説明

カラーフィルタ製造用熱転写記録媒体

【課題】カラーフィルタ用透明基材上にカラーフィルタ用着色層として熱転写インク層を直接転写することが可能であり、かつ、転写された熱転写インク層(着色層)が優れた光学特性を有するカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体を提供する。
【解決手段】基材上に熱転写インク層を有し、該熱転写インク層を直接カラーフィルタ用透明基材上にカラーフィルタ用の着色層として熱転写インク層を熱転写するためのカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体において、JIS B0601に基づく測定により、熱転写インク層が形成される側の基材表面の中心面平均表面粗さSRaが、1nm以上10nm以下であることを特徴とするカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体に関し、より詳しくは、カラーフィルタ用透明基板上に直接、カラーフィルタ用の着色層として熱転写インク層を転写することが可能であるカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体に関し、また、転写された熱転写インク層からなる優れたカラーフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタは液晶表示装置等に用いられ、ガラスやプラスチックフィルム等の透明基板上に、所定の着色層を配置して形成したものであり、従来行われているカラーフィルタの製造方法は、概略以下の通りである。
(1)染色法
ゼラチン、ガゼイン等の天然高分子に重クロム酸塩を加え、感光化した被染色性レジストや合成高分子中に染着座を有する感光性レジストを、塗布(被膜形成)−露光・現像(パターン形成)−染色−防染処理の工程を繰り返すことによりカラーフィルタを製造する。
(2)エッチング法
染料あるいは顔料を混合させたポリイミド等のエッチング可能な樹脂ワニスを用い、塗布(着色被膜形成)−レジスト塗布−露光・現像(レジストと共に着色被膜のパターン形成)−レジスト剥離−熱効果の工程を繰り返すことによりカラーフィルタを製造する。
(3)顔料分散レジスト法
顔料を感光性樹脂に分散したワニスを用い、塗布−乾露光・現像−熱処理の工程を繰り返すことによりカラーフィルタを製造する。
(4)電着法
顔料と樹脂を溶液中に分散させ、予めパターン化されている透明電極上に析出させる。このため、画素のパターン形状がストライプになるという制限がある。また、ベタ電極上の着色位置だけに穴をあけたレジストを形成し、電着を繰り返すといったフォトリソの手法を組み合わせた製造法もある。
【0003】
上記のようなカラーフィルタの製造方法は、大量生産には向くが多品種少量生産の場合は、工程が複雑であること、設備が大規模で工程変更やサイズ変更等に柔軟に対応できない等によりコスト高となる問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、インクジェット方式や熱転写方式による簡易なカラーフィルタの製造方法が検討されている。
【0005】
例えば、溶融型熱転写性着色層を有するインクシートの着色層側の面と、受像シートの受像層側の面とを密着し、どちらかのシートの支持体側から像様にエネルギー照射を行い、着色層を像様に受像層に転写した後、両シートを剥離する工程を1つの受像シートで必要回数行って着色層を形成し、この受像層側の面を透明基板に密着して着色層を転写することを特徴とするカラーフィルタの製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
着色層の形成では位置精度の確保が重要であるが、上述した再転写による着色層の形成方法では、一旦転写した像を再度転写することとなり、透明基板上に直接着色層を転写することができない。また、位置精度を確保するための技術的難易度が高く、結果として歩留まりが非常に低いものとなっていた。
【0007】
【特許文献1】特開平8−179695号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、カラーフィルタ用透明基材上にカラーフィルタ用着色層として熱転写インク層を直接転写することが可能であり、かつ、転写された熱転写インク層(着色層)が優れた光学特性を有するカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体は、基材上に熱転写インク層を有し、カラーフィルタ用着色層として該熱転写インク層を直接カラーフィルタ用透明基材上に熱転写するためのカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体において、JIS B0601に基づく測定により、熱転写インク層が形成される側の基材表面の中心面平均表面粗さSRaが、1nm以上10nm以下であることを特徴とする。
【0010】
また本発明のカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体は、JIS B0601に基づく測定により、前記熱転写インク層が形成される側の基材表面に対する基材裏面の中心面平均表面粗さSRaが、10nm以上20nm以下であることを特徴とする。
さらに本発明のカラーフィルタ製造法熱転写記録媒体は、JIS B0601に基づく測定により、前記基材裏面側の中心面平均粗さと前記基材表面側の中心面平均粗さとの差が、5nm以上10nm以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明のカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体に使用する基材の材料としては、従来から基材として用いられている材料をそのまま使用することができる。たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホンなどを使用することができる。中でも、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートが、熱に対する寸法安定性、機械的強度から好ましい。基材の厚さは、2.0〜7.0μmであることが好ましい。基材の長手方向のヤング率は2〜12GPaが好ましく、幅方向のヤング率は2.5〜16GPaであることが好ましい。基材の長手方向のF−5値は49〜490MPaが好ましく、幅方向のF−5値は29〜300MPaであることが好ましい。基材の長手方向及び幅方向の100℃×30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、より好ましくは2.0%以下である。基材の長手方向及び幅方向の破断強度は98〜980MPaが好ましい。
【0012】
本発明のカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体に使用する基材は、熱溶融インク層が形成される表面のJIS B0601に基づき測定された中心面平均表面粗さSRaが1nm以上10nm以下であることが必要である。
SRaが10nmより大きいと以下のような問題点がある。本発明では透明基材に直接熱転写により熱溶融インク層を転写し、透明基材表面にカラーフィルタを形成する。従って、転写後のカラーフィルタ形成面は熱溶融インク層の基材側が表面側となる。ここで、上記したように基材表面のJIS B0601に基づき測定された中心面平均表面粗さSRaが10nmより大きいと、転写後の熱溶融インク層、即ちカラーフィルタ形成面の外気側に、基材の凹部に対応した凸部及び基材の凸部に対応した凹部が欠陥として現れることとなり、この欠陥により、カラーフィルタの光学特性の低下を招いている。
SRaが1nm未満では、これ以上の光学特性の向上を得られないばかりか、基材として高価なものとなり現実の生産に使用することができない。
【0013】
また、本発明のカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体は、JIS B0601に基づき測定された、基材裏面側の中心面平均表面粗さSRaが10nm以上20nm以下であることが好ましく、さらに、JIS B0601に基づき測定された前記基材裏面側の中心面平均粗さと前記基材表面側の中心面平均粗さとの差が5nm以上10nm以下であることが好ましい。
上記範囲未満であると、基材の表裏両面ともに平滑性が高すぎることとなり、フィルムをロール状に巻回することが困難となり、カラーフィルタ製造用熱転写記録媒体の製造に供することが困難となる。
上記範囲を超えると、基材をロール状に巻回して保存している際に、基材表面側に裏面側の凹凸が転写されることとなり、フィルム表面側のSRaの低下を招き、結果としてカラーフィルタの光学特性の低下を招く恐れがある。
【0014】
熱転写記録媒体における熱転写インク層は、サーマルヘッド等の加熱によって溶融して転写される着色剤とバインダとを主成分とするインク層である。
バインダとしては、ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂を挙げることができるがこれらに限定されない。これらの中でも熱転写時の被転写材への転写性、また転写後の耐溶剤性及び耐擦過性からエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。エポキシ樹脂の中でも、以下に詳述するグリシジル(メタ)アクリレートまたはその共重合体と、非アクリル系エポキシ樹脂の組み合わせが好ましい。
【0015】
グリシジル(メタ)アクリレートまたはその共重合体を用いることにより、皮膜強度を向上させることができるが、配合するのがグリシジル(メタ)アクリレートまたはその共重合体のみであると、未硬化の状態でも硬度が高く、熱転写時の感度が不足するおそれがある。このため、非アクリル系エポキシ樹脂を組み合わせて用いることで感度を補うことができる。またこの非アクリル系エポキシ樹脂は、ヒドロキシル基を含有している場合、硬化時に架橋剤としてのポリマーとだけではなく、グリシジル(メタ)アクリレートまたはその共重合体とも反応するため、硬化後にはさらに強い皮膜を得ることができる。
【0016】
グリシジル(メタ)アクリレートの共重合体は、少なくともグリシジル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位(以下、グリシジル(メタ)アクリレート単位という場合がある)を含むアクリル系共重合体であって、グリシジル(メタ)アクリレートおよび/またはグリシジルアクリレートと他の共重合性モノマー、たとえばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレートなど、アルキル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマーなどの1種または2種以上との共重合体が挙げられる。これらグリシジル基含有アクリル系共重合体は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記グリシジル基含有アクリル系共重合体としては、分子量が3,000〜500,000であるものが好ましく、5,000〜200,000のものがさらに好ましい。なかでも、グリシジル(メタ)アクリレート単位の含有率が5〜90重量%のものが好ましい。分子量が3,000未満では、充分な三次元網目構造の硬化状態が得られず、硬化物の耐溶剤性や耐熱牲が充分でない。一方、500,000を超えると転写性が低下する傾向がある。さらに、グリシジル(メタ)アクリレート単位の含有率が5重量%未満では、充分な硬化状態が得られず、硬化物の耐溶剤性や耐熱性が充分でない傾向があり、90重量%を超えると転写性が低下する傾向がある。さらに転写性の観点からは、ガラス転移点が40〜130℃のものが好ましい。
【0018】
感熱転写記録媒体で使用する非アクリル系エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらエポキシ樹脂は単独で使用しても良く、2種似上を併用しても良い。
【0019】
上述の非アクリル系エポキシ樹脂の中でも、ヒドロキシル基含有エポキシ樹脂が、グリシジル(メタ)アクリレートまたはその共重合体とも反応して、硬化後により強い皮膜が得られるため好ましい。さらに転写性が優れ、かつ耐溶剤性、耐熱牲が優れた硬化物が得られる観点から、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型のエポキシ樹脂が特に好ましい。
【0020】
ヒドロキシル基含有エポキシ樹脂としては、分子量が500〜30,000、さらには500〜10,000であるものが好ましい。なかでもエポキシ当量が180〜1,000(g/eq)のものが好ましい。分子量が500未満では、充分な硬化状態が得られず、硬化物の耐溶剤牲、耐熱性が充分でない。一方、分子量が30,000を超えると、転写性が低下する傾向がある。また、エポキシ当量が180(g/eq)未満では、充分な硬化状態が得られず、硬化物の耐溶剤性、耐熱性が充分でない傾向があり、一方、1,000(g/eq)を超えると、やはり充分な硬化状態が得られない傾向がある。さらに転写性の観点からは、軟化点が60〜150℃のものが好ましい。
【0021】
グリシジル(メタ)アクリレートまたはその共重合体とヒドロキシル基含有エポキシ樹脂の重量配合比は、7:3〜3:7であることが好ましい。この範囲よりグリシジル(メタ)アクリレートまたはその共重合体が多すぎると、感度不足のおそれがある。一方、ヒドロキシル基含有エポキシ樹脂が多すぎると、耐溶剤性や耐擦過性などが若干劣る傾向がある。
【0022】
通常、架橋剤は架橋しやすいように低分子化合物が用いられている。しかし、低分子化合物は架橋し易いのではあるが、高温で保存すると架橋が進行してしまい、熱転写時に感度が悪くなるという問題がある。そこで、本発明においては、分子量が3,000〜30,000であるポリマーを架橋剤として用いることにより、高温で保存した時の架橋を抑えることにより保存性を向上させている。分子量が3,000より小さいと、高温で保存した際の架橋が進みやすく、熱転写時の感度が劣る。一方、分子量が30,000より大きいと、硬化が不十分となるおそれがある。なお、本発明においては架橋剤自体がポリマーであるため、未硬化であってもある一定の被膜の強度を保つことができる。
【0023】
さらに、架橋剤にアミノ基が含まれていると比較的低温でも架橋してしまうため、高温で保存した場合の問題が生じる。このため、本発明における転写媒体においては、エポキシ樹脂に対してアミノ基を有する架橋剤ではなく、カルボキシル基含有ポリマーを架橋剤として用いることにより高温での保存性を向上させている。
【0024】
カルボキシル基含有ポリマーはメタクリル酸ホモポリマーが好ましい。カルボキシル基の含有量が多いため、50〜60℃程度の温度で保存した場合には硬化しないが、100〜150℃程度の温度では容易に硬化させることができ、高温での保存性と硬化性とのバランスが最も優れている。また、アクリル系の架橋剤を使用すると、架橋剤自身が皮膜の強度を向上させることができるため、カラーフィルタの製造工程で用いられる、HCl、NaOH、エタノール、N−メチル−2−ピロリドン等に対するより強い耐性を有する。
【0025】
カルボキシル基含有ポリマーの含有量は、エポキシ樹脂100重量部に対し、30〜70重量部であることが好ましい。この範囲を外れると耐擦過性や耐溶剤性が劣るからである。
【0026】
本発明に用いる着色剤は、カラーフィルタ用の顔料として公知のフタロシアニン系、アゾ系、インジゴ系、ジオキサジン系、ペリレン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ニトロ系等が使用可能である。その他にも蛍光顔料や金属粉等も使用可能である。以下に顔料を列挙するがこれらに限定されるものではない。例えば、ピグメントイエロー12(例えば、リオノールイエロー1212B、東洋インキ製造製)、ピグメントイエロー13(例えば、リオノールイエロー1313、東洋インキ製造製)、ピグメントイエロー14(例えば、セイカファーストイエロー2270、大日精化工業製)、ピグメントイエロー17(例えば、パーマネントイエローGG02、クラリアントジャパン製)、ピグメントイエロー139(例えば、ノボパームイエローM2R 70、クラリアントジャパン社製)、ピグメントイエロー155(例えば、グラフトールイエロー3GP、クラリアントジャパン製)、ピグメントイエロー180(例えば、ノボパームイエローP−HG、クラリアントジャパン製)、ピグメントレッド48:1(例えば、シムラーレッドNRY、大日本インキ化学製)、ピグメントレッド53(例えば、シムラーレイクレッドC conc、大日本インキ化学製)、ピグメントレッド57(例えば、イルガライトルビン4BL、チバ・スペシャリティケミカルズ製)、ピグメントレッド122(例えば、ファストゲンスパーマゼンダRG、大日本インキ化学製)、ピグメントレッド177(例えば、クロモフタルレッドA2B、チバ・スペシャリティケミカルズ製)、ピグメントブルー15(例えば、ファストゲンブルーBB、大日本インキ化学製)、ピグメントブルー60(例えば、リオノゲンブルー6501、東洋インキ製造製)、その他C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド215 C.I.No.12085、C.I.No.12140等の有機顔料、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン7、ピグメントバイオレット23、ピグメントブラック7等が挙げられる。着色剤の含有量は、全配合剤の全固形分に対して5〜80重量%が好ましい。
【0027】
エポキシ樹脂、カルボキシル基含有ポリマーおよび着色剤に加えて、ウレタン樹脂を配合することが好ましい。ウレタン樹脂は自らが硬化物の一部となるので、被転写体を選ばないという接着性に優れるとともに、硬化を阻害しないという利点がある。ウレタン樹脂は、全配合剤の全固形分に対して1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%含有させることが好ましい。かかる範囲より少ないと効果が得られない。一方、多すぎると、耐擦過性や耐溶剤性に悪影響を及ぼす。
【0028】
本発明で用いられるカラーフィルタのが形成される透明基板としては、カラーフィルタに用いられている一般的な材料が用いられる。例えば、石英ガラス、硼珪酸ガラス等が挙げられる。
【0029】
本発明においては、熱転写記録媒体を用いて、透明基板に画像としてのカラーを熱溶融転写により形成する際には、予め透明基板を加熱しておくことが望ましい。このときの加熱温度は、熱エネルギーを供給する、例えばサーマルヘッドにより透明基板にカラーが形成される直前において30℃以上、さらには40℃以上であることが好ましい。上記温度より低い場合には、熱転写記録媒体からインク組成物が転写されず、抜けやボイドが発生する恐れがある。
加熱の方法としては、サーマルヘッドの直前に透明基板に接するように加熱ローラを配置する、透明基板を所望温度の温風にさらす等が挙げられるがこれらに限定されない。
【発明の効果】
【0030】
本発明の熱転写記録媒体によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)熱溶融転写法により、石英ガラス等の透明基板上に直接形成することができる。これにより、従来の製造方法と比較して大幅な工程削減、およびコスト低減を可能とすることができる。
【0031】
(2)熱転写記録媒体の基材表面の中心面平均粗さを所定の値とすることで、透明基板上に直接転写されたフィルタパターンの光学特性が良好なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明で使用する熱転写記録媒体は以下のようにして作製することができる。
グリシジル(メタ)クリレートまたは、エポキシ樹脂であるグリシジル(メタ)クリレートとメチル(メタ)アクリレート等の他の共重合性モノマーとの共重合体、およびビスフェノールA型エポキシ樹脂等の非アクリル系エポキシ樹脂を重量配合比で7:3〜3:7となるように配合し、さらにカーボンブラック等の着色剤を配合し、これらをメチルエチルケトン等の溶剤に混ぜた溶液を作製する。次に、厚さ2.0〜7.0μmのポリエチレンテレフタレートフィルム等の基材上に、上記溶液を乾燥後の塗布量が0.2〜2.0g/m、好ましくは0.3〜1.0g/mとなるようにグラビアコーター等を使用して塗布し乾燥させ熱転写インク層を形成する。このようにして本発明の熱転写記録媒体を作製することができる。
【0033】
なお、基材のもう一方の面上に、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、およびこれらの硬化物などからなる溶液をグラビアコーター等で塗布量が0.01〜2.0g/m、好ましくは0.1〜1.0g/mとなるように塗布して耐熱保護層を設けてもよい。
【実施例1】
【0034】
厚さ6.2μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製ルミラー6N−32A;表面側SRa:9nm、裏面側SRa:18nm)の裏面(SRa:18nm)上に、シリコーン樹脂を、塗布量が0.25g/mとなるようにグラビアコーターで塗布して耐熱保護層を形成した。ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面(SRa:9nm)上に、下記組成の溶液を、塗布量0.5g/mとなるようにグラビアコーターで、レッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)の熱転写インク層が面順次になるように塗布し、乾燥させて熱転写インク層を形成し、本発明のカラーフィルタ用熱転写記録媒体を作製した。
【0035】
<レッド(R)熱転写インク層用溶液>
GMA−MMA 5重量%
(グリシジルメタクリレートとメチル(メタ)アクリレートの
共重合体、50:50、日本油脂製、ブレンマーCP−50M)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 5重量%
(ジャパンエポキシレジン製、エピコート1003)
メタクリル酸ホモポリマー 6重量%
(分子量10,000)
C.I.ピグメントレッド254 4重量%
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
メチルエチルケトン 52重量%
メタノール 28重量%
計 100重量%
上記配合により、グリシジル(メタ)アクリレートとヒドロキシル基含有エポキシ樹脂との比率は5:5であった。
<グリーン(G)熱転写インク層用溶液>
GMA−MMA 3重量%
(グリシジルメタクリレートとメチル(メタ)アクリレートの
共重合体、50:50、日本油脂製、ブレンマーCP−50M)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 3重量%
(ジャパンエポキシレジン製、エピコート1003)
メタクリル酸ホモポリマー 4重量%
(分子量10,000)
C.I.ピグメントグリーン36 5重量%
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
C.I.ピグメントイエロー150 5重量%
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
メチルエチルケトン 52重量%
メタノール 28重量%
計 100重量%
<ブルー(B)熱転写インク層用溶液>
GMA−MMA 3重量%
(グリシジルメタクリレートとメチル(メタ)アクリレートの
共重合体、50:50、日本油脂製、ブレンマーCP−50M)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 3重量%
(ジャパンエポキシレジン製、エピコート1003)
メタクリル酸ホモポリマー 4重量%
(分子量10,000)
C.I.ピグメントブルー15:6 10重量%
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
メチルエチルケトン 52重量%
メタノール 28重量%
計 100重量%
【実施例2】
【0036】
下記組成の熱転写インク層用溶液を用い、基材として厚さ6.6μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製ルミラー7AM−23;表面側SRa:3nm、裏面側SRa11nm)を用いる以外は実施例1と同様にして熱転写記録媒体を作製した。
<レッド(R)熱転写インク層用溶液>
GMA−MMA 2.4重量%
(グリシジルメタクリレートとメチル(メタ)アクリレートの
共重合体、50:50、日本油脂製、ブレンマーCP−50M)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 2.4重量%
(ジャパンエポキシレジン製、エピコート1003)
スチレン・アクリル酸共重合体 3.2重量%
(分子量10,000)
C.I.ピグメントレッド177 12.0重量%
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
メチルエチルケトン 80.0重量%
計 100.0重量%
<グリーン(G)熱転写インク層用溶液>
GMA−MMA 3重量%
(グリシジルメタクリレートとメチル(メタ)アクリレートの
共重合体、50:50、日本油脂製、ブレンマーCP−50M)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 3重量%
(ジャパンエポキシレジン製、エピコート1003)
スチレン・アクリル酸共重合体 4重量%
(分子量10,000)
C.I.ピグメントグリーン36 5重量%
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
C.I.ピグメントイエロー150 5重量%
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
メチルエチルケトン 80重量%
計 100重量%
<ブルー(B)熱転写インク層用溶液>
GMA−MMA 3重量%
(グリシジルメタクリレートとメチル(メタ)アクリレートの
共重合体、50:50、日本油脂製、ブレンマーCP−50M)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 3重量%
(ジャパンエポキシレジン製、エピコート1003)
スチレン・アクリル酸共重合体 4重量%
(分子量10,000)
C.I.ピグメントブルー15:6 10重量%
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
メチルエチルケトン 80重量%
計 100重量%
【0037】
[比較例]
基材として用いたポリエチレンテレフタレートフィルムの両面のSRaが12nmである以外は実施例と同様にしてカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体を製作した。
【0038】
[評価方法および結果]
<印刷条件>
実施例1〜2および比較例で作製した熱転写記録媒体を熱転写プリンター(M−100、キャノンNTC社製)にセットして、印字エネルギーを目盛り9とし、印字速度100mm/sで、石英ガラスを被転写体として線幅125μmのパターン印刷を行った。尚、石英ガラスはドライヤーにて転写時の温度が40℃になるように加熱したものを使用した。
【0039】
<印画品位>
上記で得られた印画物の印画面の表面を金属顕微鏡で800倍まで拡大して、印画物の表面を下記評価基準で観察した。
○:印画面の実寸1mmの範囲に2μm以上の凹凸が観察されなかった。
△:印画面の実寸1mmの範囲に2μm以上の凹凸が観察されたが5個未満であった。
×:印画面の実寸1mmの範囲に2μm以上の凹凸が5個以上観察された。
上記印画品位の評価結果を下記表1に示す。
【0040】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に熱転写インク層を有し、該熱転写インク層を直接カラーフィルタ用透明基材上に熱転写するためのカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体において、
JIS B0601に基づく測定により、熱転写インク層が形成される側の基材表面の中心面平均表面粗さSRaが、1nm以上10nm以下であることを特徴とするカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体。
【請求項2】
JIS B0601に基づく測定により、前記熱転写インク層が形成される側の基材表面に対する基材裏面の中心面平均表面粗さSRaが、10nm以上20nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体。
【請求項3】
JIS B0601に基づく測定により、前記基材裏面の中心面平均粗さと前記基材表面の中心面平均粗さとの差が、5nm以上10nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカラーフィルタ製造用熱転写記録媒体。

【公開番号】特開2008−122585(P2008−122585A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305214(P2006−305214)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(505091905)ゼネラルテクノロジー株式会社 (117)
【Fターム(参考)】