説明

カルボキシメチルセルロースベースのフィルム、そのフィルムから製造される可食性食品キャスティング及びその使用方法

食品に対して香味添加剤を適用するために有用な可食性フィルムが開示される。可食性フィルムは一般的に、可食性カルボキシメチルセルロースフィルム形成性樹脂及び可食性可塑剤を含む。カルボキシメチルセルロースフィルム形成性樹脂は、好ましくは、異なる分子量を有する二つの異なるカルボキシメチルセルロースのブレンドである。可食性フィルムは、好ましくはさらなる添加剤、例えば可食性界面活性剤及び可食性粘着性付与剤を含む。可食性フィルムは、適切に食品香味成分を受け入れて、食品に風味を適用するために使用できる風味付けされたフィルムを形成できる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関係する出願の相互参照)
2007年8月2日に出願した米国仮特許出願第60/953,650の、35U.S.C.119(e)に基づく利益を主張する。
【0002】
(背景)
(開示の分野)
この開示は、例えば食品キャスティングとして風味付けされた可食性フィルムを使用することにより、食品に対して香味添加物(flavoring additive)を適用するために一般的に使用される可食性フィルム組成物に関する。具体的には、この開示は、カルボキシメチルセルロースフィルム形成性樹脂、可塑剤、界面活性剤及び粘着性付与剤(tackifier)を含む可食性フィルムに関する。
【0003】
(関係する技術の簡単な説明)
可食性フィルムは、香味添加物を食品に与えるため、食品工業で使用できる。このフィルムを形成して、食品に対する用途において少なくとも部分的に分解させて、食品に対して香味添加物を迅速(例えば、数秒〜数分の程度)に与えることができる。迅速に分解されるフィルムの例は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンベースのフィルムが挙げられる。
【0004】
食品に対して所望の風味を与えるための延長された接触時間を要求する香味添加物は、コラーゲンを用いて適用できる。食品はコラーゲン浴に浸され、香味添加物は、コラーゲンを用いて食品に接着される。しかしながら、食品が十分に熟成(例えば約2-3週間)した後は、消費する前にコラーゲンを食品から取り除かなければならない。コラーゲンを除去する処理は、一般的に時間がかかり、労働が集中する処理である。
【0005】
従って、延長された期間にわたって食品に対して所望の風味を与えるために使用できるフィルムを得ること、及びそのフィルムが食品を消費する前にフィルムを取り除くための時間のかかる処理の不利な点を回避することが有利であろう。
【0006】
(概要)
この開示は、可食性カルボキシメチルセルロースフィルム形成性樹脂、可食性可塑剤、可食性界面活性剤、及び可食性粘着性付与剤を含む、可食性フィルムを提供する。可食性カルボキシメチルセルロースは、好ましくはナトリウムカルボキシメチルセルロースである。可食性カルボキシメチルセルロースフィルム形成性樹脂は、好ましくは、低分子量成分と、高分子量成分とを含み、前記低分子量成分は、高分子量成分の分子量よりも低い分子量を有する。一態様において、可食性カルボキシメチルセルロースフィルム形成性樹脂は、(a)より低い第一の2%水溶液粘度を有する第一のカルボキシメチルセルロース、及び(b)より高い第二の2%水溶液粘度を有する第二のカルボキシメチルセルロースのブレンドである。好ましくは、第一の2%水溶液粘度は、25℃で約0.01Pa・s(10cP)〜約0.1Pa・s(100cP)(又は約0.025Pa・s(25cP)〜約0.05Pa・s(50cP))であり、第二の2%水溶液粘度は、25℃で約0.1Pa・s(100cP)〜約1Pa・s(1000cP)(又は約0.2Pa・s(200cP)〜約0.8Pa・s(800cP))である。カルボキシメチルセルロースは、好ましくは約0.5〜約1の置換の程度を有する。
【0007】
さらなる可食性フィルム成分の中で、好ましい可塑剤は、グリセリン(特に)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、モノアセチン、トリアセチン、トリエチルシトレート、ソルビトール、1,3-ブタンジオール、D-グルコノ-1,5-ラクトン及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい可食性界面活性剤はひまわりレシチンであり、好ましい可食性粘着性付与剤は変性した食物デンプンである。
【0008】
好ましくは、可食性フィルムは、約20μm〜約100μm(又は約40μm〜約75μm)の厚さを有する。
【0009】
可食性フィルムの乾燥質量に基づいて、可食性フィルムは、好ましくは、約37質量%〜約80質量%の可食性カルボキシメチルセルロースフィルム形成性樹脂、約15質量%〜約45質量%の可食性可塑剤、約0.2質量%〜約3質量%の可食性界面活性剤、及び約2質量%〜約15質量%の可食性粘着性付与剤を含む。
【0010】
本開示の他の側面は、より低い第一の2%水溶液粘度を有する第一のカルボキシメチルセルロースを約35質量%〜約70質量%(又は約45質量%〜約65質量%)、より高い第二の2%水溶液粘度を有する第二のカルボキシメチルセルロースを約2質量%〜約10質量%(又は約3質量%〜約7質量%)、及び可塑剤を約15質量%〜約45質量%(又は約20質量%〜約40質量%)含んだ可食性フィルムを提供する。質量濃度は、可食性フィルムの乾燥質量に基づく。
【0011】
本開示の更に他の側面は、開示されたいかなる可食性フィルム及び食品香味成分(food flavoring ingredient)を含んだ風味付けされたフィルムを提供する。好ましい食品香味成分は、スパイス、ハーブ、スモークフレーバー、グリルフレーバー、ガーリックフレーバー、ピザフレーバー、天然果実フレーバー、人工果実フレーバー及びこれらの組み合わせを含む。食品香味成分は、可食性フィルムの外側表面に付着させるか、及び/又は可食性フィルムの成分としてキャストすることができる。
【0012】
本開示の他の側面は、以下の工程を含む方法を用いた、食品に風味を与える方法を提供する:
(a)開示されたいずれかの可食性フィルムを食品に適用する工程、
(b)食品香味成分を可食性フィルムに添加して、これにより風味付けされたフィルムを形成する工程、及び
(c)食品をあらかじめ定めた時間、風味付けしたフィルムと接触した状態を維持し、それにより食品に風味を与える工程、ここで工程(a)と(b)はいかなる順番で行っても良い。一態様において、可食性フィルムの外側表面を粘着性にするために十分な量の水を可食性フィルムに噴霧し、次いで食品香味成分を粘着性の外側表面に付着させる工程により、可食性フィルムに食品成分を添加する。他の態様において、水と食品香味成分を含んだ水性混合物を可食性フィルムに噴霧する工程により、食品成分を可食性フィルムに添加する。更に他の態様において、可食性フィルムの成分としてキャストする食品香味成分を有する風味付けされたフィルムは、食品に対して直接適用され、次いで食品はあらかじめ決められた時間風味付けされたフィルムと接触した状態を保ち、それにより食品に対して風味を与える。好ましい食品は、ソーセージ及びハムが挙げられる。可食性/風味付けされたフィルムを適用する好ましい方法は、食品を包装する工程が挙げられる。あらかじめ決められた時間は、好ましくは、風味付けされたフィルムが、食品中に存在する水分により完全に分解され、溶解され及び/又は食品中に吸収されるために十分な時間であり、例えば約1週間〜約4週間(又は約2週間〜約3週間)である。
【0013】
さらなる側面及び利点は、以下の詳細な説明の検討により、当業者に明らかとなるであろう。開示された組成物、物品及び方法は、種々の形態における態様であることが可能である一方、以降の記載は具体的な態様を含むが、その開示が実例を示すためのものであり、本発明が本明細書に記載された具体的な態様に制限されることを意図していないという理解を伴う。
【0014】
(詳細な説明)
本明細書で記載される可食性フィルムは、一般的に、可食性カルボキシメチルセルロースフィルム形成性樹脂及び可食性可塑剤を含む。カルボキシメチルセルロースフィルム形成性樹脂は、好ましくは、異なる分子量を有する2つの異なるカルボキシメチルセルロースのブレンドである。可食性フィルムは、好ましくは、付加的な添加剤、例えば可食性界面活性剤及び可食性粘着性付与剤を含む。
【0015】
本明細書で使用するように、用語“可食性”は、使用される量においてヒト及び/又は他の動物により安全に摂取できる個々の成分及びその結果得られる組成物を言う。
【0016】
他に記載しない限り、本明細書において開示される組成濃度は、成分の合計質量の乾燥質量に基づいて与えられる(質量%)。濃度を決定するための乾燥質量は、全ての樹脂、可塑剤、界面活性剤、粘着性付与剤及び任意の第二の添加剤の質量を含むが、いかなる溶媒(例えば水)の質量は除かれる。
【0017】
可食性カルボキシメチルセルロースフィルム形成性樹脂
カルボキシメチルセルロース(“CMC”)は、本開示の可食性フィルムのための適切なフィルム形成性樹脂である。CMCは、水溶性であり、セルロース繰り返し単位のヒドロキシ基の少なくともいくつかがカルボキシメチル官能基(即ち-CH2COOX)で誘導体化されているセルロースベースポリマーである。カルボキシメチル官能基は、それらの酸形態(即ちX=H)及び/又は塩形態(即ちX=Na、K等)で存在し得る。好ましくは、CMCはナトリウムCMCとして存在する。好ましくは、CMCは、約0.5〜約1の置換度を有し、ここで、置換度は、カルボキシメチル官能基で誘導体化された無水グルコースモノマー当たりのヒドロキシル基の平均数(3の最大値以下)を表す。
【0018】
CMCは適切なフィルム形成性樹脂であり、それはこの樹脂から形成されたフィルムの表面が少量の水と接触することで粘着性になり、さらにそのフィルムは迅速に溶解又は分解しないためである。表面の粘着性は、フィルムの機械的に完全な状態を破壊することなく、食品香味成分を容易にフィルムに付着させることを許容する。その一方、他のセルロースベースの可食性フィルム形成性樹脂(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(“HPMC”))は、一般的に単独のフィルム形成性樹脂成分としては適切ではなく、それは水と接触した場合に、これら樹脂が過度に容易に溶解し及び/又は十分な粘着性にならないためである。しかしながら、付加的なセルロースベースの可食性フィルム形成性樹脂は、CMCに対する補助剤(complement)として使用でき、例えば、粘着性にするさらなるフィルム形成性樹脂として使用されるメチルセルロース(“MC”)が挙げられる。
【0019】
CMCフィルム形成性樹脂は、好ましくは、2つの成分、即ち、低分子量成分と高分子量成分を含む。低分子量成分は、より多いCMC成分であり、可食性フィルム成分の水性キャスティング溶液中における固形分の適切なレベルを便利に増加させる。水性キャスティング溶液の固形分含有量が最適なレベルより減らされると、乾燥時間が増加し、キャスティングラインのスピードが低下し、美観に関する乾燥の欠陥が得られたフィルムに形成し得る。高分子量成分は可食性フィルムに機械的な強さを与えて、フィルムがより容易に処理され、及び破裂することなく種々の形状の食品に適用することを許容する。例えば、2つの分子量分布を有するCMCフィルム形成性樹脂において、2つの成分が存在し得、ここで、分布の第一の形態(即ち、低分子量成分)は、分布の第二の形態(即ち、高分子量成分)よりもより低いピークの分子量を有する。
【0020】
CMCフィルム形成性樹脂の2つの分子量の成分は、好ましくは、異なる溶液粘度(例えば、例えば25℃での、CMCの2質量%水溶液の粘度)を有する2つのCMCのブレンドとして存在する。例えば、CMCフィルム形成性樹脂は、好ましくは第一のCMC(即ち、低分子量成分)及び第二のCMC(即ち高分子量成分)を含み、ここで、第一のCMCの溶液粘度は、第二のCMC溶液粘度よりも低い。好ましくは、第一のCMCの2%水溶液粘度は、25℃で約0.01Pa・s(10cP)〜約0.1Pa・s(100cP)の範囲であり、第二のCMCの2%水溶液粘度は、25℃で、約0.1Pa・s(100cP)〜約1Pa・s(1000cP)の範囲である。より好ましくは、第一のCMCの2%水溶液粘度は、25℃で約0.025Pa・s(25cP)〜約0.05Pa・s(50cP)の範囲にあり、第二のCMCの2%水溶液粘度は、25℃で約0.2Pa・s(200cP)〜約0.8Pa・s(800cP)の範囲にある。
【0021】
適切なナトリウムCMCは、ヘルクレス社(Hercule, Inc)(ウィルミントン(Wilmington)、DE)から、アクアロン(AQUALON)ブランドの下で、市場で入手可能である。アクアロンナトリウムCMCの特に好ましいグレードは、7LF(約0.65〜約0.9の置換度及び25℃で約0.025Pa・s(25cP)〜約0.05Pa・s(50cP)の2%水溶液粘度を有する)及び7M8SF(約0.65〜約0.9の置換度及び25℃で約0.2Pa・s(200cP)〜約0.8Pa・s(800cP)の2%水溶液粘度を有する)があげられる。
【0022】
可食性フィルム中におけるCMCフィルム形成性樹脂の濃度は、約30質量%〜約80質量%、又は約37質量%〜約80質量%、例えば約48質量%〜約72質量%である。CMCフィルム形成性樹脂が、第一及び第二のCMC成分を含んでいる場合には、第一のCMC成分の濃度は約30質量%〜約80質量%、又は約35質量%〜約70質量%、例えば約45質量%〜約65質量%である。同様に、第二のCMC成分の濃度は、約30質量%以下、又は約2質量%〜約10質量%、例えば約3質量%〜約7質量%である。
【0023】
可塑剤
可食性フィルムは、少なくとも一つの可食性可塑剤を含む。可塑剤は、ポリマー構造に浸透し、分子間の水素結合をバラバラにし、分子間の引力を永久に低くする。組成物に取り込まれた場合、可塑剤は、ガラス転移温度を低下させ、得られたフィルムの加工可能性及び柔軟性を向上する。適切な可塑剤は、グリセリン、ポリエチレングリコール(例えば、低分子量の液体、例えば分子量、MW200、MW300及びMW600を有する液体)、プロピレングリコール、モノアセチン、トリアセチン、トリエチルシトレート、ソルビトール、1,3-ブタンジオール、D-グルコノ-1,5-ラクトン及びこれらの組み合わせがあげられるが、これらに限定されない。グリセリンが好ましい可塑剤である。可食性フィルムにおける全ての可塑剤の濃度は、好ましくは約10質量%〜約50質量%、又は約15質量%〜約45質量%、例えば約20質量%〜約40質量%である。
【0024】
添加剤
可食性フィルムは、好ましくは、可食性界面活性剤及び可食性粘着性付与剤/増量剤を、他の任意の第二の添加剤と共に含む。
【0025】
可食性界面活性剤は、主に、可食性フィルム成分の水溶液における湿潤剤として機能し、これにより溶液をキャスティングする工程において基材(例えば、ステンレス鋼)の良好な濡れが得られる。界面活性剤は、同様に、剥離剤としても機能する。適切な界面活性剤は、ひまわりレシチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート60又はポリソルベート80)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体及びこれらの組み合わせがあげられる。ひまわりレシチン(例えば、レセナー(Lasenor),S.L.、バルセロナ、スペインから入手可能)が好ましい界面活性剤である。可食性フィルム中の全ての界面活性剤の濃度は、好ましくは、約0.1質量%〜約5質量%、又は約0.2質量%〜約3質量%、例えば約0.5質量%〜約2質量%である。
【0026】
可食性粘着性付与剤は、可食性フィルムの表面の粘着性を増加させ、フィルムがその表面に適用される食品香味成分を付着させる能力を向上する。粘着性付与剤は、同様に、可食性フィルムの外観を向上させる。即ち、粘着性付与剤が存在しないと、キャスティングの間に上昇する乾燥の欠点が明白であり、一般的に均一でない外観が存在する。適切な粘着性付与剤は、天然及び変性したデンプン、例えばデキストリン、マルトデキストリン、及びアルファ化したコムギデンプンがあげられる。変性した食物デンプン(例えばピュアコート(PURE-COTE)B790:グレインプロセッシングコーポレーション(Grain Processing Corp.)マスカティーン、IAから入手可能)が好ましい粘着性付与剤である。可食性フィルム中の全ての粘着性付与剤の濃度は、好ましくは約1質量%〜約20質量%、又は約2質量%〜約15質量%、例えば約2質量%〜約8質量%である。
【0027】
可食性フィルムは、任意で、第二の添加剤、例えば、抗ブロッキング剤(例えばシリカ)、増粘剤(例えば、天然ポリサッカライドガム)、防腐剤(例えば、ナトリウムベンゾエート、カリウムソルベート)、消泡剤(例えば、アンチフォーム(ANTIFOAM)AF,オルコ社(Orco, Inc)、東プロビデンス、RIから入手可能なポリシロキサンエマルション)、粘度減少剤(viscosity reducer)(例えば、塩化ナトリウム)を含むことができる。いずれの第二の添加剤も、使用される量においてヒト又は動物によって摂取可能な物であるべきである。好ましい第二の添加剤は、消泡剤及び粘度減少剤である。存在する場合には、消泡剤の濃度は、約1質量%以下、又は約0.01質量%〜約0.5質量%、例えば約0.1質量%〜約0.3質量%である。同様に、粘度減少剤の濃度は、約4質量%以下、又は約0.1質量%〜約2質量%、例えば約0.2質量%〜約1質量%である。
【0028】
開示された可食性フィルムを形成する(例えば溶液キャスティングにより)ために使用できる組成物の上記成分に加えて、結果得られる可食性フィルムは、その表面上に被覆された任意の添加剤を含むことができる。例えば、上記デンプン及びデキストリン(例えば、アルファ化したコムギデンプン及びアルファ化したコメデンプン)を、可食性フィルムの上に被覆させて、水と接触した際のフィルムの粘着性を高めることができる。
【0029】
可食性フィルムの形成
可食性フィルムは、好ましくはCMCフィルム形成性樹脂、可塑剤、界面活性剤、粘着性付与剤及び全ての第二の添加剤の水性混合物を溶液キャスティングすることにより調製される。結果得られるフィルムは、いかなる適切な膜厚をも有することができ、膜厚は好ましくは約20μm〜約100μm、又は約40μm〜約75μm、例えば約50μmである。
【0030】
例えば、適切なキャスティング溶液は、蒸留水中で調製される約14質量%の合計固形物である。好ましくは、全てのCMCではない成分は、適切な量の蒸留水中で最初に混合される。CMC成分は、ドライブレンド(即ち1以上のCMC成分が使用される場合)され、キャスティング溶液を穏やかにかき混ぜかつ加熱(60℃まで)しながら、非常にゆっくり(即ち、30分ごとに合計CMC成分の約10%)とCMCではない水溶液に対して添加される。CMC成分が完全に溶解した場合、攪拌を止め、キャスティング溶液を60℃の温度で維持して、一晩溶液を脱気させる。次いで、溶液を、90℃まで加熱されたステンレス鋼の表面上に、約350μmのウェット膜厚でドクターブレードアセンブリー(doctor blade assembly)からキャストされる。次いでキャスティング溶液を乾燥させて、約50μmの膜厚を有するフィルムを形成させる。本発明に従っておりかつこの方法で形成される適切な可食性フィルムが、表1に示される。
【0031】
表1−可食性フィルム組成
【表1】

【0032】
風味付けされたフィルム及び風味付けされた食品
風味付けされたフィルムは、食品香味成分を可食性フィルムに添加することにより形成できる。次いで、風味付けされたフィルムは、種々の方法において食品に対して適用され、風味を食品に対して与えることができる。例えば、食品は、風味付けされたフィルムから形成される風味付けされた可食性食品キャスティング中に包装できる。包装/キャスティングは、食品香味成分の均等な分布、及び食品のその次の用途を促進する。包装された食品は、次いで、延長された期間(即ち時間、日にち、週又はより長い程度で、即ち、例えば、約1〜4週間又は約2〜3週間)に渡って貯蔵される。風味付けされたフィルムと食品の間の延長された接触は、フィルムの風味を食品に与えることを可能にする。好ましくは、風味付けされたフィルムは、食品中に自然に存在する水分によって、自然に分解され、溶解し、及び/又は食品に吸収される。この自然の過程が望ましく、それは、従来の風味付けされた食品キャスティングを除去する時間のかかる工程を行う必要性を排除するためである。
【0033】
本開示の風味付けされたフィルム中で使用する食品香味成分は、いかなる種々の天然及び/又は人工の風味の成分をあげることができる。例えば、スパイス、ハーブ、スモークフレーバー、グリルフレーバー、ガーリックフレーバー、ピザフレーバー、天然又は人工果実フレーバー又は食品で普通に使用される他の人工又は天然フレーバーがあげられる。香味添加剤に加えて、他の食品向上成分(例えば、褐変剤(browning agent))を、風味付けされたフィルムに添加できる。
【0034】
食品香味成分を、いくつかの方法において、例えば、食品香味成分を可食性フィルムの外側表面に対して付着させることにより、可食性フィルムに対して添加できる。食品香味成分が粒状固形物((例えばスパイス、ハーブ)として入手できる場合、可食性フィルムは最初に、可食性フィルムのいかなる顕著な溶解も起こすことなく、可食性フィルムの表面を粘着性にするために十分な少量の水を噴霧される。次いで、固形物の食品香味成分が、粘着性の可食性フィルム表面に付着し、これにより風味付けされたフィルムが形成される。食品香味成分が水性混合物(例えば液体煙(liquid smoke))として入手可能である場合、食品香味成分を直接、可食性フィルム上に噴霧して、上記のように粘着性の表面を有する風味付けされたフィルムを形成できる。可食性フィルムは、水及び水性混合物のいかなる溶解した成分も吸収する。水性混合物に分散されたいかなる成分も、フィルムの粘着性により可食性フィルムの表面に付着する。上記いずれの場合においても、風味付けされたフィルムは、続いて食品に対して適用できる。代わりに、最初に、可食性フィルムを食品に対して適用して、続いて食品香味成分を上記のように可食性フィルムに対して添加できる。
【0035】
代わりに、上記水性キャスティング溶液に対して食品香味成分を添加して、次いで食品香味成分を可食性フィルムの成分としてキャスティングすることにより、風味付けされたフィルムを直接キャストすることができる。この場合において、食品香味成分は、好ましくは水溶性であり、それは該成分が溶解して、キャスティング溶液中(即ち、結果得られるフィルム中)に均一に分散されるためである。食品香味成分が水溶性であるか又は水不溶性であるかに関わりなく、食品香味成分を結果得られるフィルムの機械特性を下げる量で使用するべきではない。
【0036】
開示された風味付けされたフィルムを使用するために適切である食品は、特に限定されない。特に適切な食品の例は、肉及び肉製品があげられ、例えばソーセージ及びハムである。食品とハーブ及び/又はスパイスを、食品に風味を与えるために十分な延長した熟成期間(例えば、約2〜3週間)接触させることにより、このような食品に対して独特の風味が好ましく与えられる。食品をハーブ及び/又はスパイスで風味をつけられた可食性フィルム中に包装して、次いで熟成させることができる、即ち、食品中に自然に存在する水分は、熟成期間の最後までに、風味付けされたフィルムを分解し、溶解させ及び/又は吸収するために十分な水分である。
【0037】
CMCベースの可食性フィルムは、前記の風味付けされたフィルムにおいて使用するために適切なフィルムを形成する特性を有する。フィルムは、十分に強くかつ柔軟であり、それは、これらが食品に対してフィルムを適用するための自動的な工程において容易に処理できるためである(例えば、可食性フィルム中に食品を入れるための包装工程)。フィルムは、フィルムに対して種々の食品香味成分を添加できるようにするために十分に粘着性である。フィルムは、さらに、水溶解性の所望の中間レベルを有する。即ち、フィルムは、水との接触においてすぐに分解/溶解せず、覆う物を食品上に形成することを許容する;さらに、フィルムは、最終的には分解され/溶解して、別のやり方の時間のかかる処理工程を排除する。
【0038】
以上の記載は、理解を明確にするためだけに与えられ、いかなる不必要な制限がそこから理解されるべきではなく、本発明の範囲内での変形は、当業者に明らかである。

本明細書全体を通して、組成物は成分又は材料を含む物として記載されている場合、他に記載のない限り、組成物は、列挙された成分又は材料のいかなる組み合わせから実質的になり、又はこれらからなることが予期される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可食性カルボキシメチルセルロースフィルム形成性樹脂、
可食性可塑剤、
可食性界面活性剤、及び
可食性粘着性付与剤、
を含むことを特徴とする可食性フィルム。
【請求項2】
前記可食性カルボキシメチルセルロースフィルム形成性樹脂が、ナトリウムカルボキシメチルセルロースを含む、請求項1に記載の可食性フィルム。
【請求項3】
前記可食性カルボキシメチルセルロースフィルム形成性樹脂が、低分子量成分と、高分子量成分とを含み、低分子量成分が、高分子量成分の分子量よりも低い分子量を有する、請求項1に記載の可食性フィルム。
【請求項4】
前記可食性カルボキシメチルセルロースフィルム形成性樹脂が、(a)第一の2%水溶液粘度を有する第一のカルボキシメチルセルロース、及び(b)第二の2%水溶液粘度を有する第二のカルボキシメチルセルロースを含み、前記第一の2%水溶液粘度が、前記第二の2%水溶液粘度よりも低い、請求項1に記載の可食性フィルム。
【請求項5】
前記第一の2%水溶液粘度が、25℃で約0.01Pa・s(10cP)〜約0.1Pa・s(100cP)であり;及び
前記第二の2%水溶液粘度が、25℃で約0.1Pa・s(100cP)〜約1Pa・s(1000cP)である、請求項4に記載の可食性フィルム。
【請求項6】
前記第一の2%水溶液粘度が、25℃で約0.025Pa・s(25cP)〜約0.05Pa・s(50cP)であり;及び
前記第二の2%水溶液粘度が、25℃で約0.2Pa・s(200cP)〜約0.8Pa・s(800cP)である、請求項5に記載の可食性フィルム。
【請求項7】
カルボキシメチルセルロースが、約0.5〜約1の置換度を有する、請求項1に記載の可食性フィルム。
【請求項8】
前記可食性可塑剤が、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、モノアセチン、トリアセチン、トリエチルシトレート、ソルビトール、1,3-ブタンジオール、D-グルコノ-1,5-ラクトン及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の可食性フィルム。
【請求項9】
前記可食性可塑剤が、グリセリンを含む、請求項8に記載の可食性フィルム。
【請求項10】
前記可食性界面活性剤が、ひまわりレシチンを含む、請求項1に記載の可食性フィルム。
【請求項11】
前記可食性粘着性付与剤が、変性した食物デンプンを含む、請求項1に記載の可食性フィルム。
【請求項12】
前記可食性フィルムが、約20μm〜約100μmの膜厚を有する、請求項1に記載の可食性フィルム。
【請求項13】
前記可食性フィルムが、
可食性フィルムの乾燥質量に基づいて約37質量%〜約80質量%の前記可食性カルボキシメチルセルロースフィルム形成性樹脂、
可食性フィルムの乾燥質量に基づいて約15質量%〜約45質量%の前記可食性可塑剤、
可食性フィルムの乾燥質量に基づいて約0.2質量%〜約3質量%の前記可食性界面活性剤、及び
可食性フィルムの乾燥質量に基づいて約2質量%〜約15質量%の前記可食性粘着性付与剤を含む、請求項1に記載の可食性フィルム。
【請求項14】
可食性フィルムの乾燥質量に基づいて、約35質量%〜約70質量%の、第一の2%水溶液粘度を有する第一のカルボキシメチルセルロース、
可食性フィルムの乾燥質量に基づいて、約2質量%〜約10質量%の、第二の2%水溶液粘度を有する第二のカルボキシメチルセルロース、
可食性フィルムの乾燥質量に基づいて、約15質量%〜約45質量%の可塑剤を含む可食性フィルムであって、第一の2%水溶液粘度が、第二の2%水溶液粘度よりも低いフィルム。
【請求項15】
前記第一のカルボキシメチルセルロースと、第二のカルボキシメチルセルロースが、それぞれ、ナトリウムカルボキシメチルセルロースを含む、請求項14に記載の可食性フィルム。
【請求項16】
前記第一の2%水溶液粘度が、25℃で約0.025Pa・s(25cP)〜約0.05Pa・s(50cP)の範囲であり、及び
前記第二の2%水溶液粘度が、25℃で約0.2Pa・s(200cP)〜約0.8Pa・s(800cP)の範囲である、請求項14に記載の可食性フィルム。
【請求項17】
前記可食性可塑剤が、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、モノアセチン、トリアセチン、トリエチルシトレート、ソルビトール、1,3-ブタンジオール、D-グルコノ-1,5-ラクトン及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項14に記載の可食性フィルム。
【請求項18】
前記可食性可塑剤が、グリセリンを含む、請求項17に記載の可食性フィルム。
【請求項19】
前記可食性フィルムが、約40μm〜約75μmの膜厚を有する、請求項14に記載の可食性フィルム。
【請求項20】
可食性フィルムが:
可食性フィルムの乾燥質量に基づいて、約45質量%〜約65質量%の前記第一のカルボキシメチルセルロース、
可食性フィルムの乾燥質量に基づいて、約3質量%〜約7質量%の前記第二のカルボキシメチルセルロース、及び
可食性フィルムの乾燥質量に基づいて、約20質量%〜約40質量%の前記可塑剤を含む、請求項14に記載の可食性フィルム。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか1項に記載の可食性フィルム、及び
食品香味成分を含む、風味付けされたフィルム。
【請求項22】
前記食品香味成分が、スパイス、ハーブ、スモークフレーバー、グリルフレーバー、ガーリックフレーバー、ピザフレーバー、天然果実フレーバー、人工果実フレーバー及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項21に記載の風味付けされたフィルム。
【請求項23】
前記食品香味成分が、可食性フィルムの外側表面に付着されている、請求項21に記載の風味付けされたフィルム。
【請求項24】
食品香味成分が、可食性フィルムの成分としてキャストされている、請求項21に記載の風味付けされたフィルム。
【請求項25】
(a)請求項1から24のいずれかに記載の可食性フィルムを食品に適用する工程、
(b)食品香味成分を可食性フィルムに添加して、それにより風味付けされたフィルムを形成する工程、及び
(c)あらかじめ決められた時間風味付けされたフィルムを食品と接触させて、それにより風味を食品に与える工程を含む方法であって、工程(a)及び(b)がいかなる順番でも行うことができる、風味を食品に与える方法。
【請求項26】
前記食品が、ソーセージ及びハムからなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程(a)が食品を可食性フィルムで包装する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
工程(b)が、可食性フィルムの外側表面を粘着性にするために十分な量の水を可食性フィルムに噴霧し、次いで食品香味成分を粘着性の外側表面に付着させる工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
工程(b)が、水及び食品香味成分を含んだ水性混合物を可食性フィルムに噴霧する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
あらかじめ決められた時間が、風味付けされたフィルムが、食品中に存在する水分によって、完全に分解され、溶解され及び/又は食品中に吸収されるために十分な時間である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
あらかじめ決められた時間が、約1週間〜約4週間である、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
(a)請求項24の風味付けされたフィルムを食品に適用する工程、及び
(b)あらかじめ決められた時間、食品と風味付けされたフィルムの接触した状態を維持し、それにより食品に風味を与える工程を含む、食品に風味を与える方法。
【請求項33】
前記食品が、ソーセージ及びハムからなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
工程(a)が、風味付けされたフィルムで食品を包装する工程を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
あらかじめ決められた時間が、風味付けされたフィルムが、食品中に存在する水分によって、完全に分解され、溶解され及び/又は食品中に吸収されるために十分な時間である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
あらかじめ決められた時間が、約1週間〜約4週間である、請求項32に記載の方法。

【公表番号】特表2010−535038(P2010−535038A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520211(P2010−520211)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/071868
【国際公開番号】WO2009/018503
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(508122415)モノソル リミテッド ライアビリティ カンパニー (8)
【Fターム(参考)】