説明

カレンダ装置

【課題】ウェブの幅方向の端部分まで確実に加圧して、ウェブの機能層の圧密化および機能層の表面の平滑化を適正に行うことができるカレンダ装置を得る。
【解決手段】金属製の2本のカレンダローラ1・2間にウェブ3を挟み込んで加圧処理する。カレンダローラ1・2は、外周面が円筒面状に形成された円筒部1b・2bと、該円筒部1b・2bの軸方向の端に連接してあって外周面がテーパー面状に形成されたテーパー部1a・2aとを備える。円筒部1b・2bとテーパー部1a・2aとの境界から10〜200mmの寸法L分だけテーパー部1a・2a側へウェブ3の幅方向の端側が張り出すとともに、円筒部1b・2bとテーパー部1a・2aとの境界から寸法L分だけカレンダローラ1・2の端側に寄った位置Aでの半径が円筒部1b・2bの半径よりも1.5〜12μmの半径差Hだけ小さくなるようにテーパー部1a・2aが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の支持体の主面に磁性層などの機能層を配し、且つ、支持体の幅方向の端には機能層を配しないようにしたウェブを処理対象とし、回転軸を平行に配した金属製のカレンダローラの間にウェブを挟み込んで該ウェブを加圧処理することで、ウェブを圧密化するとともにウェブの表面を平滑化するカレンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカレンダ装置が対象とする製品としては、磁気テープや磁気ディスクなどの磁気記録媒体を挙げることができる。かかる磁気記録媒体の製造工程では、特許文献1・2に示すように、長尺帯状の支持体の裏表主面のうち、少なくとも一方の主面に磁性塗料を塗布して磁性層(機能層)を形成し、この磁性層を乾燥させた後のウェブを、カレンダ装置のカレンダローラの間に通して搬送することで、ウェブを両カレンダローラで加圧し、これによってウェブの磁性層の圧密化(高充填化)および磁性層の表面の平滑化(鏡面仕上げ)を行っている。カレンダ装置での処理後に、ウェブが製品のサイズや形状に合わせて裁断される。
【0003】
特許文献1のカレンダ装置は、金属製のローラと樹脂製の弾性ローラとを備える。弾性ローラの軸方向の両端部はテーパー状に形成されており、これによってウェブの幅方向の端(エッジ)と金属ローラや弾性ローラとの接触圧を抑えて、ウェブのエッジで金属ローラや弾性ローラの表面に傷が付くことや、ウェブの幅方向の端との接触で弾性ローラが削られ、この切削片がウェブに付着して製品後における信号のドロップアウトなどの不具合が生じることを防いでいる。また、特許文献2のカレンダ装置は、磁性層の高記録密度化の要請に合わせてウェブへの加圧力を高くするために、両カレンダローラとして剛性の高い金属ローラを用いることが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−92797号公報(第1−2図)
【特許文献2】特開2002−251715号公報(図1−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2のカレンダ装置は、両カレンダローラが金属ローラであるために、カレンダローラの傷付きや切削を低減できるとともに、ウェブの幅方向の端部分にも十分に加圧することができ、ウェブの全幅方向にわたって磁性層の高密度化を図ることができる。
しかし、剛性の高い金属ローラであっても加圧に伴って該ローラが撓むことがあり、またウェブの幅方向の端部分では応力集中などが生じる。このため、ウェブの幅方向の端部分が過大に加圧されて、ウェブの幅方向の中央側よりもウェブの幅方向の端側の磁性層の厚さ寸法が小さくなり、製品仕様を満たさなくなる。例えば磁気テープの場合には、該磁気テープをハブなどに巻回したときに、外周側ほど磁気テープが傾いて巻回状態が崩れるおそれがある。
【0006】
また、特許文献1のカレンダ装置では、弾性ローラの両端部のテーパーの角度が5°(特許文献1の公報の第3頁の左下欄第17〜18行参照)と大きいために、ウェブの幅方向の端部分が弾性ローラの両端部のテーパー部分と接触することが困難であり、ウェブの幅方向の端部分での磁性層の圧密化および磁性層の表面の平滑化を行うことができない。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであり、ウェブの幅方向の端部分まで確実に加圧して、ウェブの機能層の圧密化および機能層の表面の平滑化を適正に行うことができるカレンダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るカレンダ装置は、図1および図2に示すように、シート状の支持体5の裏表両主面のうち、少なくとも一方の主面に機能層6を配し、且つ、支持体5の幅方向の端から2〜6mmの範囲内には機能層6を配しないようにしたウェブ3を処理対象とし、回転軸を平行に配した2本の金属製のカレンダローラ1・2の間にウェブ3を挟み込んで搬送することで、該ウェブ3に対して加圧処理を施すカレンダ装置を対象とする。カレンダローラ1・2のうちの少なくとも一方のカレンダローラは、該カレンダローラの軸方向の中央部分に配していて外周面が円筒面状に形成された円筒部1b・2bと、円筒部1b・2bの軸方向の端に連接してあって外周面がテーパー面状に形成されたテーパー部1a・2aとを備える。円筒部1b・2bとテーパー部1a・2aとの境界から10〜200mmの寸法L分だけテーパー部1a・2a側へウェブ3の幅方向の端側が張り出されている。円筒部1b・2bとテーパー部1a・2aとの境界から前記寸法L分だけカレンダローラ1・2の端側に寄った位置Aでの半径が円筒部1b・2bの半径よりも小さく、且つ、該位置Aでのテーパー部1a・2aの半径と円筒部1b・2bの半径との差(以下、半径差と記す)Hが1.5〜12μmであるように、テーパー部1a・2aが形成されていることを特徴とする。
【0009】
ここでは、ウェブ3の支持体5の裏表両主面に機能層6をそれぞれ形成してもよく、機能層6は、支持体5の主面上に直接形成してもよく、支持体5の主面に対して非機能層などを介して間接的に形成してもよい。機能層6の上側にコーティング層などを形成してもよく、例えば支持体5の下側に機能層6を配しない場合には、該支持体5の下側に直接コーティング層などを形成してもよい。ウェブ3としては、光学フィルムやリチウムイオン二次電池の電極などが該当する。
【0010】
具体的には、支持体5が非磁性の材料からなり、機能層6が磁性層であるものとすることができる。ここでの磁性層6には、磁性体が含有される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカレンダ装置においては、金属製のカレンダローラ1・2の円筒部1b・2bとテーパー部1a・2aとの境界から10〜200mmの寸法L分だけテーパー部1a・2a側へウェブ3の幅方向の端側が張り出すとともに、円筒部1b・2bとテーパー部1a・2aとの境界から前記寸法L分だけカレンダローラ1・2の端側に寄った位置Aでの半径が円筒部1b・2bの半径よりも1.5〜12μmの半径差Hだけ小さくなるようにテーパー部1a・2aを形成したので、カレンダローラ1・2の撓みやウェブ3の幅方向の端部分での応力集中などによって、ウェブ3の幅方向の端部分が過度に加圧されることが抑えられる。これによって、ウェブ3の幅方向の端部分であっても適正に加圧され、ウェブ3の幅方向の端部分までウェブ3の機能層6の圧密化および機能層6の表面の平滑化を適正に行うことができる。この結果、ウェブ3の端部分まで製品に利用できてウェブ3の無駄が抑えられ、この分だけ製品のコストを低減できる。また、例えば製品が磁気テープの場合には、ウェブ3の幅方向の中央側と端側との厚さ寸法が同程度に形成されるために、該磁気テープをハブなどに巻回したときに、外周側であっても磁気テープが傾かず、したがって巻回状態が崩れることが防止され、適正な巻回姿勢を保持することができる。
【0012】
前記寸法Lを10〜200mmとしたのは、前記寸法Lが10mm未満では、カレンダローラ1・2の撓みやウェブ3の幅方向の端部分での応力集中などによって、ウェブ3の幅方向の端部分が過度に加圧されることを抑えられないことに拠る。前記寸法Lを200mm以下としたのは、カレンダローラ1・2のいずれにもテーパー部1a・2aを有しない場合であっても、ウェブ3の幅方向の端から200mmよりもウェブ3の幅方向の中央側となる部分は、一定の圧力で加圧されることに拠る。つまり、前記寸法Lが200mmを超える場合には、前記一定の圧力で加圧されているウェブ3の幅方向の中央側にも、テーパー部1a・2aによる圧力低減の作用が及んでウェブ3の幅方向の中央側で適正に加圧され難くなるという不利が生じる。
【0013】
前記半径差Hを1.5〜12μmとしたのは、前記半径差Hが1.5μm未満では、テーパー部1a・2aのテーパーの傾斜角度が小さくなり過ぎて、カレンダローラ1・2の撓みやウェブ3の幅方向の端部分での応力集中などによって、ウェブ3の幅方向の端部分が過度に加圧されることを抑えられないことに拠る。前記半径差Hが12μmを超えると、ウェブ3の幅方向の端部分とテーパー部1a・2aとが過度に離れて、テーパー部1a・2aによってウェブ3の幅方向の端部分を加圧できないという不利が生じる。
【0014】
そして、カレンダ装置の処理対象のウェブ3は、支持体5の幅方向の端から2〜6mmの範囲を除いた部分に機能層6を配するので、カレンダローラ1・2のテーパー部1a・2aによって機能層6を確実に加圧できるとともに、機能層6の無駄が抑えられる。つまり、ウェブ3の幅方向の端近傍は、カレンダローラ1・2の撓みなどによって該端近傍以外の部分と比べて大きく加圧され易いうえに製造の過程で傷み易いため、通常除去されて廃棄されるようになっている。このため、かかるウェブ3の幅方向の端近傍に機能層6を配しないことで、機能層6の無駄が抑えられて、コストをより低減した製品を市場に提供できる。前記機能層6を配しない範囲を支持体5の幅方向の端から2〜6mmとしたのは、前記機能層6を配しない範囲が支持体5の幅方向の端から2mm未満では、該機能層6の幅方向の端部分が、通常除去されて廃棄されるウェブ3の端部分に含まれてしまうことに拠る。前記機能層6を配しない範囲が支持体5の幅方向の端から6mmを超える場合には、本来ならカレンダローラ1・2によって適正に加圧される部分まで機能層6を配しないことになり、この分だけウェブ3の支持体5が無駄となる。
【0015】
支持体5が非磁性であり、機能層6が磁性層であると、かかる支持体5および機能層6からなるウェブ3を用いて磁気記録媒体を製造したときには、該ウェブ3の幅方向の端部分まで磁気記録媒体に利用できてウェブ3の無駄が抑えられ、この分だけ磁気記録媒体のコストを低減できる。なお、磁気記録媒体としては、磁気テープや磁気ディスクなどが該当する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1ないし図3に、本発明を適用したカレンダ装置を示す。このカレンダ装置は、例えば磁気記録媒体の材料であるウェブ3を処理対象とし、図2および図3に示すように、第1カレンダローラ1と、該第1カレンダローラ1よりも小径の第2カレンダローラ2とを上下方向に交互に並べて構成してなるものである。各カレンダローラ1・2は、それぞれ外表面が鏡面仕上げされた金属製のローラからなる。
【0017】
第1カレンダローラ1と第2カレンダローラ2とは、回転軸が互いに平行になるように配してあり、上下2本のカレンダローラ1・2が対となって、この両カレンダローラ1・2の間にウェブ3を挟み込んで搬送し、これによって該ウェブ3に加圧処理を施す。図1ないし図3のカレンダ装置では、最上段、中段および最下段に第1カレンダローラ1がそれぞれ配され、最上段および中段の第1カレンダローラ1・1の間と、中段および最下段の第1カレンダローラ1・1の間とに第2カレンダローラ2がそれぞれ配される。
【0018】
ウェブ3は、図1に示すように、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどからなるシート状の非磁性の材料からなる支持体5と、この支持体5の裏表の主面のうち、一方の主面(図1では上面)に形成した磁性層(機能層)6とを備える。ウェブ3の支持体5の厚さ寸法は6μmである。磁性層6は、メタル磁性粉末(磁性体)を含有する磁性塗料を塗布して乾燥させることで形成される。磁性層6は、支持体5の幅方向の端から2〜6mmの範囲内には配されていない。つまり、ウェブ3の幅方向の両端には、磁性層6を有しない領域が形成されている。なお、各第2カレンダローラ2は、上側の第1カレンダローラ1と対となるとともに、下側の第1カレンダローラ1とも対となる。ウェブ3は、支持体5の裏表両主面に磁性層6をそれぞれ形成したものであってもよい。また、ウェブ3の磁性層6は、支持体5の主面上に直接形成してもよく、支持体5の主面に対して非磁性層(非機能層)などを介して間接的に形成してもよい。ウェブ3の磁性層6の上側にコーティング層などを形成してもよく、支持体5の下側にコーティング層などを形成してもよい。
【0019】
カレンダ装置のカレンダローラ1・2の全部または一部には、加熱ヒータまたは加熱されたオイルなどの温液が通るパイプなどが内蔵され、これによって各カレンダローラ1・2が加熱される。第1カレンダローラ1および第2カレンダローラ2の外表面の中央部は、均一な径寸法を有するストレート状の円筒形状に形成され、これらカレンダローラ1・2の軸方向の両端部には、端部に行くに従って、漸次径寸法が小さくなるテーパー部1a・2aを備える。
【0020】
具体的には、本実施形態においては、図1に示すように、円筒部1b・2bとテーパー部1a・2aとの境界から10〜200mmの寸法L分だけテーパー部1a・2a側へウェブ3の幅方向の端側が張り出すように、テーパー部1a・2aを形成した。また、該カレンダローラ1・2のテーパー部1a・2aは、円筒部1b・2bとテーパー部1a・2aとの境界から前記寸法L分だけローラ1・2の端側に寄った位置Aでの半径が円筒部1b・2bの半径よりも小さくなって、該位置Aでの円筒部1b・2bとテーパー部1a・2aとの半径差Hが1.5〜12μmになるように、テーパー部1a・2aを形成した。
【0021】
図1では、ウェブ3の幅方向の端部分と、両カレンダローラ1・2のテーパー部1a・2aとが離れた状態に記載してあるが、これはテーパー部1a・2aの傾斜を明確にするために傾斜角度を大きく記載したためであり、実寸法とは異なる。実際には、テーパー部1a・2aの傾斜は小さく、カレンダローラ1・2の撓みなどによってカレンダローラ1・2のテーパー部1a・2aは、ウェブ3の幅方向の端部分に接触してウェブ3の幅方向の端部分を加圧している。なお、両カレンダローラ1・2にテーパー部1a・2aをそれぞれ形成した場合には、第1カレンダローラ1での前記半径差Hと、第2カレンダローラ2での前記半径差Hとの和が1.5〜12μmになるように、テーパー部1a・2aを形成する。
【0022】
テーパー部1a・2aは、従来公知の方法で形成することができ、例えばカレンダローラ1・2をゆっくりと回転させながら、回転する円盤状の砥石をカレンダローラ1・2の軸方向の端部に当接させて研削することで形成することができる。また、半径差Hは、例えばダイヤルゲージを取り付けたロールキャリバーで測定することができる。
【0023】
そして、ウェブ3は、図2に示すように、最上段の第1カレンダローラ1に上側から巻き付けられて最上段の第1カレンダローラ1で加熱され、最上段の第1カレンダローラ1の外周面に沿って該第1カレンダローラ1の下側である上段の第2カレンダローラ2側に搬送される。このウェブ6が、最上段の第1カレンダローラ1と上段の第2カレンダローラ2との間を通って搬送されることで加熱加圧処理され、これによって支持体5上の磁性層6に対して圧密化処理を施すとともに、該磁性層6の表面の平滑化を図ることができる。
【0024】
次いで、ウェブ3は、上側のガイドローラ7の外周面に沿って折り返して、上段の第2カレンダローラ2と中段の第1カレンダローラ1との間を通って搬送されることで、加熱加圧処理されて磁性層6の圧密化および磁性層6の表面の平滑化が繰り返し行われる。この後、ウェブ3は、中間のガイドローラ7の外周面に沿って折り返して、中段の第1カレンダローラ1と、下段の第2カレンダローラ2との間を通って搬送されることで再び加熱加圧処理され、さらに下側のガイドローラ7の外周面に沿って折り返して、下段の第2カレンダローラ2と、最下段の第1カレンダローラ1との間を通って搬送されることで再び加熱加圧処理され、これによってウェブ3は、所望のレベルまで磁性層6の圧密化および磁性層6の表面の平滑化が行われる。
【0025】
(実施例)
以下に示すような実施例1〜6、および比較例1〜4に係るカレンダ装置を用いて、本発明の効果を確認した。これら実施例1〜6および比較例1〜4に係るカレンダ装置は、上下一対の第1カレンダローラ1と第2カレンダローラ2とを備えるものとした。第1カレンダローラ1の円筒部1bと第2カレンダローラ2の円筒部2bとの間の隙間は、8μmに設定した。
【0026】
前記確認に先立って、実施例1〜6および比較例1〜4の各カレンダ装置によって処理されるウェブ3を作成した。ウェブ3は、厚さ寸法が6μm、幅寸法が1020mm、且つ長さ寸法が10000mのポリエチレンテレフタレートフィルム製の支持体5において、該支持体5の一方の主面に、粒子の平均サイズが60nmのメタル磁性粉末を含有する磁性塗料を、エクストルージョン型のコータを用いて塗布したのちに乾燥させて磁性層(機能層)6を形成した(図1参照)。磁性塗料の塗布幅は1012mmとした。つまり、磁性層6は、支持体5の幅方向の端から4mmの範囲内には配されない。乾燥後の磁性層6の厚さ寸法は2.3μmであった。
【0027】
そして、ウェブ3に対して、実施例1〜6および比較例1〜4の各カレンダ装置によって、ウェブ3に196kN/mの線圧を加えるとともに90℃で加熱して、ウェブ3に対して圧密化処理および平滑化処理を施した。かかる加圧および加熱後のウェブ3の磁性層6の厚さ寸法は2.0μmであった。なお、支持体5は、加圧および加熱によっては厚さ寸法が変化しない。
【0028】
この後、スリッタ装置によってウェブ3を幅方向の端から16.65mmの位置で裁断して除去し、残りのウェブ3に対して幅方向の端側から12.65mmの幅のテープを順次切り出し、各テープをハブにそれぞれ巻き取った。ハブには、テープが12000回程度巻き取られる。ハブに巻き取ったテープ(以下、パンケーキと記す)の幅方向の両端の半径をそれぞれ測定し、この両端の半径の寸法差からカレンダ装置での加圧処理を評価した。つまり、パンケーキの幅方向の両端の半径の差が大きい場合には(150μmを超える場合)、磁性層6の厚さがテープの幅方向へ大きく変化していて、製品の仕様を満たさないと評価した。
【0029】
(実施例1) 実施例1に係るカレンダ装置は、第1カレンダローラ1のみにテーパー部1aを備える。テーパー部1aにおける寸法Lは50mm、半径差Hが1.5μmに設定した。
【0030】
(実施例2) 実施例2に係るカレンダ装置は、第1カレンダローラ1のみにテーパー部1aを備える。テーパー部1aにおける寸法Lは50mm、半径差Hは6μmに設定した。
【0031】
(実施例3) 実施例3に係るカレンダ装置は、第1カレンダローラ1のみにテーパー部1aを備える。テーパー部1aにおける寸法Lは50mm、半径差Hは12μmに設定した。
【0032】
(実施例4) 実施例4に係るカレンダ装置は、第1カレンダローラ1のみにテーパー部1aを備える。テーパー部1aにおける寸法Lは200mm、半径差Hは6μmに設定した。
【0033】
(実施例5) 実施例5に係るカレンダ装置は、第1カレンダローラ1のみにテーパー部1aを備える。テーパー部1aにおける寸法Lは10mm、半径差Hが6μmに設定した。
【0034】
(実施例6) 実施例6に係るカレンダ装置は、第1カレンダローラ1および第2カレンダローラ2の双方にテーパー部1a・2aを備える。第1カレンダローラ1の各テーパー部1aおよび第2カレンダローラ2の各テーパー部2aは、それぞれ寸法Lが50mm、半径差Hが3μmに設定した。
【0035】
(比較例1) 比較例1に係るカレンダ装置は、第1カレンダローラ1のみにテーパー部1aを備える。テーパー部1aにおける寸法Lは5mm、半径差Hは5μmに設定した。
【0036】
(比較例2) 比較例2に係るカレンダ装置は、第1カレンダローラ1のみにテーパー部1aを備える。テーパー部1aにおける寸法Lは50mm、半径差Hが15μmに設定した。
【0037】
(比較例3) 比較例3に係るカレンダ装置は、第1カレンダローラ1のみにテーパー部1aを備える。テーパー部1aにおける寸法Lは220mm、半径差Hは6μmに設定した。
【0038】
(比較例4) 比較例4に係るカレンダ装置は、第1カレンダローラ1および第2カレンダローラ2のいずれにも、テーパー部1a・2aを有しない。
【0039】
【表1】

【0040】
表1においては、ウェブ3から切り出した前記テープにおいて、該ウェブ3の幅方向の端側からテープの番号を#1、#2、…、#8、…と付している。
評価は以下の如くとした。すなわち、実施例1〜6および比較例1〜4の各カレンダ装置において、加圧処理されたパンケーキの幅方向の両端どうしの半径差が100μm以下となる場合は、テープの幅方向で厚さ寸法にほとんど変化がなく製品の仕様に適するので「○」とした。100μmを超えるが150μm以下となるテープは、厚さ寸法の変化がまだ小さいために製品の仕様を満たすので「△」とした。150μmを超えるテープは、厚さ寸法の変化が大きく製品に採用できないために「×」とした。
【0041】
表1から明らかなように、実施例1〜6では、ウェブ3の幅方向の端部分のテープでも該テープの幅方向で厚さ寸法にほとんど変化がなく製品化できる。これに対して、比較例1〜4では、ウェブ3の幅方向の端部分のテープ(少なくとも#1・2のテープ)は、テープの幅方向で厚さ寸法の変化が大きく製品化できない。その分だけテープのロスが生じ、テープの生産効率が悪くなる。
【0042】
このように、円筒部1b・2bとテーパー部1a・2aとの境界から10〜200mmの寸法L分だけテーパー部1a・2a側へウェブ3の幅方向の端側が張り出すとともに、円筒部1b・2bとテーパー部1a・2aとの境界から寸法L分だけローラ1・2の端側に寄った位置Aでの半径が円筒部1b・2bの半径よりも1.5〜12μmの半径差Hだけ小さくなるように、カレンダローラ1・2のテーパー部1a・2aを形成していると、ウェブ3の幅方向の端部分でも中央側と同様にウェブ3の厚さ寸法にほとんど変化がないことがわかる。したがって、ウェブ3を幅方向に所定幅で切り出してテープを形成する場合でも、ウェブ3の幅方向の端部分までテープに加工でき、この分だけウェブ3を効率よく利用できて、製品コストの低減化に貢献できる。
【0043】
上記実施形態においては、円筒部1b・2bは、径寸法が均一なストレート状をしていたが、本発明はこれに限られず、円筒部1b・2bは、軸方向の両端部の径寸法が中央部の径寸法よりも大きな、いわゆるクラウン形状であってもよく、本発明に係る円筒部1b・2bは、当該形態をも含む概念である。すなわち、カレンダローラ1・2は、加圧による撓みによって、ウェブ3の幅方向の中央部から端部にかけてなだらかに加圧力が増加し、これに伴って磁性層6の厚さ寸法がウェブ3の幅方向の中央部から端部にかけてなだらかに小さくなりやすい。この対策として、カレンダローラ1・2の円筒部1b・2bの幅方向の中央の径を端の径よりも若干大きくしてもよい(いわゆるクラウン形状)。この場合でも、少なくとも一方のカレンダローラ1・2のテーパー部1a・2aは、寸法Lが10〜200mmの範囲内、半径差Hが1.5〜12μmの範囲内になるように設定すればよい。
また、カレンダローラ1・2のテーパー部1a・2aは、カレンダローラ1・2の軸方向に直線状に傾斜することが加工性の点で好ましいが、曲線状に傾斜してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るカレンダ装置の要部を示す正面図である。
【図2】カレンダ装置の斜視図である。
【図3】カレンダローラの正面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 第1カレンダローラ
1a・2a テーパー部
1b・2b 円筒部
2 第2カレンダローラ
3 ウェブ
5 支持体
6 磁性層
A 位置
L 寸法
H 半径差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の支持体の裏表両主面のうち、少なくとも一方の主面に機能層を配し、且つ、前記支持体の幅方向の端から2〜6mmの範囲内には前記機能層を配しないようにしたウェブを処理対象とし、回転軸を平行に配した2本の金属製のカレンダローラの間に前記ウェブを挟み込んで搬送することで、該ウェブに対して加圧処理を施すカレンダ装置であって、
前記カレンダローラのうちの少なくとも一方のカレンダローラは、該カレンダローラの軸方向の中央部分に配していて外周面が円筒面状に形成された円筒部と、前記円筒部の軸方向の端に連接してあって外周面がテーパー面状に形成されたテーパー部とを備え、
前記円筒部と前記テーパー部との境界から10〜200mmの寸法(L)分だけ前記テーパー部側へ前記ウェブの幅方向の端側が張り出すとともに、前記円筒部と前記テーパー部との境界から前記寸法(L)分だけ前記カレンダローラの端側に寄った位置での半径が前記円筒部の半径よりも小さく、且つ、該位置での前記テーパー部の半径と前記円筒部の半径との差Hが1.5〜12μmであるように、前記テーパー部が形成されていることを特徴とするカレンダ装置。
【請求項2】
前記支持体が非磁性の材料からなり、
前記機能層が磁性層である請求項1記載のカレンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−37658(P2009−37658A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198743(P2007−198743)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】