説明

カーテンウォール

【課題】水密性に優れるとともに、簡易的にスパンドレル部の中空層に生じる結露を抑制することのできるカーテンウォールを提供する。
【解決手段】開口部10及びスパンドレル部20を有し、該スパンドレル部は、枠体、ガラスパネル、及びバックパネルにより囲まれて中空層Sが形成され、枠体の内部の少なくとも一部には、レインバリア、ウインドバリア、及び枠体の片により囲まれた外気と等圧となる等圧空間T2が形成され、枠体には中空層と枠体内部に設けられたいずれかの等圧空間とを連通する孔31h、31j、32h、32jが複数設けられ、孔は、バックパネルと室内側との隙間面積、及び水滴飛散限界差圧を含む関係によりその開口面積が定められることにより、該等圧空間が中空層にまで拡張されるとともに、複数の孔のうち少なくとも1つは他の孔よりも高い位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に用いられるカーテンウォールに関し、詳しくはスパンドレル部に結露が発生し難いカーテンウォールに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルの外装部として、カーテンウォールが用いられることが多くなり、その要望も多岐にわたる。カーテンウォールは、予め組み立てておいたカーテンウォールユニットを建物躯体に金具により取り付けるだけでよいため、施工性に優れ、外観にもよいので新築及び建て替えビル等に広く採用されている。
【0003】
カーテンウォールユニットは、開口部と、該開口部の上下に配置されるスパンドレル部(「腰部」ということもある。)と、を備えている。開口部は、ビルの居住空間に対応するビル外周部分に配置され、室内側と室外側とをガラスパネルにより仕切っている。
【0004】
一方、スパンドレル部は、上下に隣接する開口部間に配置され、ビルの床や天井に対応するビル外周部分に具備される。図5、及び図6に従来の例によるスパンドレル部120に注目したカーテンウォール101の断面図を示した。図5はカーテンウォール101がビルに取り付けられた姿勢における垂直方向の断面図である。図6は同水平断面図である。図5では紙面左が室外側、紙面右が室内側である。図6では、紙面上が室内側、紙面下が室外側である。
【0005】
スパンドレル部120は、上下方向に隣接する開口部110と開口部110との間に配置され、室外に面して配置されたガラスパネル126と、該ガラスパネル126と略平行に、所定の間隔を有して室内側に配置されるバックパネル127とを備えている。
【0006】
また、ガラスパネル126、及びバックパネル127の4辺には型材からなる縦枠130、130(図6には一方側の縦枠130のみ表れている。)、及び横枠121、124が配置される。従って、スパンドレル部120は、図5、図6に符号Uで示したように、ガラスパネル126、バックパネル127、縦枠130、130及び横枠121、124に囲まれた中空層Uを有している。
【0007】
スパンドレル部120のかかる構成において、従来、スパンドレル部120のガラスパネル126表面に結露が生じることが問題となっていた。この1つの理由として、室内から高温で加湿された空気がバックパネルと枠体との間隙を通って中空層U内に流入し、これが冷やされて結露することが挙げられる。また、他の理由として、日射等によりバックパネル127に含まれる水分が上記中空層U内に蒸発して該中空層Uの湿度が上昇し、これが雨や日の陰り等により冷やされることを挙げることができる。
【0008】
1つ目の理由による結露は、バックパネルを枠体にシール材等により密閉して取り付けることにより、中空層Uと室内との空気の出入りを禁止して、結露の発生を防止することが可能となる。2つ目の理由による結露は、枠体に外気と中空層Uとを連結する換気口を設置し、外気温と中空層内の温度差を利用して換気することにより防止することができる。
特許文献1にはカーテンウォールの開口部に配置された2重のガラスパネル間の排気のために切換扉を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−314154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来の方法、及び特許文献1のカーテンウォールでは、枠体に設けられた孔により中空層内の換気は可能となるが、同時に生じる雨水の侵入を防ぐ(いわゆる水密)ことについて考慮されているものはなかった。特許文献1では切替扉を閉塞すれば雨水の侵入を防止することはできるが、意識的に閉鎖しない限り開口したままであり、また天気により都度閉鎖する等の手間を生じていた。
【0011】
そこで、本発明は、水密性に優れるとともに、簡易的にスパンドレル部の中空層に生じる結露を抑制することのできるカーテンウォールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0013】
請求項1に記載の発明は、開口部(10)及びスパンドレル部(20)を有し、該スパンドレル部は、スパンドレル部の外周を形成する枠体(21、24、30)と、枠体の枠内に配置されるガラスパネル(26)と、枠体の枠内で配置され、ガラスパネルに対して所定の間隙を有して該ガラスパネルより室内側に設けられるバックパネル(27)と、を備えるカーテンウォール(1)であって、枠体、ガラスパネル、及びバックパネルにより囲まれて中空層(S)が形成され、枠体の内部の少なくとも一部には、レインバリア、ウインドバリア、及び枠体の片により囲まれた外気と等圧となる等圧空間(T2)が形成され、枠体のうち中空層に面する片(31a、32a)には、中空層と枠体内部に設けられたいずれかの等圧空間とを連通する孔(31h、31j、32h、32j)が複数設けられ、孔は、バックパネルと室内側との隙間面積、及び水滴飛散限界差圧を含む関係によりその開口面積が定められることにより、該等圧空間が中空層にまで拡張されるとともに、複数の孔のうち少なくとも1つは他の孔よりも高い位置に配置されている、カーテンウォールを提供することにより前記課題を解決する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカーテンウォール(1)において、複数の孔(31h、31j、32h、32j)の全てが枠体のうち、縦枠(30)に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な構造によりスパンドレル部の中空層を換気し、結露の発生を抑制することができる。また、合わせて当該簡易な構造で水密性も確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】1つの実施形態に係るカーテンウォールの室外視正面図及び垂直断面図である。
【図2】1つのスパンドレル部に注目したカーテンウォールの垂直断面図である。
【図3】1つのスパンドレル部に注目したカーテンウォールの水平断面図である。
【図4】図3のうち縦枠部分に注目した図である。
【図5】従来のカーテンウォールにおけるスパンドレル部に注目した垂直断面図である。
【図6】従来のカーテンウォールにおけるスパンドレル部に注目した水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0018】
図1に1つの実施形態に係るカーテンウォール1が配置された建物の外観を示した。図1(a)はカーテンウォール1(建物)の一部を室外視で正面から見た図である。図1(b)はその垂直断面図である。カーテンウォール1は、ビル内部の室内(いわゆる居住空間)の外周部に対応する位置に配置される開口部10、10、…と、天井及び床の外周部に対応する位置に配置されるスパンドレル部20、20、…とを備えている。開口部10、10、…及びスパンドレル部20、20、…は、それぞれが横方向に並列され、縦方向には、開口部10、10、…とスパンドレル部20、20、…とが交互に並べられている。また、隣り合う開口部10、10、…は共通の縦枠30、30、…により連結され、上下に隣り合う開口部10、10、…とスパンドレル部20、20、…とは共通の上横枠21、21、…、又は下横枠24、24、…により連結されている。カーテンウォール1では、開口部10、10、…とスパンドレル部20、20、…とにより室外側正面視で升目状とされている。
【0019】
図2はカーテンウォール1の1つのスパンドレル部20に注目して示した該カーテンウォール1の垂直断面図である。図3は、図2にIII−IIIで示した線による水平断面図である。また、図4は、図3のうち縦枠30の部位に注目して表した図である。図2では紙面左が室外側、紙面右が室内側である。また、図3、図4では紙面上が室内側、紙面下が室外側である。図1〜図4を参照しつつカーテンウォール1について詳しく説明する。
【0020】
開口部10、10はビルの居住空間の建物外周部に対応する部分に配置され、室内側と室外側とを仕切るガラスパネル11、11を備えている。ガラスパネル11、11は、その4辺を上横枠21、下横枠24、及び縦枠30、30により囲まれて固定されている。当該ガラスパネル11は透光性を有するガラス板により構成され、通常の建築物に用いられるガラスパネルを利用することができる。
【0021】
スパンドレル部20は、ガラスパネル26、バックパネル27、枠体としての上横枠21、下横枠24、縦枠30、30を備えている。スパンドレル部20は開口部10、10の間に配置され、ビルの床や天井の建物外周部に対応する部分に具備される。そして、当該ガラスパネル26、バックパネル27、上横枠21、下横枠24、及び縦枠30、30に囲まれた部分により中空層Sが形成されている。以下、各構成要素について説明する。
【0022】
ガラスパネル26は、透光性を有するガラス板により構成され、通常の建築物に用いられるガラスパネルを利用することができる。当該ガラスパネル26は、室外に面して配置され、該室外側面において開口部10に具備されるガラスパネル11と略面一とされている。これにより建物の意匠性を高めることができ、外観に優れた建物を提供することが可能となる。
【0023】
バックパネル27は、ガラスパネル26と略平行に該ガラスパネル26より室内側に配置される。このときバックパネル27と、ガラスパネル26との間には所定の間隙が設けられ、これが中空層Sを形成する。
【0024】
上横枠21は、図2からよくわかるように、上記ガラスパネル26の上辺及びバックパネル27の上辺に沿って、該上辺を固定して配置される長尺部材である。また、同時に開口部10のガラスパネル11の下辺もここに固定される。従って、上横枠21は図2に表された断面を概ね維持して紙面奥/手前方向に延在している。上横枠21は、図2に表されたようにその断面において開口部10側の第一上横枠22と、スパンドレル部20側の第二上横枠23とが組み合わされて形成されている。
【0025】
第二上横枠23の下部で室外側の部位は、ガラスパネル26の上端部を受け入れ可能に形成される。そして、ビード26a、26bに挟持されるようにガラスパネル26の上端がここに固定される。一方、第二上横枠23の下部で室内側の部位にはアーム28が取り付けられ、該アーム28にバックパネル27の上端部が固定される。ここでガラスパネル26の上端はビード26a、26bにより、バックパネル27の上端はアーム28に設けられたガスケット28aにより、その室内外方向への空気の出入りが遮断されるように密閉されている。密閉とするための構成は特に限定されるものではなく、上記の他、例えばシール材の配置、錬り状のシーリング材等を挙げることができる。
【0026】
下横枠24は、図2からよくわかるように、上記ガラスパネル26の下端及びバックパネル27の下端を固定しつつ、これらに沿って配置される長尺部材である。また、同時に開口部10のガラスパネル11の上端もここに固定される。従って、下横枠24は図2に表された断面を概ね維持して紙面奥/手前方向に延在している。
【0027】
下横枠24の上部で室外側の部位は、ガラスパネル26の下端を受け入れ可能に形成されている。そして、ビード26c、26dに挟持されるようにガラスパネル26の下端がここに固定される。一方、下横枠24の上部で室内側の部位はバックパネル27の下端を固定することが可能に形成されており、ここにバックパネル27の下端部が固定される。ここでガラスパネル26の下端はビード26c、26dにより、バックパネル27の下端はガスケット24aにより、その室内外方向への空気の出入りが遮断されるように密閉されている。密閉とするための構成は特に限定されるものではなく、上記の他、例えばシール材の配置、錬り状のシーリング材等を挙げることができる。
【0028】
次に縦枠30について説明する。縦枠30は上記ガラスパネル26及びバックパネル27の4辺のうち左右の辺のそれぞれに沿って配置される長尺部材である。従って、縦枠30は図3、図4に表された断面を概ね維持して紙面奥/手前方向に延在している。また、縦枠30は、隣り合う開口部10、10及びスパンドレル部20、20の間に配置される共有部材で、左右に並列する左縦枠31と、右縦枠32とが組み合わせられるように形成されている。
【0029】
図3、図4に現れる断面において左縦枠31は、室内外方向に延在する片31aを有している。片31aのうち一方の面側からは、室内側から順に片31b、31c、31d、31e、31fが立設されている。ここで、片31bは片31aの室内側端部から立設され、片31fは片31aの室外側端部から立設されている。また、片31fの先端からは室外側に向けて片31gが延在する。
【0030】
さらにスパンドレル部20における左縦枠31には、図2、図4からわかるように片31dと片31eとの間に片31aを貫通する孔31h、31jが設けられている。孔31h、31jは左縦枠31の長手方向に並列されている。孔31h、31jの大きさ等については後で詳しく説明する。
【0031】
一方、図3、図4に現れる断面において右縦枠32は、室内外方向に延在する片32aを有している。片32aのうち一方の面側からは、室内側から順に片32b、32c、32d、32fが立設されている。ここで、片32bは片32aの室内側端部から立設され、片32fは片32aの室外側端部から立設されている。また、片32fの先端からは室外側に向けて片32gが延在している。さらに、片32cの先端にはパッキン33、片32dの先端にはパッキン34が取り付けられている。
【0032】
ここで、パッキン33は、片31cと片32cとの間において、水密性及び気密性が確保されるようにいわゆるウインドバリアとして設けられている。一方、パッキン34は、片31eと片32dとの間で一度に大量の雨水の侵入を防ぐ程度で設けられれば良く、空気の流通は完全には禁止されないようにいわゆるレインバリアとして備えられている。
【0033】
さらにスパンドレル部20における右縦枠32には、左縦枠31と同様に片32cと片32dとの間に片32aを貫通する孔32h、32jが設けられている(孔32jは図面には表れない。)。孔32h、32jは右縦枠32の長手方向に並列されている。孔32h、32jの大きさ等については後で詳しく説明する。
【0034】
このような断面形状を有する左縦枠31と右縦枠32とは次のように組み合わせられている。すなわち、特に図4からよくわかるように、片31bの先端と片32bの先端とが向かい合わせに配置されるとともに、片31fの先端と片32fの先端とが向かい合わせになるように配置される。従って、片31gの一方の面と片32gの一方の面とが向かい合わせになる。ここで、左縦枠31の片31cと片31dとの間に、右縦枠32の片32cが差し込まれるように配置されるとともに、片32cの先端に設けられたパッキン33(ウインドバリア)が片31cの一方の面に接触する。また、左縦枠31の片31dと片31eとの間に、右縦枠32の片32dが差し込まれるように配置されるとともに、片32dの先端に設けられたパッキン34(レインバリア)が片31eの一方の面に接触する。
【0035】
縦枠30に設けられた孔31h、31j、32h、32j及び当該縦枠30の上記構成により、水密性を維持しつつもスパンドレル部20に生じる結露を適切に防止することができる。詳しくは後で説明する。
【0036】
一方、図4からわかるように、左縦枠31のうち、片31gには断面L字状の長尺部材であるパネル抑え35が取り付けられ、片31f、片31g、及びパネル抑え35により凹状部が形成され、ここにガラスパネル26の端部を受け入れることが可能となっている。そして、ビード26e、26fに挟持されるようにガラスパネル26の端部が取り付け部材37とともに当該凹状部に固定される。また、左縦枠31の片31aの室内側の端部のうち、片31bが設けられた側とは反対側の面には、アーム39が設けられ、該アーム39にバックパネル27の端部が固定される。ここでガラスパネル26の端部はビード26e、26fにより、バックパネル27の端部はアーム39に設けられたガスケット39aにより、その室内外方向への空気の出入りが遮断されるように密閉されている。密閉とするための構成は特に限定されるものではなく、例えばここにシール材の配置、錬り状のシーリング材、ガスケット等を挙げることができる。
【0037】
右縦枠32についても左縦枠31と同様にガラスパネル26、及びバックパネル27が固定されている。
【0038】
かかる構成の縦枠30は、左縦枠31、及び右縦枠32のそれぞれに取り付けられる不図示の連結部材を介して、固定部材等により建物の基礎鉄骨等に固定される。
【0039】
以上のようなカーテンウォール1により、水密性に優れると共に、簡易的にスパンドレル部の中空層に生じる結露を抑制することができる。
【0040】
次に中空層Sの結露の防止、すなわち換気について説明する。縦枠30に設けられた孔31h、31j、32h、32jは、常に中空層Sと縦枠30内部とを連通しており、外気の流入、流出が自由である。従って、カーテンウォール1のスパンドレル部20が直射日光等により暖められ、中空層Sが暖められるとともにバックパネル27から発湿した場合、当該暖められた中空層Sの空気は外気に比べ密度が小さくなって上昇する。これにより、該空気は、該中空層Sから室外へ孔31h、32hを介して流出する。そして、下方の孔31j、32jを介して乾燥した外気が中空層Sに流入する。このようにして、中空層Sが換気されて結露が発生することを抑制することができる。
【0041】
ここで孔31h、31j、32h、32jの孔の形状、及び大きさは上記のように適切な換気をすることができるものであれば特に限定されるものではない。一例として相当開口面積による考えからその孔の大きさ等を得ることも可能である。ここで、相当開口面積とは、換気に有効な面積を意味するもので、αA(cm)で表され、次式(1)から求められる。
αA=2.78(γ/2g)1/2・Q・(Δp)(1/n−0.5) (1)
【0042】
ここで、γは空気の密度(kg/m)、Qは内外差圧Δp=1mmAq(9.8Pa)の時の漏気量Q(m/h)、gは重力加速度(m/s)及びnは隙間特性を表す係数(層流時は1、乱流時は2の値をとる。)を意味する。これにより必要な開口(孔)の大きさを求めてもよい。
【0043】
孔31hと孔32jとの離隔距離は特に限定されることはないが、当該距離は大きい方が好ましい。これにより、直射日光等により暖められ、密度が小さくなって上昇した空気が、より効果的に中空層内から外へ流出されるとともに冬季の乾燥した外気を中空層へ取り込むことができる。従って、中空層内の換気が一層促進され、結露の発生をさらに効率的に防止することができる。
【0044】
次に水密について説明する。以上のように、縦枠30に常に孔31h、31j、32h、32jが中空層Sと縦枠30内部とを連通しているので、例えば雨天時における雨水の中空層Sへの侵入(水密)が懸念される。しかしながら本実施形態のカーテンウォール1は、上記した構成により当該水密性を保持することができる。
【0045】
すなわち、上記したように縦枠30は、左縦枠31と右縦枠32とが組み合わされている。これによれば、図4に示したようにここには少なくとも3つの空間T1、T2、T3が形成されている。
空間T1は、片31f、31a、31e、32d、32a、32fにより囲まれて形成されている。ここで、片31fと片32fとの間は間隙が設けられ、ここが室外に通じている。従って、空間T1内の圧力PT1は外気圧Pに等しい圧力状態である。
空間T2は、片31e、31a、31c、32c、32a、32dにより囲まれて形成されている。ここで、片31eと片32dとの間にはレインバリアとしてのパッキン34が設けられている。パッキン34は、上記したように、片31eと片32dとの間で一度に大量の雨水の侵入を防ぐ程度で設けられれば良く、空気の流通は完全には禁止されない。従って、空間T2内の圧力PT2は、空間T1内の圧力PT1と概ね等しく、すなわち外気圧Pと同じであり、いわゆる等圧空間が形成されている。
空間T3は、片31c、31a、31b、32b、32a、32cにより囲まれて形成されている。ここで、片31cと片32cとの間にはウインドバリアとしてのパッキン33が設けられ、水密気密が図られている。また、片31bと片32bとの間は空気の流通が可能とされている。従って空間T3内の圧力PT3は、室内側の圧力Pと概ね同じとされている。
【0046】
さらに、縦枠30には空間T2内と中空層Sとを連通する孔31h、31j、32h、32jが設けられている。従って、中空層S内の圧力Pも空間T2、空間T1と同じ圧力状態となり外気圧Pと概ね等しくなる。すなわち、カーテンウォール1では中空層Sにも等圧空間が拡張されている。
以上より、空間T1、T2及び中空層Sは全て同じ圧力状態となっている。
【0047】
ここで、水の移動の大きな要因の1つに圧力差がある。すなわち、圧力差の大きな2つの空間の間では水の移動が起こり易く、圧力差が小さい2つの空間の間では水の移動が起こり難い。これはいわゆる水滴飛散限界差圧等により定量的に表すこともできる。
【0048】
上記説明したカーテンウォール1では、空間T1に侵入した雨水等の水のうち大部分は、上記レインバリアとしてのパッキン34を流通することができず、空間T2には達しない。一方、水滴レベルの少量の水は、空間T1と空間T2とが等圧に形成されているので、空間T2への侵入が抑制される。さらに例え空間T2に水が侵入した場合であっても、さらに空間T2と中空層Sとは等圧に形成されているので、ここでも水の移動が抑制される。
【0049】
以上より、孔31h、31j、32h、32jは、中空層S内を換気する孔であるとともに、中空層S内をいわゆる等圧空間とするための孔にもなり、中空層Sへ等圧な空間を拡張させることにより、簡易な構成で中空層S内の換気による結露防止と水密性能を保持することが可能となる。
【0050】
また、中空層S内を外気圧と同じとすることにより、室外と中空層Sとを仕切るガラスパネル26への負荷を減らすことができる。これにより例えばガラスパネルを薄くすることも可能である。
【0051】
このように中空層Sを等圧な空間とするための孔31h、31j、32h、32jの形状、及び大きさは、上記した結露を防止するに十分であるとともに、等圧な空間を形成することができれば特に限定されるものではない。一例として次式(2)より必要な孔の開口面積Aを求めることができる。
=A/(C・K) (2)
【0052】
ここで、Aは隙間面積を意味する。これは、例えば本実施形態におけるパッキン33やバックパネル27において、若干の室内側からの漏気があること考慮し、漏気の原因となる隙間の大きさに相当するものである。従って、仮に経時的な観点からパッキン33やバックパネル27からの漏気を想定して孔の開口面積を求めておくことも可能である。
Kは隙間比であり、水滴飛散限界差圧、外部圧力等から算出される値である。Cは外気導入口の流量係数である。
【0053】
より具体的には、次の通りである。
隙間面積Aは、隙間幅をd、隙間長さをL、及び流量係数をCとしたときに、
=d・L・C (3)
で表される。本発明では等圧空間を中空層にまで拡大したので、この隙間面積では枠内のパッキン33における隙間面積の他、バックパネル27と室内側の隙間面積も考慮される。また隙間面積は経時的な要素も考慮して求められてもよい。
【0054】
隙間比Kは、水滴飛散限界差圧をΔP、外部圧力をPとしたとき、
K=(ΔP/(P−ΔP))1/2 (4)
により表わされる。
【0055】
すなわち、等圧空間T2と中空層Sとを連通し、中空層Sに等圧空間を拡張する観点からこれを連通する孔の開口面積は、少なくとも上記式(2)であらわされるA以上であることが好ましい。また、防露の観点からは当該開口面積は大きいほうが好ましい。また、同じ等圧空間T2に複数の孔が設けられているときには、その開口面積の合計がこれを満たせばよい。
【0056】
以上、1つの実施形態としてカーテンウォール1を例に説明したが、上記の態様に限定されるものではない。例えば、孔31h、31j、32h、32jに相当する孔のうち下方の孔31j、32jは、下横枠に設けられていてもよい。上側に設けられる孔と下側の設けられる孔とが高低差を有していれば、上記したような換気をすることが可能であり、結露を防止することができる。
また、孔は1つの中空層に対して少なくとも1つの下側の孔と少なくとも1つの上側の孔があればよい。すなわち、スパンドレル部の枠体のうち、対向する2本の縦枠の一方にした側の孔、他方に上側の孔が形成されてよい。また、当該対向する2本の縦枠の一方のみに、上下2つの孔が設けられていてもよい。複数の孔が設けられた場合にはそのうちの少なくとも1つがいずれの孔よりも高い位置に配置されていればよい。
【0057】
また、孔31h、31j、32h、32jには安全弁を設けても良い。例えば室外側からの突風により、急激に中空層の圧力が上がることがあるので、これを防止するために所定の圧力を受けたときには閉鎖する安全弁を設けることも可能である。
【0058】
以上の実施形態では、スパンドレル部の構成、及びその効果について説明したが、当該構成はスパンドレル部の上下に隣接する開口部に適用することもできる。すなわち開口部において室内外に並列されたガラスパネルが中空層を形成している構造では上記と同様の構成及びその効果を奏するものとなる。
【0059】
以上、現時点において、実践的でありかつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うカーテンウォールもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0060】
1 カーテンウォール
10 開口部
11 ガラスパネル
20 スパンドレル部
21 上横枠(枠体)
22 第一上横枠(枠体)
23 第二上横枠(枠体)
24 下横枠(枠体)
26 ガラスパネル
27 バックパネル
30 縦枠(枠体)
31 左縦枠(枠体)
31h、31g 孔
32 右縦枠(枠体)
32h、32g 孔
33 パッキン(ウインドバリア)
34 パッキン(レインバリア)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部及びスパンドレル部を有し、
該スパンドレル部は、前記スパンドレル部の外周を形成する枠体と、前記枠体の枠内に配置されるガラスパネルと、前記枠体の枠内に配置され、前記ガラスパネルに対して所定の間隙を有して該ガラスパネルより室内側に設けられるバックパネルと、を備えるカーテンウォールであって、
前記枠体、前記ガラスパネル、及び前記バックパネルにより囲まれて中空層が形成され、
前記枠体の内部の少なくとも一部には、レインバリア、ウインドバリア、及び前記枠体の片により囲まれた外気と等圧となる等圧空間が形成され、
前記枠体のうち前記中空層に面する片には、前記中空層と前記枠体内部に設けられたいずれかの前記等圧空間とを連通する孔が複数設けられ、前記孔は、前記バックパネルと前記室内側との隙間面積、及び水滴飛散限界差圧を含む関係によりその開口面積が定められることにより、該等圧空間が前記中空層にまで拡張されるとともに、前記複数の孔のうち少なくとも1つは他の孔よりも高い位置に配置されている、カーテンウォール。
【請求項2】
前記複数の孔の全てが前記枠体のうち、縦枠に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカーテンウォール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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