説明

カルボキシメチルセルロースナトリウム塩の粉末状組成物及びカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の溶解方法

【課題】 CMC−Naの溶解時間を簡便に短縮させることのできるCMC−Naの粉末状組成物及びCMC−Naの溶解方法を提供する。
【解決手段】 CMC−Naを短時間で水に溶解させるためのCMC−Naの粉末状組成物であって、CMC−Naに対してK値が50以下のPVPを1〜10重量%配合した混合物からなるCMC−Naの粉末状組成物、及びCMC−Naの粉末状組成物を水に溶解するCMC−Naの溶解方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(以下、CMC−Naという)を短時間で水に溶解させることのできるCMC−Naの粉末状組成物、及び溶解時間を短縮することができるCMC−Naの溶解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMC−Naは水に対する分散性が悪く、水中へ投入した時にママコ(継粉)になり易い。このため、水に溶解しようとする際には、充分強力な撹拌を行ないながら少量ずつ添加することが必要であった。
【0003】
しかしながら、溶解させるまでに相当時間が必要となるため、従来より下記の(A)〜(D)のCMC−Na即溶方法が提案され報告されている。
【0004】
すなわち、(A)溶解性を増す為に加熱する方法。(B)エタノール、グリセリン等のCMC−Na不溶性溶媒を少量用いてCMC−Naを分散させた後、水に溶解する方法。(C)ママコの発生を防止して溶解時間を短縮することを狙い、CMC−Naをグリオキサールで処理する方法。(D)ママコ発生を防止する別の方法として、CMC−Naを熱処理することにより水分散性を向上させる方法、である。
【0005】
しかし、上記(A)の方法は、CMC−Naの粘度低下を招き、好ましくなく、(B)の方法は、使用するCMC−Na水溶液中のエタノール、グリセリンなどが障害になることがあり、除去工程が別途必要となり、また(C)の方法は非常に手間がかかり、かつ媒質である水のpHをアルカリ性にしなければ完全な溶解は望めず、さらにグリオキサール自体、食品添加物として好ましくなく、用途の制限を余儀なくされ、(D)の方法は、遊離のカルボキシル基の加熱処理によってエステル結合を生成させることを特徴としているが、このため、水溶液のpHが酸性側になりやすく、食品添加物基準の定めるpH6.0〜8.5に適合させるためには、例えばpH調製など煩雑な操作を必要とするという問題があった。
【0006】
なお、通常は粉末形状を呈するCMC−Naを、顆粒状(グラニュータイプ。1.1μm〜188μm(16〜80#))に仕上げ、これを水中に投入する方法がある。
【0007】
この方法は、ママコを作らず、ゆるやかな撹拌で溶解できるという点では優れているが、当然のことながら粉末状品を顆粒状品に仕上げる時の煩雑な製造操作が必要であるばかりか、それほど溶解時間を短縮させるには至らなかった。
【0008】
そこで、本出願人は、2重量%水溶液の25℃における粘度が5mpa・s以下である低粘度CMC−Naの水溶液を予め調製し、この水溶液中で、CMC−Naを溶解することを提案している(特許文献1)。
【0009】
しかし、上記従来の溶解方法はいずれも、CMC−Naの即溶性を確保する代償として、煩雑な操作や予めの低粘度水溶液の調整、及び用途的制限を余儀なくされていた。
【特許文献1】特開平8−269101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、CMC−Naの溶解時間を簡便に短縮させることのできるCMC−Naの粉末状組成物及びCMC−Naの溶解方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、次のような点に着目し本発明の完成に到達したものである。すなわち、CMC−Naを水に溶解する時、水に対する分散性が悪いことによってママコの生成をし、このママコの生成が溶解時間を延ばしている。従って、ママコの生成を抑えることが、CMC−Naの即溶性につながる。ママコ生成防止法として、CMC−Naに低K値のポリビニルピロリドン(以下、PVPという)を粉末配合しておくことで、CMC−Naを水に投入した時、水にPVP粉末が先に溶解することとCMC−Naと水との瞬時の接触を抑えることで、ママコの生成が少なくなり即溶性につながることを見出したものである。
【0012】
すなわち、請求項1に記載のCMC−Naの粉末状組成物は、CMC−Naを短時間で水に溶解させるためのCMC−Naの粉末状組成物であって、CMC−Naに対してK値が50以下のPVPを1〜10重量%配合した混合物からなることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項2に記載のCMC−Naの溶解方法は、CMC−Naに対してK値が50以下のPVPを1〜10重量%配合した混合物からなるCMC−Naの粉末状組成物を、水に溶解することを特徴とする方法である。
【0014】
CMC−Naの即溶化は、粉末状のCMC−NaにKちが50以下のPVPの粉末を配合した混合物からなるCMC−Naの粉末状組成物を水に投入し溶解することで可能となるが、これを理論的に説明することは難しい。
【0015】
おそらく、CMC−Naと水との接触時に、PVPがCMC−Naと水との瞬時の接触を防止し、ママコの生成を抑えることが即溶性に結びつくと考えられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、CMC−NaにPVPを粉末で配合しておくことで、CMC−Naの水に対する溶解時間を短縮させることができ、また、K値が50以下のPVPを配合することでPVPを配合しているにもかかわらずCMC−Na水溶液の粘度の変動(増加)を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明で使用し得るCMC−Naとしては、特に限定されることはないが、一般的に、無水物1%水溶液の粘度が5〜20000mpa・sのものが挙げられる。また、用途により異なるが0.2〜20%で溶解され使用される。エーテル化度は0.4〜2.5とほぼ全範囲に効果がある。
【0018】
上記CMC−Naは、例えば市販されているセロゲンF−5A、F−7A(第一工業製薬(株)製)を使用することができ、食品添加物、香粧品原料基準、飼料添加物、日局方の公的基準に適合していることなどから用途面からはどのようにも採用することができる。
【0019】
また、本発明に使用し得るPVPとしては、K値が50以下、より好ましくは40以下のものである。PVPはK値がおよそ15〜105のものが市販されているが、K値が50を超えるとPVPの重合度が大きくなりCMC−Na水溶液の粘度を増加させ好ましくない。
【0020】
上記PVPの使用可能な市販品としては、例えば、BASF社製のLuviskol K−17(K値15〜19、10重量%水溶液のpH3.0〜7.0)のパウダー製品、Luviskol K−30(K値27〜33、10重量%水溶液のpH3.0〜7.0)パウダー製品を挙げることができる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
PVPは、CMC−Na100重量%に対して、1〜10重量%、好ましくは1〜7重量%配合される。1重量%未満ではPVPを使用する効果を得ることができず、10重量%を超えると水溶液の粘度が増加傾向を示すようになり好ましくない。
【実施例】
【0022】
[1.CMC−Naの粉末状組成物の作製]
CMC−Na(表1に記載のエーテル化度が0.72〜1.43、及び無水物1%水溶液の粘度が15〜9800mpa・sのもの)100重量%に対して、PVP(BASF社製、Luviskol K−17のパウダー製品)1〜10重量%を表1に記載の配合量で均一に混合した。
【0023】
[2.溶解時間の測定]
500mlビーカーに25℃にて純水400mlを採り、スリーワンモーターで50mmφの4枚羽根プロペラにて1000rpmで撹拌した。この撹拌中の純水に1分かけてCMC−Naの粉末状組成物をCMC−Na分として4.0gを除々に投入し、ママコがなくなり完全に溶解するまでの所要時間を測定した。結果を表1に示す。
【0024】
なお、CMC−Na粉末状組成物の投入量は、CMC−Na分に換算して投入している。例えば、PVP無配合の場合の投入量は4.0gとし、PVPを10重量%配合している場合は4.4g、PVPを1重量%配合している場合は4.04gを投入した。
【0025】
[3.CMC−Na水溶液の粘度測定]
前記2項で完全溶解させた水溶液をBM型粘度計、回転数60rpm、25℃条件で3分間粘度計を回転させて粘度(mpa・s)を測定し、結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
表1に示す通り、本発明によればCMC−NaにPVPを配合した粉末状組成物を用いることで、CMC−Naの溶解時間を短縮することができ、またPVPを配合しているにもかかわらずCMC−Na水溶液の粘度の変動を抑えられることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明にかかるCMC−Na水溶液は食品用、医薬用、化粧品用、飼料用などの分散剤として有用に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩を短時間で水に溶解させるためのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の粉末状組成物であって、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩に対してK値が50以下のポリビニルピロリドンを1〜10重量%配合した混合物からなることを特徴とするカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の粉末状組成物。
【請求項2】
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩に対してK値が50以下のポリビニルピロリドンを1〜10重量%配合した混合物からなるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の粉末状組成物を、水に溶解することを特徴とするカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の溶解方法。

【公開番号】特開2006−316166(P2006−316166A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139933(P2005−139933)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】