説明

カラー画像の色再現を最適化するための好適な色相の選択方法

【課題】カラー画像の色再現を最適化する好適な色相の選択方法を提供する。
【解決手段】コンピューター・プログラムを記憶する不揮発性のメモリーを有すデータ処理装置、及びプログラムを実行するプロセッサを含むカラー画像の色再現システムで実施する方法で、プログラムは、データ処理装置がカラー画像の色再現を最適化する処理を実行すべく設定されたプログラム・コードを含み、処理は、一の記憶色に対する複数の好適な色相角を見出すステップと、複数の好適な色相角の各々について、その色相における最大彩度値を求めるステップと、最大彩度値の所定パーセントにおける2つの彩度点を選択するステップと、2つの彩度点の間の範囲に及ぶ彩度に対する明度の関数を積分して当該関数の曲線下の面積を計算するステップと、面積の計算結果に基づいて記憶色に対する色域マッピングのターゲットとして用いられるべき一の好適な色相角を選択するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、概してカラー画像の色再現方法及び装置に関し、特に、カラー画像の色再現を最適化するための好適な色相の選択方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の説明
近年、カラー印刷技術及び装置の高度な発達により、カラー画像の色再現がより幅広く利用可能となっている。その一方で、カラー印刷工程においては、ある装置(カラーモニター等)の色空間から他の装置(カラープリンター等)への色再現を正確かつ精密に行うことが常に課題とされてきた。
【0003】
「色空間」という用語は色の範囲を表すものとして頻繁に用いられる。通常、色空間は、選択された原色により定義される。例えば、レッド、イエロー、ブルーの3色により定義された色空間の3次元(3−D)の表現方法を創作するために、レッドの量がそのX軸に、イエローの量がそのY軸に、そして、ブルーの量がそのZ軸に割り当てられることがある。その結果として生じる3−D空間は、これら3色を組み合せることにより創作可能な全ての色に対して特有の位置を提供する。
【0004】
異なる種類のカラー画像装置は異なる色空間を有することがある。例えば、カラープリンターはシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の三原色、及びブラック(B)により定義又は創作されるCMYK色空間を使用することがある一方で、カラースキャナーはレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)により定義又は創作されるRGB色空間を使用することがある。
【0005】
「色域」という用語はカラースキャナー又はプリンターのような装置が作り出すことのできる色の範囲を意味するものとして頻繁に使用される。多くの場合、一つの色空間を有する同一種類のカラー画像装置を使用することが、別の種類のカラー画像装置のカラー画像を再現する上で好ましいとされる。例えば、スキャナーにより生成されたカラー画像データをカラープリンターにより印刷媒体上に表現することが頻繁に望まれる。しかしながら、スキャナーの色域内の多くの色はプリンターの色域の外部にある可能性が高い。出力装置の再現可能な範囲外の色は、正確に再現されることができない「色域外」色と称される。そこで、プリンターの再現可能な範囲内にある一部の「色域内」色が画像を再現するために個々の「色域外」色の代わりに使用されなければならない。多くの、このような色の代用はガマット・マッピングのアルゴリズムにより実行される。Cuiその他に付与された米国特許第6,956,581号、Henleyその他に付与された米国特許第7,379,208号、及びSloanその他に付与された米国特許第7,397,588号には、ガマット・マッピングのアルゴリズム例が示されている。「色相」及び「彩度」の概念、並びに関連する「色相角」(又は「色相薄片」)の概念が、これらの典型的なガマット・マッピングのアルゴリズムに関連して頻繁に使用される。しかし、色相角(又は色相薄片)の態様を定量化する概念は、出力側の色域の評価、及び好適な色のためにどの色相を用いるべきかを決定することを目的とする上記アルゴリズムにおいては使用されてこなかった。
【0006】
Gindeleその他に付与された米国特許第6,594,388号に開示されているような色マッピングのアルゴリズムの中には、予め定められた一連のパラメーターに基づく好適な色相の色への変更を実行するものもある。他方、そのようなアルゴリズムは、エンドユーザーによって予め定められた好適な色相での出力側色域の寸法/形状に基づく好適な色相の色を変更してしまうことを考慮したものではない。
【0007】
また、所定の色(例えば、肌色や葉色等の「記憶色」として知られている)についての人間の記憶は実際の色からは外れていることが知られている。多くの場合、記憶色は実際の色と比較して異なる色相及び強調された彩度を有しており、人間の目は実際の色よりも記憶色に近い色再現を望むことが多いということが示されている。そのため、知覚的レンダリング又は写実的レンダリングのような所定のレンダリング・インテントのためには、所定の記憶色(例えば、若草色や空色等)を正確かつ精密に再現することが重要であり、また、色再現のための極めて動的な明度範囲を促進することが必要である。そのような明度範囲の目的は色域の特定部分のトーンジャンプのみならず階調及び細部の喪失を防止することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、カラー画像の色再現を最適化するために、許容可能な出力色を作り出しつつ最大量の明度差を与えることができる好適な色相を選択するための方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
本発明は、カラー画像の色再現を最適化するために、非線形または線形の明度曲線に対して計測された彩度値による面積計算に基づく、特定の記憶色(例えば、空色及び若草色)のための好適な色相の選択方法を対象としている。
【0010】
本発明の目的は、一定の彩度範囲に及ぶ特定の好適な色相角に対する明度のダイナミック・レンジを評価するための測定基準を提供すること、及びカラー画像の色再現を最適化するために、許容可能な出力色を作り出しつつ、どの好適な色相が最大量の明度差を与えるかを決定するために当該明度範囲を同一の彩度範囲に及ぶ近接する明度範囲と比較することである。
【0011】
本発明の付加的な特徴及び利点は以下の説明に明記されており、その一部分は以下の説明から明らかであるか、又は本発明の実施により理解される。本発明の目的及び他の利点は、本明細書及び特許請求の範囲、並びに添付図面中に具体的に指摘された構造により実現され達成される。
【0012】
本書において具現化され、広範に記載された目的及び他の目的を達成するために、本発明は、カラー画像の色再現を最適化するための方法であって、一の記憶色に対する複数の好適な色相角を見出すステップ(a)と、前記複数の好適な色相角の各々について、その色相における最大彩度値を求めるステップ(b)と、前記最大彩度値の所定パーセントにおける2つの彩度点を選択するステップ(c)と、前記2つの彩度点の間の範囲に及ぶ彩度に対する明度の関数を積分して当該関数の曲線下の面積を計算するステップ(d)と、前記面積の計算結果に基づいて前記記憶色に対する色域マッピングのターゲットとして用いられるべき一の好適な色相角を選択するステップ(e)と、を含む方法を提供する。
【0013】
別の態様において、本発明は、コンピューター・ソフトウェア・プログラムを格納する不揮発性の記憶領域を有するデータ処理装置、及び前記プログラムを実行する処理装置を有するカラー画像の色再現システムを提供し、前記プログラムは、カラー画像の色再現を最適化するための処理を前記データ処理装置に実行させるように設定されており、前記処理は、一の記憶色に対する複数の好適な色相角を見出す手順(a)と、前記複数の好適な色相角の各々について、その色相での最大彩度値を求める手順(b)と、前記最大彩度値の所定パーセントにおける2つの彩度点を選択する手順(c)と、前記2つの彩度点の間の範囲に及ぶ彩度に対する明度の関数を積分して当該関数の曲線下の面積を計算する手順(d)と、前記面積の計算結果に基づいて前記記憶色に対する色域マッピングのターゲットとして用いられるべき一の好適な色相角を選択する手順(e)と、を含む。
【0014】
さらに別の態様において、本発明は、データ処理装置を制御するためにコンピューターが利用可能な不揮発性の記憶媒体に組み込まれたコンピューター読み取り可能なプログラム・コードを有する、カラー画像の色再現の最適化のためのコンピューター・ソフトウェア・プログラムを提供し、前記コンピューター読み取り可能なプログラム・コードは、前記データ処理装置に接続された一以上のカラー画像の色再現装置によりカラー画像の色再現を最適化するための処理を前記データ処理装置に実行させるように設定されており、前記処理は、一の記憶色に対する複数の好適な色相角を見出す手順(a)と、前記複数の好適な色相角の各々について、その色相での最大彩度値を求める手順(b)と、前記最大彩度値の所定パーセントにおける2つの彩度点を選択する手順(c)と、前記2つの彩度点の間の範囲に及ぶ彩度に対する明度の関数を積分して当該関数の曲線下の面積を計算する手順(d)と、前記面積の計算結果に基づいて前記記憶色に対する色域マッピングのターゲットとして用いられるべき一の好適な色相角を選択する手順(e)と、を含む。
【0015】
前述の概要及び以下の詳述は、いずれも典型例及び説明を示すものであり、特許請求の範囲に記載された発明の仔細な説明を提供することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラー画像の色再現を最適化する処理の一例を示すフローチャートである。
【図2】本発明の一実施形態に係るカラー画像の色再現を最適化する色相薄片の面積計算方法の一例を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態に係るカラー画像の色再現システムの一例を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好適な実施形態の詳細な説明
本発明の実施形態は、非線形又は線形の明度曲線に対して計測された彩度値による面積計算結果に基づいて所定の記憶色(例えば、空色及び若草色)に対する好適な色相を選択することによりカラー画像の色再現を最適化する方法を提供する。
【0018】
上記のように、多くの色域マッピング用アルゴリズムに関して、個々の原色及び二次色の全体での最高彩度点は、マッピングの「ターゲット」として使用される出力側色域から選択されるので、入力側及び出力側の色域が調整される場合、マッピングにより生じる色は各色の最大のダイナミック・レンジを考慮したものでなければならない。マッピングにより生じる色は、鮮明であり飽和色であったとしても、多くの場合「自然」ではないため、知覚的又は写実的なレンダリング・インテントに合致するように色相が変更される必要がある。このような状態を作り出すためには、目的の色空間に対するマッピング・ターゲットが好適な色の色相角に基づいて選択されるべきであり、例えば緑については若草色の画像が極めて自然に見えるように選択されるべきである。しかしながら、「完全」な緑の色相を選択することが常に最善の策であるとはいえず、特定の彩度レベルの緑については画像が正確に見えるものの、他の特定のレベルの緑については詳細部分及び陰影を表現するための十分な明度差が存在しないため、質の悪い出力画像を作り出してしまうという場合がある。本発明に係る方法の目的の一つは「完全」な色が「不完全」な色域形状に対応する場合におけるこの種の問題を解決することである。
【0019】
図2を参照すると、本発明に係る方法の典型的な実施形態は、いくつかの記憶色(例えば、空色や若草色等)のための好適な色相角のリストを見出すことから始まる(ステップ110)。空色及び若草色のための好適な色相については数多くの研究結果が存在するが、それらの研究結果は上述した記憶色の各々についてのターゲット色相を決定する際に使用されることがある。明度差(dL)を分析するための彩度範囲を決定する際には、適切な数値の選択方法を決定するための距離関数が必要とされる。
【0020】
好適な色相角の各々について、図2に示される色相薄片に対する最大彩度値が決定される(ステップ120)。図2を参照すると、好適な色相角に対応する色相薄片が、未決定である他の変数とともに例示されている。第1に、高明度値及び低明度値に向かう各方向において、最大彩度値に対するパーセンテージが所定値(例えば、X%)である彩度値が見出される。そのため、本ステップでは、最大明度値の既定パーセントである2つの彩度値が選択される(図1のステップS130)。
【0021】
図1及び図2を参照すると、次のステップ(ステップ140)は、2つの彩度値により囲まれる範囲内の最適な明度曲線下の面積を、種々の方法により決定されうる彩度の関数として計算することである。
【0022】
面積計算において使用される既定パーセント(X%)の設定は、評価に用いられるターゲット色相の最大彩度値に基づいて決定される。例えば、若草色及び空色のための好適な色相はいずれも若干狭い範囲内にあるはずなので、異なる色相薄片間での最大彩度値の差は、色域の形状にはよるが、それ程大きくない。色相薄片の彩度値の既定パーセントを設定する目的は、面積の解析及び最終的な色相の選択において最大限に飽和された色のみを使用することである。
【0023】
例えば、以下のように個々のターゲット色相に対応する最大彩度値に応じて既定パーセントが設定される。
【0024】
・(各色相薄片に対応する)最大彩度値が30よりも小さい場合:既定パーセント(X%)を最大値の90%に設定して2つの彩度点(すなわち、領域Aの上限及び下限)を決定する。
【0025】
・(各色相薄片に対応する)最大彩度値が30と60の間である場合:既定パーセント(X%)を最大値の80%に設定して2つの彩度点を決定する。
【0026】
・(各色相薄片に対応する)最大彩度値が60よりも大きい場合:既定パーセント(X%)を最大値の70%に設定して2つの彩度点を決定する。
【0027】
上記の設定方法は、色相薄片に対応する最大彩度値が60よりも大きい場合、多くの色が中立軸から十分に離れておりターゲット領域に影響を及ぼすので、より大きい割合の色域内色が面積計算に使用されることになる。他方、色相薄片に対応する最大彩度値が30よりも小さい場合、中立軸から離れているためターゲット領域に影響を及ぼす色が少ないので、かなり小さい割合の色域内色が面積計算に使用されることになる。
【0028】
ターゲット色相薄片の2つの異なるカテゴリー内に最大彩度値が存在する状況が認められる場合には、最大彩度値の平均値が求められ、その平均値が面積計算用の既定パーセントを設定するために用いられる。
【0029】
例えば、最も好適なブルー色の色相角は270°であり、他の好適なブルー色の色相角は265°、273°及び268°を含んでいる。270°のブルー色相に対応するプリンターの測定データを解析することによる最大彩度値はC=50であり、他の三つのターゲット色相に対応する最大彩度値もまた30と60の間にある。よって、境界点として用いられる2つの彩度点を決定するための既定パーセントは最大彩度値の80%に設定されることができる。一方の彩度点は高明度値側に位置しており、もう一方の彩度点は低明度値側に位置しており、いずれもC=40であるが、これは最大彩度値の80%である。
【0030】
最大彩度線の上方に位置する曲線下の面積Aを決定するために、以下の積分式が用いられることができる。
【0031】
【数1】

【0032】
ここで、f(x)は最大彩度の直線に関連する明度値によって創出される関数を指定している。この関数f(x)は線形関数であっても非線形関数であってもよい。
【0033】
簡単な例によると、f(x)=−x+50であり、これは最大彩度直線に関連する曲線のプラス部分の面積を与える。積分の結果は50である。
【0034】
最大彩度直線の下方に位置する曲線下の面積を決定するために、以下の積分式が用いられることができる。
【0035】
【数2】

【0036】
同様の簡単な例を用いると、今回はf(x)=x−50であり、これは最大彩度直線に関連する曲線のマイナス部分の面積を与える。積分の結果は50である。よって、曲線下の合計面積Aは50である。この数値はその後の比較のために保存される。
【0037】
二番目に好適なブルー色の色相角は265°である。曲線下の面積を求めるために上記と同様の手順が用いられる。この処理はターゲット記憶色に対して望ましいと考えられる全ての色相角について繰り返される。これにより好適な色相角にそれぞれ対応する面積の一群が得られる。複数の好適な色相角のうちの一の好適な色相角についての面積が、より好適な色相角についての面積よりもはるかに大きい場合は、その色相角が色域マッピングのターゲットとして選択される(ステップ150)。好適な色相角についての面積どうしの間に大きな差がない場合は、最も望ましい色相が色域マッピングのターゲットとして選択される。
【0038】
上記の処理により、選択された記憶色のための複数の好適な色相角の面積の比較結果に基づいて、一の好適な色相角が選択されることができる。
【0039】
図3を参照すると、本発明を実現するための典型的なカラー画像の色再現システムが概略的に示されている。カラー画像の色再現システムは、一以上のコンピューター20及び/又はサーバー30(又は何らかの適切なデータ処理装置)に直接に、又は有線若しくは無線のネットワーク、専用ケーブル、又はプリンターに連結されたシリアルバスを介して間接的に連結されたカラープリンター10及び他のカラー又は白黒のプリンター12、14等を含んでいる。
【0040】
一以上のユーザー端末40(各々がディスプレイ及び入力装置を有しうる)は、オペレーター及び/又はユーザーにサーバー30及び/又はカラー画像色再現システムの残りの部分と接触することができるようにサーバー30に連結されている。その代わりに、サーバーがオペレーター及び/又はカラー画像の色再現システムの残りの部分と接触することができるようにディスプレイと入力装置に統合ユニットを有していてもよい。
【0041】
一般的にサーバー30はサーバー30の機能及び動作を制御し、コンピューター命令及び読み取り専用メモリー(ROM)34、ランダム・アクセス・メモリー、又はCPU32に連結されたデータ記憶装置36(ハードディスク・ドライブ等)にインストール又は保存されたプログラムを実行する中央制御装置(CPU)32である。一般的にサーバーもユーザー端末44との連結のためのローカル入力/出力(I/O)ポート42、及びデータ通信路16との連結のためのネットワークI/Oポート44を有している。コンピューター20の基本的構成要素はサーバー30と同様であると理解されるので、詳細については繰り返されない。
【0042】
サーバー30は好ましくはオンラインの印刷ジョブを間接的に受信するためのインターネット等のオープンな外部ネットワークに接続される。コンピューター20はプリンター12のローカルI/Oポート48を介してプリンター10に直接接続されることができるが、サーバー30はプリンター10のネットワークI/Oポート46を介してプリンター10に間接的に接続される。
【0043】
本発明の実施形態による好適なカラー画像の色再現システムにおいて、サーバー30はカラー画像の色再現用のソフトウェア・プログラムに制御されており、ユーザー又は顧客から組織内又はオンラインの印刷ジョブを受信し、印刷ジョブチケットを処理又は生成し、そして、印刷ジョブチケット及び印刷されるべきドキュメント又はファイル(「ソースドキュメント」又は「ソースファイル」)を一以上のプリンター10、12、及び14等に送信する。
【0044】
プリンター10、12、及び14の基本的構成要素はカラープリンター10内に例示されたのと同様であり、プリンター10の機能及び動作を制御するデータ処理装置又は制御ユニット50を含んでいる。プリンター10の制御ユニット50はROM(及び/又はRAM)52及びデータ記憶装置54に連結されている。本発明による方法及び処理を例示的に実現するソフトウェア・プログラムはコンピューター20又はサーバー30にインストールされることができるが、不揮発性の記憶媒体を含みうるROM(及び/又はRAM)52又はデータ記憶装置52に記憶されることもでき、制御ユニット50によってアクセスされ実行されることができる。また、制御ユニット50はプリンター10の画像処理ユニット56及び印刷エンジン58に連結されて、それらを制御することもできる。プリンター10にはプリンター制御パネル60が設けられている。制御パネル60はオペレーター又はユーザーによってアクセス可能であり、液晶ディスプレイ(LCD)方式の表示スクリーン等の表示スクリーン、及びオペレーター又はユーザーがプリンター10と交信し、プリンター10の機能及び動作を制御するためのキー、ボタン、タッチスクリーン等のユーザー入力装置を包含しうるユーザー・インタフェース(UI)を提供する。
【0045】
図2に例示された本発明の実施形態が実現される典型的なカラー画像の色再現システムは、コンピューター20、サーバー30、又はネットワーク16に連結されたスキャナー等の他の装置(不図示)を有することができる。上述のように、遠隔地のユーザー又は顧客はインターネット18を介して「オンライン」サーバー30又はプリンター10に接続されることができる。さらに、本プリント・ショップ・システムは、ネットワーク16に接続されていない多数の「オフライン」(又は「ネットワーク非接続」)装置(不図示)を有することができるが、これらの装置はフィニッシング装置やプリプレス装置等のように印刷システム又は色再現システム中で使用される装置であればいかなる種類のものであってもよい。
【0046】
本書において使用される「プリンター」という用語は、オフィス環境において典型的に見られる小型のデスクトップ型プリンター、又は大規模組織の印刷/コピー部門、或いは専門のプリント・ショップにおいて使用される大型の印刷システムでありうる。この用語はコピー機、又はコピー機、スキャナー、及び/又はファクシミリの機能を有する多機能(一体型)プリンターのような他の同様の画像再生装置及び文書処理装置をも包含しうる。上述したように、プリンターは、コンピューター又はサーバーに直接ローカル接続されてもよいし、コンピューター又はサーバーがプリンターによって処理されるべき印刷ジョブを印刷用ドキュメント又は画像をプリンター固有のフォームに変換するためにコンピューター又はサーバーに通常インストールされているコンピューター・ソフトウェア・プログラムであるプリンター・ドライバーによって生成し送信するために用いられる場合には、コンピューター又はサーバーにネットワーク経由で間接的に接続されてもよい。プリンターは異なるサイズ、色、紙種の用紙を格納する複数の用紙トレイを有することができる。さらに、プリンターはコレート印刷又は他のフィニッシング機能を実行するための複数の排紙トレイが設けられた高性能の排紙仕分け機構を備えることもできる。
【0047】
図3はカラー画像の色再現システムを示しているが、本発明はシステム又はネットワークのいかなる物理的環境にも限定されず、別々の場所にあるプリンターがサーバーに接続された分散型の環境を有するカラー画像の色再現システムにも適用可能である。特に、カラー画像の色再現システムの一以上の構成要素が仮想プライベート・ネットワーク(VPN)又はインターネットを用いた同様の手段によりシステムの残りの部分と通信可能であるのは当然のことである。
【0048】
本発明の方法及び処理を例示的に実現するためにカラー画像の色再現を最適化する部分を含むカラー画像の色再現の最適化ソフトウェア・プログラムは、コンピューター20、サーバー30、又はカラープリンター10の制御ユニット50にインストールされることができる。オペレーター又はユーザーがカラー画像の色再現用の最適化ソフトウェア・プログラムを実行する際、コンピューター20又はサーバー30は、本発明の方法を実現するためのカラー画像の色再現の最適化を含む同ソフトウェアの各種機能を実行する。カラー画像の色再現用の最適化ソフトウェアは、タッチパネル及び/又はマウス及びキーボードのような表示用モニターに連結されるか又はそれと一体化されたユーザー・インターフェース(UI)及び/又はグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)の有用な機能を活用することもできる。
【0049】
本発明による方法を実現するカラー画像の色再現用の最適化ソフトウェア・プログラムは、プリンター10のROM(及び/又はRAM)52又はデータ記憶ユニット54に格納されることができ、プリンター10のオペレーター又はユーザーにUI及び/又はGUIを提供するためのプリンター10の表示用パネル60の特徴及び機能を活用することでプリンター10の制御ユニット50によって実行されることができる。
【0050】
本出願において、カラー画像の色再現システム内の個々の装置は概して「カラー画像の色再現機器」又は「カラー画像の色再現装置」と称され、それらの各々はジョブの取り込み、ルーティング、編集、プリプレス、印刷、フィニッシング等のカラー画像の色再現のいずれかの局面を遂行する。種々のカラー画像の色再現機器又は装置は、カラー画像の色再現機器及び装置のメモリー内に存在し、そのプロセッサによって実行される種々のカラー画像の色再現用プログラムによって制御される。本出願において、「データ処理装置」という用語は、本発明の実施形態の種々の特徴を適切なハードウェア/ソフトウェアを用いて実現可能なあらゆるコンピューター、サーバー、制御ユニット、及び/又はデータ処理装置のことを幅広く意味している。
【0051】
本発明によるカラー画像の色再現の最適化方法には多くの利点がある。同方法は一定の彩度範囲に及ぶ所定の好適な色相角に対する明度のダイナミック・レンジを評価するための測定基準を提供する。また、同方法は、どの好適な色相が最大量の明度差を与えるかを決定するために、ある色相角の明度範囲を同一の彩度範囲に及ぶ近接する色相角の明度範囲と比較する評価手段を提供する。さらに、同方法は、カラー画像の色再現を最適化するために、容認可能な出力色を作り出す一方で、カラー画像の色再現における最大限の明度差を提供する。
【0052】
本発明の思想及び範囲から逸脱することなく本発明の方法について種々の修正及び変形がなされうることは当業者にとって明らかである。よって、本発明は特許請求の範囲及び均等の範囲に属する修正例及び変形例をも含有するよう意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー画像の色再現を最適化するための方法であって、
一の記憶色に対する複数の好適な色相角を見出すステップ(a)と、
前記複数の好適な色相角の各々について、その色相での最大彩度値を求めるステップ(b)と、
前記最大彩度値の所定パーセントにおける2つの彩度点を選択するステップ(c)と、
前記2つの彩度点の間の範囲に及ぶ彩度に対する明度の関数を積分して当該関数の曲線下の面積を計算するステップ(d)と、
前記面積の計算結果に基づいて前記記憶色に対する色域マッピングのターゲットとして用いられるべき一の好適な色相角を選択するステップ(e)と、を含む方法。
【請求項2】
前記所定パーセントは前記最大彩度値に応じて定まることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定パーセントは前記最大彩度値が30よりも小さい場合に90%であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定パーセントは前記最大彩度値が30及び60の間である場合に80%であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記所定パーセントは前記最大彩度値が60%よりも大きい場合に70%であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
彩度に対する明度の前記関数は非線形関数であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記複数の好適な色相角の各々について前記ステップ(b)、(c)、及び(d)を繰り返すステップをさらに有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
コンピューター・ソフトウェア・プログラムを格納する不揮発性の記憶領域を有するデータ処理装置、及び前記プログラムを実行する処理装置を有するカラー画像の色再現システムであって、
前記プログラムは、
一の記憶色に対する複数の好適な色相角を見出す手順(a)と、
前記複数の好適な色相角の各々について、その色相での最大彩度値を求める手順(b)と、
前記最大彩度値の所定パーセントにおける2つの彩度点を選択する手順(c)と、
前記2つの彩度点の間の範囲に及ぶ彩度に対する明度の関数を積分して当該関数の曲線下の面積を計算する手順(d)と、
前記面積の計算結果に基づいて前記記憶色に対する色域マッピングのターゲットとして用いられるべき一の好適な色相角を選択する手順(e)と、
を有する処理をカラー画像の色再現の最適化のために前記データ処理装置に実行させるように設定されたプログラム・コードを含有することを特徴とするシステム。
【請求項9】
前記所定パーセントは前記最大彩度値に応じて定まることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記所定パーセントは前記最大彩度値が30よりも小さい場合に90%であることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記所定パーセントは前記最大彩度値が30及び60の間である場合に80%であることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記所定パーセントは前記最大彩度値が60よりも大きい場合に70%であることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
彩度に対する明度の前記関数は非線形関数であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項14】
前記処理は、前記複数の好適な色相角の各々について前記手順(b)、(c)、及び(d)を繰り返す手順をさらに有することを特徴とする請求項8〜13のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項15】
カラー画像の色再現の最適化のための、データ処理装置を制御するプログラムであって、
一の記憶色に対する複数の望ましい色相角を見出す手順(a)と、
前記複数の好適な色相角の各々について、その色相での最大彩度値を求める手順(b)と、
前記最大彩度値の所定パーセントにおける2つの彩度点を選択する手順(c)と、
前記2つの彩度点の間の範囲に及ぶ彩度に対する明度の関数を積分して当該関数の曲線下の面積を計算する手順(d)と、
前記面積の計算結果に基づいて前記記憶色に対する色域マッピングのターゲットとして用いられるべき一の好適な色相角を選択する手順(e)と、
を有する処理をカラー画像の色再現の最適化のために前記データ処理装置に実行させるように設定されていることを特徴とするプログラム。
【請求項16】
前記所定パーセントは前記最大彩度値に応じて定まることを特徴とする請求項15に記載のプログラム。
【請求項17】
前記所定パーセントは前記最大彩度値が30よりも小さい場合に90%であることを特徴とする請求項16に記載のプログラム。
【請求項18】
前記所定パーセントは前記最大彩度値が30及び60の間である場合に80%であることを特徴とする請求項16に記載のプログラム。
【請求項19】
前記所定パーセントは前記最大彩度値が60よりも大きい場合に70%であることを特徴とする請求項16に記載のプログラム。
【請求項20】
彩度に対する明度の前記関数は非線形関数であることを特徴とする請求項15〜19のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項21】
前記処理は前記複数の好適な色相角の各々について前記手順(b)、(c)、及び(d)を繰り返す手順をさらに含むことを特徴とする請求項15〜20のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項22】
請求項15〜21のいずれか1つに記載のプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−75080(P2012−75080A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−104629(P2011−104629)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(507031918)コニカ ミノルタ ラボラトリー ユー.エス.エー.,インコーポレイテッド (157)
【Fターム(参考)】