説明

カラーフィルタ

【課題】本発明は、光散乱層を用いることなく、表示装置において外光の反射を防止し、光を効率よく利用することが可能なカラーフィルタ、およびその製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】透明基板、および上記透明基板上に形成された複数の着色層を有するカラーフィルタであって、上記着色層は、少なくとも顔料および感光性樹脂を含有し、上記着色層のP/V比が、0.550〜0.750の範囲内であり、上記着色層表面に複数の凹凸からなる隆起構造を有し、上記隆起構造の平均ピッチが2μm〜35μmの範囲内であり、上記隆起構造の凸部の平均高さが0.2μm〜7.0μmの範囲内であることを特徴とするカラーフィルタを提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス表示装置や液晶表示装置に用いられるカラーフィルタ、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレクトロルミネッセンス(以下、ELと略す。)素子の基本構造の一例としては、透明基板上に透明電極と、発光層と、背面電極とを積層した構造を挙げることができる。通常、背面電極には反射特性を有する金属電極が用いられており、発光層から発せられた光のうち、発光層の後方(金属電極側)に出射した光は、金属電極により反射され、前方(透明電極側)に出射されるので、素子の輝度が向上するという利点がある。
また、従来の反射型液晶表示素子の基本構造の一例としては、透明基板上に透明電極と、液晶層と、背面電極とを積層した構造を挙げることができる。この背面電極にはEL素子の場合と同様に反射特性を有する金属電極が用いられており、反射型液晶表示素子では入射した外光を金属電極で反射させることにより表示を行うため、低消費電力を実現することができる。
また、上述したEL素子や反射型液晶表示素子を用いた表示装置においては、カラー表示のために、カラーフィルタが設けられる。
【0003】
しかしながら、この金属電極は素子に入射した外光を反射するため、非表示(非発光)であるべき画素から外光による反射が生じ、コントラストが低下したり、混色が生じたりする等、視認性が低下するという問題がある。特に、屋外等明るい環境下で使用する携帯用の表示装置においては、このような外光の反射が問題になる。
また、出射する光のうち、透明基板の屈折率と出射媒質(例えば空気)の屈折率とによって決まる臨界角以上の入射角を有する光が、透明基板と出射媒質との界面で全反射し、素子の内部に閉じ込められて、効率良く光を外部に取り出すことができないという問題がある。
【0004】
そこで、透明基板の前面に光散乱層を設けることが提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。光散乱層を有する素子では、入射した外光が光散乱層によって適度に散乱するため、十分な視認性を確保することができる。また、光散乱層によって臨界角以上の入射角を有する光も出射媒質(例えば空気)に導かれることになるため、効率良く光を利用することができる。
【0005】
しかしながら、光散乱層により光散乱効果が得られたとしても、例えば、光の散乱強度は波長に依存し、波長の短い光の方が強く散乱するため、青色光の散乱強度が緑色光や赤色光に比べて大きくなってしまう。このように、赤色光、緑色光および青色光の散乱強度が異なると、視野角によっては色シフトが生じるという問題がある。
【0006】
上記問題に対しては、例えば特許文献4では、透明樹脂等に微粒子を分散させてなる光散乱層に用いられる微粒子の平均粒径を調整することにより、三原色の光散乱強度を制御することができ、視野角に依存した色シフトの発生を防止することが提案されている。
【0007】
しかしながら、上述した光散乱層を用いる方法は、いずれも表示装置の製造工程数が増えてしまい、製造コストが高くなるといった問題があった。また、近年求められている表示装置の薄膜化が困難となるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−347617号公報
【特許文献2】特開平6−151061号公報
【特許文献3】特開2004−39388号公報
【特許文献4】特開2007−188708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、光散乱層を用いることなく、表示装置において外光の反射を防止し、光を効率よく利用することが可能なカラーフィルタ、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、透明基板、および上記透明基板上に形成された複数の着色層を有するカラーフィルタであって、上記着色層は、少なくとも顔料および感光性樹脂を含有し、上記着色層のP/V比が、0.550〜0.750の範囲内であり、上記着色層表面に複数の凹凸からなる隆起構造を有し、上記隆起構造の平均ピッチが2μm〜35μmの範囲内であり、上記隆起構造の凸部の平均高さが0.2μm〜7.0μmの範囲内であることを特徴とするカラーフィルタを提供する。
【0011】
本発明によれば、着色層のP/V比が上述した数値範囲であることにより、製造プロセスによって着色層表面に上述した隆起構造を形成することが可能となる。また、着色層表面に上記隆起構造を有することにより、着色層に光散乱機能を付与することができることから、表示装置に用いた際に、外光の反射を抑制してコントラストを向上させることができ、また、表示装置の外部へ出射する光が透明基板と出射媒体との界面で全反射してしまうことを防止することができるため、光の取り出し効率を向上させることが可能となる。
また、上述した隆起構造は周期的な構造を持たずに形成されるため、種々の波長の光を種々の散乱強度で散乱させることができることから、視野角依存性や波長依存性を抑制することが可能となる。
【0012】
本発明においては、上記着色層の最低膜厚が、2.5μm以上であることが好ましい。また、上記隆起構造の凸部の平面視上の平均長さが5μm〜150μmの範囲内であることが好ましい。これにより、着色層表面に上述した隆起構造を好適に形成することが可能となる。
【0013】
本発明は、少なくとも顔料、感光性樹脂、および光反応開始剤を含有する着色層形成用組成物を調製する着色層形成用組成物調製工程と、透明基板上に上記着色層形成用組成物を塗布して着色層形成用層を形成する着色層形成用層形成工程と、上記着色層形成用層を所定のパターンに露光および現像する露光現像工程と、上記着色層形成用層を焼成することにより着色層を形成する着色層形成工程とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記着色層形成用組成物調製工程では、上記着色層形成用組成物のP/V比が0.550〜0.750の範囲内となるように、上記着色層形成用組成物を調製することを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0014】
本発明によれば、着色層形成用組成物調製工程により、上記P/V比を有する着色層形成用組成物を調製することにより、露光時に着色層形成用層の表面の硬化度を着色層形成用層の内部の硬化度に比べて高くすることができる。このように、表面の硬化度と内部の硬化度とが異なる着色層形成用層を焼成して収縮させることにより、着色層表面に上述した隆起構造を形成することが可能となる。よって、光散乱機能を有するカラーフィルタを製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上述した隆起構造を有するカラーフィルタとすることができるので、カラーフィルタに光散乱機能を付与することが可能となる。よって、表示装置に用いた場合に、外光の反射を抑制し、表示装置内部からの発光の取り出し効率を向上させることが可能なカラーフィルタとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のカラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。
【図3】本発明のカラーフィルタの他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のカラーフィルタを平面視上から撮影した写真である。
【図5】本発明のカラーフィルタの製造方法の他の例を示す工程図である
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のカラーフィルタ、およびカラーフィルタの製造方法について説明する。
【0018】
A.カラーフィルタ
まず、本発明のカラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、透明基板、および上記透明基板上に形成された複数の着色層を有するものであって、上記着色層は、少なくとも顔料および感光性樹脂を含有し、上記着色層のP/V比が、0.550〜0.750の範囲内であり、上記着色層表面に複数の凹凸からなる隆起構造を有し、上記隆起構造の平均ピッチが2μm〜35μmの範囲内であり、上記隆起構造の凸部の平均高さが0.2μm〜7.0μmの範囲内であることを特徴とするものである。
【0019】
ここで、本発明における「着色層のP/V比」とは、着色層中の顔料の含有量と着色層中の顔料以外の固形分の含有量との比率を表すものである。なお、本発明においては、着色層のP/V比を直接特定することができない場合は、「着色層形成用組成物の顔料の含有量/着色層形成用組成物の顔料以外の固形分の含有量」で示すことができる。
【0020】
本発明のカラーフィルタについて、図を用いて説明する。図1は本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明のカラーフィルタ10は、透明基板1と、透明基板1上に形成された複数色の着色層2(図1では、赤色着色層2R、緑色着色層2G、および青色着色層2B)とを有するものであり、着色層2表面に複数の凹凸からなる隆起構造を有するものである。また、着色層2は所定のP/V比を有するものである。また、カラーフィルタ10は、画素を区画するための遮光部3が各着色層2間に形成されていてもよい。
【0021】
本発明のカラーフィルタは、着色層のP/V比が一般的なカラーフィルタに用いられる着色層のP/V比よりも高いこと、および着色層表面に上述した隆起構造を有することに特徴を有するものである。
ここで、上記着色層表面に形成される隆起構造は、カラーフィルタの製造プロセスによって生じるものであり、着色層のP/V比を通常の着色層のP/V比よりも高くすることによって生じるものである。この理由については明らかではないが、次のように考えられる。
【0022】
すなわち、一般的に、フォトリソグラフィー法を用いてカラーフィルタを製造する場合には、以下のような製造プロセスによって着色層の形成が行われるものである。
まず、少なくとも顔料および感光性樹脂を含有する着色層形成用組成物を所定のP/V比で調製し、これを透明基板上に塗布することにより、着色層形成用層を形成する。次に、透明基板上に形成された着色層形成用層に、所定のパターンを有するフォトマスクを介して露光光を照射した後、現像して着色層を所定のパターンにパターニングする。次に、現像後の着色層形成用層を焼成することにより、着色層が形成される。
なお、上述した製造プロセスにおいて、着色層中の感光性樹脂の硬化反応は主に、焼成時に進行するものであり、露光時においては着色層を現像可能な程度に硬化反応が進行するものと考えられる。また、焼成時には、着色層中の感光性樹脂の硬化反応により、着色層が収縮するものである。
【0023】
次に、本発明のカラーフィルタにおける着色層の製造プロセスについて図を用いて説明する。図2は、本発明のカラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。本発明においては、図示しないが、まず形成される着色層のP/V比を一般的なカラーフィルタに用いられる着色層のP/V比よりも高くなるように着色層形成用組成物を調製し、これを透明基板上に塗布することにより着色層形成用層を形成する。次に、図2(a)に示すように、透明基板1上に形成された着色層形成用層2’に、所定のパターンを有するフォトマスク20を用いて、露光光30を照射し、図2(b)に示すように現像することにより、着色層形成用層2’を所定のパターン状にするためのパターニングが行われる。
ここで、本発明においては、着色層形成用層2’中の顔料の含有量が一般的な着色層形成用層に比べて多いことから、露光時においては、着色層形成用層の内部2b’まで露光光30が透過しにくくなるため、図2(a)に示すように、露光部分の着色層形成用層の表面2’aの硬化度は、着色層形成用層の内部2’bの硬化度よりも高くなり、着色層形成用層の表面2’aは薄膜状になっているものと考えられる。また、図2(b)に示すように、現像後の着色層形成用層2’においては、着色層形成用層の表面2’aに比べて、着色層形成用層2’の側面(内部)がより現像されるため、逆テーパー形状となるものと考えられる。
【0024】
次に、図2(c)、(d)に示すように、逆テーパー形状の着色層形成用層2’を焼成した場合、着色層形成用層2’中の感光性樹脂の硬化反応が進行し、着色層形成用層2’が全体的に収縮して着色層2となるものと考えられる。この際、着色層形成用層2’と透明基板1との密着部分、もしくは着色層形成用層2’と遮光部3との密着部分については収縮による幅方向の変化はないものと考えられるが、透明基板1もしくは遮光部3のいずれにも密着していない部分については幅方向による収縮が生じるものと考えられる。この場合、硬化度の低い着色層形成用層の内部2’bにおいては十分に収縮することが可能であるが、硬化度の高い着色層形成用層の表面2’aは薄膜化されていることから、十分に収縮することができないため、図2(c)に示すように、薄膜化された着色層形成用層の表面2’aにひだ状のシワが生じるものと考えられ、これが最終的には、図2(d)に示すように、着色層2表面の隆起構造になるものと考えられる。
【0025】
本発明によれば、着色層のP/V比が上述した数値範囲であることにより、着色層を形成する際の露光時において、着色層形成用層の表面と内部との硬化度に差を生じさせることが可能となる。これにより製造プロセスによって着色層表面に上述した隆起構造を形成することが可能となる。また、着色層表面に上記隆起構造を有することにより、着色層に光散乱機能を付与することができることから、表示装置に用いた際に、外光の反射を抑制してコントラストを向上させることができ、また、表示装置の外部へ出射する光が透明基板と出射媒体との界面で全反射してしまうことを防止することができるため、光の取り出し効率を向上させることが可能となる。
また、上述した隆起構造は周期的な構造を持たずに形成されるため、種々の波長の光を種々の散乱強度で散乱させることができることから、視野角依存性や波長依存性を抑制することが可能となる。
以下、本発明のカラーフィルタの各構成について説明する。
【0026】
1.着色層
本発明における着色層は、透明基板上に形成されるものであり、少なくとも顔料および感光性樹脂を含有し、上記着色層のP/V比が、0.550〜0.750の範囲内であり、上記着色層表面に複数の凹凸からなる隆起構造を有することを特徴とするものである。また、通常、赤色、緑色、および青色の3色からなるものである。
以下、着色層の組成および着色層の形状について説明する。
【0027】
(1)着色層の組成
次に、本発明における着色層の組成について説明する。
本発明における着色層は、少なくとも顔料および感光性樹脂を含有し、上記着色層のP/V比が、0.550〜0.750の範囲内であるものである。
【0028】
着色層のP/V比としては、0.550〜0.750の範囲内であれば特に限定されるものではなく、特に0.600〜0.700の範囲内であることが好ましい。着色層のP/V比が上記範囲を超える場合は、着色層に含まれる樹脂成分が少ないため、着色層の製造プロセスにおいて、着色層形成用層自体が十分に収縮しないことから、上述した隆起構造を形成することが困難となる可能性があるからである。また、着色層の製版性が低下することから、着色層自体を形成することが困難とある可能性があるからである。一方、着色層のP/V比が上記範囲に満たない場合は、着色層を製造する際の着色層形成用層の露光時に、着色層形成用層の内部まで露光光が透過しやすくなるため、着色層形成用層の表面と内部との硬化の度合いの差が小さくなることから、着色層形成工程の焼成において着色層を収縮させることによって着色層表面に上述した隆起構造を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0029】
上記着色層に用いられる顔料としては、本発明のカラーフィルタを表示装置に用いた際に所望のカラー表示を行うことが可能となるものであれば特に限定されるものではない。
本発明においては、例えば赤色顔料としては、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
また、例えば緑色顔料としては、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料もしくはハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料等のフタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。
また、例えば青色顔料としては、銅フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
また、着色層に用いられる感光性樹脂としては、一般的なカラーフィルタに用いられる感光性樹脂と同様とすることができる。具体的には、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する樹脂等を挙げることができる。
【0031】
(2)着色層の形状
本発明の着色層は、着色層表面に複数の凹凸からなる隆起構造を有するものである。
【0032】
上記隆起構造の凹凸の平均ピッチとしては、本発明のカラーフィルタを表示装置に用いた際に、外光の反射を防止し、表示装置内部の光の取り出し効率を向上させることが可能な光散乱機能を発現することが可能であれば特に限定されるものではないが、2μm〜35μmの範囲内、なかでも4μm〜25μmの範囲内、特に5μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。平均ピッチが上記範囲を超える場合は、カラーフィルタに所望の光散乱機能を付与することが困難となるからであり、平均ピッチが上記範囲に満たないような着色層は形成することが困難であるからである。
なお、本発明における隆起構造の平均ピッチとは、単位面積に含まれる隆起構造のピッチの平均値を指すものである。また、隆起構造のピッチとは、隆起構造の1つの凸部の頂部から隣接する凸部の頂部までの距離を指すものであり、図3においてPで示される距離を指すものである。なお、図3は、本発明のカラーフィルタの他の例を示す概略断面図であり、説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
上記隆起構造の平均ピッチの測定方法は、例えば、触針式膜厚計アルファステップ(テンコール社製)等の装置を用いて測定できる。隆起構造を有する表面を触針式膜厚計で測定すると図3のような凹凸が測定される。図3のPで表される凸部と凸部の距離を数カ所求め、平均値を算出することで平均ピッチを求めることができる。測定するPの数は20箇所以上であることが望ましい。
【0033】
上記隆起構造の凸部の平均高さとしては、本発明のカラーフィルタを表示装置に用いた際に、外光の反射を防止し、表示装置内部の光の取り出し効率を向上させることが可能な光散乱機能を発現することが可能であれば特に限定されるものではないが、0.2μm〜7.0μmの範囲内、なかでも0.4μm〜5.0μmの範囲内、特に0.5μm〜3.0μmの範囲内であることが好ましい。上記凸部の平均高さが上記範囲に満たない場合は、カラーフィルタに所望の光散乱機能を付与することが困難となるからであり、上記凸部の平均高さが上記範囲を超える場合は、カラーフィルタを薄膜に形成することが困難となるからである。
なお、隆起構造の凸部の平均高さとは、単位面積に含まれる隆起構造の凸部の高さの平均値を指すものである。また、隆起構造の凸部の高さとは、隆起構造の凹部の底部から凸部の頂部までの距離を指すものであり、図3においてQで示される距離を指すものである。
上記隆起構造の凸部の平均高さの測定方法は、例えば、触針式膜厚計アルファステップ(テンコール社製)等の装置を用いて測定できる。隆起構造を有する表面を触針式膜厚計で測定すると図3のような凹凸が測定される。図3のQで表される凸部高さを数カ所求め、平均値を算出することで平均高さを求めることができる。測定するQの数は20箇所以上であることが望ましい。
【0034】
上記隆起構造の凸部の平面視上の平均長さとしては、本発明のカラーフィルタを表示装置に用いた際に、外光の反射を防止し、表示装置内部の光の取り出し効率を向上させることが可能な光散乱機能を発現することが可能であれば特に限定されるものではないが、5μm〜150μmの範囲内、なかでも10μm〜100μmの範囲内、特に15μm〜70μmの範囲内であることが好ましい。上記凸部の平面視上の平均長さが、上記範囲に満たない、または上記範囲を超えるような隆起構造を有する着色層は形成することが困難であるからである。
また、「隆起構造の凸部の平面視上の長さ」とは、図4においてRで示される距離を測定した値である。なお、図4は、本発明のカラーフィルタの表面の状態を表す写真であり、黒色部分は平面視上の凸部である。
凸部の平面視上の平均長さの測定方法は、例えば、図4のような顕微鏡写真において凸部の長さRを数箇所求め、平均値を算出することで求められる。測定するRの数は20箇所以上であることが望ましい。また、隆起構造の凸部が二股以上に分かれている場合は、分岐点を起点として上記平面視上の長さを測定するものとする。
【0035】
本発明の着色層の最低膜厚としては、着色層表面に上述した隆起構造を形成することが可能であり、かつ、本発明のカラーフィルタを表示装置に用いた際に、所望のカラー表示を行うことができる程度の膜厚であれば特に限定されるものではないが、2.5μm以上、なかでも3.0μm〜7.0μmの範囲内、特に3.5μm〜5.5μmの範囲内であることが好ましい。着色層の最低膜厚が上記範囲に満たない場合は、上述した隆起構造を形成することが困難である可能性や、着色層の下地の層の影響により、本発明のカラーフィルタを表示装置に用いた際に、所望のカラー表示を行うことが困難である可能性が考えられるからである。
また、本発明の着色層の最低膜厚の上限値としては、10μm程度とすることができる。着色層の最低膜厚が上記範囲を超える場合は、カラーフィルタを薄膜に形成することが困難となるからである。なお、着色層の最低膜厚とは、透明基板表面から着色層の隆起構造の凹部までの距離を指し、図3においてOで示される距離を指すものである。
着色層の最低膜厚は、例えば触針式膜厚計アルファステップ(テンコール社製)等の装置を用いて測定できる。
【0036】
着色層のパターン形状としては、画素に対応して規則的に配列される。上記着色層の配列としては、各色の上記着色層が巨視的に見て平均的に配列されていれば特に限定されるものではなく、例えばストライプ配列、モザイク配列、デルタ配列等が挙げられる。
【0037】
(3)着色層
本発明における着色層は、上述したように通常、赤色、緑色、および青色の3色の着色層からなるものであるが、他の色の着色層を有していてもよい。このような着色層としては、例えば白色着色層、黄色着色層等を挙げることができる。
【0038】
2.透明基板
本態様に用いられる透明基板は、上記透明基板上に上述した着色層を形成することができるものであれば特に限定されるものではない。
【0039】
このような透明基板としては、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板と同様とすることができ、例えば具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材等が挙げられる。特に無アルカリガラスは信頼性とコストの点で好ましい。また、上記透明基板の膜厚等については、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0040】
3.その他の構成
本発明のカラーフィルタは、上記透明基板および着色層を有するものであれば特に限定されるものではなく、必要な構成を適宜追加することが可能である。このような構成としては、例えば、画素を区画するために着色層間に形成される遮光部、着色層を保護してカラーフィルタに平坦性を付与するために着色層上に形成されるオーバーコート層等を挙げることができる。
これらの構成については、一般的なカラーフィルタに用いられる構成と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0041】
4.カラーフィルタ
本発明のカラーフィルタは、例えば、反射型液晶表示装置やEL表示装置等に用いることができる。本発明においては、特にEL表示装置に用いることが好ましい。
【0042】
本発明のカラーフィルタの製造方法としては、上述した隆起構造を有する着色層を形成することができる製造方法であれば特に限定されない。詳しくは、後述する「B.カラーフィルタの製造方法」の項で説明するため、ここでの記載は省略する。
【0043】
B.カラーフィルタの製造方法
次に本発明のカラーフィルタの製造方法について説明する。
本発明のカラーフィルタの製造方法は、少なくとも顔料、感光性樹脂、および光反応開始剤を含有する着色層形成用組成物を調製する着色層形成用組成物調製工程と、透明基板上に上記着色層形成用組成物を塗布して着色層形成用層を形成する着色層形成用層形成工程と、上記着色層形成用層を所定のパターンに露光および現像する露光現像工程と、上記着色層形成用層を焼成することにより着色層を形成する着色層形成工程とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記着色層形成用組成物調製工程では、上記着色層形成用組成物のP/V比が0.550〜0.750の範囲内となるように、上記着色層形成用組成物を調製することを特徴とする製造方法である。
【0044】
本発明のカラーフィルタの製造方法について図を用いて説明する。図5は、本発明のカラーフィルタの製造方法の他の例を示す工程図である。本発明のカラーフィルタの製造方法においては、図示はしないが、少なくとも顔料、感光性樹脂、および光反応開始剤を含有する着色層形成用組成物を調製する(着色層形成用組成物調製工程)。次に、図5(a)に示すように、透明基板1上に緑色着色層形成用組成物を塗布し、緑色着色層形成用層2’Gを形成する(着色層形成用層形成工程)。次に、図5(b)に示すように、緑色着色層形成用層2’Gにフォトマスク20を介して露光光30を照射した後、図5(c)に示すように、現像を行うことにより緑色着色層形成用層2’Gを所定のパターン状にパターニングする(露光現像工程)。なお、本発明において着色層が複数色の着色層を有する場合は、着色層形成用層形成工程および露光現像工程を繰り返すことにより、図5(d)に示すように、パターン状に形成された複数色の着色層形成用層2’(図5(d)では、赤色着色層形成用層2’R、緑色着色層形成用層2’G、および青色着色層形成用層2’B)を形成する。次に、図5(e)に示すように、着色層形成用層2’を焼成することにより着色層2(図5(e)では、赤色着色層2R、緑色着色層2G、および青色着色層2B)を形成する(着色層形成工程)。着色層形成工程では、着色層形成用層2’が収縮することにより、着色層2表面に隆起構造が形成される。
これにより、カラーフィルタ10を製造することができる。
【0045】
本発明によれば、着色層形成用組成物調製工程により、上記P/V比を有する着色層形成用組成物を調製することにより、露光時に着色層形成用層の表面の硬化の度合いを着色層形成用層の内部の硬化の度合いに比べて高くすることができる。このように、表面の硬化の度合いと表面の硬化の度合いとが異なる着色層形成用層を焼成して収縮させることにより、着色層表面に上述した隆起構造を形成することが可能となる。よって、光散乱機能を有するカラーフィルタを製造することが可能となる。
以下、各工程について説明する。
【0046】
1.着色層形成用組成物調製工程
本工程は、少なくとも顔料、感光性樹脂、および光反応開始剤を含有する着色層形成用組成物を調製する工程である。
【0047】
本工程に用いられる顔料および感光性樹脂については、上述した「A.カラーフィルタ」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、本工程により調製される着色層形成用組成物のP/V比についても、上述した「A.カラーフィルタ」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0048】
本工程に用いられる光反応開始剤としては、着色層形成用層を露光する際に、着色層形成用層の表面をより硬化することができるものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、アデカ社製N1717、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸やトリエタノールアミンのような還元剤との組み合わせ等を例示できる。本発明においては、これらの光重合開始剤を1種のみ又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
本工程により調製される着色層形成用組成物としては、少なくとも、上述した顔料、感光性樹脂、および光反応開始剤を含有するものであれば特に限定されるものではなく、他にも必要な成分を適宜追加することができる。このような成分としては、例えば、連鎖移動剤、溶剤、増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等をを挙げることができる。
【0050】
上述した任意の成分のなかでも、連鎖移動剤を用いることが好ましい。連鎖移動剤を適量用いることにより、着色層形成用層の内部硬化度を上げることができる。この効果により、着色層形成用層の内部硬化度と表面硬化度を調整することができ、焼成後に表面に形成される隆起構造を最適なものとすることができる。また、着色層形成用層の内部硬化度をあげることで基板との密着性を向上させ、パターニング精度を上げることが可能となる。
連鎖移動剤としては、具体的には、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−ヒドロキシエチルメルカプタン、メルカプト酢酸等のメルカプタン、α−メチルスチレンダイマーなどのダイマー等を挙げることができる。
【0051】
着色層形成用組成物に用いられる溶剤、増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等としては、一般的なカラーフィルタの着色層を形成する際に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0052】
着色層形成用組成物の調製方法については、一般的な着色層形成用組成物の調製方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0053】
2.着色層形成用層形成工程
本工程は、透明基板上に上記着色層形成用組成物を塗布して着色層形成用層を形成する工程である。
【0054】
着色層形成用組成物の塗布方法としては、透明基板上に所望の膜厚で着色層形成用層を形成することが可能な方法であれば特に限定されるものではない。具体的には、スピンコート法やダイコート法等を挙げることができる。中でも好適に用いられる方法としては、スピンコート法が挙げられる。
【0055】
本工程により形成される着色層形成用層の厚みとしては、後述する着色層形成工程において、上記着色層表面に隆起構造を形成することが可能であり、かつ、本発明により製造されるカラーフィルタを用いて良好な画像表示を行うことができる程度の厚みとすることができれば特に限定されるものではなく、製造されるカラーフィルタの用途に応じて調整されるものである。
【0056】
3.露光現像工程
本工程は、上記着色層形成用層を所定のパターンに露光および現像する工程である。
【0057】
本工程における露光時には、通常所定のパターンが形成されたフォトマスクを用いて露光が行われる。フォトマスクについては一般的なカラーフィルタの着色層を露光する際に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0058】
本工程に用いられる露光光、および現像液等については一般的なカラーフィルタを製造する際に用いられる露光光、および現像液等と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0059】
4.着色層形成工程
本工程は、上記着色層形成用層を焼成することにより着色層を形成する工程である。
本工程においては、上記着色層形成用層を焼成して収縮させることにより、着色層表面に隆起構造を生じさせることが可能となる。
【0060】
本工程における焼成条件としては、着色層表面に隆起構造を形成させることが可能であり、かつ、形成させる着色層が十分に硬化する程度の焼成条件であれば特に限定されるものではなく、一般的なカラーフィルタの製造時において行われる焼成工程の焼成条件と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0061】
本工程により形成される着色層については、「A.カラーフィルタ」の項で記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0062】
5.その他の工程
本発明のカラーフィルタの製造方法は、上述した着色層形成用組成物調製工程、着色層形成用層形成工程、露光現像工程、および着色層形成工程を有するものであれば特に限定されるものではなく、他にも必要な限定を適宜追加することが可能である。
このような工程としては、例えば、透明基板上に遮光部を形成する工程、上記着色層上に透明有機膜または透明無機膜を形成する工程等を挙げることができる。これらの工程については、一般的なカラーフィルタの製造方法に用いられる工程と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0063】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0064】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて説明する。
【0065】
[実施例]
・ブラックマトリクス(遮光部)の形成
カラーフィルタ用の透明基板として、300mm×400mm、厚さ0.7mmのガラス基板(コーニング社製1737ガラス)を準備した。この基板を定法にしたがって洗浄した後、基板の片側全面に下記組成のブラックマトリックス用ネガ型感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布した。プリベーク後、所定のフォトマスクを介して露光し、現像した後、230℃、30minの条件で加熱処理した。作製したブラックマトリックスは、ピッチ70μmで並行して配列するストライプ形状(線幅20μm、高さ 1.5μm)であった。
【0066】
<ブラックマトリックス用のネガ型感光性樹脂組成物>
・カーボンブラック 40重量部
・樹脂組成物 39重量部
・メトキシブチルアセテート 250重量部
・開始剤(イルガキュアOXE2、BASF社製) 8重量部
尚、上記の樹脂組成物は、下記組成を有するものである。
<樹脂組成物>
・アクリル樹脂 32重量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 42重量部
・エポキシ樹脂(ジャパン エポキシ レジン(株)製) 18重量部
【0067】
・着色パターン(着色層)の形成
次に、下記組成の赤色パターン用の着色インクR1、緑色パターン用の着色インクG1、および、青色パターン用の着色インクB1を調製した。下記組成物のPV比は0.648、0.654である。
【0068】
<赤色パターン用の着色インクR1>
・顔料(C. I. Pigment Red 177) 83重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 500重量部
・重合開始剤(イルガキュア907、BASF社製) 16重量部
・上記の樹脂組成物 112重量部
【0069】
<緑色パターン用の着色インクG1>
・顔料(C. I. Pigment Green 36 + C. I. Pigment Yellow 150) 85重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 500重量部
・重合開始剤(イルガキュア907、BASF社製) 18重量部
・上記の樹脂組成物 112重量部
【0070】
<青色パターン用の着色インクB1>
・顔料(C. I. Pigment Blue 15:6) 83重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 500重量部
・重合開始剤((イルガキュア907、BASF社製) 16重量部
・上記の樹脂組成物 112重量部
【0071】
ブラックマトリックスを形成した基板の片側全面に上記組成の赤色ネガ型感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布した。プリベーク後、所定のフォトマスクを介して露光し、現像した後、230℃、30minの条件で加熱処理した。作製した赤色パターンは、ピッチ210μmでブラックマトリックスのパターンと平行してブラックマトリックス間に配列されたストライプ形状(線幅65μm、着色層の平均膜厚(以下、高さ)4.0μm)であった。緑色パターン、青色パターンも同様に順次ストライプパターンを形成した。緑色および青色パターンもそれぞれ線幅65μm、高さ4.0μmだった。
以上の手順によりカラーフィルタを得た。
【0072】
表面を観察したところ所望の隆起構造が形成されていた。なお、隆起構造の平均ピッチは17μm、隆起構造の凸部の平均高さは0.9μm、隆起構造の凸部の平面視上の平均長さは31μmであった。また、着色層の最低膜厚は3.6μmであった。
光散乱性、色シフトおよび視野角依存性については、3次元変角分光測定システムGCMS−3B(村上色彩技術研究所社製)にて評価した。作製したカラーフィルタにハロゲン光源を基板面に垂直に入射させ、透過した光の強度・色度を各角度毎に測定したところ、色シフトおよび視野角依存性の少ない散乱機能を有するカラーフィルタとして機能することを確認した。
【0073】
[比較例1]
・ブラックマトリクスの形成
実施例と同様にブラックマトリクスを形成した。
【0074】
・着色パターンの形成
次に、下記組成の赤色パターン用の着色インクR2、緑色パターン用の着色インクG2、および、青色パターン用の着色インクB2を調製した。下記組成物のPV比は0.203〜0.400である。
【0075】
<赤色パターン用の着色インクR2>
・顔料(C. I. Pigment Red 177) 35重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 500重量部
・重合開始剤(イルガキュア907、BASF社製) 16重量部
・上記の樹脂組成物 112重量部
【0076】
<緑色パターン用の着色インクG2>
・顔料(C. I. Pigment Green 36 + C. I. Pigment Yellow 150) 52重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 500重量部
・重合開始剤(イルガキュア907、BASF社製) 18重量部
・上記の樹脂組成物 112重量部
【0077】
<青色パターン用の着色インクB2>
・顔料(C. I. Pigment Blue 15:6) 26重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 500重量部
・重合開始剤((イルガキュア907、BASF社製) 16重量部
・上記の樹脂組成物 112重量部
【0078】
ブラックマトリックスを形成した基板の片側全面に上記組成の赤色ネガ型感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布した。プリベーク後、所定のフォトマスクを介して露光し、現像した後、230℃、30minの条件で加熱処理した。作製した赤色パターンは、ピッチ210μmでブラックマトリックスのパターンと平行してブラックマトリックス間に配列されたストライプ形状(線幅65μm、高さ4.0μm)であった。緑色パターン、青色パターンも同様に順次ストライプパターンを形成した。緑色および青色パターンもそれぞれ線幅65μm、高さ4.0μmだった。以上の手順によりカラーフィルタを得た。
表面を観察したところ隆起パターンは形成されていなかった。また、光散乱機能を有さないものとなった。
【0079】
[比較例2]
・ブラックマトリクスの形成
実施例と同様にブラックマトリクスを形成した。
【0080】
・着色パターンの形成
次に、下記組成の赤色パターン用の着色インクR3、緑色パターン用の着色インクG3、および、青色パターン用の着色インクB3を調製した。下記組成物のP/V比は0.781〜0.923である。
【0081】
<赤色パターン用の着色インクR3>
・顔料(C. I. Pigment Red 177) 105重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 500重量部
・重合開始剤(イルガキュア907、BASF社製) 16重量部
・上記の樹脂組成物 112重量部
【0082】
<緑色パターン用の着色インクG3>
・顔料(C. I. Pigment Green 36 + C. I. Pigment Yellow 150) 120重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 500重量部
・重合開始剤(イルガキュア907、BASF社製) 18重量部
・上記の樹脂組成物 112重量部
【0083】
<青色パターン用の着色インクB3>
・顔料(C. I. Pigment Blue 15:6) 100重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 500重量部
・重合開始剤((イルガキュア907、BASF社製) 16重量部
・上記の樹脂組成物 112重量部
【0084】
ブラックマトリックスを形成した基板の片側全面に上記組成の赤色ネガ型感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布した。プリベーク後、所定のフォトマスクを介して露光し、現像したが、PV比が高く製版性が著しく悪化しているためパターン形成が困難であった。緑色ネガ型感光性樹脂組成物、青色ネガ型感光性樹脂組成物についても同様にパターン形成が困難であった。
【符号の説明】
【0085】
1 … 透明基板
2 … 着色層
3 … 遮光部
10 … カラーフィルタ
20 … フォトマスク
30 … 露光光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板、および前記透明基板上に形成された複数の着色層を有するカラーフィルタであって、
前記着色層は、少なくとも顔料および感光性樹脂を含有し、前記着色層のP/V比が、0.550〜0.750の範囲内であり、
前記着色層表面に複数の凹凸からなる隆起構造を有し、
前記隆起構造の平均ピッチが2μm〜35μmの範囲内であり、前記隆起構造の凸部の平均高さが0.2μm〜7.0μmの範囲内であることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
前記着色層の最低膜厚が、2.5μm以上であることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ。
【請求項3】
前記隆起構造の凸部の平面視上の平均長さが5μm〜150μmの範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカラーフィルタ。
【請求項4】
少なくとも顔料、感光性樹脂、および光反応開始剤を含有する着色層形成用組成物を調製する着色層形成用組成物調製工程と、
透明基板上に前記着色層形成用組成物を塗布して着色層形成用層を形成する着色層形成用層形成工程と、
前記着色層形成用層を所定のパターンに露光および現像する露光現像工程と、
前記着色層形成用層を焼成することにより着色層を形成する着色層形成工程と
を有するカラーフィルタの製造方法であって、
前記着色層形成用組成物調製工程では、前記着色層形成用組成物のP/V比が0.550〜0.750の範囲内となるように、前記着色層形成用組成物を調製することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−97187(P2013−97187A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240238(P2011−240238)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】