説明

カルレティキュリン、KDEL受容体および/またはERp57の細胞表面露出を調節する化合物および癌の処置の効率を評価するためのその使用

本発明は、癌の処置に対する患者腫瘍細胞の感受性を決定するための方法に関し、この方法は腫瘍細胞の表面上のCRT、KDEL受容体および/またはERp57の検出または測定を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、癌の処置に対する腫瘍細胞の感受性を決定するためのインビトロまたはエキソビボ方法であって、細胞がその表面上に機能性のカルレティキュリン(CRT)、KDEL受容体および/またはERp57を露出しているかどうかを決定することを含む、方法に関する。本発明はまた、免疫系からの反応を誘導することができる、腫瘍細胞の表面におけるCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出の特定の活性化物質、ならびに、特に癌を予防または処置するための医薬組成物を調製するための、またはそれを必要とする哺乳動物における癌の療法の効率を改善するためのその使用に関する。本発明はさらに、キット、細胞の表面におけるCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を検出するための方法、目的の化合物を選択するための方法、ならびに医薬組成物およびその使用を提供する。
【0002】
発明の背景
癌は、大部分の工業国における主要な死因である。癌の処置の様々な方法が使用され得る:外科手術、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法および化学療法。多数の研究室が癌療法の改善を見出すための研究を主導している。化学療法は細胞死を導く。以下の2つの型の細胞死が知られている:アポトーシスおよび壊死。
【0003】
アポトーシス細胞死は免疫原性が低い(または免疫寛容原性でさえある)が、壊死細胞死は真に免疫原性であると長らく仮定されていた(Bellamy, C.O., Malcomson, R.D., Harrison, D.J. & Wyllie, A.H. Semin Cancer Biol 6, 3-16 (1995) ; Thompson, C.B. Science 267, 1456-1462 (1995) ; Igney, F.H. & Krammer, P.H. Nat Rev Cancer. 2, 277-88 (2002))。
【0004】
この差異は、例えば局所的炎症反応(「危険シグナル」)を刺激することによって、そして/または樹状細胞(DC)の成熟を引き起こすことによって、免疫応答を刺激する、非アポトーシス細胞死で死滅している細胞の固有の能力から生じると考えられていた(Steinman, R.M., Turley, S., Mellman, I. & Inaba, K. J Exp Med. 191, 411-6 (2000) ; Liu, K. et al. J Exp Med 196, 1091-1097. (2002))。
【0005】
壊死(これは、活発な形質膜破裂によって規定される)とは対照的に、アポトーシスには、死滅している細胞を食細胞にとって食可能(palatable)にする形質膜における一連の微細な変化が付随する(Kroemer, G. et al. Cell Death Differ 12, 1463-1467 (2005))。細胞の外側からの可溶性タンパク質の吸着(例えば、C1qおよびトロンボスポンジン)および細胞の内部から表面への分子の移行(例えば、ホスファチジルセリン、PS、およびカルレティキュリン、CRT)、ならびに「食拒絶(don't eat me)」シグナルの抑制(例えば、CD47)を含む、このような「食誘引(eat me)」シグナル(Savill, J. & Fadok, V. Nature 407, 784- (2000) ; Lauber, K., Blumenthal, S.G., Waibel, M. & Wesselborg, S. Mol Cell. 14, 277-87 (2004) ; Yoshida, H. et al. Nature 437, 754-8 (2005) ; Gardai, S.J. et al. Cell 123, 321-34 (2005) ; Henson, P.M. & Hume, D.A. Trends Immunol 27, 244-50 (2006))は、専門および非専門食細胞によるアポトーシス細胞の認識および除去を誘起する。アポトーシス細胞の最適以下のクリアランスは、所望されない免疫反応を引き起こし得、そして自己免疫疾患を導き得る(Hanayama, R. et al. Science 3004, 1147-50. (2004) ; Gaipl, U.S. et al. Curr Top Microbiol Immunol 305, 161-76 (2006))。
【0006】
それにもかかわらず、免疫原性壊死対免疫寛容原性アポトーシスの間の二分は簡略化のしすぎであるようである。従って、予定外の(壊死)腫瘍細胞死は局所的免疫抑制を誘導し得る(Vakkila, J. & Lotze, M.T Nat Rev Immunol 4, 641-8 (2004))。さらに、免疫応答を引き起こすアポトーシス腫瘍細胞の能力はアポトーシス誘導物質に依存することが見出され、これは2つの形態的に区別可能でないアポトーシスのサブカテゴリー、すなわち免疫原性対非免疫原性アポトーシスの同定を導いた(Casares, N. et al. J. Exp. Med. 202, 1691-701 (2005) ; Blachere, N.E., Darnell, R.B. & Albert, M.L. PLoS Biol. 3, e185 (2005))。
【0007】
標準的な化学療法の大部分は非免疫原性アポトーシスを誘導する(Zitvogel, L., Casares, N., Pequignot, M., Albert, M.L. & Kroemer, G. Adv. Immunol. 84, 131-79 (2004) ; Steinman, R.M. & Mellman, I. Science 305, 197-200 (2004) ; Lake, R.A. & van der Most, R.G. N Engl J Med 354, 2503-4 (2006))。従って、最初は効率的な化学療法の後でさえ、患者は効率的な自己腫瘍免疫応答を発達させず、次いで化学療法耐性腫瘍変異体によって克服される。抗癌化学療法を改善するために、有望な方法は免疫原性癌細胞死によってもたらされる。実際、免疫原性癌細胞死の誘導は、免疫系が「傍観者効果」を介して寄与して、化学療法耐性癌細胞および癌幹細胞を根絶し得るという点で非常に興味深いはずである(Steinman, R.M. & Mellman, I. Science 305, 197-200 (2004) ; Lake, R.A. & van der Most, R.G. N Engl J Med 354, 2503-4 (2006); Zitvogel, L., Tesniere, A. & Kroemer, G. Nat Rev Immunol in press (2006))。
【0008】
化学療法の効率および応答性は、使用される薬物および化学療法に関与する分子に関連する。抗腫瘍化学療法において使用される主要な薬物は以下の4つの群に分割され得る:細胞傷害性薬剤、ホルモン、免疫応答モジュレーター、およびチロシンキナーゼ活性の阻害剤。細胞傷害性薬剤の中に、アントラサイクリン(アポトーシス誘導物質であるドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン)のような細胞傷害性抗生物質を見出すことができる。本発明者らは、アントラサイクリンが免疫原性アポトーシスを誘起できることを最初に示した(Casares, N., Pequignot, M.O., Tesniere, A., Ghiringhelli, F., Roux, S., Chaput, N., Schmitt, E., Hamai, A., Hervas-Stubbs, S., Obeid, M., Coutant, F., Metivier, D., Pichard, E., Aucouturier, P., Pierron, G., Garrido, C., Zitvogel, L., and Kroemer, G. J Exp Med. 202, 1691-701 (2005))。実際、小胞体(ER)(タプシガルジン、ツニカマイシン、ブレフェルジン)、ミトコンドリア(亜ヒ酸塩、ベツリン酸、C2セラミド)またはDNA(Hoechst33343、カンプトテシン、エトポシド、マイトマイシンC)を標的化する薬物を含む大部分のアポトーシス誘導物質は免疫原性アポトーシスを誘導できなかったが、アントラサイクリンは免疫原性細胞死を誘起した(図1B、Cに示すように)。研究の増大にもかかわらず、どの状況下で免疫応答が死滅している腫瘍細胞に対して引き起こされるのかは未解決の問題のままである(Zitvogel, L., Casares, N., Pequignot, M., Albert, M.L. & Kroemer, G. Adv. Immunol. 84, 131-79 (2004))。
【0009】
本発明は、カルレティキュリン(CRT)、KDEL受容体(KDEL受容体はCRT受容体である)およびERp57と名付けられたタンパク質が免疫原性細胞死のために死滅する細胞上に露出されているが、非免疫原性細胞死を受ける細胞の表面上では欠如しているという観察に基づいている。
【0010】
CRTは、癌を処置する別の方法であるホルモン応答の調節について既に記載されている。ホルモン受容体誘導遺伝子転写を調節するタンパク質は細胞の核中に存在し、そしてホルモンのその受容体への結合を阻害または促進する。特許US2003/0060613A1に記載される発明は、ホルモン応答性を調節すために使用される、抗癌療法において効率的な、精製タンパク質を提示する。US2003/0060613A1はCRTを合成タンパク質、その模倣タンパク質、CRTをコードするDNA分子、癌のような疾患を処置する方法、および前記タンパク質の1つを含む医薬を含むキットとして記載している。CRTは小胞体または細胞の核のいずれかに存在すると記載されている。この特許出願は、遺伝子転写に対する核CRTの作用の機構を記載している。
【0011】
ERp57は小胞体(ER)の管腔タンパク質であり、そしてタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)ファミリーのメンバーである。原型PDIとは対照的に、ERp57は新たに合成された糖タンパク質(CRTを含む)と特異的に相互作用することが知られている。Oliver et al.(MBC online, Vol. 10, Issue 8, 2573-2582, August 1999)は、ERp57がER管腔内のカルネキシンおよびCRTと相互作用して、糖タンパク質の折り畳みを調節することを示している。
【0012】
小胞体常在性タンパク質の大多数は残留モチーフを介して小胞体(ER)中に保持されている。このモチーフはタンパク質配列の末端の4つのアミノ酸から構成されている。最も一般的な残留配列はKDEL(Lys−Asp−Glu−Leu)である。哺乳動物細胞中には3つのKDEL受容体が存在し、そしてそれらは非常に高度の配列同一性を有している。KDEK受容体(KDEK−R)は通常ER内に存在する。本発明者らは、KDEL受容体がCRTのKDELモチーフとも相互作用できることを示した。
【0013】
発明の詳細な説明
「免疫原性細胞死」
癌の放射線療法および化学療法は、腫瘍細胞の直接的な排除を媒介すると考えられている。それにもかかわらず、抗癌療法が自然および同属免疫応答を誘起する細胞死の様相を誘導し得る状況が存在し、これは次に抗腫瘍効果の一部を媒介する。完全な治療の成功(治癒)の全ての場合に免疫学的構成要素が関与すると仮定することは合理的である。本発明者らは、細胞内カルレティキュリン(endo−CRT)の形質膜表面(ecto−CRT)への前アポトーシス性移行が「免疫原性細胞死」(または「免疫原性細胞アポトーシス」)の鍵となる特徴であることを示した。
【0014】
本発明者らは、より特定すると、死滅している細胞の形質膜における特定の変化:カルレティキュリン(CRT)、KDEL受容体および/またはERp57の表面露出、を同定した。この事象は、免疫原性癌細胞死において、すなわち免疫系の反応が関連する癌細胞死においてのみ生じる。免疫原性癌細胞死において、免疫系は、他の生理学的細胞破壊機構に加えて、死滅している細胞の排除にこのように関与する。外因性CRT、KDEL受容体および/またはERp57、またはCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を誘導するシグナルの外部提供は、そうでなければ非免疫原性の細胞死に免疫原性を付与して、すなわち免疫系を動員および活性化して、最適な抗癌化学療法を可能にする。
【0015】
本発明は、死滅している細胞に対する免疫系からの応答を誘導するための必須事項としてのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出の同定に基づいており、そして癌または感染のような疾患を予防または処置するための新たなストラテジーを描く。
免疫系からの応答を、それが腫瘍細胞に対する場合、本明細書において「抗癌免疫応答」と称する。
新たな処置ストラテジーを、それが癌に対する場合、本明細書においてさらに「癌の免疫原性処置」と称する。
【0016】
CRTおよび/またはERp57は、それらの少なくとも1つがその表面上に露出される場合に、任意の死滅している細胞に対する免疫系からの応答を誘導することができる。免疫系からのこの応答は、死滅している細胞の破壊に有利に働く。この現象を「免疫原性細胞死」または「免疫原性アポトーシス」と称する。
【0017】
従って、本発明者らは、本明細書において、CRTが死滅している細胞の表面上に露出される場合に、それが樹状細胞のような食細胞によるその破壊を促進することを実証する。次いで、食細胞は免疫系と相互作用し、これが今度は免疫応答を担う。
本発明者らはさらに、死滅している細胞の表面上にCRTが増加した量で存在する場合に、この効果が増幅されることを実証する。本発明者らは、本明細書において、CRTが、細胞死誘導物質(アポトーシス誘導物質)と接触させられた大部分の腫瘍細胞の表面上に、増加した量で存在することを実証する。
【0018】
本発明者らはさらに、CRT、KDEL受容体(CRT受容体)およびERp57の細胞表面露出のキネティクスが同一であること、および3つのタンパク質の全てが同じ刺激のパターンによって誘導されることを見出した。
【0019】
二重免疫蛍光染色は、実際、CRT、KDEL受容体およびERp57が、MTX処理細胞の表面上で一緒に出現する場合に、大部分が共存することを明らかにする(図8および図10)。本発明者らは、CRTを欠如しているマウス胚線維芽細胞(MEF)がMTX処理の後に表面上にERp57を露出できないことを見出した。逆に、ERp57を欠如しているMEFはMTX処理の後に表面上にecto−CRTを露出できない(示さず)。全体で、これらの結果は、ERp57およびCRTは細胞表面に一緒に移行すること、および免疫学的技術によるERp57表面露出の決定はCRTの表面露出(ecto−CRT)を正確に反映することを示す。従って、本発明者らは、例えば、トートマイシン(これもまたecto−CRT露出を誘導する(Obeid et al. Nat. Med. 2007))での処理もまた、免疫蛍光染色およびそれに続く細胞蛍光測定分析によって決定されるERp57の表面露出を刺激することを見出した(図9)。
【0020】
細胞表面におけるCRT、KDEL受容体および/またはERp57の配置または露出は、細胞内CRT、細胞内KDEL受容体および/または細胞内ERp57の細胞表面への移行の結果、および/または細胞外CRT、細胞外KDEL受容体および/または細胞外ERp57の細胞表面への移行の結果であり得る。
【0021】
本発明者らはまた、本明細書において、CRTおよびERp57の両方が免疫原特性をアポトーシス現象に付与できることを実証する。KDEL受容体も免疫原特性をアポトーシス現象に付与できる。
【0022】
本発明において、CRTは、組換えCRT、内因性CRTまたはその模倣物もしくは相同変異体であり得る。
本発明において、ERp57は、組換えERp57、内因性ERp57またはその模倣物もしくは相同変異体であり得る。
本発明において、KDEL受容体は、組換えKDEL受容体、内因性KDEL受容体またはその模倣物もしくは相同変異体であり得る。
【0023】
本発明において、用語「内因性」は、CRT、KDEL受容体およびERp57がそれぞれ野生型のCRT、KDEL受容体および野生型のERp57として細胞によって産生されることを意味する。野生型タンパク質は、その活性が、特に免疫系に関して、以前に記載される野生型タンパク質のものとそれぞれ実質的に同一であるが、細胞によって産生されるために人の介入を必要とする組換えのCRT(rCRT)、KDEL受容体(rKDEL受容体)およびERp57(rERp57)とは区別されなければならない。
【0024】
本発明において、用語「相同変異体」は、特に免疫系からの応答を誘導することができる(例えば、以前に定義されるような免疫原性細胞死またはアポトーシス)、対応する野生型タンパク質の特性を示す、欠失または置換されたアミノ酸を含む任意のCRT、KDEL受容体またはERp57タンパク質、例えば任意の野生型または組換えのCRT、KDEL受容体またはERp57タンパク質フラグメントを示すために使用される。
【0025】
本発明の特定の実施態様において、CRT、KDEL受容体および/またはERp57を、好ましくはウイルス、細菌、真菌および寄生体感染から選択される感染を予防または処置するために使用し得る。
【0026】
本発明の別の特定の実施態様において、CRT、KDEL受容体および/またはERp57を、任意の種類の癌または新形成を予防または処置するために使用することができる。
【0027】
本発明において、標的化される癌は、好ましくは以下の療法の1つに感受性の癌である:(i)化学療法、(ii)放射線療法、(iii)ホルモン療法、(iv)免疫療法、(v)特異的キナーゼ阻害剤に基づく療法、(vi)抗血管新生剤に基づく療法、および(vii)抗体に基づく療法、好ましくはモノクローナル抗体に基づく療法。
【0028】
化学療法に感受性の癌は、従来、任意の細胞傷害性薬剤または細胞死誘導物質、特に遺伝子毒性薬剤のような化合物を使用して処置されている。本発明の特定の実施態様において、細胞傷害性薬剤は、好ましくは例えばアントラサイクリン、有糸分裂阻害剤、DNA挿入剤、タキサン、ゲムシタビン、エトポシド、マイトマイシンC、アルキル化剤、白金に基づく成分、例えばシスプラチン、好ましくはオキサリプラチンおよびTLR−3リガンドから選択される化学療法剤である。
【0029】
好ましいアントラサイクリンは、例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシンおよびミトキサントロンから選択され得る。
【0030】
放射線療法に感受性の癌は、従来、例えばX線、γ線照射および/またはUVC照射から選択される照射を使用して処置されている。
【0031】
ホルモン療法に、すなわちアポトーシスまたはFasリガンドまたは可溶性/膜結合TRAILまたは可溶性/膜結合TNFα(TNFa)に導く療法に感受性の癌は、従来、例えばアロマターゼ阻害剤のような化合物を使用して処置されている。
【0032】
免疫療法に感受性の癌は、従来、例えばIL−2、IFNα(IFNa)、およびワクチンから選択される化合物を使用して処置されている。
【0033】
特異的キナーゼ阻害剤に基づく療法に感受性の癌は、従来、例えばチロシンキナーゼ阻害剤、セリンキナーゼ阻害剤およびトレオニンキナーゼ阻害剤から選択される化合物を使用して処置されている。
【0034】
抗体に基づく療法、好ましくはモノクローナル抗体に基づく療法に感受性の癌は、従来、例えば抗CD20または抗Her2/Neuのような特異的抗体を使用して処置されている。
【0035】
用語「従来」は、療法が適用されているかまたは、慣習的に適用されていないとしても、適切であり、そして少なくとも衛生当局によって推奨されていることを意味する。「従来」の処置は、予防または処置しようとする特定の癌に依存して癌学者(cancerologist)によって選択される。
【0036】
本発明において、標的化される癌は、従って、例えば、上記の治療産物の少なくとも1つに、特に以下の産物の少なくとも1つに感受性の癌であり得る:(i)細胞傷害性薬剤、(ii)キナーゼ阻害剤、(iii)抗血管新生剤、(vi)モノクローナル抗体。
【0037】
癌は、本発明において、好ましくは、乳癌、前立腺癌、結腸癌、腎臓癌、肺癌、骨肉種、GIST、黒色腫、白血病および神経芽細胞腫から選択される。
【0038】
好ましい乳癌は、従来、アントラサイクリン、タキサン、ハーセプチンおよび/またはTLR−3リガンドを用いて処置されている乳癌である。
好ましい前立腺癌は、従来、アントラサイクリンおよびX線を用いて処置されている前立腺癌である。
好ましい結腸癌は、従来、オキサリプラチンを用いて処置されている結腸癌である、
好ましい腎臓癌は、従来、サイトカインまたは抗血管新生薬物(ソラフェニブ)を用いて処置されている腎臓癌である。
好ましい肺癌は、従来、X線および白金を用いて処置されている肺癌である。
好ましい骨肉種および好ましいGISTはそれぞれ、従来、アントラサイクリンおよび/またはグリベックを用いて処置されている骨肉種およびGISTである。
好ましい黒色腫は、従来、電気化学療法または高用量のTNFαの単離肢灌流(isolated limb perfusion)を用いて処置されている黒色腫である。
【0039】
本発明において記載される腫瘍細胞は、好ましくは癌腫、肉腫、リンパ腫、黒色腫、小児腫瘍および白血病腫瘍から選択される。
【0040】
本発明者らは、本発明において、患者腫瘍細胞が自発的にはCRT、KDEL受容体および/またはERp57をその表面上に露出していない場合、前記腫瘍細胞に対する免疫系からの反応に有利に働くようにさらなる処置を前記患者に実施するべきであることを見出した。露出は、以前に記載されるような任意の従来の療法の実施の前または後に観察または決定され得る。腫瘍細胞の表面上のCRT、KDEL受容体および/またはERp57の自発的露出は、好ましくは、そのような適切な従来の療法の実施後に観察される。再び、前記従来の療法は、腫瘍の性質に直接的に依存する。
【0041】
上記のさらなる処置は、本発明によれば、CRT、KDEL受容体および/またはERp57の外因性供給、および/または腫瘍細胞の表面におけるCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を可能にするかまたは増強する化合物(例えば、下記で説明するようなPP1/GADD34阻害剤)の、好ましくは上記のような処置において使用される従来の治療剤と一緒の(相乗効果を得るための)投与であり得、前記従来の処置は、予防または処置しようとする癌の性質に従って、以前に例証されるように、癌学者によって容易に選択される。
【0042】
以前に示されるように、本発明の目的は、従って、哺乳動物、好ましくはヒトにおける上記で定義するような癌を予防または処置するための、癌の処置において、特に以前に記載されるような癌の従来の処置において使用される産物との組み合わせでの投与に好ましくは意図される、医薬組成物を調製するための、CRT、KDEL受容体および/またはERp57の使用である。
【0043】
医薬組成物は、好ましくは、上記の癌の処置の間およびまたは後に投与される。
【0044】
本発明の別の目的は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける上記で定義するような感染を予防または処置するための医薬組成物を調製するための、CRT、KDEL受容体および/またはERp57の使用である。
【0045】
本発明はまた、細胞に対する免疫系の活性を改変できる化合物をスクリーニングまたは選択するための方法を提供し、この方法は、試験化合物の存在下での細胞の表面におけるCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を検出するおよび/またはそのレベルを測定する工程であって、試験化合物に曝露されていないかまたは試験化合物と接触させられていないコントロール細胞と比較して改変された露出が、前記細胞に対する免疫系の活性を改変する前記化合物の能力の指標となる、工程を含む。
【0046】
本発明の別の目的は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける癌または感染を予防または処置するための医薬組成物を調製するための、死滅している細胞、特に腫瘍細胞の表面におけるCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を可能にするかまたは増強する任意の化合物または治療剤の使用である。この医薬組成物は、好ましくは、癌の処置との、そして以前に説明されるように、好ましくは天然には腫瘍細胞の表面上でのCRTおよび/またはERp57の露出を誘導しない処置との組み合わせでの投与に意図される。
【0047】
様々な化学療法剤が、見かけ上均一なアポトーシス経路を介して腫瘍細胞を死滅させ得るが、それらは免疫原性細胞死を刺激するその能力において異なる。従って、本発明者らは、アントラサイクリンおよびγ線照射が免疫原性細胞死を引き起こし、そして腫瘍細胞の表面上でのCRTおよび/またはERp57(それぞれ本明細書においてecto−CRTおよびecto−ERp57と称する)の露出を誘導するが、非免疫原性細胞死を誘導する他のアポトーシス促進性薬剤(例えば、マイトマイシンCおよびエトポシド)はecto−CRTおよび/またはecto−ERp57を誘導できないことを見出した。CRTおよび/またはERp57の枯渇は、アントラサイクリンによって誘起される細胞死の免疫原性を損なうが、CRTおよび/またはERp57の外因性供給または腫瘍細胞の表面へのCRTおよび/またはERp57の移行に有利に働く薬理学的薬剤によるCRTおよび/またはERp57の露出の強制は、腫瘍細胞に対する免疫系からの反応を誘導できる、すなわち細胞死の免疫原性を増強できる。
【0048】
CRT露出はUVC光によって誘導されることが知られている(Gardai, S.J. et al. Cell 123, 321-34 (2005))。本発明者らは、ここで、CRT露出がアントラサイクリン(図2に示すように)およびPP1/GADD34阻害剤(図5に示すように)によっても引き起こされ、そして特にKDELが関与し、そして同様に、外因性CRTおよび内因性事前形成CRTに結合できる細胞表面上の他の飽和性CRT受容体(Henson, P.M. & Hume, D.A. Trends Immunol 27, 244-50 (2006))の存在が関与する、本明細書に記載される分子機構を介する細胞内CRTの細胞表面への移行がCRT露出に関与することを実証する。
【0049】
本発明者らは、本明細書において、このCRTタンパク質が、一般にドキソルビシンおよびアントラサイクリンによって強く(6倍)誘導されることを実証する(図2Bおよび2Cに示すように)。2Dゲルのイムノブロット分析(示さず)および精製形質膜表面タンパク質の従来の電気泳動(図2Cに示すように)は、アントラサイクリンでの処理後のCRTの表面露出を確認する。このCRT表面露出は、アントラサイクリン処理生細胞の免疫蛍光染色によっても検出可能である(図2Dに示すように)。アントラサイクリンによるCRT露出の誘導は迅速なプロセスであり、処理の1時間後ほど早くに検出可能であり(図1S A、Bに示すように)、従ってアポトーシス関連ホスファチジルセリン(PS)露出に先行する(図1S S、Dに示すように)。注目すべきことに、細胞表面におけるCRTの出現(4時間目で測定)と20個の異なるアポトーシス誘導物質のパネルによって誘起される免疫原性との間に強い正の直線相関(p<0.001)が存在した(図2E)。
【0050】
免疫原性および免疫応答は、樹状細胞(DC)のような特定の細胞によって媒介され得る。本発明者らは、アントラサイクリン処理腫瘍細胞が、ドキソルビシンまたはミトキサントロンでの処理の数時間後にDCによって貪食される特性を獲得したことを示し(図3A、補足図2Aに示すように)、これはCRTの迅速な誘導(図3B、図1S A、Bに示すように)および免疫原性の獲得(補足図2Bに示すように)と相関する。
【0051】
ミトキサントロン(MTX)アントラサイクリンに応答して、種々のヒト腫瘍細胞株がCRTおよび/またはERp57をその細胞の表面上に露出する。CRTおよびERp57は通常、細胞内にのみ、大部分が小胞体と会合して見出される。しかし、アントラサイクリンとの短時間(5分間以上)の曝露の後に、CRTおよび/またはERp57を、非固定細胞に適用される免疫蛍光染色方法を使用して腫瘍細胞の表面上に検出することができる(図7Aおよび7B)。非常に類似した結果が、γ線照射またはUVC照射、またはイダルビシン、ダウノルビシンもしくはドキソルビシンから選択される他のアントラサイクリンへの曝露に際して得られる。
【0052】
従って、特異的抗体による、ミトキサントロン処理癌細胞の表面上に存在するCRTの遮断は、DCによるそのファゴサイトーシスを阻害する(図3Cに示すように)。逆に、細胞の表面に結合する組換えCRTタンパク質(rCRT)の添加は、抗体によって誘導される欠損を逆転させる。従って、ecto−CRT(細胞の表面上に露出されたCRT)はDCによる前記細胞のファゴサイトーシスを誘起する。さらに、形質膜表面へのrCRTの吸収は、rCRTでコートされたエトポシド処理細胞またはマイトマイシン処理細胞(図4Cに示すように)のような通常は免疫応答を誘導できない細胞の免疫原性を大いに増強し、そしてインビボにおいて活発な抗腫瘍免疫応答を誘起する(図4Dに示すように)。しかし、細胞死誘導物質での事前処理なしでの細胞表面へのrCRTの吸収は、抗癌免疫応答を誘起できなかった。
【0053】
本発明者らは、アントラサイクリンおよびPP1/GADD34阻害剤によって誘導されるCRT露出が、アクチン細胞骨格の阻害剤であるラトランクリンAによって損なわれることを観察した(補足図4に示すように)。本発明者らは、PP1/GADD34阻害がCRT露出を誘導すること、およびまた、この阻害が、PP1/GADD34のこのような阻害の非存在下で使用された場合に有効でない従来の療法、特に化学療法によって媒介される抗腫瘍免疫応答および抗腫瘍効果を改善できることを示した。
【0054】
本発明者らは、CRT、KDEL受容体および/またはERp57、ならびに腫瘍細胞の表面上でのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を可能にするかまたは増強する任意の化合物または治療剤が、腫瘍細胞の表面上でのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出、好ましくは増加した露出であって、免疫原性アポトーシスの誘導を担う露出を誘導することによって、それを必要とする哺乳動物における、癌の療法の、特に上記のような従来の療法の効率を改善できることを見出した。
【0055】
本発明者らは、CRT、KDEL受容体および/またはERp57、ならびに腫瘍細胞の表面上でのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を可能にするかまたは増強する任意の化合物または治療剤が、腫瘍細胞の表面上でのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出、好ましくは増加した露出であって、免疫原性アポトーシスの誘導を担う露出を誘導することによって、それを必要とする哺乳動物における、癌の療法の、特に上記のような従来の療法の効率を改善できることを見出した。
【0056】
腫瘍細胞の表面においてCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を可能にするかまたは増強する、本発明において使用可能な化合物または治療剤は、以前に記載されるような細胞傷害性薬剤または細胞死誘導物質であり得る。
【0057】
腫瘍細胞の表面においてCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を可能にするかまたは増強する、本発明において使用可能な好ましい化合物または治療剤は、以下から選択され得る:(i)CRT、(ii)KDEL受容体、(iii)ERp57、(iv)プロテインホスファターゼ1(PP1)の触媒サブユニットの阻害剤、(v)プロテインホスファターゼ1調節サブユニット15A(GADD34)の阻害剤、(vi)PP1/GADD34複合体の阻害剤、および(vii)アントラサイクリン。
【0058】
PP1の触媒サブユニットの好ましい阻害剤は、例えばトートマイシン、カリクリンAおよび適切なsiRNA(すなわち、PP1またはGADD34の翻訳を阻害するsiRNA)から選択され得る。
【0059】
PP1/GADD34複合体の好ましい阻害剤は、例えばサルブリナルおよび以下でさらに説明されるような特定のペプチドから選択され得る。
【0060】
好ましいアントラサイクリンは、例えばドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシンおよびミトキサントロンから選択され得る。
【0061】
従って、本発明は、哺乳動物、特にヒトにおける、本出願において以前に定義されるような、癌または感染を予防または処置するための医薬組成物を調製するための、(i)CRT、(ii)KDEL受容体、(iii)ERp57、(iv)プロテインホスファターゼ1(PP1)の触媒サブユニットの阻害剤、(v)プロテインホスファターゼ1調節サブユニット15A(GADD34)の阻害剤、(vi)PP1/GADD34複合体の阻害剤、および(vii)アントラサイクリンから選択される少なくとも1つの化合物の使用を包含する。癌を予防または処置するために意図される医薬組成物は、好ましくは、以前に説明されるような癌の処置において使用される産物とともに投与されることが意図される。
【0062】
さらなる実施態様において、本発明は、死滅している細胞、特に腫瘍細胞の表面におけるCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を可能にするかまたは増強するさらなる化合物を以下で提供する。
【0063】
プロテインホスファターゼ阻害剤
本出願は特に、哺乳動物、好ましくはヒトにおける癌を予防または処置するための医薬組成物を調製するための、例えばトートマイシン、カリクリンAおよび適切なsiRNA(すなわち、PP1またはGADD34の翻訳を阻害するsiRNA)から選択され得るPP1の触媒サブユニットの阻害剤、GADD34の阻害剤、およびサルブリナルおよび以下でさらに説明されるような特定のペプチドのようなPP1/GADD34の阻害剤から選択されるプロテインホスファターゼ阻害剤の使用に関する。この医薬組成物は、好ましくは、癌の従来の治療処置において使用可能な、上記のような、治療産物との、特に化学療法剤との、好ましくは腫瘍細胞の表面上でのCRTおよび/またはERp57の露出を天然には誘導しない化学療法剤との組み合わせで使用されることが意図される。
【0064】
本発明者らは、実際、本明細書において、プロテインホスファターゼが、キナーゼよりも広い触媒スペクトルを有することを実証する。ホスファターゼの特異性は、実際、基質認識を決定する非触媒コファクターとのその非共有結合相互作用によって増加される。本発明者らは、プロテインホスファターゼ1(PP1)およびそのサブユニットGADD34をより特定して研究した。驚くべきことに、本発明者らは、PP1の、GADD34のまたはそれらの複合体(PP1/GADD34)の阻害が、細胞表面におけるCRTおよび/またはERp57の増加した配置を誘導することを見出した(CRTについて図5に示すように)。
【0065】
特定の実施態様において、本発明は、哺乳動物、特にヒトにおける癌(以前に定義されるような)を予防または処置するための、好ましくは癌の従来の処置において使用される治療産物との組み合わせで使用されることが意図される医薬組成物を調製するための、任意の上記のプロテインホスファターゼ阻害剤の使用に関する。
【0066】
PP1/GADD34阻害剤
本発明の別のプロテインホスファターゼ阻害剤は、GADD34のフラグメントを含むペプチドであって、細胞におけるPP1/GADD34複合体の形成または活性を阻害するペプチド、またはPP1/GADD34複合体の形成または活性を阻害するその能力に影響を及ぼさない置換されたアミノ酸を含むその相同変異体である。
【0067】
本発明の意味で、PP1/GADD34複合体の形成を阻害するペプチドは、GADD34と競合して、PP1との複合体を形成することができ、それによって前記複合体を非機能性にし、すなわち細胞の表面上に発現されることができなくし、次いで免疫系からの反応を誘導できるペプチドである。
【0068】
本発明の意味で、PP1/GADD34複合体の活性を阻害するペプチドは、細胞の表面上での前記複合体の非発現を、そして/または免疫系の反応の非誘導を、または前記ペプチドの非存在下でのその反応と比較して減少した免疫系の反応を、担うペプチドである。
【0069】
GADD34の、以前に記載されるような、フラグメントは、好ましくは、配列番号1(ヒトGADD34)、すなわち、mapgqaphqa tpwrdahpff llspvmglls rawsrlrglg plepwlveav kgaalveagl egeartplai phtpwgrrpg eeaedsggpg edretlglkt ssslpeawgl lddddgmyge reatsvprgq gsqfadgqra plspsllirt lqgsdknpge ekaeeegvae eegvnkfsyp pshreccpav eeeddeeavk keahrtstsa lspgskpstw vscpgeeenq atedkrters kgarktsvsp rssgsdprsw eyrsgeasee keekaheetg kgeaapgpqs sapaqrpqlk swwcqpsdee esevkplgaa ekdgeaecpp cipppsaflk awvywpgedt eeeedeeede dsdsgsdeee geaeassstp atgvflkswv yqpgedteee ededsdtgsa edereaetsa stppasaflk awvyrpgedt eeeededvds edkeddseaa lgeaesdphp shpdqsahfr gwgyrpgket eeeeaaedwg eaepcpfrva iyvpgekppp pwapprlplr lqrrlkrpet pthdpdpetp lkarkvrfse kvtvhflavw agpaqaarqg pweqlardrs rfarriaqaq eelspcltpa ararawarlr npplapipal tqtlpsssvp sspvqttpls qavatpsrss aaaaaaldls grrgのフラグメントである。
【0070】
GADD34のフラグメントは、好ましくは、配列番号1のアミノ酸位置500〜600、好ましくはアミノ酸位置530〜580、より好ましくは位置540〜570、特に位置550〜565、好ましくは位置551〜562に含まれる。
【0071】
GADD34のフラグメントの配列は、好ましくは、配列番号1の5〜35アミノ酸、好ましくは10〜35アミノ酸、より好ましくは5〜15アミノ酸を含む。
【0072】
本発明による特に好ましいペプチドは、以下の配列:LKARKVRFSEKV(配列番号2)を含み、これはGADD34のフラグメントである。
【0073】
本発明による上記のペプチドは、細胞の表面上の形質膜に結合できる形質膜移行モチーフをさらに含み得る。このモチーフは、必要であれば、標的細胞、例えば腫瘍細胞または感染細胞へ本発明によるペプチドを向けるために使用され得る。
【0074】
標的化される腫瘍細胞は、好ましくは、癌腫、肉腫、リンパ腫、黒色腫、小児腫瘍または白血病腫瘍に由来する。
【0075】
腫瘍細胞を標的化するために本発明において使用可能な移行モチーフは、以下の配列:VKKKKIKREIKI(配列番号3)を含み、これはN末端DPT−sh1配列である。
【0076】
本発明による特定のペプチドは、以下の配列:VKKKKIKREIKI−LKARKVRFSEKV(配列番号4)を含み、これはGADD34のフラグメントおよび移行モチーフを含む。
【0077】
このペプチドは、以前に説明されるように、PP1/GADD34阻害の迅速な生化学的帰結の1つである、細胞の表面上でのCRT(ecto−CRT)、KDEL受容体および/またはERp57(ecto−ERp57)の露出を刺激するその能力について試験された。
図7Aおよび7Bによって反映されるように、配列番号4を含む上記のペプチドは、2つの異なる細胞株、すなわちヒトHCT116結腸癌細胞およびマウスCT26結腸癌細胞において、カルレティキュリンの露出(細胞の免疫蛍光染色およびそれに続く細胞蛍光測定分析によって測定される)を誘導することができる。同様の結果が、HeLa細胞およびマウス胚線維芽細胞を用いて得られた(示さず)。内部コントロールとして、本発明者らは、GADD34由来配列の2つのアミノ酸がアラニンによって置換された変異体ペプチド(完全配列:VKKKKIKREIKI−lkaravafsekv)を生成した。この変異体コントロールペプチドはカルレティキュリン露出を誘導せず、反応の特異性が確認された。
【0078】
本発明はさらに、細胞におけるPP1/GADD34複合体の形成または活性を阻害できる、上記で定義するようなペプチドをスクリーニングまたは選択するための方法を提供する。この方法は、以下の工程:
a)配列番号1内のフラグメント配列またはその相同フラグメントを含む試験ペプチドを提供する工程、
b)工程a)の試験ペプチドを細胞と接触させる工程、および
c)前記細胞の表面上のカルレティキュリン(CRT)、KDEL受容体および/またはERp57の露出を検出するおよび/またはそのレベルを測定する工程であって、試験ペプチドと接触させられていないかもしくはそれに曝露されていないかまたは前記試験ペプチドの変異体と接触させられたかもしくはそれに曝露されたコントロール細胞と比較して増強された露出が、細胞におけるPP1/GADD34複合体の形成または活性の阻害の指標となる、工程
を含む。
【0079】
工程a)のフラグメント配列は配列番号1内で選択される。前記配列は、好ましくは、上記のように、配列番号1のアミノ酸位置500〜600、好ましくは位置530〜580、より好ましくは位置540〜570、特に位置550〜565、好ましくは位置551〜562に含まれる。
【0080】
上記のように、配列番号1内で選択されるフラグメント配列は、好ましくは、配列番号1の5〜35アミノ酸、好ましくは10〜35アミノ酸、より好ましくは5〜15アミノ酸を含む。
【0081】
本発明はさらに、上記のような方法を用いて選択されたペプチドの活性を改善するための方法であって、少なくとも1つのアミノ酸を、PP1/GGAD34複合体の形成または活性を阻害する配列の能力を増強する異なるアミノ酸によって置換する工程を含む、方法を提供する。
【0082】
PP1/GGAD34複合体の形成または活性を阻害する配列の能力を増強する少なくとも1つの異なるアミノ酸は、(i)ぺプチダーゼまたはプロテアーゼのような酵素に対する増加した耐性をペプチドに提供する、(ii)ペプチドの生物学的利用能を改善するそして/または(iii)PP1/GADD34複合体の形成または活性に対するその阻害機能を増強する任意のアミノ酸であり得る。
【0083】
上記のような方法を用いて入手可能な選択されたペプチドは、以前に定義されるような形質膜移行モチーフを組み入れるようにさらに改変され得る。
従って、本発明はまた、(i)配列番号1の、またはその相同変異体の、フラグメントを含む選択されたペプチドの、そして(ii)細胞の表面に結合する形質膜移行モチーフの、融合体を含む、そのような改変されたペプチドを調製するための方法を提供する。
【0084】
本発明による上記のペプチドならびに以前に記載されるようなスクリーニングの方法によって入手可能なペプチド、またはその相同変異体の各々は、本明細書において新たな医薬として提供される。
【0085】
本発明はさらに、癌、特に乳癌、前立腺癌、結腸癌、腎臓癌、肺癌、骨肉種、GIST、黒色腫、白血病および神経芽細胞腫から選択される癌を予防または処置するための医薬組成物を調製するための、上記で定義されるようなペプチドの使用を含む。
【0086】
前記ペプチドを、薬学的に許容される賦形剤または希釈剤とともに含む医薬組成物もまた本明細書において提供される。
全ての本発明において使用可能な適切な賦形剤、希釈剤または担体は、例えば生理食塩水、等張性、無菌または緩衝化溶液などから選択され得る。それらは、安定化剤、甘味剤および/または界面活性剤などをさらに含み得る。それらは、アンプル、フラスコ、錠剤、またはカプセルの形態に、それ自体公知のガレヌスの技術を使用することによって処方され得る。
【0087】
この医薬組成物は、好ましくは、以前に提供される理由から、以前に定義されるような癌の処置において使用される産物との、特に化学療法剤のような癌の従来の処置との組み合わせでの投与に意図される。
【0088】
癌の従来の処置は、好ましくは(i)化学療法、(ii)放射線療法、(iii)ホルモン療法、(iv)免疫療法、(v)特異的キナーゼ阻害剤に基づく療法、(vi)抗血管新生剤に基づく療法、および(vii)モノクローナル抗体に基づく療法から選択される。
【0089】
特定の実施態様において、本発明は、哺乳動物、特にヒトにおける、癌(以前に定義されるような)または感染(以前に定義されるような)を予防または処置するための医薬組成物を調製するための、任意の上記のプロテインホスファターゼ阻害剤の使用に関する。
【0090】
特定の実施態様において、プロテインホスファターゼ阻害剤、または前記プロテインホスファターゼ阻害剤もしくはいくつかのプロテインホスファターゼ阻害剤の混合物を含む医薬組成物は、上記で定義されるような癌の処置、好ましくは以前に定義されるような癌の従来の処置との組み合わせでの投与に意図される。
【0091】
特定の実施態様において、本発明は、哺乳動物、特にヒトにおける以前に記載されるような感染性疾患を予防または処置するための医薬組成物を調製するための、任意の上記のプロテインホスファターゼ阻害剤の使用に関する。
【0092】
本発明の特定のプロテインホスファターゼ阻害剤は、トートマイシン、カリクリンA、サルブリナル、適切なsiRNA(以前に定義されるような)および以下で記載されるようなPP1/GADD34複合体のペプチド阻害剤から選択され得る。
【0093】
キナーゼ活性化物質
他方、eIF2αは、典型的にはストレスキナーゼの活性化に起因する小胞体ストレス下で過剰リン酸化されるタンパク質である(Zhang, K. & Kaufman, R.J. J Biol Chem 279, 25935-8 (2004))。本発明のさらなる局面において、本発明者らは従って、eIF2αをリン酸化することが知られているキナーゼが、細胞表面における増加したCRT、KDEL受容体および/またはERp57の移行および露出に関与し得ることを観察した。本発明者らは、そのようなキナーゼが、真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ、例えばヘム調節阻害剤(HRI、ヘミン感受性開始因子2αキナーゼまたは真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ1とも称する)、RNA活性化プロテインキナーゼ(PKR、真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ2とも称する)、PKR様ER局在化eIF2αキナーゼ(PERK、真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ3とも称する)およびGCN2(真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ4とも称する)から選択され得ることを見出した。
【0094】
本発明はまた、医薬としての、(i)真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ(HRI)、(ii)RNA活性化プロテインキナーゼ(PKR)、例えばToll様受容体3(TLR−3)リガンド、(iii)PKR様ER局在化eIF2αキナーゼおよび(iv)GCN2を活性化する化合物から選択されるキナーゼ活性化物質に関する。
【0095】
特定の実施態様において、本発明は、哺乳動物、特にヒトにおける、本出願において以前に定義されるような癌または感染を予防または処置するための医薬組成物を調製するための、上記のようなキナーゼ活性化物質の使用を包含する。
【0096】
哺乳動物、特にヒトにおける癌または感染を予防または処置するための上記のようなキナーゼ活性化物質もまた本明細書において開示される。
【0097】
癌を予防または処置するための医薬組成物は、好ましくは、癌の処置、好ましくは以前に定義されるような癌の従来の処置において使用される産物との組み合わせでの投与に意図される組成物である。
【0098】
生細胞の表面に吸着されたCRTはインビトロにおいて樹状細胞(DC)によるファゴサイトーシスを増強するが(図3Eに示すように)、局所性(図4Cに示すように)または全身性(図4D、図6に示すように)免疫応答をインビボで誘起するために、CRTは、実際、細胞死誘導物質と組み合わされなければならない。本発明者らは、細胞死誘導物質(エトポシドまたはマイトマイシンC)と、組換えカルレティキュリン(rCRT)、組換えKDEL受容体または組換えERp57(rERp57)との組み合わせが、免疫適格性動物において(免疫不全動物においてではなく)腫瘍退縮を引き起こすことができることを実証した。同様に、エトポシドまたはマイトマイシンCは、CRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を誘導する薬剤(サルブリナルまたはトートマイシン)と組み合わされ得、免疫適格性宿主において(無胸腺宿主においてではなく)安定な疾患または完全な腫瘍退縮を導く(図6A、Bに示すように)。生CT26細胞はCT26腫瘍から治癒された動物において増殖できず、このことは永久抗腫瘍免疫応答の確立を示す。本明細書において実証されるように、この知見を用いて、上記の化合物の1つ、例えばrCRT、rKDEL受容体、rERp57および/またはPP1/GADD34阻害剤と組み合わされた場合に、非免疫原性化学療法剤(以前に例証されるような癌の従来の処置において使用される治療剤から選択される)が免疫原性になる、効率的な抗腫瘍免疫応答を刺激することができる。これらの結果は、以前に記載されるもののような確立された癌を治癒するための、またはウイルス、細菌、真菌または寄生体感染のような感染を治癒するための「免疫原性化学療法」のストラテジーを描く。
【0099】
抗CRTおよび抗ERp57抗体
自己免疫障害、例えば全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、皮膚炎、アレルギー、移植片対宿主病、移植片拒絶、または強制アポトーシスにおける強すぎる免疫原性、すなわち、死滅している細胞の表面におけるCRTおよび/またはERp57の露出に有利に働く上記の化合物の1つによって誘導される過剰なそして所望されない免疫原性において、以前に記載される目的とは反対に、細胞死に対する免疫系の作用を制限することは興味深い。
本発明者らは、これが、阻止または中和抗カルレティキュリンおよび/または抗ERp57抗体を使用した細胞表面へのCRTおよび/またはERp57の移行の減少によって得られ得ることを観察した。CRTおよび/またはERp57の移行を妨害する阻害または競合ペプチドもまた、細胞表面におけるCRTおよび/またはERp57の量を減少させ、次いでそれらの状況で免疫応答を低下させ得る。
【0100】
従って、本発明はまた、医薬としての、CRTおよび/またはERp57の移行の増加を妨害する阻止または中和抗CRTおよび/または抗ERp57抗体ならびに阻害/競合ペプチド、および特に、哺乳動物、好ましくはヒトにおける、特に上記のような自己免疫障害、アレルギー、移植片対宿主病または移植片拒絶を予防または処置するための医薬組成物を調製するためのそれらそれぞれの使用を包含する。
【0101】
本発明はさらに、阻止または中和抗CRT、抗KDEL受容体または抗ERp57抗体、または細胞表面上のCRTおよび/またはERp57の移行の増加を妨害する阻害/競合ペプチドを、薬学的に許容される賦形剤または希釈剤とともに含む特定の医薬組成物を記載する。
この医薬組成物は、好ましくは、以前に説明される理由から、癌の処置との組み合わせでの投与に意図される。
【0102】
疾患を予防または処置するための方法
本発明はまた、本明細書において定義されるような疾患、特に癌または感染を予防または処置するための方法であって、それを必要とする哺乳動物、特にヒトへの、(i)CRT、(ii)KDEL受容体、(iii)ERp57、(iv)プロテインホスファターゼ1(PP1)の触媒サブユニットの阻害剤、(v)プロテインホスファターゼ1調節サブユニット15A(GADD34)の阻害剤、(vi)PP1/GADD34複合体の阻害剤、(vii)アントラサイクリン、および(viii)上記のキナーゼから選択されるキナーゼ活性化物質から選択される少なくとも1つの化合物の投与を含む、方法に関する。
【0103】
この方法は、異なる癌の処置、例えば以前に記載されるものとの組み合わせで適用され得る。
【0104】
疾患を予防または処置するための上記の方法は、選択される化合物をそれを必要とする被験体の腫瘍中に直接的に注射する工程を含み得る。
【0105】
腫瘍細胞の表面上でのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を導く経路において作用する化合物
本発明者らは、本明細書において、細胞、特に腫瘍細胞の表面上でのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を導く経路における秩序正しい一連の分子事象を見出した。
この経路は、正の媒介物質の損失によってまたはそのような正の媒介物質の阻害剤の存在によって、いくつかのレベルで中断され得る。そのような中断の結果は、死滅している細胞の表面上でのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出の非存在および、その結果としての、免疫系の反応の非存在、換言すると、「免疫原性細胞死」の非存在である。
【0106】
本発明者らは、本明細書中以下で、その検出および/または測定が(i)細胞の表面上でのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出の存在またはレベルを決定するために、(ii)癌の処置に対する腫瘍細胞の感受性を決定するために、または(iii)被験体が癌の処置に応答するか否かを決定するために使用され得る分子を同定する。
【0107】
以下で詳述するような多大な一連の実験において、本発明者らは、CRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を説明する分子機構を決定した。
【0108】
第1の一連の実験において、本発明者らは、C−16セラミドがecto−CRTを迅速に誘導することを見出した(図10)。これらの結果は、スフィンゴミエリナーゼ(酸性または中性)、セラミドシンターゼ、セラミダーゼなどを含むセラミド合成に影響を及ぼす酵素が、アントラサイクリンまたは電離放射線、例えばγ線照射によって誘導される腫瘍細胞の表面上でのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出の効力に影響を及ぼし得ることを示唆する。
【0109】
本発明者らはまた、MEF(図11A)またはHCT116結腸癌細胞(図11B)におけるBaxまたはBakのノックアウトが、細胞表面へのERp57の移行を強く低下させること(図11A、B)、およびBax陰性HCT116細胞において、Bax−GFP融合タンパク質での再トランスフェクション(これは内因性Baxを置換する)がMTXによって誘導されるERp57の移行を回復させ得ること(図11C)を決定した。MTXによって誘導されるERp57の移行にとってのBaxまたはBakの重要性は、HCT116結腸癌細胞(図11D)またはHeLa子宮頸癌細胞(図11E)から適切な低分子干渉RNAを用いてこれらのタンパク質を枯渇させることによって確認された。これらの結果は、広範なBcl−2ファミリー(BaxおよびBakを含む)からのアポトーシス促進性および抗アポトーシス性タンパク質がecto−CRT露出(これはKDEL受容体およびERp57の露出と相関する)を調節し得ることを示す。
【0110】
本発明者らは、カスパーゼの阻害が、細胞表面上でのCRT、KDEL受容体および/またはERp57のアントラサイクリン誘導露出を妨げ得ることを見出した。従って、化学的汎カスパーゼ阻害剤Z−VAD−fmkは、MTXによって誘導されるERp57露出を損なった(図12A)。カスパーゼを、バキュロウイルスにコードされるタンパク質p35を用いて阻害した場合に、同様の結果が得られた。このタンパク質のトランスフェクション強制発現は、MTX誘導ERp57露出を損なった(図12B)。活性化カスパーゼに共有結合するが、カスパーゼカスケードのさらなる活性化を妨げるカスパーゼの偽基質であるビオチン化VAD−fmkの使用によって、先端カスパーゼ(apical caspase)が同定された。この技術を使用して、本発明者らは、アントラサイクリンによって活性化される第1のカスパーゼがカスパーゼ8であることを見出した(図12C)。これらの結果は、カスパーゼ8の内因性発現レベル、その活性化物質(例えばFADD)および阻害剤(例えばFLIP)が、細胞表面上にCRT、KDEL受容体および/またはERp57を露出する腫瘍細胞の性向を調節し得ることを示唆する。
【0111】
小胞体におけるカスパーゼ8の基質の1つはBAP31である。本発明者らは、BAP31を枯渇させるように設計された2つの異なる低分子干渉RNAが、表面上にCRTおよび/またはERp57を露出する細胞の能力を損なうこと(図13)、およびBAP31が、実際、ミトキサントロンでの処置のすぐ後に切断されることを見出した。これらの結果は、BAP31が、アントラサイクリンに応答してのCRTおよび/またはERp57の露出の必須の調節物質であることを示唆する。
【0112】
本発明者らは、アントラサイクリンがセリン51でのeIF2αの迅速なリン酸化を誘導することに注目した。これは、CRT移行の機構に関係する。実際、ecto−CRT露出は、eIF2αがリン酸化不能変異体(eIF2αS51A/S51A)によって置換されている細胞において損なわれる(図14A)。eIF2αのリン酸化はいわゆる小胞体(ER)ストレス応答に関係し、そして本発明者らは、ERストレス応答に関与する他のタンパク質もまたecto−CRT露出に重要であることを実証するデータを蓄積した。
【0113】
その発現レベルおよび転写後改変がCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を調節するタンパク質は特に以下を含む:
・セラミド代謝のレベルで:セラミドシンターゼ、ジヒドロセラミドデサチュラーゼ、3−ケトスフィンガニンレダクターゼ、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ、スフィンゴミエリンシンターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、セラミダーゼ、セラミドシンターゼ、スフィンゴシンキナーゼ、スフィンゴシン−1−リン酸ホスファターゼ;
・Bcl−2タンパク質のレベルで:Bax、Bak、Bok、Bcl−2、Bcl−XL、Mcl−1ならびにBcl−2ファミリーからの全ての他の多ドメインまたはBH3のみのタンパク質;
・カスパーゼ8の活性化および基質のレベルで:FADD、FLIP、RIP、TRADD、BAP31;
・ERストレス応答のレベルで:eIF2α(eIF2A)、GCN2、HRI、PERK、PKR、PP1、GADD34、IRE1、PERKおよびATF6、BiP;
・CRT移行機構のレベルで:CRT、ERp57およびKDEL受容体。
【0114】
さらに、細胞がCRT、KDEL受容体および/またはERp57を露出する性向を決定するために、以下の非ペプチド因子が検出および/または測定され得る:スフィンゴイド塩基、スフィンゴイド塩基1−リン酸、セラミド、スフィンゴミエリンおよびグルコシルセラミド。
【0115】
特定の実施態様において、本発明は、癌の処置に対する、特に以前に定義および例証されるような従来の癌の処置に対する腫瘍細胞の感受性を決定するためのインビトロまたはエキソビボ方法であって、細胞がその表面上に機能性のCRT、KDEL受容体および/またはERp57を露出しているかどうかを決定することを含む、方法を記載する。特定の実施態様において、方法は、細胞が機能性のKDEL受容体、機能性のERp57、機能性のKDEL受容体およびERp57、または機能性のCRT、KDEL受容体およびERp57をその表面上に露出しているかどうかを決定することを含む。
【0116】
本発明はさらに、癌の処置に対する腫瘍細胞の感受性または以前に定義されるような癌の処置に応答する被験体の能力を決定するためのインビトロまたはエキソビボ方法であって、その表面上でのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出の基底レベルを測定することを含み、露出のレベルが癌の処置に対する細胞の感受性とまたは癌の処置に応答する被験体の能力と相関する、方法を包含する。
【0117】
癌の処置に対する腫瘍細胞の感受性は、細胞が、完全にまたは部分的に、前記癌の処置によって破壊または根絶されるか否かを示す。
【0118】
癌の処置に応答する被検体は、本発明の意味で、その細胞が自発的には機能性のCRT、KDEL受容体および/またはERp57をその表面上に発現しない腫瘍を有する患者よりもずっと長い無病生存見込みを有する被検体である。
【0119】
以前に示されるように、腫瘍細胞は、好ましくは、癌腫、肉腫、リンパ腫、黒色腫、小児腫瘍または白血病腫瘍に由来する。
【0120】
癌の処置は、好ましくは、以前に記載されるような化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法および特異的キナーゼ阻害剤に基づく療法から選択される。
【0121】
本明細書に記載される方法は、好ましくは、以前に記載されるような癌の処置を以前に受けた腫瘍細胞に適用される。しかし、それらは、そのような癌の処置を以前に受けていない腫瘍細胞に適用され得る。
【0122】
機能性のCRT、KDEL受容体またはERp57タンパク質は、本発明の意味で、その細胞に対する免疫系からの応答を誘導できる細胞の表面上に露出されるタンパク質である。
【0123】
本発明はさらに、特定の実施態様において、腫瘍細胞におけるCRT、ならびにカスパーゼ8、Bax、Bak、BAP31、レティキュロン−3(reticulon-3)、FADD、GCN2、HRI、PKR、IRE1α(IRE1a)、PERK、eIF2α、ERp57およびKDEL受容体の少なくとも1つの発現または活性を決定することを含み、前記発現または活性の非存在または異常が癌の処置に対する腫瘍細胞の非感受性の指標となる、癌の処置に対する腫瘍細胞の感受性を決定するためのインビトロまたはエキソビボ方法を記載する。
【0124】
別の特定の実施態様において、本発明は、腫瘍細胞におけるERp57、ならびにカスパーゼ8、Bax、Bak、BAP31、レティキュロン−3、FADD、GCN2、HRI、PKR、IRE1a、PERK、eIF2α、CRTおよびKDEL受容体の少なくとも1つの発現または活性を決定することを含み、前記発現または活性の非存在または異常が癌の処置に対する腫瘍細胞の非感受性の指標となる、癌の処置に対する腫瘍細胞の感受性を決定するためのインビトロまたはエキソビボ方法を記載する。
【0125】
さらなる特定の実施態様において、本発明は、腫瘍細胞におけるKDEL受容体、ならびにカスパーゼ8、Bax、Bak、BAP31、レティキュロン−3、FADD、GCN2、HRI、PKR、IRE1a、PERK、eIF2α、CRTおよびERp57の少なくとも1つの発現または活性を決定することを含み、前記発現または活性の非存在または異常が癌の処置に対する腫瘍細胞の非感受性の指標となる、癌の処置に対する腫瘍細胞の感受性を決定するためのインビトロまたはエキソビボ方法を記載する。
【0126】
細胞によって発現される、活性なカスパーゼ8、Bax、Bak、BAP31、レティキュロン−3、FADD、GCN2、HRI、PKR、IRE1α、PERK、eIF2α、CRT、KDEL受容体またはERp57タンパク質は、本発明の意味で、その細胞に対する免疫系からの応答を誘導できるタンパク質である。
【0127】
本発明の意味で、機能性のカスパーゼ8、Bax、Bak、BAP31、レティキュロン−3、FADD、GCN2、HRI、PKR、IRE1α、PERKまたはeIF2αタンパク質は、細胞の表面上でのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を可能にするかまたは増強するタンパク質である。
【0128】
細胞によって発現される上記で引用する化合物の1つの異常な発現または活性は、前記化合物がその細胞に対する免疫系からの応答を誘導できないことを担う。
化合物の異常は、本発明の意味で、化合物の発現または生理学的活性に影響を及ぼす任意の改変であり得る。化合物がペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である場合、異常は、例えば、上記で示す帰結を伴う、この化合物の転写後改変から生じ得る。
【0129】
細胞表面上でのCRT、KDEL受容体、ERp57、カスパーゼ8、Bax、Bak、BAP31、レティキュロン−3、FADD、GCN2、HRI、PKR、IRE1α、PERKおよびeIF2αを検出するために使用可能ないくつかの方法が当業者に周知である。
【0130】
細胞表面上のCRT、KDEL受容体および/またはERp57を検出するために、または例えばカスパーゼ8、Bax、Bak、BAP31、レティキュロン−3、FADD、GCN2、HRI、PKR、IRE1α、PERKおよびeIF2αから選択されるタンパク質の細胞における存在を検出するために、イムノブロッティング(特にウエスタンブロット)またはプロテオミクスならびに当業者に公知の任意の他の方法を、腫瘍検体(例えば、バイオプシー、腫瘍層から採集された細胞吸引物、サイトスピンまたは白血病の場合の循環腫瘍細胞のような)に適用し得る。
【0131】
プロテオミクスに関して、細胞表面上でのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出、または例えばカスパーゼ8、Bax、Bak、BAP31、レティキュロン−3、FADD、GCN2、HRI、PKR、IRE1α、PERKおよびeIF2αから選択されるタンパク質の細胞における存在は、前記タンパク質に対する抗体に基づくバイオセンサーを使用して検出され得る。そのような抗体に基づくバイオセンサーは、目的のタンパク質に対する抗体を用いて調製され得る。
抗体は、例えば、抗CRT抗体、抗KDEL受容体抗体および抗ERp57抗体から選択され得、前記抗体はCRT、KDEL受容体またはERp57の内因性形態、それらの組換え形態ならびにそれらの相同変異体または模倣物を検出することができる。抗体は有利には検出可能なコンジュゲートと結合される。
CRT、KDEL受容体、ERp57、カスパーゼ8、Bax、Bak、BAP31、レティキュロン−3、FADD、GCN2、HRI、PKR、IRE1α、PERKおよびeIF2αを検出するために、本発明は、細胞表面上の前記タンパク質の検出を可能にするキットを提供する。
このキットは少なくとも、抗CRT抗体、抗KDEL受容体抗体、抗ERp57抗体、抗カスパーゼ8抗体、抗Bax抗体、抗Bak抗体、抗BAP31抗体、抗レティキュロン−3抗体、抗FADD抗体、抗GCN2抗体、抗HRI抗体、抗PKR抗体、抗IRE1α抗体、抗PERK抗体または抗eIF2α抗体を含む。
【0132】
免疫蛍光染色またはFACS(蛍光標示式細胞分取器)分析(フローサイトメトリー分析)は、腫瘍細胞の、特に癌の治療処置を以前に受けた腫瘍細胞の、内部から表面へのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の移行を検出するための適切な方法の例である。
【0133】
イムノブロッティングはさらに、癌の処置に、特に以前に記載されるような従来の癌の処置に以前に曝露された腫瘍細胞における、BAP31の分解、eIF2αのリン酸化、例えばGCN2およびHRIから選択されるタンパク質の存在、または例えばカスパーゼ8、レティキュロン−3、PERK、PKR、BaxおよびBakから選択されるタンパク質の活性化を測定するために使用され得る。
【0134】
癌の処置によって誘導されるそのようなタンパク質の変化の、試験される腫瘍細胞内の、非存在下で、本発明者らは、本明細書において、その腫瘍細胞に対する免疫系の反応を誘導するためにさらなる処置が腫瘍細胞に適用されなけらばならないことを示す。
【0135】
上記のさらなる処置は、腫瘍細胞の表面上でのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を可能にするかまたは増強する本発明による化合物の使用に基づく。処置は、好ましくは、以前に記載されるようなPP1/GADD34の阻害剤の使用に基づく。
【0136】
それゆえ、本発明の別の目的は、患者における癌を予防または処置するための医薬の調製のための、以前に記載されるような化合物の、好ましくは以前に記載されるようなPP1/GADD34の阻害剤の使用であって、患者が、CRT、KDEL受容体、ERp57、カスパーゼ8、Bax、Bak、BAP31、レティキュロン−3、FADD、GCN2、HRI、PKR、IRE1α、PERKおよびeIF2αの少なくとも1つの発現または活性が非存在であるかまたは異常である腫瘍細胞を有する、使用に関する。この方法において、腫瘍細胞は、好ましくは、癌の処置、好ましくは以前に記載されるような従来の癌の処置を以前に受けている。
【0137】
患者における癌を予防または処置するための、以前に記載されるようなPP1/GADD34阻害剤であって、患者が、CRT、KDEL受容体、ERp57、カスパーゼ8、Bax、Bak、BAP31、レティキュロン−3、FADD、GCN2、HRI、PKR、IRE1α、PERKおよびeIF2αの少なくとも1つの発現または活性が非存在であるかまたは異常である腫瘍細胞を有する、阻害剤もまた本明細書において開示される。
【0138】
本発明のさらなる目的は、患者における癌を予防または処置するための医薬の調製のための、以前に記載されるようなPP1/GADD34の阻害剤の使用であって、患者が、癌の処置、好ましくは従来の癌の処置を受けておりそして野生型BAP31を発現する腫瘍細胞を有する、使用に関する。
【0139】
患者における癌を予防または処置するための、以前に記載されるようなPP1/GADD34の阻害剤であって、患者が、癌の処置、好ましくは従来の癌の処置を受けておりそして野生型BAP31を発現する腫瘍細胞を有する、阻害剤もまた本明細書において開示される。
【0140】
本発明のさらなる目的は、患者における癌を予防または処置するための医薬組成物の調製のための、以前に記載されるような化合物、好ましくは以前に記載されるようなPP1/GADD34の阻害剤の使用であって、患者が、CRT、KDEL受容体および/またはERp57をその表面上に露出していない腫瘍細胞を有する、使用に関する。医薬組成物は、好ましくは、癌の処置、好ましくは以前に説明されるような従来の癌の処置において使用される産物とともに投与されることが意図される。
【0141】
患者における癌を予防または処置するための、好ましくは癌の処置において使用される産物との組み合わせでの、以前に記載されるような化合物、好ましくは以前に記載されるようなPP1/GADD34の阻害剤であって、患者が、その表面上にCRT、KDEL受容体および/またはERp57を露出していない腫瘍細胞を有する、化合物もまた本明細書において開示される。
【0142】
本発明の別の目的は、癌を予防または処置するために有用な化合物をスクリーニングまたは選択するためのインビトロ方法であって、以下の工程:
a)試験化合物を、その表面上にCRT、KDEL受容体および/またはERp57を露出していない腫瘍細胞と接触させる工程、
b)試験化合物が細胞に、CRT、KDEL受容体および/またはERp57をその表面上に露出させるかどうかを決定する工程であって、CRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出が、癌を予防または処置する化合物の能力の指標となる、工程
を含む、方法を含む。
【0143】
癌を予防または処置するために有用な化合物をスクリーニングするためのインビトロ方法であって、以下の工程:
a)試験化合物を、その表面上にCRT、KDEL受容体、および/またはERp57を露出していない腫瘍細胞と接触させる工程、
b)試験化合物が細胞に、KDEL受容体、ERp57、KDEL受容体およびERp57、またはCRT、KDEL受容体およびERp57をその表面上に露出させるかどうかを決定する工程であって、KDEL受容体、ERp57、KDEL受容体およびERp57、またはCRT、KDEL受容体およびERp57の露出が、癌を予防または処置する化合物の能力の指標となる、工程
を含む、方法もまた本明細書において開示される。
予防または処置しようとする癌は、好ましくは、前立腺癌、結腸癌、腎臓癌、肺癌、骨肉種、GISTおよび神経芽細胞腫から選択される。
【0144】
本発明のさらなる目的は、上記のもののような試験化合物を選択するための方法であって、前記化合物は、哺乳動物細胞の、特に哺乳動物腫瘍細胞の、好ましくはヒト腫瘍細胞の表面上でのカルレティキュリン(CRT)、KDEL受容体および/またはERp57の露出のレベルを直接的または間接的に調節し、方法は以下の工程:
a)試験化合物を細胞と接触させる工程、
b)前記細胞の表面上でのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を検出するおよび/またはそのレベルを測定する工程であって、試験化合物と接触させられていないコントロール細胞と比較して改変された露出が、細胞の表面上でのカルレティキュリン(CRT)、KDEL受容体および/またはERp57の露出のレベルの前記試験化合物による調節の指標となる、工程
を含む、方法を含む。
【0145】
そのような方法を用いて得られ得る選択される化合物は、哺乳動物細胞の表面上でのカルレティキュリン(CRT)、KDEL受容体および/またはERp57の露出のレベルを調節し得る、すなわち、選択される化合物は、哺乳動物細胞の表面上でのCRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出を、増強する化合物(癌または感染性疾患用)、減少させるかまたは抑制する化合物(自己免疫および炎症障害用)から選択される任意の化合物であり得る。
【0146】
上記の方法において、腫瘍細胞は好ましくは癌腫、肉腫、リンパ腫、黒色腫、小児腫瘍または白血病腫瘍に由来する。
【0147】
本発明の別の目的は、細胞の表面上のCRT、KDEL受容体および/またはERp57の定量的検出の方法である。
細胞アポトーシスにおける免疫系の関連は、実際、細胞表面上に存在するCRT、KDEL受容体および/またはERp57のそれぞれの量(少なくとも腫瘍負荷の半分)と相関、すなわち比例する。
本発明によるこの定量的検出の方法は、「免疫原性アポトーシス」を受ける細胞の性向を決定または評価するために作用し得る。
【0148】
本発明者らは、本明細書において、化学療法の有効性(治療成績)が腫瘍細胞アポトーシスの間の免疫応答の効率と、すなわち「アポトーシス免疫原性」と相関することを実証する。
細胞表面におけるCRT、KDEL受容体および/またはERp57のこの検出の方法は、免疫原性アポトーシスを予測するために、そしてまた、化学療法の治療効率を予測するために使用され得る。
この定量的検出の方法はまた、強制アポトーシスが免疫原性になりすぎる危険性を予測するために有利であり得る。
【0149】
細胞表面にはCRT、KDEL受容体およびERp57の基底量が存在し、そして細胞表面におけるCRT、KDEL受容体および/またはERp57の増加した量の検出は、アポトーシス免疫原性および/または化学療法の治療効率を予測するための手段である。腫瘍細胞表面におけるCRT、KDEL受容体および/またはERp57の量は化学療法の後に一般に大いに増加し、そして増加は「アポトーシス免疫原性」の、そして化学療法の治療効率の良好な予測マーカーである。細胞の表面上でのCRTおよび/またはERp57の露出のレベルの検出または測定はまた、ウイルス感染の、自己免疫疾患の、移植の、または拒絶/GVH病の「免疫原性」を予測するための手段として使用され得る。
【0150】
発明の開示
従って、本発明は、哺乳動物における疾患の処置のための薬物としてのその使用のためのカルレティキュリンに関し、前記薬物は細胞表面におけるカルレティキュリンの増加した配置を誘導する。
【0151】
本発明は、抗癌免疫応答の決定特徴としてのCRT露出の同定に基づいており、そして免疫原性化学療法のストラテジーを描く。
【0152】
細胞表面におけるCRTの配置は、細胞表面への細胞内CRTの移行の結果、または細胞表面への細胞外CRTの移行の結果であり得る。それで、本発明は、カルレティキュリン(内因性形態または組換え形態または模倣形態)の移行が細胞質から細胞の膜へであるか、または細胞外媒質から細胞の膜へである、薬物としての適用に関する。模倣形態としては、カルレティキュリンのネイティブな形態と同じ特性(すなわち、細胞表面における配置)を示す、カルレティキュリンの切断形態またはカルレティキュリンの部分またはハイブリッドと理解すべきである。
【0153】
さらに、本発明者らは、細胞表面において増加した量で存在するカルレティキュリンが、死滅している細胞を、樹状細胞のような食細胞にとって食可能にすることを示した。これらの細胞は、免疫系と相互作用し、次いで免疫応答を誘導し、これはカルレティキュリンを免疫原性アポトーシスの誘導物質とする。本発明はまた、哺乳動物における疾患の処置のための薬物としてのその使用のためのカルレティキュリンに関し、前記薬物は免疫原性アポトーシスを誘導する。
【0154】
好ましくは、薬物としてのこの適用によって、処置される疾患は、乳癌、前立腺癌、黒色腫、結腸癌などのような癌、またはウイルスまたは細菌または真菌または寄生体感染のような感染である。
【0155】
本発明は、哺乳動物における疾患の処置のための薬物としてのその使用のためのカルレティキュリンを示し、前記薬物は、細胞表面におけるCRTの配置の増加の誘導および/または免疫原性アポトーシスの誘導によって、そのような化学療法を必要とする哺乳動物における化学療法の効率を改善する。
【0156】
CRT露出は、UVC光によって誘導されることが知られている(Gardai, S.J. et al. Cell 123, 321-34 (2005))。
【0157】
しかし、CRT露出はアントラサイクリン(図2に示すように)およびPP1/GADD34阻害剤(図5に示すように)によっても引き起こされるようであり、これには、完全には理解されておらず、そして同様に外因性CRTおよび内因性事前形成CRTに結合できる細胞表面上の飽和性CRT受容体(Henson, P.M. & Hume, D.A. Trends Immunol 27, 244-50 (2006))の存在が関与する分子機構を介する細胞内CRTの細胞表面への移行が関与する。
【0158】
実際、本発明者らは、このCRTタンパク質が、一般にドキソルビシンおよびアントラサイクリンによって強く(6倍)誘導されることを示した(図2Bおよび2Cに示すように)。2Dゲルのイムノブロット分析(示さず)および精製形質膜表面タンパク質の従来の電気泳動(図2Cに示すように)は、アントラサイクリンでの処理後のCRTの表面露出を確認した。このCRT表面露出は、アントラサイクリン処理生細胞の免疫蛍光染色によっても検出可能であった(図2Dに示すように)。アントラサイクリンによるCRT露出の誘導は迅速なプロセスであり、処理の1時間後ほど早くに検出可能であり(図1S A、Bに示すように)、従ってアポトーシス関連ホスファチジルセリン(PS)露出に先行した(図1S C、Dに示すように)。注目すべきことに、細胞表面におけるCRTの出現(4時間目で測定)と20個の異なるアポトーシス誘導物質のパネルによって誘起される免疫原性との間に強い正の直線相関(p<0.001)が存在した(図2E)。
【0159】
免疫原性および免疫応答は、特定の細胞:樹状細胞(DC)によって媒介され得る。本発明者らは、アントラサイクリン処理腫瘍細胞が、ドキソルビシンまたはミトキサントロンでの処理の数時間後にDCによって貪食される特性を獲得したことを示し(図3A、補足図2Aに示すように)、これはCRTの迅速な誘導(図3B、図1S A、Bに示すように)および免疫原性の獲得(補足図2Bに示すように)と相関する。
【0160】
従って、特異的抗体による、ミトキサントロン処理癌細胞の表面上に存在するCRTの遮断は、DCによるそのファゴサイトーシスを阻害した(図3Cに示すように)。逆に、細胞の表面に結合する組換えCRTタンパク質(rCRT)の添加は、抗体によるCRTの遮断によって誘導される欠損を逆転させ得た。従って、表面CRTはDCによるファゴサイトーシスを誘起する。さらに、形質膜表面へのrCRTの吸収は、rCRTでコートされたエトポシド処理細胞またはマイトマイシン処理細胞(図4Cに示すように)のような通常は免疫応答を誘導できない細胞の免疫原性を大いに増強し、そしてインビボにおいて活発な抗腫瘍免疫応答を誘起した(図4Dに示すように)。しかし、細胞死誘導物質での事前処理なしでの細胞表面へのrCRTの吸収は、抗癌免疫応答を誘起できなかった。本発明は、哺乳動物における疾患の処置のための薬物としてのその使用のための組換えカルレティキュリンを取り扱い、前記薬物は、細胞死誘導物質(例えばエトポシドまたはマイトマイシンC)の投与後に、免疫原性アポトーシスを誘導する。
【0161】
従って、本発明はまた、哺乳動物における疾患の処置のための薬物としてのその使用のための、プロテインホスファターゼ1(PP1)の触媒サブユニットの阻害剤、GADD34阻害剤またはPP1/GADD34複合体の阻害剤としてのプロテインホスファターゼ阻害剤に関し、前記阻害剤は、細胞表面における内因性カルレティキュリンの配置の増加を誘導する。
【0162】
さらに、本発明は、哺乳動物における疾患の処置のための薬物としてのその使用のための、プロテインホスファターゼ1(PP1)の触媒サブユニットの阻害剤、GADD34阻害剤またはPP1/GADD34複合体の阻害剤としてのプロテインホスファターゼ阻害剤に関し、前記阻害剤は、細胞表面におけるカルレティキュリン移行の増加によって免疫原性アポトーシスを誘導する(図5に示すように)。
【0163】
本発明者らは、アントラサイクリンおよびPP1/GADD34阻害剤によって誘導されるCRT露出が、アクチン細胞骨格およびエキソサイトーシスの阻害剤であるラトランクリンAによって損なわれることを観察した(補足図4に示すように)。本発明者らはまた、PP1/GADD34阻害がCRT露出を誘導することだけでなく、このプロセスが次いで抗腫瘍免疫応答を改善できることも示した。
【0164】
本発明はまた、哺乳動物における疾患の処置のための薬物としてのその使用のための、プロテインホスファターゼ1(PP1)の触媒サブユニットの阻害剤、GADD34阻害剤またはPP1/GADD34複合体の阻害剤としてのプロテインホスファターゼ阻害剤に関し、前記阻害剤は、細胞表面におけるカルレティキュリンの配置の増加、および/または免疫原性アポトーシスアポトーシスを誘導することによって、そのような化学療法を必要とする哺乳動物における化学療法の効率を改善する。
【0165】
さらに、一定量の上記のPP1またはGADD34またはPP1/GADD34複合体のそのような阻害剤を、細胞質から細胞膜へのカルレティキュリンタンパク質の移行の増加を促進する医薬組成物(これは従って哺乳動物におけるアポトーシスの間の免疫応答を誘導する)において使用することができる。
【0166】
細胞質から細胞表面へのカルレティキュリンの移行の増加を促進する前記阻害剤含有医薬組成物はまた、哺乳動物における化学療法応答を改善し得る。
【0167】
PP1またはGADD34またはPP1/GADD34の阻害剤は、有利には、トートマイシン、カリクリンAまたはサルブリナルの中から選択される。
【0168】
他方、eIF2αは、典型的にはストレスキナーゼの活性化に起因する小胞体ストレスにおいて過剰リン酸化される(Zhang, K. & Kaufman, R.J. J Biol Chem 279, 25935-8 (2004))。本発明者らは、eIF2αをリン酸化することが知られているキナーゼが、細胞表面における増加したカルレティキュリンの移行および露出に関与し得ることを観察した。これらのキナーゼは、真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ、例えばヘム調節阻害剤(HRI、ヘミン感受性開始因子2αキナーゼまたは真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ1とも称する)、RNA活性化プロテインキナーゼ(PKR、真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ2とも称する)、PKR様ER局在化eIF2αキナーゼ(PERK、真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ3とも称する)およびGCN2(真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ4とも称する)である。
【0169】
本発明はまた、哺乳動物における癌またはウイルス感染のような疾患の処置のための薬物としてのその使用のための、真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ、例えばヘム調節阻害剤(HRI、ヘミン感受性開始因子2αキナーゼまたは真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ1とも称する)、RNA活性化プロテインキナーゼ(PKR、真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ2とも称する)、PKR様ER局在化eIF2αキナーゼ(PERK、真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ3とも称する)およびGCN2(真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ4とも称する)の1つを活性化する化合物のような、キナーゼ活性化物質に関し、前記活性化物質は、細胞表面における内因性カルレティキュリンの配置の増加を誘導する。
【0170】
この活性化物質を含む薬物の前記使用によって処置される疾患は、癌(乳癌、前立腺癌、黒色腫、結腸癌など)または感染(ウイルス、細菌、真菌または寄生体感染)である。
【0171】
本発明はまた、少なくともカルレティキュリンまたはPP1、GADD34もしくはPP1/GADD34の阻害剤またはアントラサイクリンまたは前記4つのキナーゼの活性化物質または抗カルレティキュリン抗体または阻害/競合ペプチドを含む、薬物としての適用を提供し、前記薬物は、V16/エトポシド、放射線療法または免疫療法に感受性の腫瘍、すなわち黒色腫、腎臓癌、結腸癌、乳腫瘍または肺腫瘍、骨肉種のような癌の処置を改善する。
【0172】
自己免疫障害、例えば全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、皮膚炎...、アレルギー、移植片対宿主病、移植片拒絶、または強制アポトーシスにおける強すぎる免疫原性の間に、細胞死の免疫原性を制限することは興味深い。本発明者らは、これが、阻止または中和抗カルレティキュリン抗体の使用による細胞表面へのカルレティキュリンの移行の減少によって得られ得ることを観察した。カルレティキュリンの移行を妨害する阻害または競合ペプチドもまた、細胞表面におけるカルレティキュリンの量を減少させ、次いでそれらの疾患における免疫原性および免疫応答を低下させ得る。
【0173】
従って、本発明はまた、自己免疫障害(SLE、関節リウマチ、皮膚炎...)、アレルギー、移植片対宿主病、移植片拒絶の処置のための薬物としてのその使用のための、カルレティキュリンの移行の増加を、それゆえ細胞死の免疫原性を妨害する、阻止または中和抗カルレティキュリン抗体または阻害/競合ペプチドに関する。
【0174】
本発明の1つの実施態様において、細胞死薬剤としてのアントラサイクリンはまた、哺乳動物における疾患の処置のための薬物の調製において使用され得、前記薬物は細胞表面におけるカルレティキュリンの配置の増加を誘導する。
【0175】
アントラサイクリンはまた、哺乳動物における癌またはウイルス感染のような疾患の処置のための薬物の調製において使用され得、前記薬物は細胞表面におけるカルレティキュリン移行の増加によって免疫原性アポトーシスの誘導を促進する。
【0176】
本発明はまた、哺乳動物における癌またはウイルス感染のような疾患の処置のための薬物の調製におけるアントラサイクリンの使用を取り扱い、前記薬物は、細胞表面におけるカルレティキュリンの配置の増加および/または免疫原性アポトーシスを誘導することによって、そのような化学療法を必要とする哺乳動物における化学療法の効率を改善する。
【0177】
さらに、本発明はまた、細胞質から細胞膜へのカルレティキュリンタンパク質の移行の増加を促進する一定量のアントラサイクリンを含む医薬組成物(これは従って哺乳動物におけるアポトーシスの間の免疫応答を誘導する)に関する。
【0178】
細胞質から細胞表面へのカルレティキュリンの移行の増加を促進する前記アントラサイクリン含有医薬組成物はまた、哺乳動物における化学療法応答を改善することができる。
【0179】
本発明はまた、細胞表面におけるカルレティキュリンの配置の増加および/または免疫原性アポトーシスを誘導することによる、それを必要とする哺乳動物への一定量のアントラサイクリンを含む医薬組成物の投与を含む、哺乳動物における化学療法処置応答を促進する方法を提供する。
【0180】
アントラサイクリンはドキソルビシン、イダルビシンまたはミトキサントロンであり得る。
【0181】
生細胞の表面に吸着されたCRTはインビトロにおいてDCによるそのファゴサイトーシスを増強したが(図3Eに示すように)、局所性(図4Cに示すように)または全身性(図4D、図6に示すように)免疫応答をインビボで誘起するために、CRTは細胞死誘導物質と組み合わされなければならなかった。治療薬において、本発明者らは、細胞死誘導物質(エトポシドまたはマイトマイシンC)+カルレティキュリン(rCRT)の組み合わせが、免疫適格性動物において(免疫不全動物においてではなく)腫瘍退縮を引き起こすことができることを示した。同様に、エトポシドまたはマイトマイシンCは、CRT露出を誘導する薬物(サルブリナルまたはトートマイシン)と組み合わされ得、免疫適格性宿主において(無胸腺宿主においてではなく)安定な疾患または完全な腫瘍退縮を導く(図6A、Bに示すように)。生CT26細胞はCT26腫瘍から治癒された動物において増殖できず、このことは永久抗腫瘍免疫応答の確立を示す。本明細書において示されるように、この知見を用いて、rCRTまたはPP1/GADD34阻害剤と組み合わされた場合に、非免疫原性化学療法剤が免疫原性になる、効率的な抗腫瘍免疫応答を刺激することができる。これらの結果は、確立された癌(例えば、乳癌、前立腺癌、黒色腫、結腸癌など)の治癒、または感染(ウイルス、細菌、真菌または寄生体感染)の治癒のための免疫原性化学療法のストラテジーを描く。
【0182】
本発明はまた、疾患の処置におけるその使用のための組み合わせ産物としての、化学療法剤および組換えカルレティキュリンを含む産物に関する。
【0183】
本発明はまた、疾患の処置におけるその使用のための組み合わせ産物としての、化学療法剤および阻害剤(例えば、プロテインホスファターゼ1(PP1)の触媒サブユニットの阻害剤、GADD34阻害剤またはPP1/GADD34複合体の阻害剤)を含む産物を取り扱う。この組み合わせ産物は、癌(乳癌、前立腺癌、黒色腫、結腸癌など)、または感染(ウイルス、細菌、真菌または寄生体感染)のような疾患の処置のために使用され得る。
【0184】
化学療法剤は、エトポシド、マイトマイシンC、アントラサイクリンおよびその他の周知の治療薬であり得る。本発明はまた、上記の組み合わせの産物(化学療法剤およびカルレティキュリンまたは細胞死薬剤および前記阻害剤)を提供し、ここで前記産物は、V16/エトポシド、放射線療法または免疫療法に感受性の腫瘍、すなわち、黒色腫、腎臓癌、結腸癌、乳腫瘍または肺腫瘍、骨肉種のような癌の処置を改善する。
【0185】
本発明はまた、哺乳動物におけるアポトーシス現象における免疫応答を増強するために細胞質から細胞表面へのカルレティキュリンの移行の増加を誘導する方法に関し、前記方法は、プロテインホスファターゼ1(PP1)の触媒サブユニットの阻害剤、GADD34阻害剤またはPP1/GADD34複合体の阻害剤としての阻害剤の薬学的有効量を投与することを含む。
【0186】
それとは異なって、本発明はまた、哺乳動物におけるアポトーシス現象における免疫応答を増強するために細胞質から細胞表面へのカルレティキュリンの移行の増加を誘導する方法を含み、前記方法は、アントラサイクリンの薬学的有効量を投与することを含む。
【0187】
増加したカルレティキュリンの移行は好ましくは細胞質から腫瘍細胞の膜へのものである。
【0188】
この方法は、好ましくは、V16/エトポシド、放射線療法、または免疫療法に感受性の腫瘍、すなわち、黒色腫、腎臓癌、結腸癌、乳腫瘍または肺腫瘍、骨肉種など、癌の処置を改善する。
好ましくは、この方法は、免疫感受性癌と同等に化学感受性癌の処置に向けられる。
【0189】
この方法は、そのような化学療法を必要とする哺乳動物における化学療法の効率の増加を示す。
【0190】
好ましくは、処置される哺乳動物はヒトである。
【0191】
さらに、細胞表面におけるカルレティキュリンタンパク質の配置は、カルレティキュリンの内因性形態、組換え形態および模倣形態を検出する抗カルレティキュリン抗体によって実現され得る。細胞表面におけるカルレティキュリンタンパク質の全ての形態の検出の方法もまた本発明の目的である。これは、インビトロ、エキソビボまたはインビボで行われ得る。細胞表面におけるこのカルレティキュリンタンパク質を検出するために使用される方法は当業者に周知である。これらの方法は、組織切片(凍結またはパラフィン)に対する免疫化学、腫瘍溶解物に対するELISAのようなEIAアッセイ、サイトスピン、腫瘍層から採集された細胞吸引物または自己免疫病変の共焦点免疫蛍光またはフローサイトメトリー分析などを含む。本発明の1つの目的はまた、細胞表面におけるカルレティキュリン(全ての形態)の定量的検出の方法を開発することである。アポトーシスの免疫原性は、細胞表面に存在するカルレティキュリンの量と相関する。細胞表面におけるカルレティキュリンが多ければ多いほど、免疫原性アポトーシスは多くなる。この検出方法は、アポトーシスの免疫原性を予測するように作用し得る。さらに、化学療法の有効性は、免疫応答の効率と、それゆえアポトーシスの免疫原性と相関する。免疫原性アポトーシスが多ければ多いほど、化学療法の治療効率は多くなる。細胞表面におけるカルレティキュリンのこの検出方法を、免疫原性アポトーシスの予測のために、そしてまた、化学療法の治療効率の予測のために使用することができる。これらの方法においてカルレティキュリンは、免疫原性アポトーシスおよび化学療法の治療効率の両方の予測マーカーとして使用される。この定量的検出方法はまた、免疫原性になりすぎる強制アポトーシスの危険性を予測するために有利であり得る。細胞表面におけるカルレティキュリンの移行の阻害は、カルレティキュリンの免疫原性を減少させ得、従って免疫応答を低下または遮断(最良の場合)し得る。
【0192】
細胞表面にはカルレティキュリンの基底量が存在し、そしてカルレティキュリンの増加した量は、免疫原性アポトーシスおよび/または化学療法の治療効率の予測を可能にする。化学療法の前後の比較により、細胞表面におけるカルレティキュリンの量は一般に大いに増加し、そして増加は免疫原性アポトーシス、化学療法の治療効率、免疫原性ウイルス感染のための、また、自己免疫疾患または移植片拒絶/GVH病のための良好な予測マーカーとなる。本発明はまた、細胞表面におけるカルレティキュリンの検出方法を提供し、ここで細胞表面におけるカルレティキュリンは、免疫原性ウイルス感染または自己免疫疾患または移植片拒絶/GVH病の予測マーカーとして使用される。
【0193】
さらに、カルレティキュリンを検出するために、本発明はまた、上記の方法による、細胞表面におけるカルレティキュリンタンパク質の検出のキットを提供し、前記キットは少なくとも抗カルレティキュリン抗体を含む。本発明の実施態様において、この検出キットはまた細胞表面におけるカルレティキュリンの定量的検出のための定量的なものであり得、前記キットは少なくとも抗カルレティキュリン抗体を含む。
【0194】
本発明はまた、細胞表面におけるカルレティキュリンタンパク質の検出のための抗カルレティキュリン抗体を少なくとも含む、腫瘍細胞の免疫原性アポトーシスおよび/または化学療法の治療効率の予測のキットに関する。多量のカルレティキュリンが検出される場合、腫瘍細胞のアポトーシスは免疫原性となり、そして化学療法の効率は改善される。免疫原性ウイルス感染または自己免疫疾患または移植片拒絶/GVH病の予測のキットであって、細胞表面におけるカルレティキュリンタンパク質の検出のための抗カルレティキュリン抗体を少なくとも含むキットもまた本発明によって提供される。
【0195】
本発明はまた、直接的または間接的免疫原性薬物のスクリーニングのための抗カルレティキュリン抗体を少なくとも含む、細胞表面におけるカルレティキュリンタンパク質の検出の工程を含む、直接的または間接的免疫原性薬物のスクリーニングのための細胞表面におけるカルレティキュリンタンパク質の検出の方法および免疫原性薬物のスクリーニングの方法に関する。
【0196】
直接的および間接的免疫原性薬物のスクリーニングは、より効率的な抗腫瘍薬剤を見出すことを導き得る。直接的な方法については、ヒト腫瘍細胞株が選択されなければならず、次いで薬物パネルとのそのインキュベーションは、フローサイトメトリーまたは共焦点による、細胞質から細胞表面への自発的CRT移行が存在するかどうかの検出を可能にすべきである。間接的なスクリーニングの方法については、本発明者らは、アポトーシスがエトポシド処理後に得られるが、細胞表面におけるCRT移行が存在しないヒト腫瘍細胞株を選択した。次いで、薬物パネルを使用して、どれがこの現象を逆転させ得るかを検出する。これは、PP1/GADD34複合体の新たな阻害剤またはキナーゼGCN2、HRI、PERK、PKRの新たな活性化物質を見出すために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1A】図1はアントラサイクリンによって誘導される免疫原性細胞死を示す。異なる化学療法剤での処理後の死滅したおよび死滅している細胞の頻度。CT26細胞を、材料および方法に記載するように、示す薬剤の存在下で24時間培養し、次いでアネキシンV−FITCおよび生体色素DAPIで染色した。
【図1B】免疫原性細胞死誘導物質の同定。図1Aにおけるように培養したCT26細胞を左側腹部中に注射し、続いて8日後に右側腹部において生腫瘍細胞を注射した。図1Cにおけるように無腫瘍マウスの百分率を120日後に決定した。
【図1C】死滅している細胞の接種後の腫瘍の発生率。データは、図1Bに要約される実験についての、無腫瘍マウスの実際の頻度を示す。1日目は、死滅している腫瘍細胞でのチャレンジの1週間前の、死滅している腫瘍細胞の接種の日とみなされた。
【図1SA】CRT露出およびホスファチジルセリン露出の解離。CRT露出のキネティクス。CT26細胞を、示す期間ミトキサントロンで処理し、続いてCRT特異的抗体での免疫蛍光染色および細胞蛍光測定分析を行った。代表的な図を図1SAに示し、そして定量的データを図1SBに報告する。
【図1SB】CRT露出およびホスファチジルセリン露出の解離。CRT露出のキネティクス。CT26細胞を、示す期間ミトキサントロンで処理し、続いてCRT特異的抗体での免疫蛍光染色および細胞蛍光測定分析を行った。代表的な図を図1SAに示し、そして定量的データを図1SBに報告する。
【図1SC】PS露出および細胞死のキネティクス。細胞を、示す期間図1SAおよび図1SBにおけるように培養し、続いてアネキシンV(死滅している細胞の表面上でのホスファチジルセリンを認識する)+DAPI(死滅した細胞を染色する)での染色およびFACS分析を行った。
【図1SD】PS露出および細胞死のキネティクス。細胞を、示す期間図1SAおよび図1SBにおけるように培養し、続いてアネキシンV(死滅している細胞の表面上でのホスファチジルセリンを認識する)+DAPI(死滅した細胞を染色する)での染色およびFACS分析を行った。
【図2A】免疫原性細胞死におけるCRT表面露出。アントラサイクリンによって誘起される表面露出分子としてのCRTの同定。細胞を4時間ドキソルビシン単独(DX)またはZ−VAD−fmkとの組み合わせ(DXZ)で処理し、続いて細胞表面のビオチン化およびビオチン化タンパク質の精製、2Dゲル電気泳動(図2Aおよびより高い拡大率でゲルの部分を示す図2A中の挿入図)およびCRTとしての1つのドキソルビシン誘導スポットの質量分析同定(図2A中の矢印および図2B中のCRTタンパク質配列における下線を付したペプチド)、形質膜タンパク質画分または全細胞溶解物におけるCRTのイムノブロット検出(図2C)または細胞表面上(非透過処理生細胞における)または細胞内(透過処理および固定後)のCRTの免疫蛍光検出(図2D)を行った。非処理細胞の核はHoechst33342を用いて可視化されたが(青色)、ドキソルビシン処理細胞の核は赤色蛍光を発していることに留意のこと(図2D)。図2A中の円はERp57の位置を示す。
【図2B】免疫原性細胞死におけるCRT表面露出。アントラサイクリンによって誘起される表面露出分子としてのCRTの同定。細胞を4時間ドキソルビシン単独(DX)またはZ−VAD−fmkとの組み合わせ(DXZ)で処理し、続いて細胞表面のビオチン化およびビオチン化タンパク質の精製、2Dゲル電気泳動(図2Aおよびより高い拡大率でゲルの部分を示す図2A中の挿入図)およびCRTとしての1つのドキソルビシン誘導スポットの質量分析同定(図2A中の矢印および図2B中のCRTタンパク質配列における下線を付したペプチド)、形質膜タンパク質画分または全細胞溶解物におけるCRTのイムノブロット検出(図2C)または細胞表面上(非透過処理生細胞における)または細胞内(透過処理および固定後)のCRTの免疫蛍光検出(図2D)を行った。非処理細胞の核はHoechst33342を用いて可視化されたが(青色)、ドキソルビシン処理細胞の核は赤色蛍光を発していることに留意のこと(図2D)。図2A中の円はERp57の位置を示す。
【図2C】免疫原性細胞死におけるCRT表面露出。アントラサイクリンによって誘起される表面露出分子としてのCRTの同定。細胞を4時間ドキソルビシン単独(DX)またはZ−VAD−fmkとの組み合わせ(DXZ)で処理し、続いて細胞表面のビオチン化およびビオチン化タンパク質の精製、2Dゲル電気泳動(図2Aおよびより高い拡大率でゲルの部分を示す図2A中の挿入図)およびCRTとしての1つのドキソルビシン誘導スポットの質量分析同定(図2A中の矢印および図2B中のCRTタンパク質配列における下線を付したペプチド)、形質膜タンパク質画分または全細胞溶解物におけるCRTのイムノブロット検出(図2C)または細胞表面上(非透過処理生細胞における)または細胞内(透過処理および固定後)のCRTの免疫蛍光検出(図2D)を行った。非処理細胞の核はHoechst33342を用いて可視化されたが(青色)、ドキソルビシン処理細胞の核は赤色蛍光を発していることに留意のこと(図2D)。図2A中の円はERp57の位置を示す。
【図2D】免疫原性細胞死におけるCRT表面露出。アントラサイクリンによって誘起される表面露出分子としてのCRTの同定。細胞を4時間ドキソルビシン単独(DX)またはZ−VAD−fmkとの組み合わせ(DXZ)で処理し、続いて細胞表面のビオチン化およびビオチン化タンパク質の精製、2Dゲル電気泳動(図2Aおよびより高い拡大率でゲルの部分を示す図2A中の挿入図)およびCRTとしての1つのドキソルビシン誘導スポットの質量分析同定(図2A中の矢印および図2B中のCRTタンパク質配列における下線を付したペプチド)、形質膜タンパク質画分または全細胞溶解物におけるCRTのイムノブロット検出(図2C)または細胞表面上(非透過処理生細胞における)または細胞内(透過処理および固定後)のCRTの免疫蛍光検出(図2D)を行った。非処理細胞の核はHoechst33342を用いて可視化されたが(青色)、ドキソルビシン処理細胞の核は赤色蛍光を発していることに留意のこと(図2D)。図2A中の円はERp57の位置を示す。
【図2E】CRT露出と免疫原性との間の相関。CRTの表面露出を、生存(ヨウ化プロピジウム陰性)細胞についてゲートしながら(挿入図)免疫蛍光サイトメトリーによって決定し、そして細胞死の免疫原性(図1において決定される)と相関させた。CO、コントロール;Tg、タプシガルジン;Tu、ツニカマイシン。
【図2SA】アントラサイクリンによって誘起されるファゴサイトーシスおよび免疫原性のキネティクス。CT26細胞を、様々な期間ミトキサントロンまたはドキソルビシンとともに培養し、次いでDCに直面させて、そのファゴサイトーシスを、図3Aにおけるように測定したか(図2SA)、または生細胞でのチャレンジの1週間前にマウスに注射した(図2SB)。図2SBの各列上の数字は免疫化されたマウスの数を示す。
【図2SB】アントラサイクリンによって誘起されるファゴサイトーシスおよび免疫原性のキネティクス。CT26細胞を、様々な期間ミトキサントロンまたはドキソルビシンとともに培養し、次いでDCに直面させて、そのファゴサイトーシスを、図3Aにおけるように測定したか(図2SA)、または生細胞でのチャレンジの1週間前にマウスに注射した(図2SB)。図2SBの各列上の数字は免疫化されたマウスの数を示す。
【図3A】DCによる腫瘍細胞のファゴサイトーシスのための表面CRTの必要性。腫瘍細胞ファゴサイトーシスとCRT露出との間の相関。Cell Tracker Greenで標識された腫瘍細胞をCD11c発現DCとともに培養し、そして腫瘍細胞を取り込むDCの百分率を決定し(A)そして図2Eにおけるように測定したCRT表面露出と相関させた(B)。
【図3B】DCによる腫瘍細胞のファゴサイトーシスのための表面CRTの必要性。腫瘍細胞ファゴサイトーシスとCRT露出との間の相関。Cell Tracker Greenで標識された腫瘍細胞をCD11c発現DCとともに培養し、そして腫瘍細胞を取り込むDCの百分率を決定し(A)そして図2Eにおけるように測定したCRT表面露出と相関させた(B)。
【図3C】CRTの遮断はDC媒介ファゴサイトーシスを阻害する。ミトキサントロン処理細胞またはコントロール細胞を阻止トリ抗CRT抗体とともにインキュベートし、続いてCDによるファゴサイトーシスの検出を行った。
【図3D】CRTのノックダウンはDC媒介ファゴサイトーシスを阻害し、そしてrCRTはファゴサイトーシスを回復させる。細胞を、示すsiRNAを用いてトランスフェクトし、そして所望によりrCRTで処理し、続いて表面CRT(図3E)およびDCによるファゴサイトーシス(図3F)のイムノブロット(図3D)検出を行った。結果は3連であり(X±SD)、そして3回の独立した実験の代表である。*はスチューデントt検定を使用したp<0.001の統計的有意差を示す。
【図3E】CRTのノックダウンはDC媒介ファゴサイトーシスを阻害し、そしてrCRTはファゴサイトーシスを回復させる。細胞を、示すsiRNAを用いてトランスフェクトし、そして所望によりrCRTで処理し、続いて表面CRT(図3E)およびDCによるファゴサイトーシス(図3F)のイムノブロット(図3D)検出を行った。結果は3連であり(X±SD)、そして3回の独立した実験の代表である。*はスチューデントt検定を使用したp<0.001の統計的有意差を示す。
【図3F】CRTのノックダウンはDC媒介ファゴサイトーシスを阻害し、そしてrCRTはファゴサイトーシスを回復させる。細胞を、示すsiRNAを用いてトランスフェクトし、そして所望によりrCRTで処理し、続いて表面CRT(図3E)およびDCによるファゴサイトーシス(図3F)のイムノブロット(図3D)検出を行った。結果は3連であり(X±SD)、そして3回の独立した実験の代表である。*はスチューデントt検定を使用したp<0.001の統計的有意差を示す。
【図3S】CRT露出の阻害プロファイル。タンパク質合成(シクロヘキシミド)、RNA合成(アクチノマイシンD)、微小管(ノコダゾール)、またはアクチン細胞骨格(ラトランクリンA)の示す阻害剤との1時間のプレインキュベーションの後、細胞をミトキサントロンまたはPP1/GADD34の阻害剤で処理した。次いで、CRT発現を免疫細胞蛍光測定によって決定した。結果は、3回のうち1回の代表的な実験についての3連の平均±SDである。
【図4A】CRTは死滅している腫瘍細胞に対する免疫応答に必要とされる。インビボ抗癌ワクチン接種はCRTに依存する。CT26結腸癌細胞を、示すsiRNAを用いてトランスフェクトし、次いでrCRTおよび/またはミトキサントロンで処理し(図3Dにおけるように)、そして抗腫瘍応答を、一方の側腹部においてミトキサントロン処理腫瘍細胞で、そして反対の側腹部において非処理生腫瘍細胞でBALB/cマウスを同時にチャレンジすることによって測定した。
【図4B】CRTに依存するT細胞応答のプライミング。CT26腫瘍細胞を非トランスフェクトのままにするか、または示すsiRNAを用いてトランスフェクトし、次いで培地単独、マイトマイシンCまたはミトキサントロンで処理し、そしてBalb/cマウスの右足蹠中に注射した。5日後、流入領域膝窩リンパ節からの単核細胞を凍結融解したCT26細胞でチャレンジし、そしてINF−γ分泌を72時間目で評価した。
【図4C】CRTの外因性供給はCRT陰性の死滅している細胞の免疫原性を増強する。siRNAおよびミトキサントロン処理でのCRTの枯渇後、またはマイトマイシン処理後の、CRT発現を欠如するCT26細胞を、rCRTでコートし(挿入図)、次いで足蹠中に注射し、続いて図4Bにおけるように流入領域リンパ節からの細胞によるIFN−γ分泌の評価を行った。
【図4D】エトポシド処理腫瘍細胞に対する免疫応答のCRT媒介改善。CT26細胞を24時間エトポシド(またはPBS)で処理し、そして所望によりrCRTを細胞表面に吸収させ(挿入図)、続いてエトポシド±CRT処理腫瘍細胞および生腫瘍細胞の反対側腹部における同時注射、および腫瘍成長のモニターリングを行った。
【図5A】PP1/GADD34複合体の阻害によるカルレティキュリン露出および免疫原性細胞死の誘導。核の非存在下でのアントラサイクリン処理後のCRT露出。インタクトな細胞または除核細胞(細胞質体)を2時間ミトキサントロンで処理し、続いてCRT露出の免疫蛍光検出を行った。挿入図は、細胞質体からのHoechst33342染色可能核の有効な除去を示す。
【図5B】アントラサイクリンでの処理後のeIF2αのリン酸化。細胞を4時間ミトキサントロンまたはドキソルビシンで処理し、続いてGAPDHをローディングコントロールとして、そのリン酸化状態にかかわらずリン酸化されたeIF2αのイムノブロット検出を行った。
【図5C】PP1のノックダウンによるCRT露出の誘導。示す転写物に特異的なsiRNAを用いて細胞をトランスフェクトし、そして36時間後に2時間ミトキサントロンで処理し、その後イムノブロット(図5C)および細胞表面染色(図5D)を行った。
【図5D】PP1のノックダウンによるCRT露出の誘導。示す転写物に特異的なsiRNAを用いて細胞をトランスフェクトし、そして36時間後に2時間ミトキサントロンで処理し、その後イムノブロット(図5C)および細胞表面染色(図5D)を行った。
【図5E】示す薬物との細胞のインキュベーション後のFACS分析によって決定されるCRT露出のキネティクス。
【図5F】PP1/GADD34阻害剤はCRTを介して細胞を免疫原性にする。腫瘍細胞をまずコントロールsiRNAまたはCRT特異的siRNAを用いてトランスフェクトし、次いでインビトロでエトポシド単独またはPP1/GADD34阻害剤との組み合わせで処理した。2時間後、表面CRTを検出して、エトポシド単独またはエトポシド+PP1/GADD34阻害剤で処理したコントロールsiRNAトランスフェクト細胞上のCRTの有効な発現を実証し(図5F)、その後、細胞を図1Aにおけるように注射して、1週間後に接種した生腫瘍細胞の増殖を阻害するその能力を決定した(図5G)。結果は、無腫瘍マウスの%を表す(1群当たり合計12〜18匹のマウスを含む)。
【図5G】PP1/GADD34阻害剤はCRTを介して細胞を免疫原性にする。腫瘍細胞をまずコントロールsiRNAまたはCRT特異的siRNAを用いてトランスフェクトし、次いでインビトロでエトポシド単独またはPP1/GADD34阻害剤との組み合わせで処理した。2時間後、表面CRTを検出して、エトポシド単独またはエトポシド+PP1/GADD34阻害剤で処理したコントロールsiRNAトランスフェクト細胞上のCRTの有効な発現を実証し(図5F)、その後、細胞を図1Aにおけるように注射して、1週間後に接種した生腫瘍細胞の増殖を阻害するその能力を決定した(図5G)。結果は、無腫瘍マウスの%を表す(1群当たり合計12〜18匹のマウスを含む)。
【図6A】腫瘍中に注射したCRTまたはPP1/GADD34阻害剤の治療効果。免疫適格性野生型(図6A)または無胸腺nu/nu Balb/cマウス(図6B)において確立されたCT26腫瘍に、ミトキサントロン、エトポシド、マイトマイシンC、rCRT、サルブリナルまたはトートマイシンの示す組み合わせを局所注射し、続いて腫瘍成長をモニターした。各々の曲線は1匹のマウスを表す。各グラフの右下隅の数字は、45日目に完全な腫瘍退行を現すマウスの数を示す。図6C。腫瘍内エトポシド+rec.CRTの反対側皮下注射を使用する同一の実験設定。グラフは、マウス5匹/群を含む、2回のうち1回の代表的な実験を示す。
【図6B】腫瘍中に注射したCRTまたはPP1/GADD34阻害剤の治療効果。免疫適格性野生型(図6A)または無胸腺nu/nu Balb/cマウス(図6B)において確立されたCT26腫瘍に、ミトキサントロン、エトポシド、マイトマイシンC、rCRT、サルブリナルまたはトートマイシンの示す組み合わせを局所注射し、続いて腫瘍成長をモニターした。各々の曲線は1匹のマウスを表す。各グラフの右下隅の数字は、45日目に完全な腫瘍退行を現すマウスの数を示す。図6C。腫瘍内エトポシド+rec.CRTの反対側皮下注射を使用する同一の実験設定。グラフは、マウス5匹/群を含む、2回のうち1回の代表的な実験を示す。
【図6C】腫瘍中に注射したCRTまたはPP1/GADD34阻害剤の治療効果。免疫適格性野生型(図6A)または無胸腺nu/nu Balb/cマウス(図6B)において確立されたCT26腫瘍に、ミトキサントロン、エトポシド、マイトマイシンC、rCRT、サルブリナルまたはトートマイシンの示す組み合わせを局所注射し、続いて腫瘍成長をモニターした。各々の曲線は1匹のマウスを表す。各グラフの右下隅の数字は、45日目に完全な腫瘍退行を現すマウスの数を示す。図6C。腫瘍内エトポシド+rec.CRTの反対側皮下注射を使用する同一の実験設定。グラフは、マウス5匹/群を含む、2回のうち1回の代表的な実験を示す。
【図7A】PP1/GADD34阻害ペプチドの存在下または非存在下でのERp57/CRTの発現。HCT116細胞(図7A)またはCT26細胞(図7B)を、10%ウシ胎仔血清を補充した完全培地単独で、またはコントロールペプチド(VKKKKIKREIKI−lkaravafsekv)またはPP1/GADD34阻害ペプチド(VKKKKIKREIKI−lkarkvrfsekv、PP1ペプチドと名付ける)の存在下で2時間培養した。細胞をPBSで2回洗浄し、そしてPFA(4%(w/v))中で5分間固定した。1:200希釈のカルレティキュリンに対する抗体(AbcamからのpAb、ab2907)またはアイソタイプコントロールで、染色緩衝液(PBS、1%FCS)中で30分間氷上で細胞を染色し、続いて洗浄した。1:500希釈した抗ウサギAlexa fluor488免疫グロブリンコンジュゲート(Molecular Probe-Invitrogen)をさらに30分間氷上で添加し、その後洗浄し、そしてフローサイトメトリー(FACScan、Becton Dickinson)によって分析した。ヨウ化プロピジウム(50μg/ml、Becton Dickinson)を試料に添加して、透過処理された(死滅した)細胞を標識しそして除外した。
【図7B】PP1/GADD34阻害ペプチドの存在下または非存在下でのERp57/CRTの発現。HCT116細胞(図7A)またはCT26細胞(図7B)を、10%ウシ胎仔血清を補充した完全培地単独で、またはコントロールペプチド(VKKKKIKREIKI−lkaravafsekv)またはPP1/GADD34阻害ペプチド(VKKKKIKREIKI−lkarkvrfsekv、PP1ペプチドと名付ける)の存在下で2時間培養した。細胞をPBSで2回洗浄し、そしてPFA(4%(w/v))中で5分間固定した。1:200希釈のカルレティキュリンに対する抗体(AbcamからのpAb、ab2907)またはアイソタイプコントロールで、染色緩衝液(PBS、1%FCS)中で30分間氷上で細胞を染色し、続いて洗浄した。1:500希釈した抗ウサギAlexa fluor488免疫グロブリンコンジュゲート(Molecular Probe-Invitrogen)をさらに30分間氷上で添加し、その後洗浄し、そしてフローサイトメトリー(FACScan、Becton Dickinson)によって分析した。ヨウ化プロピジウム(50μg/ml、Becton Dickinson)を試料に添加して、透過処理された(死滅した)細胞を標識しそして除外した。
【図8】カルレティキュリン(A)およびERp57(B)はミトキサントロン(MTX)処理細胞の表面上に出現する。HeLa細胞を、1μMミトキサントロン(MTX、Sigma)の非存在下(コントロール)または存在下でカバーグラス上で2時間培養した(10%ウシ胎仔血清、L−グルタミンおよび抗生物質を補充したRPMI160培地中)。細胞内染色のために、HeLa細胞を、製造業者の説明書に従ってBecton DickinsonのCytofix/Cytopermキットによって、固定および透過処理した。表面染色のために、HeLa細胞を、パラホルムアルデヒド(4%(w/v))で氷上で5分間固定した。細胞を、ヤギ抗ウサギ免疫グロブリンAlexa fluor568コンジュゲート(Molecular Probes-Invitrogen)によって明らかにされるカルレティキュリン(CRT)(AbcamからのpAb、ab2907)またはERp57(AbcamからのpAb、ab10827)の検出ために染色した。核をDAPIマウント媒体(Vectashield)を用いて標識した。蛍光顕微鏡観察をDC300Fカメラを備えたLeica IRE2を用いて分析した。サイズバーは10μmを現す。
【図9】ERp57のフローサイトメトリー検出。HeLa細胞をミトキサントロン(MTX、1μM)またはトートマイシン(Tau、150nM、Sigma)有りまたは無しで2時間処理した。細胞を2回PBSで洗浄し、そしてPFA(4%(w/v))中で5分間固定した。1:200希釈のERp57に対する抗体(AbcamからのpAb、ab10827)またはアイソタイプコントロールで、染色緩衝液(PBS、1%FCS)中で30分間氷上でHeLa細胞を染色し、続いて洗浄した。1:500希釈した抗ウサギAlexa fluor488免疫グロブリンコンジュゲート(Molecular Probes-Invitrogen)をさらに30分間氷上で添加し、その後洗浄し、そしてフローサイトメトリー(FACScan、Becton Dickinson)によって分析した。ヨウ化プロピジウム(50μg/ml、Becton Dickinson)を試料に添加して、透過処理された(死滅した)細胞を標識しそして除外した。CellQuestソフトウエアを使用して、平均蛍光強度(MFI)およびERp57陽性細胞の百分率を分析した。
【図10】C16セラミドはカルレティキュリンの露出を誘導する。CT26細胞をC16−セラミド(30μM、Sigma)で2時間処理し、そして表面上のCRTのレベルをフローサイトメトリーによって測定した。フローサイトメトリーによるCRT露出についての染色のためのプロトコルはERp57についてと同じであり、そして使用した一次抗体はカルレティキュリンに対するpAbである(AbcamからのpAb、ab2907)。
【図11A】ERp57の露出のためのBaxおよびBakの必要性。野生型、Bax−/−、Bak−/−およびDKOマウス胚線維芽細胞をMTX(1μM)有りまたは無しで2時間処理した。細胞を図9において記載するように表面ERp57について染色し、そしてフローサイトメトリーによって分析した。
【図11B】野生型およびBax−/−HCT116細胞をMTX(1μM)、サルブリナル(Sal、20μM、Calbiochem)またはTau(150nM)有りまたは無しで2時間処理し、続いてERp57表面染色を行い、そしてフローサイトメトリーによって分析した。
【図11C】Bax−/−HCT116を14時間GFPプラスミドまたはGFP−BAXプラスミドのいずれかを用いてlipofectamine2000(Invitrogen)によってトランスフェクトし、次いでMTX有りまたは無しで2時間処理した。細胞を以前に記載されるように表面ERp57について染色した。GFP陽性細胞をゲートし、そして表面上のERp57の存在について分析した。
【図11D】(D)HCT116細胞および(E)HeLaを24ウェルプレート中で培養し、そして80%コンフルエンスでOligofectamine試薬(Invitrogen)を用いて、ヒトBax(センス 5’−GGUGCCGGAACUGAUCAGATT−3’ − 配列番号5、アンチセンス:5’UCUGAUCAGUUCCGGCACCTT−3’ − 配列番号6)および/またはBak(センス、5’−ACCGACGCKATGACTCAGAGTTC−3’ − 配列番号7、アンチセンス、5’−ACACGGCACCAATTGATG−3’ − 配列番号8)に特異的なsiRNAおよびコントロールとしての無関係な配列(センス 5’−GCCGGUAUGCCGGUUAAGU−3’ − 配列番号9、アンチセンス:5’−ACUUAACCGGCAUACCGGC−3’ − 配列番号10)20nMの存在下でトランスフェクトした。siRNAの効果をBaxおよびBakに特異的な適切な抗体を用いるイムノブロットによって管理した。36時間のトランスフェクションの後、細胞をMTX(1μM)で2時間処理した。表面ERp57陽性細胞のMFIを図9において記載するように分析した。
【図11E】(D)HCT116細胞および(E)HeLaを24ウェルプレート中で培養し、そして80%コンフルエンスでOligofectamine試薬(Invitrogen)を用いて、ヒトBax(センス 5’−GGUGCCGGAACUGAUCAGATT−3’ − 配列番号5、アンチセンス:5’UCUGAUCAGUUCCGGCACCTT−3’ − 配列番号6)および/またはBak(センス、5’−ACCGACGCKATGACTCAGAGTTC−3’ − 配列番号7、アンチセンス、5’−ACACGGCACCAATTGATG−3’ − 配列番号8)に特異的なsiRNAおよびコントロールとしての無関係な配列(センス 5’−GCCGGUAUGCCGGUUAAGU−3’ − 配列番号9、アンチセンス:5’−ACUUAACCGGCAUACCGGC−3’ − 配列番号10)20nMの存在下でトランスフェクトした。siRNAの効果をBaxおよびBakに特異的な適切な抗体を用いるイムノブロットによって管理した。36時間のトランスフェクションの後、細胞をMTX(1μM)で2時間処理した。表面ERp57陽性細胞のMFIを図9において記載するように分析した。
【図12A】ERp57露出はカスパーゼの活性化に依存する。HeLa細胞をMTX(1μM)で2時間50μM zVAD.fmkの存在下または非存在下で処理した。表面ERp57陽性細胞のMFIを図9に記載されるように分析した。
【図12B】p35をコードするベクター(Stennicke et al., 2002; Date et al., 2003)またはコントロールとしてのpCMVベクター(Sigma)のいずれかを用いて安定にトランスフェクトされたHCT116親細胞を、MTX(1μM)で2時間処理した。表面ERp57陽性細胞のMFIを図9において記載するように分析した。
【図12C】HCT116細胞を50μMビオチン化VAD.fmk(Calbiochem)の存在下で2時間プレインキュベートした。次いで細胞をMTX(1μM)で1および2時間処理した。活性カスパーゼ8を30μlのストレプトアビジン−アガロース(Invitrogen)を使用して沈殿させ、そしてモノクローナルカスパーゼ8抗体(Immunotech、PNIM3148)を使用するイムノブロッティングによって同定した。
【図13A】BAP31はMTXによって誘導されるERp57の露出のために必要とされる。HeLa細胞を24ウェルプレート中で培養し、そして80%コンフルエンスでOligofectamine試薬(Invitrogen)を用いて、ヒトBAP31−1(センス 5’−GCGCGAAAUUCGGAAGUAU−3’ − 配列番号11、アンチセンス:5’−AUACUUCCGAAUUUCGCGC−3’ − 配列番号12)およびBAP31−2(センス 5’−CCAGAGGAAUCUACAUU−3’ − 配列番号13、アンチセンス:5’−AAUGUAGAGAUUCCUCUGG−3’ − 配列番号14)に特異的な2つの異なるsiRNAおよびコントロールとしての無関係な配列(センス 5’−GCCGGUAUGCCGGUUAAGU−3’ − 配列番号15、アンチセンス:5’−ACUUAACCGGCAUACCGGC−3’ − 配列番号16)20nMの存在下でトランスフェクトした。siRNAの効果をBAP31に特異的な適切な抗体(abcam、ab15044)を用いるイムノブロットによって管理した。36時間のトランスフェクションの後、細胞をMTX(1μM)で2時間処理した。表面ERp57陽性細胞のMFIを図9において記載するように分析した。
【図13B】HeLa細胞を処理しないかまたはMTX(1μM)で2時間処理し、そして細胞溶解物を抗BAP31モノクローナル抗体(Abcam)を用いるイムノブロッティングによって分析した。BAP31およびそのp20切断の位置を示す。
【図14A】eIF2αキナーゼはMTXによって誘導されるERp57の露出を調節する。野生型およびeIF2α S51A変異体マウス胚線維芽細胞(MEF)をMTX(1μM)で2時間処理した。表面ERp57陽性細胞のMFIを図9において記載するように分析した。
【図14B】野生型およびIRE1−/−マウス胚線維芽細胞をMTX(1μM)で2時間処理した。表面ERp57陽性細胞のMFIを図9において記載するように分析した。
【図14C】(C)HeLaおよび(D)HCT116細胞を24ウェルプレート中で培養し、そして80%コンフルエンスでOligofectamine試薬(Invitrogen)を用いて、ヒトPKR(センス 5’−GGCCGCUAAACUUGCAUAU−3’ − 配列番号17、アンチセンス:5’−AUAUGCAAGUUUAGCGGCC−3’ − 配列番号18)、PERK(センス 5’−GCCCUUUGCCAAGCAAUUA−3’ − 配列番号19、アンチセンス:5’−UAAUUGCUUGGCAAAGGGC−3’ − 配列番号20)、HRI(センス 5’−CCGGAAUCCCUCCGUAAAA−3’ − 配列番号21、アンチセンス:5’−UUUUACGGAGGGAUUCCGG−3’ − 配列番号22)に特異的な2つの異なるsiRNAおよびコントロールとしての無関係な配列(センス 5’−GCCGGUAUGCCGGUUAAGU−3’ − 配列番号23、アンチセンス:5’−ACUUAACCGGCAUACCGGC−3’ − 配列番号24)20nMの存在下でトランスフェクトした。siRNAの効果をPKR、PERKおよびHRIに特異的な適切な抗体(Santa Cruz)を用いるイムノブロットによって管理した。36時間のトランスフェクションの後、細胞をMTX(1μM)で2時間処理した。表面ERp57陽性細胞のMFIを図9において記載するように分析した。
【図14D】(C)HeLaおよび(D)HCT116細胞を24ウェルプレート中で培養し、そして80%コンフルエンスでOligofectamine試薬(Invitrogen)を用いて、ヒトPKR(センス 5’−GGCCGCUAAACUUGCAUAU−3' − 配列番号17、アンチセンス:5’−AUAUGCAAGUUUAGCGGCC−3’ − 配列番号18)、PERK(センス 5’−GCCCUUUGCCAAGCAAUUA−3’ − 配列番号19、アンチセンス:5’−UAAUUGCUUGGCAAAGGGC−3’ − 配列番号20)、HRI(センス 5’−CCGGAAUCCCUCCGUAAAA−3’ − 配列番号21、アンチセンス:5’−UUUUACGGAGGGAUUCCGG−3’ − 配列番号22)に特異的な2つの異なるsiRNAおよびコントロールとしての無関係な配列(センス 5’−GCCGGUAUGCCGGUUAAGU−3’ − 配列番号23、アンチセンス:5’−ACUUAACCGGCAUACCGGC−3’ − 配列番号24)20nMの存在下でトランスフェクトした。siRNAの効果をPKR、PERKおよびHRIに特異的な適切な抗体(Santa Cruz)を用いるイムノブロットによって管理した。36時間のトランスフェクションの後、細胞をMTX(1μM)で2時間処理した。表面ERp57陽性細胞のMFIを図9において記載するように分析した。
【図15A】アントラサイクリンで処理したHeLa細胞上のKDEL受容体の免疫蛍光および共焦点顕微鏡観察分析。図15(A)コントロールおよび図15(B)MTX処理HeLa細胞。HeLa細胞をカバーグラス上で培養し、そして1μMミトキサントロン(MTX、Sigma)無し(A)または有り(B)で2時間処理した。細胞をパラホルムアルデヒド(4%(w/v))で氷上で5分間固定した。細胞を、ヤギ抗マウスAlexa fluor568および抗ウサギAlexa fluor488免疫グロブリンコンジュゲート(Molecular Probes-Invitrogen)によって、KDEL受容体(KDEL−R)(AbcamからのmAb、ab12224)およびCRT(AbcamからのpAb、ab2907)の検出のために染色した。核をDAPIマウント媒体(Vectashield)を用いて標識した。蛍光顕微鏡観察をDC300Fカメラを備えたLeica IRE2を用いて分析した。サイズバー:10μm。
【図15B】アントラサイクリンで処理したHeLa細胞上のKDEL受容体の免疫蛍光および共焦点顕微鏡観察分析。図15(A)コントロールおよび図15(B)MTX処理HeLa細胞。HeLa細胞をカバーグラス上で培養し、そして1μMミトキサントロン(MTX、Sigma)無し(A)または有り(B)で2時間処理した。細胞をパラホルムアルデヒド(4%(w/v))で氷上で5分間固定した。細胞を、ヤギ抗マウスAlexa fluor568および抗ウサギAlexa fluor488免疫グロブリンコンジュゲート(Molecular Probes-Invitrogen)によって、KDEL受容体(KDEL−R)(AbcamからのmAb、ab12224)およびCRT(AbcamからのpAb、ab2907)の検出のために染色した。核をDAPIマウント媒体(Vectashield)を用いて標識した。蛍光顕微鏡観察をDC300Fカメラを備えたLeica IRE2を用いて分析した。サイズバー:10μm。
【0198】
実験部
材料および方法
細胞株および細胞死誘導。
CT26細胞を37℃で5%CO下、10%FCS、ペニシリン、ストレプトマイシン、1mMピルビン酸および10mM HEPESを補充したRPMI1640培地中で、ドキソルビシン(DX;24時間、25μM)、ミトキサントロン(Mitox;24時間、1μM、Sigma)、イダルビシン(24時間、1μM、Aventis, France)、マイトマイシンC(30μM、48時間;Sanofi-Synthelabo, France)、および/またはzVAD−fmk(50μM、24時間;Bachem)、ツニカマイシン(24時間、65μM)、タプシガルジン(24時間、30μM)、ブレフェルジンA(24時間、50μM、Sigma)、エトポシド(48時間、25μM、Tava classics)、MG132(48時間、10μM)、ALLN(48時間、μM)、ベツリン酸(24時間、10μM)、Hoechst33343(24時間、0.2μM)、カンプトテシン(24時間、15μM)、ラクタシスチン(48時間、60μM)、BAY11−8072(24時間、30μM)、スタウロスポリン(24時間、1.5μM)、バフィロマイシンA1(48時間、300nM)、三酸化ヒ素(24時間、30μM)、C2−セラミド(C2−C;24時間、60μM)、カリクリンA(48時間、30nM)、またはトートマイシン(48時間、nM、Sigma)および/またはサルブリナル(48時間、μM、Calbiochem)の存在下で培養した。
【0199】
細胞死アッセイ。
細胞をトリプシン処理し、そして細胞生存率の決定のために4,6−ジアミノ−2−フェニルインドール(DAPI、2.5mM、10分間、Molecular Probes)で、そしてホスファチジルセリン露出の評価のためにフルオレセインイソチオシアネートとコンジュゲートされたアネキシンV(Bender Medsystems)で染色した後、FACS Vantageを用いる細胞蛍光測定分析に供した(Zamzami, N. & Kroemer, G. Methods Mol Biol. 282, 103-16 (2004))。
【0200】
siRNAおよび表面CRTの操作。
CRT(センス鎖:5’−rCrCrGrCUrGrGrGUrCrGrArAUrCrRrArATT−3’ − 配列番号25)、GADD34(5’−rCrArGrGrArGrCrArGrAUrCrArGrAUrArGrATT−3’ − 配列番号26)、PPICα(5’−rGrCUrGrGrCrCUrAUrArArGrAUrCrArGrATT−3’ − 配列番号27)または無関係なコントロール(5’−rGrCrCrGrGUrAUrGrCrCrGrGUUrArArGUTT−3’ − 配列番号28)に特異的なsiRNAヘテロ二重鎖は、本発明者らの研究室において設計され、そしてSigma-Proligoによって合成された。CT26細胞をHiPerFect(Qiagen)を使用して100nMの最終濃度のsiRNAによってトランスフェクトした。トランスフェクションの36時間後にCT26細胞を全CRT含量についてイムノブロッティングによって評価した。CRT発現を回復させるために、細胞を、30分間氷上でPBC中3μg/10細胞で、記載されるように産生されたrCRTに曝露し(Culina, S., Lauvau, G., Gubler, B. & van Endert, P.M. Calreticulin promotes folding of functional human leukocyte antigen class I molecules in vitro. J Biol Chem 279, 54210-5 (2004))、続いて3回洗浄した。
【0201】
細胞表面CRTの蛍光検出。
CT26細胞(スライドガラス上または12ウェルプレート中)をまずFACS緩衝液(1×PBS、5%ウシ胎児血清、および0.1%アジ化ナトリウム)で洗浄し、次いで30分間4℃でFACS緩衝液中でウサギ抗マウスCRT抗体(1:100、Stressgen)とともにインキュベートした。細胞を、抗ウサギIgG(H+L)Alexa fluor488コンジュゲート(1:500)とFACS緩衝液中4℃で30分間反応させた。FACS緩衝液で3回洗浄した後、表面CRTをFACS Vantage上での細胞蛍光測定分析によって検出した。いくつかの実験において、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、Hoechst(2μM;Sigma)で対比染色し、続いてDC300Fカメラを備えたLeica IRE2顕微鏡を用いた蛍光顕微鏡観察評価を行った。
【0202】
イムノブロット分析。
細胞を4℃の冷PBSで洗浄し、そして50mM Tris HCl(pH6.8)、10%グリセロールおよび2%SDSを含む緩衝液中で溶解した。CRT(希釈1/2000、Stressgen)、CD47(希釈1/500、BD Biosciences)、EIF2α、EIF2α−PおよびPP1cα(希釈1/2000、Cell Signaling Technology)、およびGADD34(希釈1/2000、Abcam)を検出する1次抗体を、適切な西洋ワサビペルオキシダーゼ標識2次抗体(Southern Biotechnologies Associates)を用いて明らかにし、そしてECL(Pierce)によって検出した。抗アクチンまたは抗GAPDH(Chemicon)を等価なローディングを管理するために使用した。
【0203】
抗腫瘍ワクチン接種および確立された腫瘍の処置。
全ての動物を特定の無病原体条件において維持し、そして全ての実験はFELASAガイドラインに従った。3×10個の処理CT26細胞を200mlのPBS中BALB/c 6週齢雌性マウス(Charles River, France)中、下側腹部中にs.c.接種し、5×10個の非処理コントロール細胞を反対側側腹部中に接種した。腫瘍原性アッセイのために、3×10個の処理または非処理CT26細胞をnu/nuマウス(IGR animal facility)中にs.c.注射した。CT26に対する免疫応答の特異性を評価するために、本発明者らは5×10個または5×10個(それぞれ標準プロトコルまたはワクチン接種プロトコルで免疫化したマウスについて)のいずれかのCT26を注射した。腫瘍を毎週ノギスを使用して評価した。一連の実験において、触知可能なCT26腫瘍(10個の腫瘍細胞の注射によって野生型については14日前に、またはnu/nuマウスについては7日前に移植)を有するBALB/c(野生型またはnu/nu)に、インビトロで使用されたのと同じ濃度の抗癌剤およびPP1/GADD34阻害剤ならびにrCRT(15μg)を含む100μM PBSの単回腫瘍内注射を与えた。局所的免疫応答の評価のために、3×10個の細胞を50μl中でマウスの足蹠中に注射した。5日後、マウスを屠殺し、そして流入領域リンパ節を採取した。1×10個のリンパ節細胞を4日間単独でまたは凍結融解サイクルによって死滅させた1×10個のCT26細胞とともに丸底96ウェルプレート中200μl中で培養した。IFN−γをELISA(BD Pharmingen)によって決定した。
【0204】
BMDCの生成。
BM細胞をBALB/cマウスの脛骨および大腿から、10%熱不活化FBS(Invitrogen)、ピルビン酸ナトリウム、50μM 2−ME(Sigma)、10mM HEPES(pH7.4)およびペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を補充したRPMI1640培地(Invitrogen Life Technologies)から構成される培地を用いてフラッシュした。1回の遠心分離の後、BM細胞をTris−塩化アンモニウム中に2分間再懸濁して、RBCを溶解した。さらに1回の遠心分離の後、BM細胞(1×10細胞/ml)を6ウェルプレート(Costar Corning)中、100ng/mlの組換えマウスFLT3リガンド(R&D systems)を補充した培地中で培養した。7日後、非接着性および緩く接着性の細胞をVerseneを用いて採集し、洗浄し、そして腫瘍細胞との共培養のために12ウェルプレート中に移した(1.5×10細胞/プレート)。
【0205】
ファゴサイトーシスアッセイ。
12ウェルプレートにおいて、25×10個の接着性CT26細胞をCelltracker Green(Calbiochem)を用いて標識し、次いで薬物とともにインキュベートした。いくつかの実験において、生存CT26を2μg/10細胞のトリ抗CRT抗体(ABR affinity bioreagents)またはアイソタイプコントロールで30分間コートし、その後洗浄しそして樹状細胞に与えた。あるいは、CT26細胞を2μg/10細胞のrCRTで氷上で30分間コートし、そして2回洗浄し、その後樹状細胞に添加した。次いで細胞を採集し、FBSを補充した培地で3回洗浄し、そして未成熟DCと2時間1:1および1:5の比率で共培養した。インキュベーションの最後に、細胞をverseneを用いて採集し、上清中に存在する非接着性細胞とともにプールし、洗浄し、そしてCD11c−FITC抗体で染色した。ファゴサイトーシスを二重陽性細胞のFACS分析によって評価した。ファゴサイトーシス指数は、DCと腫瘍細胞との間の共インキュベーションの、4℃で得られた値と37℃で得られた値との間の比率を指す。
【0206】
統計分析。
データを算術平均±標準偏差(SD)または百分率として提示する。全ての統計分析をJMPソフトウエア(SAS Institute Inc.)を使用して行った。スチューデントt検定を連続変数を比較するために使用し(腫瘍成長の比較)、カイ二乗検定を非母数変数を比較するために使用した(動物コホートの比較)。全ての試験について、統計的有意レベルを0.05に設定した。
【0207】
生化学方法。
形質膜タンパク質の精製、質量分析および細胞質体の生成は以下で詳述する。
【0208】
CT26細胞表面タンパク質のビオチン化。
細胞表面タンパク質のビオチン化および回収を、Gottardi et al.(Gottardi, C.J., Dunbar, L.A. & Caplan, M.J. Biotinylation and assessment of membrane polarity: caveats and methodological concerns. Am J Physiol 268, F285-95 (1995))およびHanwell et al.(Hanwell, D., Ishikawa, T., Saleki, R. & Rotin, D. Trafficking and cell surface stability of the epithelial Na+ channel expressed in epithelial Madin-Darby canine kidney cells. J Biol Chem 277, 9772-9 (2002))から適応させた方法を用いて行った。簡潔に記載すると、75cmフラスコ上で増殖させた20×10個のCT26細胞を氷上に置き、そして氷冷PBS−Ca2+−Mg2+(0.1mM CaClおよび1mM MgClを含むPBS)で3回洗浄した。次いで、膜タンパク質を、穏やかに攪拌しながらの、ビオチン化緩衝液(10mMトリエタノールアミン、2mM CaCl、150mM NaCl、pH7.5)中に新たに希釈したNHS−SS−ビオチン1.25mg/ml(Pierce)との4℃での30分間のインキュベーションによってビオチン化した。CT26細胞をPBS−Ca2+−Mg2++グリシン(100mM)でリンスし、そしてこの緩衝液中で20分間4℃で洗浄して、非反応ビオチンをクエンチした。次いで、細胞をPBS−Ca2+−Mg2+で2回リンスし、冷PBS中で掻き取り、そして2,000rpmで4℃でペレット化した。ペレットを45分間プロテアーゼ阻害剤を含む溶解緩衝液(1%Triton X−100、150mM NaCl、5mM EDTA、50mM Tris、pH7.5)500μl中で可溶化した。溶解物を14,000×gで10分間4℃の遠心分離によって澄明化し、そして上清をパックしたストレプトアビジン−アガロースビーズとともに一晩インキュベートして、ビオチン化タンパク質を回収した。次いで、ビーズを遠心分離によってペレット化し、そして上清のアリコートを取って、タンパク質の非結合、細胞内プールとした。ビオチン化タンパク質を、100℃で5分間SDS−PAGE試料緩衝液中で加熱することによってビーズから溶出し、その後上記のように10%SDS−PAGEゲルにロードした。細胞中へのビオチンの漏れの非存在を確実にするために、本発明者らはビオチン化抽出物中の細胞内タンパク質アクチンおよびGAPDHの非存在を体系的に確認した。
【0209】
2Dゲル電気泳動分析および質量分析によるタンパク質同定。
精製タンパク質をEttan 2−D clean up kit(GE Healthcare)を使用して沈殿させ、次に尿素緩衝液(7M尿素、2Mチオウレア、2%Chaps、1%Sulfobetaine SB3−10、1%Amidosulfobetaine ASB14、50mM DTT)中に再懸濁した。タンパク質分離の第1次元のために、等電点電気泳動(IEF)を、18cm固定化非直線pH勾配ストリップ(pH3〜10;GE Healthcare)をIPGphor II電気泳動ユニット(GE Healthcare)上で使用して行った。タンパク質(100μg)を低電圧(30V)を使用する9時間のゲル中再水和によってロードし、次いで電圧を100Vで1時間、200Vで2時間、500Vで1時間、1,000Vで1時間、2時間、1,000〜8,000Vの2時間の電圧勾配、および8,000Vで4時間に設定したプログラムを使用して泳動した。第2次元の電気泳動の前に、IPGゲルストリップを10分間室温で1%ジチオトレイトール中で平衡化して、タンパク質を還元し、そして次にスルフヒドリル基を4%ヨードアセトアミドを使用して誘導体化した(両方の溶液を50mM Tris[pH8.8]−6M尿素−30%グリセロール−2%SDS−2%ブロモフェノールブルー中で調製した)。ストリップを1.0mm厚の10%(wt/vol)ポリアクリルアミドゲル(20×20cm)に移し、そして第2次元ゲルを50μAで6時間泳動した。ゲルをSypro Ruby(BioRad)で染色し、そしてTyphoon9200スキャナー(GE Healthcare)を使用して可視化した。Investigator HT analyzer(Genomic Solutions Inc)を、ディファレンシャルなゲルの間での可視化されたタンパク質スポットのマッチングおよび分析のために使用した。バックグラウンドサブトラクションを使用して、スポット当たりのタンパク質の量を表す強度値を規準化した。
【0210】
ディファレンシャルに発現されたスポットを自動スポットピッカー(Investigator ProPic、Genomic Solutions Inc.)を用いてゲルから切り出し、Eppendorfチューブ中に入れ、そして5分間50μLの0.1M NHHCOで洗浄することによって脱染した。次いで、50μLの100%アセトニトリルを添加し、さらに5分間インキュベートした。液体を捨て、洗浄工程をさらに1回反復し、そしてゲルプラグを純粋アセトニトリルの添加によって収縮させた。乾燥したゲル小片を、50mM NHHCO中の4.0ng/μLトリプシン(Promega, Madison, WI)を用いて再膨潤させ、そして一晩37℃で消化した。ペプチドをZipTip(登録商標)μC18ピペットチップを用いて濃縮した。1μLのα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸マトリックス(50%アセトニトリル、0.1%TFA中5μg/mL)を用いてMALDI標的上へ直接的に共溶出を行った。MALDI−MSおよびMALDI−MS/MSを、TOF/TOFイオンオプティクス(TOF/TOF ion optics)を用いてApplied Biosystems 4700 Proteomics Analyzer上で行った。スペクトルを、ポジティブMS反射鏡モード(positive MS reflector mode)で獲得し、そして標準の5つのピークを使用して外部的に(ABI4700 Calibration Mixture)、またはブタトリプシン自己分解ペプチドピークを使用して内部的に(842.51、1045.56および2211.10[M+H]イオン)のいずれかで較正した。質量スペクトルを各試料スポットから、750〜4000の質量範囲で30サブスペクトル累積(各々が50のレーザーショットからなる)によって得た。各スペクトルの5個のS/N最良ピークをMS/MS分析のために選択した。MS/MSスペクトルについて、衝突エネルギーは1keVであり、そして衝突ガスは空気であった(Medzihradszky, K.F. et al. The characteristics of peptide collision-induced dissociation using a high-performance MALDI-TOF/TOF tandem mass spectrometer. Anal Chem 72, 552-8 (2000))。
【0211】
MSおよびMS/MSデータを、GPS Explorerソフトウエア(Version 2.1、Applied Biosystems)を使用して解釈し、これは生スペクトルを含むOracleデータベースとMASCOTサーチエンジン(Version1.8)のローカルコピーとの間のインターフェースとして作用する。MS分析から得られたペプチド質量フィンガープリントをSwiss Prot非重複データベースにおけるタンパク質同定のために使用した。全てのペプチド質量値を単一同位体であるとみなし、そして質量許容度を<50ppmに設定した。トリプシンを消化酵素として与え、1個の失われた切断部位は許容され、メチオニンは部分的に酸化されると仮定し、そしてセリン、トレオニンおよびチロシンは部分的にリン酸化されると仮定した。71より大きなMascot(Matrix Science)スコアを有意(p<0.005)であるとみなした。MS/MS分析について、5より大きなS/N比を有する全てのピークを、Swiss Protデータベースに対して、MSデータベースと同じ改変を使用して検索した。0.3Da未満のフラグメント許容度を考慮した。
【0212】
細胞質体の調製。
トリプシン処理したCT26細胞をAndreau, K. et al. Contagious apoptosis facilitated by the HIV-1 envelope. Fusion-induced cell-to-cell transmission of a lethal signal. J. Cell Sci. 117, 5643-53 (2004)の刊行物に記載のように除核した。簡潔に記載すると、細胞をサイトカラシンB(10μg/ml;Sigma)およびDNaseI(80U/ml;Sigma)を含む完全RPMI培地2ml中で処理した。細胞懸濁物を5×10/mlの最終濃度に調整し、そして37℃で45分間インキュベートし、その後、事前調製した非連続Ficoll(Pharmacia)密度勾配(5μg/mlサイトカラシンBおよび40U/ml DNaseIを含む1mlの90%および3mlの55%Ficoll Paque層中、3mlの100%;勾配を超遠心チューブ中で調製し、そして一晩COインキュベーター中37℃で事前平衡化した)上に重層した。細胞懸濁物を含む勾配を、予熱したSW41 Beckmanローター中で25000rpmで20分間30℃で遠心分離した。細胞質体富化画分を90および100%Ficoll層の間の界面から採集し、完全RPMI培地中で洗浄し、そして37℃でインキュベートした。細胞を、実験において示す期間、MTX、CA、SalおよびTAとともにインキュベートした。次いで、細胞表面CRTを検出し(材料および方法参照)、そして5分間ヨウ化プロピジウム染色(2μg/ml、Sigma)およびそれに続く細胞蛍光測定分析によって生存率を決定した。あるいは、細胞質体を未成熟DCとともに2時間1:1および1:5の比率で共培養した。インキュベーションの最後に、細胞をverseneを用いて採集し、上清中に存在する非接着性細胞とともにプールし、洗浄し、そしてCD11c−FITC抗体で染色した。ファゴサイトーシスを二重陽性細胞のFACS分析によって評価した。
【0213】
本出願の発明を完全にしそして例証するために様々な実施例を与える。
【0214】
実施例1:CRT露出は免疫原性細胞死を規定する。
約20個の異なるアポトーシス誘導物質のパネル(その全ては、生体色素DAPIおよびPS結合色素アネキシンVでの二重染色によって決定される、約70±10%のアポトーシスを誘導した、図1A)に曝露された死滅しているCT26腫瘍細胞を、免疫適格性BALB/cマウスの一方の側腹部中に注射し、続いて8日後に反対の側腹部中に注射した生腫瘍細胞での動物の再チャレンジを行った。次いで、腫瘍成長に対する防御を抗腫瘍ワクチン接種の兆候として解釈した(図1B)。なぜなら、そのような防御は無胸腺(nu/nu)BALB/cマウスにおいて観察されなかったからである(Casares, N. et al. J. Exp. Med. 202, 1691-701 (2005)、およびデータは示さず)。小胞体(ER)(タプシガルジン、ツニカマイシン、ブレフェルジン)、ミトコンドリア(亜ヒ酸塩、ベツリン酸、C2セラミド)またはDNA(Hoechst33343、カンプトテシン、エトポシド、マイトマイシンC)を標的化する薬剤を含む大部分のアポトーシス誘導物質は、免疫原性アポトーシスを誘導できなかったが、アントラサイクリン(ドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン)は免疫原性細胞死を誘起した(図1B、C)。形質膜プロテオソームにおける変化を同定するために、本発明者らは、非処理のまたはドキソルビシンもしくはドキソルビシン+Z−VAD−fmk(ドキソルビシン誘起細胞死の免疫原性を低下させる汎カスパーゼ阻害剤(Casares, N. et al. J. Exp. Med. 202, 1691-701 (2005)、および図1B))で短時間(4時間)処理した細胞から、ビオチン化表面タンパク質をアフィニティ精製した。2D電気泳動(図2A)およびそれに続く質量分析の比較により、ドキソルビシンによって強く(6倍)誘導されるが、Z−VAD−fmkと組み合わせたドキソルビシンによってはより少なく(1.8倍)誘導されるタンパク質としてのCRTの同定が導かれた(図2B)。その表面露出がドキソルビシンによって特異的に誘導された別のタンパク質はERp57として同定され(図2A)、これはCRT相互作用シャペロンである(Bedard, K., Szabo, E., Michalak, M. & Opas, M. Int Rev Cytol 245, 91-121 (2005))。2Dゲルのイムノブロット分析(示さず)および精製形質膜表面タンパク質の従来の電気泳動(図2C)によって、アントラサイクリンでの処理後のCRTの表面露出が確認された。このCRT表面露出は、アントラサイクリン処理生細胞の免疫蛍光染色によっても検出可能であり(図2D)、そして細胞内CRTの存在量における一般的増加を伴わなかった(図2C、D)。アントラサイクリンによるCRT露出の誘導は迅速なプロセスであり、処理の1時間後ほど早くに検出可能であり(図1S A、B)、従ってアポトーシス関連ホスファチジルセリン(PS)露出に先行した(図1S C、D)。CRT露出はCD47発現における変化とは相関しなかった(図2C)。注目すべきことに、細胞表面におけるCRTの出現(4時間目測定)と20個の異なるアポトーシス誘導物質のパネルによって誘起される免疫原性との間に強い正の直線相関(p<0.001)が存在した(図2E)。
【0215】
実施例2:死滅している腫瘍細胞のDC媒介認識のためのCRTの必要性。
「食誘引」シグナルとしてのCRTの確立された役割の観点から(Gardai, S.J. et al. Cell 123, 321-34 (2005) ; Ogden, C.A. et al. J Exp Med 194, 781-95 (2001))、本発明者らは、アポトーシス腫瘍細胞に対する免疫応答を開始するために厳密に必要とされる細胞型である、DCによるアントラサイクリン処理腫瘍細胞のファゴサイトーシスにおけるCRTの可能な関連をさらに調べることを決意した(Steinman, R.M., Turley, S., Mellman, I. & Inaba, K. J Exp Med. 191, 411-6 (2000); Casares, N. et al. J. Exp. Med. 202, 1691-701 (2005))。アントラサイクリン処理腫瘍細胞は、DCによって貪食される特性を、迅速に、アポトーシス変化の顕在化の十分に前に、ドキソルビシンまたはミトキサントロンでの処理後数時間以内に獲得し(図3A、図2S A)、これはCRTの迅速な誘導(図3B、図1S A、B)および免疫原性の獲得(図2S B)と相関した。異なる細胞死誘導物質のパネルで処理した腫瘍細胞の表面上のCRTの存在は、そのDC媒介ファゴサイトーシスと強く相関し、このことはDCによる腫瘍細胞の取り込みの媒介においてCRTが重要であることを示唆する(図3B)。従って、トリ起源由来の特異的抗体(これはマウスFc受容体と相互作用できない)によるミトキサントロン処理癌細胞の表面上に存在するCRTの遮断は、DCによるそのファゴサイトーシスを阻害した(図3C)。同様に、特異的siRNAを用いるCRTのノックダウンは(図3D、E)、アントラサイクリン処理腫瘍細胞のファゴサイトーシスを抑制した(図2F)。細胞の表面に結合する組換えCRTタンパク質(rCRT)の添加は、CRT特異的siRNAによって誘導された欠損を、CRT発現(図3E)およびDCによるファゴサイトーシス(図3F)の両方のレベルで逆転させることができた。注目すべきことに、rCRT単独は、広範囲の濃度にわたってエキソビボでDC成熟を促進できなかった。従って、表面CRTはDCによるファゴサイトーシスを誘起する。
【0216】
実施例3:死滅している腫瘍細胞の免疫原性のためのCRTの必要性。
CRTのノックダウンはミトキサントロン処理CT26細胞の免疫原性を損ない、そしてこの欠損は、rCRTを使用して、CRT特異的siRNAによって誘導されるCRT欠損を相補した場合に回復された。この結果は以下の2つの異なる実験系、すなわち(i)CT26腫瘍細胞をBalb/cマウスの側腹部中に注射(またはMCA205細胞をC57Bl/6マウス中に注射(示さず))して、抗腫瘍ワクチン接種の効力を評価した場合(図4A)、および(ii)腫瘍細胞を足蹠中に注射して、膝窩リンパ節由来のT細胞によるインターフェロンγ産生を測定した場合(図4B)、において得られた。この後者の系において、rCRTの形質膜表面への吸収は、マイトマイシン処理細胞のような通常は免疫応答を誘導できない細胞の免疫原性を大いに増強した(図4C)。同様に、rCRTでコートしたエトポシド処理細胞は、エトポシドで処理した偽コート細胞の免疫原性が乏しかった条件で、活発な抗腫瘍免疫応答をインビボで誘起した(図4E)。しかし、細胞死誘導物質での事前処理なしでの細胞表面へのrCRTの吸収は、抗癌免疫応答を誘起できず、そしてマウス中へ接種した生rCRT事前処理細胞は、免疫適格性(図4E)および免疫不全(示さず)両方のマウスにおいて腫瘍を形成した。従って、CRTはインビボで細胞死の免疫原性を決定的に決定するが、細胞死自体は決定しない。
【0217】
実施例4:PP1/GADD34の阻害剤はCRT露出を誘導しそして免疫原性を誘導する。
アントラサイクリン誘導CRT露出はいくぶん迅速なプロセスであるので(1時間以内、図1SA、1SB)、本発明者らは、アントラサイクリンが、遺伝子毒性ストレスによって媒介されない効果を発揮し得ると考えた。ミトキサントロンに応答して、除核細胞(細胞質体)はすぐに(1時間以内に)CRTを露出し(図5A)、そしてインタクトな細胞ほど効率的に(図3A)DCの餌食になり(示さず)、このことは細胞質(非核)アントラサイクリン標的の存在を示す。アントラサイクリンは即時性ミトコンドリアストレスを誘導することができなかったが(示さず)、典型的にはストレスキナーゼの活性化に起因するERストレスにおいて過剰リン酸化されるタンパク質であるeIF2α(Zhang, K. & Kaufman, R.J. J Biol Chem 279, 25935-8 (2004))の迅速なリン酸化を引き起こした(図5B)。eIF2αをリン酸化することが知られている4つのキナーゼ(GCN2、HRI、PERK、PKR)のノックダウンは、アントラサイクリン刺激CRT露出を阻害できなかった(示さず)。対照的に、GADD34またはプロテインホスファターゼ1(PP1)の触媒サブユニット(これらは一緒に、eIF2αの脱リン酸化に関与するPP1/GADD34複合体を形成する)のいずれかのノックダウンは(図5C)、CRT露出を誘導するために十分であった(図5D、および示さず)。PP1またはGADD34の枯渇によって引き起こされるCRT露出はミトキサントロンによってさらには増強されず(図5D)、このことはPP1/GADD34およびアントラサイクリンが同じ経路に作用して、CRTの細胞表面への移行を誘起することを示唆する。CRT露出は化学的PP1/GADD34阻害剤、すなわちトートマイシン、カリクリンA(これらの両方はPP1の触媒サブユニットを阻害する)(Gupta, V., Ogawa, A.K., Du, X., Houk, K.N. & Armstrong, R.W. J Med Chem 40, 3199-206 (1997))ならびにサルブリナル(これはPP1/GADD34複合体を阻害する)(Boyce, M. et al. Science 307, 935-9 (2005))によって効率的に誘導された(図5E)。全てのこれらのPP1/GADD34阻害剤は、アントラサイクリンと同様な迅速なキネティクスで、細胞中(図5E)および細胞質体中の両方でCRT露出を誘導した。ミトキサントロンおよびサルブリナルは、マウス(MCA205、B16F10、J558)またはヒト(HeLa、A549、HCT116)起源由来の腫瘍細胞株のパネル上でのCRT露出を誘導した。アントラサイクリンおよびPP1/GADD34阻害剤によって誘導されるCRT露出は、転写、翻訳または微小管の阻害剤によっては影響を及ぼされなかったが、アクチン細胞骨格およびエキソサイトーシスの阻害剤であるラトランクリンAによって損なわれた(図3S)。サルブリナル、カリクリンAまたはトートマイシンでのPP1/GADD34複合体の阻害は免疫原性細胞死を誘導するために十分ではなかった(図5F、G)(そして、死滅しなかった細胞は動物中に注射した場合に致死的な腫瘍を形成した)。しかし、これらの阻害剤は、CRT露出(図5F)、およびエトポシド(図5G)またはマイトマイシンC(示さず)のために死滅する細胞の免疫原潜在性を大いに増強し、そしてこの免疫刺激効果はCRTをノックダウンすることによって抑止された(図5G)。全体で、これらの結果はPP1/GADD34の阻害がCRT露出を誘導し、これが次に抗腫瘍免疫応答を刺激できることを実証する。
【0218】
実施例5:CRTまたはPP1/GADD34阻害剤のインビボ適用による免疫原性化学療法。
確立された14日齢CT26腫瘍中へのミトキサントロンの単回腫瘍内注射は、腫瘍が免疫適格性BALB/cマウスにおいてた確立された場合、全てではないにしてもいくつかの場合にその永久退縮を引き起こすことができた(図6A)。しかし、腫瘍が免疫不全nu/nuマウスによって保有された場合、ミトキサントロンによる治癒は存在しなかった(図6B)。rCRT、サルブリナル、トートマイシン、エトポシドまたはマイトマイシンCの腫瘍内注射は、免疫適格性マウスにおいてもnu/nuマウスにおいても大きな治療効果を有さなかった。しかし、細胞死誘導物質(エトポシドまたはマイトマイシンC)+rCRTの組み合わせは、免疫適格性動物において(免疫不全動物においてではなく)、腫瘍退縮を引き起こすことができた。治療効果を得るために、rCRTを腫瘍中に注射しなければならなかった。遠位部位中に注射したrCRTは、腫瘍内に注射したエトポシドの抗腫瘍効果を改善しなかった(図6C)。同様に、エトポシドまたはマイトマイシンCをCRT露出を誘導する薬物(サルブリナルまたはトートマイシン)と組み合わせることができ、免疫適格性宿主において(無胸腺宿主においてではなく)安定な疾患または完全な腫瘍退縮が導かれた(図6A、B)。生CT26細胞はCT26腫瘍から治癒された動物中で増殖できず、このことは永久抗腫瘍免疫応答の確立を示す。同様な結果が、確立されたMCA205肉種(C57Bl/6マウス中)またはPRO結腸癌腫(BDIXラット中)を、弱く免疫原性の細胞死誘導物質+rCRTまたはPP1/GADD34阻害剤の局所注射によって処理した場合に得られた(示さず)。これらの結果は、確立された癌の治癒のための免疫原性化学療法のストラテジーを描く。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の処置に対する腫瘍細胞の感受性を決定するためのインビトロまたはエキソビボ方法であって、細胞がその表面上に機能性のCRT、KDEL受容体および/またはERp57を露出しているかどうかを決定することを含む、方法。
【請求項2】
腫瘍細胞におけるCRT、ならびにカスパーゼ8、Bax、Bak、BAP31、IRE1a、PERK、eIF2α、ERp57およびKDEL受容体の少なくとも1つの発現または活性を決定することを含み、前記発現または活性の非存在または異常が癌の処置に対する腫瘍細胞の非感受性の指標となる、癌の処置に対する腫瘍細胞の感受性を決定するための請求項1記載のインビトロまたはエキソビボ方法。
【請求項3】
腫瘍細胞におけるERp57、ならびにカスパーゼ8、Bax、Bak、BAP31、IRE1a、PERK、eIF2α、CRTおよびKDEL受容体の少なくとも1つの発現または活性を決定することを含み、前記発現または活性の非存在または異常が癌の処置に対する腫瘍細胞の非感受性の指標となる、癌の処置に対する腫瘍細胞の感受性を決定するための請求項1記載のインビトロまたはエキソビボ方法。
【請求項4】
腫瘍細胞におけるKDEL受容体、ならびにカスパーゼ8、Bax、Bak、BAP31、IRE1a、PERK、eIF2α、CRTおよびERp57の少なくとも1つの発現または活性を決定することを含み、前記発現または活性の非存在または異常が癌の処置に対する腫瘍細胞の非感受性の指標となる、癌の処置に対する腫瘍細胞の感受性を決定するための請求項1記載のインビトロまたはエキソビボ方法。
【請求項5】
腫瘍細胞が、癌腫、肉腫、リンパ腫、黒色腫、小児腫瘍または白血病腫瘍に由来する、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
癌の処置が、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法および特異的キナーゼ阻害剤に基づく療法から選択される、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
方法が、請求項6記載の癌の処置を以前に受けた腫瘍細胞に適用される、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
癌を予防または処置するために有用な化合物をスクリーニングするためのインビトロ方法であって、以下の工程:
a)試験化合物を、その表面上にCRT、KDEL受容体、および/またはERp57を露出していない腫瘍細胞と接触させる工程、
b)試験化合物が細胞に、CRT、KDEL受容体および/またはERp57をその表面上に露出させるかどうかを決定する工程であって、CRT、KDEL受容体および/またはERp57の露出が、癌を予防または処置する化合物の能力の指標となる、工程
を含む方法。
【請求項9】
腫瘍細胞が、癌腫、肉腫、リンパ腫、黒色腫、小児腫瘍または白血病腫瘍に由来する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
癌が、前立腺癌、結腸癌、腎臓癌、肺癌、骨肉種、GISTおよび神経芽細胞腫から選択される、請求項8記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1SA】
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【図1SB】
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【図1SC】
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【図1SD】
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【図2B】
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【図2E】
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【図2SA】
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【図2SB】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3S】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図2A】
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【図2C】
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【図2D】
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【図8】
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【図12C】
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【図13B】
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【図15A】
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【図15B】
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【公表番号】特表2010−502970(P2010−502970A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527152(P2009−527152)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059417
【国際公開番号】WO2008/028968
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(599029545)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT GUSTAVE ROUSSY
【出願人】(500366598)インセルム(アンスティチュ・ナショナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル) (17)
【氏名又は名称原語表記】INSERM(INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE)
【Fターム(参考)】