説明

カンフォスファミド製剤及びその製造方法

本発明は、カンフォスファミド製剤及びその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンフォスファミド製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マッキンタイア及びカスタニエールは、「カンフォスファミド塩酸塩」, Drugs Fut., 29(10), 985-991 (2004)において、カンフォスファミド塩酸塩(USAN)が、グルタチオンS-トランスフェラーゼP1-1により活性化されるホスホロジアミデート抗癌剤であることを述べている。当該論文には、TER-286及びTLK-286のコードを有するカンフォスファミド塩酸塩も特定されている。
【0003】
モーガンらは、「グルタチオンS-トランスフェラーゼにより活性化された細胞毒素TER286の抗癌効果及び骨髄置換(sparing)特性」, Cancer Research, 58(12), 2568-2575 (1998)において、動物実験を含むカンフォスファミド塩酸塩の前臨床研究について述べている。当該論文によると、「いくつかの研究例においては、静注製剤として60 mM クエン酸ナトリウム塩に調製した」とある。
【0004】
テューらは、「TLK-286:新規グルタチオンS-トランスフェラーゼ-活性型プロドラッグ」, Expert Opin. Investig. Drugs, 14(8), 1047-1054 (2005)において、「265 mgの滅菌凍結乾薬物を含有するTLK-286のバイアル製剤は、50 mg/mLの濃度まで注射用水に可溶化され、続いて、注射用の5%デキストロースによって適切な用量に希釈することができる。」と述べている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の最初の態様は、本質的にpH4.6±0.2の(100±10) mMのクエン酸ナトリウム緩衝液中、(50±5) mg/mLカンフォスファミド塩酸塩からなるカンフォスファミド製剤である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第二の態様としては、本発明の第一の態様の製剤の製造方法である。
【0007】
本発明の第三の態様としては、本発明の第一の態様の製剤を凍結乾燥することにより凍結乾燥製剤を製造することである。
【0008】
本発明の第四の態様としては、本発明の第三の態様の凍結乾燥製剤を製造することである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義
【0010】
「本質的に〜からなる(Consisting essentially of)」とは、限定し、及び述べた構成物、群、ステップ等及びクレームされ、又は述べられた基本的特徴を物質的に変更するその他の存在を排除することを意味する用語である。それゆえ、本質的にカンフォスファミド塩酸塩からなるとは、カンフォスファミド塩酸塩を含み、偶然的な不純物を除いて、他の活性成分又はカンフォスファミドの他の塩を含まない。「を含む(Comprising)」は、含有することを意味する用語であり、限定がなく、述べた構成物、群、ステップ等を含むが、構成物、群、ステップ等の存在又は付加を排除しないことを意味する用語である。明らかに他を意味する文脈でない限り、単数形は、複数も含み;それゆえ、例えば、「クエン酸ナトリウム塩(a sodium citrate)」は、そのような一つの塩及び二つ以上の塩を含む。
【0011】
「クエン酸ナトリウム緩衝液」は、本質的にナトリウム塩クエン酸からなり、任意に、典型的には述べるpHとなるように水に溶解させたクエン酸であってもよい。
【0012】
本発明の製剤は、水に溶解させた塩を含むため、解離イオン並びに非イオン種を必然的に含む。従って、本質的にカンフォスファミド塩酸塩のクエン酸ナトリウム緩衝液からなる製剤について述べる場合、カンフォスファミドと塩酸が関わるわけではなく、又はカンフォスファミド(一つのアミン及び二つのカルボキシル基を有する)の特定のイオン化状態を言うわけでもなく、又は、ナトリウムイオンとクエン酸/クエン酸一水素/クエン酸二水素イオン、又は他の関係又はイオン化状態を言うのではなく、むしろ、当該該製剤が、述べるpHのもと、述べる濃度の水溶液中において、述べる内容物を可溶化した産物を含む製剤であることを言っている。
【0013】
製剤
【0014】
本発明の最初の態様としては、pH4.6±0.2の(100±10) mMクエン酸ナトリウム緩衝液中、本質的に(50±5) mg/mLカンフォスファミド塩酸塩からなるカンフォスファミド製剤である。
【0015】
本発明の第二の態様は、本発明の第一の態様の製剤の製造方法である。該方法は以下を含む:
(a) pH6.5±0.1のクエン酸ナトリウム緩衝液を製造し、
(b) 緩衝液にカンフォスファミド塩酸塩を溶解させること、
(c) 必要であれば、生成溶液をpH4.6±0.2に調製すること。
【0016】
クエン酸ナトリウム緩衝液溶液は、一以上のクエン酸ナトリウム塩、及び任意にクエン酸、例えば、クエン酸三ナトリウム塩二水和物及びクエン酸一水和物を水に溶かし、続いて必要であれば、例えば、1M塩酸又は、塩基、例えば1M水酸化ナトリウムを加えることにより、pHを所望の4.6±0.2又はそれより若干高く調製してもよい。
【0017】
カンフォスファミド塩酸塩は、緩衝液に注ぎ、攪拌し、可溶化物を得る。カンフォスファミド塩酸塩を緩衝液に加えることは、混合物のpHを約4.6±0.2、又はそれより若干高くし;及び、4.8を超えるようであれば、少量の酸を加えることによりpHを減少させてもよい。
【0018】
典型的には、(a)から(c)では、所望の最終濃度の(50±5) mg/mLカンフォスファミド塩酸塩、及び(100±10) mMクエン酸ナトリウム塩を得るのに必要なよりも少量の水で行い、最終ステップ(d)において水を加えて最終濃度とする。例えば、クエン酸ナトリウム緩衝液の水溶液が、固体のクエン酸ナトリウム塩、及び続いてクエン酸を水に注いで製造される場合、緩衝液成分中を溶解させるための最初の水の量は、最終濃度を達成するのに必要な水の量の(85-95)%であり、製剤を製造するための固体の内容物の洗浄のために追加の水を使用するべきであり;続いて、pH調製のために残りの水を加えて、所望の最終濃度を達成する。
【0019】
精製した製剤は、「仕上げ用濾過(polish filter)」し、例えば、0.45 μmフィルターを通して濾過し;続いて、典型的には滅菌濾過し、例えば0.2 μmフィルターを通し、これにより注射に適した製剤となる。
【0020】
製剤化のステップは、典型的には不活性ガス下、例えば窒素パージ下で行われる。
【0021】
典型的には、製剤は、当該分野において従来から用いられてきた方法を用いて、保存のため凍結乾燥され(及び投与の前に再構成される)、以下の実施例において説明するように、すなわち、適切な大きさのコンテナに分配し、該コンテナにおいて、実質的に0℃以下において、製剤を凍結させ、製剤に含まれていた水を減圧下昇華させ、その後、圧及び温度を増加させ、及びコンテナをシールする。
【0022】
製剤の各コンテナ中の量は、典型的には、原製剤として同一の濃度に再構成できるように、及び便利な用量(例えば、250 mg又は1 g)のカンフォスファミド塩酸塩を取り出せるように選択される。本発明の第一の態様である、250 mgのカンフォスファミド塩酸塩、5.3 mLの製剤(平均6%)は、10 mLバイアルにおいて凍結乾燥され、5.2 mL水による再構成により5.0 mLを便利に取り出せ;1.0 gのカンフォスファミド塩酸塩、20.6 mLの水剤(平均3%)は、50 mLバイアルにおいて凍結乾燥され、20.0 mLの製剤を再構成により取り出すのに便利である。
【実施例1】
【0023】
以下の例は、本発明の製剤及び凍結乾燥製剤、及びそれらの製造方法に関する。混合及び濾過の操作は、窒素パージ下において行った。
【0024】
50 L (密度1.034 Kg/L)の製剤を製造するには、43.5 Kgの注射用水(WFI)をジャケットのある、10 cmのステンレスブレードを有する、シルバーソンミキサーを備えた80 Lステンレススチール容器に加えた。これを800 r.p.m.で回転させた;クエン酸三ナトリウム塩二水和物1470 gを加え、1 LのWFI水で洗浄し;10分間攪拌を続けた。クエン酸一水和物30.2 gを加え、500 mLのWFI水で洗い込み;1320 r.p.m.で、さらに10分間攪拌した。溶液のpHを測定し、1 M塩酸を2回に分けて20 mLずつ加え、各添加の後には各5分ずつ1320 r.p.m.で攪拌し、pH6.6とした。96.8%純度のカンフォスファミド塩酸塩2600 gを加え、1500 mLのWFI水で洗い込み;2300 r.p.m.で20分間、及び2200 r.p.m.で30分攪拌した。溶液のpHは4.7であった。さらに1 KgのWFI水を加え、880 r.p.m.で10分間攪拌し、その後、溶液を8℃とし、50.3 mg/mLのカンフォスファミド塩酸塩を、pH4.7下、103 mMクエン酸ナトリウム緩衝液中に含む、本発明の第一の態様の製剤50 Lを得た。
【0025】
製剤を0.45 μmフィルターで濾過し、続いて二つの0.2 μmフィルターで濾過した(滅菌濾過)。濾過した製剤を10 mLのI型ガラスバイアルに、5.3 mLずつ加え;20 mmブチルラバー凍結乾燥用ストッパーを各バイアルの凍結乾燥部位に設置し;バイアルをトレーに載せ、5℃の凍結乾燥棚を有する凍結乾燥機に搭載した。凍結乾燥機を閉じると、以下を含む凍結乾燥サイクルが行われた;0.6時間ホールドし;凍結乾燥棚の温度を、1.7時間以上かけて-46℃に下げ;5時間ホールドし;凍結乾燥装置の圧を0.8時間以上かけて13.3 Paに下げ;窒素ガスによるパージを12.4 Paにおいて開始し、5時間ホールドし;棚の温度を、1.1時間以上かけて-25℃とし;16.2時間のホールドし;棚の温度を1時間以上かけて0℃とし;20時間ホールドし;棚の温度を1.7時間以上かけて30℃とし;15時間ホールドし;棚の温度を0.6時間以上かけて8℃とし;凍結乾燥装置内の圧力を窒素で69 KPaとし;バイアルのストッパーをかけ;凍結乾燥装置内を大気圧に戻した;凍結乾燥機を開け、ストッパーをかけたバイアルを外した。各バイアルは、本発明の第二の態様の凍結乾燥製剤である、267 mgカンフォスファミド塩酸塩及び159 mgクエン酸三ナトリウム塩/クエン酸を含む。バイアルは、外れるポリプロピレンキャップを有するアルミニウムシールでシーリングした。5.2 mLのWFI水で再構成する際には、各バイアルは、pH4.7、103 mMクエン酸ナトリウム緩衝液の水溶液中、50.3 mg/mLのカンフォスファミド塩酸塩を含む5.3 mLの水剤を含み;5.0 mLの製剤を取り出すのに便利である。
【0026】
50 mg/mLをカンフォスファミド塩酸塩を含む水剤は、より大きい単位用量が必要であれば、他の大きさのバイアルで凍結乾燥してもよく、例えば、50 mLバイアルに20.6 mLを充填すると、カンフォスファミド塩酸塩1030 mg (1 g + 3%の過搭載)を含有する。凍結乾燥サイクルは、より大容量には、変更が必要であり得る(例えば、サイクルの時間の延長)が、そのような変更は当該技術及びこの開示に関して当該分野の通常の知識を有する者の能力の範囲内であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH4.6±0.2の(100±10) mMクエン酸ナトリウム緩衝液中、本質的に(50±5) mg/mLカンフォスファミド塩酸塩からなるカンフォスファミド製剤。
【請求項2】
本質的に、50 mg/mLカンフォスファミド塩酸塩、100 mMクエン酸ナトリウム塩二水和物、及び2.9 mMクエン酸一水和物のpH4.6±0.2の水溶液からなる請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
(a) pH6.5±0.1のクエン酸ナトリウム緩衝液を製造し、
(b) カンフォスファミド塩酸塩を緩衝液に溶解させ、及び
(c) 必要であれば、生成した溶液のpHをpH4.6±0.2に調整する、
工程を含む、請求項1に記載の製剤の製造方法。
【請求項4】
緩衝液が、製剤の最終濃度を達成するのに必要な量よりも少ない量の水を用いて製造され、さらに
(d) 最終濃度を得るのに水を加える、
方法を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
緩衝液が、固体のクエン酸ナトリウム塩、続いてクエン酸を水に溶解させ、及び、クエン酸ナトリウム塩を溶解させる水の量が、製剤の最終濃度を達成するのに必要な量の(85-95)%で溶解されることにより製造される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項3、4又は5のいずれかに記載の方法による生産物。
【請求項7】
本質的に請求項1、2、又は6のいずれかに記載の製剤の凍結乾燥物からなる凍結乾燥製剤。

【公表番号】特表2012−501331(P2012−501331A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525064(P2011−525064)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/052694
【国際公開番号】WO2010/025011
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(593182956)テリック,インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】