説明

カートリッジ

【課題】非接触タグを容易に破壊できるようにする。
【解決手段】磁気テープカートリッジ1は、磁気テープを収容するケーシング2を備えている。ケーシング2には、ICチップ72とICチップ72に接続されたアンテナ73,73とを有するRFIDタグ71が一体的に設けられたRFIDラベル7を貼付するためのラベルエリア6が形成されている。ラベルエリア6には、ICチップ72が嵌り込むチップ用孔62が形成されていると共に、アンテナ73,73が交差するアンテナ切断用溝63,63が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録メディアを収容するケーシングを備えたカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録メディアを収容するケーシングを備えたカートリッジが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、記録メディアとしての磁気テープを収容するケーシングを備えたカートリッジが開示されている。そして、特許文献1では、各カートリッジに、非接触タグ(例えば、RFID(Radio Frequency Identification)タグ)を設けて、各カートリッジを管理するようにしている。
【0004】
また、非接触タグとしては、対象物に貼付できるようにしたシールタイプの非接触タグが知られている。例えば、特許文献2に開示されているRFIDラベルがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−52539号公報
【特許文献2】特開2007−232766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、記録メディアにおいては、廃棄するときに、その内部に記録された情報が流出しないような処置を施すことが必要である。それは、前述の非接触タグにおいても同じであり、廃棄時には、非接触タグに記録された情報の流出を防止する必要がある。具体的には、リーダ・ライタによって非接触タグ内の情報を削除することが行われる。また、非接触タグが、前述のシールタイプの場合であれば、シール状の非接触タグを剥がした上でその非接触タグを破壊することが考えられる。このように、非接触タグを設けたカートリッジにおいては、廃棄時に工数が増加してしまう。
【0007】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、非接触タグを容易に破壊できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示されたカートリッジは、記録メディアを収容するケーシングを備えたカートリッジである。そして、前記ケーシングには、ICチップと該ICチップに接続されたアンテナとを有する非接触タグが一体的に設けられたシール部材を貼付するための貼付エリアが形成されており、前記貼付エリアには、前記アンテナが交差する孔が形成されているものとする。
【0009】
また、別のカートリッジは、記録メディアを収容するケーシングを備えたカートリッジである。そして、前記ケーシングには、ICチップと該ICチップに接続されたアンテナとを有する非接触タグが一体的に設けられたシール部材を貼付するための貼付エリアが形成されており、前記貼付エリアには、前記ICチップが嵌り込む孔が形成されているものとする。
【0010】
ここで、「孔」とは、それ以外の部分よりも窪んでいればよく、丸孔に限られず、長孔であっても、溝状であっても、スリット状であってもよい。また、「孔」は、有底状であっても、貫通孔であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
前記カートリッジによれば、前記切り込みにシール部材の上から治具等を挿入することによって、非接触タグのアンテナを押し切ることができる。こうして、非接触タグを容易に破壊することができる。
【0012】
また、別のカートリッジによれば、前記孔にシール部材の上から治具等を挿入することによって、非接触タグのICチップをアンテナから切り離すことができる。こうして、非接触タグを容易に破壊することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気テープカートリッジの側面図である。
【図2】磁気テープカートリッジの平面図である。
【図3】磁気テープカートリッジの分解斜視図である。
【図4】RFIDラベルの裏面を示す図である。
【図5】RFIDラベルを貼付した磁気テープカートリッジの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る磁気テープカートリッジの側面図であり、図2は、磁気テープカートリッジの平面図であり、図3は、磁気テープカートリッジの分解斜視図である。
【0016】
実施形態に係る磁気テープカートリッジ1は、例えば、電子計算機に記録された記録データをバックアップするためのストレージデバイスとして使用されるLTO(Linear Tape Open)規格に準拠した1リール(単一リール)型のカートリッジ式情報記録媒体である。磁気テープカートリッジ1は、ケーシング2、テープリール3、磁気テープ(図示省略)、ロック解除具4、リール押え5、ばね6、カートリッジメモリ25、及びライトプロテクトプラグ26を備えている。この磁気テープカートリッジ1がカートリッジを構成する。
【0017】
ケーシング2は、平面視正方形状の扁平な直方体に形成されている。すなわち、ケーシング2は、平面視正方形状の上面2a及び下面2bと、細長い長方形状の4つの側面2c〜2fとを有している。ここで、磁気テープカートリッジ1を、テープドライブに挿入するときに、テープドライブ側を向いている側面を前側面2c、前側面2cと対向する側面を後側面2d、テープドライブの方を向いて右側の側面を右側面2e、テープドライブの方を向いて左側の側面を左側面2fと称する。また、ケーシング2は、合成樹脂製の下ケース21と上ケース22との分割構造になっている。下ケース21と上ケース22との分割ラインは、側面2c〜2fをそれぞれ通るようになっている。これらの下ケース21及び上ケース22は、それぞれ、平面視正方形状の浅皿状に形成されている。上ケース22の天板内面には、その略中央において、断面十文字状のガイド突起(図示省略)が下方に突出するように形成されている。下ケース21と上ケース22とは、ネジで締結されている。ケーシング2の内部には、テープリール3が収容されている。下ケース21の底板には、その略中央において、テープリール3の被駆動ギア(図示省略)を外部に露出させるためのギア開口21aが形成されている。
【0018】
また、ケーシング2の右側面2eには、テープリール3に巻回された磁気テープを外部に引き出すためのテープ引出口20aが形成されている。このテープ引出口20aは、薄板状の蓋23によって開閉可能に塞がれている。蓋23は、ばね23aを介して、テープ引出口20aを閉じる方向へ付勢されている。
【0019】
さらに、ケーシング2内における、後側面2dと右側面2eとで構成される隅部には、円弧状のリブによって区画されたメモリ収容部20bが形成されている。このメモリ収容部20bには、カートリッジメモリ25が収容される。カートリッジメモリ25は、磁気テープカートリッジ1の製造情報や使用履歴情報、磁気テープのパーテーション情報などを記憶するようになっている。
【0020】
さらにまた、ケーシング2内における、後側面2dと左側面2fとで構成される隅部には、平板状のリブによって区画されたプラグ収容部20cが形成されている。このプラグ収容部20cには、ライトプロテクトプラグ26が収容される。ライトプロテクトプラグ26は、磁気テープカートリッジ1に記録されているデータの誤消去を防止するためのものである。ライトプロテクトプラグ26は、データ消去許容位置とデータ消去禁止位置との間でスライド移動可能にプラグ収容部20cに収容されている。
【0021】
テープリール3は、円筒状のハブ31と、該ハブ31の上端に鍔状に設けられた上フランジ32と、該ハブ31の下端に鍔状に設けられた下フランジ33と、該下フランジ33に取り付けられた金属製の吸着板34とを有している。これらハブ31、上フランジ32及び下フランジ33は、合成樹脂で形成されている。さらに詳しくは、ハブ31と下フランジ33とは一体成形されている。そして、下フランジ33と一体成形されたハブ31の上端に、上フランジ32が超音波溶着されている。
【0022】
ハブ31は、上端側(即ち、上フランジ側)が開口する一方、下端側(即ち、下フランジ側)が閉塞する有底円筒状に形成されている。このハブ31の外周面に、磁気テープが巻回されている。
【0023】
ハブ31の底壁上面(内面)には、3つの円弧状のリブ31b(図3では、1つだけ図示)が、互いに間隔を空けて同一円周上に並んだ状態で突設されている。これらリブ31bの上面には、被ロックギア31aが形成されている。ハブ31の底壁には、隣接するリブ31bの間の部分、即ち、リブ31bが設けられていない部分の、径方向外側には、ロック解除具4の後述する爪部43が嵌合する開口(図示省略)が貫通形成されている。
【0024】
また、ハブ31の底壁下面(外面)の中央には、吸着板34が取り付けられている。さらに、ハブ31の底壁下面の外周縁には、被駆動ギア(図示省略)が環状に形成されている。尚、前記開口は、底壁のうち被駆動ギアが形成されている部分に開口している。つまり、被駆動ギアの歯に混ざって、ロック解除具4の爪部43が開口からハブ31の底壁下面に突出することになる。
【0025】
また、テープリール3においては、被駆動ギア及び吸着板34が下ケース21のギア開口21aからケーシング2の外部に露出している。磁気テープカートリッジ1をテープドライブに装填したときには、吸着板34がテープドライブのモータの駆動軸に磁気吸着され、被駆動ギアに該駆動軸の駆動ギアが噛合するようになっている。
【0026】
リール押え5は、上向きに開口する扁平な有底筒状をしており、その外径は、テープリール3のハブ31の内径よりも小さく設定されている。このリール押え5は、該ハブ31内に配設される。また、リール押え5の底壁上面(内面)の中央には、4個の断面L字状のリブ51,51,…が突設されていて、これら4つのリブ51,51,…により十文字状のスライド溝52が形成されている。このスライド溝52は、上ケース22のガイド突起(図示省略)と同様の形状をしていて、該ガイド突起に対して上下方向にスライド移動可能でかつ相対回転不能に係合している。また、リール押え5の底壁下面(外面)には、ロックギア(図示省略)が形成されている。このロックギアは、テープリール3のハブ31の被ロックギア31aに噛合するように形成されている。
【0027】
ばね6は、コイルばねであって、その内径は、上ケース22のガイド突起及びリール押え5のリブ51,51,…を外周から囲む程度の値に設定されている。すなわち、ばね6は、上ケース22とリール押え5との間において、ガイド突起とリブ51,51,…とを外周から囲むように配置されている。このばね6は、下ケース21と上ケース22とが接合されることによって収縮変形して、リール押え5を下側(テープリール3側)に付勢するようになっている。
【0028】
こうして下側に付勢されるリール押え5は、そのロックギアをテープリール3の被ロックギア31aに噛合させた状態で、該テープリール3を下側に押圧する。このとき、リール押え5は、リブ51,51,…が上ケース22のガイド突起に係合して、上ケース22に対して回転不能な状態となっているため、被ロックギア31aがリール押え5のロックギアに噛合しているテープリール3も回転不能な状態となっている。磁気テープカートリッジ1は、非駆動時には、この状態となっている。
【0029】
ロック解除具4は、本体41と該本体41から放射状に延びた3つの腕部42,42,42とを有している。各腕部42の先端には、屈曲して下方に延びる爪部43が形成されている。リール押え5のロックギアがハブ31の被ロックギア31aに噛合している状態においては、該リール押え5とハブ31の底壁との間には隙間が形成されており、ロック解除具4は、このハブ31の底壁とリール押え5との隙間に配設されている。このとき、ロック解除具4の腕部42,42,42は、ハブ31の底壁上面のリブ31bとリブとの間を延びて、爪部43がハブ31の底壁の開口に嵌っている。ロック解除具4は、磁気テープカートリッジ1の非駆動時には、この状態となっていて、リール押え5のロックギアとハブ31の被ロックギア31aとの噛合状態に影響を与えることはない。一方、磁気テープカートリッジ1がテープドライブに装填されたとき、即ち、駆動時には、ロック解除具4は上方に押し上げられるようになっている。上方に押し上げられたロック解除具4は、さらに、リール押え5をばね6の付勢力に抗して押し上げるようになっている。リール押え5が押し上げられると、該リール押え5のロックギアとハブ31の被ロックギア31aとの噛合が解除され、テープリール3の回転が許容されるようになっている。
【0030】
このように構成された磁気テープカートリッジ1においては、RFIDラベル7を貼付するためのラベルエリア6がケーシング2の外表面に形成されている。以下、ラベルエリア6の構成について、図4,5を参照しながら、詳しく説明する。図4は、RFIDラベル7を裏側から見た背面図であり、図5は、RFIDラベル7を貼付した状態の磁気テープカートリッジ1の側面図である。
【0031】
RFIDラベル7は、ラベル本体70と、ラベル本体70の裏面に一体的に設けられたRFIDタグ71とを有している。ラベル本体70は、ラベル基材とその裏面に設けられた粘着層とを含んでいる。ラベル本体70は、略長方形状をしており、その隅部は湾曲している。RFIDタグ71は、ICチップ72と、ICチップ72に接続されたアンテナ73,73とを有している。RFIDタグ71は、例えば、マイクロ波方式のものである。RFIDタグ71には、例えば、磁気テープカートリッジ1の情報の種類や記録日時等の管理情報が記録されている。これらRFIDラベル7がシール部材を構成し、RFIDタグ71が非接触タグを構成する。RFIDタグ71は、ラベル基材と粘着層との間に挟持される。尚、RFIDタグ71は、これに限られず、粘着層に貼付されている等、他の構成でラベル基材の裏面に設けられていてもよい。
【0032】
詳しくは、ICチップ72は、ラベル本体70の裏面において、長手方向略中央であって且つ短手方向の一側寄りの部分に設けられている。アンテナ73,73は、ダイポールアンテナである。詳しくは、各アンテナ73は、ICチップ72から長手方向外側へ延びる第1長手方向アンテナ部73aと、該第1長手方向アンテナ部73aの先端から短手方向中央に向かって延びる短手方向アンテナ部73bと、短手方向略中央において該短手方向アンテナ部73bの先端から長手方向外側へ延びる第2長手方向アンテナ部73cとを有している。
【0033】
ラベルエリア6は、ケーシング2の外表面のうち、後側面2dに形成されている。このラベルエリア6が貼付エリアを構成する。ラベルエリア6は、後側面2dよりも凹んだ状態で形成されている。また、ラベルエリア6は、そこに貼付されるRFIDラベル7の外形に沿った形状をしている。具体的には、ラベルエリア6は、RFIDラベル7と同様に略長方形状をしている。また、ラベルエリア6の隅部は、湾曲している。詳しくは、ラベルエリア6の外周縁60は、相対向する一対の上長辺部60a及び下長辺部60bと、相対向する一対の右短辺部60c及び左短辺部60dとを有している。上長辺部60aと下長辺部60bとの間隔は、RFIDラベル7の短手方向の幅よりも少し大きくなっている。また、右短辺部60cと左短辺部60dとの間隔は、RFIDラベル7の長手方向の幅よりも少し大きくなっている。つまり、RFIDラベル7の外周縁とラベルエリア6の外周縁60との間には僅かな隙間が形成されるようになっている。さらに、ラベルエリア6の深さは、貼付されるRFIDラベル7の厚みよりも深くなっている。つまり、ラベルエリア6に貼付されたRFIDラベル7は、後側面2dよりも突出しないようになっている。
【0034】
このように構成されたラベルエリア6にRFIDラベル7を貼付するときには、RFIDラベル7の外周縁をラベルエリア6の外周縁60に合わせることによって、RFIDラベル7をラベルエリア6内に貼付することができる。詳しくは、RFIDラベル7を貼付するときには、RFIDラベル7の両長辺をラベルエリア6の上長辺部60a及び下長辺部60bに沿わせると共に、RFIDラベル7の両短辺をラベルエリア6の右短辺部60c及び左短辺部60dに沿わせるようにする。ラベルエリア6の外周縁60とRFIDラベル7の外周縁との隙間は小さいので、RFIDラベル7の各辺とラベルエリア6の各辺部60a〜60dとが接触していない状態でも、両者が略平行になるように、RFIDラベル7を配置することができる。つまり、ラベルエリア6の外周縁60とRFIDラベル7の外周縁との隙間は、RFIDラベル7の位置決めをできる程度の間隔になっている。こうして、ラベルエリア6の上長辺部60aはRFIDラベル7の上方への位置決めを行い、下長辺部60bはRFIDラベル7の下方への位置決めを行い、右短辺部60cはRFIDラベル7の右方への位置決めを行い、左短辺部60dはRFIDラベル7の左方への位置決めを行う。
【0035】
さらに、ラベルエリア6には、RFIDタグ71のICチップ72が嵌り込むチップ用孔62と、RFIDタグ71のアンテナ73,73と交差するように設けられたアンテナ切断用溝63,63とが形成されている。これらチップ用孔62がICチップが嵌り込む孔を構成し、アンテナ切断用溝63がアンテナが交差する孔を構成する。
【0036】
詳しくは、チップ用孔62は、断面略正方形の有底状の孔である。このチップ用孔62は、チップ用孔62は、ラベルエリア6の長手方向略中央において、短手方向の一側寄りの部分に形成されている。チップ用孔62は、ICチップ72の位置がばらついてもICチップ72が嵌り込む程度に、ICチップ72よりも大きな形状をしている。すなわち、RFIDラベル7は、その外周縁がラベルエリア6の外周縁60に当接する範囲でラベルエリア6に貼付されるため、ラベルエリア6内におけるICチップ72の位置もその範囲内でばらつく。また、RFIDラベル7の製造誤差によってICチップ72のラベル本体70内の位置もばらつくため、ラベルエリア6内におけるICチップ72の位置もその範囲内でばらつく。それに対し、チップ用孔62は前述の如く、ICチップ72よりも大きな形状をしているため、ICチップ72の位置がこのようにばらついても、ICチップ72はチップ用孔62に嵌り込むようになっている。また、チップ用孔62の深さは、ラベル本体70の裏面からのICチップ72の突出量よりも深くなっている。
【0037】
また、アンテナ切断用溝63,63はそれぞれ、RFIDラベル7がラベルエリア6に貼付されたときに、RFIDラベル7のアンテナ73,73の第2長手方向アンテナ部73c,73cと交差するように形成されている。すなわち、ラベルエリア6内におけるアンテナ73,73の位置も、ICチップ72の位置と同様に、RFIDラベル7の貼付誤差やアンテナ73,73の製造誤差等によってばらつく。それに対して、各アンテナ切断用溝63は、アンテナ73の位置がばらついても第2長手方向アンテナ部73cと交差する位置において、ラベルエリア6の短手方向に延びるように形成されている。
【0038】
このようにラベルエリア6に形成されたチップ用孔62及びアンテナ切断用溝63,63は、RFIDタグ71を破壊するためのものである。つまり、磁気テープカートリッジ1を廃棄するときや、RFIDラベル7を張り替えるべく、ケーシング2に現在貼付しているRFIDラベル7を剥がして廃棄するときに、チップ用孔62又はアンテナ切断用溝63,63を利用してRFIDタグ71を破壊する。詳しくは、チップ用孔62に挿入可能な治具等を、RFIDラベル7の上から、RFIDラベル7を突き破るようにチップ用孔62に挿入することによって、ICチップ72をアンテナ73,73から切り離すことができる。また、各アンテナ切断用溝63に挿入可能な治具や爪等を、RFIDラベル7の上から、RFIDラベル7を突き破るようにアンテナ切断用溝63に挿入することによって、アンテナ73を切断することができる。アンテナ73,73は、リーダ・ライタとの電波の送受信を効率良く行うことができる長さに設定されている。このアンテナ73を切断することによって、ICチップ72とリーダ・ライタとの間での交信が困難となる。特に、ICチップ72をチップ用孔62を利用してアンテナ73,73から切断する場合には、ICチップ72からアンテナ73,73を切断できるだけでなく、ICチップ72自体を破壊することができる場合もある。かかる場合には、ICチップ72とリーダ・ライタとの間の交信が不可能となる。尚、アンテナ73,73がコイルアンテナを構成する場合には、アンテナ73,73で電磁波を受信する際に発生する電力を用いてRFIDタグ71が動作するため、アンテナ73,73が切断されるだけで、ICチップ72とリーダ・ライタとの間での交信が不可能となる。
【0039】
したがって、本実施形態によれば、ケーシング2のラベルエリア6に、RFIDラベル7に設けられたRFIDタグ71のICチップ72が嵌り込むチップ用孔62や、該RFIDタグ71のアンテナ73,73と交差するアンテナ切断用溝63,63を形成することによって、RFIDラベル7をケーシング2に貼付した状態のまま、治具や爪等を用いてRFIDタグ71のICチップ72をアンテナ73,73から切り離したり、アンテナ73,73を切断することができる。その結果、RFIDラベル7を剥がしてRFIDタグ71を破壊したり、リーダ・ライタによってRFIDタグ71内の情報を消去したりすることなく、簡単な作業でRFIDタグ71を破壊することができる。
【0040】
また、RFIDタグ71は多少の厚みを有している。そのため、ラベルエリア6にRFIDラベル7を貼付する構成においては、ラベルエリア6が平坦に形成されていると、RFIDラベル7のうちRFIDタグ71が位置する部分は表面側に突出してしまう。その場合、RFIDラベル7がケーシング2の後側面2dよりも出っ張ってしまう虞がある。RFIDラベル7がケーシング2の後側面2dよりも出っ張っていると、磁気テープカートリッジ1をLTOライブラリ装置等で搬送する際に、LTOライブラリ装置等のアームがRFIDラベル7に引っ掛かって、磁気テープカートリッジ1をうまく搬送できない虞がある。それに対して、ラベルエリア6に、RFIDタグ71のICチップ72が嵌り込むチップ用孔62を形成することによって、RFIDタグ71に起因するRFIDラベル7の出っ張りを抑制して、磁気テープカートリッジ1搬送時の引っ掛かりを防止することができる。RFIDタグ71に起因するRFIDラベル7の出っ張りを確実に抑制するためには、チップ用孔62は、ICチップ72の厚みよりも深いことが好ましい。
【0041】
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0042】
例えば、前記実施形態では、ラベルエリア6にチップ用孔62とアンテナ切断用溝63,63が形成されているが、これに限られるものではない。すなわち、チップ用孔62とアンテナ切断用溝63,63の何れか一方だけであってもよい。また、アンテナ切断用溝63は1つだけであってもよい。
【0043】
また、各アンテナ切断用溝63は、RFIDラベル7のアンテナ73の第2長手方向アンテナ部73cと直行するように形成されているが、これに限られるものではない。例えば、アンテナ切断用溝63は、第2長手方向アンテナ部73cと交差するように形成されていればよく、直行していなくてもよい。また、アンテナ切断用溝63は、RFIDラベル7のアンテナ73の第1長手方向アンテナ部73a又は短手方向アンテナ部73bと交差するように形成されていてもよい。
【0044】
さらに、チップ用孔62は、前記の形状に限られるものではない。すなわち、チップ用孔62は、ICチップ72が嵌り込む限り、任意の形状を採用することができる。例えば、チップ用孔62は、丸孔でもよく、長孔でもよく、溝状でもよく、スリット状であってもよい。
【0045】
同様に、アンテナ切断用溝63は、前記の形状に限られるものではない。すなわち、アンテナ切断用溝63は、アンテナ73が交差する限り、任意の形状を採用することができる。例えば、アンテナ切断用溝63は、スリット状でもよく、長孔でもよく、方形の孔でもよく、丸孔でもよい。ただし、アンテナ73を容易に押し切るためには、アンテナ73と交差する細長い形状であることが好ましい。
【0046】
また、チップ用孔62及びアンテナ切断用溝63はそれぞれ、有底状であるが、これに限られるものではない。つまり、チップ用孔62は、ケーシング2を貫通する貫通孔であってもよく、アンテナ切断用溝63は、ケーシング2を貫通する、底が無い溝であってもよい。
【0047】
さらに、RFIDタグ71は、マイクロ波方式であるが、これに限られるものではない。RFIDタグ71としては、電磁誘導方式、静電結合方式、電磁結合方式等、他の伝送方式のものを採用するもできる。
【0048】
また、アンテナ73,73は、これに限られるものではない。例えば、各アンテナ73の形状は、前述の如く、クランク状に屈曲した形状である必要はなく、任意の形状を採用することができる。その場合、アンテナ切断用溝63は、アンテナ73の何れの場所で交差していてもよい。また、アンテナ73,73は、ダイポールアンテナに限られず、コイルアンテナでもよい。アンテナ73,73のタイプは、RFIDタグ71の伝送方式に依存する。
【0049】
また、前記実施形態では、ラベルエリア6はケーシング2の後側面2dに形成されているが、これに限られるものではない。例えば、ラベルエリア6は、ケーシング2の上面2aに形成されていてもよく、ケーシング2の上面2aから後側面2dに亘って形成されていてもよい。つまり、ラベルエリア6は、ケーシング2の外表面であれば、任意の場所に形成することができる。
【0050】
さらに、ラベルエリア6の外周縁60の形状は、長方形状である必要はない。ただし、ICチップ72をチップ用孔62に嵌め込むため、及び、アンテナ73をアンテナ切断用溝63と交差させるためには、ラベルエリア6の外周縁60は、RFIDラベル7の四方への位置決めを行う形状であることが好ましい。例えば、ラベルエリア6の外周縁60は、RFIDラベル7の外形に沿った形状であることが好ましい。すなわち、RFIDラベル7が楕円形状であれば、ラベルエリア6の外周縁60も楕円形状とすることが好ましい。尚、RFIDラベル7の四方への位置決めを行うことができる限り、ラベルエリア6の外周縁60はRFIDラベル7の外形に沿っていないくてもよい。また、前記実施形態では、互いに直行する上下方向と左右方向からRFIDラベル7を位置決めしているが、これに限られず、他の方向への位置決めを行う構成であってもよい。
【0051】
さらにまた、前記実施形態では、磁気テープカートリッジについて説明したが、記録メディアを収容するケーシングを備えたカートリッジであれば、任意のカートリッジに前記の構成を採用することができる。例えば、磁気テープをケーシングに収容したカセットテープ又はビデオテープや、記録ディスクをケーシングに収容したフロッピディスク又はMOや、DVD−Rディスク又はDVD−RAMディスクをケーシング内に収容したカートリッジタイプのDVD−Rディスク又はDVD−RAMディスク等に、前記の構成を採用してもよい。
【0052】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、本発明は、記録メディアを収容するケーシングを備えたカートリッジについて有用である。
【符号の説明】
【0054】
1 磁気テープカートリッジ(カートリッジ)
2 ケーシング
6 ラベルエリア(貼付エリア)
62 チップ用孔(孔)
63 アンテナ切断用溝(孔)
7 RFIDラベル(シール部材)
71 RFIDタグ(非接触タグ)
72 ICチップ
73 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録メディアを収容するケーシングを備えたカートリッジであって、
前記ケーシングには、ICチップと該ICチップに接続されたアンテナとを有する非接触タグが一体的に設けられたシール部材を貼付するための貼付エリアが形成されており、
前記貼付エリアには、前記アンテナが交差する孔が形成されているカートリッジ。
【請求項2】
記録メディアを収容するケーシングを備えたカートリッジであって、
前記ケーシングには、ICチップと該ICチップに接続されたアンテナとを有する非接触タグが一体的に設けられたシール部材を貼付するための貼付エリアが形成されており、
前記貼付エリアには、前記ICチップが嵌り込む孔が形成されているカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−34631(P2011−34631A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179761(P2009−179761)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】