説明

カーテンウォール

【課題】容易かつ安価に製造できる埋め込みファスナーを有するカーテンウォールを提供する。
【解決手段】方立4の取付け用ファスナーとして、コンクリート製床部5に埋め込まれる埋め込みファスナー11と、位置調整用ファスナー12とを備える。位置調整用ファスナー12は、埋め込みファスナー11の水平板部11aに載置され、出入り方向および左右方向に位置調整可能に、ボルト14およびナット20により締結して取付けられる。埋め込みファスナー11はアルミニウム合金製押出形材でなり、ボルト14の頭部14aを収容する上面開口のボルト取付け溝11bを有する。溝11bの上面開口部に、ボルト14の頭部14aの抜け止め用の突出部11cが互いに相手側に突出して形成される。突出部11cは、ボルトの頭部を溝内に収容するための切除部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンウォールに係わり、特に方立をコンクリート製床部に固定するためのファスナーに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建築物において、カーテンウォールの方立を取付けるためのファスナーには、コンクリート製床部へ埋め込んで取付けられるものと、その上に出入り方向(室内外方向)や室外から見て左右方向に位置調整可能に取付けるための位置調整用ファスナーとを備える。そして埋め込みファスナーに対して位置調整用ファスナーはボルト、ナットにより締結される。そしてこのボルトは、埋め込みファスナーに設けた長孔に挿通し、頭部をその長孔の下に設けた溝に収容して取付ける。また、このボルトは、前記位置調整用ファスナーに前記長孔に対して直角をなす方向に惚けた長孔に挿通してナットに螺合して締結する。従来の埋め込みファスナーは鋼板により作製される(例えば特許文献1〜4参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−239874号公報
【特許文献2】特開平6−235239号公報
【特許文献3】特開平6−10423号公報
【特許文献4】特開2002−371657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来のカーテンウォールは、埋め込みファスナーが鋼板でなるため、第1に、鋼板を所定のサイズに切断しプレス加工したり、第2に。前記位置調整用ファスナーを埋め込みファスナーに取付けるためのボルトを位置調整可能に挿通するための長孔を加工したり、第3に、前記ボルトの頭部を収容する溝を形成するための別部材を必要とする上、その加工やファスナー本体への溶接を必要とする等、製造工程が多く、コスト高になるという問題点がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、容易かつ安価に製造できる埋め込みファスナーを有するカーテンウォールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のカーテンウォールは、方立取付け用ファスナーとして、コンクリート製床部に埋め込まれる埋め込みファスナーと、この埋め込みファスナーの水平板部に載置され、出入り方向および左右方向に位置調整可能に、ボルトおよびナットにより取付けられる位置調整用ファスナーとを備え、
前記埋め込みファスナーはアルミニウム合金製押出形材でなり、
前記埋め込みファスナーは、前記ボルトの頭部を収容する上面開口のボルト取付け溝が、左右方向または出入り方向に形成されると共に、その溝の上面開口部に、ボルトの頭部の抜け止め用の突出部が互いに相手側に突出して形成され、
この対をなす突出部は、ボルトの頭部を溝内に収容するために一部が切除されている
ことを特徴とする。
【0007】
請求項2のカーテンウォールは、方立取付け用ファスナーとして、コンクリート製床部に埋め込まれる埋め込みファスナーと、この埋め込みファスナーの水平板部に載置され、出入り方向および左右方向に位置調整可能に、ボルトおよびナットにより取付けられる位置調整用ファスナーとを備え、
前記埋め込みファスナーはアルミニウム合金製押出形材でなり、
前記埋め込みファスナーは、前記ボルトの頭部を収容する上面開口のボルト取付け溝が、左右方向または出入り方向に形成されると共に、その溝の上面開口部に、ボルトの頭部の抜け止め用の突出部が互いに相手側に突出して形成され、
この対をなす突出部は、ボルトの頭部を溝内に収容するために一部が切除されており、
前記ボルト取付け溝またはこの溝と別に設けた溝の底部に貫通孔を設け、前記貫通孔にアンカーボルトを挿通して前記溝内および溝外に設けたナットによりこのアンカーボルトを埋め込みファスナーに締結固定した、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明においては、埋め込みファスナーが押出形材でなるため、埋め込みファスナーに設ける位置調整用ファスナー取付け用のボルト挿通のための長孔や、ボルトの頭部の収容部は押出成形により同時に形成できる。従って従来のファスナーのような鋼板の長孔形成のための切断、折り曲げ加工、溝を形成するための別部材やその折り曲げ加工、並びにファスナー本体への溶接作業が不要になる。また、表面処理も複数分の埋め込みファスナーについて同時に行なえる。このため、製造工程や設備が減少し、容易かつ安価に提供できる。
【0009】
請求項2の発明においては、埋め込みファスナーに設ける溝に貫通孔を設けることによってアンカーボルトの取付け部を構成することができ、従来のように鋼板を用いた場合のように、位置調整用ファスナーにアンカーボルト取付け用のナットを溶接する(特許文献1、2参照)等の溶接作業が不要となり、さらに製造が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明によるカーテンウォールの一実施の形態を示す正面図(室外側から見た図)、図2はその縦断面図である。1はガラス等でなるパネル、2、3はパネル1を支持する縦枠および無目である。縦枠2は方立4の室外側の面に取付けられる。方立4は鉄筋コンクリート製床部5に取付け装置6を介して取付けられる。無目3は方立4に取付けられ、横枠7は無目3の室内側の面に取付けられる。9はパネル1の室内側に設けられた珪酸カルシウム等でなる耐火ボードであり、下階から上階への延焼を防止するものであり、この耐火ボード9は上下端を横枠7および方立4に設けたブラケット10より支持し、左右の中間部を後述の機構により方立4に押しつけて取付けられる。
【0011】
図3は前記取付け装置6を示す平面図、図4、図5はそれぞれ図3のA−A断面図およびB−B断面図である。図3〜図5に示すように、取付け装置6は、埋め込みファスナー11、位置調整用ファスナー12およびブラケット13により構成される。これらは床部5等の構築誤差や埋め込みファスナー11の施工誤差等が生じても方立4を所定の取付け位置に取付けることが可能となるように後述の位置調整機能を有している。埋め込みファスナー11は、アルミニウム合金製押出形材により作製される。位置調整用ファスナー12およびブラケット13も同様にアルミニウム合金製押出形材により作製される。
【0012】
前記埋め込みファスナー11は、床部5の室外側角の上部に埋め込んで固定されるように、L字形をなすものである。図6の平面図と図7の側面図に示すように、埋め込みファスナー11の水平板部11aには、位置調整用ファスナー12の取付け用ボルト14の頭部14aを収容するための上面開口の溝11bを左右方向に形成する。溝11bの上面開口部には、互いに相手側に突出した突出部11cを形成し、その突出部11c、11c間に前記ボルト14を摺動自在に嵌める長孔11dを形成する。長孔11dの幅はボルト14のねじ部の直径よりわずかに広く、頭部14aの直径より狭い。また、突出部11cは、溝11bの長手方向の中央部において切除し、その切除部11eをボルト14の挿入部とする。
【0013】
また、溝11bの底部には、アンカーボルト15を挿通する貫通孔11fを穿孔する。アンカーボルト15は、図4に示すように、頭部を下にして、先端を前記貫通孔11fに挿通し、溝11bに収容したナット16と溝11bの外で螺合したナット17との間で締結して埋め込みファスナー11に固定する。11gは床部5に対する固定強度を高めるためのアンカー片である。
【0014】
18はコンクリートに埋め込む際に溝11bへのコンクリートの浸入を防止するための蓋であり、この蓋18は溝11bを形成した部分の両側に設けたタッピング溝11hにねじ込むタッピングねじ18aによって埋め込みファスナー11の両端に固定されて溝11bを閉塞する。
【0015】
位置調整用ファスナー12は、前記ボルト14を挿通する2本の長孔12aを有する。位置調整用ファスナー12の取付け時には、前記ボルト14の頭部14aを、埋め込みファスナー11の突出部11cの切除部11eから挿入し、スライドさせて頭部14aを溝11b内に潜らせる。このボルト14の挿通、スライドは2本のボルト14について行ない、それぞれ溝11bの中央部の切除部11eから互いに反対側に間隔を持たせて保持させる。そして2本のボルト14に位置調整用ファスナー12の対応する長孔12aを嵌める。そして、位置調整用ファスナー12の左右方向の位置調整は、ボルト14を溝11bに沿ってスライドさせながら行ない、出入り方向の調整は、ボルト14に対して長孔12aをスライドさせて行なう。そして、最適の場所でボルト14にワッシャ19を嵌め、ナット20を螺合、締結して固定する。埋め込みファスナー11、位置調整用ファスナー12およびワッシャ19の少なくとも相互の接触面は凹凸を形成してボルト14、ナット20による締結状態における相互の滑りを防止する。
【0016】
位置調整用ファスナー12の方立4側端部には上方に突出するU字形の曲成部12bを設け、その曲成部12bには、ブラケット13を取付けるボルト21を挿通するために出入り方向に貫通孔12cを設ける。一方ブラケット13の左右端部近傍には、その上下位置を調整可能に取付けるための上下方向に長い長孔13aを設ける。
【0017】
23はブラケット13の上下位置を調整するための調整ボルトである。この調整ボルト23は、ブラケット13の左右方向の中央部に縦に設けたU字形の孔13bに差し込まれる。また、この調整ボルト23の孔13bへの挿入部の上下には、この調整ボルト23を固定するためのナット24、25を螺合する。このブラケット13の位置調整用ファスナー12への位置調整、固定は、前記位置調整用ファスナー12の位置調整と共に行なう。この高さ調整は、ブラケット13の締結用のボルト21を長孔13aと位置調整用ファスナー12の貫通孔12cに挿通してそのボルト21を、曲成部12b内に収容したナット26に緩くねじ込んでおき、また、前記ナット24、25を緩めておいて、ねじ孔13bにねじ込んだ調整ボルト23の下端を位置調整用ファスナー12の曲成部12bの上面に当てた状態でそのねじ込み深さを変えることによってブラケット13の上下位置を、その締結用のボルト21に対して長孔13aをスライドさせながら調整する。そして、このブラケット13の高さを適正な高さに調整した後、ボルト21、ナット26の締め込みと、調整ボルト23のナット24、25との締め込みを行なうことにより、ブラケット13を位置調整用ファスナー12に固定する。
【0018】
ブラケット13に対する方立4の取付けは、ブラケット13の突出部13bに貫通孔13cを設け、その貫通孔13cにボルト27を挿通すると共に、方立4に設けた貫通孔4aに挿通し、これにナット29を螺合し締結することにより行なう。
【0019】
30は前記耐火ボード9を押さえるための押さえボルトであり、この押さえボルト30は、前記ブラケット13の上部の左右に設けたねじ孔13dに螺合し、先端側にナット31を螺合する。耐火ボード9の取付けの際には、押さえボルト30を予めブラケット13のねじ孔13dに、その頭部30aを方立4側に向けて深くねじ込んでおき、耐火ボード9の両端を方立4とブラケット13との間に挿入して耐火ボード9の下端を横枠7および方立4に設けたブラケット10(図2参照)により支持させ、続いて押さえボルト30をそのねじ込み深さを浅くする方向に回してその頭部30aを耐火ボード9に圧接して耐火ボード9を方立4の室内側の面4bに押しつける。この状態でナット31を閉めることにより、押さえボルト30をねじ孔13dとナット31とのダブルナット構造でブラケット13に固定する。耐火ボード9と床部5との間には蓋(図示せず)により閉塞する。
【0020】
本発明においては、前述のように埋め込みファスナー11が押出形材でなるため、埋め込みファスナー11に設ける位置調整用ファスナー12取付け用のボルト14を挿通するための長孔11dや突出部11c、およびボルト14の頭部14aを収容する溝11bは押出成形により同時に形成できる。従って従来の埋め込みファスナーのように、鋼板所定のサイズへの切断や長孔形成のための切断、折り曲げ加工、溝11bを形成するための別部材やその折り曲げ加工とファスナー本体への溶接作業が不要になる。また、表面処理も複数分の埋め込みファスナーについて同時に行なえる。このため、製造工程や設備が減少し、容易かつ安価に提供できる。
【0021】
また、本実施の形態においては、埋め込みファスナー11に設ける溝11bに貫通孔11fを設けることによってアンカーボルト15の取付け部を構成することができ、従来のように鋼板を用いた場合のように、位置調整用ファスナーにアンカーボルト取付け用のナットを溶接する等の溶接作業が不要となり、さらに製造が容易となる。なお、アンカーボルト15をナット16、17を用いて取付ける溝は、溝11bと別に形成してもよい。
【0022】
本発明を実施する場合、埋め込みファスナー11に設ける溝11bを出入り方向とし、位置調整用ファスナー12に設ける長孔12aを左右方向にする等、これらのファスナー11、12、方立4などの具体的構造や組み合わせ構造などについては種々の変更、付加が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のカーテンウォールの一実施の形態を示す正面図である。
【図2】本実施の形態のカーテンウォールの縦断面図である。
【図3】本実施の形態の方立の取付け装置を示す平面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図3のB−B断面図である。
【図6】本実施の形態の埋め込みファスナーを示す平面図である。
【図7】本実施の形態の埋め込みファスナーの部分側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1:パネル、2:縦枠、3:無目、4:方立、5:床部、6:方立取付け装置、7:横枠、9:耐火ボード、10:ブラケット、11:埋め込みファスナー、11a:水平板部、11b:溝、11c:突出部、11d:長孔、11e:切除部、11f:貫通孔、11g:アンカー片、12:位置調整用ファスナー、12a:長孔、12b:曲成部、12c:貫通孔、13:ブラケット、13a:長孔、13b:ねじ孔、13c:ねじ孔、14:ボルト、14a:頭部、15:アンカーボルト、16、17:ナット、19:ワッシャ、20:ナット、21:ボルト、23:調整ボルト、24〜26:ナット、27:ボルト、30:押さえボルト、31:ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方立取付け用ファスナーとして、コンクリート製床部に埋め込まれる埋め込みファスナーと、この埋め込みファスナーの水平板部に載置され、出入り方向および左右方向に位置調整可能に、ボルトおよびナットにより取付けられる位置調整用ファスナーとを備え、
前記埋め込みファスナーはアルミニウム合金製押出形材でなり、
前記埋め込みファスナーは、前記ボルトの頭部を収容する上面開口のボルト取付け溝が、左右方向または出入り方向に形成されると共に、その溝の上面開口部に、ボルトの頭部の抜け止め用の突出部が互いに相手側に突出して形成され、
この対をなす突出部は、ボルトの頭部を溝内に収容するために一部が切除されている
ことを特徴とするカーテンウォール。
【請求項2】
方立取付け用ファスナーとして、コンクリート製床部に埋め込まれる埋め込みファスナーと、この埋め込みファスナーの水平板部に載置され、出入り方向および左右方向に位置調整可能に、ボルトおよびナットにより取付けられる位置調整用ファスナーとを備え、
前記埋め込みファスナーはアルミニウム合金製押出形材でなり、
前記埋め込みファスナーは、前記ボルトの頭部を収容する上面開口のボルト取付け溝が、左右方向または出入り方向に形成されると共に、その溝の上面開口部に、ボルトの頭部の抜け止め用の突出部が互いに相手側に突出して形成され、
この対をなす突出部は、ボルトの頭部を溝内に収容するために一部が切除されており、
前記ボルト取付け溝またはこの溝と別に設けた溝の底部に貫通孔を設け、前記貫通孔にアンカーボルトを挿通して前記溝内および溝外に設けたナットによりこのアンカーボルトを埋め込みファスナーに締結固定した、
ことを特徴とするカーテンウォール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−291622(P2006−291622A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115798(P2005−115798)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】