説明

カラー画像重畳バーコード、カラー画像重畳バーコード生成方法および装置

【課題】見分けが容易で管理しやすく、高い表現力を持つカラー画像重畳バーコード、カラー画像重畳バーコード生成方法および装置を提供すること。
【解決手段】バーコード画像とコード領域用カラー画像と背景領域用カラー画像を用意し、バーコードリーダで読み取ったときにコード領域と背景領域が分離可能となるように、コード領域用カラー画像と背景領域用カラー画像を輝度補正や色補正する(S1)。次に、バーコード画像のバーコード領域を輝度補正や色補正されたコード領域用カラー画像で置き換え、背景領域を輝度補正や色補正された背景領域用カラー画像で置き換えてカラー画像重畳バーコード画像を生成する(S2)。次に、生成されたカラー画像重畳バーコード画像を出力する(S3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像重畳バーコード、カラー画像重畳バーコード生成方法および装置に関し、特に、見分けが容易で管理しやすく、カラー画像が十分に表現可能に重畳されたカラー画像重畳バーコード、カラー画像重畳バーコード生成方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
POSシステムなどではQRコードなどのバーコードを利用した商品管理が行われている。バーコードは、黒のバー部分と白の部分の組合せからなる。ここでは、バー部分をコード領域、白の部分を背景領域と称する。なお、コード領域は黒以外の色のこともある。バーコード自体からはその内容を理解することが難しいため、バーコードの近傍にバーコードの内容を示す情報を印刷することが一般的に行われている。また、バーコードに重畳させてバーコードの内容を示す情報を印刷することも提案されている。
【0003】
特許文献1には、バーコードの他に消費者への伝達情報を印刷するバーコード印刷方法が記載されている。これでは、バーコードリーダの照射光と同じ系統の第1の色調で消費者への伝達情報を印刷し、バーコードリーダの照射光と異なる系統の第2の色調でバーコードを印刷する。
【0004】
特許文献2には、バーコードと文字あるいは画像あるいは識別マークとを重ねて記録するバーコード記録方法が記載されている。これでは、バーコードを読み取る光学読み取り装置の読み取り性に実質的に影響を与えない色で文字あるいは画像あるいは識別マークを記録する。
【特許文献1】特開2002−329172号公報
【特許文献2】特開平5−135234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コード領域と背景領域のみからなるバーコードは、それ自体からその内容を理解することは困難であるので、管理しにくく、また、バーコード自体は、意味を持たない幾何学模様であるため、面白味に欠けるという課題もある。バーコードの近傍にその内容を示す情報を印刷する場合には、その分のスペースを必要とする。
【0006】
特許文献1,2に記載されたバーコード印刷(記録)方法では、バーコードリーダ(光学読み取り装置)の読み取りに影響しないような色でバーコード以外の情報を印刷(記録)する必要がある。従って、コード領域と文字、画像、識別マークなどの情報の領域とが別々であり、両者の色が異なっていることが必要である。この場合、文字、画像、識別マークなどの情報は、コード領域以外の部分で表されることになり、QRコードのように、コード領域の部分が多いバーコードでは、文字、画像、識別マークなどの情報を十分に表現できない場合も起こり得る。
【0007】
本発明の目的は、見分けが容易で管理しやすく、カラー画像が十分に表現可能に重畳されたカラー画像重畳バーコード、カラー画像重畳バーコード生成方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るカラー画像重畳バーコードは、バーコードを構成するコード領域と背景領域のうち、コード領域がコード領域用カラー画像で置き換えられ、背景領域が背景領域用カラー画像で置き換えられ、前記コード領域用カラー画像と前記背景領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値の範囲が互いに異なることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係るカラー画像重畳バーコードは、バーコードの周囲を囲むように、任意の模様のフレームを表す画素が付加されていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係るカラー画像重畳バーコード生成方法は、バーコードを構成するコード領域と背景領域のうち、コード領域がコード領域用カラー画像で置き換えられ、背景領域が背景領域用カラー画像で置き換えられ、前記コード領域用カラー画像と前記背景領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値の範囲が互いに異なるカラー画像重畳バーコードを生成するためのカラー画像重畳バーコード生成方法であって、少なくとも前記コード領域用カラー画像を、該コード領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値が一定範囲内に収まるように補正することにより、前記コード領域用カラー画像と前記背景領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値の範囲を互いに異ならせることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係るカラー画像重畳バーコード生成方法は、R,G,BまたはY、M、Cの輝度値の各々に対して任意関数による変換を適用することにより、前記コード領域用カラー画像を補正することを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係るカラー画像重畳バーコード生成方法は、前記コード領域用カラー画像の各画素の画素値の相互の大小関係が、補正の前後で保存されるように前記コード領域用カラー画像を補正することを特徴としている。
【0013】
また、本発明に係るカラー画像重畳バーコード生成方法は、前記コード領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値が周辺の輝度値と所定値超で異なる箇所に対しては、該箇所の輝度値を周辺の輝度値との差が前記所定値以下になるように補正した後、前記コード領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値が一定範囲内に収まるように補正することを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係るカラー画像重畳バーコード生成方法は、バーコード内の、符号領域以外の機能的な領域については、グレースケール化後の輝度値を前記一定範囲とは異なる範囲内に収まるように補正するか、一様輝度値に置き換えるかすることにより、高確率の読み取りが保証されるようにすることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係るカラー画像重畳バーコード生成方法は、バーコードを構成するコード領域と背景領域のうち、コード領域がコード領域用カラー画像で置き換えられ、背景領域が背景領域用カラー画像で置き換えられ、前記コード領域用カラー画像と前記背景領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値の範囲が互いに異なるカラー画像重畳バーコードを生成するためのカラー画像重畳バーコード生成方法であって、バーコードリーダによってカラー画像重畳バーコードを読み取った際に、コード領域と背景領域との分離を可能とするコード領域用の色および輝度範囲を求め、該色および輝度範囲に従って前記コード領域用カラー画像を補正することを特徴としている。
【0016】
また、本発明のカラー画像重畳バーコード生成装置は、バーコードを構成するコード領域と背景領域のうち、コード領域がコード領域用カラー画像で置き換えられ、背景領域が背景領域用カラー画像で置き換えられ、前記コード領域用カラー画像と前記背景領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値の範囲が互いに異なるカラー画像重畳バーコードを生成するためのカラー画像重畳バーコード生成装置であって、コード領域をコード領域用カラー画像で置き換え、背景領域を背景領域用カラー画像で置き換える手段と、前記手段での置き換えに先立って、少なくとも前記コード領域用カラー画像を、該コード領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値が一定範囲内に収まるように補正する手段を具備したことを特徴としている。
【0017】
さらに、本発明のカラー画像重畳バーコード生成装置は、バーコードを構成するコード領域と背景領域のうち、コード領域がコード領域用カラー画像で置き換えられ、背景領域が背景領域用カラー画像で置き換えられ、前記コード領域用カラー画像と前記背景領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値の範囲が互いに異なるカラー画像重畳バーコードを生成するためのカラー画像重畳バーコード生成装置であって、コード領域をコード領域用カラー画像で置き換え、背景領域を背景領域用カラー画像で置き換える手段と、前記手段での置き換えに先立って、バーコードリーダによってカラー画像重畳バーコードを読み取った際に、コード領域と背景領域との分離を可能とするコード領域用の色および輝度範囲を求め、該色および輝度範囲に従って前記コード領域用カラー画像を補正する手段を具備したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、コード領域をコード領域用カラー画像で置き換え、背景領域を背景領域用カラー画像で置き換えるので、見分けが容易で管理しやすく、高い表現力を持つバーコードを生成できる。また、コード領域用カラー画像と背景領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値の範囲が互いに異なるので、バーコード画像からバーコードを誤りなく読み取ることができる。
【0019】
また、バーコード内の、位置検出パターン、位置合わせパターン、タイミングパターンなどの、符号量域以外の機能的な領域については、特に高確率の読み取りが保証されるように補正することにより、バーコード読み取りの信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明を説明する。図1は、本発明に係るカラー画像重畳バーコードを生成するために素材およびそれにより生成されたカラー画像重畳バーコードの一実施形態を示す図である。
【0021】
まず、背景領域用カラー画像(a)、コード領域用カラー画像(b)、バーコード画像(c)を用意する。ここでは、バーコードのコード領域に置き換えるカラー画像をコード領域用カラー画像と称し、背景領域に置き換えるカラー画像を背景領域用カラー画像と称している。背景領域用カラー画像は白色画像も含むが、コード領域用カラー画像は模様や写真などの画像であり、一様色画像は含まない。
【0022】
本実施形態のコード領域用カラー画像は、ハート模様のカラー画像であり、ハート部分が第1の色、例えば赤色、ハート部分の外側の部分が第2の色、例えば青色である。コード領域用カラー画像としては、これに限らず、任意の模様や写真のカラー画像を用いることができる。
【0023】
次に、バーコード画像のコード領域をコード領域用カラー画像に置き換え、背景領域を背景用カラー画像に置き換える。なお、置き換えに先だって、少なくともコード領域用カラー画像は補正される。この補正については後述する。これにより、カラー画像重畳バーコード画像(d)が生成される。本実施形態の場合、カラー画像重畳バーコード画像(d)のハート部分に含まれるコード領域は赤色、その外側の部分に含まれるコード領域は青色となる。
【0024】
図2は、本発明に係るカラー画像重畳バーコード生成処理を示すフローチャートである。まず、ステップS1で、QRコードなどのバーコード画像と該バーコード画像に重畳するコード領域用カラー画像と背景領域用カラー画像を用意する。バーコードリーダでバーコード画像を読み取ったときにコード領域と背景領域を分離でき、バーコードを読み取ることができるようにするため、コード領域用カラー画像と背景領域用カラー画像それぞれを輝度補正や色補正する。ステップS1での処理の詳細は後述する。
【0025】
次に、ステップS2で、バーコード画像のコード領域を輝度補正や色補正されたコード領域用カラー画像で置き換え、背景領域を輝度補正や色補正された背景領域用カラー画像で置き換えることにより、カラー画像重畳バーコード画像を生成する。なお、バーコード画像とコード領域用カラー画像や背景領域用カラー画像のサイズを等しくする場合には、置き換えに先だって、ニアレストネイバー法などのバーコード画像の輪郭をぼやけさせない手法でバーコード画像を拡大あるいは縮小しておく。あるいはバーコード画像と同じサイズのコード領域用カラー画像および背景領域用カラー画像を最初から用意しておく。
【0026】
次のステップS3では、カラー画像重畳バーコード画像を出力する。ディスプレイ機器には、入力画像を自己のディスプレイのサイズに合わせて自動的に拡大あるいは縮小する機能を有するものがある。このようなディスプレイ機器でカラー画像重畳バーコード画像を表示し、表示されたカラー画像重畳バーコード画像からバーコードを読み取ろうとしたとき、拡大処理あるいは縮小処理で画像がぼやけてしまっていて読み取り結果に誤りが生じる場合がある。
【0027】
ディスプレイ上に表示されたカラー画像重畳バーコード画像からバーコードを読み取った際の誤りを低減するため、ディスプレイと同じサイズ、あるいは拡大処理や縮小処理が機能しない範囲のサイズに合わせてカラー画像重畳バーコード画像を出力するのが好ましい。
【0028】
例えば、携帯電話のQVGA液晶ディスプレイ(320×240画素)でカラー画像重畳バーコード画像を表示する場合、カラー画像重畳バーコード画像を240×len画素(ただし、lenは、拡大処理および縮小処理が機能しない範囲の垂直方向画素数)にサイズ変更し、このサイズに固定してカラー画像重畳バーコード画像を出力する。カラー画像重畳バーコード画像のサイズ変更は、画像の輪郭がぼやけない手法、例えばニアレストネイバー法で行う。
【0029】
カラー画像重畳バーコード画像を縦横等倍に拡大あるいは縮小し、その後、固定のサイズになるようにカラー画像重畳バーコード画像の周辺に適当な画素を埋めるようにしてもよい。その際、バーコードの形状変化を防ぐため、縦横の拡大あるいは縮小は、縦横同一で整数倍とするのが好ましい。カラー画像重畳バーコード画像を拡大あるいは縮小することなく、その周辺に画素を埋めるだけでもよい。
【0030】
図3は、周辺をフレームで埋めたカラー画像重畳バーコード画像の例を示す図である。バーコード画像に任意のカラー画像を重畳でき、また、その周囲に任意のフレームを付けることができるので、興味を持たせるカードなどとすることができる。
【0031】
次に、ステップS1での処理の詳細を説明する。カラー画像重畳バーコード画像をバーコードリーダで読み取り、その出力の各色輝度値R,G,BをY=l×R+m×G+n×Bでグレースケール化した後、固定値T1,T2によって閾値処理してコード領域と背景領域を分離するとする。ここで、0≦T1≦T2≦1とし、R,G,Bは0〜1の値をとり、l+m+n=1.0とする。
【0032】
このとき、カラー画像重畳バーコード画像をバーコードリーダで読み取ってグレースケール化して得られる輝度値Yが、背景領域の殆どの画素でY≧T2となり、コード領域の殆どの画素でY<T1となるならば、閾値処理でバーコードを読み取ることができる。つまり、上記条件を満たすようにコード領域用カラー画像および背景領域用カラー画像を輝度補正や色補正しておけば、バーコードを読み取ることができる。ここでは数値が大きくなるほど輝度が高くなると想定している。なお、閾値処理では、全ての画素について正しい結果が得られる必要はなく、QRコードのように誤り訂正機能を有しているものでは正しい結果が得られる確率が低くなってもよい。
【0033】
ここで、背景領域用カラー画像として白色画像、コード領域用カラー画像として写真などの様々な色や階調を持つカラー画像を入力し、コード領域用カラー画像を線形変換して補正する場合の逆変換を考える。
【0034】
コード領域用カラー画像の画素をY=l×R+m×G+n×Bでグレースケール化したとき、殆どの画素でY<T1となる場合には、そのまま閾値処理でコード領域を分離できる。したがって、コード領域用カラー画像はそのまま使用できる。そうでない場合には、例えばZ=aX+b(ただし、XはR,G,B、a>0)でR,G,Bそれぞれを線形変換することを考える。ここで、コード領域用カラー画像の所定割合の画素でY<T1となるように係数a,bを定める。
【0035】
コード領域用カラー画像に対する線形変換Z=aX+bが(0,0)の点を通る場合にはb=0であり、線形変換後の輝度値Yは、Y=l×aR+m×aG+n×aBとなる。この輝度値YがY<T1となるには、係数aは、a<T1/(l×R+m×G+n×B)となればよい。したがって、コード領域用カラー画像のすべての画素についてaを計算し、Y<T1となる画素数の割合を考慮して係数aを定めることができる。
【0036】
コード領域用カラー画像のすべての画素でY<T1を満たすことが要求される場合には、係数aは、コード領域用カラー画像のすべての画素について計算した係数aの最小値とすればよい。また、コード領域用カラー画像の80%の画素でY<T1を満たせばよい場合には、コード領域用カラー画像のすべての画素について計算した係数aを大きな値からソートし、コード領域用カラー画像の画素数×0.8番目の画素についてのaの値より小さな値を係数aとして定めればよい。
【0037】
補正には、上記例の線形変換の変換式に限らず任意の変換式を用いることができ、R,G,Bに対して異なる変換式を用いることもできる。なお、R,G,Bに対して同じ変換式を用いた場合、R,G,Bの大小関係が保存されて変換前後で同じ色の雰囲気が得られる。また、R,G,Bに対して異なる変換式を用いた場合にはR,G,Bの大小関係が保存されるとは限らず、変換前後の色の雰囲気を変えることができる。
【0038】
図4は、輝度補正後のコード領域用カラー画像と背景領域用カラー画像のヒストグラムの例を示す図である。横軸はグレースケール化後の輝度値Yを示し、縦軸は画素度数を示す。背景領域用カラー画像は、白色画像であるため、Y=1近傍に集中するヒストグラムとなる。一方、コード領域用カラー画像は、補正されて背景領域用カラー画像のヒストグラムとは分離されたヒストグラムを有する。このヒストグラムの差に基づいてバーコードを読み取ることができる。
【0039】
QRコードなどの2次元バーコードには、位置検出パターン、位置合わせパターン、タイミングパターンなどの、符号領域以外の機能的な領域が含まれている。符号領域についてはバーコードに含まれる誤り訂正機能で修正できるので、T1からT2の間に多少の画素が存在などしても構わない。しかし、機能的な領域については誤り訂正機能で修正できない。このため、補正後の機能的な領域がバーコードリーダで確実に読み取られるようしておくのが好ましい。これは、例えば、機能的な領域を補正前に予め暗くしておいたり、バーコード画像が生成された後に、機能的な領域を一様の低輝度画素で置き換えたりすることで達成できる。機能的な領域すべてに対して確実に読み取れるように補正を行うのではなく、特に重要な位置検出パターンのみに確実に読み取れるように補正を行うようにしてもよい。
【0040】
コード領域用カラー画像をグレースケール化した結果、周辺画素の輝度値と大きく異なる領域が存在するような場合、周辺の輝度値と大きく異なる領域がT1以下となるようにそのまま補正を行うと、多くの領域で画素値変化が小さくなり画像が認識しにくくなる場合がある。そのような場合には、周辺の輝度値と大きく異なる領域のみについて周辺画素の輝度値との輝度差が以前よりも小さい一定範囲内に収まるようにR,G,Bの輝度値を変更し、その後、輝度補正を行えば、多くの領域で画素値変化が大きくなり画像の変化が分かりやすくなる。また、中間調にヒストグラムが偏っていて画像が認識しにくくなる場合には、コード領域用カラー画像のヒストグラムを平坦化してコントラストをある程度強めてから補正するようにしてもよい。このように輝度値変化の大きいカラー画像をバーコードに重畳すると、結果的にコード部分のみに画像が表示されているカラー画像重畳バーコードにおいても元の画像を認識しやすくなる。
【0041】
ステップS1において輝度補正や色補正が可能な範囲は、バーコードリーダに依存する。バーコード画像をカメラで撮影すれば、その写真における輝度で白色と赤色を容易に分離できるが、バーコードリーダが、例えば赤色光で読み取っている場合には白色と赤色が分離しにくくなる。
【0042】
コード領域用カラー画像と背景領域用カラー画像とで同化する色や輝度の範囲は、バーコード画像を読み取るバーコードリーダに依存して異なるので、読み取るバーコードリーダに応じてコード領域用カラー画像と背景領域用カラー画像の色や輝度範囲を異ならせるように補正することにより、コード領域と背景領域を分離可能なカラー画像重畳バーコード画像を生成することができる。これは、バーコードリーダの特性から読み取り可能範囲を求め、この読み取り可能範囲に収まるように色や輝度補正する場合の逆変換を考えればよい。
【0043】
図5は、バーコードリーダが赤色光で読み取るとした場合に用いることができるコード領域用カラー画像(a)および背景領域用カラー画像(b)の例を示す図である。コード領域用カラー画像(a)は、ハート模様であり、ハート部分は青色、その外側は緑色である。また、背景領域用カラー画像(b)は、ハートとダイヤを重畳した模様であり、ハート部分は赤色、ダイヤ部分はピンク、その外側は白色である。青色と緑色は赤色光の反射が少なく、赤色とピンクと白では反射が多いので、コード領域と背景領域を分離してバーコードを読み取ることができる。
【0044】
なお、背景領域用カラー画像がコード領域用カラー画像より輝度が低いとは限らず、要は、バーコードリーダが、背景領域とコード領域を、その色や輝度の範囲の違いに基づいて分離できればよい。複数のバーコードリーダで共通して分離可能な輝度や色の範囲内でバーコード画像を生成することもできる。
【0045】
さらに、照明条件の関係でバーコードリーダで読み取って得られるカラー画像重畳バーコードが全体的に少々暗くなり、ダイナミックレンジが小さくなる場合には、T1値を小さく設定することでT1とT2の差分を広げるなど、想定される照明条件に応じて輝度補正の範囲を調整するようにしてもよい。また、バーコードリーダに入力する前処理として、カラーバーコードを撮影し、ダイナミックレンジが狭まってしまった画像輝度値のダイナミックレンジを広げてからバーコードリーダに入力してもよい。
【0046】
以上、実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、種々に変形することができる。例えば、上記実施形態では、背景領域用カラー画像として白色画像を用いたが、コード領域用カラー画像と同一のカラー画像あるいはその他のカラー画像を用いることができる。この場合、背景領域用カラー画像の所定割合の画素がY≧T2を満たすことが必要である。これは、コード領域用カラー画像の場合と同様に補正することで実現できる。背景領域用カラー画像に対する線形変換Z=aX+bが(1,1)の点を通る場合、係数bは、b=1−aで求めることができる。
【0047】
図6は、背景領域用カラー画像をコード領域用カラー画像と同一とした場合のバーコード画像の例を示す図である。この場合のバーコード画像は、コード領域と背景領域に跨って1つのカラー画像が重畳されたものとなるが、コード領域に比べて背景領域の輝度値を大きくして(薄くして)バーコードを読み取り可能としている。
【0048】
また、GUIとして、コード領域用パレットと背景領域用パレットを予め用意し、ユーザが、その中から適当な輝度や色を選択してコード領域用カラー画像を作成できるようにすることもできる。この場合、コード領域用パレットと背景領域用パレットは、バーコードリーダで読み取ったときに分離可能なものとする。例えば、図7に示すように、背景領域用パレットとして白色、コード領域用パレットとして輝度可変の赤と緑、青とオレンジなどの互いに合う2色を用意しておけば、ユーザは、好みの2色を選択してバーコードに重畳するカラー画像を描画できる。画像例には、選択した2色の画像の例が表示する。
【0049】
本発明は、1つのバーコードに1枚のカラー画像を重畳する場合に限らず、複数、例えば4つのバーコードを並べ、その全体に1枚のカラー画像を重畳したり、1枚のカラー画像の一部にバーコードを重畳するなど、バーコード数とカラー画像数の関係は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係るバーコードの一実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係るカラー画像重畳バーコード生成の処理を示すフローチャートである。
【図3】周辺をフレームで埋めたカラー画像重畳バーコード画像の例を示す図である。
【図4】輝度補正後のコード領域用カラー画像と背景領域用カラー画像のヒストグラムの例を示す図である。
【図5】バーコードリーダが赤色光で読み取るとした場合のコード領域用カラー画像および背景領域用カラー画像の例を示す図である。
【図6】背景領域用カラー画像をコード領域用カラー画像と同一とした場合のカラー画像重畳バーコード画像の例を示す図である。
【図7】パレットを利用してコード領域用カラー画像を作成する場合の説明図である。
【符号の説明】
【0051】
S1・・・コード領域用カラー画像と背景領域用カラー画像の補正、S2・・・カラー画像重畳バーコード画像の生成、S3・・・カラー画像重畳バーコード画像の出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーコードを構成するコード領域と背景領域のうち、コード領域がコード領域用カラー画像で置き換えられ、背景領域が背景領域用カラー画像で置き換えられ、前記コード領域用カラー画像と前記背景領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値の範囲が互いに異なることを特徴とするカラー画像重畳バーコード。
【請求項2】
バーコードの周囲を囲むように、任意の模様のフレームを表す画素が付加されていることを特徴とする請求項1に記載のカラー画像重畳バーコード。
【請求項3】
バーコードを構成するコード領域と背景領域のうち、コード領域がコード領域用カラー画像で置き換えられ、背景領域が背景領域用カラー画像で置き換えられ、前記コード領域用カラー画像と前記背景領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値の範囲が互いに異なるカラー画像重畳バーコードを生成するためのカラー画像重畳バーコード生成方法であって、
少なくとも前記コード領域用カラー画像を、該コード領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値が一定範囲内に収まるように補正することにより、前記コード領域用カラー画像と前記背景領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値の範囲を互いに異ならせることを特徴とするカラー画像重畳バーコード生成方法。
【請求項4】
R,G,BまたはY、M、Cの輝度値の各々に対して任意関数による変換を適用することにより、前記コード領域用カラー画像を補正することを特徴とする請求項3に記載のカラー画像重畳バーコード生成方法。
【請求項5】
前記コード領域用カラー画像の各画素の画素値の相互の大小関係が、補正の前後で保存されるように前記コード領域用カラー画像を補正することを特徴とする請求項3に記載のカラー画像重畳バーコード生成方法。
【請求項6】
前記コード領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値が周辺の輝度値と所定値超で異なる箇所に対しては、該箇所の輝度値を周辺の輝度値との差が前記所定値以下になるように補正した後、前記コード領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値が一定範囲内に収まるように補正することを特徴とする請求項3に記載のカラー画像重畳バーコード生成方法。
【請求項7】
バーコード内の、符号領域以外の機能的な領域については、グレースケール化後の輝度値を前記一定範囲とは異なる範囲内に収まるように補正するか、一様輝度値に置き換えるかすることにより、高確率の読み取りが保証されるようにすることを特徴とする請求項3に記載のカラー画像重畳バーコード生成方法。
【請求項8】
バーコードを構成するコード領域と背景領域のうち、コード領域がコード領域用カラー画像で置き換えられ、背景領域が背景領域用カラー画像で置き換えられ、前記コード領域用カラー画像と前記背景領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値の範囲が互いに異なるカラー画像重畳バーコードを生成するためのカラー画像重畳バーコード生成方法であって、
バーコードリーダによってカラー画像重畳バーコードを読み取った際に、コード領域と背景領域との分離を可能とするコード領域用の色および輝度範囲を求め、該色および輝度範囲に従って前記コード領域用カラー画像を補正することを特徴とするカラー画像重畳バーコード生成方法。
【請求項9】
バーコードを構成するコード領域と背景領域のうち、コード領域がコード領域用カラー画像で置き換えられ、背景領域が背景領域用カラー画像で置き換えられ、前記コード領域用カラー画像と前記背景領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値の範囲が互いに異なるカラー画像重畳バーコードを生成するためのカラー画像重畳バーコード生成装置であって、
コード領域をコード領域用カラー画像で置き換え、背景領域を背景領域用カラー画像で置き換える手段と、
前記手段での置き換えに先立って、少なくとも前記コード領域用カラー画像を、該コード領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値が一定範囲内に収まるように補正する手段を具備したことを特徴とするカラー画像重畳バーコード生成装置
【請求項10】
バーコードを構成するコード領域と背景領域のうち、コード領域がコード領域用カラー画像で置き換えられ、背景領域が背景領域用カラー画像で置き換えられ、前記コード領域用カラー画像と前記背景領域用カラー画像のグレースケール化後の輝度値の範囲が互いに異なるカラー画像重畳バーコードを生成するためのカラー画像重畳バーコード生成装置であって、
コード領域をコード領域用カラー画像で置き換え、背景領域を背景領域用カラー画像で置き換える手段と、
前記手段での置き換えに先立って、バーコードリーダによってカラー画像重畳バーコードを読み取った際に、コード領域と背景領域との分離を可能とするコード領域用の色および輝度範囲を求め、該色および輝度範囲に従って前記コード領域用カラー画像を補正する手段を具備したことを特徴とするカラー画像重畳バーコード生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−338251(P2006−338251A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161249(P2005−161249)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】