説明

カラーフィルタ研磨用のスラリー組成物

本発明は、カラーフィルタ研磨用スラリー組成物を提供する。スラリー組成物は、少なくとも1つの研磨剤、バッファ溶液、及び添加剤を含む。研磨剤は、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、チタニア、ジルコニア、酸化銅、酸化鉄、酸化亜鉛、及びそれらの混合体からなる群から選択される。バッファ溶液は、pHを所望の範囲に調節するよう使用する。添加剤は、研磨組成物を安定化させ、且つ、研磨性能を向上するよう使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨スラリーに関する。より具体的には、本発明は、カラーフィルタ研磨用のスラリー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ技術の発展に従って、従来の大型陰極線管(CRT)ディスプレイは次第にフラットパネルディスプレイに取って代わられてきている。薄型で軽量のフラットパネルディスプレイ装置は高品質の画質を提供するだけでなく、高い移動性、耐久性、及びエネルギー節約といった利点も提供する。これらのフラットパネルディスプレイ製品には、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネセンスディスプレイ(OELまたはOLED)、ポリマー発光ダイオード(PLEDまたはLEP)、電界放出ディスプレイ(FED)、及びプラズマディスプレイパネル(PDP)が含まれる。
【0003】
LCDディスプレイ開発は、フルカラー、大型、高解像度、及び低価格の傾向にある。最高画質の得るためにLCD装置はカラー画像を表示するためにカラーフィルタを使用する。カラーフィルタは、コントラスト、輝度、及びディスプレイパネルの表面反射といった画像特性に影響を及ぼす。
【0004】
カラーフィルタは、高度に秩序付けられたパターンに配置される3色、すなわち、赤、緑、及び青から構成されるカラーフォトレジスト層である。グレイスケール光を供給するドライバICはバックライト源を制御し、グレイスケール光は赤、緑、または青の光線を表示するようカラーフィルタを通過する。赤、緑、及び青の光線はさらに、カラー画像を形成するよう組み合わされる。カラーフィルタは、TFT−LCDディスプレイの重要な構成要素のうちの1つである。画質、スループット、及び費用の検討事項のためにはカラーフィルタの品質を改良することが重要である。
【0005】
図1は、従来技術のカラーフィルタの構造を概略的に示す。図1では、カラーフィルタの構造は、ガラス基板100、ブラックマトリクス102、カラー層104a−104c、保護層106、及びITO導電膜108から形成される。ガラス基板100の厚さは、大型LCDパネルの重量を減少するために約0.63ミリメートルまたは0.55ミリメートルと薄くされる。ブラックマトリクス102は、3色のフォトレジスト層104a−104cを分離するよう使用され、また、カラーコントラストを高めるためには必要不可欠である。一般的に、ブラックマトリクス102は、カラー性能をよくするために反射が低いことが必要である。ブラックマトリクス102の材料は、クロムまたは樹脂でありうる。
【0006】
カラーフィルタは、染料分散法、染色法、印刷法、または電気着色法により生成可能である。染料分散法は、最高の信頼性、解像度、及び高温抵抗を与えることができ、したがって、業界において広く使用されている。
【0007】
染料分散法に使用されるカラーフォトレジストインクには、染料、分散剤、添加剤、結合樹脂、反応性希釈剤、感光性開始剤、及び溶剤が含まれる。3つのトゥルーカラー(赤、緑、及び青)を着色するカラーフォトレジストインクは、一般的に、ベース現像(base-developed)されたネガ型フォトレジストである。カラーフォトレジストインクの主な成分は、アゾ染料化合物、フタロシアニン有機顔料、及び様々な複素環式化合物を含む染料化合物である。製品機能または処理検討事項に依存して様々な混合体を使用することができる。
【0008】
カラーフィルタを生成する染料分散法は、ブラックマトリクス層、RGB層、及びITO層の形成を含む。ブラックマトリクスの形成に関して、酸化クロム/クロムの低反射率二重層膜が、酸窒化ケイ素保護層で覆われたガラス基板上にスパッタされる。酸化クロム/クロムの低反射率膜は、メタルブラック層とも呼ばれる。次に、ポジ型フォトレジスト層がそのメタルブラック層上にスピンコーティングされる。ブラックマトリクスのパターンを有するマスクを使用して、フォトレジスト層はUV光に露光され、現像され、そして、メタルブラック層はエッチングされ、ブラックマトリクスのパターンが得られる。
【0009】
ブラックマトリクスパターンが形成された後、RGB処理が続く。RGB処理では、赤、緑、及び青のカラーフォトレジストが指定位置に堆積されRGBパターンが形成される。最初に、赤(R)のカラーフォトレジストがスピンコーティングされ、Rパターンを有するマスクを使用してUV光(<248ナノメートル)に露光される。露光後、現像剤を使用して非露光部分を除去し、それにより、Rパターンを形成する。次に、Rパターンをより抵抗力があるようにするために200℃より高い温度で後焼成が行われる。同様の手順に従って、緑(G)パターン及び青(B)パターンが形成される。続いて、ITO透明電極層がRGB層上に堆積され、これでカラーフィルタの製造が完了する。
【0010】
より優れた光学特性及び視覚効果を得るために、カラーフィルタの表面は、化学的機械的研磨(CMP)法を使用して平坦化される必要がある。図2に示すように、R、G、Bパターンを得た後、ブラックマトリクス(BM)は分離のために各パターンの間に存在する。様々な要件に依存して、研磨後のR、G、Bパターンの先端高さ(すなわち、R1、R2、B1、B2、G1、G2)は、5000オングストロームより下であることが必要であり、その一方で、研磨後のパターンの底位置の高さの差(R、G、Bロスと呼ぶ)は、500オングストロームより少ないことが必要である。
【0011】
しかし、CMPスラリーにおける化学成分は、CMP作業時及び作業後に、カラーフォトレジストの染料の特性を望ましくなく変更してしまう場合がある。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、カラーフィルタ研磨用のスラリー組成物を提供する。このスラリー組成物は、スラリーと、樹脂、染料、及び分散剤を含むカラーフィルタ材料との間の相互作用を減少し、それにより、カラーフィルタの信頼性及び耐用年数を保証することができる。このようなスラリー組成物を使用することにより、カラーフィルタ生産の製造安定性を改善可能であり、したがって、生産スループットを増加する。
【0013】
本願において具現化し広義に説明するように、本発明は、少なくとも1つの研磨剤、バッファ溶液、及び添加剤を含むカラーフィルタ研磨用のスラリー組成物を提供する。研磨剤は、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、チタニア、ジルコニア、酸化銅、酸化鉄、酸化亜鉛、及びそれらの混合体からなる群から選択される。研磨剤は、か焼、コロイド、またはヒュームド形態で提供可能である。
【0014】
スラリー組成物は、1.0ミクロンより小さい、主に、10ナノメートル乃至1.0ミクロン、及び好適には40ナノメートル乃至200ナノメートルの一次粒子径を有する。研磨剤粒子の一次粒子径分布は、モノ分布である。或いは、2つの異なる一次粒子径を有する研磨剤をスラリー組成物内に混合可能である。すなわち、一次粒子径分布は、バイモーダル分布であることが可能である。スラリー組成物の研磨剤粒子は、100ナノメートル乃至10ミクロン、好適には200ナノメートル乃至800ナノメートルの二次粒子径を有する。スラリー組成物における研磨剤の含有量は、約1重量パーセント乃至45重量パーセント、好適には2重量パーセント乃至25重量パーセントである。
【0015】
スラリー組成物中の研磨剤の比表面積は、研磨時に引っかき傷、くぼみ、及び他の不具合の形成を最小限にするよう約5−400m/g、好適には20−200m/gである。
【0016】
バッファ溶液は、pH値を調節するよう使用され、また、pHバッファとしても機能する。バッファ溶液は、無機酸、有機酸、無機塩基、これらの混合体、及びこれらの塩からなる群から選択される。スラリー組成物におけるバッファ溶液の含有量は、2重量パーセント乃至15重量パーセントである。バッファ溶液の選択は、スラリー組成物に使用される研磨剤に依存する。バッファ溶液として使用される有機酸は、グリシン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸、及びこれらの混合体からなる群から選択可能である。バッファ溶液に有機酸が選択される場合、ナトリウム、カリウム、カルシウム、または鉄を含む有機または無機塩をさらに添加可能である。
【0017】
スラリー組成物に使用される添加剤は、1つ以上の界面活性剤を含む。界面活性剤は、特定のpHにおける分散または粒子懸濁を改善するためのゼータ電位を調節し、それによりスラリー組成物を安定化することができる。界面活性剤は、ポリカルボン酸、すなわち、ポリカルボン酸のアルカリ塩、ポリカルボン酸のアンモニウム塩、脂肪族ポリマー、及びこれらの混合体からなる群から選択可能である。スラリー組成物における界面活性剤の含有量は、約0.3重量パーセント乃至1.0重量パーセントである。
【0018】
スラリー組成物に使用される研磨剤に依存して、添加剤は、N−メチルピロリドン、メタクリルアミド、ブチロラクトン、N−ビニルピロリドン、及びそれらの混合体からなる群から選択可能である。或いは、添加剤は、メタクリルアミド、N,N'−メチレンビサクリラミン、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、及びこれらの混合体からなる群から選択可能である。添加剤は、研磨速度を増加するだけでなく、研磨品質も向上することができる。
【0019】
本発明のスラリー組成物は、カラーフィルタを研磨するのに適している。また、本発明のスラリー組成物は、従来の研磨スラリーより高い研磨速度を提供する。
【0020】
本発明のスラリー組成物に添加される研磨剤は、研磨時にカラーフォトレジストを優しく除去することができ、それにより、過剰研磨を回避し、カラーフィルタのパターン信頼性を増加する。したがって、研磨されたカラーフィルタ層は、正確なトポグラフィ制御を有し、したがって最高のカラー画像特性を実現可能である。
【0021】
上述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は例示的であり、また、本発明の更なる説明を提供することを意図することを理解するものとする。
【0022】
添付図面は、本発明の更なる理解を提供するよう含まれ、また、本明細書の一部に組み込まれ且つその一部を構成する。図面は本発明の実施形態を示し、また、詳細な説明と共に本発明の原理を説明する役割を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
カラーフィルタを研磨するための本発明のスラリー組成物は、カラーフィルタの研磨を支援する化学物質に関連する。本発明のスラリー組成物は、単独で使用しても、カラーフィルタを研磨するための他の研磨スラリーと組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明は、1つ以上の研磨剤を含むカラーフィルタ研磨用スラリー組成物を提供する。この研磨剤は、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、チタニア、ジルコニア、酸化銅、酸化鉄、酸化亜鉛、及びそれらの混合体からなる群から選択される。研磨剤は、コロイド形態またはヒュームド形態で供給可能である。スラリー組成物における研磨剤の含有量は、約1重量パーセント乃至45重量パーセント、好適には2重量パーセント乃至25重量パーセントである。
【0025】
研磨剤は、高純度であることが好適である。「高純度」とは、ソースの総不純物(たとえば、原材料における不純物または処理からもたらされる不純物)含有量は、100ppmに満たないことを意味する。この目的は、カラーフィルタ材料へのスラリー組成物による潜在的な汚染を少なくすることである。
【0026】
研磨剤は、高せん断分散法を使用して水溶液を調製するよう親水性または水性媒体(たとえば脱イオン水)と混合されることが好適である。たとえば、研磨剤は、コロイド溶液を形成するよう好適な媒体にゆっくりと添加可能である。コロイド溶液は、高せん断条件下で混合され、コロイド溶液のpHを調節することにより安定する。
【0027】
本発明のスラリー組成物は、少なくとも安定剤を含む。安定剤は、酸性条件下でのスラリー内の研磨剤粒子の表面電荷を安定化し、大きい粒子凝集体の形成を阻止し、したがって、スラリー組成物の長期安定性を延長することができる。
【0028】
本発明のスラリー組成物は、pH値を調節し、pHバッファとして機能するバッファ溶液を少なくとも含む。バッファ溶液は、無機酸、有機酸、無機塩基、これらの混合体、及びこれらの塩からなる群から選択可能である。バッファ溶液の選択は、スラリー組成物に使用される研磨剤に依存する。バッファ溶液として使用される有機酸は、グリシン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸、及びこれらの混合体からなる群から選択可能である。バッファ溶液に有機酸が選択される場合、ナトリウム、カリウム、カルシウム、または鉄を含む有機または無機塩をさらに添加可能である。スラリー組成物におけるバッファ溶液の含有量は、2重量パーセント乃至15重量パーセントである。さらに、スラリー組成物のpHは、バッファ溶液を使用して5乃至7の範囲に調節されることが好適である。
【0029】
スラリー組成物に使用される添加剤は、1つ以上の界面活性剤を含みうる。スラリー組成物に使用される研磨剤に依存して、界面活性剤は、ポリカルボン酸のアルカリ塩またはアンモニウム塩、脂肪族ポリマー、及びこれらの混合体からなる群から選択可能である。スラリー組成物における界面活性剤の含有量は、約0.3重量パーセント乃至1.0重量パーセントである。脂肪族ポリマーの分子量は、たとえば、1000乃至5000ダルトンである。
【0030】
スラリー組成物に使用される添加剤は、N−メチルピロリドン、メタクリルアミド、ブチロラクトン、N−ビニルピロリドン、及びこれらの混合体からなる群からも選択可能である。或いは、添加剤は、メタクリルアミド、N,N'−メチレンビサクリラミン(N, N'-methylene bisacrylamine)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、及びこれらの混合体からなる群から選択可能である。
【0031】
本発明のスラリー組成物、または、本発明のスラリー組成物を含む組成物は、研磨台の研磨パッドに供給可能である。カラーフィルタは、研磨パッドとカラーフィルタ基板との間の相対動作により研磨される。研磨パッドの表面とカラーフィルタ基板との間に研磨スラリーが、研磨時に連続的に供給される。
【0032】
本発明のスラリー組成物は、研磨処理時にカラーフォトレジストとの化学的相互作用のない1つ以上の特定の研磨剤を使用する。したがって、パターンの過剰研磨または過剰エッチングが回避可能である。特に、本発明のスラリー組成物を使用することにより、生成されるカラーフィルタはより優れたパターン忠実性を提供する。以下の例1−17を使用して本発明の詳細をさらに説明する。しかし、これらの例は、本発明の範囲を限定するために使用するものではない。例1−17に使用する、研磨剤、バッファ溶液、及び添加剤を含むスラリー組成物を、表1に記載する。また、粒子径及び研磨速度を含む関連物理特性及び実験データを、表2に記載する。例1−17では、調製されたスラリー組成物を使用してカラーフィルタフォトレジストを研磨する。
【0033】
最初に、3つのカラーフォトレジスト赤(R)、緑(G)、及び青(B)の先端高さが測定されかつ記録される。研磨後、先端高さは再び測定され、研磨スラリーの研磨効果を判断する。RGBロスは500オングストロームより低くなくてはならないという必須条件下で、研磨スラリーの研磨速度を調査した。
【0034】
実験条件は以下の通りである。
研磨台の下方向への力:0.08psiまたは0.05psi
研磨台の回転速度:20rpm
研磨時間:20秒
研磨スラリー流速:120ml/分
【0035】
研磨前のカラーフォトレジストの厚さと研磨後のカラーフォトレジストの厚さとの差を研磨時間で除算し、それにより、研磨速度が得られる。カラーフォトレジストの厚さは、KLA Tencor P15表面プロファイラにより測定される。表1及び表2において、Δh/Δh/Δhは、それぞれ、赤、緑、及び青のカラーフォトレジストの平均除去量を表す。
【表1】

【表2】

【0036】
例1
表1及び表2に示すように、例1では、20重量パーセントの多結晶アルミナを、研磨スラリーの研磨剤として使用する。0.08psiの下方向力での研磨スラリーの平均研磨速度(Δh/Δh/Δh、20秒間での除去量)は優れている。
【0037】
例2
表1及び表2に示すように、例2では、10重量パーセントの多結晶アルミナを、研磨スラリーの研磨剤として使用する。0.08psiの下方向力での研磨スラリーの平均研磨速度(Δh/Δh/Δh、20秒間での除去量)は、例1の研磨速度より低いがカラーフィルタ製造には十分である。
【0038】
例3
表1及び表2に示すように、例3では、5重量パーセントのSurfactant AG(Merck EC)を界面活性剤として添加し、10重量パーセントの多結晶アルミナを研磨スラリーの研磨剤として使用する。0.08psiの下方向力での平均研磨速度(Δh/Δh/Δh、20秒間での除去量)は、界面活性剤の添加により大幅に増加した。界面活性剤の添加は、研磨速度を増加可能である。
【0039】
例4
表1及び表2に示すように、例4では、5重量パーセントのSPS−1100B(Merck EC)を界面活性剤として添加し、10重量パーセントの多結晶アルミナを研磨スラリーの研磨剤として使用する。0.08psiの下方向力で、3色、赤(R)、緑(G)、及び青(B)の平均研磨速度(Δh/Δh/Δh、20秒間での除去量)に関して、平均研磨速度Δhは大幅に増加する。その一方で、他の2色の平均研磨速度は減少する。したがって、界面活性剤は、界面活性剤は、様々なカラーフォトレジスト材料に異なる影響を有する。
【0040】
例5−6
表1及び表2に示すように、例5および6では、それぞれ、10重量パーセント及び20重量パーセントの多結晶アルミナを、研磨スラリーの研磨剤として使用する(例2及び1の組成物とそれぞれ同じ)。0.05psiの下方向力での2つの組成物の平均研磨速度(Δh/Δh/Δh、20秒間での除去量)は優れている。
【0041】
例7−8
表1及び表2に示すように、例7では、20重量パーセントの多結晶アルミナを研磨スラリーの研磨剤として使用し、3重量パーセントのN−メチルピロリドンがスラリーに添加される。0.05psiの下方向力で、平均研磨速度(Δh/Δh/Δh、20秒間での除去量)は非常に高く、また、3色の平均研磨速度は同様である。例8では、5重量パーセントのN−N−メチルピロリドンを添加することにより、平均研磨速度Δhが大幅に増加する。その一方で、平均研磨速度Δh及びΔhは減少する。故に3色の平均研磨速度の差は大きくなる。したがって、界面活性剤の添加量は正確に制御される必要がある。
【0042】
例9−10
表1及び表2に示すように、例9では、20重量パーセントの多結晶アルミナを研磨スラリーの研磨剤として使用し、3重量パーセントのブチロラクトノール(butyrolactonol)がスラリーに添加される。0.05psiの下方向力で、平均研磨速度(Δh/Δh/Δh、20秒間での除去量)は非常に高い。しかし、3色の平均研磨速度は異なる。例10では、5重量パーセントのブチロラクトノールを添加することにより、平均研磨速度が減少する。したがって、界面活性剤の添加量は正確に制御される必要がある。
【0043】
例11−13
表1及び表2に示すように、例11−13では、20重量パーセントのか焼アルミナを研磨スラリーの研磨剤として使用する。か焼アルミナは、単結晶アルミナである。例11及び例12におけるか焼アルミナの一次粒子径及び二次粒子径は明らかに異なる。例12におけるより大きい粒子径は、高研磨速度をもたらす。例11と比較するに、例13におけるより低いpH及び大きい二次粒子径は、高研磨速度をもたらす。アルミナを研磨剤として使用するスラリーでは、粒子径、形状、または結晶相における違いによって、か焼アルミナは、多結晶アルミナまたはフュームドアルミナより高い研磨速度を有する。
【0044】
例14
表1及び表2に示すように、例14では、20重量パーセントのフュームドアルミナを研磨スラリーの研磨剤として使用する。フュームドアルミナの主な成分は、非晶質アルミナ及び部分結晶アルミナを含む。フュームドアルミナは、非常に小さい一次粒子径と、α相の多結晶アルミナ及びか焼アルミナより低い硬度を有する。したがって、弱い切断性能を示す。例14では、ヒュームドアルミナは、脱イオン水中で分散されて研磨スラリーに形成される。研磨テストは、低い研磨速度を示した。
【0045】
例15
表1及び表2に示すように、例15では、5重量パーセントのセリアを研磨スラリーの研磨剤として使用する。ここでは、セリア粒子は熱水処理により合成され、球状で小さい一次径の粒子を有する。セリアは、シリカの硬度に等しい硬度を有するが、研磨に対しては高い活性を有する。使用される固形成分含有量はたった5重量パーセントのセリアであるが、例15の研磨速度は、20重量パーセントのヒュームドアルミナ(例14)またはコロイド状アルミナ(例16)を使用することによる研磨速度より高い。
【0046】
例16
表1及び表2に示すように、例16では、20重量パーセントのコロイド状シリカを研磨スラリーの研磨剤として使用する。コロイド状シリカの主な成分は、非晶質シリカ及びpHバッファ溶液を含む。コロイド状シリカは、優れた粒子分散により、大きい一次粒子径と小さい二次粒子径を有する。したがって、その切断性能に逆効果を与える。結果は、多少低めの研磨速度を示す。
【0047】
例17
表1及び表2に示すように、例17では、12.1重量パーセントのフュームドシリカを、誘電体層のための化学的機械的研磨スラリーの研磨剤として使用する。ヒュームドシリカの主な成分は、非晶質シリカを含む。ヒュームドシリカは、約20nmの一次粒子径と、高密度凝集体の形成による大きい二次粒子径を有する。高いpHを有して、結果は、多少優れた研磨速度を示す。
【0048】
研磨特性の比較
市販されるアルミナ研磨スラリーと本発明の研磨スラリーを使用してカラーフィルタサンプルを研磨した。図3は、未研磨カラーフィルタサンプルのSEM写真を示す。図4は、本発明の研磨スラリーにより研磨されたカラーフィルタサンプルのSEM写真を示す。図5は、市販されるアルミナ研磨スラリーにより研磨されたカラーフィルタサンプルのSEM写真を示す。本発明の研磨スラリーにより研磨されたカラーフィルタサンプルは、市販されるアルミナ研磨スラリーにより研磨されたカラーフィルタサンプルより良好な平坦化結果を示す。さらに、本発明の研磨スラリーは、市販されるアルミナ研磨スラリーの研磨速度より少なくとも10%高い研磨速度を示す。
【0049】
実験結果により、本発明において提供するカラーフィルタ用のスラリー組成物は、過剰研磨及び望ましくないエッチング問題を防止することができる。
【0050】
本発明において提供するカラーフィルタ研磨用のスラリー組成物は、安定しており、また、長期間効果的であり続けることが可能である。このような組成物を使用することにより、研磨されたカラーフィルタのパターン信頼性は優れ、また、生産スループット及び生産高はさらに増加可能である。
【0051】
当業者には、本発明の範囲または精神から逸脱することなく本発明の構造に様々な修正及び変更を加えうることは明らかであろう。上述に鑑みて、本発明は、本発明により提供した修正及び変更は、請求項及びその等価物の範囲に含まれることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】従来技術のカラーフィルタの構造を示す概略図である。
【0053】
【図2】従来技術のカラーフィルタの構造を示す概略図である。
【0054】
【図3】未研磨のカラーフィルタサンプルを示すSEM写真である。
【0055】
【図4】本発明の研磨スラリーにより研磨されたカラーフィルタサンプルを示すSEM写真である。
【0056】
【図5】市販されるアルミナ研磨スラリーにより研磨されたカラーフィルタサンプルを示すSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカラーフィルタ用の研磨スラリー組成物であって、
少なくとも1つの研磨剤と、
前記組成物の一のpH値を調節するための一のバッファ溶液と、
前記pH値の前記組成物中の前記研磨剤の複数の粒子の一のゼータ電位を較正する一の添加剤と、
を含み、
前記研磨剤は、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、チタニア、ジルコニア、酸化銅、酸化鉄、酸化亜鉛、及びそれらの混合体からなる群から選択される、組成物。
【請求項2】
前記研磨剤は、フュームド形態またはコロイド形態である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記シリカは、か焼シリカである請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記複数の粒子の一次粒子径は、10ナノメートル乃至1.0ミクロンである請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記複数の粒子の一次粒子径は、40ナノメートル乃至200ナノメートルである請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記複数の粒子の二次粒子径は、100ナノメートル乃至10ミクロンである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記複数の粒子の二次粒子径は、200ナノメートル乃至800ナノメートルである請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記複数の粒子の一次粒子径分布は、モノ分布である請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記複数の粒子の一次粒子径分布は、バイモーダル分布である請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記研磨スラリー組成物における前記研磨剤の含有量は、約1パーセント乃至45重量パーセントである請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記研磨スラリー組成物における前記研磨剤の含有量は、約2パーセント乃至25重量パーセントである請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記研磨スラリー組成物の前記pH値は、2乃至8である請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記研磨スラリー組成物の前記pH値は、5乃至7である請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記バッファ溶液は、無機酸、有機酸、無機塩基、これらの混合体、及びこれらの塩からなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記有機酸は、グリシン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸、及びこれらの混合体からなる群から選択される請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記有機酸には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、または鉄を含む有機または無機塩が添加される請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記添加剤は、一の界面活性剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記研磨スラリー組成物における前記界面活性剤の含有量は、約0.3重量パーセント乃至1.0重量パーセントである請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記界面活性剤は、ポリカルボン酸のアルカリ塩、ポリカルボン酸のアンモニウム塩、脂肪族ポリマー、及びこれらの混合体からなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記脂肪族ポリマーの分子量は、約1000乃至5000ダルトンである請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記添加剤は、N−メチルピロリドン、メタクリルアミド、ブチロラクトン、N−ビニルピロリドン、N,N'−メチレンビサクリラミン、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、及びこれらの混合体からなる群から選択される請求項1に記載の組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2008−543577(P2008−543577A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515312(P2008−515312)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001571
【国際公開番号】WO2006/134462
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(500213960)バスフ エスイー (3)
【Fターム(参考)】