説明

カラーホイール及びその製造方法

【課題】カラーホイールの蛍光体層に光が入射する際の、界面における反射成分の発生を効果的に抑える。
【解決手段】カラーホイール基板502の表面に形成された蛍光体層504に対し、光が入射する際の界面における反射成分を、蛍光体層504表面の凹凸によって低減し、照射された光と反射光との干渉を減少させる。そして、蛍光体層504内部への光の屈折を促し、蛍光体層504への透過光を増大させる。凹凸形状506は、蛍光体層504に蛍光体Fと共に分散される微小粒子Pにより形成される。すなわち、微小粒子P自体の形状が蛍光体層504表面に突起形状として現れることで、蛍光体層504表面に凹凸形状を形成することを目的とする工程、例えば、蛍光体層の表面にスタンパによって微細な凹凸形状を転写する工程や、蛍光体層の表面にエッチング処理を施す工程を、不要とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示画像を投写光学系により拡大投影し、大画面の表示画像を得るプロジェクタ用カラーホイールと、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホームシアター、プレゼンテーション等で使用される、表示画像を投写光学系により拡大投影し、大画面の表示画像を得るプロジェクタ(投射型画像表示装置)が商品化されている。このようなプロジェクタには、光源から出射された光を照明光として、デジタルマイクロミラーデバイス、液晶表示素子等の空間光変調器を使用する電気光学装置を介してスクリーンに画像を表示するものがある。上記プロジェクタには、光源として、高圧水銀ランプやキセノンランプを用いたものもあるが、それらは水銀の含有や、発熱量の問題から好ましくない。そのため近年では、発光ダイオード(LED)やレーザーを使用したプロジェクタが考案されている。
【0003】
本発明者らも、光源にLEDとレーザーを使用するいわゆる「ハイブリッド型」のプロジェクタを開発している。かかるハイブリッド型のプロジェクタは、例えば、赤色光源としてLED、青色光源として青色レーザー、緑色光源として青色レーザーの位相と波長を変換したものを用いている。そして、このようなプロジェクタでは、一般的に、時分割型のフィルタ素子として、高速で回転するカラーホイールが用いられる(例えば、特願2010−038748号)。
【0004】
上記ハイブリッド型プロジェクタの色合成の方式について、その一例を図3に模式図で示す。図3において、プロジェクタ100は、投射光学系の構成要素として、青色光源1、赤色光源2、カラーホイール5、ダイクロイックミラー3,8、レンズ4,9、ミラー6,7、空間光変調器としてのデジタルマイクロミラーデバイス10、投影光学系11、スクリーン12を備えている。青色レーザー発光器が用いられた青色光源1から出射される青色光(B)は、青色光を透過するダイクロイックミラー3、レンズ4を通過し、カラーホイール5に照射される。カラーホイール5は本体が金属製円盤であって、その基板表面には、樹脂等のバインダーに緑色光(G)を発する蛍光体が混入されてなる蛍光体層が、円周方向の一部に設けられている。従って、カラーホイール5の蛍光体層が設けられていない部分を通過した青色光は、ダイクロイックミラー8を透過し、レンズ9により集光されてデジタルマイクロミラーデバイス10に達し、カラーホイール5から反射された一部の青色光は、青色光源1側に戻る。
【0005】
一方、青色光源1から青色光が上記蛍光体層に照射されると緑色光が発光され、この緑色光は、レンズ4を通って緑色光を反射するダイクロイックミラー3により反射され、更にミラー6,7と、ダイクロイックミラー8で反射され、レンズ9により集光されてデジタルマイクロミラーデバイス10に達する。
また、赤色LEDが用いられた赤色光源2からの赤色光(R)は、ダイクロイックミラー3を通過し、ミラー6,7に反射されてダイクロイックミラー8に反射され、レンズ9により集光されてデジタルマイクロミラーデバイス10に達する。
デジタルマイクロミラーデバイス10に入射する青色光(B)、緑色光(G)、赤色光(R)の3原色は、入射光の切り替えを同期させて、それぞれの色の画像として時系列的に処理され、投影光学系11を介して、スクリーン12に画像が投写される。なお、カラーホイール5の回転制御や、カラーホイール5を通過後の光の制御については、周知の技術であることから、説明を省略する。
【0006】
図3に例示されたプロジェクタ100においては、青色光(B)の発光は青色光源1により得られ、赤色光(R)の発光は赤色光源2により得られるものであるのに対し、緑色光については、青色光源1から青色光を、カラーホイール5の蛍光体層により波長変換することにより得られるものである。このため、緑色光の光強度を青色光や赤色光とバランスさせて高品質の映像を実現することが可能な、高効率、高輝度のカラーホイールを得る上で、蛍光体層表面に青色光が入射する際の界面における反射成分を、可能な限り少なく抑えることが必要となる。
なお、界面における表面反射の問題は、他の光学部品においても、各々に望まれる光学特性を向上させるために考慮されており、例えば、カバーガラスやレンズ等の部品表面に、スタンパによって微細な凹凸形状を転写する手法や(例えば、特許文献1参照)、LEDからの発光の一部を蛍光体層により波長変換して所望の発光色を得るLED光源において、蛍光体層の表面にエッチング処理を施し、いわゆるモスアイ構造とする手法も見受けられる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−222701号公報
【特許文献2】特開2009−70892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、カラーホイール5の蛍光体層の界面における反射対策として、特許文献1のごとく、部品表面にスタンパによって微細な凹凸形状を転写する手法は、転写時のアライメント精度が悪いと所望の凹凸形状を形成することが出来ず、高品質のカラーホイールを得ることが容易ではない。又、アライメント精度を確保したとしても、転写工程が必要となり、しかも転写工程における凹凸形状形成時間が長いことから、製造コストの増加を来たすこととなる。
更に、特許文献2のごとく蛍光体層の表面にエッチング処理を行う手法も、エッチング工程が必要であることから、カラーホイール5の製造コストの増加を避けることが出来ない。
【0009】
本発明は、上記のような問題に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、カラーホイールの蛍光体層に光が入射する際の、界面における反射成分の発生を効果的に抑えることにある。そして、ハイブリッド型プロジェクタ等、投射光学系にカラーホイールを含むプロジェクタの映像品質を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0011】
(1)基板表面の円周方向の少なくとも一部に、蛍光体層が形成されたカラーホイールであって、前記蛍光体層に蛍光体と共に分散される微小粒子により、前記蛍光体層の表面が凹凸状に形成されているカラーホイール(請求項1)。
本項に記載のカラーホイールは、基板表面に形成された蛍光体層に対し、光が入射する際の界面における反射成分を、蛍光体層表面の凹凸によって低減し、照射された光と反射光との干渉を減少させるものである。又、蛍光体層内部への光の屈折を促し、蛍光体層への透過光を増大させるものである。しかも、蛍光体層の表面の凹凸は、蛍光体層に蛍光体と共に分散される微小粒子により形成される、すなわち、微小粒子自体の形状が蛍光体層表面に突起形状として現れることで、蛍光体層表面に凹凸形状を形成することを目的とする工程を、不要とするものである。
【0012】
(2)上記(1)項において、前記蛍光体の比重よりも前記微小粒子の比重の方が小さいカラーホイール(請求項2)。
本項に記載のカラーホイールは、蛍光体の比重よりも微小粒子の比重の方が小さいことにより、蛍光体層を構成するバインダーが硬化する前の段階で、バインダー内では、蛍光体は深層部分に沈降し、これに促されるようにして微小粒子が表層部分に浮き上ることとなり、微小粒子は蛍光体層表面に突起物として存在するものとなる。
なお、一般的に、蛍光体として用いられるガーネット(YAG)の比重が、約4g/cmであるのに対し、微小粒子としてシリカを用いる場合は、その比重は約2.0g/cmである。又、バインダーとして用いることが可能なシリコーン樹脂の比重は、約2.3g/cmである。このため、硬化前のバインダー内で、蛍光体は深層部分に沈降し、微小粒子は表層部分に浮き上ることとなる。そして、バインダーが硬化することで、微小粒子は蛍光体層表面に突起物として存在する状態で固定される。
【0013】
(3)上記(1)、(2)項において、前記蛍光体の平均粒径よりも前記微小粒子の平均粒径の方が大きいカラーホイール(請求項3)。
本項に記載のカラーホイールは、蛍光体層表面に突起物として存在する微小粒子により、凹凸形状が形成されることで、凹凸の程度(凹凸の深さや周期等)についても、微小粒子の粒径に影響を受けるものとなる。そして、蛍光体の平均粒径よりも微小粒子の平均粒径の方が大きくなるようにすることで、凹凸の程度は強調される傾向となり、蛍光体層に光が入射する際の界面における反射成分の発生を抑え、界面における光の透過率を高めるものとなる。又、蛍光体の比重よりも前記微小粒子の比重の方が小さい場合には、かかる比重差ともあいまって、硬化前のバインダー内で微小粒子は表層部分に多く分布し、微小粒子は蛍光体層表面に突起物として存在するものとなる。
なお、微小粒子としてシリカを用いる場合には、蛍光体と比べて真球状への形成が容易であり、このことは、凹凸の程度の調整を容易とすることに貢献するものである。又、シリカの平均粒径を、蛍光体層に入射する光の波長オーダーよりも大きな径、例えば、20μm〜50μmに調整することで、界面における光の透過率を高めるものとなる。
【0014】
(4)基板表面の円周方向の少なくとも一部に、蛍光体と共に微小粒子を分散させたバインダーを基板上に堆積させ、表面が凹凸状をなす蛍光体層を形成するカラーホイールの製造方法(請求項4)。
本項に記載のカラーホイールの製造方法は、基板表面の円周方向の少なくとも一部に、蛍光体と共に微小粒子を分散させたバインダーを基板上に堆積させ、微小粒子自体の形状を蛍光体層表面の突起形状として利用することで、蛍光体層表面に凹凸形状を形成することを目的とする工程を、不要とするものである。
このようにして製造されたカラーホイールは、基板表面に形成された蛍光体層に対し、光が入射する際の界面における反射成分を、蛍光体層表面の凹凸によって低減し、照射された光と反射光との干渉を減少させるものである。又、蛍光体層内部への光の屈折を促し、蛍光体層への透過光を増大させるものとなる。
【0015】
(5)上記(4)項において、前記蛍光体層を、前記基板上にスクリーン印刷により形成するカラーホイールの製造方法(請求項5)。
本項に記載のカラーホイールの製造方法は、蛍光体層を、基板上にスクリーン印刷により形成することで、蛍光体と共に微小粒子を分散させたバインダーを基板上に堆積させるものである。そして、微小粒子自体の形状を蛍光体層表面の突起形状として利用することで、蛍光体層表面に凹凸形状を形成することを目的とする工程を、不要とするものである。
【0016】
(6)上記(5)、(6)項において、前記蛍光体の比重よりも前記微小粒子の比重を小さくするカラーホイールの製造方法。
本項に記載のカラーホイールの製造方法は、蛍光体の比重よりも微小粒子の比重を小さくすることにより、蛍光体層を構成するバインダーが硬化する前の段階で、バインダー内では、蛍光体は深層部分に沈降し、これに促されるようにして微小粒子が表層部分に浮き上り、微小粒子は蛍光体層表面に突起物として存在するものとなる。
【0017】
(7)上記(4)から(6)項において、前記蛍光体の平均粒径よりも前記微小粒子の平均粒径を大きくするカラーホイールの製造方法。
本項に記載のカラーホイールの製造方法は、蛍光体層表面に突起物として存在する微小粒子により、凹凸形状が形成されることで、凹凸の程度(凹凸の深さや周期等)についても、微小粒子の粒径に影響を受けるものとなる。そして、蛍光体の平均粒径よりも微小粒子の平均粒径を大きくすることで、凹凸の程度は強調される傾向となり、蛍光体層に光が入射する際の界面における反射成分の発生を抑え、界面における光の透過率を高めるものとなる。又、蛍光体の比重よりも前記微小粒子の比重を小さくした場合には、かかる比重差ともあいまって、硬化前のバインダー内で微小粒子は表層部分に多く分布し、微小粒子は蛍光体層表面に突起物として存在するものとなる。
【0018】
(8)光源と、レンズと、上記(1)から(3)項記載のカラーホイール、又は、上記(4)から(7)項記載の製造方法により得られるカラーホイールとを投射光学系に含むプロジェクタ。
本項に記載のプロジェクタは、上記(1)から(7)に係るカラーホイールを含むことで、カラーホイールの蛍光体層により波長変換することにより得られる光と、光源から直接得られる光とをバランスさせて、高品質の映像を実現するものとなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明はこのように構成したので、カラーホイールの蛍光体層に光が入射する際の界面における反射成分の発生を、効果的に抑えることができる。そして、ハイブリッド型プロジェクタ等、投射光学系にカラーホイールを含むプロジェクタの映像品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る、カラーホイールを示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線における断面図及び部分拡大図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る、カラーホイールの、蛍光体層の表面に形成された凹凸の程度と、光強度の増加率との関係を示す説明図である。
【図3】従来のハイブリッド型のプロジェクタの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。なお、本発明の実施の形態に係るプロジェクタ用カラーホイールは、図3に例示されるような、ハイブリッド型のプロジェクタに適用可能なものである。よって、プロジェクタの全体構成についての詳しい説明についても、図3を参照することとして省略する。
【0022】
カラーホイール5は、図1(a)(b)に示されるように、基板(カラーホイール基板)502の表面に蛍光体層504が形成されたものである。しかも、蛍光体層504の表面が微細な凹凸形状506をなしているものである。ここで、蛍光体層504は、バインダーB内に、蛍光体F及び微小粒子Pを分散したものである。具体例としては、バインダーBにはシリコーン樹脂が用いられ、蛍光体Fにはガーネットが、微小粒子Pにはシリカが用いられる。この場合、蛍光体Fの比重(約4g/cm)に対して、微小粒子Pの比重(約2.0g/cm)の方が小さくなる。従って、図1(b)に示されるように、硬化前のバインダーB内で、蛍光体Fは深層部分に沈降し、微小粒子Pは表層部分に浮き上ることとなる。そして、バインダーBが硬化することで、微小粒子Pは蛍光体層504の表面に突起物として存在する状態で、固定される。なお、蛍光体層504は、図示の例では基板502の全周にわたって形成されているが、従来技術と同様に円周方向の一部に形成されていてもよい。
【0023】
又、好ましくは、蛍光体Fの平均粒径よりも、微小粒子Pの平均粒径の方が大きくなるように調整されることで、蛍光体Fと微小粒子Pとの比重差ともあいまって、硬化前のバインダーB内で微小粒子Pは表層部分に多く分布し、微小粒子P自体が凹凸形状506を形成するものとなる。
なお、カラーホイール基板502上に蛍光体層504を形成する具体的手法については、適宜選択可能であるが、例えば、スクリーン印刷により形成することが可能である。
【0024】
参考までに、カラーホイール5を構成するカラーホイール基板502は、従来技術で説明したように金属製であるが、ガラス製であってもよい。
又、蛍光体層504の蛍光体材料としては、ガーネットの他にも、以下のようなものが用いられる。例えば緑色発光用蛍光体としては、Zn2SiO4:Mn,BaAl1219:Mn,BaMgAl1423:Mn,SrAl1219:Mn,ZnAl1219:Mn,CaAl1219:Mn,YBO3:Tb,LuBO3:Tb,GdBO3:Tb,ScBO3:Tb,Sr4Si38Cl4:Eu,等が挙げられる。又、例えば赤色発光用蛍光体としては、Y23:Eu,Y2SiO5:Eu,Y3Al512:Eu,Zn3(P042:Mn,YBO3:Eu,(Y,Gd)BO3:Eu,GdBO3:Eu,ScBO3:Eu,LuBO3:Eu,等が挙げられる。
【0025】
なお、微小粒子Pとしてシリカを用いた場合には、蛍光体F(一般的に、焼成後の粉砕工程により得られるもので、真球状に形成することが困難である。)に比べ、真球状に形成し易く、蛍光体層504の表面が凹凸形状506の、凹凸の程度を調整する事が容易となる。
又、微小粒子Pの平均粒径を比較的大きくする(例えば、蛍光体Fの平均粒径が10μmであるのに対し、蛍光体層504に入射する光の波長オーダーよりも大きな径、例えば、20μm〜50μmに調整する。)ことも可能である。
【0026】
そして、図2に例示されるように、蛍光体層504の表面の、凹凸の程度の増加と共に、蛍光体層504から得られる光強度の増加率も、向上する傾向にある。図2は、本発明者らの研究過程で得られた、カラーホイール5の、蛍光体層504の表面に形成された凹凸形状506の凹凸の程度(凸部の高さ)と、光強度の増加率との関係を示したものである。ここで、蛍光体層504の表面に凹凸形状が形成されていない場合の光強度の増加率を0.0%として、蛍光体層504の表面からの微小粒子Pの突出高さが6.7μmのときの光強度の増加率が0.55%、同突出高さが20μmのときの光強度の増加率が1.4%となり、凸部の高さを大きくすることで、透過率が向上することが明らかとなった。
【0027】
ところで、微小粒子Pの粒径を上記の如く比較的大きくして、蛍光体層504に平行光(レーザー光等の制御された光)を入射させた場合を仮定すると、蛍光体層504の表面の凹凸形状506によって、蛍光体層504内を進行する光の方向が分散(拡散)され、それが悪影響を及ぼすことが懸念される。しかしながら、蛍光体層504内には、シリコーン樹脂からなるバインダーB(シリコーン樹脂の屈折率1.4)とは、屈折率が異なる蛍光体F(ガーネットの屈折率1.8)が分散され(従って、バインダーBと蛍光体Fとの界面で反射や屈折が生じる。)、かつ、蛍光体Fから発光(蛍光)する光は等方的であることから、仮に蛍光体層504に平行光を入射させたとしても、蛍光体層504からの出射光は平行光ではなく、分散された光となる。従って、微小粒子P(シリカの屈折率1.4)の平均粒径を比較的大きくして、蛍光体層504の表面に比較的大きな凹凸形状506を形成した場合であっても、懸念される分散の悪影響(副作用)は生じないものである。
なお、微小粒子Pの粒径を大きくすれば、その製作も容易となるが、蛍光体層504の透過率の向上効果をより大きなものとするためには、微小粒子Pの粒径をより小さくすることを選択しても良い。
【0028】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、カラーホイール5は、カラーホイール基板502の表面に形成された蛍光体層504に対し、光が入射する際の界面における反射成分を、蛍光体層504表面の凹凸(凹凸形状506)によって低減し、照射された光と反射光との干渉を減少させることができる。そして、蛍光体層504内部への光の屈折を促し、蛍光体層504への透過光を増大させるものである。しかも、蛍光体層504の表面の凹凸形状506は、蛍光体層504に蛍光体Fと共に分散される微小粒子Pにより形成される、すなわち、微小粒子P自体の形状が蛍光体層504表面に突起形状として現れることで(図1(b)参照)、蛍光体層504表面に凹凸形状を形成することを目的とする工程、例えば、蛍光体層の表面にスタンパによって微細な凹凸形状を転写する工程や、蛍光体層の表面にエッチング処理を施す工程を、不要とするものとなる。
【0029】
又、蛍光体Fの比重よりも微小粒子Pの比重の方が小さいことにより、蛍光体層504を構成するバインダーBが硬化する前の段階で、バインダーB内では、蛍光体Fは深層部分に沈降し、これに促されるようにして微小粒子Pが表層部分に浮き上ることとなり、微小粒子Pは蛍光体層504の表面に突起物として存在するものとなる。
【0030】
更に、蛍光体層504の表面に突起物として存在する微小粒子Pにより、凹凸形状506が形成されることで、凹凸の程度(凹凸の深さや周期等)についても、微小粒子Pの粒径に影響を受けるものとなる。そして、蛍光体Fの平均粒径よりも微小粒子Pの平均粒径の方が大きくなるようにすることで、凹凸の程度は強調される傾向となり、蛍光体層504に光が入射する際の界面における反射成分の発生を抑え、界面における光の透過率を高めることが可能となる。又、蛍光体Fの比重よりも微小粒子Pの比重の方が小さい場合には、かかる比重差ともあいまって、硬化前のバインダーB内で微小粒子Pは、蛍光体層504の表層部分に多く分布し、微小粒子Pは蛍光体層504表面に突起物として存在するものとなる。よって、蛍光体層504表面に凹凸形状を形成することを目的とする工程を、不要とするものとなる。
【0031】
以上の如く、本発明の実施の形態によれば、蛍光体層504の形成前に、バインダーBに混入させる微小粒子Pが、蛍光体層504の表面に突起形状として現れるものであることから、従来のスタンパによる形状転写のごとく、アライメント精度を考慮する必要性(形状転写の必要性)は無くなる。又、バインダーBに蛍光体Fを混練する工程と併せて、微小粒子PもバインダーBに混練すれば良く、それによる製作時間の増加は、実質的に無いに等しいものである。しかも、蛍光体層504を、カラーホイール基板502上にスクリーン印刷により形成することとすれば、印刷工程の後に、微小粒子Pが、蛍光体層504の表面に突起形状として現れることから、形状転写やエッチング処理による手法に比べ、蛍光体層の表面に凹凸形状506を形成するための作業時間が、そっくり短縮されることとなる。
更には、蛍光体Fの形状が、例えばロット単位で変わったとしても、バインダーBに混入させる微小粒子Pの量を適宜変更することで、蛍光体層の表面に必要な凹凸形状506を形成することが可能であり、条件変化に伴うコスト負担も抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
5:カラーホイール、502:カラーホイール基板、504:蛍光体層、506:凹凸形状、B:バインダー、F:蛍光体、P:微小粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面の円周方向の少なくとも一部に、蛍光体層が形成されたカラーホイールであって、前記蛍光体層に蛍光体と共に分散される微小粒子により、前記蛍光体層の表面が凹凸状に形成されていることを特徴とするカラーホイール。
【請求項2】
前記蛍光体の比重よりも前記微小粒子の比重の方が小さいことを特徴とする請求項1記載のカラーホイール。
【請求項3】
前記蛍光体の平均粒径よりも前記微小粒子の平均粒径の方が大きいことを特徴とする請求項1又は2記載のカラーホイール。
【請求項4】
基板表面の円周方向の少なくとも一部に、蛍光体と共に微小粒子を分散させたバインダーを基板上に堆積させ、表面が凹凸状をなす蛍光体層を形成することを特徴とするカラーホイールの製造方法。
【請求項5】
前記蛍光体層を、前記基板上にスクリーン印刷により形成することを特徴とする請求項4記載のカラーホイールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−108435(P2012−108435A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259011(P2010−259011)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】