説明

カートリッジ

【課題】小型で高性能なカートリッジを提供する。
【解決手段】
被処理流体の流入口を有する筒状の容器と、該容器の内部に収納された筒状部材とを有するカートリッジであって、
前記流入口は、前記容器の軸方向に関する一方の端部であって、かつ、軸方向に垂直な方向に関する一部に設けられており、
前記容器の側面と前記筒状部材の側面との間には粒状濾材を有し、
前記容器の側面と前記筒状部材の側面との間であって、かつ、前記粒状濾材の上流側にはリング状濾材を備えた前記被処理流体の分配部を有し、
さらに前記リング状濾材は、イオン交換能を有する長尺濾材が層状に巻回積層されてなるものであるカートリッジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を浄化するカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
水道水の安全性に対する関心が急速に高まり、浄水器に対する要求も高度化してきている。残留塩素の臭いや微量の有機化合物、水道水中のゴミ等の異物を除去できるだけでなく、水道水中に溶解する鉛等の重金属の除去能力に対しても注目が集まっている。鉛等の重金属を除去できるカートリッジとしては、粒状活性炭と粒状イオン交換体を用いたカートリッジ、また粒状濾材とイオン交換能を有する繊維状濾材とを用いたカートリッジ(例えば、特許文献1参照)が挙げられる。しかしながら、特許文献1に記載のカートリッジで、所定の大きさの容器に粒状濾材とイオン交換能を有する繊維状濾材等とを組み込もうとすると、繊維状濾材が通水方向に配向しているため、濾材と被処理水との接触が不十分であったり、ショートパスが生じたりするおそれがあり、収納している濾材の量の割には高い性能を発揮することができないという問題があった。すなわち、小型で高性能なカートリッジとすることが難しかった。
【0003】
また、カートリッジとしては、粒状吸着剤の位置を規制する部材にリング状の繊維状活性炭を用いたカートリッジ(例えば、特許文献2参照)も挙げられる。しかしながら、このカートリッジでは、被処理水の流入口が、容器の軸方向に関する一方の端部であって、かつ、軸方向に垂直な方向に関する一部に設けられているため、被処理水を濾材に均一に供給すべく、濾材の上流側に空間を設けた構造となっており、除去性能を高めるには大型化する必要があった。
【0004】
さらに、ロール状に形成したイオン交換繊維を含む繊維状濾材を使用したカートリッジ(特許文献3参照)が知られている。しかしながら、特許文献3に記載のカートリッジでは、ロール状の繊維状濾材は、粒状活性炭の下流側に設置され、かつ、内部ケース(中空糸膜収納ケース)の周側面端部に設けた流入口を塞ぐように設置しているので、水は繊維状濾材の中の色々な経路を通じて流れる可能性はあるものの、最も圧力損失の少ない繊維状濾材内周(内部ケース周側面)近傍に集中的に、偏流して流れるので、所定の除去能力を得るには繊維状濾材が大型化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−238187号公報
【特許文献2】特開2002−177951号公報
【特許文献3】特開2004−305796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、小型で高性能なカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するための本発明は、被処理流体の流入口を有する筒状の容器と、該容器の内部に収納された筒状部材とを有するカートリッジであって、前記流入口は、前記容器の軸方向に関する一方の端部であって、かつ、軸方向に垂直な方向に関する一部に設けられており、前記容器の側面と前記筒状部材の側面との間には粒状濾材を有し、前記容器の側面と前記筒状部材の側面との間であって、かつ、前記粒状濾材の上流側には、リング状濾材を備えた前記被処理流体の分配部を有し、さらに該リング状濾材は、イオン交換能を有する長尺濾材が層状に巻回積層されてなるものであるカートリッジを特徴とするものである。ここで、前記リング状濾材は、カートリッジから取り出した際に径方向に5〜30%膨張することが好ましい。さらに、それらカートリッジと流路切替弁とを備えた浄水器も好ましい。
【0008】
本発明において、「容器の軸方向に関する一方の端部であって、かつ、軸方向に垂直な方向に関する一部」とは、容器の一方の軸方向端面上または容器側面の端部上であって、かつ、軸方向に垂直な断面における一部分をいう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粒状濾材の上流側に、イオン交換能を有する長尺濾材が層状に巻回積層されてなるリング状濾材を配することで、複数の濾材による除去能力を発揮するカートリッジとすることができるうえに、被処理水の流入口が、容器の軸方向に関する一方の端部であって、かつ、軸方向に垂直な方向に関する一部に設けられたカートリッジであるにも関わらず、かかる流入口と粒状濾材との間に被処理水を分配するための実質的な空間を設けなくても被処理水を濾材に分配することができる。したがって、小型で高性能なカートリッジ、さらには浄水器を得ることができる。
【0010】
また、本発明において、リング状濾材を、カートリッジから取り出した際に径方向に5〜30%膨張するようなものとする場合に、カートリッジ使用開始当初から安定して高い除去性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明における浄水器の一例を示す模式的図である。
【図2】本発明におけるカートリッジの一例を示す模式的断面図である。
【図3】比較例で作製したカートリッジの模式的断面図である。
【図4】実施例における溶解性鉛除去率の経時変化のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、家庭のキッチンなどの蛇口に取り付けられる浄水器を例にとり、図を参照しながら説明する。
【0013】
例えば本発明の浄水器は、図1〜2に示すように、内部に切替弁を内蔵した本体部2と濾材を収納したカートリッジ3などから構成され、カートリッジ3が本体部2の内部に収納される。本体部2にはレバー5が設けられ、レバー5を操作することにより、蛇口4から原水流入口を通って流入した原水をそのままシャワー水として吐出するか、そのままストレート水として吐出するか、カートリッジに供給するか、を選択して切り換える。カートリッジ3に供給された原水(被処理流体)は、活性炭などの吸着剤や中空糸膜などによって濾過され、浄水流出口から浄水として吐出される。
【0014】
図1は、カートリッジが本体部の内部に収納されている実施形態であるが、カートリッジが本体部の外部に配され、本体部とバヨネット式などにより水密的に連結される実施形態も可能である。
【0015】
カ−トリッジ3においては、図2に示すように、筒状容器11の底部、すなわち、筒状容器11の軸方向に関する一方の端部であって、かつ、当該軸方向に垂直な方向に関する一部に、原水を受け入れる原水受入口12(流入口)と、浄水を供給する浄水供給口13が設けられている。このように、筒状容器11の軸方向に関する一方の端面上または側面端部上の局在したある一部に原水受入口12(流入口)が設けられているので、原水はカートリッジ3に対して、均一に分配されてではなく、一部分に偏って流入することになっている。ここで、筒状容器11の側面端部とは、筒状容器11の側面において、後述する粒状濾材18の上流側端面(フィルタ19側の面)より上流側部分をいう。原水受入口12と浄水供給口13には、それぞれOリング14、15が設けられ、本体部2にカートリッジ3を接続した際に外部に水が漏れるのを防止している。
【0016】
筒状容器11の内部底面(図中左側)には円筒状突起が形成されており、円筒状突起に、筒状部材16の下端がOリング17を介して嵌入立設されている。そして、筒状容器11の側面と筒状部材16の側面との間には粒状濾材18を有し、粒状濾材18を保持するためにリング状のフィルタ19,20が固定されている。
【0017】
筒状部材16の内部には、複数本の中空糸膜を束ねて逆U字状に折り曲げた中空糸膜束21が収納されている。中空糸膜の両端部は、筒状部材16の浄水供給口13が設けられている側の端部にて各中空糸間および中空糸と筒状部材との間に充填された硬化性樹脂(封止剤)22により封止固定(ポッティング)されている。各中空糸膜は、筒状容器11へ嵌入する前にポッティング部が一部切断除去されているので、末端が浄水供給口13に向かって開口している。
【0018】
さらに、本発明にかかるカートリッジにおいては、筒状容器11の側面と筒状部材16の側面との間で、かつ、粒状濾材18の上流側の原水分配領域に、イオン交換能を有する長尺濾材が層状に巻回積層されてなるリング状濾材23が配設されている。前記原水分配領域のリング状濾材23の上流側には、わずかの空間しか存在しない。もしくは実質上空間がなくてもよい。本発明においては原水分配領域にリング状濾材23を配置しても、かかるリング状濾材23が、長尺濾材を層状に巻回積層してなるものであるので、一部分に偏って流入した原水がリング状濾材23にほぼ均一に分配され、リング状濾材23に接触して特定のイオン(溶解性鉛等の重金属イオン等)がイオン交換されるとともに、その下流に配置している粒状濾材18に均一に流入することができる。すなわち、長尺濾材を層状に巻回積層してなるリング状濾材23は、成形密度が大きく(0.1〜0.4g/cm)、リング状濾材部分の通水圧力損失は、その上流のわずかな空間部分(もしくは事実上空間がない場合の界面部分)の圧力損失に比べて十分大きいので、原水がリング状濾材23に均一に分配される。また、長尺濾材を層状に巻回積層してなるリング状濾材23は、成形密度の各部分の均一度が高い(均質に製作されている)ので、リング状濾材23に流入した原水は、偏流しにくく、ほぼ均質に内部を流通するので、濾材体積全体が有効に活用され高い除去能力が発揮される。仮に、リング状濾材が、長尺濾材を層状に巻回積層してなるものでなく、例えば単にイオン交換繊維を圧縮成形したものであると、その成形密度は長尺濾材を層状に巻回積層してなるものより小さく、かつ均一度も劣るため、リング状濾材への原水の分配、流通の均一度は不十分となり、高い除去性能を得ることができなくなる。
【0019】
リング状濾材23は径方向に10〜30%の圧縮率で圧縮して充填されていることが好ましい。この時、リング状濾材23は筒状容器11の側面と前記円筒状突起の側面とに当接して、または筒状容器11の側面と筒状部材16の側面とに当接して充填されていることが好ましい。この範囲で圧縮されている場合、圧力損失が過度になることを抑えつつも、リング状濾材23の密度、均一度、並びにリング状濾材の内外周の当接面への密着度、層状に巻回積層した各層間の密着度も、より高まるので、本来カートリッジが具備する除去性能をカートリッジの使用開始当初から安定して発揮できるものとなる。なお、ここでいう径方向の圧縮率Xとは、圧縮する前の自然な状態におけるリング状濾材の厚みをti、カートリッジ内におけるリング状濾材の厚みをtとしたとき、X=(ti−t)/t×100で表される値である。
【0020】
また、同様の理由から、リング状濾材23は、カートリッジから取り出した際に径方向に5〜30%膨張するようなものであることが好ましい。この値(膨張率Y)は、カートリッジ内におけるリング状濾材の厚み(筒状容器11の軸方向に関する長さ)をt、カートリッジから取り出した後の自然な状態におけるリング状濾材の厚みをtとしたとき、Y=(t−t)/t×100で表される。
【0021】
さらに、リング状濾材23は、層状に巻回積層されたリング状に製作し易く、その形状を保持し易くするため、カートリッジ内におけるリング状濾材の外径doに対する当該濾材の厚みtの割合t/doが、0.05〜0.35の関係を満足するようなものであることが好ましい。
【0022】
また、リング状濾材23の挿入充填のし易さ、圧縮率確保、コンパクトさのため、原水分配領域(筒状容器11の側面と筒状部材16の側面との間であって、かつ、粒状濾材18の上流側の領域)に対するリング状濾材23の割合が80〜100vol.%であることが好ましい。リング状濾材23挿入充填の軸方向位置決めのため、前記原水分配領域の側面部または底面部に位置決め部(段差、突起、リブなど)が設けられていることも好ましい。さらに、前記原水分配領域において、少なくともリング状濾材23挿入の入口部分は、挿入方向に向かって(図2で原水流れの下流から上流方向に向かって)、その横断面積が小さくなるようなテーパが付いていることが望ましい。このテーパにより、層状に巻回積層されたリング状濾材23の挿入充填に際して、そのずれやめくれの可能性を減少させることができる。
【0023】
図2の実施形態においては、上述のように、粒状濾材18を保持するためにリング状のフィルタ19,20が固定されている。粒状濾材18の上流側のフィルタ19については、それを省き、リング状濾材23にフィルタ19の役割を果たさせることも可能である。その場合、部品点数が減り、コストを低減することができる。
【0024】
イオン交換能を有する長尺濾材は、イオン交換繊維をシート化したものが好ましいが、不織布やフェルトなどにイオン交換能を有する吸着剤を担持したものでも構わない。さらに、リング状濾材23が、シート状の長尺濾材を層状に巻回積層したものを、その軸方向に垂直な断面で、所定の軸方向厚さにスライスして製作されるものである場合は、安価に製作できるので、より好ましい。その他例えば、所定軸方向厚さ分の幅を持つ細長い帯状の長尺濾材を層状に巻回積層して製作されるリング状濾材でもよい。イオン交換繊維としては、スチレン系、アクリル系、メタクリル酸系、フェノール系の高分子母体に、所定の官能基を結合した繊維である。より高い性能を得るためには、アクリル系、メタクリル酸系の母体とすることが好ましい。所定の官能基としては、スルホン酸、カルボン酸、トリメチルアンモニウム、ジメチルエタノールアンモニウム、ジメチルアミン、ポリアミン、イミノ二酢酸、アミノカルボン酸、ポリカルボン酸などがある。より高い性能を得るためには、スルホン酸、カルボン酸とすることが好ましい。イオン交換能を有する吸着剤としては、ゼオライト、アルミノケイ酸塩、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウムおよびチタノケイ酸塩などの無機吸着剤や、イオン交換樹脂、キレート樹脂などの有機吸着剤を用いることが好ましい。より高い性能を得るために、チタノケイ酸塩、アルミのケイ酸塩を用いることが好ましい。長尺濾材は、複数の濾材を混合して使用しても構わない。例えば、イオン交換繊維と繊維状活性炭とを混合してシート状にした成形体を用いると、重金属除去性能に優れ、かつトリハロメタンやカビ臭などの除去性能も向上させたカートリッジとすることができる。
【0025】
筒状容器11の上部は、中空糸膜束21と粒状濾材18を容易に充填できるよう開口されており、内部の汚れを確認できるように透明キャップ24が嵌入され、超音波溶着されている。
【0026】
上記のように構成されたカートリッジ3は、本体部2内に装填され、カ−トリッジキャップ6が、カ−トリッジ3に覆い被さる位置でネジ締付固定され、カ−トリッジ3を所定位置に固定する役目を果たしている。カ−トリッジキャップ6には、開閉キャップ7が設けられており、開閉キャップ7を開くと、カ−トリッジキャップ6の開口部およびカートリッジ3の透明キャップ24を通じて、中空糸膜の汚れ具合を確認できるようになっている。
【実施例】
【0027】
本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。
【0028】
<実施例1>
図2のカートリッジを作製して水道水を処理し、イオン交換能を有する濾材による効果をみる為に溶解性鉛ろ過能力を、粒状濾材による効果をみるためにクロロホルムのろ過能力を評価し、さらに各濾材の圧力損失による影響をみるためにろ過流量を評価した。
【0029】
なお、粒状濾材18としては、0.10〜0.25mmの粒径の活性炭を35g用いた。リング状濾材23を構成するイオン交換能を有する長尺濾材としては、アクリル系の高分子母体にカルボン酸官能基を結合した繊維を熱溶融性のバインダー繊維と混合、熱処理を行うことにより、厚み0.5mmのシート状としたものを用いた。また、リング状濾材23は、カートリッジに収納する前の状態で、外径45mm、内径35mm、厚み8mmであり、これを径方向に10%圧縮して用いた。なお、上述のとおり規定される膨張率は5%であった。
【0030】
また、溶解性鉛のろ過能力試験、は、JIS S 3201:2004「家庭用浄水器の試験方法」に準じて流量1.6L/minで行い、除去率の経時変化を確認するとともに、初期性能として50L通水時の除去率を測定し、さらに除去率80%を下回るまでの総通水量を測定した。溶解性鉛の濃度分析は、ICP(誘導結合プラズマ発光分析装置)にて行った。この溶解性鉛ろ過能力試験は、n数=2で実施し、その平均を結果として記載した。また、クロロホルムろ過能力についてもJIS S 3201:2004「家庭用浄水器の試験方法」に準じてn数=2で実施し、その平均を結果として記載した。
【0031】
ろ過流量も、JIS S 3201: 2004「家庭用浄水器の試験方法」に準じてn数=2で実施し、平均を結果として記載した。
【0032】
その結果、溶解性鉛除去率80%を下回るまでの総通水量は900L(初期性能が95%以上)、クロロホルム除去率80%を下回るまでの総通水量は800L、ろ過流量は2.5L/minとカートリッジとして十分に満足する能力であることを確認した。また、図4の溶解性鉛除去率の経時変化のグラフに示すように、イオン交換能を有する濾材は、カートリッジ使用開始直後から高い除去性能を安定して発揮していることを確認した。<実施例2>
上述のとおり規定される膨張率が30%となるようなリング状濾材23を径方向に30%圧縮した以外は実施例1と同様にして、評価した。
【0033】
その結果、溶解性鉛除去率80%を下回るまでの総通水量は1000L(初期性能が95%以上)、クロロホルム除去率80%を下回るまでの総通水量は800L、ろ過流量は2.2L/minと、カートリッジとして十分に満足する能力であることを確認した。また、図4の溶解性鉛除去率の経時変化のグラフに示すように、イオン交換能を有する濾材は、カートリッジ使用開始直後から高い除去性能を安定して発揮していることを確認した。
【0034】
<比較例1>
イオン交換能を有する長尺濾材が層状に巻回積層されてなるリング状濾材23の代わりに、イオン交換能を有するイオン交換繊維をリング状に成形しただけのものを、径方向に30%圧縮して用いてカートリッジを作製した。なお、上述のとおり規定される膨張率は30%であった。これらの点を変更した以外は実施例1と同様にして、評価した。
【0035】
その結果、溶解性鉛除去率80%を下回るまでの総通水量は300Lと、ろ過流量は2.2L/minと十分であるが、溶解性鉛ろ過能力が非常に低いことを確認した。
【0036】
<実施例3>
上述のとおり規定される膨張率が4%となるようなリング状濾材23を径方向に8%圧縮した以外は実施例1と同様にして、評価した。
その結果、溶解性鉛除去率80%を下回るまでの総通水量は900L、クロロホルム除去率80%を下回るまでの総通水量は800L、ろ過流量は2.7L/minと、カートリッジとして十分に満足する能力であることを確認した。但し、図4の溶解性鉛除去率の経時変化のグラフに示すように、カートリッジ使用開始直後は一旦イオン交換能を有する濾材による除去性能が落ちてしまうことを確認した。
【0037】
<実施例4>
上述のとおり規定される膨張率が32%となるようなリング状濾材23を径方向に35%圧縮した以外は実施例1と同様にして、評価した。
その結果、ろ過流量が1.6L/minと若干下がったが、溶解性鉛除去率80%を下回るまでの総通水量は1000L(初期性能95%以上)、クロロホルム除去率80%を下回るまでの総通水量は800Lと、カートリッジとして十分に満足する能力であることを確認した。また、図4の溶解性鉛除去率の経時変化のグラフに示すように、イオン交換能を有する濾材は、カートリッジ使用開始直後から高い除去性能を安定して発揮していることを確認した。
【0038】
<比較例2>
図3のカートリッジを作製して水道水を処理し、溶解性鉛ろ過能力、クロロホルムのろ過能力、ろ過流量を評価した。すなわち、粒状濾材18を30gにし、リング状濾材23を原水の分配領域ではなく図2における粒状濾材の位置に設けた以外は実施例1と同様にして、評価した。
【0039】
その結果、鉛溶解性除去率80%を下回るまでの総通水量は1000L(初期性能が95%以上)、ろ過流量は2.1L/minであったが、粒状濾材18で除去するクロロホルムのろ過能力が、除去率80%を下回るまでの総通水量が450Lと非常に低いことを確認した。
【0040】
結果を表に示す。
【0041】
【表1】

【符号の説明】
【0042】
1:浄水器
2:本体部
3:カートリッジ
4:蛇口
5:レバー
6:カートリッジキャップ
7:開閉キャップ
11:筒状容器
12:原水受入口
13:浄水供給口
14:Oリング
15:Oリング
16:筒状部材
17:Oリング
18:粒状濾材
19:フィルタ
20:フィルタ
21:中空糸膜束
22:硬化性樹脂
23:リング状濾材
24:透明キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理流体の流入口を有する筒状の容器と、該容器の内部に収納された筒状部材とを有するカートリッジであって、
前記流入口は、前記容器の軸方向に関する一方の端部であって、かつ、軸方向に垂直な方向に関する一部に設けられており、
前記容器の側面と前記筒状部材の側面との間には粒状濾材を有し、
前記容器の側面と前記筒状部材の側面との間であって、かつ、前記粒状濾材の上流側には、リング状濾材を備えた前記被処理流体の分配部を有し、
さらに前記リング状濾材は、イオン交換能を有する長尺濾材が層状に巻回積層されてなるものであることを特徴とするカートリッジ。
【請求項2】
前記リング状濾材は、カートリッジから取り出した際に径方向に5〜30%膨張するものである、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカートリッジと流路切替弁とを備えた浄水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−241064(P2009−241064A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60780(P2009−60780)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】