説明

カルボキシル基含有ポリオキシエチレン誘導体の精製方法

【課題】分子量2,000〜100,000のカルボキシル基含有ポリオキシエチレン誘導体から不純物を分離する。
【解決手段】
ポリオキシエチレン誘導体の5質量倍以上のトルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチルを使用し、前記ポリオキシエチレン誘導体を溶解して溶液とする。マグネシウム、ケイ素およびアルミニウムからなる群より選ばれた一種または二種以上の元素の酸化物と水酸化物の少なくとも一方を含む無機系吸着剤を溶液に対してポリオキシエチレン誘導体の0.5〜10質量倍添加することで、スラリーを生成させる。25℃以上の温度でスラリーを攪拌する。スラリーをろ過して得られたろ過ケーキに、トルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチルを添加し、さらにろ過を行う。ポリオキシエチレン誘導体の5質量倍以上のメタノール、エタノール、2-プロパノールをろ過ケーキに添加してろ過し、得られたろ液からポリオキシエチレン誘導体を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子量のカルボキシル基含有ポリオキシエチレン誘導体の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリペプチド、酵素、抗体や遺伝子、オリゴ核酸などを含む核酸化合物、核酸医薬やその他の生理活性物質に血中滞溜性や標的部位へのターゲティング機能などを付加する素材として、ポリオキシエチレン誘導体は非常に多く使用されている。これはその立体反発効果のために他の生体成分との相互作用が低いためであり、ポリオキシエチレン誘導体で修飾した生理活性物質、またはリポソームなどをポリオキシエチレン誘導体で修飾したドラッグキャリアは、非修飾のものより体内での長い血中滞溜性を発揮することが知られている。また、この効果は高分子量のポリオキシエチレン誘導体である程、大きいことが報告されている。さらに、このポリオキシエチレン誘導体の末端に活性基や抗体を結合させることで、ターゲティング機能の付加も可能であり、ポリオキシエチレン誘導体はドラッグデリバリーシステムの分野において非常に有用で欠かすことのできない素材となっている。その中でもカルボキシル基を持つポリオキシエチレン誘導体は様々な活性エステル基の中間体として非常に重要な原料である。これを使用して製造される薬物の性能や安全性の観点から、カルボキシル基を持つポリオキシエチレン誘導体はより高純度で、不純物の少ないものが求められている。現在、カルボキシル基を持つポリオキシエチレン誘導体には様々な骨格、または他の官能基を持つものが開発されており、その製造方法により副生する不純物は様々である。以下にその例を示す。
【0003】
カルボキシル基を持つポリオキシエチレン誘導体は、一般的には末端に水酸基をもつポリオキシエチレン誘導体を原料とし、末端水酸基をカルボキシル基へ酸化させることで合成できる。通常、ポリオキシエチレン誘導体の末端変性反応の場合、高分子末端の反応であるため、分子中の反応部位濃度が低下し、反応率が悪化して水酸基が残存してしまう。また、分子量が大きくなるほど反応液の粘性が上昇し、反応率が悪化して未反応の水酸基が残存する。マルチアーム型の水酸基数が多いポリオキシエチレン誘導体の場合では、末端変性時に未反応水酸基数の異なる不純物が生成してしまう。一般的には末端水酸基体と末端カルボキシル体では同じポリオキシエチレン誘導体であるため精製は困難で、特に分子量が大きくなるほど、それぞれの物性が近似してくるため、分離精製は困難である。また、このような末端未反応水酸基が残存したポリオキシエチレン誘導体の場合、次の活性エステル化において、二量化が進行し、活性エステル体の純度を著しく低減してしまう。また、水酸基体や二量体のような不純物が残存した場合、後工程での薬剤修飾反応時にも高分子不純物として残存するため、得られる薬剤が不均一となり、製剤としては問題となる。
【0004】
この末端にカルボキシル基をもつポリオキシエチレン誘導体の精製方法としては、以下に示すイオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー精製が知られている(特許文献1(US5,298,410):特許文献2(特表2008-514693))。これらの特許文献においては、メトキシポリエチレングリコールに含まれるジオール体を除去する目的のために、水酸基をカルボキシル基へ変性させた後、イオン交換クロマトグラフィーにてモノカルボキシル体とジカルボキシル体を分離、分取する方法が開示されている。具体的な精製方法としては、末端カルボキシル基のメトキシポリエチレングリコール誘導体(分子量2万)を蒸留水に溶解して約2%水溶液とし、イオン交換樹脂にチャージした後、蒸留水を流して不純物と目的物を分離させている。得られた分画分は更に希釈され濃度約1%の水溶液となる。pH調整後、ジクロロメタンにて抽出、脱水、結晶化を行うことで精製を行っているが、上記のようにイオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー精製の場合、試料を高希釈(PEG濃度1〜2%水溶液)とする必要がある。これは、目的物が高分子末端のみのカルボキシル体であり、イオン交換樹脂との相互作用が極端に低いためである。また、分画後の希薄な水溶液から水を除き、目的物を得るためには大容量の抽出装置が必要となる。また、精製から目的物の回収までの所要時間を考慮しても効率が悪く、イオン交換クロマトグラフィーによる精製は工業的な製法としては問題がある。
【0005】
カルボキシル基を持つポリオキシエチレン誘導体のもうひとつの例として、メトキシポリオキシエチレン誘導体をアミノ酸のようなカルボキシル基を含有する化合物のアミノ基やチオール基に化学的に結合させ合成する方法がある。
【0006】
具体例を挙げると、特許文献3(US05932462)において、リジンの2つのアミノ基にメトキシポリオキシエチレン誘導体(分子量2万)を2本導入したポリオキシエチレン誘導体(分子量4万)の合成方法とその精製方法が記載されている。この場合の不純物は、分子量2万の未反応のメトキシポリオキシエチレン誘導体とリジンに1本導入されたもの(分子量2万)、更にメトキシポリオキシエチレン誘導体(分子量2万)中の不純物であるジオール体(分子量4万)がリジンに導入されたもの(分子量4万以上)、リジン中の不純物である2量体にポリオキシエチレン誘導体が3本導入されたもの(分子量4万以上)などが挙げられる。
【0007】
以上のような不純物の精製方法として、特許文献3(US05932462)においてはイオン交換樹脂のカラムクロマトグラフィーを提案している。具体的には、ポリオキシエチレン誘導体の濃度が0.2%となるように調整した水溶液を、イオン交換樹脂のカラムにチャージし、イオン交換水を溶離液として分画を行っている。この際、分子量2万の不純物が目的物よりも先に流出し、その後、目的物が溶出し、目的物の後からは、分子量が4万以上の不純物、及び分子量2万のリジンに1本メトキシポリオキシエチレン誘導体が導入された不純物が溶出してくる。不純物と目的物とを分画する為、精製中は溶出する溶液を細かく分画、分析して、目的物のみが含まれる水溶液を回収する必要がある。さらにこの方法は高分子量のポリオキシエチレン誘導体を分離する方法であり、前記の方法以上にカラムへのチャージ試料を希釈する必要がある(溶液濃度0.2%)。また、水溶液中での精製の為、その後、抽出、脱水、濃縮、結晶化の工程が必要であり、操作が非常に煩雑である。精製量に対する所要時間、使用装置、精製に使用した蒸留水や有機溶媒の処理を考慮すると、前記の方法と同様にカラムクロマトグラフィーでの精製は工業的に不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US 5,298,410
【特許文献2】特表2008-514693
【特許文献3】US 05932462
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、主成分中に含まれる不純物を削減し、高純度かつ高分子量であるカルボキシル基を持つポリオキシエチレン誘導体を製造する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、高分子量のポリオキシエチレン誘導体をトルエンや酢酸エチルなどの有機溶剤中で、マグネシウム、ケイ素およびアルミニウムからなる群より選ばれた一種または二種以上の元素の酸化物と水酸化物の少なくとも一方を含む無機系吸着剤を用いて吸着操作を行い、目的のカルボキシル基を持つポリオキシエチレン誘導体を吸着させてろ過することにより、不純物であるカルボキシル基を持たないポリオキシエチレン誘導体をろ液側に分離する。さらに、ろ紙上の吸着剤を再度エタノールなどのアルコール溶剤をもちいて、目的のカルボキシル基を持つポリオキシエチレン誘導体を吸着剤から脱着させてろ過することにより、カルボキシル基を複数持つような不純物を吸着剤に残存させて単離する方法であり、不純物、目的物の分子量に関らず分離し、高純度かつ高分子量のポリオキシエチレン誘導体を得ることができる精製方法である。
【0011】
本発明によれば、カラムクロマトグラフィーを行うことなく、吸着剤をろ過助剤のように始めからポリオキシエチレン誘導体を溶解させた溶液中に混合させてろ過する形態のみで、非常に簡便に精製することができる。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の方法に係る。
一般式[1]で示される分子量2,000〜100,000のカルボキシル基含有ポリオキシエチレン誘導体から不純物を分離する精製方法であって、下記(A)〜(E)の各工程を有する方法。
【0013】
【化1】


(式中、Zが2〜8個の活性水素を持つ多価アルコール、アミノ酸またはペプチドの残基であり、Y1及びY2がエーテル結合、アミド結合、エステル結合、ウレタン結合、カーボネート結合、2級アミノ基、チオエーテル結合、ジスルフィド結合、チオエステル結合、またはこれらを含むアルキレン基であり、Polymer1及びPolymer2が直鎖のポリオキシエチレン鎖または分岐のポリオキシエチレン鎖であり、Rが炭素数1〜7の炭化水素基または炭素数3〜9のアセタール基であり、Xはアミノ基、保護アミノ基、カルボキシル基、保護カルボキシル基、アルデヒド基、保護アルデヒド基、水酸基、保護水酸基、チオール基、保護チオール基、シアノ基またはこれらを含むアルキレン基であり、m及びnが、それぞれ、m=1または0、n=1または0、かつ1≦m+nであり、i及びkが、それぞれ、1≦i≦5、k=1または0であり、a、b及びcが、それぞれ、0≦a、0≦b、1≦cかつ1≦a+b、2≦a+b+c≦8を満たす整数であり、a、b及びcが2以上の整数の場合、Y1及びY2、Polymer1、Polymer2、R、m、n、i、kは分子中で同一または異なっても良い)
(A) 前記ポリオキシエチレン誘導体の5質量倍以上のトルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチルおよび酢酸ブチルからなる群より選択される有機溶剤を使用し、前記ポリオキシエチレン誘導体を溶解して溶液とする工程、
(B) マグネシウム、ケイ素およびアルミニウムからなる群より選ばれた一種または二種以上の元素の酸化物と水酸化物の少なくとも一方を含む無機系吸着剤を前記溶液に対して前記ポリオキシエチレン誘導体の0.5〜10質量倍添加することで、スラリーを生成させる工程、
(C)
25℃以上の温度で前記スラリーを攪拌する工程、
(D)
このスラリーをろ過して得られたろ過ケーキに、トルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチルおよび酢酸ブチルからなる群より選択される有機溶剤を添加し、さらにろ過を行う工程、および
(E)
前記ポリオキシエチレン誘導体の5質量倍以上のメタノール、エタノールおよび2-プロパノールからなる群より選択される有機溶剤を前記ろ過ケーキに添加してろ過し、得られたろ液から前記ポリオキシエチレン誘導体を回収する工程
【0014】
一般式[1]で示されるポリオキシエチレン誘導体において、Y1はウレタン結合、またはエーテル結合であり、Polymer1は、直鎖のポリオキシエチレン鎖であり、Rはメチル基であり、m=1、a=1または2、b=0、c=1、i=1または5である方法。
【0015】
一般式[1]で示されるポリオキシエチレン誘導体において、Zはリジンの残基であり、Y1はウレタン結合であり、k=0、a=2である方法。
【0016】
一般式[1]で示されるポリオキシエチレン誘導体の分子量が10,000〜100,000である方法。
【0017】
前記吸着剤の量がポリオキシエチレン誘導体の2〜6質量倍である方法。
【0018】
前記工程(A)の溶剤が、トルエン、酢酸エチルから選択される方法。
【0019】
工程(E)の溶剤が、メタノール、エタノールから選択される方法。
【0020】
工程(A)の溶剤の溶剤量がポリオキシエチレン誘導体の10〜20質量倍である方法。
【0021】
工程(E)の溶剤の溶剤量がポリオキシエチレン誘導体の10〜20質量倍である方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば目的物の分子量、不純物の分子量、また、構造やそれに含まれる官能基に関らず、カルボキシル基の有無、またはその数によって分離し高純度に精製が可能である。更には、本発明は操作が容易であるため、工業的な製造までスケールアップによる再現性も良く、非常に適した精製方法といえる。本発明の精製方法で得られた高分子量のポリオキシエチレン誘導体は、不純物含量が少なく高純度である。また、本発明の製造方法で製造することにより、高純度のものが容易に得られる。本発明の高分子量のポリオキシエチレン誘導体を用いて修飾した生体関連物質は、不純物が少なく安全性、安定性に優れており、医薬、香粧品分野に適しており、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の詳細は、一般式[1]で示される分子量2,000〜100,000からなるポリオキシエチレン誘導体を、(A)〜(E)の操作を含む吸着処理工程により精製する方法である。
【0024】
【化2】

【0025】
Zが2〜8個の活性水素を持つ多価アルコール、アミノ酸またはペプチドの残基であり、具体的な化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、イソプロピレングリコール、ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトールなどの多価アルコール類、またはリジンやグルタミン酸など、アミノ基、カルボキシル基、またはチオール基を持つアミノ酸やその2量体、3量体であるペプチドが挙げられる。好ましい化合物としては、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、キシリトール、リジン、グルタミン酸であり、より好ましくは、エチレングリコール、グリセリン、リジンであり、更に好ましくはリジンである。
【0026】
ここで残基とは、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基などの活性水素基を持つ官能基を除いた残基のことである。
【0027】
Y1及びY2は、Zとポリオキシエチレン鎖との間の結合基であり、共有結合であれば特に制限はないが、好ましくは、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、2級アミノ基、ジスルフィド結合及びそれらを含むアルキレン基が挙げられる。好ましい結合基を以下に示す。
【0028】
Zが2〜8個の活性水素を持つ多価アルコールの残基の場合、多価アルコールの水酸基にポリオキシエチレン誘導体を結合する場合
-O-、 -OCONH(CH2)pO-、 -O(CH2)pNHCO(CH2)O-、 -O(CH2)pNHCOO-
【0029】
Zがアミノ酸またはペプチドの残基の場合、アミノ酸またはペプチドのアミノ基にポリオキシエチレン誘導体を結合する場合
-NHCO(CH2)O-、 -NHCOO-、-NHCO-
Zがアミノ酸またはペプチドの残基の場合、アミノ酸またはペプチドのカルボキシル基にポリオキシエチレン誘導体を結合する場合
-COO-、 -CONH(CH2)pO-
Zがアミノ酸またはペプチドの残基の場合、アミノ酸またはペプチドのチオール基にポリオキシエチレン誘導体を結合する場合
-S-、-S-S-
(ここでp、qは、p=2または3、q=1〜5の整数である)
【0030】
Polymer1及びPolymer2は、直鎖もしくは分岐のポリオキシエチレン鎖である。分岐のポリオキシエチレン鎖とは途中に分岐点を介し、2鎖またはそれ以上に分岐しているポリオキシエチレン鎖であり、分岐点は複数あっても良い。例としては、下記式(i)に示すようなグリセリンなどの多価アルコールを分岐点とし、2鎖、またはそれ以上に分岐しているポリオキシエチレン鎖である。
【0031】
【化3】

【0032】
Rは、炭素数1〜7の炭化水素基、または炭素数3〜9のアセタール基であり、具体的な炭化水素基、アセタール基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、ジエチルアセタール基、ジメチルアセタール基、ジイソプロピルアセタール基、1,3−ジオキソランなどが挙げられ、好ましい炭化水素基としては、メチル基、t−ブチル基、ベンジル基であり、好ましいアセタール基としては、ジエチルアセタール基である。
【0033】
Xはアミノ基、保護アミノ基、保護カルボキシル基、アルデヒド基、保護アルデヒド基、水酸基、保護水酸基、チオール基、保護チオール基、スルホニル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、及びそれらを含むアルキレン基である。アルキレン基としては具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、へキシレン基などが挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、より好ましくはエチレン基である。
【0034】
m及びnは、m=1または0、n=1または0、かつ1≦m+nであり、i及びkがそれぞれ1≦i≦5、k=1または0であり、a、b及びcがそれぞれ、0≦a、0≦b、1≦cかつ1≦a+b、2≦a+b+c≦8を満たす整数であり、a、b及びcが2以上の整数の場合、Y1及びY2、Polymer1及びPolymer2、R、m、n、i、kは分子中で同一または異なっても良い。
【0035】
上記ポリオキシエチレン誘導体の分子量は2,000〜100,000であるが、近年の医療用途におけるポリオキシエチレン誘導体を用いた製剤(PEG化製剤)において、分子量が大きいほどより高い血中滞溜性が得られており、所望されるポリオキシエチレン誘導体の分子量は増大傾向にある。そのため、上限に特に制限はないが、好ましいポリオキシエチレン誘導体の分子量は6,000〜100,000、より好ましくは10,000〜100,000、更に好ましくは20,000〜80,000であり、最も好ましくは30,000〜50,000である。
【0036】
以下、各工程を詳細に説明する。
「(A) 一般式[1]で示されるポリオキシエチレン誘導体の5質量倍以上の、トルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチルから選択される有機溶剤を使用し、上記ポリオキシエチレン誘導体を溶解して溶液とする工程」
【0037】
溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチルから選択される有機溶剤であり、極性が低く、ポリオキシエチレン誘導体の溶解性が高い溶剤が望ましい。好ましい有機溶剤はトルエン、酢酸エチルであり、より好ましくはトルエンである。極性の高い溶剤では、ポリオキシエチレン誘導体と吸着剤との相互作用を阻害してしまうため好ましくない。
【0038】
溶剤量は、一般式[1]で示されるポリオキシエチレン誘導体に対して5質量倍以上が望ましい。5質量倍未満だと溶液の粘性が高く精製効率が悪くなり、更には歩留も悪くなるため5質量倍以上とすることが製造上有利である。溶剤量を30質量倍以上としても、精製効率は変化せず良好であるが、その後のろ過操作において、処理容量が多くなり、工数が増加し収量が少なくなり、コストの面で不利となる。これらの理由から、好ましい溶剤量は5〜30質量倍であり、より好ましくは10〜20質量倍である。
【0039】
上記溶剤を用いて、ポリオキシエチレン誘導体の溶解を行う。処理容器へ仕込む順番はポリオキシエチレン誘導体、有機溶剤のいずれでも良い。ポリオキシエチレン誘導体の分子量によっては加温が必要な場合があり、その方法については特に制限はないが、一般的には30℃以上に加温することで溶解することができる。
【0040】
「(B)マグネシウム、ケイ素およびアルミニウムからなる群より選ばれた一種または二種以上の元素の酸化物と水酸化物の少なくとも一方を含む無機系吸着剤を前記溶液に対して前記リオキシエチレン誘導体の0.5〜10質量倍添加することで、スラリーを生成させる工程」
【0041】
本発明で用いる吸着剤において、マグネシウム、アルミニウムおよびケイ素の酸化物、水酸化物は、マグネシウム酸化物、アルミニウム酸化物、ケイ素酸化物、またはこれらの二種または三種の複合酸化物、あるいは、マグネシウム水酸化物、アルミニウム水酸化物、ケイ素水酸化物、またはこれらの二種または三種の複合水酸化物である。
【0042】
無機系吸着剤には、これらの酸化物(複合酸化物を含む)、水酸化物(複合水酸化物を含む)は、単独で含有されていてよく、二種以上の混合物が含有されていてよい。無機系吸着剤は、さらに水和物を含んでいてもよい。
【0043】
具体的な例としては、酸化マグネシウム、活性アルミナ、シリカゲル、協和化学工業(株)製のキョーワードシリーズ、キョーワード200B(Al・HO)、キョーワード200(Al(OH)・xHO)(xは1≦x≦3)、キョーワード500(MgAl(OH)16CO・4HO)、キョーワード700(Al・9SiO・HO)、キョーワード1000(Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO)、キョーワード2000(Mg0.7Al0.31.15)が挙げられる。上記の各無機系吸着剤は、単独、または混合して使用してもよい。
【0044】
カルボキシル基を持つポリオキシエチレン誘導体とカルボキシル基を持たないポリオキシエチレン誘導体を分離するため、カルボキシル基の相互作用のある吸着剤が有利である。この観点から特に好ましい無機系吸着剤としてはAl・HO、Al(OH)・xHO(xは1≦x≦3)、Mg0.7Al0.31.15であり、更に好ましくはAl・HOである。
【0045】
吸着剤量は、一般式[1]で示されるポリオキシエチレン誘導体に対して0.5〜10質量倍の範囲が望ましい。0.5質量倍未満だと十分な精製効果が得られず、10質量倍より多くなると、処理量が多く歩留が低下し、工数が増加する。これらの理由から、吸着剤量は1〜6質量倍が好ましく、より好ましくは2〜6質量倍である。
【0046】
「(C) 25℃以上で上記溶液を攪拌する工程」
この工程は、工程(B)の溶液に吸着剤を加えて吸着剤のスラリーとし、吸着処理する工程である。処理温度は25〜80℃が好ましい。80℃より高い温度ではポリオキシエチレン誘導体の熱による劣化が危惧される。25℃より低温では、溶液の粘性が高く精製効率が悪くなる。また、ポリオキシエチレン誘導体の構造や分子量によっては結晶が析出してしまうため、25℃以上が望ましい。好ましい温度範囲としては、40〜80℃であり、より好ましくは40〜60℃である。上記温度範囲にてスラリーを不活性ガス雰囲気下または吹き込みながら30分以上攪拌を行い、吸着処理を行う。攪拌時間は十分吸着を行うために30分以上が好ましく、上限に制限は無いが熱履歴による劣化が危惧されることから、20時間未満が好ましい。この操作により、カルボキシル基の方が水酸基よりも吸着剤との相互作用が大きいため、優先的に吸着される。
【0047】
「(D)このスラリーをろ過して、ろ過ケーキにトルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチルから選択される有機溶剤を添加し、さらにろ過を行う工程」
【0048】
この工程は、上記工程(C)の吸着処理溶液から吸着剤と不純物が溶解した溶剤を分離する工程である。吸着剤の除去方法は特に制限はないが、一般的には、減圧濾過、遠心ろ過、または加圧ろ過によって除去を行う。この際、ろ過時の温度の低下による結晶の析出を予防する目的で予めろ過器を工程(C)の処理温度と同じに加温しておくことが望ましい。また、ろ過性を良くするために予めろ紙上にろ過助剤を敷いてもよい。
【0049】
スラリー溶液をろ過後、トルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチルから選択される有機溶剤を添加し、さらにろ過を行い、ろ過ケーキに残存する不純物の除去を行う。使用する有機溶剤は、吸着処理溶液と同じ溶剤が望ましい。
【0050】
溶剤量は、一般式[1]で示されるポリオキシエチレン誘導体に対して5質量倍以上が望ましい。5質量倍未満だとろ過ケーキから十分な不純物の除去が出来ないため、5質量倍が有利である。溶剤量を30質量倍以上としても、精製効率は変化せず良好であるが、その後のろ過操作において、処理容量が多くなり、工数が増加し収量が少なくなり、コストの面で不利となる。これらの理由から、好ましい溶剤量は5〜30質量倍であり、より好ましくは10〜20質量倍である。さらに溶剤は予め処理時の温度に加温しておくことで不純物の除去効率が高くなる。
【0051】
「(E)上記ポリオキシエチレン誘導体の5質量倍以上のメタノール、エタノール、2-プロパノールから選択される有機溶剤を添加し、ろ過ケーキから前記ポリオキシエチレン誘導体を回収する工程」
【0052】
溶剤としては、メタノール、エタノール、2-プロパノールから選択される有機溶剤であり、極性が高く、更にポリオキシエチレン誘導体の溶解性が高い溶剤が望ましい。好ましい溶剤としてはメタノール、エタノールであり、より好ましくはエタノールである。
【0053】
溶剤量は、一般式[1]で示されるポリオキシエチレン誘導体に対して5質量倍以上が望ましい。5質量倍未満だと溶液の粘性が高く精製効率が悪くなり、更には歩留も悪くなるため5質量倍以上とすることが製造上有利である。溶剤量を30質量倍以上としても、精製効率は変化せず良好であるが、その後のろ過操作において、処理容量が多くなり、工数が増加し、コストの面で不利となる。これらの理由から、好ましい溶剤量は5〜30質量倍であり、より好ましくは10〜20質量倍である。
【0054】
上記溶剤を用いて、ろ過後のろ過ケーキから目的物であるカルボキシル基を持つポリオキシエチレン誘導体を脱着させ回収する。回収する方法としては、ろ過器に加温した上記溶剤を添加してろ過を行い、ろ液から単離する方法と、ろ過ケーキを上記溶剤で再度スラリーとして、その後ろ過を行い、ろ液から単離する方法が挙げられる。
【0055】
前者の方法は、予め、上記溶剤を工程(C)の処理時の温度に加温しておくことで回収効率が高くなる。
【0056】
後者の方法は、使用する溶剤を上記溶剤とした工程(C)(D)と同じ操作であり、後者の方がろ過ケーキが溶剤と十分混合されるため、前者の方法よりも回収効率は高くなる。この場合、ろ過性を良くするために予めろ紙上にろ過助剤を敷いてもよい。ここで言うろ過助剤とは、例えば珪藻土のようなろ紙の目詰まりを防ぐ為の粉末であり、例を挙げるとオプライトW−3050(オプライト鉱業(株)製)などがある。
【0057】
ろ過後、更にメタノール、エタノール、2-プロパノールから選択される有機溶剤を添加し、さらにろ過を行い、ろ過ケーキに残存する目的物を回収を行うことで収率の向上が望める。この際使用する有機溶剤は、脱着処理溶液と同様の溶剤が望ましい。溶剤量は、一般式[1]で示されるポリオキシエチレン誘導体に対して5質量倍以上が望ましい。5質量倍未満だとろ過ケーキから十分な不純物の除去が出来ないため、5質量倍が有利である。溶剤量を30質量倍以上としても、精製効率は変化せず良好であるが、その後のろ過操作において、処理容量が多くなり、工数が増加し、コストの面で不利となる。これらの理由から、好ましい溶剤量は5〜30質量倍であり、より好ましくは10〜20質量倍である。さらに溶剤は予め処理時の温度に加温しておくことで不純物の除去効率が高くなる。
【0058】
ろ液から目的物を単離する方法は特に制限はないが、減圧留去による方法、若しくは再沈殿による方法が好ましい。
【0059】
上記記載の操作は、工程(A)〜(E)の操作後、再度工程(A)、または工程(E)に戻って繰り返し行うことができる。また、繰り返し行う際、1回目と2回目の吸着剤の種類、または量、使用する有機溶剤を変えるなど、組み合わせを変えることにより、精製効率が上がる場合がある。これは、精製するポリオキシエチレン誘導体のカルボキシル基の数、また含まれる不純物の数、種類、含有量によっても異なるが、目的物よりも吸着剤との相互作用の弱い不純物と強い不純物が混在する場合などには特に有効である。一般的に吸着剤との相互作用が弱い不純物(カルボキシル基を持たないポリオキシエチレン誘導体の不純物など)を除去する場合は、工程(A)の溶剤にトルエンを用い、目的物の吸着力の強い吸着剤を用いることで精製効率が上がり、逆に吸着剤との相互作用の強い不純物(カルボキシル基を2つ以上持つポリオキシエチレン誘導体の不純物など)を除去する場合は、目的物の吸着力の弱い吸着剤を用い、工程(D)の溶剤にエタノールを使用することで精製効率が良くなる。吸着剤の量については、特に不純物含量によって適宜最適な量を使用すればよいが、目的物より相互作用の小さい不純物の場合は、不純物が多いほど吸着剤量を減らすことで、除去効率は高くなり、目的物より相互作用の大きい不純物の場合は、不純物が多いほど吸着剤量を増やすことで除去効率は高くなる。
【実施例】
【0060】
ポリオキシアルキレン誘導体は、以下の方法にて合成した。
pH8に調整した0.1Mのリン酸緩衝液12Lにリジン一塩酸塩548gを溶解させ、日油製MENP-20T(分子量2万のαメトキシ-ω- pニトロフェニルカルボニル-ポリオキシエチレン)3kgを加えて室温で終夜攪拌した。反応液に食塩24kgを溶解させ、クロロホルム30kgを用いて抽出し、20%食塩水12.5kgでクロロホルム層を洗浄した。濃縮後、トルエン15kgに溶解して硫酸マグネシウム1kgを用いて脱水、ろ過を行った。ろ液にヘキサン12kgを加えて結晶化し、乾燥して、リジンの2つのアミノ基1つにメトキシポリオキシエチレンが導入されたポリオキシエチレン誘導体2.4kgを得た。
【0061】
得られた結晶450gを脱水ジメチルホルムアミド2.7kgに溶解し、トリエチルアミン114gと日油製MENP-20T(分子量2万のαメトキシ-ω- pニトロフェニルカルボニル-ポリオキシエチレン)475gを加えて60℃で8時間反応を行った。反応溶液に酢酸エチル4.5kgを加え、さらにヘキサン3.2kgを加えることで結晶化した。結晶を酢酸エチル5.85kgに溶解させ、再びヘキサン3.15kgを加えて再結晶を行った後、結晶を乾燥させてリジンの2つのアミノ基にポリオキシエチレンを2つ導入したポリオキシエチレン誘導体940gを得た。
【0062】
得られたポリオキシエチレン誘導体の純度に関して、高分子の分子量分布をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定を行った。以下にその測定法とその結果を記載する。
GPCシステムとしてはSHIMADZU社製LC-10AVPを用いた
展開溶媒:N,N-ジメチルホルムアミド(10mM LiBr)、流速:0.7ml/min、
カラム:PL gel MIXED-D ×2(ポリマーラボラトリー)、
カラム温度: 65℃、検出器: R
I 、サンプル量:30mg/30mL、注入量:100ul
【0063】
GPC測定値には、高分子量不純物と低分子量不純物を、メインピークとの溶出曲線の変曲点からベースラインに対して垂直に分割し、得られた各ピークの面積値から各ピークの面積百分率を算出する。
【0064】
【表1】

【0065】
ここで、高分子量不純物とは分子量が4万以上のポリオキシエチレンの両末端にリジンが結合したもの(ジオール由来)、リジン中の不純物である2量体にポリオキシエチレン誘導体が3本導入されたものなどであり、低分子量不純物とは分子量2万の未反応のメトキシポリオキシエチレン誘導体と1置換リジンメトキシポリオキシエチレン誘導体である。
【0066】
上記方法にて得られたLY-400を使用して、以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。その際の評価は以下の基準で行った。
精製後の目的物ピークが90%以上、かつ収率が50%以上の場合→◎
精製後の目的物ピークが90%以上、かつ収率が20%以上の場合→○
精製後の目的物ピークが90%以上、かつ収率が10%以上の場合→△
精製後の目的物ピークが90%未満 → ×
【0067】
(実施例1-1)
上記ポリオキシエチレン誘導体30gとトルエン:450gを1L四つ口フラスコに仕込み、スリーワンモーター、冷却管、窒素吹き込み管を取り付け、マントルヒーターを使用して、55℃で溶解した。これにキョーワード200B(協和化学工業)120g添加し、50℃で1時間攪拌し、吸着操作を行った。5Aのろ紙とオプライトW−3050(オプライト鉱業(株)製)を敷いたヌッチェを用意し、吸引ろ過を行った。その後、予め50℃に加温しておいたトルエン300gを用いてろ過ケーキの洗浄を行った。その後、ろ過ケーキにエタノールを加えて50℃で加温、攪拌を行い、再度吸引ろ過し、更に50℃に加温したエタノール300gでろ過ケーキの洗浄を行い、ろ液を回収した。ろ液をエバポレーターを用いて濃縮し、酢酸エチル150gに溶解させて、ヘキサン100gを加えて晶析、析出した結晶をろ別し、乾燥を行い、試料を回収した(21g)。
【0068】
この結果、分子量20,000のメトキシポリエチレングリコール不純物含量を2.0%、分子量40,000以上の高分子量不純物を2.0%にまで削減し、GPC純度96.0%にまで精製できた。更に得られた目的物を再度同様の操作で処理を行った結果、GPC純度98.5%にまで向上できた。
【0069】
(実施例1-2〜7)
吸着に使用する吸着剤を以下の表に示す吸着剤を用いて他の条件は実施例1-1と同様の操作を行った。以下に結果を示す。
【0070】
【表2】

【0071】
ここで、実施例1-1〜5の吸着剤種は、協和化学工業製の無機系吸着剤であるキョーワードシリーズ製品名である。
【0072】
(比較例1-1〜1-2)
実施例1-1の方法で吸着剤の変わりに以下の硫酸マグネシウム、酸化カルシウムを使用して同様の操作を行った。以下に結果を示す。
【0073】
【表3】

【0074】
以上の結果より、精製効果は見られなかった。
【0075】
(実施例1-8〜1-9)
吸着に使用する吸着剤量を以下の表に示す量を用いて他の条件は実施例1-1と同様の操作を行った。以下に結果を示す。
【0076】
【表4】

【0077】
以上の結果より、吸着剤量が増えることで効果、収率ともに良くなる傾向にあるが、3質量倍と4質量倍ではほとんど差がない。精製前のポリオキシエチレン誘導体の純度にも影響するが、2重倍量でも十分な精製効果が見られた。
【0078】
(実施例1-10)
工程(A)時の溶剤を以下の表に示す溶剤を用いて他の条件は実施例1と同様の操作を行った。以下に結果を示す。
【0079】
【表5】

【0080】
以上の結果より、酢酸エチルでも効果は見られるが、トルエンの方が純度、収率共に良好である。
【0081】
(比較例1-3〜1-4)
工程(A)時の溶剤を以下の表に示す溶剤を用いて他の条件は実施例1と同様の操作を行った。以下に結果を示す。
【0082】
【表6】


以上の結果より、上記の溶剤では効果があまり見られなかった。
【0083】
(実施例1-11〜12)
工程(A)時の溶剤量を以下の表に示す量用いて他の条件は実施例1と同様の操作を行った。以下に結果を示す。
【0084】
【表7】

【0085】
以上の結果より、10質量倍でも効果は見られるが、精製効果は溶剤量が多い方が高いといえる。しかしながら、15質量倍以上では、ほとんど精製効果は変わらない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[1]で示される分子量2,000〜100,000のカルボキシル基含有ポリオキシエチレン誘導体から不純物を分離する精製方法であって、下記(A)〜(E)の各工程を有する方法。
【化4】


(式中、Zが2〜8個の活性水素を持つ多価アルコール、アミノ酸またはペプチドの残基であり、Y1及びY2がエーテル結合、アミド結合、エステル結合、ウレタン結合、カーボネート結合、2級アミノ基、チオエーテル結合、ジスルフィド結合、チオエステル結合、またはこれらを含むアルキレン基であり、Polymer1及びPolymer2が直鎖のポリオキシエチレン鎖または分岐のポリオキシエチレン鎖であり、Rが炭素数1〜7の炭化水素基または炭素数3〜9のアセタール基であり、Xはアミノ基、保護アミノ基、カルボキシル基、保護カルボキシル基、アルデヒド基、保護アルデヒド基、水酸基、保護水酸基、チオール基、保護チオール基、シアノ基またはこれらを含むアルキレン基であり、m及びnが、それぞれ、m=1または0、n=1または0、かつ1≦m+nであり、i及びkが、それぞれ、1≦i≦5、k=1または0であり、a、b及びcが、それぞれ、0≦a、0≦b、1≦cかつ1≦a+b、2≦a+b+c≦8を満たす整数であり、a、b及びcが2以上の整数の場合、Y1及びY2、Polymer1、Polymer2、R、m、n、i、kは分子中で同一または異なっても良い)

(A) 前記ポリオキシエチレン誘導体の5質量倍以上のトルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチルおよび酢酸ブチルからなる群より選択される有機溶剤を使用し、前記ポリオキシエチレン誘導体を溶解して溶液とする工程、
(B) マグネシウム、ケイ素およびアルミニウムからなる群より選ばれた一種または二種以上の元素の酸化物と水酸化物の少なくとも一方を含む無機系吸着剤を前記溶液に対して前記ポリオキシエチレン誘導体の0.5〜10質量倍添加することで、スラリーを生成させる工程、
(C)
25℃以上の温度で前記スラリーを攪拌する工程、
(D)
このスラリーをろ過して得られたろ過ケーキに、トルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチルおよび酢酸ブチルからなる群より選択される有機溶剤を添加し、さらにろ過を行う工程、および
(E)
前記ポリオキシエチレン誘導体の5質量倍以上のメタノール、エタノールおよび2-プロパノールからなる群より選択される有機溶剤を前記ろ過ケーキに添加してろ過し、得られたろ液から前記ポリオキシエチレン誘導体を回収する工程
【請求項2】
一般式[1]で示される前記ポリオキシエチレン誘導体において、Y1はウレタン結合またはエーテル結合であり、Polymer1は、直鎖のポリオキシエチレン鎖であり、Rはメチル基であり、m=1、a=1または2、b=0、c=1、i=1または5である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
一般式[1]で示されるポリオキシエチレン誘導体において、Zはリジンの残基であり、Y1はウレタン結合であり、k=0、a=2である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
一般式[1]で示されるポリオキシエチレン誘導体の分子量が10,000〜100,000である、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着剤の量が前記ポリオキシエチレン誘導体の2〜6質量倍であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(A)の前記有機溶剤が、トルエンおよび酢酸エチルからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(E)の前記有機溶剤が、メタノールおよびエタノールからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(A)の前記有機溶剤の溶剤量がポリオキシエチレン誘導体の10〜20質量倍であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(E)の前記有機溶剤の溶剤量がポリオキシエチレン誘導体の10〜20質量倍であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つの請求項に記載の方法。

【公開番号】特開2011−79934(P2011−79934A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232672(P2009−232672)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】