析出抑制剤前駆物質は、熱又は光の作用により、B及び/又はBを脱離して、下記化学式(4)で表される結晶析出抑制剤を生成する前駆物質である。
【0046】
【化12】

(化学式(4)中、Aは、塩素原子、臭素原子、メチル基、スルホ基、又はフェニル基を表し、mは0〜5の整数を表し、mが2以上の整数の場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。PCyは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい縮合環基、又は、下記化学式(3)で表される多環式化合物基である。)
【0047】
【化13】

(化学式(3)中、Xは、直接結合又はメチレン基を表し、Cyは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい環式化合物基を表し、nは、1〜5の整数を表し、nが2以上の整数の場合、複数のX−Cyは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Aは、塩素原子、臭素原子、メチル基、又はスルホ基を表し、n’は0〜4の整数を表し、n’が2以上の整数の場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、n+n’は1〜5の整数である。)
【0048】
前記化学式(4)中の各符号は、前記化学式(1)におけるものと同様である。
【0049】
化学式(1)中、フェニル基に置換されたAは、塩素原子、臭素原子、メチル基、スルホ基、又はフェニル基である。当該特定の置換基の場合には、本発明の効果を大きく妨げることはない。
化学式(1)のフェニル基としては、置換基を有しない(m=0である)ことが好ましい。フェニル基に塩素等、置換基が無い方が、ジフェニルジケトピロロピロール骨格を持つ赤色顔料に作用する側の立体障害が小さく、ジフェニルジケトピロロピロール骨格を持つ赤色顔料の一次粒子の表面により多く水素結合したり、吸着したりできるため、高温加熱時において、顔料の結晶析出抑制効果が大きい。
置換基Aを有する場合のAとしては、中でも塩素原子、臭素原子、又はメチル基であることが、立体障害が小さく、顔料に対する吸着を妨げない点から好ましい。
【0050】
前記化学式(1)におけるB及びBのうち少なくとも1つは、前記化学式(2)で表される基である。中でも、溶媒への溶解性が向上し、顔料分散性、分散安定性に優れ、位相差が小さくなる点から、B及びBの両方が前記化学式(2)で表される基であることが好ましい。
【0051】
化学式(2)中、Rにおける炭化水素基は、用いる溶媒への溶解性が高くなり、熱又は光の作用により−(C=O)O−Rが脱離するものであれば、特に限定されない。炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基が挙げられ、更に置換基を有していてもよく、アルキル基及びシクロアルキル基は飽和であっても不飽和であってもよい。−(C=O)O−Rが熱により脱離するものである場合、本発明の製造工程により効率よく結晶析出抑制剤が発生する点から、100〜230℃の加熱により脱離するものであることが好ましく、120〜200℃の加熱により脱離するものであることがより好ましい。
【0052】
前記アルキル基は、特に制限はないが、炭素数1〜18のアルキル基が好ましい。当該アルキル基は、直鎖でも分岐状でもよい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、ヘキサデシル基等が挙げられ、二重結合、三重結合等の不飽和結合を有していても良い。
当該アルキル基が有していてもよい置換基は、特に限定されない。例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、アリール基等が挙げられる。アリール基が置換されたアルキル基としては、例えばベンジル基等が挙げられる。また、アルコキシ基が置換されたアルキル基としては、例えば、メトキシアルキル基や、2−メトキシ−エトキシアルキル基等が挙げられる。
【0053】
前記シクロアルキル基は、特に制限はないが、炭素数3〜18のシクロアルキル基が好ましい。例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられ、二重結合、三重結合等の不飽和結合を有していてもよく、単環性、多環性のどちらでもよい。
当該シクロアルキル基が有していてもよい置換基は、特に限定されない。例えば、炭素数1〜5のアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、ハロゲノアルキル基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0054】
前記アリール基は、特に制限はないが、炭素数6〜14のアリール基が好ましい。例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル、アントリル基等が挙げられる。
当該アリール基が有していてもよい置換基は、特に限定されない。例えば、シクロアルキル基、炭素数1〜5のアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル基等が挙げられる。
【0055】
前記炭化水素基が置換基として有していてもよいアルコキシ基としては、特に制限はないが、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、2−メトキシ−エトキシ基等が挙げられる。
【0056】
前記炭化水素基が置換基として有していてもよいアルキルチオ基としては、特に制限はないが、炭素数1〜4のアルキルチオ基が好ましい。例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、メチルエチルチオ基等が挙げられる。
【0057】
前記炭化水素基が置換基として有していてもよいジアルキルアミノ基としては、特に制限はないが、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が好ましい。例えば、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等が挙げられる。
【0058】
前記炭化水素基が置換基として有していてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0059】
前記炭化水素基が置換基として有していてもよいアリール基としては、特に制限はないが、炭素数6〜14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル、アントリル基等が挙げられる。当該アリール基は更に置換基を有していてもよい。
【0060】
前記炭化水素基が置換基として有していてもよい炭素数1〜5のアルキル基としては、直鎖又は分岐状のいずれでもよい。直鎖アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。分岐状アルキル基としては、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基等が挙げられる。
【0061】
前記炭化水素基が置換基として有していてもよいアルコキシアルキル基としては、特に制限はないが、炭素数1〜8のアルコキシアルキル基が好ましく、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシプロピル基等が挙げられる。
【0062】
前記炭化水素基が置換基として有していてもよいハロゲノアルキル基としては、特に制限はないが、炭素数1〜8のハロゲノアルキル基が好ましく、例えば、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1−クロロエチル基、1−ブロモエチル基、1−フルオロエチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,1,2,2−テトラクロロエチル基等が挙げられる。
【0063】
前記炭化水素基が置換基として有していてもよいシクロアルキル基としては、特に制限はないが、炭素数3〜18のシクロアルキル基が好ましい。例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられ、二重結合、三重結合等の不飽和結合を有していてもよく、単環性、多環性のどちらでもよい。当該シクロアルキル基は更に置換基を有していてもよい。
【0064】
化学式(1)中、PCyは、縮合環基、又は、化学式(3)で表される多環式化合物基である。すなわち、PCyは、2以上の環が縮合した構造、直接結合した構造、或いは、メチレン基を介して結合した構造を有している。2以上の環が縮合する場合には、その環構造は剛直なものであり、また、2以上の環が、直接結合又はメチレン基を介して結合した構造の場合であっても、環同士の相互作用が大きく、相互の水素原子や立体障害によって、安定な位置に環構造が強く固定されるため、剛直であるものと推定される。
化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質は、ジケトピロロピロール系顔料と親和性が高いが、化学式(1)の化合物におけるジケトピロロピロール環の近くにPCyのような剛直で嵩高い構造の基が存在することにより、当該結晶析出抑制剤前駆物質が吸着した顔料は、凝集が抑制されるものと推定される。本発明の結晶析出抑制剤前駆物質は、高温加熱時においても、PCyの剛直な構造は動きにくく、化学式(4)で表される化合物は、高温加熱工程時における結晶析出抑制剤として機能するものと推定される。
【0065】
化学式(1)中、PCyにおける縮合環基とは、縮合環化合物から水素原子を1個除いた残りの原子団をいう。縮合環基における縮合環としては、特に限定されず、例えば、ナフタレン、テトラリン、インデン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン等の縮合多環芳香族炭化水素;ベンゾフラン、チオナフテン、インドール、カルバゾール、クマリン、ベンゾ−ピロン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等の縮合多環式複素環が挙げられ、これらの縮合環は更に置換基を有していてもよい。
【0066】
縮合環基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0067】
化学式(3)中、Cyにおける環式化合物基とは、環式化合物から水素原子を1個除いた残りの原子団をいう。環式化合物基における環式化合物としては、特に限定されず、例えば、ベンゼンの他、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール等の5員複素環;ピラン、ピロン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等の6員複素環;ナフタレン、テトラリン、インデン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン等の縮合多環芳香族炭化水素;ベンゾフラン、チオナフテン、インドール、カルバゾール、クマリン、ベンゾ−ピロン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等の縮合多環式複素環が挙げられ、これらの環式化合物基は更に置換基を有していてもよい。
【0068】
環式化合物基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0069】
X−Cyの置換数nは1〜5の整数であり、中でも、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2の整数であることがより好ましく、更に1であることがより好ましい。
【0070】
化学式(3)中、フェニル基に置換されたAは、塩素原子、臭素原子、メチル基、又はスルホ基である。当該特定の置換基の場合には、本発明の効果を大きく妨げることはない。中でも、化学式(3)中のフェニル基としては、置換基Aを有しない(n’=0である)ことが好ましい。
【0071】
以下、結晶析出抑制剤前駆物質の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0072】
【化14】

【0073】
結晶析出抑制剤前駆物質の溶媒への溶解度は特に限定されない。中でも、顔料分散性及び分散安定性に優れ、高温加熱時に顔料凝集体の析出を効率よく抑制できる点から、後述する顔料分散液に用いる溶媒のうち少なくとも1種に対して、23℃における溶解度が0.2g/100g以上であることが好ましく、0.34g/100g以上であることがより好ましい。
【0074】
(結晶析出抑制剤前駆物質の製造方法)
化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質の製造方法は特に限定されるものではない。例えば、非対称型ジケトピロロピロール誘導体に、前記化学式(2)で表される基を導入する方法が挙げられる。
【0075】
非対称型ジケトピロロピロール誘導体の製造方法は特に限定されるものではない。例えば、特定のジケトピロロピロール系顔料に、化学式(3)における−X−Cyで表される基を導入する方法や、特定のピロリノンとベンゾニトリルとを反応させる方法が挙げられる。特定のジケトピロロピロール系顔料に、化学式(3)における−X−Cyで表される基を導入する方法は、例えば、特表2004−501911号公報に詳細に記載され、これを参照することができる。また、特定のピロリノンとベンゾニトリルとを反応させる方法は、例えば、欧州特許出願公開第0184982号明細書に詳細に記載され、これを参照することができる。
【0076】
前記の方法等により得られた非対称型ジケトピロロピロール誘導体と、下記化学式(5)で表される化合物とを、非プロトン性有機溶媒中、触媒として塩基存在下、0〜120℃、好ましくは10〜100℃で2〜8時間反応させることにより、前記化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質を得ることができる。
【0077】
【化15】

(化学式(5)中、R1’及びR1’’は、それぞれ独立に置換基を有してもよい炭化水素基である。)
【0078】
化学式(5)中、R1’及びR1’’は、前記化学式(2)におけるRと同様のものとすることができる。
【0079】
上記非プロトン性有機溶媒は、特に限定されない。例えば、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類;エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ニトロベンゼン、N−メチルピロリドン等の双極性非プロトン性溶媒類;トリクロロエタン等のハロゲン化脂肪族類;ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール又はクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;ピリジン、ピコリン又はキノリン等の芳香族性N−複素環式化合物類が挙げられる。
【0080】
触媒として用いられる塩基としては、特に限定されない。中でも、ジアザビシクロオクテン、ジアザビシクロウンデセン、4−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基類が好ましい。
【0081】
上記結晶析出抑制剤前駆物質の合成において、非対称型ジケトピロロピロール誘導体と化学式(5)で表される化合物のモル比を適宜調整することにより、化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質中の化学式(2)で表される基の導入数を制御することができる。
【0082】
化学式(2)で表される基を1つ導入する場合には、化学式(5)で表される化合物を非対称型ジケトピロロピロール誘導体に対して、0.8〜10.0モル当量用いることが好ましく、0.8〜1.2モル当量用いることがより好ましい。上記範囲内であれば、副生成物の生成を抑制し、化学式(2)で表される基が1つ導入された結晶析出抑制剤前駆物質の反応収率を向上させることができる。
【0083】
また、化学式(2)で表される基を2つ導入する場合には、化学式(5)で表される化合物を非対称型ジケトピロロピロール誘導体に対して、2〜80モル当量用いることが好ましく、10〜70モル当量用いることがより好ましい。上記範囲内であれば、副生成物の生成を抑制し、化学式(2)で表される基が2つ導入された結晶析出抑制剤前駆物質の反応収率を向上させることができる。
【0084】
また、塩基の添加量は、特に限定されない。反応収率を向上する点からは、非対称型ジケトピロロピロール誘導体に対して、0.05〜0.5モル当量用いることが好ましく、0.1〜0.2モル当量用いることがより好ましい。
【0085】
上記反応における反応温度は、特に制限はないが、通常0〜120℃程度であり、副反応を抑制する点から10〜40℃であることが好ましい。また、上記反応の反応圧力に特に制限はないが、常圧〜0.1MPaが望ましく、常圧がさらに望ましい。また上記反応における反応時間は、合成量や反応温度等により変動する場合があるので一概には言えないが、通常2〜80時間、好ましくは5〜20時間の範囲に設定される。
【0086】
本発明の製造方法により得られるカラーフィルタ用赤色樹脂組成物おいて、前記化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質は、1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
当該カラーフィルタ用赤色樹脂組成物において、前記化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質の含有量は特に限定されない。中でも、高温加熱工程時における顔料の析出を効率よく抑制し、高コントラストな着色層を形成可能な点から、後述するジケトピロロピロール系顔料100質量部に対して、前記化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質を0.1〜20質量部含有することが好ましく、0.5〜10質量部含有することがより好ましく、更に1〜5質量部含有されることがより好ましい。
【0087】
<ジケトピロロピロール系顔料>
本発明において用いられるジケトピロロピロール系顔料とは、下記式(6)で表される構造を有する。
【0088】
【化16】

(化学式(6)中、A及びAは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、フェニル基、N,N−ジメチルアミノ基、トリフルオロメチル基、シアノ基を表し、k及びk’はそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、k及びk’がそれぞれ2以上の整数の場合、複数のA及びAは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【0089】
前記化学式(6)において、k及びk’はそれぞれ独立に0〜5の整数である。中でも、高コントラストを達成し、カラーフィルタに適した赤色を調整しやすい点から、k及びk’はそれぞれ独立に0〜3の整数であることが好ましく、k及びk’はそれぞれ独立に0又は1の整数であることがより好ましい。
【0090】
ジケトピロロピロール系顔料としては、中でも、高輝度及び高コントラストなカラーフィルタが形成可能な点から、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73が好ましく、色相及び着色力の点から、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255であることがより好ましい。
ジケトピロロピロール系顔料は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0091】
本発明に用いられるジケトピロロピロール系顔料の平均一次粒径としては、カラーフィルタの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されない。中でも、コントラストを向上させる点から、10〜50nmの範囲内であることが好ましく、10〜30nmの範囲内であることがより好ましい。顔料の平均一次粒径が上記範囲であることにより、カラーフィルタを高コントラストで、かつ高品質なものとすることができる。
なお、上記顔料の平均粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径とした。次に、100個以上の粒子について、それぞれの粒子の体積(質量)を、求めた粒径の直方体と近似して求め、体積平均粒径を求めそれを平均粒径とした。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)または走査型(SEM)のいずれを用いても同じ結果を得ることができる。
【0092】
本発明に用いられるジケトピロロピロール系顔料は、再結晶法、ソルベントソルトミリング法等の公知の方法にて製造することができる。また、市販のジケトピロロピロール系顔料を用いても良い。
【0093】
本発明の製造方法により得られるカラーフィルタ用赤色樹脂組成物において、ジケトピロロピロール系顔料の含有量は、特に限定されない。通常、ジケトピロロピロール系顔料の含有量は、溶媒を含めた顔料分散液の全量に対して7〜17質量%、9〜15質量%の範囲内であることが好ましい。
【0094】
<顔料分散剤>
本発明において、顔料分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。また、溶媒に少量溶解するような顔料誘導体を顔料分散剤として用いてもよい。
【0095】
顔料分散剤は、使用される顔料を良好に分散させるために適宜選択して用いられる。具体例には、ノナンアミド、デカンアミド、ドデカンアミド、N−ドデシルヘキサデカンアミド、N−オクタデシルプロピオアミド、N,N−ジメチルドデカンアミド及びN,N−ジヘキシルアセトアミド等のアミド化合物、ジエチルアミン、ジヘプチルアミン、ジブチルヘキサデシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメタンアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン及びトリオクチルアミン等のアミン化合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’,N’−(テトラヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’−トリ(ヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’,N’−テトラ(ヒドロキシエチルポリオキシエチレン)−1、2−ジアミノエタン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン及び1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のヒドロキシ基を有するアミン等を例示することができ、その他にニペコタミド、イソニペコタミド、ニコチン酸アミド等の化合物を挙げることができる。
【0096】
さらに、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩類等を挙げることができる。
【0097】
本発明において用いられる顔料分散剤としては、分子内に顔料吸着部位と溶媒親和部位が機能分離されたブロック共重合体タイプもしくはグラフト共重合体(櫛型)タイプの高分子顔料分散剤が、ジケトピロロピロール系顔料の顔料分散性の点から好ましい。
上記グラフト共重合体タイプの高分子顔料分散剤としては、例えば、特開2010−85647号公報に記載の塩型グラフト共重合体が好ましく用いることができる。
【0098】
本発明において用いられる顔料分散剤としては、中でも、下記一般式(I)で表される繰り返し単位(1)と、下記一般式(II)で表される繰り返し単位(2)とを有し、さらに前記繰り返し単位(1)が有するアミノ基の少なくとも一部と有機酸化合物及び/又はハロゲン化炭化水素とが塩を形成したブロック共重合体であることが好ましい。
【0099】
【化17】

[式(I)及び式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R)−CH(R)−O]−CH(R)−CH(R)−又は−[(CH−O]−(CH−で示される2価の基、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOORで示される1価の基であり、Rは水素原子又は炭素数が1〜5のアルキル基である。上記アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ置換基を有していても良い。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。mは3〜200の整数、nは10〜200の整数を示す。]
【0100】
本発明において、ジケトピロロピロール系顔料と、前記結晶析出抑制剤前駆物質と、顔料分散剤として上記特定の塩型ブロック共重合体からなる顔料分散剤とを組み合わせることにより、特にコントラストが向上し、高輝度で且つ高コントラスト化の要求を達成しながら、カラーフィルタ工程における高温加熱工程後においても顔料凝集体が析出しない塗膜を作製可能になる。
【0101】
このような特定の塩型ブロック共重合体からなる顔料分散剤は、上記一般式(I)で表される構成単位(1)と、上記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、かつ上記構成単位(1)が有するアミノ基と有機酸化合物及び/又はハロゲン化炭化水素とが塩を形成した塩型ブロック共重合体であることにより、塩形成部位を形成する上記構成単位(1)はジケトピロロピロール系顔料に対する吸着性が特に強く、一方で構成単位(2)は溶媒に対して溶解性を有する。このような顔料分散剤を用いると、溶媒中で分散時間を長くすることにより、上記特定の顔料を微細化しつつ、微細化されて露出された顔料表面に顔料分散剤が適切に吸着して溶媒中での顔料の安定化を図ることができ、上記特定の顔料をより均一に微細化することができると推定される。その結果、特にコントラストが向上した塗膜を得ることができる。
【0102】
(ブロック共重合体)
上記ブロック共重合体は、上記一般式(I)で表される繰り返し単位(1)と、上記一般式(II)で表される繰り返し単位(2)とを有するものである。
上記一般式(I)において、Rは、水素原子又はメチル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。ここで、炭素数1〜8のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などを挙げることができる。これらの中で、メチル基及びエチル基が好ましい。
本発明においては、上記R及びRは、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0103】
Aは、炭素数1〜8のアルキレン基、*−[CH(R)−CH(R)−O]−CH(R)−CH(R)−**、又は、*−[(CH−O]−(CH−**で示される2価の基である。ここで、*は、エステル結合側の連結部位を表し、**は、アミノ基側の連結部位を表す。また、上記炭素数1〜8のアルキレン基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種へキシレン基、各種オクチレン基などである。
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
xは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、yは1〜5の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。zは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。本発明においては、x、y、及びzが、上記の範囲内にあれば、本発明の製造方法により得られるカラーフィルタ用赤色樹脂組成物は、顔料の分散性に優れたものになる。
上記Aとしては、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、メチレン基及びエチレン基がより好ましい。炭素数が1〜8の範囲内であれば、顔料の分散性を良好に保つことができる。
【0104】
上記一般式(II)において、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R又は−[(CH−O]−Rを示す。
上記炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。
上記炭素数2〜18のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基、各種ブテニル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基などを挙げることができる。アルケニル基の二重結合の位置には限定はないが、得られたポリマーの反応性の点からは、アルケニル基の末端に二重結合があることが好ましい。
【0105】
置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6〜24が好ましく、更に6〜12が好ましい。
置換基を有していてもよいアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数は、7〜20が好ましく、更に7〜14が好ましい。
アリール基やアラルキル基等の芳香環の置換基としては、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
なお、上記好ましい炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0106】
上記R及びRは、前記と同じであり、Rは水素原子、あるいは置換基を有してもよい、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOORで示される1価の基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。
上記Rで示される1価の基において、有してもよい置換基としては、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などを挙げることができる。
上記Rのうちの炭素数1〜18のアルキル基、及び炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基は、前記Rで示したとおりである。
上記Rにおいて、x、y及びzは、前記Aで説明したとおりである。
また、上記一般式(II)で表される繰り返し単位(2)中のRは、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0107】
本発明において、上記Rとしては、なかでも、後述する溶媒との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、具体的には、上記ブロック共重合体を構成する繰り返し単位等によっても異なるが、上記溶媒が、カラーフィルタ用の溶媒として一般的に使用されているエーテルアルコールアセテート系、エーテル系、エステル系などの溶媒を用いる場合には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基等が好ましい。
ここで、上記Rをこのように設定する理由は、上記Rを含む繰り返し単位(2)が、上記溶媒に対する良好な溶解性を有し、上記繰り返し単位(1)のアミノ基と、後述する有機酸化合物及び/又はハロゲン化炭化水素とが形成する塩形成部位が顔料に対して高い吸着性を有するものであることにより、顔料の分散性及び安定性を特に優れたものとすることができるからである。
【0108】
さらに、上記Rは、上記ブロック共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、水素結合形成基等の置換基によって置換されたものとしてもよく、また、上記ブロック共重合体の合成後に、上記置換基を有する化合物と反応させて、上記置換基を付加させてもよい。また、これらの置換基を有するブロック共重合体を合成した後に、当該置換基と反応する官能基と重合性基とを有する化合物を反応させて、重合性基を付加したものとしてもよい。例えば、カルボキシル基を有するブロック共重合体にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させたり、イソシアネート基を有するブロック共重合体にヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたりして、重合性基を付加することができる。
【0109】
本発明に用いられる構成単位(1)のユニット数m及び構成単位(2)のユニット数nの比率m/nとしては、0.01〜1の範囲内であることが好ましく、0.05〜0.5の範囲内であることがより好ましい。比率m/nが上記範囲内にあれば、顔料に対する吸着性が良好となり、上記構成単位(2)による上記溶媒との溶解性が低くなることがなく、顔料の分散性、及び安定性が低下することがない。
【0110】
本発明に用いられるブロック共重合体の分子サイズに関しては、上記繰り返し単位(1)の数mは、3〜200の整数、好ましくは3〜50の整数である。上記繰り返し単位(2)の数nは、10〜200の整数、好ましくは20〜100の整数、より好ましくは20〜70の整数である。本発明においては、m及びnが、それぞれ上記の範囲内にあることにより、溶媒可溶性部位と溶媒不溶性部位が効果的に作用し、本発明の製造方法により得られるカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を顔料の分散性に優れたものとすることができる。さらに、上記ブロック共重合体の質量平均分子量Mwは、500〜20000の範囲内であることが好ましく、1000〜15000の範囲内であることがより好ましく、3000〜12000の範囲内であることがさらに好ましい。上記範囲内であることにより、顔料を均一に分散させる分散初期の顔料に対する濡れ性と分散安定性を両立することが可能となる。
【0111】
なお、上記質量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー(株)製のHLC−8120GPCを用い、溶出溶媒を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN−メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、206500、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS−2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK−GEL ALPHA−M×2本(東ソー(株)製)として行われたものである。
【0112】
本発明に用いられるブロック共重合体の結合順としては、上記繰り返し単位(1)及び上記繰り返し単位(2)を有し、顔料を安定に分散することができるものであればよく、特に限定されないが、上記繰り返し単位(1)が上記ブロック共重合体の一端のみに結合したものであることが好ましい。すなわち、上記繰り返し単位(1)と、上記繰り返し単位(2)とが、繰り返し単位(1)−繰り返し単位(2)の順で結合したものであってもよく、繰り返し単位(1)−繰り返し単位(2)−繰り返し単位(1)の順で結合したものであってもよく、繰り返し単位(1)−繰り返し単位(2)が繰り返し結合したものであってもよいが、本発明においては、なかでも繰り返し単位(1)−繰り返し単位(2)の順で結合したものが好ましい。その理由は、顔料に対する吸着性に優れ、さらにこのようなブロック共重合体を用いた顔料分散剤同士の凝集を効果的に抑えることができるからである。
【0113】
構成単位(1)や構成単位(2)が2種以上含まれる場合において、構成単位(1)−構成単位(2’)−構成単位(2”)の順で結合したブロック共重合体や、構成単位(1’)−構成単位(1”)−構成単位(2)の順で結合したブロック共重合体や、構成単位(1’)−構成単位(1”)−構成単位(2’)−構成単位(2”)の順で結合したブロック共重合体などであっても良い。
【0114】
(有機酸化合物)
前述した一般式(I)で表される構成単位(1)と、一般式(II)で表される構成単位(2)とを有するブロック共重合体の構成単位(1)が有するアミノ基と、塩を形成する有機酸化合物としては、下記一般式(III)で表される構造を有する有機リン酸化合物及び/又は上記一般式(IV)で表される構造を有する有機スルホン酸化合物が挙げられる。
【0115】
【化18】

[式(III)及び式(IV)中、R及びRa’はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−Ra’’で示される1価の基であり、R及びRa’のいずれかは炭素原子を含む。Ra’’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。
は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−Rb’で示される1価の基である。Rb’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH又は−CHCOORで示される1価の基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。
、Ra’、及びRにおいて、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ、置換基を有していてもよい。
sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数を示す。]
【0116】
本発明においては、上記有機酸化合物及び/又は後述するハロゲン化炭化水素を用いることにより、当該顔料分散剤を、顔料の分散性及び安定性に優れたものとすることができる。さらに、有機酸化合物が用いられる場合には、塩形成部位が、フォトリソグラフィー法によるカラーフィルタ製造工程におけるアルカリ現像時のアルカリ水溶液に対して高い溶解性を有することから、アルカリ現像性に優れたものとすることができる。顔料の粒径の微小化に伴い、顔料分散剤が多量に必要になり、アルカリ現像性の低下や残渣の増加といった問題が生じるおそれがあるが、上記塩型顔料分散剤において有機酸化合物が用いられる場合には、このような問題が生じる恐れを低減できる。
【0117】
上記一般式(III)において、R及びRa’は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−Ra’’を示し、R及びRa’のうちいずれかは炭素原子を含む。
【0118】
上記炭素数1〜18のアルキル基、上記炭素数2〜18のアルケニル基、アリール基、及びアラルキル基は、前記Rで示したとおりである。アルケニル基の二重結合の位置には限定はないが、反応性の点からは、アルケニル基の末端に二重結合があることが好ましい。
上記アルキル基やアルケニル基は置換基を有していても良く、当該置換基としては、F、Cl、Brなどのハロゲン原子、ニトロ基等が挙げられる。
また、上記アリール基やアラルキル基等の芳香環の置換基としては、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
【0119】
上記R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH又は−CHCOORで示される1価の基であり、Rは水素原子又は炭素数が1〜5の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基である。
【0120】
上記Rで示される1価の基において、有してもよい置換基としては、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などを挙げることができる。
上記Rのうちの炭素数1〜18のアルキル基は前記のRで示したとおりであり、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基は、前記のR及びRa’で示したとおりである。
【0121】
及び/又はRa’が、−O−Ra’’の場合、酸性リン酸エステルとなる。上記R’’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。
上記炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基は、前記のR及びRa’で示したとおりである。尚、Ra’’が芳香環を有する場合、該芳香環上に適当な置換基、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基などを有していてもよい。
【0122】
、Ra’及びRa’’において、sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数である。sは、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、tは、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。uは、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。
【0123】
上記一般式(IV)において、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−Rb’を示す。
上記炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基は、前記のR及びRa’で示したとおりである。
【0124】
が、−O−R’の場合、酸性硫酸エステルとなる。上記R’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。
、R’において、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ、置換基を有していても良い。
上記炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−Rは、前記R、R及びRa’’で示したとおりである。
また上記R、R及びRは、前記R、R及びRa’’で示したとおりである。
上記R及びR’において、sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数である。好ましいs、t、uは、上記R、Ra’及びRa’’と同様である。
【0125】
上記一般式(III)で表される有機酸化合物としては、前記一般式(III)におけるR及びRa’が、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−R、あるいは、−O−Ra’’で示される1価の基であり、R及びRa’のいずれかは炭素原子を含み、且つ、Ra’’が、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rであり、R及びRが、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rが−CO−CH=CH又は−CO−C(CH)=CHであるものが顔料分散性に優れたものとすることができる点から好ましい。
【0126】
また、一般式(IV)で表される有機酸化合物としては、一般式(IV)におけるRが、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−R、あるいは、−O−Rb’で示される1価の基であり、Rb’が、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rであり、R及びRが、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rが−CO−CH=CH又は−CO−C(CH)=CHであるものが顔料分散性に優れたものとすることができる点から好ましい。
【0127】
中でも、上記一般式(III)及び一般式(IV)で表される有機酸化合物は、R、Ra’及び/又はRa’’、並びに/或いは、R及び/又はRb’として、芳香環を有することが顔料分散性の点から好ましい。R、Ra’及びRa’’の少なくとも1つ、或いは、R又はRb’が、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、より具体的には、ベンジル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基であることが、顔料分散性の点から好ましい。前記一般式(III)においては、R及びRa’の一方が芳香環を有する場合には、R及びRa’の他方は、水素原子や水酸基であるものも好適に用いられる。
【0128】
また、耐熱性や耐薬品性、特に耐アルカリ性の点からは、上記一般式(III)及び一般式(IV)で表される有機酸化合物としては、リン(P)や硫黄(S)に炭素原子が直接結合した化合物であることが好ましく、R及びRa’が、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−Rで示される1価の基であり、R及びRa’のいずれかは炭素原子を含むことが好ましい。また、Rが、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−Rで示される1価の基であることが好ましい。
【0129】
また、上記一般式(III)及び一般式(IV)で表される有機酸化合物は、R、Ra’及び/又はRa’’、並びに/或いは、R及び/又はRb’としては、重合性基を有するもの、すなわち、ビニル基、アリル基あるいは−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rであり、且つ、Rが−CO−CH=CH又は−CO−C(CH)=CHであるものが好ましく、特に、R、Ra’及び/又はRa’’、並びに/或いは、R及び/又はRb’が、ビニル基、アリル基、2−メタクリロイルオキシエチル基、2−アクリロイルオキシエチル基であるものが好ましい。
このような場合には、本発明の製造方法により得られるカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を用いて着色層を形成する際の露光時やポストベーク時に、上記重合性基同士及び/又は上記重合性基と、カラーフィルタ用赤色樹脂組成物に含まれる硬化性バインダ成分とを重合することが可能になり、カラーフィルタの着色層中において、上記顔料分散剤が、安定に存在することを可能とする。このようなカラーフィルタを用いて液晶表示装置を製造した際には、液晶層等へ上記顔料分散剤がブリードアウトすることを防止することができる。
【0130】
また、当該有機酸化合物が、重合性基を含むことにより、着色層形成に用いる前に、当該有機酸化合物が有する重合性基同士を重合させることができ、その結果顔料分散剤が高分子量化されるため、フォトリソグラフィー法によるカラーフィルタ製造工程の着色層形成のアルカリ現像時において、未露光箇所のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を、アルカリ現像性に特に優れるものとすることができる。
【0131】
尚、上記一般式(III)及び一般式(IV)で表される有機酸化合物は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0132】
(ハロゲン化炭化水素)
ハロゲン化炭化水素は、前述した一般式(I)で表される繰り返し単位(1)と、一般式(II)で表される繰り返し単位(2)とを有するブロック共重合体の繰り返し単位(1)が有するアミノ基と塩を形成する。
本発明においては、上記ハロゲン化炭化水素を用いることにより、顔料分散剤の生成した塩形成部位が顔料への吸着性に優れているために高い分散性を発現することができると同時に、分散剤の耐熱性や耐アルカリ性を高くすることができる。
【0133】
上記ハロゲン化炭化水素としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれかのハロゲン原子が、飽和又は不飽和の直鎖、分岐又は環状の炭化水素の水素原子と置換されているものが挙げられる。中でも、炭化水素の水素原子の1つがハロゲン原子に置換されたハロゲン化炭化水素であることが、顔料分散剤と塩を形成して、顔料分散性を高める点から好ましい。
また、上記ハロゲン化炭化水素としては、直鎖、分岐鎖又は環状であっても良い。また、炭素数は、1〜18であることが好ましく、更に1〜7であることが好ましい。
【0134】
上記ハロゲン化炭化水素のうち、ハロゲン化アルキルとしては、炭素数1〜18のものが挙げられるが特に限定されない。具体的には、例えば、塩化メチル、臭化メチル、塩化エチル、臭化エチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、塩化n−ブチル、塩化ヘキシル、塩化オクチル、塩化ドデシル、塩化テトラデシル、塩化ヘキサデシル等が挙げられる。また、ハロゲン化アリルとしては、例えば、塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリルが挙げられる。また、上記ハロゲン化アラルキルのアラルキル基としては、炭素数7〜18のものが挙げられるが特に限定されない。具体的には、例えば、塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル、塩化ナフチルメチル、塩化ピリジルメチル、臭化ナフチルメチル、臭化ピリジルメチル等が挙げられる。
【0135】
中でも、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される少なくとも1種であることが、塩形成反応のしやすさと、生成した塩形成部位が顔料への吸着性に優れている点から好ましい。
【0136】
本発明で用いられるブロック共重合体における該有機酸化合物及び/又はハロゲン化炭化水素の含有量は、良好な分散安定性が発揮されるのであればよく、特に制限はないが、一般に前記一般式(I)で表される3級アミノ基に対して、0.01〜2.0モル当量程度であり、より好ましくは0.1〜1.0モル当量である。このような場合、顔料分散性及び顔料分散安定性が優れたものになる。尚、上記該有機酸化合物及び/又はハロゲン化炭化水素を2種以上併用する場合、これらを合計した含有量が上記範囲内にあればよい。
【0137】
(塩型ブロック共重合体からなる顔料分散剤の製造)
上記顔料分散剤のブロック共重合体の製造方法としては、上記の繰り返し単位(1)と、繰り返し単位(2)とを有し、かつ上記繰り返し単位(1)が有するアミノ基と、上記の有機酸化合物及び/又はハロゲン化炭化水素とが塩を形成したものを製造することができる方法であればよく特に限定されない。例えば、上記の繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)を公知の重合手段を用いて重合した後、後述する溶媒中に溶解又は分散し、次いで該溶媒中に上記有機酸化合物及び/又はハロゲン化炭化水素を添加し、(必要に応じて加熱)攪拌することにより顔料分散剤を製造することができる。また、顔料分散時に、上記の繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)を有する共重合体と、上記の有機酸化合物及び/又はハロゲン化炭化水素を添加することによって、塩型ブロック共重合体を製造してもよい。
【0138】
上記重合手段としては、上記の繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)を所望の数で重合し、所望の分子量とすることができる手段であればよく、特に限定されず、ビニル基を有する化合物の重合に一般的に用いられる方法を採用することができ、例えばアニオン重合やリビングラジカル重合等を用いることができる。本発明においては、中でも、「J.Am.Chem.Soc.」105、5706(1983)に開示されているグループトランスファー重合(GTP)のようにリビング的に重合が進行する方法を用いることが好ましい。この方法によると、分子量、分子量分布等を所望の範囲とすることが容易であるので、該顔料分散剤の分散性を均一にすることができる。
【0139】
<硬化性バインダ成分>
本発明の製造方法により得られるカラーフィルタ用赤色樹脂組成物は、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与し、塗膜に充分な硬度を付与するために、硬化性バインダ成分を含有する。硬化性バインダ成分としては、特に限定されず、従来公知のカラーフィルタの着色層を形成するのに用いられる硬化性バインダ成分を適宜用いることができる。
硬化性バインダ成分としては、例えば、可視光線、紫外線、電子線等により重合硬化させることができる光硬化性樹脂を含む光硬化性バインダ成分や、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性樹脂を含む熱硬化性バインダ成分を含むものを用いることができる。
【0140】
本発明の製造方法により得られるカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を、例えばインクジェット方式で用いる場合など、基板上にパターン状に選択的に付着させて着色層を形成可能な場合には、硬化性バインダ成分に現像性は必要がない。この場合、インクジェット方式等でカラーフィルタ着色層を形成する場合に用いられる、公知の熱硬化性バインダ成分や、光硬化性バインダ成分等を適宜用いることができる。
一方、着色層を形成する際にフォトリソグラフィー方式を用いる場合には、アルカリ現像性を有する感光性バインダ成分が好適に用いられる。
以下、感光性バインダ成分と、インクジェット方式に用いるのに適した熱硬化性バインダ成分について具体的に説明するが、硬化性バインダ成分はこれらに限定されるものではない。
【0141】
(1)感光性バインダ成分
感光性バインダ成分としては、ポジ型感光性バインダ成分とネガ型感光性バインダ成分が挙げられる。ポジ型感光性バインダ成分としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂及び感光性付与成分としてo−キノンジアジド基含有化合物を含んだ系が挙げられ、アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ポリイミド前駆体等が挙げられる。
【0142】
ネガ型感光性バインダ成分としては、アルカリ可溶性樹脂と、多官能性モノマーと、光開始剤を少なくとも含有する系が好適に用いられる。以後、アルカリ可溶性樹脂と、多官能性モノマーと、光開始剤について、具体的に説明する。
【0143】
(アルカリ可溶性樹脂)
アルカリ可溶性樹脂は側鎖にカルボキシル基を有するものであり、バインダ樹脂として作用し、かつパターン形成する際に用いられる現像液、特に好ましくはアルカリ現像液に可溶性である限り、適宜選択して使用することができる。
本発明における好ましいアルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基を有する樹脂であり、具体的には、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、側鎖にカルボキシル基を有するとともに、さらに側鎖にエチレン性不飽和基等の光重合性官能基を有するものである。光重合性官能基を含有することにより形成される硬化膜の膜強度が向上するからである。また、これらアクリル系共重合体、及びエポキシアクリレート樹脂は、2種以上混合して使用してもよい。
【0144】
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとエチレン性不飽和モノマーを共重合して得られる。
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、更に芳香族炭素環を有する構成単位を含有していてもよい。芳香族炭素環は感光性樹脂組成物に塗膜性を付与する成分として機能する。
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、更にエステル基を有する構成単位を含有していてもよい。エステル基を有する構成単位は、感光性樹脂組成物のアルカリ可溶性を抑制する成分として機能するだけでなく、溶剤に対する溶解性、さらには溶剤再溶解性を向上させる成分としても機能する。
【0145】
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2,2’−オキシビス(メチレン)ビス−2−プロペノエート、スチレン、γ−メチルスチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどの中から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、アクリル酸の二量体(例えば、東亞合成化学(株)製M−5600)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの無水物の中から選ばれる1種以上とからなるコポリマーを例示できる。また、上記のコポリマーに、例えばグリシジル基、水酸基等の反応性官能基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させるなどして、エチレン性不飽和結合を導入したポリマー等も例示できるが、これらに限定されるものではない。
これらの中で、コポリマーにグリシジル基又は水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加等することにより、エチレン性不飽和結合を導入したポリマー等は、露光時に、後述する多官能性モノマーと重合することが可能となり、着色層がより安定なものとなる点で、特に好適である。
【0146】
カルボキシル基含有共重合体におけるカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの共重合割合は、通常、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%である。この場合、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの共重合割合が5質量%未満では、得られる塗膜のアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターン形成が困難になる。また、共重合割合が50質量%を超えると、アルカリ現像液による現像時に、形成されたパターンの基板からの脱落やパターン表面の膜荒れを来たしやすくなる傾向がある。
【0147】
カルボキシル基含有共重合体の好ましい分子量は、好ましくは1,000〜500,000の範囲であり、さらに好ましくは3,000〜200,000である。1,000未満では硬化後のバインダ機能が著しく低下し、500,000を超えるとアルカリ現像液による現像時に、パターン形成が困難となる場合がある。
【0148】
カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物を酸無水物と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物が適している。
エポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、またはビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物などのエポキシ化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0149】
不飽和基含有モノカルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、β−フルフリルアクリル酸、β−スチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α−シアノ桂皮酸等が挙げられる。これら不飽和基含有モノカルボン酸は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0150】
酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の二塩基性酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、エンドビシクロ−[2,2,1]−ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物のような多価カルボン酸無水物誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
このようにして得られるカルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物の分子量は特に制限されないが、好ましくは1000〜40000、より好ましくは2000〜5000である。
【0151】
アルカリ可溶性樹脂は、1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量としては、カラーフィルタ用赤色樹脂組成物に含まれる顔料100質量部に対して、通常、10〜1000質量部の範囲内、好ましくは20〜500質量部の範囲内である。アルカリ可溶性樹脂の含有量が少な過ぎると、充分なアルカリ現像性が得られない場合があり、また、アルカリ可溶性樹脂の含有量が多すぎると顔料の割合が相対的に低くなって、充分な着色濃度が得られない場合がある。
【0152】
(多官能性モノマー)
本発明のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物において用いられる多官能性モノマーは、後述する光開始剤によって重合可能なものであればよく、特に限定されず、通常、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物が用いられ、特にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0153】
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸ジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0154】
また、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、無水コハク酸変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、無水コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エステルヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0155】
これらの多官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物に優れた光硬化性(高感度)が要求される場合には、多官能性モノマーが、重合可能な二重結合を3つ(三官能)以上有するものであるものが好ましく、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物が好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
上記多官能性モノマーの含有量は、特に制限はないが、上記アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、通常5〜500質量部程度、好ましくは20〜300質量部の範囲である。多官能性モノマーの含有量が上記範囲より少ないと十分に光硬化が進まず、露光部分が溶出する場合があり、また、多官能性モノマーの含有量が上記範囲より多いとアルカリ現像性が低下するおそれがある。
【0156】
(光開始剤)
本発明のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物において用いられる光開始剤としては、特に制限はなく、従来知られている各種光開始剤の中から、適宜選択して用いることができる。例えばベンゾフェノン、ミヒラーケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、フェナントレン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メチルフェニル)イミダゾール2量体、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール化合物、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−S−トリアジン、2−トリクロロメチル−4−アミノ−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−ブトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパノン、1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、4−ベンゾイル−メチルジフェニルサルファイド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノンなどが挙げられる。これらの光開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0157】
光開始剤の含有量は、上記多官能性モノマー100質量部に対して、通常0.01〜100質量部程度、好ましくは5〜60質量部である。この含有量が上記範囲より少ないと十分に重合反応を生じさせることができないため、着色層の硬度を十分なものとすることができない場合があり、一方上記範囲より多いと、カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の固形分中の顔料等の含有量が相対的に少なくなり、十分な着色濃度が得られない場合がある。
【0158】
(2)熱硬化性バインダ成分
熱硬化性バインダとしては、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物と硬化剤の組み合わせが通常用いられ、更に、熱硬化反応を促進できる触媒を添加しても良い。熱硬化性官能基としては、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、エチレン性不飽和結合等が挙げられる。熱硬化性官能基としてはエポキシ基が好ましく用いられる。また、これらにそれ自体は重合反応性のない重合体を更に用いても良い。
【0159】
1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物として、1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物が好適に用いられる。1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物は、エポキシ基を2個以上、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個を1分子中に有するエポキシ化合物(エポキシ樹脂と称されるものを含む)である。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等を示すことができる。エポキシ化合物としては、カルボン酸により硬化しうる公知の多価エポキシ化合物を挙げることができ、このようなエポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。
【0160】
(1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物)
通常硬化性バインダ成分として用いられる比較的分子量の高い重合体であるエポキシ化合物(以下、「バインダ性エポキシ化合物」ということがある)としては、少なくとも下記式(V)で表される構成単位及び下記式(VI)で表される構成単位から構成され且つグリシジル基を2個以上有する重合体を用いることができる。
【0161】
【化19】

(R21は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、R22は炭素数1〜12の炭化水素基である。)
【0162】
【化20】

(R23は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)
【0163】
式(V)で表される構成単位をバインダ性エポキシ化合物の構成単位として用いることにより、本発明の樹脂組成物から形成される硬化塗膜に充分な硬度および透明性を付与することができる。式(V)において、R21として好ましいのは水素またはメチル基である。R22は、炭素数1〜12の炭化水素基であり、直鎖脂肪族、脂環式、芳香族いずれの炭化水素基であってもよく、さらに付加的な構造、例えば二重結合、炭化水素基の側鎖、スピロ環の側鎖、環内架橋炭化水素基等を含んでいてもよい。
【0164】
上記式(V)で表される構成単位を誘導するモノマーとして具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、パラ−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0165】
式(VI)で表される構成単位は、重合体中にエポキシ基(エポキシの反応点)を導入するために用いられる。当該重合体を含有する樹脂組成物は保存安定性に優れており、保存中および吐出作業中に粘度上昇を生じ難いが、その理由の一つは式(VI)中のエポキシ基がグリシジル基だからであると推測される。
式(VI)において、R23として好ましいのは水素またはメチル基である。式(VI)で表される構成単位を誘導するモノマーとして、具体的にはグリシジル(メタ)アクリレートを例示することができ、特にグリシジルメタクリレート(GMA)が好ましい。
【0166】
上記重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。また、上記重合体は、カラーフィルタの各細部に必要とされる性能、例えば硬度や透明性等が確保できる限り、式(V)あるいは式(VI)以外の主鎖構成単位を含んでいてもよい。そのようなモノマーとして具体的には、アクリロニトリル、スチレン等を例示することができる。
【0167】
上記バインダ性エポキシ化合物中の式(V)の構成単位と式(VI)の構成単位の含有量は、10:90〜90:10の範囲にあるのが好ましい。式(1)の構成単位の量が上記の比10:90よりも過剰な場合には、硬化の反応点が少なくなって架橋密度が低くなるおそれがあり、一方、式(2)の構成単位の量が上記の比90:10よりも過剰な場合には、嵩高い骨格が少なくなって硬化収縮が大きくなるおそれがある。
【0168】
また、上記バインダ性エポキシ化合物の質量平均分子量は、ポリスチレン換算質量平均分子量で表した時に3,000以上、特に4,000以上であることが好ましい。上記バインダ性エポキシ化合物の分子量が3,000よりも小さすぎるとカラーフィルタの細部としての硬化層に要求される強度、耐溶剤性等の物性が不足し易いからである。一方、上記バインダ性エポキシ化合物の質量平均分子量は、ポリスチレン換算質量平均分子量で表した時に20,000以下であることが好ましく、更に15,000以下であることが特に好ましい。当該分子量が20,000よりも大きすぎると粘度上昇が起こり易くなり、インクジェット方式で吐出ヘッドから吐出する時の吐出量の安定性や吐出方向の直進性が悪くなるおそれや、長期保存の安定性が悪くなるおそれがあるからである。なお上記バインダ性エポキシ化合物は、例えば特開2006−106503号公報の段落番号0148に記載されているような方法で合成することができる。
【0169】
熱硬化性バインダには、一分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物(以下、「多官能エポキシ化合物」ということがある。)であって、上記バインダ性エポキシ化合物よりも分子量が小さいものを用いても良い。中でも、上述のように上記バインダ性エポキシ化合物と当該多官能エポキシ化合物を併用することが好ましい。この場合、多官能エポキシ化合物のポリスチレン換算の質量平均分子量は、これと組み合わせるバインダ性エポキシ化合物よりも小さいことを条件に、4,000以下が好ましく、3,000以下が特に好ましい。樹脂組成物に比較的分子量が小さい多官能エポキシ化合物を添加すると、樹脂組成物中にエポキシ基が補充されてエポキシの反応点濃度が増加し、架橋密度を高めることができる。
【0170】
多官能エポキシ化合物の中でも、酸−エポキシ反応の架橋密度を上げるためには、一分子中にエポキシ基を4個以上有するエポキシ化合物を用いるのが好ましい。特に、インクジェット方式の吐出ヘッドからの吐出性を向上させるために前記バインダ性エポキシ化合物の質量平均分子量を10,000以下とした場合には、硬化層の強度や硬度が低下し易いので、そのような4官能以上の多官能エポキシ化合物を樹脂組成物に配合して架橋密度を充分に上げるのが好ましい。
【0171】
多官能エポキシ化合物としては、一分子中にエポキシ基を2個以上含有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを使用できる。
【0172】
より具体的には、商品名エピコート828(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名YDF−175S(東都化成社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名YDB−715(東都化成社製)などの臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA1514(大日本インキ化学工業社製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂、商品名YDC−1312(東都化成社製)などのハイドロキノン型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA4032(大日本インキ化学工業社製)などのナフタレン型エポキシ樹脂、商品名エピコートYX4000H(ジャパンエポキシレジン社製)などのビフェニル型エポキシ樹脂、商品名エピコート157S70(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂、商品名エピコート154(ジャパンエポキシレジン社製)、商品名YDPN−638(東都化成社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、商品名YDCN−701(東都化成社製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名EPICLON HP−7200(大日本インキ化学工業社製)などのジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、商品名エピコート1032H60(ジャパンエポキシレジン社製)などのトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、商品名VG3101M80(三井化学社製)などの3官能型エポキシ樹脂、商品名エピコート1031S(ジャパンエポキシレジン社製)などのテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、商品名デナコールEX−411(ナガセ化成工業社製)などの4官能型エポキシ樹脂、商品名ST−3000(東都化成社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名エピコート190P(ジャパンエポキシレジン社製)などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂、商品名YH−434(東都化成社製)などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、商品名YDG−414(東都化成社製)などのグリオキザール型エポキシ樹脂、商品名エポリードGT−401(ダイセル化学社製)、商品名EHPE3150(ダイセル化学社製)などの脂環式多官能エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアネート(TGIC)などの複素環型エポキシ樹脂などを例示することができる。また、必要であれば、エポキシ反応性希釈剤として、商品名ネオトートE(東都化成社製)などを混合することができる。
【0173】
上記バインダ性エポキシ化合物と、必要に応じて配合される多官能エポキシ化合物の配合割合は、質量比ではバインダ性エポキシ化合物を10〜80質量部と多官能エポキシ化合物を10〜60質量部の割合で配合するのが好ましく、バインダ性エポキシ化合物を20〜60質量部と多官能エポキシ化合物を20〜50質量部の割合で配合するのが更に好ましく、バインダ性エポキシ化合物を30〜40質量部と多官能エポキシ化合物を25〜35質量部の割合で配合するのが特に好ましい。
【0174】
(硬化剤)
本発明に用いられる熱硬化性バインダには、通常、硬化剤が組み合わせて配合される。硬化剤としては、例えば、多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸を用いる。
多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、無水ナジン酸などの脂肪族または脂環族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビストリメリテイト、グリセリントリストリメリテイトなどのエステル基含有酸無水物を挙げることができ、特に好ましくは、芳香族多価カルボン酸無水物を挙げることができる。また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。
また、本発明に用いられる多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸などの脂肪族多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族多価カルボン酸、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸を挙げることができ、好ましくは芳香族多価カルボン酸を挙げることができる。
【0175】
これら硬化剤は、1種単独でも2種以上の混合でも用いることができる。本発明に用いられる硬化剤の配合量は、エポキシ基を含有する成分(バインダ性エポキシ化合物と多官能エポキシ化合物の合計量)100質量部当たり、通常は1〜100質量部の範囲であり、好ましくは5〜50質量部である。硬化剤の配合量が1質量部未満であると、硬化が不充分となり、強靭な塗膜を形成することができないおそれがある。また、硬化剤の配合量が100質量部を超えると、塗膜の基板に対する密着性が劣るおそれがある。
【0176】
(触媒)
熱硬化性バインダには、硬化層の硬度および耐熱性を向上させるために、酸−エポキシ間の熱硬化反応を促進できる触媒を添加してもよい。そのような触媒としては、加熱硬化時に活性を示す熱潜在性触媒を用いることができる。
熱潜在性触媒は、加熱されたとき、触媒活性を発揮し、硬化反応を促進し、硬化物に良好な物性を与えるものであり、必要により加えられるものである。この熱潜在性触媒は、60℃以上の温度で酸触媒活性を示すものが好ましく、このようなものとしてプロトン酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、オニウム化合物類等が挙げられ、前記特開平4−218561号公報に記載されているような各種の化合物を使用することができる。
熱潜在性触媒は、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物及び硬化剤の合計100質量部に対して、通常は0.01〜10.0質量部程度の割合で配合する。
【0177】
<溶媒>
本発明に係るカラーフィルタ用赤色樹脂組成物には、顔料を分散させるためや、硬化性バインダ成分を溶解させるために溶媒が含まれる。溶媒としては、該樹脂組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶媒であればよく、特に限定されない。
本発明の樹脂組成物に用いる溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、N−プロピルアルコール、i−プロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;メトキシアルコール、エトキシアルコールなどのセロソルブ系溶媒;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート系溶媒;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)などのカルビトールアセテート系溶媒;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶媒;γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶媒;N−ヘプタン、N−ヘキサン、N−オクタンなどの飽和炭化水素系溶媒などの有機溶媒が挙げられる。これらの溶媒の中では、メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート系溶媒;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)などのカルビトールアセテート系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶媒;メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶媒;シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒が好適に用いられる。中でも、本発明に用いる溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(CHOCHCH(CH)OCOCH)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート及びシクロヘキサノンよりなる群から選択される1種以上であることが、他の成分の溶解性や塗布適性の点から好ましい。
【0178】
中でも、本発明の赤色樹脂組成物をインクジェットインクとして用いる場合には、インクの急激な粘度上昇や目詰まりが発生せず、吐出の直進性や安定性に悪影響を及ぼさないで吐出性を向上させるために、沸点が180℃〜260℃、特に210℃〜260℃で且つ常温(特に18℃〜25℃の範囲)での蒸気圧が0.5mmHg(66.7Pa)以下、特に0.1mmHg(13.3Pa)以下の溶剤成分を主溶剤として用いることが好ましい。例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、及び、コハク酸ジエチルなどを例示することができる。なお、「主溶剤」とは、溶剤全量のうち50質量%以上を占める溶剤のことである。主溶剤は、できるだけ高い配合割合で用いるのが望ましく、具体的には70質量%以上、好ましくは90質量%以上である。
【0179】
これらの主溶剤は乾燥が遅いためインクジェットでの間欠吐出性に優れる一方、塗膜形成時に乾燥が遅いことから、生産効率に問題がある場合があるので、生産効率を向上させる目的で、主溶剤に、より低沸点溶剤を混合しても良い。主溶剤と組み合わせて用いることが好ましい他の副溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのようなグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールオリゴマーエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールオリゴマーエーテルエステル類;酢酸エチル、安息香酸プロピルのような脂肪族又は芳香族エステル類;炭酸ジエチルのようなジカルボン酸ジエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルのようなアルコキシカルボン酸エステル類;アセト酢酸エチルのようなケトカルボン酸エステル類;エタノール、イソプロパノール、フェノールのようなアルコール類又はフェノール類;ジエチルエーテル、アニソールのような脂肪族又は芳香族エーテル類;2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコキシアルコール類;ジエチレングリコール、トリプロピレングリコールのようなグリコールオリゴマー類;2−エトキシエチルアセテートのようなアルコキシアルコールエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類等が挙げられる。
【0180】
<その他の成分>
本発明の製造方法により得られるカラーフィルタ用赤色樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ他の成分を含むものであってもよい。
例えば、本発明の効果が損なわれない限り、更に他の顔料誘導体を含んでいても良い。このような顔料誘導体は、顔料骨格に官能基を付与し、様々な機能を顔料に付加する役割を持つ化合物である。顔料分散時に顔料誘導体を顔料に添加すると、顔料誘導体の顔料類似骨格が顔料表面に吸着もしくは結合し、それにより顔料の表面が極性を有するようになることによって、分散剤と顔料間の親和性が向上し、分散性、分散安定性を確保できると考えられる。
また、前記カラーフィルタ用赤色樹脂組成物には、本発明の効果が損なわれない限り、他の顔料を含んでいても良い。
【0181】
その他、添加剤としては、例えば重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
これらの中で、用いることができる界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、3級アミン変性ポリウレタン類等を挙げることができる。また、その他にもフッ素系界面活性剤も用いることができる。
さらに、可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジル等が挙げられる。消泡剤、レベリング剤としては、例えばシリコン系、フッ素系、アクリル系の化合物等が挙げられる。
【0182】
(他の顔料)
前記他の顔料としては、カラーフィルタ用赤色樹脂組成物を所望の色に調整するために用いられる、他の赤色顔料や黄色顔料等が挙げられる。
【0183】
他の顔料として用いられる、他の赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド10、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド14、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド18、C.I.ピグメントレッド19、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド30、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド37、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド40、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド42、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド50:1、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド57:2、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド58:4、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド83、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド90:1、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド101、C.I.ピグメントレッド102、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド105、C.I.ピグメントレッド106、C.I.ピグメントレッド108、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド113、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド151、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド174、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド243、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド265等が挙げられる。
【0184】
他の顔料として用いられる、黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー31、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー60、C.I.ピグメントイエロー61、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー71、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー81、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー100、C.I.ピグメントイエロー101、C.I.ピグメントイエロー104、C.I.ピグメントイエロー106、C.I.ピグメントイエロー108、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー113、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー116、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー119、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー126、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー152、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー175等が挙げられる。
【0185】
<カラーフィルタ用赤色樹脂組成物における各成分の配合割合>
結晶析出抑制剤前駆物質及びジケトピロロピロール系顔料を含む、顔料及び顔料誘導体全体の合計の含有量は、カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の固形分全量に対して、5〜65質量%、より好ましくは10〜50質量%の割合で配合することが好ましい。顔料が少なすぎると、カラーフィルタ用赤色樹脂組成物を所定の膜厚(通常は1.0〜5.0μm)に塗布した際の透過濃度が十分でないおそれがあり、また顔料が多すぎると、カラーフィルタ用赤色樹脂組成物を基板上へ塗布し硬化させた際の基板への密着性、硬化膜の表面荒れ、塗膜硬さ等の塗膜としての特性が不十分となるおそれがあり、またそのカラーフィルタ用赤色樹脂組成物中の顔料分散に使われる分散剤の量の比率も多くなるために現像性、耐熱性等の特性も不十分になるおそれがある。尚、本発明において固形分は、上述した溶媒以外のもの全てであり、溶媒中に溶解している多官能性モノマー等も含まれる。
また、顔料分散剤の含有量としては、顔料を均一に分散することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、顔料100質量部に対して10〜150質量部用いることができる。更に、顔料100質量部に対して15〜80質量部の割合で配合するのが好ましく、特に20〜70質量部の割合で配合するのが好ましい。顔料分散剤の合計の含有量は、カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の固形分全量に対して、1〜50質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも5〜40質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が、カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の固形分全量に対して、1質量%未満の場合には、顔料を均一に分散することが困難になる恐れがあり、50質量%を超える場合には、硬化性、現像性の低下を招く恐れがある。
硬化性バインダ成分は、これらの合計量が、カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の固形分全量に対して24〜94質量%、好ましくは40〜90質量%の割合で配合するのが好ましい。
また、溶媒の含有量としては、着色層を精度良く形成することができるものであれば特に限定されるものではない。該溶媒を含む上記カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の全量に対して、通常、65〜95質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも75〜88質量%の範囲内であることが好ましい。上記溶媒の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができる。
【0186】
[カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法]
次に、本発明に係るカラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0187】
<顔料分散液を調製する工程>
本発明において、顔料分散液を調製する工程は、前記溶媒中、前記顔料分散剤の存在下で、前記ジケトピロロピロール系顔料を分散させる工程である。本発明においては、前記ジケトピロロピロール系顔料と前記顔料分散剤と、必要に応じてその他の成分を前記溶媒に混合し、公知の分散機を用いて分散させることによって顔料分散液を調製することができる。
【0188】
分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03〜2.00mmが好ましく、より好ましくは0.05〜1.0mmである。
【0189】
具体的には、ビーズ径が比較的大きめな1〜2mmジルコニアビーズで予備分散を行い、更にビーズ径が比較的小さめな0.03〜0.1mmジルコニアビーズで本分散することが挙げられる。また、分散後、0.5〜0.1μmのメンブランフィルターで濾過することが好ましい。
【0190】
本発明においては、公知の分散機を用いて分散させる分散時間は、適宜調整され特に限定されないが、顔料の平均分散粒径が15〜50nm程度となるように、例えばペイントシェーカーを用いた場合には5〜50時間とすることが、顔料を微細化して高いコントラストを実現する点から好ましい。
【0191】
顔料分散液を調製する工程において用いられるその他の成分としては、例えば顔料誘導体や、顔料分散補助樹脂、その他の顔料等が挙げられる。但し、当該工程で調製される顔料分散液は、顔料分散時に前記化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質を、実質的に顔料分散性を低下させず、位相差を大きくしない程度の含有量でしか含まないものである。目安として、顔料分散液中、前記ジケトピロロピロール系顔料100質量部に対して、前記化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質は、10質量部以下でしか含まれないものであり、中でも、含まれないことが好ましい。
顔料分散補助樹脂としては、例えば、前記感光性バインダ成分の項で例示されたアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂の立体障害によって顔料粒子同士が接触しにくくなり、分散安定化することやその分散安定化効果によって分散剤を減らす効果がある場合がある。
また、その他の成分としては、前記その他の成分に例示したものを適宜用いてもよい。
【0192】
<少なくとも、前記顔料分散液と、結晶析出抑制剤前駆物質と、硬化性バインダ成分とを混合する工程>
本工程としては、前記顔料分散液と、前記結晶析出抑制剤前駆物質と、前記硬化性バインダ成分と、所望により用いられる他の成分とを混合し、溶媒中に均一に溶解又は分散させ得る方法であれば、特に制限はされず、公知の混合手段を用いることができる。
【0193】
前記各成分を混合する方法としては、(1)前記結晶析出抑制剤前駆物質と、硬化性バインダ成分と、所望により用いられる各種添加成分とを分散乃至溶解した溶液を調製し、前記顔料分散液に当該溶液を加えて混合する方法、(2)前記結晶析出抑制剤前駆物質を分散乃至溶解した結晶析出抑制剤前駆物質溶液と、硬化性バインダ成分を分散乃至溶解した硬化性バインダ成分溶液と、所望により用いられる各種添加成分を溶解乃至分散した溶液をそれぞれ調製し、前記顔料分散液に加えて混合する方法、(3)前記顔料分散液に、粉末状の前記結晶析出抑制剤前駆物質と、前記硬化性バインダ成分溶液を加えて混合する方法等が挙げられる。
【0194】
カラーフィルタ用赤色樹脂組成物においては、色調整のために顔料を2種以上用いてもよい。その場合、その他の顔料は、前記顔料分散液中に配合して共分散してもよいし、別途その他の顔料の顔料分散液を調製して当該工程において混合して用いてもよい。
【0195】
2.カラーフィルタの製造方法
本発明に係るカラーフィルタの製造方法は、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタの製造方法であって、
透明基板上に、前記本発明に係る製造方法で得られたカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を用いて赤色樹脂組成物層を形成する工程と、
前記赤色樹脂組成物層を、加熱することにより、前記化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質におけるB及び/又はBを脱離して、下記化学式(4)で表される結晶析出抑制剤とし、赤色着色層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0196】
【化21】

(化学式(4)中、Aは、塩素原子、臭素原子、メチル基、スルホ基、又はフェニル基を表し、mは0〜5の整数を表し、mが2以上の整数の場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。PCyは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい縮合環基、又は、下記化学式(3)で表される多環式化合物基である。)
【0197】
【化22】

(化学式(3)中、Xは、直接結合又はメチレン基を表し、Cyは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい環式化合物基を表し、nは、1〜5の整数を表し、nが2以上の整数の場合、複数のX−Cyは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Aは、塩素原子、臭素原子、メチル基、又はスルホ基を表し、n’は0〜4の整数を表し、n’が2以上の整数の場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、n+n’は1〜5の整数である。)
【0198】
前記化学式(4)中の各符号は、前記化学式(1)におけるものと同様である。
【0199】
本発明のカラーフィルタの製造方法によれば、前記赤色樹脂組成物層を加熱又は露光することにより、前記化学式(3)で表される結晶析出抑制剤が生成されるため、カラーフィルタ製造工程における高温加熱工程時に着色層(塗膜)表面の顔料凝集体の析出を抑制することができ、高コントラストで位相差が小さい着色層を得ることができる。
【0200】
このような本発明のカラーフィルタの製造方法としては、例えば、透明基板上に、前記カラーフィルタ用赤色樹脂組成物を用いて赤色樹脂組成物層を形成する工程と、前記赤色樹脂組成物層を、マスクを介して露光する工程と、露光後の前記赤色樹脂組成物層を現像し、加熱することにより、所定パターンの赤色着色層を形成する工程とを含むことを特徴とするフォトリソグラフィー方式によるカラーフィルタの製造方法や、透明基板上の所定領域に、前記カラーフィルタ用赤色樹脂組成物を、インクジェット方式によって選択的に付着させて赤色樹脂組成物層を形成する工程と、前記赤色樹脂組成物層を加熱することにより硬化させて所定パターンの赤色着色層を形成する工程とを含むことを特徴とするインクジェット方式によるカラーフィルタの製造方法を好適に用いることができる。
以下、フォトリソグラフィー方式によるカラーフィルタの製造方法及び、インクジェット方式によるカラーフィルタの製造方法を順に説明する。
【0201】
<フォトリソグラフィー方式によるカラーフィルタの製造方法>
フォトリソグラフィー方式によりカラーフィルタを製造する場合、前記本発明で製造されるカラーフィルタ用赤色樹脂組成物は、前記光硬化性バインダ成分を用いた感光性樹脂組成物とする。まず、当該カラーフィルタ用赤色樹脂組成物を、スピンコート法などの塗布手段を用いて後述する透明基板上に塗布して、赤色樹脂組成物層を形成させる。
次いで、ホットプレートやオーブンなどを用いて、該赤色樹脂組成物層を乾燥させたのち、これに、所定のパターンのマスクを介して露光し、露光部分においてアルカリ可溶性樹脂及び多官能性モノマー等を光重合反応させて、赤色樹脂組成物の硬化膜とする。露光に使用される光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線、電子線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗膜の厚みなどによって適宜調整される。
また、露光後に重合反応を促進させるために、加熱処理を行ってもよい。加熱条件は、使用するカラーフィルタ用赤色樹脂組成物中の各成分の配合割合や、塗膜の厚み等によって適宜選択される。
【0202】
次に、露光後の赤色樹脂組成物層に対して現像液を用いて現像処理し、未露光部分を溶解、除去することにより、所望のパターンが形成される。現像液としては、通常、水や水溶性溶媒にアルカリを溶解させた溶液が用いられる。このアルカリ溶液には、界面活性剤などを適量添加してもよい。また、現像方法は一般的な方法を採用することができる。
現像処理後は、通常、現像液の洗浄、カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の所定パターンの硬化膜の乾燥が行われる。なお、現像処理後に、塗膜を十分に硬化させるために加熱処理を行うことが好ましい。加熱条件としては特に限定はなく、硬化性バインダ成分に応じて適宜選択される。以上のようにして、所定パターンの赤色着色層が形成される。他の色の着色層も同様にして形成することができる。
【0203】
<インクジェット方式によるカラーフィルタの製造方法>
インクジェット方式によりカラーフィルタを製造する場合、まず、前記本発明のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を含み、その他必要に応じて各色用の顔料がそれぞれ配合されたカラーフィルタ用樹脂組成物を用意する。そして、透明基板の表面に、遮光部のパターンにより画成された各色の着色層形成領域に、対応する色のカラーフィルタ用樹脂組成物をインクジェット方式によって選択的に付着させてインク層を形成する。なお、本発明で製造される赤色樹脂組成物を用いた場合に、当該インク層が赤色樹脂組成物層に該当する。このインクの吹き付け工程において、本発明のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物は、可溶性の結晶析出抑制剤前駆物質を用いているので、インクジェットヘッドの先端部で粘度増大を起こし難く、良好な吐出性を維持する。インクジェット方式は、各色のカラーフィルタ用樹脂組成物を、複数のヘッドを使って同時に基板上に吹き付けることもできるので、印刷等の方法で各色ごとに着色層を形成する場合と比べて作業効率を向上させることができる。
次に、各色のインク層を乾燥し必要に応じてプレベークした後、適宜加熱乃至露光することにより硬化させる。インク層を適宜加熱乃至露光すると、各色のカラーフィルタ用樹脂組成物中に含まれる硬化性樹脂の架橋要素が架橋反応を起こし、各インク層が硬化して着色層が形成される。以上のようにして所定パターンの赤色着色層が形成される。
【0204】
[カラーフィルタ]
本発明の製造方法により得られるカラーフィルタは、少なくとも透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタである。
このような本発明の製造方法により得られるカラーフィルタについて、図を参照しながら説明する。図1は、フォトリソグラフィー方式により製造されたカラーフィルタの一例を示す概略図であり、図2は、インクジェット方式により製造されたカラーフィルタの一例を示す概略図である。図1及び図2によれば、本発明の製造方法により得られるカラーフィルタ10は、透明基板1と、遮光部2と、着色層3とを有している。
【0205】
<着色層>
本発明のカラーフィルタの製造方法により得られるカラーフィルタにおける着色層は、前述した本発明の製造方法により得られるカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を用いて硬化させて形成された赤色着色層が含まれていれば、特に限定されないが、通常、後述する透明基板上の遮光部の開口部に形成され、3色以上の着色層を含む着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、塗布方法、カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0206】
<遮光部>
本発明の製造方法により得られるカラーフィルタにおける遮光部は、後述する透明基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルタに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。この遮光部としては、例えば、黒色顔料をバインダ樹脂中に分散又は溶解させたものや、クロム、酸化クロム等の金属薄膜等が挙げられる。この金属薄膜は、CrO膜(xは任意の数)及びCr膜が2層積層されたものであってもよく、また、より反射率を低減させたCrO膜(xは任意の数)、CrN膜(yは任意の数)及びCr膜が3層積層されたものであってもよい。
当該遮光部が黒色着色剤をバインダ樹脂中に分散又は溶解させたものである場合、この遮光部の形成方法としては、遮光部をパターニングすることができる方法であればよく、特に限定されず、例えば、遮光部用カラーフィルタ用樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法、印刷法、インクジェット法等を挙げることができる。
【0207】
上記の場合であって、遮光部の形成方法として印刷法やインクジェット法を用いる場合、バインダ樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0208】
また、上記の場合であって、遮光部の形成方法としてフォトリソグラフィー法を用いる場合、バインダ樹脂としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する感光性樹脂が用いられる。この場合、黒色着色剤及び感光性樹脂を含有する遮光部用カラーフィルタ用赤色樹脂組成物には、光重合開始剤を添加してもよく、さらには必要に応じて増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0209】
一方、遮光部が金属薄膜である場合、この遮光部の形成方法としては、遮光部をパターニングすることができる方法であればよく、特に限定されず、例えば、フォトリソグラフィー法、マスクを用いた蒸着法、印刷法等を挙げることができる。
【0210】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2〜0.4μm程度で設定され、黒色着色剤をバインダ樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5〜3.0μm程度で設定される。
【0211】
<透明基板>
本発明の製造方法により得られるカラーフィルタにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明の製造方法により得られるカラーフィルタの用途に応じて、例えば100μm〜1mm程度のものを使用することができる。
なお、本発明の製造方法により得られるカラーフィルタは、上記透明基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0212】
本発明の製造方法により得られるカラーフィルタは、高コントラストで、各種表示装置に好適に用いることができる。中でも、本発明の製造方法により得られるカラーフィルタは、位相差が小さいため、特に液晶表示装置に好適に用いることができる。
【実施例】
【0213】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0214】
(比較合成例1:顔料誘導体Aの合成)
98.5%濃硫酸320gに5℃以下を保ちながら、パラホルムアルデヒド1.02gとフタルイミド5.00gを、交互に10分間かけて添加し、5℃以下で1時間攪拌した。次いでPR255(C.I.ピグメントレッド255)8.0gを5℃以下に保ちながら10分間かけて添加し、2〜5℃で6時間攪拌した。反応混合物を氷水 (氷870g、水450g) にあけ、30分間攪拌後、析出物を濾別した。得られたウェットケーキを40〜60℃の温水で洗浄、濾別し、濾液のpHが2以上になるまでこれを繰り返した。最終的に得られたウェットケーキを80℃の真空乾燥機で乾燥し、下記化学式(7)で表される顔料誘導体Aを得た。TOF−MSにより、目的物の分子量を確認した。
【0215】
【化23】

【0216】
(合成例1:結晶析出抑制剤前駆物質Aの合成)
100mlのテトラヒドロフランに、比較合成例1で得られた顔料誘導体A4.07gを添加し、室温で攪拌した。この懸濁液にジメチルアミノピリジン0.17gと二炭酸ジ−tert−ブチル11.19gを添加し、この溶液を室温で一晩攪拌した。得られたオレンジ褐色溶液の溶剤を留去し、n−ヘキサンを加えて洗浄、濾過した。80℃の真空乾燥機で乾燥し、下記化学式(8)で表される結晶析出抑制剤前駆物質A(黄褐色の結晶)(n=1を含む)を得た。TOF−MSにより、目的物の分子量を確認した。
【0217】
【化24】

【0218】
(合成例2:結晶析出抑制剤前駆物質Bの合成)
100mlのテトラヒドロフランに、比較合成例1で得られた顔料誘導体A4.07gを添加し、この懸濁液にジメチルアミノピリジン0.17gを添加した。テトラヒロドフラン100mlに二炭酸ジ−tert−ブチル1.98gを溶解させ、これを30分間かけてゆっくりと滴下し、室温で一晩攪拌した。得られた蛍光のオレンジ褐色溶液の溶剤を留去し、n−ヘキサンを加えて洗浄、濾過した。80℃の真空乾燥機で乾燥し、下記化学式(9)で表される結晶析出抑制剤前駆物質B(褐色の結晶)(n=1を含む)を得た。TOF−MSにより、目的物の分子量を確認した。
【0219】
【化25】

【0220】
(合成例3:結晶析出抑制剤前駆物質Cの合成)
合成例1において、二炭酸ジ−tert−ブチルの代わりに二炭酸ジエチル8.85gを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、下記化学式(10)で表される結晶析出抑制剤前駆物質C(n=1を含む)を得た。TOF−MSにより、目的物の分子量を確認した。
【0221】
【化26】

【0222】
(比較合成例2:顔料誘導体Bの合成)
PR255 28.8gを35℃の96%硫酸315gに加えた。40℃以下で3,5−ジメチル−ピラゾール9.6gを加え、次いでパラホルムアルデヒド3.0gを徐々に加えた。40℃で2時間攪拌し、1500mlの氷水へ注入し、1時間攪拌した。沈殿物を濾別し、温水で洗浄を行った。ウェットケーキを80度で真空乾燥し、下記化学式(11)で表される顔料誘導体B(赤色結晶)(n=1を含む)を得た。TOF−MSにより、目的物の分子量を確認した。
【0223】
【化27】

【0224】
(合成例4:結晶析出抑制剤前駆物質Dの合成)
合成例1において、顔料誘導体Aの代わりに、比較合成例2で得られた顔料誘導体Bを3.60g用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、下記化学式(12)で表される結晶析出抑制剤前駆物質D(n=1を含む)を得た。TOF−MSにより、目的物の分子量を確認した。
【0225】
【化28】

【0226】
(比較合成例3:顔料誘導体Cの合成)
モレキュラーシーブで脱水したtert−アミルアルコール370部にナトリウム5.16部を加え、100℃で攪拌し、アルコキシドを合成した。1−(4−シアノフェニル)−2,5−ジメチルピロール15.07部をアルコキシド中へ加え、100℃に加熱したアルコキシド溶液中に3−エトキシカルボニル−2−フェニル−2−ピロリン−5−オン17.7部を徐々に加えた。その後、90℃で3時間攪拌した。室温まで冷却し、メタノール57.0部、水57.0部、酢酸14.5部の混合液中に反応液を加えた。沈殿をろ過し、メタノールで洗浄した。ウェットケーキを80℃で真空乾燥し、下記化学式(13)で表される顔料誘導体C(n=1を含む)を得た。TOF−MSにより、目的物の分子量を確認した。
【0227】
【化29】

【0228】
(合成例5:結晶析出抑制剤前駆物質Eの合成)
合成例1において、顔料誘導体Aの代わりに比較合成例3で得られた顔料誘導体Cを用いる以外は、合成例1と同様の操作を行い、下記化学式(14)で表される結晶析出抑制剤前駆物質E(n=1を含む)を得た。TOF−MSにより、目的物の分子量を確認した。
【0229】
【化30】

【0230】
(比較合成例4:顔料誘導体Dの合成)
合成例1において、顔料誘導体Aの代わりにC.I.ピグメントレッド255 2.62gを用いる以外は、合成例1と同様の操作を行い、下記化学式(15)で表される顔料誘導体Dを得た。TOF−MSにより、目的物の分子量を確認した。
【0231】
【化31】

【0232】
(製造例1:分散剤・バインダ樹脂溶液の調製)
225mLマヨネーズ瓶中に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)66.9質量部、顔料分散剤(商品名:BYK−LPN6919、ビックケミー社製)(アミン価135mgKOH/g、固形分60質量%)4.83質量部、上記バインダ樹脂A 14.7質量部をそれぞれ溶解させた。混合溶液にフェニルホスホン酸(商品名:PPA、日産化学社製)0.3質量部(ブロック共重合体の3級アミノ基に対して0.3モル当量)を加え、室温で30分攪拌することで分散剤・バインダ樹脂溶液を調製した。
なお、上記顔料分散剤(商品名:BYK−LPN6919、ビックケミー社製)は、上記一般式(I)で表される繰り返し単位(1)と、上記一般式(II)で表される繰り返し単位(2)とを有するブロック共重合体である。更に、製造例1において、当該ブロック共重合体(BYK−LPN6919)のアミノ基は、PPAのホスホン酸基との酸・塩基反応により塩形成されている。
【0233】
(実施例1)
(1)顔料分散液の調製
製造例1で調製した分散剤・バインダ樹脂溶液84質量部にC.I.ピグメントレッド254(平均一次粒径30nm)15.36質量部を加え、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて2mmジルコニアビーズで1時間、さらに0.1mmジルコニアビーズで24時間分散し、実施例1の顔料分散液を得た。
【0234】
(2)カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の調製
上記で得られた顔料分散液59.6質量部と、合成例1で得られた結晶析出抑制剤前駆物質A0.64質量部と、アルカリ可溶性樹脂(上記バインダー樹脂A、固形分44質量%)2.49質量部、3〜4官能アクリレートモノマー(商品名:アロニックスM305、東亞合成(株)製)1.87質量部、光重合開始剤:2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(商品名:イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製))0.26質量部、光重合開始剤(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン(商品名イルガキュア369、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製))0.58質量部、光増感剤:2,4ジエチルチオキサントン(商品名:カヤキュアーDETX−S、日本化薬(株)製)0.20質量部、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)35.0質量部から成るバインダ組成物40.4質量部とを混合し、加圧濾過を行って、実施例1のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を得た。
【0235】
(実施例2〜5、比較例1〜5)
実施例1において、合成例1で得られた結晶析出抑制剤前駆物質Aの代わりに、合成例2〜5で得られた結晶析出抑制剤前駆物質B〜E及び比較合成例1〜4で得られた顔料誘導体A〜Dをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2〜5及び比較例1〜4のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を得た。また実施例1において、合成例1で得られた結晶析出抑制剤前駆物質Aを用いなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い比較例5のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を得た。
【0236】
(比較例6)
(1)顔料分散液の調製
製造例1で調製した分散剤・バインダ樹脂溶液84質量部にC.I.ピグメントレッド254(平均一次粒径30nm)15.36質量部、合成例1で得られた結晶析出抑制剤前駆物質A0.64質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて2mmジルコニアビーズで1時間、さらに0.1mmジルコニアビーズで24時間分散し、比較例6の顔料分散液を得た。
【0237】
(2)カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の調製
上記で得られた比較例6の顔料分散液59.6質量部とアルカリ可溶性樹脂(上記バインダー樹脂A、固形分44質量%)2.49質量部、3〜4官能アクリレートモノマー(商品名:アロニックスM305、東亞合成(株)製)1.87質量部、光重合開始剤:2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(商品名:イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製))0.26質量部、光重合開始剤(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン(商品名イルガキュア369、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製))0.58質量部、光増感剤:2,4ジエチルチオキサントン(商品名:カヤキュアーDETX−S、日本化薬(株)製)0.20質量部、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)35.0質量部から成るバインダ組成物40.4質量部とを混合し、加圧濾過を行って、比較例6のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を得た。
【0238】
(比較例7〜14)
比較例6において、合成例1で得られた結晶析出抑制剤前駆物質Aの代わりに、合成例2〜5で得られた結晶析出抑制剤B〜E及び比較合成例1〜4で得られた顔料誘導体A〜Dをそれぞれ用いた以外は、比較例6と同様の操作を行い、比較例7〜14のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を得た。
【0239】
[輝度及びコントラストの評価]
実施例1〜5及び比較例1〜14のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を、それぞれ、厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。超高圧水銀灯を用いて60mJ/cmの紫外線を照射することによって硬化膜(赤色着色層)を得た。乾燥硬化後の膜厚は目標色度x=0.653になるように調整した。赤色着色層が形成されたガラス板を230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークし赤色着色基板を得た。当該基板のポストベーク前及びポストベーク後のコントラスト、色度(x、y)及び輝度(Y)を測定した。コントラストは壺坂電気(株)社製「コントラスト測定装置CT−1B」を用い、色度及び輝度はオリンパス(株)社製「顕微分光測定装置OSP−SP200」を用いて測定した。
コントラスト保持率は、上記ポストベーク前のコントラストとポストベーク後のコントラストから下記式により算出した。結果を表2に示す。
【0240】
【数1】

【0241】
[位相差の評価]
着色層の位相差は、以下の式で計算される厚み方向のリタデーション(Rth)を指標とした。
リタデーション(Rth)は、位相差層測定装置(AXOMETRICS社製AxoscanTM Mueller Matrix Polarimeter)を用い、赤色着色層の測定波長は620nmで測定した。評価結果を表1に示す。
Rth=((Nx+Ny)/2−Nz)d
Nx:面内遅相軸方向の屈折率
Ny:面内進相軸方向の屈折率
Nz:厚み方向の屈折率
d:膜厚(nm)
【0242】
[耐熱性の評価]
実施例1〜5及び比較例1〜14のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を、それぞれ、厚み0.7mmのガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。この着色層にフォトマスクを介し、超高圧水銀灯を用いて30mJ/cmの紫外線を照射した。その後、上記着色層が形成されたガラス板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いてシャワー現像し、パターンの形成された赤色着色基板を得た。
パターンの形成された赤色着色基板を230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークし、さらに、260℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークし、パターン塗膜上に顔料凝集体の析出の有無を確認した。評価結果を表1に示す。
(耐熱性評価基準)
◎:析出しなかった。
○:わずかに析出した。
△:析出した。
×:かなり析出した。
【0243】
【表1】

【0244】
【表2】

【0245】
[結果のまとめ]
結晶析出抑制剤前駆物質及び結晶析出抑制剤を含有していない比較例5のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を用いて形成された赤色着色層は、位相差が小さいものの、加熱工程時に顔料凝集体がかなり析出し、ポストベーク後のコントラストが低かった。
加熱することにより顔料誘導体Aを生じる結晶析出抑制剤前駆物質Aを顔料分散後に添加した実施例1のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物は、顔料誘導体Aを顔料分散後に添加した比較例1と比較して、耐熱性が更に向上し、得られた着色層のコントラストが向上し、且つ、位相差が増大し難いことが明らかにされた。加熱することにより顔料誘導体Aを生じる結晶析出抑制剤前駆物質Bを顔料分散後に添加した実施例2においては、比較例1と比べて、耐熱性が向上し、得られた着色層のコントラストが向上した。また、加熱することにより顔料誘導体Aを生じる結晶析出抑制剤前駆物質Cを顔料分散後に添加した実施例3は、実施例1と同様に、比較例1と比べて耐熱性が向上し、得られた着色層のコントラストが向上し、且つ、位相差が改善された。実施例1〜3のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物は、従来の手順のように顔料誘導体を顔料分散時に添加した比較例11と比べると耐熱性も位相差もいずれも大きく向上することが明らかにされた。
別の結晶析出抑制剤である、顔料誘導体Bを顔料分散後に添加した比較例2と、加熱することにより顔料誘導体Bを生じる結晶析出抑制剤前駆物質Dを顔料分散後に添加した実施例4とを比較した場合や、更に別の結晶析出抑制剤である、顔料誘導体Cを顔料分散後に添加した比較例3と、加熱することにより顔料誘導体Cを生じる結晶析出抑制剤前駆物質Eを顔料分散後に添加した実施例5とを比較した場合にも、結晶析出抑制剤前駆物質を用いたほうが、結晶析出抑制剤そのものを用いた場合よりもコントラストが向上し、位相差が増大し難いことが明らかにされた。
【0246】
結晶析出抑制剤前駆物質Aを顔料分散時に添加した比較例6と、結晶析出抑制剤前駆物質Aを顔料分散後に添加した実施例1の比較から、顔料分散後に添加した場合の方が、位相差が増大し難いことが明らかになった。この結果は、結晶析出抑制剤前駆物質B〜Eを用いた場合であっても同様であり、結晶析出抑制剤前駆物質Dの場合には更に耐熱性も向上した。
以上の結果から、結晶析出抑制剤前駆物質を顔料分散後に加えて調製したカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を用いることにより、顔料分散性に優れ、カラーフィルタ製造工程における高温加熱工程時に着色層表面の顔料凝集体の析出を抑制することができ、カラーフィルタの高コントラスト化が達成可能で、且つ、着色層の位相差の上昇を抑制できることが明らかにされた。
【符号の説明】
【0247】
1 透明基板
2 遮光部
3 着色層
10 カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質と、ジケトピロロピロール系顔料と、顔料分散剤と、硬化性バインダ成分と、溶媒とを含有するカラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法であって、
前記溶媒中、前記顔料分散剤の存在下で、前記ジケトピロロピロール系顔料を分散させる顔料分散液を調製する工程と、
少なくとも、前記顔料分散液と、前記結晶析出抑制剤前駆物質と、前記硬化性バインダ成分とを混合する工程を有する、カラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法。
【化1】

(化学式(1)中、Aは、塩素原子、臭素原子、メチル基、スルホ基、又はフェニル基を表し、mは0〜5の整数を表し、mが2以上の整数の場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。B及びBは、それぞれ独立に、水素原子、又は下記化学式(2)で表される基であり、B及びBの少なくとも1つは下記化学式(2)で表される基である。PCyは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい縮合環基、又は、下記化学式(3)で表される多環式化合物基である。)
【化2】

(化学式(2)中、Rは、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。)
【化3】

(化学式(3)中、Xは、直接結合又はメチレン基を表し、Cyは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい環式化合物基を表し、nは、1〜5の整数を表し、nが2以上の整数の場合、複数のX−Cyは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Aは、塩素原子、臭素原子、メチル基、又はスルホ基を表し、n’は0〜4の整数を表し、n’が2以上の整数の場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、n+n’は1〜5の整数である。)
【請求項2】
前記結晶析出抑制剤前駆物質が、前記ジケトピロロピロール系顔料の100質量部に対して、0.5〜20質量部である、請求項1に記載のカラーフィルタ用赤色樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタの製造方法であって、
透明基板上に、請求項1又は2に記載の製造方法で得られたカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を用いて赤色樹脂組成物層を形成する工程と、
前記赤色樹脂組成物層を、前記化学式(1)で表される結晶析出抑制剤前駆物質におけるB及び/又はBを脱離して、下記化学式(4)で表される結晶析出抑制剤とし、赤色着色層を形成する工程とを含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【化4】

(化学式(4)中、Aは、塩素原子、臭素原子、メチル基、スルホ基、又はフェニル基を表し、mは0〜5の整数を表し、mが2以上の整数の場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。PCyは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい縮合環基、又は、下記化学式(3)で表される多環式化合物基である。)
【化5】

(化学式(3)中、Xは、直接結合又はメチレン基を表し、Cyは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい環式化合物基を表し、nは、1〜5の整数を表し、nが2以上の整数の場合、複数のX−Cyは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Aは、塩素原子、臭素原子、メチル基、又はスルホ基を表し、n’は0〜4の整数を表し、n’が2以上の整数の場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、n+n’は1〜5の整数である。)
【請求項4】
透明基板上に、請求項1又は2に記載の製造方法で得られたカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を用いて赤色樹脂組成物層を形成する工程と、
前記赤色樹脂組成物層を、マスクを介して露光する工程と、
露光後の前記赤色樹脂組成物層を現像し、加熱することにより、所定パターンの赤色着色層を形成する工程とを含むことを特徴とする、請求項3に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
透明基板上の所定領域に、請求項1又は2に記載の製造方法で得られたカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を、インクジェット方式によって選択的に付着させて赤色樹脂組成物層を形成する工程と、
前記赤色樹脂組成物層を加熱することにより硬化させて所定パターンの赤色着色層を形成する工程とを含むことを特徴とする、請求項3に記載のカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−64870(P2013−64870A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203446(P2011−203446)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】