説明

カルボン酸化合物及びこれを含有する医薬

血糖降下作用、血漿インスリン低下作用、及びトリグリセライド低下作用を有し、糖尿病、糖尿病合併症、又は高脂血などの予防及び/又は治療に有用である、次の一般式(1):


[式中、mは0から4の整数を示し、nは5から9の整数を示し、Wは−CH(OR)−(Rは水素原子又は水酸基の保護基を示す)又は−C(=O)−を示す]で表される化合物、その塩、又はそのエステル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、強力な血糖降下作用、血漿インスリン低下作用およびトリグリセライド低下作用を示し、体重増加や肥満を伴わずに、糖尿病、糖尿病合併症、高脂血症、動脈硬化症等の疾患の予防及び/又は治療を可能にするカルボン酸化合物、及びこれを含有する医薬に関する。
【背景技術】
糖尿病は、複数の原因により生じる代謝性疾患であり、インスリン分泌不全による1型あるいは末梢組織におけるインスリン感受性低下に伴う2型に大別される。2型糖尿病は肥満や過食などの環境因子を背景として近年急増しており、世界の糖尿病有病率は5%とされる。
糖尿病の薬物治療にはインスリンやスルホニルウレア剤が多用されるが、副作用として低血糖や、スルホニルウレア剤では膵臓の疲弊による二次無効を引き起こす。ビグアナイド剤はインスリン感受性を改善し高血糖をわずかに是正するが、乳酸アシドーシスを誘発する場合がある。近年開発されたチアゾリジンジオン系糖尿病治療薬は末梢でのインスリン抵抗性改善効果を有し(Expert Opinion on Investigational Drugs,9,pp1347−1361,2000)、低血糖を起こさずに良好な血糖コントロールが可能とされるが、副作用として重篤な肝臓障害等が報告されている。このため、非チアゾリジンジオン系のインスリン抵抗性改善薬が望まれる。
一方、非チアゾリジンジオン系の化合物としては、2,2−ジクロロアルカンカルボン酸化合物が、糖尿病モデル動物において血糖値を降下させ、同時に血漿インスリン低下作用および血漿トリグリセライド低下作用を示すことが知られている(European Journal of Medicinal Chemistry,33,pp775−787,1998)。高インスリン血症はインスリン抵抗性を示唆するものであり、また高脂血症は糖尿病に併発する脂質代謝異常として動脈硬化のリスクファクターとされる。したがって、これらを是正することは糖尿病および糖尿病合併症の予防および/または治療に重要である。
例えば、下記の化合物Aは各種動物モデルにおいて抗糖尿病作用を示し(Eur.J.Med.Chem.,33,pp.775−787,1998に記載の化合物3e;Metabolism,48,pp34−40,1999)、その効力はチアゾリジンジオン系化合物を上回るとされる。また、チアゾリジンジオン系化合物の作用機序であるPPARγ活性化作用を示さないことから(Archives of Toxicology,73,pp440−450,1999)、明らかにチアゾリジンジオン系化合物と異なる作用を示し、副作用の軽減につながるものと期待されている。

【発明の開示】
糖尿病および糖尿病合併症の有効な治療のためには、副作用の軽減・回避等の目的のほか、血糖値を容易にコントロールし、他剤との併用における薬物相互作用を避けるための目的で、さらに高活性な化合物あるいは低用量で同等以上の活性を持つ化合物が望まれている。
この観点から、化合物Aよりもさらに高活性な化合物あるいは化合物Aよりも低用量で同等以上の活性を持つ化合物は、糖尿病および糖尿病合併症、さらには高脂血症や動脈硬化症の予防および/または治療に有用であることが期待される。
そこで、本発明者はさらに高活性化合物を見出すべく検討した結果、後記一般式(1)で表わされるカルボン酸化合物が、強力な血糖降下作用を有しており、体重増加や肥満を伴わずに糖尿病、糖尿病合併症、高脂血症、動脈硬化症等を予防及び/又は治療するための医薬として有用であることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成された。
すなわち、本発明は、次の一般式(1):

[式中、mは0から4の整数を示し、nは5から9の整数を示し、Wは−CH(OR)−(Rは水素原子又は水酸基の保護基を示す)又は−C(=O)−を示す]で表される化合物、その塩、又はそのエステルを提供するものである。
また、本発明は、上記一般式(1)[式中、mは0から4の整数を示し、nは5から9の整数を示し、Wは−CH(OR)−(Rは水素原子又は水酸基の保護基を示す)又は−C(=O)−を示す]で表わされる化合物、生理学的に許容されるその塩、及び生理学的に許容されるそのエステルからなる群から選ばれる物質を有効成分として含む医薬を提供するものである。
上記の医薬は、高脂血症、動脈硬化症、糖尿病、糖尿病合併症、炎症、及び心疾患からなる群から選ばれる疾患の予防及び/又は治療のための医薬として用いることができる。この医薬は、好ましくは、有効成分である上記の物質と薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物として提供される。
別の観点からは、上記の医薬の製造のための上記一般式(1)[式中、mは0から4の整数を示し、nは5から9の整数を示し、Wは−CH(OR)−(Rは水素原子又は水酸基の保護基を示す)又は−C(=O)−を示す]で表わされる化合物、生理学的に許容されるその塩、及び生理学的に許容されるそのエステルからなる群から選ばれる物質の使用、並びに高脂血症、動脈硬化症、糖尿病、糖尿病合併症、炎症、及び心疾患からなる群から選ばれる疾患の予防及び/又は治療方法であって、上記一般式(1)[式中、mは0から4の整数を示し、nは5から9の整数を示し、Wは−CH(OR)−(Rは水素原子又は水酸基の保護基を示す)又は−C(=O)−を示す]で表わされる化合物、生理学的に許容されるその塩、及び生理学的に許容されるそのエステルからなる群から選ばれる物質の予防及び/又は治療有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が本発明により提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
一般式(1)で表わされる化合物の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、トリアルキルアミン塩等の有機塩基塩;塩酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩;酢酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。これらのうち、生理学的に許容される塩が好ましい。
一般式(1)で表される化合物の生理学的に許容されるエステルは一般式(1)で表される化合物のカルボキシル基により形成されるエステルであり、経口投与における腸管からの吸収率を高め、かつ生体内に吸収された後に容易に加水分解されるエステルが好ましい。例えば、アルキルエステル(該アルキル基は直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20個程度であり、アルキル鎖中には酸素原子又は窒素原子などのヘテロ原子及び/又は不飽和結合を1個以上含んでいてもよく、該鎖上には1又は2個以上の任意の置換基を有していてもよい)やアリールエステルなどを挙げることができる。より具体的には、エチルエステル、フェニルエステル、カルボキシメチルエステル、ジメチルアミノメチルエステル、ピバロイルオキシメチルエステル、エトキシカルボニルオキシエチルエステル、フタリジルエステル、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルエステル、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル等が挙げられるが、これらに限定されることはない。また、一般式(1)で表される化合物の生理学的に許容されるアミドを用いることもでき、例えばメチルアミドを挙げることができる。
一般式(1)において、Wは−CH(OR)−(Rは水素原子又は水酸基の保護基を示す)又は−C(=O)−を示す。Rが示す水酸基の保護基としては、合成的に有用な保護基のほか(このような保護基は、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス、P.G.M.ブッツ、T.グリーン編、第3版、1999年、ジョン ウィリー アンド サンズ刊などを参照することができる)、保護された化合物の腸管からの吸収率を高め、かつ生体内で容易に脱保護されてRが水素原子の化合物を与える保護基を用いることができる。後者の保護基を有する化合物は、種々の目的に応じてプロドラッグとして利用する場合に有用である。例えば、保護基としてアセチル基、パルミトイル基、プロパノイル基、ピバロイル基、サクシニル基、フマリル基、アラニル基、又はジメチルアミノメチルカルボニル基などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
一般式(1)において、mは0から4の整数を示し、nは5から9の整数を示すが、m+nが8〜10の範囲の整数であることが好ましく、9であることが特に好ましい。mは1から3の整数であることが好ましく、特に好ましくは1又は2である。nは6から9の整数であることが好ましく、特に好ましくは7又は8である。
一般式(1)で表される化合物、その塩、又はそのエステルは、水和物に代表される溶媒和物として存在する場合もあるが、任意の溶媒和物も本発明の範囲に包含される。また、一般式(1)で表される化合物はRが水素原子の場合に不斉炭素を1個有しており、Rの種類により、あるいはエステルの種類により、本発明の化合物(以下、「本発明の化合物」と呼ぶ場合には一般式(1)で表される化合物及びそのエステルを包含する)はさらに1個以上の不斉炭素を有する場合がある。1個以上の不斉炭素に基づく純粋な形態の光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体、あるいはラセミ体などの立体異性体の任意の混合物も本発明の範囲に包含される。
本発明の化合物のうち、好ましい化合物としては、2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−10−ヒドロキシドデカン酸及び2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−11−ヒドロキシドデカン酸、並びに生理学的に許容されるこれらの塩及び生理学的に許容されるこれらのエステルを挙げることができる。
本発明の化合物は、例えば以下の合成ルート1又は合成ルート4に記載の方法により製造することができる。また、本発明の化合物においてmが0の化合物については、合成ルート2に記載の方法によっても製造することができる。さらに、本発明の化合物においてmが1の化合物については、合成ルート3に記載の方法によっても製造することができる。
(以下のスキーム中、m及びnは前記と同義であり、Rは水酸基の保護基を示し、Rはアルキル基、アリール基、又はアリル基を示し、X及びYはハロゲン原子を示す。)
<合成ルート1>

第一工程:
アルデヒド体(II)をテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、エーテル、又はジメトキシエタン等の不活性溶媒に溶解後、不活性ガスの雰囲気下に対応するハライドより調製したグリニャール試薬(I)の不活性溶媒溶液を添加し、冷却下ないし室温にて30分ないし数時間攪拌することで化合物(III)を製造することができる。
第二工程:
化合物(III)の水酸基をアセチル基、メトキシメチル基等の適当な保護基で保護する工程である。保護基の種類及び導入条件は、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス、P.G.M.ブッツ、T.グリーン編、第3版、1999年、ジョン ウィリー アンド サンズ刊などを参照することができる。
第三工程:
本工程は、化合物(IV)とジクロロ酢酸のエステルとをTHF、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の溶媒に溶かし、不活性ガスの雰囲気下にアルコキシナトリウム、水素化ナトリウム、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)等の塩基を加え、室温ないし加熱下に1時間ないし24時間攪拌することで達成できる。
第四工程:
化合物(V)の保護された水酸基を脱保護する工程である。水酸基の脱保護の条件は、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス、P.G.M.ブッツ、T.グリーン編、第3版、1999年、ジョン ウィリー アンド サンズ刊などを参照することができる。なお、次の第五工程で脱保護を同時に行うことができる場合があり、そのような場合にはこの第四工程を省略可能である。
第五工程:
化合物(VI)をメタノール、エタノール、THF、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等の溶媒に溶解し、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を添加して、冷却下ないし加熱下に1時間ないし24時間攪拌し、塩酸等の酸を加えて酸性にすることで目的物を製造することができる。
<合成ルート2>

第一工程:
化合物(VIII)を常法に従ってエステル化して化合物(IX)を製造することができる。エステル化法は特に限定されないが、一般的に用いられる活性エステル化法、混合酸無水物法、又は縮合法など適宜の方法により行うことができる。
第二工程:
化合物(IX)を四塩化炭素、シクロヘキサン、ベンゼン等の溶媒に溶解し、N−ブロモこはく酸イミド等のハロゲン化剤を添加し、室温ないし加熱下に1時間ないし24時間攪拌することで化合物(X)を得ることができる。反応を促進するために、過酸化ジベンゾイルやアゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤を添加してもよい。
第三工程:
化合物(X)を水、またはアセトン、THF、DMF等の有機溶媒と水との混合溶媒に溶解し、硝酸銀、過塩素酸銀等の銀塩、あるいは炭酸水素ナトリウムなどの塩基を添加し、冷却下ないし加熱下に1時間ないし24時間攪拌することで化合物(XI)を得ることができる。
第四工程:
本工程は、合成ルート1の第五工程と同様の方法で達成できる。
<合成ルート3>

第一工程:
化合物(XIII)を無溶媒で、またはトルエン、アセトン、又はDMSOなどの溶媒に溶解し、硫酸、リン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等の酸を添加し、室温ないし加熱下に1時間ないし24時間攪拌することにより化合物(XIV)を得ることができる。
第二工程:
化合物(XIV)をクロロホルム、塩化メチレン、ジエチルエーテル等の溶媒に溶解し、この溶液あるいは上記の溶液と炭酸水素ナトリウム水溶液等との混合溶液中に過安息香酸、3−クロロ過安息香酸、トリフルオロ過酢酸等の過酸を添加し、冷却下ないし加熱下に1時間ないし24時間攪拌することにより化合物(XV)を得ることができる。
第三工程:
化合物(XV)をTHF、酢酸エチル、アルコール類、酢酸等の溶媒に溶解し、パラジウム炭素、ラネーニッケル等の触媒を添加し、常圧又は加圧水素雰囲気下、冷却下ないし加熱下に1時間ないし24時間攪拌することにより化合物(XVI)を得ることができる。
第四工程:
本工程は、合成ルート1の第五工程と同様の方法で達成できる。
<合成ルート4>

第一工程:
本工程は、化合物(VI)をジクロロメタン、アセトン、ジエチルエーテル等の溶媒に溶解し、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、2クロム酸ピリジニウム(PDC)等を加え冷却下乃至加熱下に1時間乃至24時間攪拌することで達成できる。
第二工程:
本工程は、合成ルート1の第五工程と同様の方法で達成できる。
上記の合成ルート1ないし4の各工程の反応後には、常法に従って後処理を行うことができ、目的物を必要に応じて常法により精製した後に次工程の原料として用いることができる。
本発明の化合物のうち光学異性体は、例えばラセミ体の本発明の化合物あるいはその中間体を光学分割する方法により、または本発明の化合物あるいはその中間体の不斉合成などにより得る事ができる。光学分割の方法としては、例えば光学活性な充填剤を用いたクロマトグラフィーによる分割、ジアステレオマー化合物に誘導した後のクロマトグラフィーによる分割、ジアステレオマー塩に誘導した後での再結晶による分割などが挙げられる。不斉合成の方法としては、例えば光学活性な試薬や触媒を用いた不斉酸化反応、不斉還元反応、不斉炭素結合反応、酵素や酵母などの生体触媒を用いた還元、加水分解、エステル化などが挙げられる。
上記の合成ルートにより得られた本発明の化合物は、必要に応じて再結晶法、カラムクロマトグラフィーなどの通常の精製手段を用いて精製することができる。また必要に応じて、常法によって前記した所望の塩又は溶媒和物にすることもできる。なお、本明細書の実施例には、本発明の化合物の製造方法がさらに具体的かつ詳細に記載されているので、当業者は、上記の一般的な製造方法の説明及び実施例の具体的な説明を参照することにより、適宜の反応試薬、出発原料、及び反応条件を適宜選択し、必要に応じてこれらの方法に適宜の改変ないし修飾を加えることによって、本発明の化合物を容易に製造することができる。
本発明の化合物又はその塩は、後記試験例に示すように、in vivo評価系において強力な血漿グルコース降下作用を示すことから、糖尿病、糖尿病合併症、高脂血症、動脈硬化症等の予防及び/又は治療のための医薬の有効成分として有用である。この医薬はヒトを含む哺乳類動物に投与可能であり、体重増加や肥満を伴わないという極めて優れた特徴を有している。
本発明の医薬は、上記一般式(1)[式中、mは0から4の整数を示し、nは5から9の整数を示し、Wは−CH(OR)−(Rは水素原子又は水酸基の保護基を示す)又は−C(=O)−を示す]で表わされる化合物、生理学的に許容されるその塩、及び生理学的に許容されるそのエステルからなる群から選ばれる物質を有効成分として含む。本発明の医薬としては、上記の物質をそのまま用いてもよいが、一般的には、上記の物質と1又は2以上の製剤用添加物とを含む医薬組成物を調製して投与することが好ましい。本発明の医薬としては、上記の物質を2種以上組み合わせて用いることもできる。
本発明の医薬の投与経路は特に限定されず、経口投与又は非経口投与のいずれの投与経路により投与してもよい。経口投与に適する医薬組成物としては、固形又は液体の医薬組成物のいずれであってもよく、非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、注射剤、点滴剤、坐剤、外用剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、貼付剤などの製剤形態を例示することができる。
経口用の固形医薬組成物は、例えば、有効成分である上記の物質に賦形剤を加え、さらに必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、又は矯味剤などの製剤用添加物を加えた後、常法により錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤として調製することができる。製剤用添加物としては、当該分野で一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、乳糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、微結晶セルロース、珪酸等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、ポリビニルピロリドン等の結合剤;カンテン末、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド等の崩壊剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等の滑沢剤;β−カロチン、黄色三二酸化鉄、カラメル等の着色剤;及び白糖、橙皮等の矯味剤を例示できる。
経口用の液体医薬組成物は、有効成分である上記の物質に矯味剤、安定化剤、又は保存剤など製剤用添加物の1種又は2種以上を加え、常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等として調製することができる。製剤用添加物としては、当該分野で一般的に使用されているものを用いることができる。例えば白糖等の矯味剤;トラガント等の安定化剤;パラオキシ安息香酸エステル等の保存剤が挙げられる。
注射剤は、有効成分である上記の物質に安定化剤又は等張化剤等などの製剤用添加物の1種又は2種以上を添加し、常法により皮下、筋肉、又は静脈内投与用の注射剤として製造することができる。製剤用添加物としては、当該分野で一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム等の安定化剤;塩化ナトリウム等の等張化剤を例示できる。
坐薬は、有効成分である上記の物質に担体及び界面活性剤などの製剤用添加物を加えて常法により製造することができる。製剤用添加物としては、当該分野で一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、ポリエチレングリコール、ハードファット等の担体;ポリソルベート80等の界面活性剤を例示できる。
外用剤は、有効成分である上記の物質に基剤、水溶性高分子、溶媒、界面活性剤、又は保存剤等などの製剤用添加物の1種又は2種以上を加えて、常法により液剤、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤等として製造することができる。製剤用添加物としては、当該分野で一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、流動パラフィン、白色ワセリン、精製ラノリン等の基剤;カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子;グリセリン、水等の溶媒;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の界面活性剤;パラオキシ安息香酸エステル等の保存剤が挙げられる。
点眼剤は、有効成分である上記の物質に安定化剤、等張化剤、又は保存剤等の製剤用添加物の1種又は2種以上を加えて常法により製造することができる。製剤用添加物としては、当該分野で一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA等の安定化剤;塩化ナトリウム等の等張化剤;クロロブタノール等の保存剤を例示できる。
点鼻剤は、有効成分である上記の物質に安定化剤、等張化剤、又は保存剤等の製剤用添加物の1種又は2種以上を加えて常法により製造することができる。製剤用添加物としては、当該分野で一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA等の安定化剤;塩化ナトリウム等の等張化剤;塩化ベンザルコニウム等の保存剤を例示できる。
点耳剤は、有効成分である上記の物質に安定化剤、等張化剤、又は保存剤等の製剤用添加物の1種又は2種以上を加えて常法により製造することができる。製剤用添加物としては、当該分野で一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA等の安定化剤;塩化ナトリウム等の等張化剤;塩化ベンザルコニウム等の保存剤を例示できる。
貼付剤は、有効成分である上記の物質に粘着剤、溶媒、架橋剤、又は界面活性剤等の製剤用添加物の1種又は2種以上を加えて常法により含水型貼付剤、プラスター貼付剤等として製造することができる。製剤用添加物としては、当該分野で一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、ポリアクリル酸部分中和物、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸2−エチルヘキシル、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等の粘着剤;グリセリン、水等の溶媒;ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、乾燥水酸化アルミニウムゲル等の架橋剤;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の界面活性剤を例示できる。
本発明の医薬の投与量は特に限定されず、患者の年齢、体重、及び症状、投与形態、投与経路、及び投与回数などによって適宜選択可能である。通常は、有効成分である上記の物質の質量として成人1日あたり0.1〜100mgを投与することができる。本発明の医薬は1日1回又は数回に分けて経口投与又は非経口投与することができる。
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
例1
(1)10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)−5−デカノールの合成
マグネシウム(591mg,24.31mmol)に無水THF5mLを加えてアルゴン雰囲気下、室温で攪拌し、よう素(10mg)を加え茶褐色がほぼ消失するまで2時間攪拌した。反応液に4−(4−ブロモブチル)クロルベンゼン(6.02g,24.32mmol)の無水THF10mL溶液を10分間かけて滴下した。滴下終了後室温で3時間攪拌を続けグリニャール試薬を調製した。
6−ブロモヘキサナール(4.79g,49.58mmol)を無水THF10mLに溶解し氷冷下攪拌した。この溶液に調製したグリニャール試薬を10分かけて滴下した。反応液を室温に戻し、18時間攪拌を続けた。
反応終了後、反応液を水冷冷却下、精製水20mLと飽和食塩水20mLをゆっくり加えて20分間攪拌した。この混合物をジエチルエーテル(50mL,100mL,20mL×2)で抽出し、次いで抽出液を精製水20mLで1回、飽和食塩水30mLで1回洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮し、粗生成物として淡緑色油状物16.54gを得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液n−ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製し、目的化合物(3.14g,収率37.1%)を無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.23−1.67(12H,m),1.87(2H,tt,J=7,7Hz),2.59(2H,t,J=8Hz),3.41(2H,t,J=7Hz),3.58(1H,m),7.10(2H,d,J=8Hz),7.24(2H,d,J=8Hz).
(2)5−アセトキシ−10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)デカンの合成
10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)−5−デカノール(3.14g,9.03mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(111mg,0.903mmol)及びピリジン(3.97g,18.1mmol)をジクロルメタン50mLに溶解した。この溶液を氷冷冷却し、10分間攪拌後、アセチルクロリド(851mg,10.8mmol)のジクロルメタン溶液50mLを10分かけて滴下し、滴下終了後室温でさらに3時間攪拌した。
反応終了後、反応液を水冷冷却下、2mol/L塩酸20mLと飽和食塩水20mLをゆっくり加えて5分間攪拌した。有機層を分離後、水層からさらにクロロホルム100mLで2回抽出した。抽出液を合わせて精製水30mLで1回、飽和食塩水30mLで1回洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮し、粗生成物として淡黄色油状物4.33gを得た。得られた粗生成物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出液n−ヘキサン/酢酸エチル=20/1)で精製し、目的化合物(3.50g,収率99.4%)を無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.22−1.65(12H,m),1.84(2H,tt,J=7,7Hz),2.02(3H,s),2.56(2H,t,J=8Hz),3.39(2H,t,J=7Hz),4.85(1H,m),7.08(2H,d,J=8Hz),7.24(2H,d,J=8Hz).
(3)8−アセトキシ−2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)ドデカン酸メチルの合成
5−アセトキシ−10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)デカン(3.50g,8.97mmol)をDMF50mLに溶解しアルゴンガス雰囲気下、室温にて攪拌した。これにジクロロ酢酸メチル(5.14g,35.9mmol)を加え氷冷冷却した。この溶液に水素化ナトリウム(1.50g,35.9mmol)を一度に加え1時間攪拌し、さらに室温にて36時間攪拌を続けた。
反応液を水冷冷却下、飽和食塩水20mLをゆっくり加えて5分間攪拌した。さらに水80mLを加えた後、ジエチルエーテル50mLで3回抽出し、次いで抽出液を精製水50mLで1回、飽和食塩水50mLで1回洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮し、粗生成物として淡黄色油状物6.24gを得た。これをシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出液n−ヘキサン/酢酸エチル=20/1)で精製し、目的化合物(1.43g,収率35.5%)を無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.22−1.42(6H,m),1.46−1.66(8H,m),2.03(3H,s),2.40(2H,m),2.57(2H,t,J=8Hz),3.89(3H,s),4.85(1H,m),7.09(2H,d,J=9Hz),7.23(2H,d,J=9Hz).
(4)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−8−ヒドロキシドデカン酸の合成
8−アセトキシ−2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)ドデカン酸メチル(1.43g,3.17mmol)をメタノール40mLに溶解し氷冷下攪拌した。この溶液に2mol/L水酸化リチウム水溶液(15.9mL,31.7mmol)を加え15分間攪拌し、室温下でさらに20時間攪拌した。
反応終了後、反応液を水冷冷却下、飽和食塩水20mLと2mol/L塩酸20mLを滴下して酸性にし、クロロホルム100mLで3回抽出し、次いで抽出液を精製水50mLで1回、飽和食塩水50mLで1回洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮し、粗生成物として淡黄色油状物1.68gを得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液クロロホルム/メタノール=20/1〜2/1)で精製し、目的化合物(749mg,収率59.7%)を淡黄色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.24−1.77(14H,m),2.43(2H,m),2.58(2H,t,J=8Hz),3.67(1H,br),7.09(2H,d,J=8Hz),7.23(2H,d,J=8Hz).
例2
(1)10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)−3−デカノールの合成
マグネシウム(1.07g,44.0mmol)に無水THF20mLを加えてアルゴン雰囲気下、室温で攪拌し、ヨウ素(10mg)を加え茶褐色がほぼ消失するまで2時間攪拌した。この反応液に4−(2−ブロモエチル)クロルベンゼン(9.62g,43.8mmol)の無水THF20mL溶液をゆっくり加え3時間攪拌を続けグリニャール試薬を調製した。
8−ブロモ−1−オクタナール(10.27g,49.6mmol)をアルゴン雰囲気下無水THF30mLに溶解し氷冷下攪拌した。この溶液に調製したグリニャール試薬を15分かけて滴下した。反応液を室温に戻し、16時間攪拌を続けた。
反応終了後、反応液を水冷冷却下、精製水20mLと飽和食塩水20mLをゆっくり加えて20分間攪拌した。この混合物をジエチルエーテル100mLで2回抽出し、次いで抽出液を精製水30mLで1回、飽和食塩水30mLで1回洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮し、粗生成物として淡緑色油状物16.54gを得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液n−ヘキサン/酢酸エチル=8/1〜4/1)で精製し、目的化合物(5.85g,収率38.3%)を無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.23−1.76(12H,m),1.80−1.88(2H,m),2.56−2.69(1H,m),2.70−2.81(1H,m),3.40(2H,t,J=7Hz),3.51−3.66(1H,m),7.12(2H,d,J=9Hz),7.24(2H,d,J=9Hz).
(2)3−アセトキシ−10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)デカンの合成
10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)−3−デカノール(5.85g,16.8mmol)をジクロルメタン50mLに溶解した。この溶液を氷冷冷却し、4−ジメチルアミノピリジン(205mg,1.68mmol)及びピリジン(7.38g,33.62mmol)を加え10分間攪拌した。この溶液にアセチルクロリド(1.58g,20.13mmol)のジクロルメタン溶液50mLを5分かけて滴下し、そのまま20分間攪拌し、室温でさらに30分間攪拌した。
反応終了後、反応液を水冷冷却下、2mol/L塩酸20mLと飽和食塩水20mLをゆっくり加えて5分間攪拌した。これを酢酸エチル200mLで2回抽出し、次いで抽出液を精製水30mLで1回、飽和食塩水30mLで1回洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮し、粗生成物として淡黄色油状物7.02gを得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液n−ヘキサン/酢酸エチル=20/1)で精製し、目的化合物(5.17g,収率78.8%)を無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.24−1.60(10H,m),1.76−1.89(4H,m),2.04(3H,s),2.51−2.68(2H,m),3.40(2H,t,J=7Hz),4.86−4.94(1H,m),7.10(2H,d,J=8Hz),7.24(2H,d,J=8Hz).
(3)10−アセトキシ−2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)ドデカン酸メチルの合成
3−アセトキシ−10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)デカン(5.17g,13.26mmol)をDMF50mLに溶解しアルゴン雰囲気下、室温にて攪拌した。この溶液にジクロロ酢酸メチル(5.69g,39.80mmol)を加えて10分間攪拌し、−10℃にてさらに10分間攪拌した。反応液に水素化ナトリウム(1.74g,39.79mmol)をすばやく加えて1時間攪拌し、さらに室温にて15時間攪拌を続けた。
反応終了後、反応液を水冷冷却下、飽和食塩水20mLをゆっくり加えて5分間攪拌した。この混合物をジエチルエーテル200mLで2回抽出し、次いで抽出液を精製水30mLで1回、飽和食塩水30mLで1回洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮し、粗生成物として淡黄色油状物6.39gを得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液n−ヘキサン/アセトン=20/1)で精製し、目的化合物(1.68g,収率28.0%)を淡黄色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.22−1.65(12H,m),1.76−1.92(2H,m),2.04(3H,s),2.37−2.46(2H,m),2.50−2.66(2H,m),3.89(3H,s),4.86−4.96(1H,m),7.10(2H,d,J=9Hz),7.24(2H,d,J=9Hz).
(4)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−10−ヒドロキシドデカン酸の合成
10−アセトキシ−2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)ドデカン酸メチル(1.68g,3.72mmol)をメタノール40mLに溶解し氷冷下攪拌した。これに2mol/L水酸化リチウム水溶液(18.6mL,37.2mmol)を加え10分間攪拌し、室温下でさらに16時間攪拌した。
反応終了後、反応液を水冷冷却下、飽和食塩水20mLと2mol/L塩酸20mLを滴下して酸性にし、クロロホルム150mLで3回抽出し、次いで抽出液を精製水30mLで1回、飽和食塩水30mLで1回洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮し、粗生成物として淡黄色油状物1.68gを得た。
この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液クロロホルム/メタノール=10/1〜2/1)で精製した。目的物を含むフラクションを減圧濃縮後クロロホルム300mLに溶解し飽和食塩水30mLと2mol/L塩酸30mLの混合液で洗浄し、次いで精製水50mLで1回、飽和食塩水50mLで1回洗浄した。この溶液を硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮し、粗生成物として無色油状物1.32gを得た。この油状物にn−ヘキサンを加えて結晶化させ、白色結晶性粉末1.30gを得た。この粗結晶を酢酸エチル−n−ヘキサン混合溶媒より再結晶し目的化合物(1.00g,収率67.9%)を白色結晶性粉末として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.26−1.52(10H,m),1.54−1.63(2H,m),1.71−1.79(2H,m),2.41−2.47(2H,m),2.60−2.69(1H,m),2.72−2.81(1H,m),3.67(1H,br),7.12(2H,d,J=8Hz),7.25(2H,d,J=8Hz).
融点:100.0〜101.7℃(再結晶溶媒:酢酸エチル−n−ヘキサン)
例3
(1)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)ドデカン酸メチルの合成
2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)ドデカン酸(47.3g,124.5mmol)をメタノール1000mLに溶解し、硫酸(6.10g,62.19mmol)を加えて24時間加熱還流攪拌した。
反応液を冷却後、減圧濃縮し、クロロホルム500mL、水500mLを加え、有機層を分離した。水層よりさらにクロロホルムで抽出(100mL×3)後、有機層を合わせて、水洗(200mL)、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧にて溶媒留去し、粗目的化合物(47.35g,収率96.6%)を淡黄色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.22−1.40(12H,m),1.51−1.62(4H,m),2.41(2H,m),2.56(2H,t,J=8Hz),3.89(3H,s),7.10(2H,d,J=8Hz),7.23(2H,d,J=8Hz).
(2)12−ブロモ−2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)ドデカン酸メチルの合成
粗2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)ドデカン酸メチル(47.25g,120.0mmol)を四塩化炭素500mLにて溶解し、N−ブロモこはく酸イミド22.42g(126.0mmol)、2,2’−アゾイソブチロニトリル39.4mg(0.24mmol)を加え、アルゴン雰囲気下1時間加熱還流攪拌した。反応液を冷却後、減圧濃縮し、酢酸エチル800mLに溶かし、水洗(200mL×3)、飽和食塩水洗(200mL)後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。この溶液を減圧にて溶媒留去し、粗目的化合物(57.35g,定量的)を淡黄色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.22−1.62(14H,m),2.10(1H,m),2.24(1H,m),2.41(2H,m),3.89(3H,s),4.90(1H,t,J=7Hz),7.30(2H,d,J=9Hz),7.33(2H,d,J=9Hz).
(3)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−12−ヒドロキシドデカン酸メチルの合成
粗12−ブロモ−2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)ドデカン酸メチル(57.35g,120.0mmol)をアセトン1000mL−水200mLの混合溶媒にて溶解した。この溶液に40%過塩素酸銀水溶液68.4mL(132mmol)を室温で10分間かけて滴下し、滴下終了後室温で90分間攪拌した。反応液に飽和食塩水200mLを加え、30分間攪拌後不溶物を濾去した。濾液から減圧にてアセトンを留去した後、不溶物を酢酸エチル500mLで洗った洗液と合わせ、有機層を分離した。水層より更に酢酸エチルにて抽出(200mL×2)後、有機層を水(200mL)及び飽和食塩水(200mL)で洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧にて溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液n−ヘキサン/アセトン=8/1〜2/1)で精製し、目的化合物(28.97g,収率58.9%)を淡黄色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.22−1.44(12H,m),1.51−1.83(4H,m),2.40(2H,m),3.89(3H,s),4.65(1H,br),7.27(2H,d,J=6Hz),7.32(2H,d,J=6Hz).
(4)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−12−ヒドロキシドデカン酸の合成
2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−12−ヒドロキシドデカン酸メチル(28.88g,70.48mmol)をメタノール300mLにて溶解し、2mol/L水酸化リチウム水溶液(70.5mL,141mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。減圧にて反応液からメタノールを留去した後、水200mLを加え、氷冷下2mol/L塩酸を滴下し酸性とした。
この混合物にクロロホルム−メタノール10:1の混液800mLを加えて有機層を分離し、水層よりさらにクロロホルム−メタノール10:1の混液で抽出(200mL×3)した。有機層を水(100mL)及び飽和食塩水(100mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧にて溶媒留去して無色油状物を得た。この油状物に種晶を接種し、さらに攪拌下減圧乾燥して粗目的物27.80gを白色結晶性粉末として得た。これをジエチルエーテル−n−ヘキサンの混液より再結晶し、目的化合物(16.00g,収率57.4%)を白色結晶性粉末として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.22−1.45(12H,m),1.57(2H,m),1.68(1H,m),1.78(1H,m),2.45(2H,m),4.03−5.01(1H,br),4.70(1H,dd,J=8,6Hz),7.27(2H,d,J=9Hz),7.32(2H,d,J=9Hz).
融点:62.2〜63.5℃(再結晶溶媒:ジエチルエーテル−n−ヘキサン)
例4
(1)メチル 2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−11−ドデセノエートの合成
2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−12−ヒドロキシドデカン酸メチル(8.89g,21.91mmol)をトルエン300mLに溶解し、p−トルエンスルホン酸一水和物(1.67g,8.78mmol)を加え、80℃にて4時間攪拌した。反応液に水200mL、飽和重曹水10mLを加えて洗浄し、水層をさらに酢酸エチル100mLで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、抽出液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液 酢酸エチル/n−ヘキサン=1/1)で精製した。溶媒を減圧留去し、目的化合物(8.38g,収率97.6%)を黄色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.24−1.41(8H,m),1.42−1.51(2H,m),1.52−1.63(2H,m),2.14−2.25(2H,m),2.37−2.48(2H,m),3.89(3H,s),6.20(1H,dt,J=16,7Hz),6.32(1H,d,J=16Hz),7.22−7.30(4H,m).
(2)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−11,12−エポキシドデカン酸メチルの合成
メチル 2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−11−ドデセノエート(8.38g,21.39mmol)をクロロホルム200mLに溶解し、3−クロロ過安息香酸(7.38g,42.77mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。反応液を5%チオ硫酸ナトリウム溶液200mL、飽和食塩水200mLの順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、淡黄色結晶の残留物12.24gを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液n−ヘキサン/クロロホルム=1/9)で精製し、目的化合物(8.30g,収率95.2%)を無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.23−1.41(8H,m),1.42−1.62(4H,m),1.62−1.72(2H,m),2.36−2.46(2H,m),2.89(1H,td,J=6,2Hz),3.58(1H,d,J=2Hz),3.89(3H,s),7.16−7.22(2H,d,J=9Hz),7.28−7.33(2H,d,J=9Hz).
(3)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−11−ヒドロキシドデカン酸メチルの合成
2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−11,12−エポキシドデカン酸メチル(6.87g,16.85mmol)を酢酸エチル200mLに溶解し、−12℃にて10%パラジウム炭素触媒(1.37g)を加え、水素ガス雰囲気下同温度で1時間攪拌した。パラジウム炭素を濾別し、濾過物を酢酸エチル60mLで洗浄した。濾液を減圧留去し、無色油状物の残留物6.89gを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液n−ヘキサン/酢酸エチル=8/1〜4/1)で精製し、目的化合物(6.27g,収率90.8%)を無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.23−1.64(14H,m),2.36−2.46(2H,m),2.63(1H,dd,J=14,8Hz),2.79(1H,dd,J=14,4Hz),3.79(1H,m),3.89(3H,s),7.15(2H,d,J=8Hz),7.28(2H,d,J=8Hz).
(4)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−11−ヒドロキシドデカン酸の合成
2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−11−ヒドロキシドデカン酸メチル(4.62g,11.27mmol)をメタノール25mLに溶解し、氷水冷却下2mol/L水酸化リチウム溶液(11.3mL,22.60mmol)を約5分間かけて滴下し、同温度で30分間攪拌した。反応液に飽和食塩水75mLを加え、氷水冷却下2mol/L塩酸15mLを滴下し酸性にし、クロロホルムで抽出(50mL、20mL×2)した。有機層を合わせ飽和食塩水100mLで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。この残留物にn−ヘキサン100mLを加え氷水冷却下攪拌して結晶化し、結晶を濾取、n−ヘキサン洗浄、風乾し、無色結晶性粉末4.41g得た。この結晶を酢酸エチル5mL−n−ヘキサン40mLの混液から再結晶し、目的化合物(4.01g,収率89.9%)を無色微小針状晶として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.24−1.42(10H,m),1.42−1.65(4H,m),2.38−2.48(2H,m),2.67(1H,dd,J=14,8Hz),2.81(1H,dd,J=14,4Hz),3.86(1H,m),7.15(2H,d,J=8Hz),7.27(2H,d,J=8Hz).
融点:84.1〜85.8℃(再結晶溶媒:酢酸エチル−n−ヘキサン)
例5
(1)3−ベンゾイルオキシ−10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)デカンの合成
例2(2)と同様の方法で10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)−3−デカノール(196mg,0.564mmol)とベンゾイルクロリド(95mg,0.676mmol)より、目的化合物(211mg,収率82.8%)を無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.24−1.80(12H,m),1.80−2.09(2H,m),2.57−2.76(2H,m),3.34(2H,t,J=7Hz),5.11−5.22(1H,m),7.09(2H,d,J=9Hz),7.21(2H,d,J=9Hz),7.44(2H,t,J=7Hz),7.56(1H,t,J=7Hz),8.02(2H,d,J=7Hz).
(2)10−ベンゾイルオキシ−2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)ドデカン酸メチルの合成
例2(3)と同様の方法で3−ベンゾイルオキシ−10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)デカン(116mg,0.257mmol)より、目的化合物(31.3mg,収率23.7%)を無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.15−1.82(12H,m),1.82−2.11(2H,m),2.33−2.44(2H,m),2.58−2.76(2H,m),3.88(3H,s),5.11−5.22(1H,m),7.10(2H,d,J=9Hz),7.22(2H,d,J=9Hz),7.45(2H,t,J=7Hz),7.57(1H,t,J=7Hz),8.02(2H.d,J=7Hz).
(3)10−ベンゾイルオキシ−2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)ドデカン酸メチルの光学分割
光学活性カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(カラム:ダイセル化学工業製Chiralcel OJ,移動相n−ヘキサン:2−プロパノール19:1)により、10−ベンゾイルオキシ−2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)ドデカン酸メチルのラセミ体1.28gを光学分割した。
(a)リテンションタイムが短いピーク成分のみを含むフラクションを合わせて減圧濃縮後、再度フラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出液n−ヘキサン/酢酸エチル=20/1〜10/1)で精製し、(+)−10−ベンゾイルオキシ−2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)ドデカン酸メチル(光学活性カラムChiralcel OJリテンションタイムが短いピーク成分)(449mg,収率35.1%)を無色油状物として得た。
HPLC面積比による光学純度:>99%ee(Chiralcel OJ,移動相n−ヘキサン:2−プロパノール19:1)
比旋光度:[α]27=+8.23(c 1.15,CHCl
(b)リテンションタイムが長いピーク成分のみを含むフラクションを合わせて減圧濃縮後、再度フラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出液n−ヘキサン/酢酸エチル=20/1〜10/1)で精製し、(−)−10−ベンゾイルオキシ−2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)ドデカン酸メチル(光学活性カラムChiralcel OJリテンションタイムが長いピーク成分)(432mg,収率33.8%)を無色油状物として得た。
HPLC面積比による光学純度:>99%ee(Chiralcel OJ,移動相n−ヘキサン:2−プロパノール19:1)
比旋光度:[α]27=−8.06(c 1.10,CHCl
(4)(+)−2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−10−ヒドロキシドデカン酸の合成
例2(4)と同様の方法で(+)−10−ベンゾイルオキシ−2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)ドデカン酸メチル(光学活性カラムChiralcel OJ前成分,>99%ee)(44.2g,86.0mmol)より目的化合物(19.58g,収率57.5%)を白色結晶性粉末として得た。
融点:103.1〜103.6℃(再結晶溶媒:酢酸エチル−n−ヘキサン)
H−NMR(CDCl)δ:1.26−1.63(12H,m),1.71−1.79(2H,m),2.38−2.47(2H,m),2.58−2.69(1H,m),2.70−2.80(1H,m),3.68(1H,br),7.12(2H,d,J=8Hz),7.24(2H,d,J=8Hz).
HPLC面積比による光学純度:>99%ee(Chiralpak AD−RH,移動相アセトニトリル:5mM HPO緩衝液70:30)
比旋光度:[α]23=+8.06(c 5.00,CHCl
(5)(−)−2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−10−ヒドロキシドデカン酸の合成
上記(4)と同様の方法で(−)−10−ベンゾイルオキシ−2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)ドデカン酸メチル(光学活性カラムChiralcel OJ後成分,>99%ee)(44.3g,86.2mmol)より目的化合物(20.59g,収率60.4%)を白色結晶性粉末として得た。
融点:103.0〜103.7℃(再結晶溶媒:酢酸エチル−n−ヘキサン)
H−NMR(CDCl)δ:1.19−1.63(12H,m),1.68−1.85(2H,m),2.38−2.47(2H,m),2.58−2.68(1H,m),2.70−2.81(1H,m),3.68(1H,br),7.12(2H,d,J=9Hz),7.24(2H,d,J=9Hz).
HPLC面積比による光学純度:>99%ee(Chiralpak AD−RH,移動相アセトニトリル:5mM HPO緩衝液70:30)
比旋光度:[α]23=−8.02(c 5.00,CHCl
例6
(1)10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)−5−メトキシメトキシデカンの合成
例1(1)で得た10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)−5−デカノール(14.51g,41.7mmol)とジイソプロピルエチルアミン(10.78g,83.4mmol)をクロロホルム200mLに溶解し氷冷下攪拌した。これにクロロメチルメチルエーテル(5.04g,62.6mmol)を滴下した後、氷冷下1時間攪拌し、更に室温にて30時間攪拌を続けた。
反応液を氷水冷却下、2mol/L塩酸100mLをゆっくり加えて攪拌した後、有機層を分取した。水層より更にクロロホルムで抽出(50mL×2)した後、有機層を合わせ精製水50mLで一回、次いで飽和食塩水50mLで一回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮した。この残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出液n−ヘキサン/酢酸エチル=20/1)で精製し、目的化合物(13.30g,収率81.4%)を無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.22−1.66(12H,m),1.86(2H,quint.,J=7Hz),2.58(2H,t,J=8Hz),3.36(3H,s),3.41(2H,t,J=7Hz),3.52(1H,quint.,J=7Hz),4.63(2H,s),7.09(2H,d,J=8Hz),7.23(2H,d,J=8Hz).
(2)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−8−メトキシメトキシドデカン酸メチルの合成
例1(3)と同様の方法で10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)−5−メトキシメトキシデカン(13.30g,33.95mmol)と、ジクロロ酢酸メチル(19.42g,135.8mmol)より目的化合物(4.02g,収率26.1%)を無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.25−1.64(14H,m),2.38−2.44(2H,m),2.58(2H,t,J=8Hz),3.36(3H,s),3.51(1H,quint.,J=6Hz),3.89(3H,s),4.63(2H,s),7.09(2H,d,J=9Hz),7.23(2H,d,J=9Hz).
(3)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−8−ヒドロキシドデカン酸メチルの合成
2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−8−メトキシメトキシドデカン酸メチル(4.02g,8.86mmol)をメタノール150mLに溶解し氷冷下攪拌した。これに塩酸0.2mLを加え氷冷下15分間攪拌し、更に室温にて20時間攪拌した。
反応液を減圧濃縮した残渣にクロロホルム100mLと精製水100mLを加えて有機層を分取した。水層より更にクロロホルムで抽出(20mL×3)した後、有機層を合わせ精製水50mLで一回、次いで飽和食塩水50mLで一回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮した。この残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出液n−ヘキサン/酢酸エチル=10/1〜5/1)で精製し、目的化合物(2.93g,収率80.7%)を無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.22−1.51(10H,m),1.54−1.67(4H,m),2.39−2.45(2H,m),2.59(2H,t,J=8Hz),3.58(1H,m),3.89(3H,s),7.10(2H,d,J=9Hz),7.24(2H,d,J=9Hz).
(4)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−8−オキソドデカン酸メチルの合成
2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−8−ヒドロキシドデカン酸メチル(1.50g,3.66mmol)を塩化メチレン50mLに溶解し氷冷下攪拌した。これにクロロクロム酸ピリジニウム(PCC)(1.58g,純度98%,7.33mmol)をゆっくり加えた後、氷冷下30分間攪拌し、更に室温にて3時間攪拌を続けた。
反応液を水冷冷却下、ジエチルエーテル100mLをゆっくり加えて10分間攪拌した。この溶液をそのままシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液クロロホルム)に付し極性成分を除いた後に、減圧にて溶媒留去した。この残留物を更にシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出液n−ヘキサン/酢酸エチル=20/1〜10/1)で精製し、目的化合物(1.35g,収率90.4%)を淡黄色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.35(2H,quint.,J=8Hz),1.53−1.65(8H,m),2.36−2.44(6H,m),2.58(2H,t,J=7Hz),3.89(3H,s),7.09(2H,d,J=8Hz),7.23(2H,d,J=8Hz).
(5)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−8−オキソドデカン酸の合成
例1(4)と同様の方法で2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−8−オキソドデカン酸メチル(1.35g,3.31mmol)より目的化合物(1.15g,収率88.2%)を白色結晶性粉末として得た。
融点:48.8〜49.7℃(再結晶溶媒:ジエチルエーテル−n−ヘキサン)
H−NMR(CDCl)δ:1.37(2H,quint.,J=8Hz),1.53−1.68(8H,m),2.38−2.46(6H,m),2.58(2H,t,J=7Hz),7.09(2H,d,J=9Hz),7.23(2H,d,J=9Hz).
例7
(1)10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)−3−メトキシメトキシデカンの合成
例6(1)と同様の方法で、例2(1)で得た10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)−3−デカノール(5.80g,16.7mmol)とクロロメチルメチルエーテル(4.04g,40.1mmol)より目的化合物(5.73g,収率87.7%)を無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.25−1.60(10H,m),1.72−1.89(4H,m),2.61(1H,m),2.70(1H,m),3.40(3H,s),3.50−3.59(3H,m),4.65(1H,d,J=7Hz),4.68(1H,d,J=7Hz),7.12(2H,d,J=8Hz),7.24(2H,d,J=8Hz).
(2)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−10−メトキシメトキシドデカン酸メチルの合成
例1(3)と同様の方法で10−ブロモ−1−(4−クロロフェニル)−3−メトキシメトキシデカン(5.70g,14.6mmol)と、ジクロロ酢酸メチル(6.23g,43.6mmol)より目的化合物(645mg,収率9.8%)を淡黄色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.23−1.79(14H,m),2.41(2H,m),2.61(1H,m),2.70(1H,m),3.40(3H,s),3.56(1H,m),3.89(3H,s),4.65(1H,d,J=7Hz),4.68(1H,d,J=7Hz),7.12(2H,d,J=8Hz),7.24(2H,d,J=8Hz).
(3)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−10−ヒドロキシドデカン酸メチルの合成
例6(3)と同様の方法で2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−10−メトキシメトキシドデカン酸メチル(1.09g,2.40mmol)より目的化合物(842mg,収率85.6%)を無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.23−1.63(12H,m),1.64−1.82(2H,m),2.41(2H,m),2.64(1H,m),2.77(1H,m),3.60(1H,m),3.89(3H,s),7.13(2H,d,J=8Hz),7.24(2H,d,J=8Hz).
(4)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−10−オキソドデカン酸メチルの合成
例6(4)と同様の方法で2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−10−ヒドロキシドデカン酸メチル(840mg,2.05mmol)より目的化合物(749mg,収率89.6%)を無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.19−1.42(6H,m),1.49−1.61(4H,m),2.37(2H,t,J=8Hz),2.40(2H,m),2.70(2H,t,J=8Hz),2.86(2H,t,J=8Hz),3.89(3H,s),7.12(2H,d,J=8Hz),7.23(2H,d,J=8Hz).
(5)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−10−オキソドデカン酸の合成
例1(4)と同様の方法で2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−10−オキソドデカン酸メチル(735mg,1.80mmol)より目的化合物(567mg,収率79.9%)を淡黄色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.19−1.42(6H,m),1.47−1.65(4H,m),2.39(2H,m),2.43(2H,m),2.71(2H,t,J=8Hz),2.86(2H,t,J=8Hz),7.11(2H,d,J=8Hz),7.24(2H,d,J=8Hz).
例8
(1)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−11−オキソドデカン酸メチルの合成
例6(4)と同様の方法で、例4(3)で得た2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−11−ヒドロキシドデカン酸メチル(5.06g,12.35mmol)より目的化合物(4.36g,収率86.6%)を無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.17−1.38(8H,m),1.49−1.61(4H,m),2.36−2.42(2H,m),2.44(2H,t,J=7Hz),3.65(2H,s),3.89(3H,s),7.13(2H,d,J=9Hz),7.30(2H,d,J=9Hz).
(2)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−11−オキソドデカン酸の合成
例1(4)と同様の方法で2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−11−オキソドデカン酸メチル(4.36g,10.69mmol)より目的化合物(3.90g,収率92.6%)を白色結晶性粉末として得た。
融点:56.8〜57.8℃(再結晶溶媒:ジエチルエーテル−n−ヘキサン)
H−NMR(CDCl)δ:1.18−1.40(8H,m),1.50−1.61(4H,m),2.40−2.45(2H,m),2.45(2H,t,J=8Hz),3.67(2H,s),7.13(2H,d,J=9Hz),7.30(2H,d,J=9Hz).
例9
(1)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−12−オキソドデカン酸メチルの合成
例6(4)と同様の方法で、例3(3)で得た2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−12−ヒドロキシドデカン酸メチル(3.07g,7.49mmol)より目的化合物(2.87g,収率93.9%)を白色結晶性粉末として得た。
融点:55.2〜56.2℃(再結晶溶媒:クロロホルム−n−ヘキサン)
H−NMR(CDCl)δ:1.28−1.41(10H,m),1.57(2H,m),1.72(2H,m),2.41(2H,m),2.93(2H,t,J=8Hz),3.89(3H,s),7.43(2H,d,J=9Hz),7.90(2H,d,J=9Hz).
(2)2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−12−オキソドデカン酸の合成
例1(4)と同様の方法で2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−12−オキソドデカン酸メチル(2.75g,6.74mmol)より目的化合物(1.74g,収率65.5%)を白色結晶性粉末として得た。
融点:82.4〜83.0℃(再結晶溶媒:クロロホルム−n−ヘキサン)
H−NMR(CDCl)δ:1.27−1.42(10H,m),1.60(2H,m),1.72(2H,m),2.45(2H,m),2.94(2H,t,J=8Hz),7.44(2H,d,J=9Hz),7.91(2H,d,J=9Hz).
試験例1
本発明の化合物および比較化合物として前記の化合物Aおよび塩酸ピオグリタゾンのin vivoにおける血漿グルコース、インスリン、トリグリセライド低下作用を以下の方法で測定した(Metabolism,48,pp34−40,1999,Journal of Medicinal Chemistry,44,pp2601−2611,2001)。
(1)測定方法
試験動物として、ジャクソン・ラボラトリー(米国)で開発され、肥満、高脂血症、高インスリン血症及びインスリン抵抗性モデルとして知られているC57BL/KsJ db/dbマウス(Journal of Clinical Investigation,85,pp962−967,1990)を用いた。
7週齢のdb/dbマウスからヘパリン処理毛細管を用いて眼窩静脈叢から採血し、遠心分離後に血漿を採取して血漿グルコース濃度、インスリン濃度およびトリグリセライド濃度を測定して群分けを行った。採血翌日より化合物の投与を開始し、14日間1日1回経口投与した。投与開始14日目の化合物投与2時間後に眼窩静脈叢から採血した。血漿を採取して血漿グルコース濃度、インスリン濃度およびトリグリセライド濃度を測定した。
また、血漿グルコース濃度については、本発明の化合物と比較化合物の効力比を明らかにするため、媒体投与における平均値を100%とした時にそれぞれ25%低下させる投与量(ED25)を本発明化合物と比較化合物それぞれについて求め比較した(Arznimittel−Forschung,40,pp156−162,1990)。
(2)結果
表1に本発明化合物および比較化合物の血漿グルコース、インスリン、およびトリグリセライド低下活性を示す。表1に示された結果から、本発明化合物は化合物Aや塩酸ピオグリタゾンよりも優れた血漿グルコース、インスリン、トリグリセライド低下作用を示すことがわかる。

本発明の化合物は低用量から作用が認められることから、血漿グルコース低下作用について、ED25値を算出して作用発現用量の比較を行った。表2に本発明の化合物と比較化合物の血漿グルコース低下作用の効力比をED25値でまとめた。本発明の化合物のうち、例2(4)の化合物では0.6mg/kg、例4(4)の化合物では1.1mg/kg、例5(4)の化合物では0.5mg/kgであるのに対し、化合物Aでは2.8mg/kgであった。すなわち、本発明の化合物は化合物Aの1/2.5〜1/5.6の用量で同等の血漿グルコース低下作用を示した。
この結果から、本発明の化合物を有効成分として含む医薬には、副作用の軽減や他剤との併用における薬物相互作用の回避が期待できることがわかった。

【産業上の利用可能性】
上記一般式(1)で表わされる化合物、その塩、及びそのエステルは、強力な血糖降下作用、血漿インスリン低下作用、及びトリグリセライド低下作用を有しており、体重増加や肥満を伴わずに、糖尿病、糖尿病合併症、高脂血症、及び動脈硬化症等の疾患の予防及び/又は治療を可能にする医薬の有効成分として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1):

[式中、mは0から4の整数を示し、nは5から9の整数を示し、Wは−CH(OR)−(Rは水素原子又は水酸基の保護基を示す)又は−C(=O)−を示す]で表される化合物、その塩、又はそのエステル。
【請求項2】
n+mが9である請求の範囲第1項に記載の化合物、その塩、又はそのエステル。
【請求項3】
2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−10−ヒドロキシドデカン酸及び2,2−ジクロロ−12−(4−クロロフェニル)−11−ヒドロキシドデカン酸からなる群から選ばれる化合物、その塩、又はそのエステル。
【請求項4】
請求の範囲第1項に記載の一般式(1)[式中、mは0から4の整数を示し、nは5から9の整数を示し、Wは−CH(OR)−(Rは水素原子又は水酸基の保護基を示す)又は−C(=O)−を示す]で表わされる化合物、生理学的に許容されるその塩、及び生理学的に許容されるそのエステルからなる群から選ばれる物質を有効成分として含む医薬。
【請求項5】
高脂血症、動脈硬化症、糖尿病、糖尿病合併症、炎症、及び心疾患からなる群から選ばれる疾患の予防及び/又は治療のための請求の範囲第4項に記載の医薬。
【請求項6】
さらに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の形態の請求の範囲第4項又は第5項に記載の医薬。

【国際公開番号】WO2004/103946
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506421(P2005−506421)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007316
【国際出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】