説明

カートリッジ押圧部材及びカートリッジ装着治具

【課題】押圧部材の径方向外側へ向かうにしたがって押圧方向前方に向かうように傾斜した翼部が逆向きに傾斜するような事態を防止する。
【解決手段】鍔部42Aにその外周部から径方向内側に延びる多数のスリットが形成されることによって多数の翼部44が形成されたカートリッジ用押圧部材40において、翼部44の外周側の端部に前方へ向かって突出する突出部45を形成する。鍔部42Aの径方向外側を向く各突出部45の外面を、翼部44の弾力によりガイド筒30の内周面に面接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カートリッジの後端部を押してその内部に充填された接着剤やコーキング材等の流動性物質をカートリッジから吐出させるための押圧部材及びその押圧部材が用いられたカートリッジ装着治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に接着剤やコーキング材等の流動性物質が充填されたカートリッジとしては、例えば図10又は図11に示すものがある。図10に示すカートリッジ1は、柔軟性を有する単層又は積層フィルムからなる断面円形の胴部2を有している。胴部2の両端開口部は、針金3によって閉じられている。このようなカートリッジ1は、胴部2の一端部を閉じてその内部に接着剤等を充填した後、胴部2の他端部を閉じることによって製造されている。カートリッジ1から流動性物質を吐出させる際には、胴部2の一端部が針金3より内側において切断され、それによって胴部2の一端部が開口される。
【0003】
また、図11に示すカートリッジ10は、単層又は積層フィルムからなる断面円形の胴部11を有している。胴部11は、その一端(図11において左端)から他端側へ向かって僅かに小径になっている。勿論、胴部11の外径は、全長にわたって一定にされることもある。胴部11の一端部外周面には、補強リング12が固着され、一端部内周面には蓋体13が固着されている。蓋体13は、補強リング12と一体に形成されることもある。また、他の公知の蓋体が用いられることもある。胴部11の他端部外周面には、長さが短い有底円筒状の底部14が固着されている。底部14の外径は、胴部11の外径が他端側で小径になっていることに対応して補強リング12の外径より小径になっている。
【0004】
カートリッジ10は、胴部11の内部にその一端開口部から接着剤等を充填した後、蓋体13を胴部11の一端部に嵌合固着して製造される。カートリッジ10の使用に際しては、蓋体13の吐出口13aにノズルNが挿入される。すると、吐出口13aを閉じるシール材15がノズルNのエッジNaによって破断される。この結果、吐出口13aから接着剤等の流動性物質が吐出可能になり、ノズルNから外部に吐出される。
【0005】
カートリッジ1又は10から接着剤等の流動性物質を吐出させる場合には、例えば図12及び図13にそれぞれ示す吐出ガンG及びカートリッジ装着治具Jが用いられる。吐出ガンGは、周知のように、ガン本体G1、このガン本体G1から前方に延びる半円状の保持部G2と、この保持部G2の先端部に設けられた馬蹄状のストッパG3と、ガン本体G1に移動可能に設けられたロッドG4と、このロッドG4の先端部に固定され、保持部G2内をその長手方向へ移動する押し板G5と、ガン本体G1に設けられたレバーG6とを有している。レバーG6を矢印方向へ回動させると、ロッドG4及び押し板G5が前進する。係止レバーG7の下端部を前方へ押すと、ロッドG4が後方へ移動可能になる。
【0006】
装着治具Jは、硬質の樹脂からなる断面円形のガイド筒J1と、このガイド筒J1に挿入された押圧部材J2とを有している。ガイド筒J1の外径は、保持部G2の内径とほぼ同一であり、ガイド筒J1はその下半分が保持部G2に収容された状態で保持部G2に支持される。ガイド筒J1の内径は、カートリッジ1の胴部2の外径又はカートリッジ10の補強リング12の外径とほぼ同一に設定されている。一方、押圧部材J2は、その外周部がガイド筒J1の内周面に押圧接触した状態でガイド筒J1の軸線方向へ摺動可能に挿入されている。
【0007】
上記吐出ガンG及び装着治具Jを用いて例えばカートリッジ1から流動性物質を吐出させる場合には、図13に示すように、胴部2の一端部を切除して開口させる。この胴部2をその他端部が押圧部材J2に突き当たるまでガイド筒J1に挿入する。その後、ガイド筒J1の先端部にノズルN′を取り付ける。次に、ガイド筒J1を吐出ガンGの保持部G2上に載置する。その状態で、吐出ガンGのレバーG7を矢印方向へ繰り返し回動させると、押し板G5が前進し、押圧部材J2の後端部に突き当たる。したがって、押圧部材J2をさらに前方へ移動させると、カートリッジ1の後端部が押圧部材によって押され。胴部2がその後端部からアコーディオン状に順次押し潰される。その結果、胴部2内の流動性物質がノズルN′から吐出される。
【0008】
カートリッジ10についても、同様にして流動性物質を吐出させることができる。ただし、カートリッジ10の場合には、押圧部材J2が底部14を押すことになる。また、流動性物質はノズルNから吐出される。
【0009】
上記従来の装着治具Jを用いた場合には、押し潰された胴部2,11を構成するフィルムの一部がガイド筒J1の内周面と押圧部材J2の外周面との間に食い込んでしまい、最悪の場合には押圧部材J2が移動不能に陥ることがあった。すなわち、ガイド筒J1の内周面は一様な円筒面ではなく、その軸線方向及び周方向に僅かのうねりや凹凸がある。このため、ガイド筒J1の内周面と押圧部材J2の外周面との間の各部に微小の隙間が生じ、その隙間に胴部2,11を構成するフィルムが食い込むことがある。一旦、フィルムが隙間に食い込むと、押圧部材J2の前進に伴ってより多くのフィルムが食い込むことになり、最終的には押圧部材J2が移動不能になってしまうのである。
【0010】
このような問題を解消するために、下記特許文献1に記載の装着治具においては、円形の皿状をなす押圧部材が用いられている。この押圧部材には、その外周面から径方向内側に向かって延びる複数のスリットが形成されており、それによって押圧部材の外周部に多数の翼部が形成されている。各翼部は、径方向外側へ向かうにしたがって前方へ向かうように若干傾斜しており、その先端部(押圧部材の径方向外側に位置する端部)が翼部の弾性によってガイド筒の内周面に摺動可能に押圧接触させられている。
【0011】
このような押圧部材を用いた場合には、各翼部が互いに独立して挙動することができるので、各翼部の先端部がガイド筒J1の内周面にうねりや凹凸に接触すると、各翼部が凹凸に応じてそれぞれ弾性変形する。したがって、ガイド筒J1の内周面と翼部の先端部との間には、隙間が形成されることがほとんどない。よって、ガイド筒J1の内周面と押圧部材の外周面(翼部の先端部)との間に胴部2,11を構成するフィルムが食い込むことを防止することができる。
【0012】
【特許文献1】実開平6−4252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記従来の押圧部材においては、翼部の先端部がガイド筒の内周面に円弧状に線接触している。線接触状態であると、翼部の先端部がガイド筒の内周面の凹凸に引っ掛かることがある。その状態で押圧部材が前進すると、翼部の先端部が凹凸に引っ掛かって停止しているのに対し、翼部の基端部が前進するため、翼部が逆向きに傾斜してしまう。つまり、翼部の先端部が基端部より後側に位置するように傾斜してしまう。このように傾斜すると、逆向きに傾斜した翼部に対応する押圧部材の一部に大きな空間ができてしまい、その空間に多くのフィルムが入り込んでしまう。このため、押圧部材が前進不能に陥ったり、カートリッジの使用後にカートリッジをガイド筒から抜き出すことができなくなったりするという問題を招来することがある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の問題を解決するために、第1の発明は、外周部に断面円形状の鍔部が形成され、この鍔部に、その外周側の端部から径方向内側に向かって延び、かつ上記鍔部の周方向に互いに離間した複数のスリットが形成されることにより、上記鍔部に弾性変形可能な複数の翼部が形成された吐出ガン用押圧部材において、上記翼部の外周側の端部に上記鍔部の軸線とほぼ平行に延びる突出部が形成され、全突出部によって上記鍔部の外周側の端部に、外周面が断面円形である筒部がその軸線を上記鍔部の軸線と一致させて形成されていることを特徴としている。
この場合、上記鍔部より小径で、かつ軸線を上記鍔部の軸線と一致させた円板状の本体部をさらに有し、この本体部の軸線方向の一端部の外周側の端部に、上記鍔部、上記スリット、上記翼部及び上記突出部が形成され、上記突出部が上記本体部の他端側から一端側に向かって突出させられていることが望ましい。上記本体部の他端部の外周側の端部に、上記鍔部、上記スリット、上記翼部及び上記突出部がそれぞれ形成され、上記本体部の他端部に形成された突出部が上記本体部の一端側から他端側へ向かって突出させられていることがさらに望ましい。
上記本体部の他端面の中央部には、凹部が形成されていることが望ましい。上記凹部が上記本体部をその軸線方向に貫通する貫通孔として形成されていることが望ましい。
上記の問題を解決するために、第2の発明は、柔軟性を有するフィルムによって構成された胴部を有するカートリッジが挿入されるガイド筒と、このガイド筒にその内周面に押圧接触した状態で摺動可能に挿入され、上記カートリッジの後端部を押す押圧部材とを有し、上記押圧部材の外周部に断面円形状の鍔部が形成され、この鍔部に、その外周側の端部から径方向内側に向かって延び、かつ上記鍔部の周方向に互いに離間した複数のスリットが形成されることにより、上記鍔部に弾性変形可能な複数の翼部が形成されたカートリッジ装着治具において、上記翼部の外周側の端部に、上記押圧部材の押圧方向前方へ向かって上記鍔部の軸線とほぼ平行に延びる突出部が形成され、全突出部によって上記鍔部の外周側の端部に、外周面が断面円形である筒部がその軸線を上記鍔部の軸線と一致させて形成され、この筒部の外周面が上記ガイド筒の内周面に摺動可能に押圧接触させられていることを特徴としている。
この場合、上記鍔部より小径で、かつ軸線を上記鍔部の軸線と一致させた円板状の本体部をさらに有し、この本体部の軸線方向の一端部の外周側の端部に、上記鍔部、上記スリット、上記翼部及び上記突出部が形成され、上記突出部が上記本体部の他端側から一端側に向かって突出させられていることが望ましい。上記本体部の他端部の外周側の端部に、上記鍔部、上記スリット、上記翼部及び上記突出部がそれぞれ形成され、上記本体部の他端部に形成された突出部が上記本体部の一端側から他端側へ向かって突出させられていることがさらに望ましい。
上記本体部の他端面の中央部には、凹部が形成されていることが望ましい。上記凹部が上記本体部をその軸線方向に貫通する貫通孔として形成されていることが望ましい。
上記カートリッジの胴部の後端部には、上記胴部を一定の形状に維持することができるよう所定の強度を有する底部が設けられ、この底部のほぼ全体を上記筒部内に挿入することができるように上記筒部の長さが設定され、上記筒部の内周面の少なくとも開口側の端部に上記底部の外周面が隙間無く挿脱可能に嵌合することができるよう、上記筒部の開口側の端部の内径が上記底部の外径とほぼ同一に設定されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、筒部の外周面たる各突出部の外面がガイド筒の内周面に各翼部の弾力によってそれぞれ押圧接触させられており、各突出部はガイド筒のうねりや凹凸に応じて筒部の径方向に変位する。したがって、各突出部の外面とガイド筒の内周面との間にカートリッジの胴部を構成するフィルムが食い込むことを防止することができる。また、突出部の外面は、ガイド筒の内周面に線接触することなく、面接触する。したがって、突出部の先端部は、ガイド筒の内周面のうねりや凹凸を乗り越えやすく、それらに引っ掛かるような事態を大幅に軽減することができる。よって、各翼部の先端部が基端部より押圧部材の前進方向の後方側に位置するように傾斜してしまう事態を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、この発明に係るカートリッジ装着治具20を示す。この装着治具20は、上記カートリッジ10からその内部に収容された接着剤等の流動性物質を図12に示す吐出ガンGを用いて吐出させる際に用いられるものであり、ガイド筒30及び押圧部材40を有している。勿論、装着治具20は、カートリッジ2から流動性物質を吐出させる際に用いることも可能である。
【0017】
ガイド筒30は、硬質の樹脂からなるものであり、断面円形の筒体として形成されている。ガイド筒30は、その内周面及び外周面のうねりや凹凸を無視すれば、全長にわたって一定の内外径を有している。ガイド筒30の外径は、図12に示す吐出ガンGの保持部G2の内径とほぼ同一であり、ガイド筒30の全長は、保持部G2の長さ及びカートリッジ10の長さに応じて適宜に定められている。ガイド筒30の内径は、その内部にカートリッジ10を挿脱することができるよう、補強リング12の外径とほぼ同一に設定されている。したがって、ガイド筒30の内径は、カートリッジ10の底部14の外径より若干大径になっている。
【0018】
押圧部材40は、その軸線をガイド筒30の軸線と一致させた状態でガイド筒30に摺動自在に挿入されており、次のように構成されている。すなわち、押圧部材40は、円板状をなす本体部41を有している。本体部41の外径は、ガイド筒30の内径より小径になっている。本体部41の中央部には、その一端面(図4において左端面)から他端面まで貫通する貫通孔(凹部)41aが形成されている。この貫通孔41aは、押し板をロッドにナットで固定するタイプの吐出ガンが用いられる場合に、当該ナットを収容する逃げ部として機能するものである。したがって、ナットを収容することができるものであればよく、貫通孔41aに代えて他の形状のもの、例えば凹部を形成してもよい。本体部41の外周面の軸線方向における中央部には、環状突出部41bが形成されている。この環状突出部41bの外径は、ガイド筒30の内径と同等か若干小径に設定されている。
【0019】
本体部41の一端面及び他端面の各外周部には、鍔部42A,42Bがそれぞれ形成されている。鍔部42A,42Bは、本体部41の外周面の一端部と他端部とにそれぞれ形成してもよい。つまり、鍔部42A,42Bは、本体部41の外周部に形成される。鍔部42Aと鍔部42Bとは、左右対称に形成されている。そこで、ここでは鍔部42Aについてのみ説明することとし、鍔部42Bについては鍔部42Aと同様な構成部分に同一符号を付してその説明を省略する。なお、鍔部42A,42Bのうちのいずれか一方だけを形成してもよい。
【0020】
鍔部42Aは、本体部41からその径方向外側へ向かうにしたがって本体部41から離間するようにテーパ状に形成されており、その軸線を本体部41の軸線(押圧部材40の軸線)と一致させて配置されている。鍔部42Aは、テーパ状に形成することが望ましいが、円形の平板状に形成してもよい。鍔部42Aの外径は、ガイド筒30の内径と同等か僅かに大径に設定されている。
【0021】
鍔部42Aには、多数のスリット43が形成されている。各スリット43は、鍔部の外周面から本体部41まで延びており、鍔部42Aの周方向へ互いに離間して配置されている。特に、この実施の形態ではスリット43が鍔部42Aの軸線を中心として放射状に配置されている。多数のスリット43が形成されることにより、鍔部42Aが周方向において多数の部分に分断されている。そして、各部分が翼部44になっている。翼部44は、基端部を中心として揺動するように弾性変形可能である。全翼部44が弾性変形すると、それに伴って鍔部42Aの外周部が拡縮径する。
なお、鍔部42Bに形成されるスリット43については、翼部42Aのスリット43に対して周方向に位置をずらして配置してもよい。例えば、鍔部42Bのスリット43を、鍔部42Aの周方向に隣接する二つのスリットの43,43の中央に位置するように配置してもよい。
【0022】
翼部44の先端部(鍔部42Aの径方向外側の端部)には、突出部45が翼部44と一体に形成されている。突出部45は、鍔部42Aの軸線にほぼ沿って本体部41から離間する方向へ突出している。しかも、突出部45は、一定の幅(鍔部42Aの周方向における幅)をもって突出しており、その幅は翼部44の先端部の幅と同一に設定されている。したがって、鍔部42Aの周方向において互いに隣接する突出部45,45は、鍔部42Aの外周部におけるスリット43の幅の分だけ周方向へ互いに離間している。見方を変えれば、スリット43が突出部45の先端面まで延びているのである。
【0023】
突出部45の外面、つまり鍔部42Aの径方向外側を向く突出部45の外面は、鍔部42Aの軸線を中心とするテーパ面によって形成されている。このテーパ面のテーパ角度は、例えば2,3°〜5°程度の小さなものである。突出部45の外面は、鍔部42Aの軸線を中心とし、かつ一定の直径を有する円筒面によって形成してもよい。一方、突出部45の内面、つまり鍔部42Aの径方向内側を向く突出部45の内面は、鍔部42Aの軸線を中心とし、かつ一定の直径を有する円筒面によって形成されている。
【0024】
突出部45の外面及び内面が鍔部42Aの軸線を中心とするテーパ面及び円筒面によってそれぞれ形成されているので、全突出部45により、軸線を鍔部42Aの軸線と一致させた断面円形の筒部46が形成される。この筒部46の基端部(突出部45の基端部)の外径は、鍔部42Aの外径と同一であり、ガイド筒30の内径と同一か若干大径になっている。一方、筒部46の先端部の外径は、筒部46の外周面がテーパ状になっている分だけガイド筒30の内径より大径になっている。よって、押圧部材40をガイド筒30に挿入すると、鍔部42Aが縮径するように各翼部44が弾性変形する。しかも、翼部44の弾力によって筒部46の外周面、つまり突出部45の外面がガイド筒30の内周面に押圧接触させられる。
【0025】
カートリッジ10から流動性物質を吐出させる際には、筒部46に底部14が挿入されるのであるが、筒部46の内径は、カートリッジ10の底部14の外径より所定の大きさだけ大径に設定されている。これは次の理由による。すなわち、筒部46の外径がその基端部から先端部へ向かうにしたがって大径になっているから、押圧部材40をガイド筒30に挿入することによって筒部46が縮径されると、筒部46の先端部(開口側の端部)は基端部より大きく縮径される。その一方、筒部46の内径が一定になっているから、筒部46が縮径されると、筒部46の内径は、基端側から先端側へ向かうにしたがって小径になる。したがって、仮に筒部46が拡縮径していない自然状態になっているときの筒部46の内径を底部14の外径と同一に設定しておくと、押圧部材40をガイド筒30に挿入したときには、筒部46の先端部の内径が底部14の外径より小さくなってしまい、底部14を筒部46に挿入することができなくなってしまう。そこで、筒部46の内径を底部14の外径より若干大きくしておき、押圧部材40がガイド筒30に挿入されたときには、筒部46の先端部の内径が底部14の外径とほぼ同一になり、筒部46に底部14を挿入することができるようにしたものである。
なお、筒部46の先端部の内径が底部14の内径とほぼ同一であるから、筒部46の奥側の内径は、底部14の外径より大径になっている。
【0026】
筒部46の内周面は、筒部46が自然状態になっているときにその外周面とほぼ同一のテーパ角度を有するテーパ面としてもよい。そして、押圧部材40をガイド筒30に挿入したときに、筒部46の内径がその全長にわたって一定で、かつ底部14の外径とほぼ同一になるようにしてもよい。また、筒部46の外周面及び内周面を直径が一定である円筒面によって形成してもよい。そのようにした場合には、押圧部材40をガイド筒30に挿入して筒部46が縮径したときにも、筒部46の外周面及び内周面は一定の直径を有する円筒面によって形成される。勿論、筒部46が拡縮径していないときの筒部46の内径については、縮径したときの筒部46の内径が底部14の外径とほぼ同一になるように、底部14の外径より所定の寸法だけ大きくしておく。
【0027】
上記構成のカートリッジ装着治具20を用いてカートリッジ10から接着剤等の流動性物質を吐出させる場合には、図1に示すように、ガイド筒30に押圧部材40を挿入し、押圧部材40をガイド筒30の一端部(図1において右端部)に位置させる。この場合、鍔部42A,42Bが同一に構成されているので、押圧部材40の向き、つまり鍔部42A,42Bのいずれをガイド筒30の一端側に向けるかは任意である。ここでは、鍔部42Aがガイド筒30の一端に向けられている。
【0028】
次に、ガイド筒30の左端開口部からカートリッジ10を挿入する。この場合、カートリッジ10は、底部14からカートリッジ10内に挿入される。カートリッジ10は、図7に示すように、底部14が鍔部42Aに突き当たるまで挿入される。すると、底部14全体が鍔部42A及び筒部46内に収容され、筒部46の先端部が底部14より若干ガイド筒30の左端側に、つまりカートリッジ10の先端側に位置するようになる。しかも、筒部46の内周面の先端側の端部が底部14の外周面に隙間無く嵌合する。また、蓋体13の左端面がガイド筒30の左端面とほぼ同一位置に位置する。蓋体13の左端面は、押圧部材40を図1に示す位置より右側に位置させることにより、ガイド筒30の左端面より右側に位置させてもよい。
【0029】
次に、カートリッジ10が挿入された装着治具20を吐出ガンGの保持部G2に載置する。その後、レバーG6を繰り返し回動させることにより、押し板G5を前進させ、図7に示すように、押圧部材40の本体部41に突き当てる。押し板G5をさらに前進させると、押圧部材40がカートリッジ10を前進させる。カートリッジ10の蓋体13の左端面がストッパG3に突き当たると、カートリッジ10がそれ以上前進することができなくなる。したがって、その後は押圧部材40によって胴部11がその後端部から順次押し潰され、カートリッジ10内に充填された流動性物質がノズルNから吐出される。
【0030】
押圧部材40がガイド筒30内を前進するときには、翼部44がガイド筒30の内周面のうねりや凹凸に対応して弾性変形し、筒部46を構成する各突出部45がうねりや凹凸に応じて鍔部42Aの径方向に変位する。したがって、突出部45の外面とガイド筒30の内周面との間に隙間が形成されることがほとんどない。よって、突出部45の外面(筒部46の外周面)とガイド筒30の内周面との間に、胴部11を構成するフィルムが食い込むことがない。
【0031】
また、押圧部材40がガイド筒30に挿入された状態では、突出部45の外面がガイド筒30の内周面と同一直径を有する円筒面になっており、突出部45の外面がガイド筒30の内周面に面接触する。突出部45がガイド筒30の内周面に面接触する場合には、突出部45の先端部がガイド筒30の内周面に対して線接触する場合と比較すると、面接触する突出部45の各部がガイド筒30の内周面の凹凸に乗り上がることによって凹凸を吸収するような状況を呈する。したがって、突出部45の先端部がガイド筒30の内周面の凹凸に引っ掛かる割合を大幅に低減することができる。よって、翼部44の傾斜方向が逆になるように変形すること、つまり翼部44が径方向外側へ向かうにしたがって押圧部材40の移動方向後方(図7の右方)側へ向かうように傾斜してしまうような事態を防止することができる。
【0032】
また、この実施の形態では、胴部11の潰された後端部を構成するフィルムが底部14の外周面に乗り上がるような事態を防止することができる。すなわち、仮に底部14が筒部46に挿入されることなく、底部14の外周面がガイド筒30の内周面と直接対向するように露出しているものとすると、底部14の外径がガイド筒30の内径より小径であるため、図9に示すように、押し潰された胴部11の後端部を構成するフィルムが底部14の外周面に覆い被さる。覆い被さる量は、押圧部材40が前進し、胴部11が押し潰されるにしたがって大きくなる。カートリッジ10を使い切るまで胴部11全体が押し潰されたときには、胴部11の後端部の多くの部分が覆い被さり、それが底部14の外周面とガイド筒30の内周面との間に挟み込まれる。このような状況下において、使い切ったカートリッジ10をガイド筒30から図1の左方へ引き抜こうとすると、胴部11の押し潰された後端部がガイド筒30と底部14とによって挟持されているため、胴部11の押し潰された中間部から先端部までの部分が延びてしまう。勿論、その状態でカートリッジ10をさらに図1の左方へ引っ張ることによってカートリッジ10全体をガイド筒30から抜き出すことができるが、抜き出したカートリッジ10を廃棄する際には胴部11を再度押し潰す必要があり、その作業に多くの手間を要するという問題がある。
【0033】
この点、この装着治具20においては、底部14が筒部46に挿入されている。しかも、筒部46の開口部側の端部が底部14の外周面にほとんど隙間なく嵌合している。したがって、押し潰された胴部11の後端部は、筒部46の先端面(突出部45の先端面)に突き当たることにより、底部11よりカートリッジ10の先端側に位置させられ、底部14の外周面と筒部46の内周面との間に入り込むことがない。したがって、底部14の外周部が胴部11の押し潰された後端部によって覆われることがなく、使い切ったカートリッジ10をガイド筒30から抜き出すときに、押し潰された胴部11が引き伸ばされることがない。よって、使い切ったカートリッジ10を廃棄する際には、胴部11を再度押し潰す必要がなく、その分の手間を省くことができる。
【0034】
カートリッジ10をガイド筒30から取り外した後、他のカートリッジ10から流動性物質を吐出させる場合には、押圧部材40がガイド筒30の左端部に位置しているので、当該他のカートリッジ10をガイド筒30に図1の右端開口部から挿入する。カートリッジ10は、押圧部材40に突き当たるまで挿入される。このとき、カートリッジ10は、押圧部材40の鍔部42Bに突き当たるが、右側の鍔部42B、翼部44、突出部45及び筒部46が左側のそれらと同様に構成されているので、ガイド筒30の左右の向きを逆にしてガイド筒30を吐出ガンGに装着することにより、上記と同様にして当該他のカートリッジから流動性物質を吐出させることができる。したがって、この実施の形態では、一つのカートリッジ10を使い切って他のカートリッジ10から流動性物質を吐出させる際に、押圧部材5を元の位置に戻す必要がない。したがって、その分だけ作業効率を向上させることができる。
【0035】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、高い剛性を有する本体部41に鍔部42A(42B)を形成しているが、鍔部42Aの内周部にそれとほぼ同じ厚さを有する円板部を一体に、かつ連続した状態で設け、この円板部を押し板G5で押圧するようにしてもよい。その場合には、押し板G5の外径を出来るかぎり大きくすることが望ましい。例えば、押し板G5の外径を鍔部42A,42Bの基端部の直径とほぼ同一にし、鍔部42A,42Bの基端部を押し板によって押圧することが望ましい。そのようにすれば、円板部には押し板G5の押圧力がほとんど作用しないので、本体部41に比して大幅に薄い円板部であっても、ストンG5によって押圧部材5が前進移動させられるときに変形することがないからである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明に係るカートリッジ装着治具の一実施の形態を、ガイド筒にカートリッジを挿入した状態で示す断面図である。
【図2】同実施の形態において用いられている押圧部材の平面図である。
【図3】同押圧部材の側面図である。
【図4】図2のX−X線に沿う断面図である。
【図5】図2のY−Y線に沿う断面図である。
【図6】同押圧部材の斜視図である。
【図7】同実施の形態のカートリッジ装着治具を用いてカートリッジから流動性物質を吐出させているときの要部を示す断面図である。
【図8】同実施の形態のカートリッジ装着治具を用いて押し潰されたカートリッジを示す斜視図である。
【図9】従来のカートリッジ装着治具を用いて押し潰されたカートリッジを示す斜視図である。
【図10】この発明に係るカートリッジ装着治具を用いて吐出ガンに装着されるカートリッジの一例を示す側面図である。
【図11】この発明に係るカートリッジ装着治具を用いて吐出ガンに装着されるカートリッジの他の例を示す側面図である。
【図12】この発明に係るカートリッジ装着治具が用いられる吐出ガンの一例を示す側面図である。
【図13】従来のカートリッジ装着治具を、図12に示す吐出ガンを用いてカートリッジから流動性物質を吐出させている状態で示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 カートリッジ
2 胴部
10 カートリッジ
11 胴部
14 底部
20 カートリッジ装着治具
30 ガイド筒
40 押圧部材
41 本体部
42A 鍔部
42B 鍔部
43 スリット
44 翼部
45 突出部
46 筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部に断面円形状の鍔部が形成され、この鍔部に、その外周側の端部から径方向内側に向かって延び、かつ上記鍔部の周方向に互いに離間した複数のスリットが形成されることにより、上記鍔部に弾性変形可能な複数の翼部が形成された吐出ガン用押圧部材において、
上記翼部の外周側の端部に上記鍔部の軸線とほぼ平行に延びる突出部が形成され、全突出部によって上記鍔部の外周側の端部に、外周面が断面円形である筒部がその軸線を上記鍔部の軸線と一致させて形成されていることを特徴とするカートリッジ押圧部材。
【請求項2】
上記鍔部より小径で、かつ軸線を上記鍔部の軸線と一致させた円板状の本体部をさらに有し、この本体部の軸線方向の一端部の外周側の端部に、上記鍔部、上記スリット、上記翼部及び上記突出部が形成され、上記突出部が上記本体部の他端側から一端側に向かって突出させられていることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ押圧部材。
【請求項3】
上記本体部の他端部の外周側の端部に、上記鍔部、上記スリット、上記翼部及び上記突出部がそれぞれ形成され、上記本体部の他端部に形成された突出部が上記本体部の一端側から他端側へ向かって突出させられていることを特徴とする請求項2に記載のカートリッジ押圧部材。
【請求項4】
上記本体部の他端面の中央部には、凹部が形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のカートリッジ押圧部材。
【請求項5】
上記凹部が上記本体部をその軸線方向に貫通する貫通孔として形成されていることを特徴とする請求項4に記載のカートリッジ押圧部材。
【請求項6】
柔軟性を有するフィルムによって構成された胴部を有するカートリッジが挿入されるガイド筒と、このガイド筒にその内周面に押圧接触した状態で摺動可能に挿入され、上記カートリッジの後端部を押す押圧部材とを有し、上記押圧部材の外周部に断面円形状の鍔部が形成され、この鍔部に、その外周側の端部から径方向内側に向かって延び、かつ上記鍔部の周方向に互いに離間した複数のスリットが形成されることにより、上記鍔部に弾性変形可能な複数の翼部が形成されたカートリッジ装着治具において、
上記翼部の外周側の端部に、上記押圧部材の押圧方向前方へ向かって上記鍔部の軸線とほぼ平行に延びる突出部が形成され、全突出部によって上記鍔部の外周側の端部に、外周面が断面円形である筒部がその軸線を上記鍔部の軸線と一致させて形成され、この筒部の外周面が上記ガイド筒の内周面に摺動可能に押圧接触させられていることを特徴とするカートリッジ装着治具。
【請求項7】
上記鍔部より小径で、かつ軸線を上記鍔部の軸線と一致させた円板状の本体部をさらに有し、この本体部の軸線方向の一端部の外周側の端部に、上記鍔部、上記スリット、上記翼部及び上記突出部が形成され、上記突出部が上記本体部の他端側から一端側に向かって突出させられていることを特徴とする請求項6に記載のカートリッジ装着治具。
【請求項8】
上記本体部の他端部の外周側の端部に、上記鍔部、上記スリット、上記翼部及び上記突出部がそれぞれ形成され、上記本体部の他端部に形成された突出部が上記本体部の一端側から他端側へ向かって突出させられていることを特徴とする請求項7に記載のカートリッジ装着治具。
【請求項9】
上記本体部の他端面の中央部には、凹部が形成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載のカートリッジ装着治具。
【請求項10】
上記凹部が上記本体部をその軸線方向に貫通する貫通孔として形成されていることを特徴とする請求項9に記載のカートリッジ装着治具。
【請求項11】
上記カートリッジの胴部の後端部には、上記胴部を一定の形状に維持することができるよう所定の強度を有する底部が設けられ、この底部のほぼ全体を上記筒部内に挿入することができるように上記筒部の長さが設定され、上記筒部の内周面の少なくとも開口側の端部に上記底部の外周面が隙間無く挿脱可能に嵌合することができるよう、上記筒部の開口側の端部の内径が上記底部の外径とほぼ同一に設定されていることを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載のカートリッジ装着治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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