カード供給機構及びカード供給方法
【課題】カード相互の分離作用を向上させ、繰り出される最下層カードに作用する荷重を低減させて確実なカード供給を行うカード供給機構を提供する。
【解決手段】偏心カム46を回転させるモータを駆動して偏心カム46が最大半径をとる位置に回転させ、カードスタッカ内に上下方向に積層状態で収容されたカードを、可動部材14の傾斜状、かつ、段差状のカード当接面14aで持ち上げ、偏心カム46を回転させるモータを更に駆動して偏心カム46が最小半径をとる位置に回転させ、傾斜状カード支持面12a上に一方端を位置付けることで、積層状態で収容されたカードを互いに分離された状態とする。カードスタッカ内の最下層のカードCをキックローラ15で繰り出す。
【解決手段】偏心カム46を回転させるモータを駆動して偏心カム46が最大半径をとる位置に回転させ、カードスタッカ内に上下方向に積層状態で収容されたカードを、可動部材14の傾斜状、かつ、段差状のカード当接面14aで持ち上げ、偏心カム46を回転させるモータを更に駆動して偏心カム46が最小半径をとる位置に回転させ、傾斜状カード支持面12a上に一方端を位置付けることで、積層状態で収容されたカードを互いに分離された状態とする。カードスタッカ内の最下層のカードCをキックローラ15で繰り出す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード発行装置やカード印刷装置等の本体装置にカードを供給するカード供給機構およびカード供給方法であって、特に、一度に多数枚のカード発行乃至カード印刷を行う本体装置に適合したカード供給機構およびカード供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クレジットカード、キャッシュカード、ライセンスカード、IDカード等のカード状記録媒体を作成する場合に、記録媒体に熱転写フィルムを介してサーマルヘッドで熱転写して所期の画像・文字などを印刷記録する熱転写方式のカード印刷装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、一度に大量枚数の印刷等のカード発行処理を行う必要性から、近年、多数枚のブランクカードを収容可能なカード供給機構からカード印刷装置にブランクカードを供給する技術も知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3330355号公報
【特許文献2】特開2001−151352号公報
【特許文献3】特開2001−331853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のカード供給機構は、積層状態で収容されたカードのうち、カード処理のために順次繰り出される最下層カードに作用する荷重を低減するために、所定の高さ位置に設けた突起にカードの一端側を支持させる一方で、カードの他端側を下方に積層された複数のカードの最上位カードに支持させることで、突起を境に上下の積層区分として分離させ、最下層カードの繰り出しに伴って突起に支持されていたカードが順次自然落下して下方の積層区分に収容される構成を採用しているが、この自然落下(自重落下)方式ではカードの落下精度にばらつきがあり確実性が劣るという問題があり、その後のカード供給に支障を来たすことがある。特に、各種カードに多用されているカードとして、ポリ塩化ビニルからなる所謂PVCカード等のプラスチックカードにおいては、装置が使用される環境(例えば、高温多湿な環境条件)によりカード相互が貼りついてしまい、自然落下方式ではカード分離を確実に行えない、という問題点がある。
【0006】
本発明は上記事案に鑑み、カード相互の分離作用を向上させ、繰り出される最下層カードに作用する荷重を低減させて確実なカード供給を行うことができるカード供給機構およびその供給方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様はカード供給機構であって、複数のカードを上下方向に積層状態で収容するカード収容部と、前記カード収容部の所定の高さ位置でカードの一方側を支持する支持手段と、前記カード収容部の前記支持手段と対向する側に固設され、カードの他方側を規制する規制手段と、前記支持手段と一体または別体に設けられ、前記カード収容部に収容されたカードの一部の一方側を持ち上げ可能に移動する可動部材と、前記可動部材を昇降可能に駆動する駆動部と、前記カード収容部に収容されたカードのうち、最下層のカードを順次一枚ずつ繰り出す繰出手段と、を備える。
【0008】
第1の態様では、支持手段と一体または別体に設けられカード収容部に収容されたカードの一部の一方側を持ち上げ可能に移動する可動部材を備えており、可動部材は駆動部により昇降されるので、カードは駆動部による可動部材の昇降動作で強制的に落下しカード相互の分離作用が促進されると共に、カード収容部の所定の高さ位置でカードの一方側を支持する支持手段とカードの他方側を規制する規制手段とによりカード収容部に積層状態で収容されたカードの全荷重が最下層のカードに掛からず最下層のカードに作用する荷重が低減するので、繰出手段により最下層のカードを順次一枚ずつ確実に繰り出すことができる。
【0009】
第1の態様において、可動部材のカード当接面は傾斜状、かつ、段差状に形成されていてもよく、また、支持手段のカード支持面は傾斜状、かつ、直線状に形成されていてもよい。更に、カード収容部が上下方向に延在する内壁部を有し、内壁部が支持手段及び規制手段によって上下方向で仕分けられた複数のカードからなる第1の積層部位と第2の積層部位とがずれた状態で積層されるように形成されていることが好ましい。このとき、内壁部の一部であって規制手段の上部に設けられ回動可能な可動壁部と、この可動壁部を支持手段乃至可動部材側に付勢する弾性部材と、を更に備えることが望ましい。また、カード収容部は、本体装置に対して着脱可能なカセット構造を有するようにしてもよい。
【0010】
駆動部による可動部材の昇降タイミングには種々の形態を採ることができる。例えば、繰出手段の近傍に設けられ、繰出手段により繰り出されたカードを検出する第1の検出手段と、第1の検出手段により検出されたカードの数をカウントするカウンタと、を備え、駆動部は、カウンタが所定枚数をカウントする毎に可動部材を昇降させたり、第1の積層部位は第2の積層部位の下方に位置付けられており、第1の積層部位に収容されたカードを検出する第2の検出手段を有し、駆動部は、第2の検出手段がカードを検出しないときに可動部材を昇降させたり、または、時間を計測するタイマを更に備え、駆動部は、タイマが所定時間を計測する毎に可動部材を昇降させるようにしてもよい。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の態様はカード供給方法であって、積層状態で収容された複数のカードの一部において、カードの一側を規制しつつ他側を昇降させる昇降工程と、前記昇降工程の後、前記積層状態で収容された複数のカードを上下方向に2つの部位に分離する分離工程と、前記分離工程によって分離された2つの部位のうち、下方側の部位に属し積層状態で収容された複数のカードの最下層のカードを順次一枚ずつ繰り出す繰出工程と、を含む。
【0012】
第2の態様において、繰出工程により繰り出されたカードの数をカウントする計数工程を更に含み、計数工程でカウントされた所定カウント毎に前記昇降工程が行われるようにしてもよい。また、昇降工程において、昇降されるカードが互いにずれた状態で位置決めされることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、支持手段と一体または別体に設けられカード収容部に収容されたカードの一部の一方側を持ち上げ可能に移動する可動部材を備えており、可動部材は駆動部により昇降されるので、カードは駆動部による可動部材の昇降動作で強制的に落下しカード相互の分離作用が促進されると共に、カード収容部の所定の高さ位置でカードの一方側を支持する支持手段とカードの他方側を規制する規制手段とによりカード収容部に積層状態で収容されたカードの全荷重が最下層のカードに掛からず最下層のカードに作用する荷重が低減するので、繰出手段により最下層のカードを順次一枚ずつ確実に繰り出すことができる、という効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を、カード状記録媒体(以下、単にカードという。)に文字や画像を印刷するプリンタ装置に適用した実施の形態について説明する。
【0015】
(構成)
<本体機構>
図1に示すように、本実施形態のプリンタ装置1は、樹脂製のケーシング7内に略水平に配設されカードを搬送するための第1搬送路p1と、第1搬送路p1と直交状に略垂直に配設された第2搬送路p2とを有している。
【0016】
第1搬送路p1上には、後述するようにカードを1枚ずつ第1搬送路p1に繰り出すカード供給機構10(図2参照)、カード供給機構10の下流側で第1搬送路p1に繰り出されたカードの両表面を清浄するクリーナ71、第1搬送路p1と第2搬送路p2との交点Xを回転中心としてカードを回転させるカード回転部72、カード回転部72の下流側でカード回転部72から受け渡されたカードをケーシング7の外部に排出するためのカード排出部79が配設されている。一方、第2搬送路p2上には、カードの少なくとも一方面に各種情報を印刷するカード印刷部90が配置されている。
【0017】
クリーナ71は、粘着性を有するゴム材料などのクリーニングローラと、クリーニングローラに圧接する圧接ローラとの2対のローラ対で構成されており、これらのローラ対は第1搬送路p1を挟んで対峙している。このため、上下に配設されたクリーニングローラが回転することで、第1搬送路p1に繰り出されたカードの両表面に付着した埃などの異物が除去される。
【0018】
カード回転部72は、カードを挟持可能に対をなす2つのピンチローラと、ピンチローラを回転可能に支持し第1搬送路p1と第2搬送路p2との交点Xを中心として回動する回動枠とを有しており、第1搬送路p1上を搬送されたカードを回転させて第2搬送路p2上に、あるいは、その逆にカードを送り込む機能と、カード印刷部90でカードの任意の一方面あるいは両面に印刷を施すためにカードを180°回転させる機能とを有する。
【0019】
カード回転部72のピンチローラは、回動枠が水平状態において第1搬送路p1を挟んで圧接し合い、垂直状態において第2搬送路p2を挟んで圧接し合う。一方のピンチローラは駆動ローラであり、他方のピンチローラは従動ローラである。回動枠の回動と、ピンチローラの回転とは、これらを同期して駆動する駆動系を動作させることで実行される。ピンチローラの間にカードを挟持した状態で回動枠を回動させると、これらのピンチローラも共回りしてカードを変位させてしまうので、回動枠を回動させる際には、ピンチローラを同じ角度分だけ逆回転させる。なお、本実施形態では、回動枠の回動時にピンチローラの共回りを防ぐために回動枠とピンチローラとを独立駆動させている。
【0020】
カード排出部79は、所期の印刷処理が完了しカード回転部72から受け渡されたカードをケーシング7の外部に排出する排出ローラ対78を有している。排出ローラ対78は、第1搬送路p1を挟んで圧接している。また、第1搬送路p1の延長線上のケーシング7の部分には開口が形成されており、開口はカード排出部79の一部を構成している。
【0021】
カード印刷部90は、熱転写プリンタの構成が採用されており、第2搬送路p2上の印刷位置Srに設けられたプラテンローラ77、プラテンローラ77に対して進退可能に設けられたサーマルヘッド80、サーマルヘッド80の印刷動作に同期して印刷位置Srに対してカードを、第2搬送路p2上を前後(図1の上下方向)に移動させる搬送ローラ対75、76を有している。なお、第2搬送路p2上でカード回転部72と搬送ローラ対75との間、及び、搬送ローラ対76の下側には、カードを第2搬送路p2に沿って略垂直に搬送するように案内するガイドローラ対73、74が配設されている。
【0022】
プラテンローラ77とサーマルヘッド80との間には、インク層Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)が面順次に繰り返されたインクリボンRが介在している。第2搬送路p2に沿って移動するカードに文字あるいは画像などの情報を熱転写記録する際には、インクリボンRは、リボン供給リール81から供給され、サーマルヘッド80の先端部に略全面を当接させながら巻取ローラ対83の回転と共に搬送され、インクリボンRを巻き取るリボン巻取リール82に巻取られる。このとき、カードの表面にインクリボンRを介在させてサーマルヘッド80を押圧しながらサーマルヘッド80の加熱素子を選択的に作動させることで、インクリボンRに塗着された熱転写インク成分がカードの表面に直接転写され、所期の文字、画像が印刷される。なお、インクリボンRの搬送経路には、複数のガイドコロが配設されている。
【0023】
巻取ローラ対83の駆動側ローラ軸には図示しないギヤが嵌着されており、このギヤは同軸上に不図示のクロック板を有するギヤに噛合している。不図示のクロック板の近傍には、インクリボンRの巻き取り量を管理するために、不図示のクロック板の回転を検出する図示を省略した一体型透過センサが配設されている。また、サーマルヘッド80の上流側(リボン供給リール81側)には、インクリボンRを挟んで対をなして対峙するように設けられた発光素子と受光素子とからなるセンサS3が配設されている。
【0024】
なお、プラテンローラ77に対するサーマルヘッド80の進退動作は、サーマルヘッド80を着脱可能に保持するホルダと、このホルダに固定された従動ローラと、該従動ローラに周接しながら回転する非円形のカムと、ホルダをカムに接圧させるバネとからなる図示を省略したヘッド進退駆動ユニットで実行される。
【0025】
また、クリーナ71とカード回転部72との間で第1搬送路p1の近傍、及び、ガイドローラ対73と搬送ローラ対75との間で第2搬送路p2の近傍には、カードの搬送方向先端及び後端を検出する一体透過型センサS1、S2が配設されている。
【0026】
プリンタ装置1は、後述するカード供給機構10の昇降駆動源となる正逆転可能な直流駆動モータ41(図4参照)と、5つの正逆転可能なステッピングモータとの6つのモータを有している。5つのステッピングモータの機能について詳述すると、カード回転部72の回動枠及び後述するキックローラ15はモータA(不図示)で駆動され、クリーナ71の圧接ローラ、カード回転部72のピンチローラ、及び、排出ローラ対78の一方(駆動ローラ)はモータB(不図示)で駆動される。また、搬送ローラ対75、76、及び、プラテンローラ77はモータM(不図示)で駆動される。更に、巻取ローラ対83及びリボン巻取リール82の中心部に配置されたスプール軸、並びに、リボン供給リール81の中心部に配置されたスプール軸はモータYで駆動され、上述したヘッド進退駆動ユニットを構成するカムはモータZ(不図示)で駆動される。なお、モータA、Bの動力は、図示しない駆動伝達系及び電磁クラッチを介して、上述した各駆動ローラに伝達される。
【0027】
更に、プリンタ装置1は、後述するカード供給機構の動作を含めプリンタ装置1全体の動作制御を行う制御部92と、商用交流電源から各機構部及び制御部等を駆動/作動可能な直流電源に変換する電源部91とを有している。
【0028】
制御部92は、プリンタ装置1の制御処理を行うCPUブロック(マイコン)を備えている。CPUブロックは、中央演算処理装置として高速クロックで作動するCPU、プリンタ装置1の制御動作が記憶されたROM、CPUのワークエリアとして働くRAM及びこれらを接続する内部バスで構成されている。
【0029】
CPUブロックには外部バスが接続されている。外部バスには、各種センサからの信号を制御するセンサ制御ユニット、各モータに駆動パルスを送出するモータドライバや電磁クラッチ等を制御するアクチュエータ制御ユニット、サーマルヘッド80の熱エネルギーを制御するサーマルヘッド制御ユニット、オペレータからの操作指示を受けるとともにプリンタ装置1の状態を表示するオペパネ部5(図3参照)を制御するための操作表示制御ユニット、パーソナルコンピュータ等の外部コンピュータとの通信を行うための外部入出力インターフェース、及び、カードに印刷すべき画情報等を格納する外部RAM等が接続されている。センサ制御ユニット、アクチュエータ制御ユニット、サーマルヘッド制御ユニット、操作表示制御ユニットは、それぞれ、センサS1〜S3及び後述するセンサ48、61、62を含むセンサ、モータ41及び5つのステッピングモータ、図示しない電磁クラッチ、サーマルヘッド80、及び、オペパネ部5に接続されている。
【0030】
<カード供給機構>
上述したように、プリンタ装置1は、カードを1枚ずつ第1搬送路p1に繰り出すカード供給機構10を有している。図2〜図8に示すように、カード供給機構10は、複数の(ブランク)カードCを上下方向に積層状態で収容するカードスタッカ11と、カードスタッカ11に収容されたカードCの、プリンタ装置1(のクリーナ71)への繰り出し方向後端側をカードスタッカ11内の所定の高さ位置で支持する支持部材12(図4参照)と、この支持部材12と略同一の高さ位置でカードスタッカ11内の対向する側に固設され、カードCのプリンタ装置1への繰り出し方向先端側を規制する突起状の規制部材13(図6参照)と、支持部材12に支持されたカードCに当接してこれら支持されたカードC及びその上方に積層された複数のカードCの一方側(カード繰り出し方向後端側)を持ち上げ可能に昇降移動する可動部材14(図5参照)と、この可動部材14をカードCの積層方向と同一方向の上下方向に昇降駆動する駆動部40(図4参照)と、プリンタ装置1側に回転可能に設けられカードスタッカ11内に積層された複数のカードCを順次1枚ずつ繰り出すキックローラ15と、カードスタッカ11内に複数のカードCを装填する際に回動軸Y(図2参照)を中心として図2の矢印A方向に回動してカードスタッカ11の内部を開放可能に開閉するための開閉蓋16とを備えている。
【0031】
図8に示すように、本実施形態のカードスタッカ11は、上下方向において250枚程度のカードCを積層状態で収容可能な大容量カードスタッカであり、第1搬送路p1に臨む位置には、カードC1枚のみの通過を許容する開口スロット35を有している。カードスタッカ11内に積層状態で収容されたカードCのうち最下位(最下層)に位置するカードCはキックローラ15に当接しており、キックローラ15を回転させることで開口スロット35を介して最下位カードのみが第1搬送路p1に送り出される。
【0032】
図2及び図6に示すように、カードスタッカ11の内部を開放するために開閉蓋16を回動させる際には、オペレータが、カードスタッカ11の一部(前面側と背面側の計2箇所)に設けられた操作部17を内側に押し込むことにより、隣接する係止部18が開閉蓋16の内部に形成された図示しない溝部との係止状態から解かれて、開閉蓋16が回動自在となる。
【0033】
図2に示すように、開閉蓋16は、プリンタ装置1の上方隅部に位置するように、回動軸Yを中心として開放可能にカードスタッカ11に装着されている。図4及び図5に示すように、開閉蓋16は内側にカードスタッカ11の内壁部の一部を構成するカード整列ガイド19を有している。
【0034】
図3に示すように、カードスタッカ11は、プリンタ装置1に対して着脱自在なカセット構造体として構成されている。カードスタッカ11は、底部(下部側面)に、プリンタ装置1に対して着脱するための装着部30を有している。着脱部30には案内溝21、22が形成されている。一方、プリンタ装置1には、開口部20に向けて突起2、3が突設されている。このため、カードスタッカ11を図3の矢印B方向に沿って差し込むことにより、突起2、3が案内溝21、22に沿って(摺接して)案内され、カードスタッカ11は所定位置に位置決めされてプリンタ装置1の上方隅部に装着される(図2の状態)。なお、案内溝21、22は、図3のプリンタ装置1側に突設された突起2、3の図示から明らかなように、装着部30の両側(前面側と背面側)に夫々一対ずつ形成されている。
【0035】
カードスタッカ11を装着する場合には、図3の矢印Bに示すように、まず斜め上方から差し込んだ後に、水平方向に押し込んで(移動させて)カードスタッカ11をプリンタ装置1に装着する。このため、カードスタッカ11の案内溝21、22は、それぞれ、略45°の角度を有する傾斜形状部分21a、22aと、傾斜形状部分21a、22aに夫々連通する水平形状部分21b、22bと、を有して形成されており、上述した突起2、3が摺接可能な径を有している。
【0036】
案内溝21の傾斜形状部分21a及び案内溝22の傾斜形状部分22aは、カードスタッカ11から繰り出されるカードCの繰り出し(プリンタ装置1への供給)方向下流側、換言すれば、プリンタ装置1へのカードスタッカ11の装着方向前方側に形成されている。一方、案内溝21の水平形状部分21b及び案内溝22の水平形状部分22bは、カードスタッカ11から繰り出されるカードCの繰り出し(プリンタ装置1への供給)方向上流側、換言すれば、プリンタ装置1へのカードスタッカ11の装着方向後方側(カードスタッカ11の離脱方向前方側)に形成されている。そして、案内溝22よりカードスタッカ11の開口スロット35に近い位置に形成された案内溝21の水平形状部分21bの双方(前面側と背面側)が、カードスタッカ11のプリンタ装置1への装着完了時にプリンタ装置1側に設けられたキックローラ15の頂部を横断するローラ幅方向延長線上の所定高さ位置で一致するように、これらに摺接するプリンタ装置1側の突起2がキックローラ15の頂部を横断するローラ幅方向延長線上の所定高さ位置に夫々(前面側と背面側)突設されている(図3参照)。
【0037】
図4に示すように、駆動部40は、可動部材14の昇降駆動源となるモータ41と、モータ41の回転軸42に嵌着されたウォームギヤ43と、ウォームギヤ43に噛合するハスバギヤ44と、ハスバギヤ44の回転中心となるシャフト45と、シャフト45に固設された偏心カム46等を有しており、モータ41からの駆動力が上記の駆動伝達機構を介して伝達され偏心カム46を図4に示す矢印D方向に回転させる。偏心カム46の周面には、可動部材14の下端部に固設された従動ローラ49が当接しており、モータ41の駆動力により偏心カム46が回転することで、従動ローラ49が偏心カム46周面に当接しながら回転するとともに偏心カム46の半径の長さに応じて可動部材14が昇降する。
【0038】
また、シャフト45には、シャフト45の回転に伴って回転する半月板47が固設されており、更に、半月板47を遮光板として作用させる透過型センサ48が隣設されている。これら半月板47及び透過型センサ48は、偏心カム46の回転によって昇降する可動部材14の位置(上昇位置または下降位置)を判断するための検出部として機能する。
【0039】
図4及び図5に示すように、支持部材12は、金属製部材で構成されており、カードCの自重により下方への移動を促すために、カードCを支持するカード支持面が傾斜状、かつ、直線状の形状を有しており、傾斜状カード支持面12aの下方に、傾斜状カード支持面12aに連続して若干内側に向かって傾斜した略垂直状のガイド部位(直線状カード支持面)12bが一体的に形成されている。ガイド部位12bは、カードスタッカ11内に積層されたカードCの一方端(カードCのプリンタ装置1への繰り出し方向後端)側をガイドする役割を担っている。
【0040】
可動部材14は、支持部材12の内側に配置されており、モータ41の駆動力で上昇した際にカードCに当接する樹脂製のカード当接面14aを有している。カード当接面14aは、カード当接面14aと接して持ち上げられるカードCが互いにずれた状態で確実に持ち上げられることを促すために、傾斜状、かつ、段差状の形状を有している。可動部材14は、上下方向に立設された2本のガイドシャフト23A、23Bにその一部が挿通されており、2本のガイドシャフト23A、23Bに沿って昇降する。これら2本のガイドシャフト23A、23Bには夫々バネ24A、24B(図5では片方のバネ24Aのみを示す)が巻装されており、可動部材14は常に下方の偏心カム46に向けて付勢されている。
【0041】
なお、カード整列ガイド19、並びに、支持部材12の傾斜状カード支持面12a及びガイド部位12bが上下方向に連なって、カードスタッカ11のカード繰り出し方向後端側の内壁部31を構成している。
【0042】
図6及び図7に示すように、カードスタッカ11のカード繰り出し方向後端側の内壁部31に対向する側には、リブ26を有する可動壁部27、突起状の規制部材13及びリブ25を有する壁面が上下方向に連なって形成されたカードスタッカ11のカード繰り出し方向先端側の内壁部32が配設されている。
【0043】
すなわち、支持部材12の傾斜状カード支持面12aと略同一の高さ位置で対向する側のカードスタッカ11のカード繰り出し方向先端側には、カードCのプリンタ装置1への繰り出し方向先端側を規制する突起状の規制部材13が、内壁部32の幅方向に亘って複数固設されている。これら複数の規制部材13は全て同一形状を有している。規制部材13は、突起の上側部分13aが略円弧状に形成されており、下側部分13がカード繰り出し方向先端側に向けて傾斜するように略直線状に形成されている。下側部分13bはリブ25と連接するように一体形成されており、壁面の一部を構成している。なお、規制部材13の下側部分13bの傾斜角度は、略同一高さ位置で対向配置された支持部材12のカード支持面12aと同等の角度を有している(図8も参照)。リブ25も同様に、対向して配置される支持部材12のガイド部位12bが有する僅かな傾斜角度に対応させて同等の角度を有しおり、略垂直状に立設されている。
【0044】
規制部材13の上方には、カードスタッカ11の内壁部32の一部を構成するように、規制部材13の数に対応した数を有する複数のリブ26を備えた可動壁部27が設けられている。この可動壁部27は、図7に示す支点Fを中心に外側に向けて回動可能に構成されている。可動壁部27は、その立設位置の最上位付近に設けられた2つのバネ28A、28Bの作用により、常時カードスタッカ11の内側、換言すれば、支持部材12乃至可能部材14側に向けて付勢されている。なお、可動壁部27の両側にはバネ28A、28Bの付勢力を係止するためのストッパ29A、29Bが設けられおり(図7では、装置正面側のストッパ29Aのみを図示)、これらのストッパ29A、29Bがカードスタッカ11の図示を省略する他の壁面の一部に設けられた凹部に突き当てられて、通常状態では可動壁部27を略垂直状に位置付けている。
【0045】
なお、本実施形態では、カードスタッカ11のカード繰り出し方向後端側の内壁部31とカード繰り出し方向先端側の内壁部32とが、カードCの積層方向(上下方向)において、支持部材12のカード支持面12a及び規制部材13を境にカード繰り出し方向前後にずれるように、内壁部31、32の壁面が形成されている。(図8乃至図10参照)
【0046】
図6に示すように、規制部材13を有する壁面の一部には、上下方向に形成された長穴33が同壁面に対して左右方向に2つ設けられており(図6ではこの内の1つを示す)、ネジ34でネジ止めされている。つまり、ネジ止めされた上記の壁面は長穴33により上下動可能に構成されており、規制部材13及びリブ25を有する当該壁面は可動壁部27と連接されているので、内壁部32は長穴33の長さ分だけ上下動可能となる。
【0047】
図8に示すように、内壁部32の下端には、上述した開口スロット35が位置付けられている。長穴33とネジ34には、カードCの厚さに対応して、内壁部32の下端と後述するコロ38との間で画定される隙間を調整する機能が付与されている。従って、カードスタッカ11のカード繰り出し方向先端側の内壁部32は、異なる厚さのカードに対応可能なように、内壁部32下端の高さ位置(開口スロット35の隙間)の調整を行ってカード1枚のみの通過を許容する隙間調整機構を備えている。
【0048】
図7に示すように、カードスタッカ11の内壁部32側の内部底面には、カードスタッカ11がプリンタ装置1に装着されたときに、キックローラ15の上方部分が進入可能な矩形状開口36が形成されている。すなわち、プリンタ装置1側のキックローラ15は、開口36からその一部(上方部分)が露出するように配置されている(図1、図3参照)。また、開口36を挟んで最下層(最下位)のカードの繰り出し(搬送)方向の上流側及び下流側には、キックローラ15によるカードの繰り出し搬送を補助するための樹脂製コロ37、38が設けられている。コロ38は開口スロット35の直下、かつ、キックローラ15のカード搬送方向下流側に位置付けられており、キックローラ15により繰り出されるカードCは、コロ37(コロ38も同様)の周面に沿って開口スロット35を通過していくことになる。更に、カードスタッカ11の内部底面には、カードスタッカ11内のカードCの有無を検出するレバーセンサ53の進入を許容するために、キックローラ15に隣接して細長開口39が形成されている。
【0049】
カードスタッカ11のプリンタ装置1に対向する外壁の一部(下方側)には、カードスタッカ11のプリンタ装置1への装着時にプリンタ装置1の内部に進入する先端が略円錐状の位置決め用突起51が突設されている(図7参照)。これに対応して、プリンタ装置1には位置決め用突起51が進入可能な位置決め穴52が形成されている(図3参照)。
【0050】
更に、カード供給機構10は、プリンタ装置1内に、キックローラ15の近傍で第1搬送路p1に沿った位置に配設され、カードスタッカ11から送り出されたカードCを検出する透過型センサ61を有している(図2参照)。透過型センサ61は、第1搬送路p1を挟んで下側に配置される発光素子61aと、上側に配置される受光素子61bとで構成されている。
【0051】
(動作)
次に、本実施形態のプリンタ装置1の動作について、制御部92のCPUブロックのCPU(以下、単に、CPUという。)を主体として説明する。オペレータがオペパネ部5の電源スイッチを押下すると、CPUは、ROMに格納されたプログラム及びプログラムデータをRAMに展開するとともに後述するカウンタを0とする初期設定処理を行った後、(A)プリンタ装置1及びカード供給機構10のイニシャル処理、(B)印刷処理の順に実行する。なお、以下の説明では、カードCに印刷すべき画情報を、外部入出力インターフェースを介して外部コンピュータから既に受信し外部RAMに格納しているものとする。
【0052】
<イニシャル処理>
CPUは、まず、プリンタ装置1のイニシャル処理を実行する。このイニシャル処理では、アクチュエータ制御ユニットを介してモータZを駆動してヘッド進退駆動ユニットを初期位置に位置付ける。
【0053】
プリンタ装置1のイニシャル処理に続いて、CPUは、カード供給機構10のイニシャル処理を実行する。カード供給機構10のイニシャル処理では、まず、センサ制御ユニットを介してレバーセンサ53がカードCを検出したか否かを判断する。否定判断のときは、オペパネ部5にカードスタッカ11内にカードCがない旨を報知し、オペパネ部5の所定ボタンが押下されるまで待機する。オペパネ部5の所定ボタンが押下されると、再び、レバーセンサ53がカードCを検出したかを判断し、否定判断のときは、オペパネ部5内にカードCがない旨を報知し、オペパネ部5の所定ボタンが押下されるまで待機することを繰り返す。オペレータは、オペパネ部5の表示によりカードスタッカ11内にカードCがないことを知ることができる。オペレータが開閉蓋16を下方側に開放した状態で複数のカードCをカードスタッカ11の内部に積層状態で装填(収容)して開閉蓋16を閉じることにより、カード整列ガイド19がカード束の後端を押圧してカード束を揃えることができる。
【0054】
オペレータがオペパネ部5の所定ボタンを押下すると、再度、CPUはレバーセンサ53がカードCを検出したかを判断し、否定判断のときは上記と同様にオペパネ部5にその旨を報知する。なお、このようなレバーセンサ53によるカードCの検出処理は、カードCを繰り出す度に、後述する(連続)印刷処理の際にも実行される。一方、肯定判断のとき(又は、イニシャル処理の最初にセンサ制御ユニットを介してレバーセンサ53がカードCを検出したとき)は、可動部材14の昇降動作を実行する。
【0055】
ところで、複数の(ブランク)カードCをカードスタッカ11内に収容した状態においては、相互のカードCはその平面部分を密着して水平状態にある。また、図8及び図11(A)に示すように、可動部材14の下端部分に設けられた従動ローラ49は、偏心カム46の最小半径L1に対応したカム面(カムの周面)と当接状態にあり、可動部材14のカード当接面14aは支持部材12のカード支持面12aより下方に位置付けられている。
【0056】
可動部材14の昇降動作では、アクチュエータ制御ユニットを介してモータ41を駆動し、偏心カム46がバネ24A、24Bの付勢力に抗しつつ従動ローラ49を押し上げるように図4に示す矢印D方向に回転させる。これにより、図9及び図11(B)に示すように、可動部材14は上昇し、カード当接面14aは支持部材12のカード支持面12a上にある複数のカードCの一方端部に当接して、それらの当接した複数のカードCとともに上方に積層された他の複数のカードCは所定高さ分持ち上げられる。
【0057】
この状態では、可動部材14の下端部分に設けられた従動ローラ49は、偏心カム46の最大半径L2に対応したカム面と当接関係を有している。カード当接面14aは傾斜状、かつ、段差状に形成されているので、持ち上げられた複数のカードCのうちカード当接面14aと接触状態にあるカードCは相互にずれた状態で持ち上げられる。図9に示すように、可動部材14(カード当接面14a)のカード持ち上げ時には、持ち上げられたカードの最下位に位置するカードの一側(カード繰り出し方向先端側)は、持ち上げられずに積層状態が維持される複数のカードC(60枚程度)の最上位に位置するカードC上で支持されるとともに、カード当接面14aに接している複数カードの一側は突起状の規制部材13によって規制された状態を維持する。また、可動部材14による複数のカードCの持ち上げ動作に伴って、可動壁部27はバネ28A、28Bによる付勢力に抗して支点Fを中心にカードスタッカ11の外側(図2及び図3を引用すれば、プリンタ装置1側)に向けて所定角度回動する。このため、持ち上げられた複数のカードCは傾斜状態に位置付けられる。
【0058】
続いて、CPUは、半月板47及び透過センサ48からなる検出部からの検出情報により可動部材14が上昇位置にあるか否かを判断する。すなわち、透過型センサ48の発光素子からの光が、半月板47で遮断された遮光状態から半月板47の切欠部を通過して透過型センサ48の受光素子で受光されて透過状態へと移行する際(図4に示す状態)に、可動部材14が下降位置に位置付けられているものと判断し、逆に、透過状態から遮光状態へと移行する際に可動部材14が上昇位置に位置付けられたと判断する。
【0059】
可動部材14が上昇位置にあると判断したときは、モータ41を駆動し、偏心カム46が図4に示す矢印D方向に更に回転させる。これにより、図11(C)に示すように、従動ローラ49は偏心カム46の最小半径L1に対応したカム面に位置付けられて図11(A)に示した位置(状態)に戻る。この偏心カム46の回転に伴って可動部材14が下降して、カード当接面14aが支持部材12のカード支持面12aより下方に位置付けられ、持ち上げられたカードCの一部は、ばらけた状態で支持部材12のカード支持面12a上で支持される(図10に示す状態)。この状態において、カードスタッカ11内に積層される複数のカードCは、上記したカード支持面12a上にばらけた状態で支持される複数のカードを挟んで上下に2つの積層部位に仕分けられ、下側に位置する第1の積層部位GR1と上側に位置する第2の積層部位GR2とに分離される。これら第1の積層部位GR1及び第2の積層部位GR2は、カードスタッカ11の内壁部31、32は上述したようにずれた状態で立設されているため、互いにずれた状態で分離される。CPUは、再度、半月板47及び透過センサ48からなる検出部からの検出情報により可動部材14が上昇位置にあるか否かを判断する。
【0060】
可動部材14が下降位置にあると判断したときは、モータ41の駆動を停止し(昇降動作を終了し)、一連のカード供給機構10のイニシャル処理を終了する。これにより、カードCは、可動部材14の上昇動作に伴ってカード当接面14aにより一旦持ち上げられ、その後、可動部材14の下降動作に伴って下降して支持部材12の傾斜状カード支持面12a上に一方端が位置付けられることで、密着状態から開放されて互いに分離された状態となる。つまり、可動部材14の上下方向の昇降動作により、カードC相互の捌きが促進されることになる。
【0061】
<印刷処理>
次に、CPUは、プリンタ装置1によるカードCへの印刷処理を実行するが、本例では、上述したようにカードCに印刷すべき画情報を既に受信しているので、カード供給機構10のイニシャル処理中に、受信した画情報がカラーのときには、Y、M、C毎の熱エネルギーに換算し、受信した画情報がモノクロのときにはモノクロでの熱エネルギーに換算する印刷前処理を実行している。このような印刷前処理は、印刷処理の実行前に実行される。印刷処理では、まず、オペパネ部5の印刷開始ボタンが押下されるまで(又は、外部コンピュータからの印刷命令があるまで)待機する。
【0062】
CPUは、オペパネ部5の印刷開始ボタンが押下されると(又は、外部コンピュータからの印刷命令があると)、電磁クラッチをオン状態としてモータAの回転駆動力をキックローラ15に伝達させると共に、他の及び別の電磁クラッチをオン状態としてモータBの回転駆動力をクリーナ71の圧接ローラ及びカード回転部72のピンチローラに伝達させる。これにより、キックローラ15は回転し、キックローラ15に当接している最下位のカードCのみが第1搬送路p1に沿ってカードスタッカ11から繰り出され、クリーナ71を経てカード回転部72まで搬送される。
【0063】
このとき、透過型センサ61(の受光素子61a)によりカードスタッカ11から繰り出されるカードCが検出される。CPUは、検出されたカードCの数をカウントする。すなわち、CPUはカードスタッカ11から繰り出されるカードCの数をカウントするカウンタとして機能する。CPUは、カウンタが所定数(例えば、5)か否かを判断し、肯定判断のときは、カード供給機構10側で、上述した可動部材14の昇降動作を実行して、すなわち、所定数のカードCが繰り出される毎に可動部材14の昇降動作を実行して、カードC相互の捌きを促進する。
【0064】
一方、否定判断のときは、センサS1がカードCの先端を検出した後、所定パルス分モータAを駆動したときに、電磁クラッチをオフ状態としてキックローラ15の回転を停止させる。また、センサS1がカードCの後端を検出すると、他の電磁クラッチをオフ状態として、クリーナ71の圧接ローラの回転を停止させる。
【0065】
第1搬送路p1に沿って移動するカードCの中心が第1、第2搬送路の交点Xに到達するまで送り込まれると、CPUは、カードCをカード回転部72のピンチローラで挟持した状態で、更に別の電磁クラッチをオン状態としてモータAからの回転駆動力を伝達させ、カード回転部72の回動枠を交点Xを中心として90°回転させる。
【0066】
CPUは、回動枠が90°回動してカードCが第2搬送路p2に平行一致するかを図示しないセンサで監視しており、回動枠が90°回動すると、第2搬送路p2上に配設された搬送ローラ対75、76及びプラテンローラ77を回転させるモータMを駆動させると共に、別の電磁クラッチをオン状態としてモータBの回転駆動力をカード回転部72のピンチローラに伝達させて、カードCをカード印刷部90に向けて送り出す。カードCのカード印刷部90への送り込みは、カードCの記録開始点(カードCの先端)が印刷位置Srに達したところで完了する。カードCの先端位置は、例えば、第2搬送路p2上を搬送されるカードCの後端を、センサS2で検出した後、その後のモータMのパルス数をカウントすることで把握することができる。
【0067】
次いで、モータYを駆動してインクリボンRをリボン巻取リール82で巻き取る方向に搬送し、センサS3でインクリボンRの所定部位に設けられた位置検出用マークが検出されると、所定距離(モータYによるインクリボンRの搬送を所定パルス分)インクリボンRを戻し方向に逆搬送してインク層Yの先端位置をサーマルヘッド80に対向するように位置付ける。次に、モータZを駆動させることでヘッド進退駆動ユニットのカムを回転させ、印刷待機状態にあるサーマルヘッド80をカードCに向けて移動させ印刷実行状態に移行させる。これにより、サーマルヘッド80はインクリボンRのインク層YをカードCの表面を押圧する。この状態でカードCをカード回転部72に向けて移動させながら、Yの熱エネルギー変換量に従って、サーマルヘッド制御ユニットを介してサーマルヘッド80の発熱素子を選択的に加熱動作させインクリボンRのインク層Yのインク成分をカードCの表面に熱昇華させて印刷する。なお、インク層Yによる印刷が完了すると、モータZを駆動させることでサーマルヘッド80を印刷実行状態から印刷待機状態に移行させて、次のインク層の印刷に備える。
【0068】
インク層Yによる印刷が完了すると、カードCの印刷開始点が印刷位置Srに達するまでモータMを逆転させると共に、モータYを駆動してインクリボンRを搬送してインク層Mの先端位置をサーマルヘッド80に対向するように位置付ける。次いで、モータZを駆動させることでサーマルヘッド80を印刷実行状態に移行させ、サーマルヘッド80でインク層MをカードCの表面に対して押圧させる。この状態でカードCをカード回転部72に向けて移動させながら、Mの熱エネルギー変換量に従って、サーマルヘッド80の発熱素子を選択的に加熱動作させインクリボンRのインク層Mのインク成分をカードCの表面に熱昇華させて印刷する。同様に、インク層Cのインク成分をカードCの表面に印刷する。これにより、カードCには画情報に従ってカラー印刷される。なお、カラー印刷に代えてインク層Bkによる単色印刷をするようにしてもよい。
【0069】
CPUは、カードCへの印刷が終了すると、モータMを逆転駆動させて、第2搬送路p2に沿って、カードCをカード回転部72側に搬送する。第2搬送路p2に沿って搬送中のカードCの先端をセンサS2が検出すると、別の電磁クラッチをオン状態としてモータBの回転駆動力をカード回転部72のピンチローラに伝達する。これにより、カードCは垂直状態のカード回転部72の一方のピンチローラに捕捉されてカード回転部72の中央に導かれる。カードCの中心が交点Xに到達するまで搬送されると、カードCをピンチローラ71で挟持した状態で、更に別の電磁クラッチをオン状態としてモータAからの回転(逆転)駆動力を伝達させてカード回転部72の回動枠を反時計回り方向に90°回転させる。次いで、CPUは、別の電磁クラッチ及び更に他の電磁クラッチをオン状態としてモータAの回転駆動力をカード回転部72のピンチローラ及び排出ローラ対78に伝達させる。これにより、カードCは、第1搬送路p1の終端のカード排出部79を越えて、ケーシング7の外部に排出され、カードC1枚分に対する印刷処理を終了する。なお、カード回転部72のピンチローラ及び排出ローラ対79は、モータBのパルス数が所定数となった時点で停止される。以下、同様に連続して上記印刷処理が繰り返えされる。
【0070】
(作用等)
次に、本実施形態のプリンタ装置1の作用等について説明する。
【0071】
本実施形態のプリンタ装置1では、イニシャル処理で、可動部材14の昇降動作を実行することで、カードスタッカ11内に上下方向に積層状態で収容されたカードCがカード当接面14aで持ち上げられた後、傾斜状カード支持面12a上に一方端が位置付けられることで、密着状態から開放されて互いに分離された状態となる。また、連続印刷処理に伴って、第1の積層部位GR1に属するカードCが順次減少し、カード支持面12a上にばらけた状態で支持された複数のカードC等の第1の積層部位GR1より上方に位置するカードが順次落下して第1の積層部位GR1に組み入れられるとともに、印刷処理でカウンタが所定数となる毎に、可動部材14の昇降動作が実行されるため、カードCは密着状態から開放されて互いに分離された状態となる。プリンタ装置1に用いられるカードCが、例えば、ポリ塩化ビニル等からなるプラスチックカードの場合には、カード同士が貼りつき易く、特に高温多湿な条件下においてはこの現象は顕著に現れ、カード相互の分離が行われない等によりカードの供給動作に支障を来たすことがあるる。このため、本実施形態のプリンタ装置1のカード供給機構10では、上述したように可動部材14を所定のタイミングで昇降させることにより、カードCの落下を促進させるとともにカードC相互の分離作用を向上させ、繰り出される最下層のカードCに作用する荷重を低減させてカードCのプリンタ装置1への供給を確保することができる。
【0072】
また、カードスタッカ11からプリンタ装置1内へカードCを供給する途上で電源供給遮断による動作停止や搬送不良等が生じる場合がある。カードCがカードスタッカ11とプリンタ装置1とに跨る状態でジャムが発生した際に、当該カードCを取り除くためにカセット構造のカードスタッカ11を外してジャム処理を行う必要がある。当該カードCはカードスタッカ11とプリンタ装置1とに跨った状態で滞留しているため、カードスタッカ11を真上方向に持ち上げることができず、強引に持ち上げれば当該カードCを傷付け破損させることになり、当該カードCを再使用することはできなくなる。場合によっては、カードスタッカ11乃至カードプリンタ装置1を破損させることにもなる。一方、カードスタッカ11を水平方向に引き抜くことも考えられるが、カードスタッカ11の下方であってプリンタ装置1側に設けられたキックローラ15が障害(邪魔)となり、カードスタッカ11をプリンタ装置1から離間する水平方向に引き抜くことは難しい。
【0073】
本実施形態のプリンタ装置1では、カードスタッカ11の装着部30に形成した案内溝21及び22を、略45°の角度を有する傾斜形状部分21a、22aとこれらにそれぞれ連通する水平形状部分21b、22bとで形成し、図3の矢印Bで示したように、カードスタッカ11を斜め上方から差し込み、次いで水平方向に移動させることでプリンタ装置1に装着させ、この手順を逆に、図3の矢印B方向とは逆方向にカードスタッカ11を移動させることでカードスタッカ11をプリンタ装置1から離脱させることができる。このため、カードCのジャム処理を行う場合でも、ジャムを起こした当該カードCを傷付けたり破損させたりすることなく再利用でき、更には、プリンタ装置1側に設けられた部材、例えば、キックローラ15との干渉を回避することも可能であり、カードスタッカ11乃至カードプリンタ装置1を破損させることもない。
【0074】
更に、本実施形態のプリンタ装置1では、コロ38が、開口スロット35の直下に位置付けられているとともに、カードスタッカ11の底部のカード繰り出し方向先端に設けられているため、カセット状のカードスタッカ11をプリンタ装置1に対して装着する際に(カードスタッカ11を斜め上方から差し込む際に)、プリンタ装置1側に設けられたキックローラ15の周面に沿ってコロ38が回転(摺動)してカードスタッカ11が案内されることによりカードスタッカ11の装着時の操作性を容易にしている。
【0075】
なお、本実施形態では、可動部材14の昇降動作のタイミングを、カードスタッカ11から搬送路p1に繰出されるカードCを透過型センサ61により検出して所定数に達した時点で行う例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図12に示すように、カードスタッカ11内の第1の積層部位GR1に収容されるカードCを検出する透過型センサ62を所定高さ位置に配置し、カードスタッカ11からのカード供給に伴って減少する第1の積層部位GR1内の所定の高さ位置でカードCがないことを検出したときに、モータ41を駆動して可動部材14を昇降させるようにしてもよい。
【0076】
或いは、制御部92の内部時間で時間を計測することにより、すなわち、制御部92をタイマとして機能させることにより、または、制御部92内にタイマIC等を設けることにより、所定時間(例えば、3分30秒)毎に、モータ41を駆動して可動部材14を昇降させるようにしてもよい。この場合に、カードCを連続印刷する印刷形態がY、M、C等のインクを用いて重ね印刷によるカラー印刷の場合と、Bkインクによる単色印刷の場合とではカードCの1枚にかかる処理時間が異なり、また、プリンタ装置1が印刷機能以外に、カードCに対して磁気記録乃至電気的記録を行うエンコーダ機能を備えて付加的記録を行う場合についても、カードCの1枚にかかる処理時間が異なるので、いずれの場合であっても対応できるように、タイマ設定時間(所定時間)をプリンタ装置1のオペパネ部5(又は、外部コンピュータ)により、任意に時間を変更可能に構成することが望ましい。
【0077】
また、本実施形態では、カードCを繰り出すキックローラ15や昇降動作の駆動源となるモータ41等をプリンタ装置1側に配設した例を示したが、カード供給機構10側に配置するようにしてもよい。このような形態では、本実施形態で例示したカード供給機構10を、カード供給装置として単体の周辺機器で構成することができる。この場合に、カード供給装置にはマイコン等で構成された制御部を別途設けるようにしてもよく、このような制御部は制御部92のスレーブ(奴隷)コンピュータとして機能させるようにしてもよい。更に、本実施形態では、可動部材14を支持部材12内に配置した例を示したが、本発明はこれに制限されず、支持部材12が、支持したカードC及びその上方に積層された複数のカードCの一方側(カード繰り出し方向後端側)を持ち上げ可能に昇降自在に構成されていてもよく、また、可動部材14と支持部材12とは一体または別体に構成されていてもよい。
【0078】
更に、本実施形態では、可動部材14を昇降させるために、直流駆動モータ41、偏心カム46、従動ローラ49等を例示したが、これらに代えてリニアモータを用い、リニアモータを駆動するパルスを制御することにより可動部材14を昇降させるように構成してもよい。
【0079】
更にまた、本実施形態では、カードCの片面に印刷する例を示したが、カードCの片面に印刷した後、カード回転部72にカードCを搬送して180°回動させ、カードCの他面に印刷を行って、両面印刷されたカードCをカード排出部79から排出するようにしてもよい。そして、本実施形態では、センサ61等を発光素子と受光素子とで構成される透過型センサとして例示したが、例えば、反射型センサを用いてもよいことは論を待たない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、カード相互の分離作用を向上させ、繰り出される最下層カードに作用する荷重を低減させて確実なカード供給を行うことが可能なカード供給機構およびその供給方法を提供するものであるため、カード供給機構乃至カード供給装置の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明が適用可能な実施形態のプリンタ装置の概略正断面図である。
【図2】カード供給機構のカードスタッカを実施形態のプリンタ装置に装着した状態を示す正面図である。
【図3】カードスタッカをプリンタ装置に装着する状態を示す外観斜視図である。
【図4】カード供給機構の駆動部を示す斜視図である。
【図5】カード供給機構のカード支持部材と可動部材とを示す駆動部の一部拡大図である。
【図6】カードスタッカの内壁部の一部を示す斜視図である。
【図7】カードスタッカの内壁部の一部の可動壁部を示す斜視図である。
【図8】カードスタッカに複数のカードを積層した際の初期状態を示す正面図である。
【図9】可動部材が上昇した状態を示す正面図である。
【図10】可動部材が下降してカード供給機構のイニシャル処理が終了した状態を示す正面図である。
【図11】可動部材の動作を説明するための部分拡大図であり、(A)は図8示す状態の部分拡大図、(B)は図9に示す状態の部分拡大図、(C)は図10に示す状態の部分拡大図である。
【図12】本発明が適用可能な他の実施形態のカード供給機構の正面図である。
【符号の説明】
【0082】
1 プリンタ装置
10 カード供給機構
11 カードスタッカ(カード収容部)
12 支持部材(支持手段)
13 規制部材(規制手段)
14 可動部材
15 キックローラ(繰出手段の一部)
27 可動壁部
28A、28B バネ(弾性部材)
31 内壁部
32 内壁部
41 直流駆動モータ(駆動部の一部)
61 透過型センサ(第1の検出手段)
62 透過型センサ(第2の検出手段)
92 制御部(駆動部の一部、カウンタ、タイマ)
C カード
G1 第1の積層部位
G2 第2の積層部位
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード発行装置やカード印刷装置等の本体装置にカードを供給するカード供給機構およびカード供給方法であって、特に、一度に多数枚のカード発行乃至カード印刷を行う本体装置に適合したカード供給機構およびカード供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クレジットカード、キャッシュカード、ライセンスカード、IDカード等のカード状記録媒体を作成する場合に、記録媒体に熱転写フィルムを介してサーマルヘッドで熱転写して所期の画像・文字などを印刷記録する熱転写方式のカード印刷装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、一度に大量枚数の印刷等のカード発行処理を行う必要性から、近年、多数枚のブランクカードを収容可能なカード供給機構からカード印刷装置にブランクカードを供給する技術も知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3330355号公報
【特許文献2】特開2001−151352号公報
【特許文献3】特開2001−331853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のカード供給機構は、積層状態で収容されたカードのうち、カード処理のために順次繰り出される最下層カードに作用する荷重を低減するために、所定の高さ位置に設けた突起にカードの一端側を支持させる一方で、カードの他端側を下方に積層された複数のカードの最上位カードに支持させることで、突起を境に上下の積層区分として分離させ、最下層カードの繰り出しに伴って突起に支持されていたカードが順次自然落下して下方の積層区分に収容される構成を採用しているが、この自然落下(自重落下)方式ではカードの落下精度にばらつきがあり確実性が劣るという問題があり、その後のカード供給に支障を来たすことがある。特に、各種カードに多用されているカードとして、ポリ塩化ビニルからなる所謂PVCカード等のプラスチックカードにおいては、装置が使用される環境(例えば、高温多湿な環境条件)によりカード相互が貼りついてしまい、自然落下方式ではカード分離を確実に行えない、という問題点がある。
【0006】
本発明は上記事案に鑑み、カード相互の分離作用を向上させ、繰り出される最下層カードに作用する荷重を低減させて確実なカード供給を行うことができるカード供給機構およびその供給方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様はカード供給機構であって、複数のカードを上下方向に積層状態で収容するカード収容部と、前記カード収容部の所定の高さ位置でカードの一方側を支持する支持手段と、前記カード収容部の前記支持手段と対向する側に固設され、カードの他方側を規制する規制手段と、前記支持手段と一体または別体に設けられ、前記カード収容部に収容されたカードの一部の一方側を持ち上げ可能に移動する可動部材と、前記可動部材を昇降可能に駆動する駆動部と、前記カード収容部に収容されたカードのうち、最下層のカードを順次一枚ずつ繰り出す繰出手段と、を備える。
【0008】
第1の態様では、支持手段と一体または別体に設けられカード収容部に収容されたカードの一部の一方側を持ち上げ可能に移動する可動部材を備えており、可動部材は駆動部により昇降されるので、カードは駆動部による可動部材の昇降動作で強制的に落下しカード相互の分離作用が促進されると共に、カード収容部の所定の高さ位置でカードの一方側を支持する支持手段とカードの他方側を規制する規制手段とによりカード収容部に積層状態で収容されたカードの全荷重が最下層のカードに掛からず最下層のカードに作用する荷重が低減するので、繰出手段により最下層のカードを順次一枚ずつ確実に繰り出すことができる。
【0009】
第1の態様において、可動部材のカード当接面は傾斜状、かつ、段差状に形成されていてもよく、また、支持手段のカード支持面は傾斜状、かつ、直線状に形成されていてもよい。更に、カード収容部が上下方向に延在する内壁部を有し、内壁部が支持手段及び規制手段によって上下方向で仕分けられた複数のカードからなる第1の積層部位と第2の積層部位とがずれた状態で積層されるように形成されていることが好ましい。このとき、内壁部の一部であって規制手段の上部に設けられ回動可能な可動壁部と、この可動壁部を支持手段乃至可動部材側に付勢する弾性部材と、を更に備えることが望ましい。また、カード収容部は、本体装置に対して着脱可能なカセット構造を有するようにしてもよい。
【0010】
駆動部による可動部材の昇降タイミングには種々の形態を採ることができる。例えば、繰出手段の近傍に設けられ、繰出手段により繰り出されたカードを検出する第1の検出手段と、第1の検出手段により検出されたカードの数をカウントするカウンタと、を備え、駆動部は、カウンタが所定枚数をカウントする毎に可動部材を昇降させたり、第1の積層部位は第2の積層部位の下方に位置付けられており、第1の積層部位に収容されたカードを検出する第2の検出手段を有し、駆動部は、第2の検出手段がカードを検出しないときに可動部材を昇降させたり、または、時間を計測するタイマを更に備え、駆動部は、タイマが所定時間を計測する毎に可動部材を昇降させるようにしてもよい。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の態様はカード供給方法であって、積層状態で収容された複数のカードの一部において、カードの一側を規制しつつ他側を昇降させる昇降工程と、前記昇降工程の後、前記積層状態で収容された複数のカードを上下方向に2つの部位に分離する分離工程と、前記分離工程によって分離された2つの部位のうち、下方側の部位に属し積層状態で収容された複数のカードの最下層のカードを順次一枚ずつ繰り出す繰出工程と、を含む。
【0012】
第2の態様において、繰出工程により繰り出されたカードの数をカウントする計数工程を更に含み、計数工程でカウントされた所定カウント毎に前記昇降工程が行われるようにしてもよい。また、昇降工程において、昇降されるカードが互いにずれた状態で位置決めされることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、支持手段と一体または別体に設けられカード収容部に収容されたカードの一部の一方側を持ち上げ可能に移動する可動部材を備えており、可動部材は駆動部により昇降されるので、カードは駆動部による可動部材の昇降動作で強制的に落下しカード相互の分離作用が促進されると共に、カード収容部の所定の高さ位置でカードの一方側を支持する支持手段とカードの他方側を規制する規制手段とによりカード収容部に積層状態で収容されたカードの全荷重が最下層のカードに掛からず最下層のカードに作用する荷重が低減するので、繰出手段により最下層のカードを順次一枚ずつ確実に繰り出すことができる、という効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を、カード状記録媒体(以下、単にカードという。)に文字や画像を印刷するプリンタ装置に適用した実施の形態について説明する。
【0015】
(構成)
<本体機構>
図1に示すように、本実施形態のプリンタ装置1は、樹脂製のケーシング7内に略水平に配設されカードを搬送するための第1搬送路p1と、第1搬送路p1と直交状に略垂直に配設された第2搬送路p2とを有している。
【0016】
第1搬送路p1上には、後述するようにカードを1枚ずつ第1搬送路p1に繰り出すカード供給機構10(図2参照)、カード供給機構10の下流側で第1搬送路p1に繰り出されたカードの両表面を清浄するクリーナ71、第1搬送路p1と第2搬送路p2との交点Xを回転中心としてカードを回転させるカード回転部72、カード回転部72の下流側でカード回転部72から受け渡されたカードをケーシング7の外部に排出するためのカード排出部79が配設されている。一方、第2搬送路p2上には、カードの少なくとも一方面に各種情報を印刷するカード印刷部90が配置されている。
【0017】
クリーナ71は、粘着性を有するゴム材料などのクリーニングローラと、クリーニングローラに圧接する圧接ローラとの2対のローラ対で構成されており、これらのローラ対は第1搬送路p1を挟んで対峙している。このため、上下に配設されたクリーニングローラが回転することで、第1搬送路p1に繰り出されたカードの両表面に付着した埃などの異物が除去される。
【0018】
カード回転部72は、カードを挟持可能に対をなす2つのピンチローラと、ピンチローラを回転可能に支持し第1搬送路p1と第2搬送路p2との交点Xを中心として回動する回動枠とを有しており、第1搬送路p1上を搬送されたカードを回転させて第2搬送路p2上に、あるいは、その逆にカードを送り込む機能と、カード印刷部90でカードの任意の一方面あるいは両面に印刷を施すためにカードを180°回転させる機能とを有する。
【0019】
カード回転部72のピンチローラは、回動枠が水平状態において第1搬送路p1を挟んで圧接し合い、垂直状態において第2搬送路p2を挟んで圧接し合う。一方のピンチローラは駆動ローラであり、他方のピンチローラは従動ローラである。回動枠の回動と、ピンチローラの回転とは、これらを同期して駆動する駆動系を動作させることで実行される。ピンチローラの間にカードを挟持した状態で回動枠を回動させると、これらのピンチローラも共回りしてカードを変位させてしまうので、回動枠を回動させる際には、ピンチローラを同じ角度分だけ逆回転させる。なお、本実施形態では、回動枠の回動時にピンチローラの共回りを防ぐために回動枠とピンチローラとを独立駆動させている。
【0020】
カード排出部79は、所期の印刷処理が完了しカード回転部72から受け渡されたカードをケーシング7の外部に排出する排出ローラ対78を有している。排出ローラ対78は、第1搬送路p1を挟んで圧接している。また、第1搬送路p1の延長線上のケーシング7の部分には開口が形成されており、開口はカード排出部79の一部を構成している。
【0021】
カード印刷部90は、熱転写プリンタの構成が採用されており、第2搬送路p2上の印刷位置Srに設けられたプラテンローラ77、プラテンローラ77に対して進退可能に設けられたサーマルヘッド80、サーマルヘッド80の印刷動作に同期して印刷位置Srに対してカードを、第2搬送路p2上を前後(図1の上下方向)に移動させる搬送ローラ対75、76を有している。なお、第2搬送路p2上でカード回転部72と搬送ローラ対75との間、及び、搬送ローラ対76の下側には、カードを第2搬送路p2に沿って略垂直に搬送するように案内するガイドローラ対73、74が配設されている。
【0022】
プラテンローラ77とサーマルヘッド80との間には、インク層Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)が面順次に繰り返されたインクリボンRが介在している。第2搬送路p2に沿って移動するカードに文字あるいは画像などの情報を熱転写記録する際には、インクリボンRは、リボン供給リール81から供給され、サーマルヘッド80の先端部に略全面を当接させながら巻取ローラ対83の回転と共に搬送され、インクリボンRを巻き取るリボン巻取リール82に巻取られる。このとき、カードの表面にインクリボンRを介在させてサーマルヘッド80を押圧しながらサーマルヘッド80の加熱素子を選択的に作動させることで、インクリボンRに塗着された熱転写インク成分がカードの表面に直接転写され、所期の文字、画像が印刷される。なお、インクリボンRの搬送経路には、複数のガイドコロが配設されている。
【0023】
巻取ローラ対83の駆動側ローラ軸には図示しないギヤが嵌着されており、このギヤは同軸上に不図示のクロック板を有するギヤに噛合している。不図示のクロック板の近傍には、インクリボンRの巻き取り量を管理するために、不図示のクロック板の回転を検出する図示を省略した一体型透過センサが配設されている。また、サーマルヘッド80の上流側(リボン供給リール81側)には、インクリボンRを挟んで対をなして対峙するように設けられた発光素子と受光素子とからなるセンサS3が配設されている。
【0024】
なお、プラテンローラ77に対するサーマルヘッド80の進退動作は、サーマルヘッド80を着脱可能に保持するホルダと、このホルダに固定された従動ローラと、該従動ローラに周接しながら回転する非円形のカムと、ホルダをカムに接圧させるバネとからなる図示を省略したヘッド進退駆動ユニットで実行される。
【0025】
また、クリーナ71とカード回転部72との間で第1搬送路p1の近傍、及び、ガイドローラ対73と搬送ローラ対75との間で第2搬送路p2の近傍には、カードの搬送方向先端及び後端を検出する一体透過型センサS1、S2が配設されている。
【0026】
プリンタ装置1は、後述するカード供給機構10の昇降駆動源となる正逆転可能な直流駆動モータ41(図4参照)と、5つの正逆転可能なステッピングモータとの6つのモータを有している。5つのステッピングモータの機能について詳述すると、カード回転部72の回動枠及び後述するキックローラ15はモータA(不図示)で駆動され、クリーナ71の圧接ローラ、カード回転部72のピンチローラ、及び、排出ローラ対78の一方(駆動ローラ)はモータB(不図示)で駆動される。また、搬送ローラ対75、76、及び、プラテンローラ77はモータM(不図示)で駆動される。更に、巻取ローラ対83及びリボン巻取リール82の中心部に配置されたスプール軸、並びに、リボン供給リール81の中心部に配置されたスプール軸はモータYで駆動され、上述したヘッド進退駆動ユニットを構成するカムはモータZ(不図示)で駆動される。なお、モータA、Bの動力は、図示しない駆動伝達系及び電磁クラッチを介して、上述した各駆動ローラに伝達される。
【0027】
更に、プリンタ装置1は、後述するカード供給機構の動作を含めプリンタ装置1全体の動作制御を行う制御部92と、商用交流電源から各機構部及び制御部等を駆動/作動可能な直流電源に変換する電源部91とを有している。
【0028】
制御部92は、プリンタ装置1の制御処理を行うCPUブロック(マイコン)を備えている。CPUブロックは、中央演算処理装置として高速クロックで作動するCPU、プリンタ装置1の制御動作が記憶されたROM、CPUのワークエリアとして働くRAM及びこれらを接続する内部バスで構成されている。
【0029】
CPUブロックには外部バスが接続されている。外部バスには、各種センサからの信号を制御するセンサ制御ユニット、各モータに駆動パルスを送出するモータドライバや電磁クラッチ等を制御するアクチュエータ制御ユニット、サーマルヘッド80の熱エネルギーを制御するサーマルヘッド制御ユニット、オペレータからの操作指示を受けるとともにプリンタ装置1の状態を表示するオペパネ部5(図3参照)を制御するための操作表示制御ユニット、パーソナルコンピュータ等の外部コンピュータとの通信を行うための外部入出力インターフェース、及び、カードに印刷すべき画情報等を格納する外部RAM等が接続されている。センサ制御ユニット、アクチュエータ制御ユニット、サーマルヘッド制御ユニット、操作表示制御ユニットは、それぞれ、センサS1〜S3及び後述するセンサ48、61、62を含むセンサ、モータ41及び5つのステッピングモータ、図示しない電磁クラッチ、サーマルヘッド80、及び、オペパネ部5に接続されている。
【0030】
<カード供給機構>
上述したように、プリンタ装置1は、カードを1枚ずつ第1搬送路p1に繰り出すカード供給機構10を有している。図2〜図8に示すように、カード供給機構10は、複数の(ブランク)カードCを上下方向に積層状態で収容するカードスタッカ11と、カードスタッカ11に収容されたカードCの、プリンタ装置1(のクリーナ71)への繰り出し方向後端側をカードスタッカ11内の所定の高さ位置で支持する支持部材12(図4参照)と、この支持部材12と略同一の高さ位置でカードスタッカ11内の対向する側に固設され、カードCのプリンタ装置1への繰り出し方向先端側を規制する突起状の規制部材13(図6参照)と、支持部材12に支持されたカードCに当接してこれら支持されたカードC及びその上方に積層された複数のカードCの一方側(カード繰り出し方向後端側)を持ち上げ可能に昇降移動する可動部材14(図5参照)と、この可動部材14をカードCの積層方向と同一方向の上下方向に昇降駆動する駆動部40(図4参照)と、プリンタ装置1側に回転可能に設けられカードスタッカ11内に積層された複数のカードCを順次1枚ずつ繰り出すキックローラ15と、カードスタッカ11内に複数のカードCを装填する際に回動軸Y(図2参照)を中心として図2の矢印A方向に回動してカードスタッカ11の内部を開放可能に開閉するための開閉蓋16とを備えている。
【0031】
図8に示すように、本実施形態のカードスタッカ11は、上下方向において250枚程度のカードCを積層状態で収容可能な大容量カードスタッカであり、第1搬送路p1に臨む位置には、カードC1枚のみの通過を許容する開口スロット35を有している。カードスタッカ11内に積層状態で収容されたカードCのうち最下位(最下層)に位置するカードCはキックローラ15に当接しており、キックローラ15を回転させることで開口スロット35を介して最下位カードのみが第1搬送路p1に送り出される。
【0032】
図2及び図6に示すように、カードスタッカ11の内部を開放するために開閉蓋16を回動させる際には、オペレータが、カードスタッカ11の一部(前面側と背面側の計2箇所)に設けられた操作部17を内側に押し込むことにより、隣接する係止部18が開閉蓋16の内部に形成された図示しない溝部との係止状態から解かれて、開閉蓋16が回動自在となる。
【0033】
図2に示すように、開閉蓋16は、プリンタ装置1の上方隅部に位置するように、回動軸Yを中心として開放可能にカードスタッカ11に装着されている。図4及び図5に示すように、開閉蓋16は内側にカードスタッカ11の内壁部の一部を構成するカード整列ガイド19を有している。
【0034】
図3に示すように、カードスタッカ11は、プリンタ装置1に対して着脱自在なカセット構造体として構成されている。カードスタッカ11は、底部(下部側面)に、プリンタ装置1に対して着脱するための装着部30を有している。着脱部30には案内溝21、22が形成されている。一方、プリンタ装置1には、開口部20に向けて突起2、3が突設されている。このため、カードスタッカ11を図3の矢印B方向に沿って差し込むことにより、突起2、3が案内溝21、22に沿って(摺接して)案内され、カードスタッカ11は所定位置に位置決めされてプリンタ装置1の上方隅部に装着される(図2の状態)。なお、案内溝21、22は、図3のプリンタ装置1側に突設された突起2、3の図示から明らかなように、装着部30の両側(前面側と背面側)に夫々一対ずつ形成されている。
【0035】
カードスタッカ11を装着する場合には、図3の矢印Bに示すように、まず斜め上方から差し込んだ後に、水平方向に押し込んで(移動させて)カードスタッカ11をプリンタ装置1に装着する。このため、カードスタッカ11の案内溝21、22は、それぞれ、略45°の角度を有する傾斜形状部分21a、22aと、傾斜形状部分21a、22aに夫々連通する水平形状部分21b、22bと、を有して形成されており、上述した突起2、3が摺接可能な径を有している。
【0036】
案内溝21の傾斜形状部分21a及び案内溝22の傾斜形状部分22aは、カードスタッカ11から繰り出されるカードCの繰り出し(プリンタ装置1への供給)方向下流側、換言すれば、プリンタ装置1へのカードスタッカ11の装着方向前方側に形成されている。一方、案内溝21の水平形状部分21b及び案内溝22の水平形状部分22bは、カードスタッカ11から繰り出されるカードCの繰り出し(プリンタ装置1への供給)方向上流側、換言すれば、プリンタ装置1へのカードスタッカ11の装着方向後方側(カードスタッカ11の離脱方向前方側)に形成されている。そして、案内溝22よりカードスタッカ11の開口スロット35に近い位置に形成された案内溝21の水平形状部分21bの双方(前面側と背面側)が、カードスタッカ11のプリンタ装置1への装着完了時にプリンタ装置1側に設けられたキックローラ15の頂部を横断するローラ幅方向延長線上の所定高さ位置で一致するように、これらに摺接するプリンタ装置1側の突起2がキックローラ15の頂部を横断するローラ幅方向延長線上の所定高さ位置に夫々(前面側と背面側)突設されている(図3参照)。
【0037】
図4に示すように、駆動部40は、可動部材14の昇降駆動源となるモータ41と、モータ41の回転軸42に嵌着されたウォームギヤ43と、ウォームギヤ43に噛合するハスバギヤ44と、ハスバギヤ44の回転中心となるシャフト45と、シャフト45に固設された偏心カム46等を有しており、モータ41からの駆動力が上記の駆動伝達機構を介して伝達され偏心カム46を図4に示す矢印D方向に回転させる。偏心カム46の周面には、可動部材14の下端部に固設された従動ローラ49が当接しており、モータ41の駆動力により偏心カム46が回転することで、従動ローラ49が偏心カム46周面に当接しながら回転するとともに偏心カム46の半径の長さに応じて可動部材14が昇降する。
【0038】
また、シャフト45には、シャフト45の回転に伴って回転する半月板47が固設されており、更に、半月板47を遮光板として作用させる透過型センサ48が隣設されている。これら半月板47及び透過型センサ48は、偏心カム46の回転によって昇降する可動部材14の位置(上昇位置または下降位置)を判断するための検出部として機能する。
【0039】
図4及び図5に示すように、支持部材12は、金属製部材で構成されており、カードCの自重により下方への移動を促すために、カードCを支持するカード支持面が傾斜状、かつ、直線状の形状を有しており、傾斜状カード支持面12aの下方に、傾斜状カード支持面12aに連続して若干内側に向かって傾斜した略垂直状のガイド部位(直線状カード支持面)12bが一体的に形成されている。ガイド部位12bは、カードスタッカ11内に積層されたカードCの一方端(カードCのプリンタ装置1への繰り出し方向後端)側をガイドする役割を担っている。
【0040】
可動部材14は、支持部材12の内側に配置されており、モータ41の駆動力で上昇した際にカードCに当接する樹脂製のカード当接面14aを有している。カード当接面14aは、カード当接面14aと接して持ち上げられるカードCが互いにずれた状態で確実に持ち上げられることを促すために、傾斜状、かつ、段差状の形状を有している。可動部材14は、上下方向に立設された2本のガイドシャフト23A、23Bにその一部が挿通されており、2本のガイドシャフト23A、23Bに沿って昇降する。これら2本のガイドシャフト23A、23Bには夫々バネ24A、24B(図5では片方のバネ24Aのみを示す)が巻装されており、可動部材14は常に下方の偏心カム46に向けて付勢されている。
【0041】
なお、カード整列ガイド19、並びに、支持部材12の傾斜状カード支持面12a及びガイド部位12bが上下方向に連なって、カードスタッカ11のカード繰り出し方向後端側の内壁部31を構成している。
【0042】
図6及び図7に示すように、カードスタッカ11のカード繰り出し方向後端側の内壁部31に対向する側には、リブ26を有する可動壁部27、突起状の規制部材13及びリブ25を有する壁面が上下方向に連なって形成されたカードスタッカ11のカード繰り出し方向先端側の内壁部32が配設されている。
【0043】
すなわち、支持部材12の傾斜状カード支持面12aと略同一の高さ位置で対向する側のカードスタッカ11のカード繰り出し方向先端側には、カードCのプリンタ装置1への繰り出し方向先端側を規制する突起状の規制部材13が、内壁部32の幅方向に亘って複数固設されている。これら複数の規制部材13は全て同一形状を有している。規制部材13は、突起の上側部分13aが略円弧状に形成されており、下側部分13がカード繰り出し方向先端側に向けて傾斜するように略直線状に形成されている。下側部分13bはリブ25と連接するように一体形成されており、壁面の一部を構成している。なお、規制部材13の下側部分13bの傾斜角度は、略同一高さ位置で対向配置された支持部材12のカード支持面12aと同等の角度を有している(図8も参照)。リブ25も同様に、対向して配置される支持部材12のガイド部位12bが有する僅かな傾斜角度に対応させて同等の角度を有しおり、略垂直状に立設されている。
【0044】
規制部材13の上方には、カードスタッカ11の内壁部32の一部を構成するように、規制部材13の数に対応した数を有する複数のリブ26を備えた可動壁部27が設けられている。この可動壁部27は、図7に示す支点Fを中心に外側に向けて回動可能に構成されている。可動壁部27は、その立設位置の最上位付近に設けられた2つのバネ28A、28Bの作用により、常時カードスタッカ11の内側、換言すれば、支持部材12乃至可能部材14側に向けて付勢されている。なお、可動壁部27の両側にはバネ28A、28Bの付勢力を係止するためのストッパ29A、29Bが設けられおり(図7では、装置正面側のストッパ29Aのみを図示)、これらのストッパ29A、29Bがカードスタッカ11の図示を省略する他の壁面の一部に設けられた凹部に突き当てられて、通常状態では可動壁部27を略垂直状に位置付けている。
【0045】
なお、本実施形態では、カードスタッカ11のカード繰り出し方向後端側の内壁部31とカード繰り出し方向先端側の内壁部32とが、カードCの積層方向(上下方向)において、支持部材12のカード支持面12a及び規制部材13を境にカード繰り出し方向前後にずれるように、内壁部31、32の壁面が形成されている。(図8乃至図10参照)
【0046】
図6に示すように、規制部材13を有する壁面の一部には、上下方向に形成された長穴33が同壁面に対して左右方向に2つ設けられており(図6ではこの内の1つを示す)、ネジ34でネジ止めされている。つまり、ネジ止めされた上記の壁面は長穴33により上下動可能に構成されており、規制部材13及びリブ25を有する当該壁面は可動壁部27と連接されているので、内壁部32は長穴33の長さ分だけ上下動可能となる。
【0047】
図8に示すように、内壁部32の下端には、上述した開口スロット35が位置付けられている。長穴33とネジ34には、カードCの厚さに対応して、内壁部32の下端と後述するコロ38との間で画定される隙間を調整する機能が付与されている。従って、カードスタッカ11のカード繰り出し方向先端側の内壁部32は、異なる厚さのカードに対応可能なように、内壁部32下端の高さ位置(開口スロット35の隙間)の調整を行ってカード1枚のみの通過を許容する隙間調整機構を備えている。
【0048】
図7に示すように、カードスタッカ11の内壁部32側の内部底面には、カードスタッカ11がプリンタ装置1に装着されたときに、キックローラ15の上方部分が進入可能な矩形状開口36が形成されている。すなわち、プリンタ装置1側のキックローラ15は、開口36からその一部(上方部分)が露出するように配置されている(図1、図3参照)。また、開口36を挟んで最下層(最下位)のカードの繰り出し(搬送)方向の上流側及び下流側には、キックローラ15によるカードの繰り出し搬送を補助するための樹脂製コロ37、38が設けられている。コロ38は開口スロット35の直下、かつ、キックローラ15のカード搬送方向下流側に位置付けられており、キックローラ15により繰り出されるカードCは、コロ37(コロ38も同様)の周面に沿って開口スロット35を通過していくことになる。更に、カードスタッカ11の内部底面には、カードスタッカ11内のカードCの有無を検出するレバーセンサ53の進入を許容するために、キックローラ15に隣接して細長開口39が形成されている。
【0049】
カードスタッカ11のプリンタ装置1に対向する外壁の一部(下方側)には、カードスタッカ11のプリンタ装置1への装着時にプリンタ装置1の内部に進入する先端が略円錐状の位置決め用突起51が突設されている(図7参照)。これに対応して、プリンタ装置1には位置決め用突起51が進入可能な位置決め穴52が形成されている(図3参照)。
【0050】
更に、カード供給機構10は、プリンタ装置1内に、キックローラ15の近傍で第1搬送路p1に沿った位置に配設され、カードスタッカ11から送り出されたカードCを検出する透過型センサ61を有している(図2参照)。透過型センサ61は、第1搬送路p1を挟んで下側に配置される発光素子61aと、上側に配置される受光素子61bとで構成されている。
【0051】
(動作)
次に、本実施形態のプリンタ装置1の動作について、制御部92のCPUブロックのCPU(以下、単に、CPUという。)を主体として説明する。オペレータがオペパネ部5の電源スイッチを押下すると、CPUは、ROMに格納されたプログラム及びプログラムデータをRAMに展開するとともに後述するカウンタを0とする初期設定処理を行った後、(A)プリンタ装置1及びカード供給機構10のイニシャル処理、(B)印刷処理の順に実行する。なお、以下の説明では、カードCに印刷すべき画情報を、外部入出力インターフェースを介して外部コンピュータから既に受信し外部RAMに格納しているものとする。
【0052】
<イニシャル処理>
CPUは、まず、プリンタ装置1のイニシャル処理を実行する。このイニシャル処理では、アクチュエータ制御ユニットを介してモータZを駆動してヘッド進退駆動ユニットを初期位置に位置付ける。
【0053】
プリンタ装置1のイニシャル処理に続いて、CPUは、カード供給機構10のイニシャル処理を実行する。カード供給機構10のイニシャル処理では、まず、センサ制御ユニットを介してレバーセンサ53がカードCを検出したか否かを判断する。否定判断のときは、オペパネ部5にカードスタッカ11内にカードCがない旨を報知し、オペパネ部5の所定ボタンが押下されるまで待機する。オペパネ部5の所定ボタンが押下されると、再び、レバーセンサ53がカードCを検出したかを判断し、否定判断のときは、オペパネ部5内にカードCがない旨を報知し、オペパネ部5の所定ボタンが押下されるまで待機することを繰り返す。オペレータは、オペパネ部5の表示によりカードスタッカ11内にカードCがないことを知ることができる。オペレータが開閉蓋16を下方側に開放した状態で複数のカードCをカードスタッカ11の内部に積層状態で装填(収容)して開閉蓋16を閉じることにより、カード整列ガイド19がカード束の後端を押圧してカード束を揃えることができる。
【0054】
オペレータがオペパネ部5の所定ボタンを押下すると、再度、CPUはレバーセンサ53がカードCを検出したかを判断し、否定判断のときは上記と同様にオペパネ部5にその旨を報知する。なお、このようなレバーセンサ53によるカードCの検出処理は、カードCを繰り出す度に、後述する(連続)印刷処理の際にも実行される。一方、肯定判断のとき(又は、イニシャル処理の最初にセンサ制御ユニットを介してレバーセンサ53がカードCを検出したとき)は、可動部材14の昇降動作を実行する。
【0055】
ところで、複数の(ブランク)カードCをカードスタッカ11内に収容した状態においては、相互のカードCはその平面部分を密着して水平状態にある。また、図8及び図11(A)に示すように、可動部材14の下端部分に設けられた従動ローラ49は、偏心カム46の最小半径L1に対応したカム面(カムの周面)と当接状態にあり、可動部材14のカード当接面14aは支持部材12のカード支持面12aより下方に位置付けられている。
【0056】
可動部材14の昇降動作では、アクチュエータ制御ユニットを介してモータ41を駆動し、偏心カム46がバネ24A、24Bの付勢力に抗しつつ従動ローラ49を押し上げるように図4に示す矢印D方向に回転させる。これにより、図9及び図11(B)に示すように、可動部材14は上昇し、カード当接面14aは支持部材12のカード支持面12a上にある複数のカードCの一方端部に当接して、それらの当接した複数のカードCとともに上方に積層された他の複数のカードCは所定高さ分持ち上げられる。
【0057】
この状態では、可動部材14の下端部分に設けられた従動ローラ49は、偏心カム46の最大半径L2に対応したカム面と当接関係を有している。カード当接面14aは傾斜状、かつ、段差状に形成されているので、持ち上げられた複数のカードCのうちカード当接面14aと接触状態にあるカードCは相互にずれた状態で持ち上げられる。図9に示すように、可動部材14(カード当接面14a)のカード持ち上げ時には、持ち上げられたカードの最下位に位置するカードの一側(カード繰り出し方向先端側)は、持ち上げられずに積層状態が維持される複数のカードC(60枚程度)の最上位に位置するカードC上で支持されるとともに、カード当接面14aに接している複数カードの一側は突起状の規制部材13によって規制された状態を維持する。また、可動部材14による複数のカードCの持ち上げ動作に伴って、可動壁部27はバネ28A、28Bによる付勢力に抗して支点Fを中心にカードスタッカ11の外側(図2及び図3を引用すれば、プリンタ装置1側)に向けて所定角度回動する。このため、持ち上げられた複数のカードCは傾斜状態に位置付けられる。
【0058】
続いて、CPUは、半月板47及び透過センサ48からなる検出部からの検出情報により可動部材14が上昇位置にあるか否かを判断する。すなわち、透過型センサ48の発光素子からの光が、半月板47で遮断された遮光状態から半月板47の切欠部を通過して透過型センサ48の受光素子で受光されて透過状態へと移行する際(図4に示す状態)に、可動部材14が下降位置に位置付けられているものと判断し、逆に、透過状態から遮光状態へと移行する際に可動部材14が上昇位置に位置付けられたと判断する。
【0059】
可動部材14が上昇位置にあると判断したときは、モータ41を駆動し、偏心カム46が図4に示す矢印D方向に更に回転させる。これにより、図11(C)に示すように、従動ローラ49は偏心カム46の最小半径L1に対応したカム面に位置付けられて図11(A)に示した位置(状態)に戻る。この偏心カム46の回転に伴って可動部材14が下降して、カード当接面14aが支持部材12のカード支持面12aより下方に位置付けられ、持ち上げられたカードCの一部は、ばらけた状態で支持部材12のカード支持面12a上で支持される(図10に示す状態)。この状態において、カードスタッカ11内に積層される複数のカードCは、上記したカード支持面12a上にばらけた状態で支持される複数のカードを挟んで上下に2つの積層部位に仕分けられ、下側に位置する第1の積層部位GR1と上側に位置する第2の積層部位GR2とに分離される。これら第1の積層部位GR1及び第2の積層部位GR2は、カードスタッカ11の内壁部31、32は上述したようにずれた状態で立設されているため、互いにずれた状態で分離される。CPUは、再度、半月板47及び透過センサ48からなる検出部からの検出情報により可動部材14が上昇位置にあるか否かを判断する。
【0060】
可動部材14が下降位置にあると判断したときは、モータ41の駆動を停止し(昇降動作を終了し)、一連のカード供給機構10のイニシャル処理を終了する。これにより、カードCは、可動部材14の上昇動作に伴ってカード当接面14aにより一旦持ち上げられ、その後、可動部材14の下降動作に伴って下降して支持部材12の傾斜状カード支持面12a上に一方端が位置付けられることで、密着状態から開放されて互いに分離された状態となる。つまり、可動部材14の上下方向の昇降動作により、カードC相互の捌きが促進されることになる。
【0061】
<印刷処理>
次に、CPUは、プリンタ装置1によるカードCへの印刷処理を実行するが、本例では、上述したようにカードCに印刷すべき画情報を既に受信しているので、カード供給機構10のイニシャル処理中に、受信した画情報がカラーのときには、Y、M、C毎の熱エネルギーに換算し、受信した画情報がモノクロのときにはモノクロでの熱エネルギーに換算する印刷前処理を実行している。このような印刷前処理は、印刷処理の実行前に実行される。印刷処理では、まず、オペパネ部5の印刷開始ボタンが押下されるまで(又は、外部コンピュータからの印刷命令があるまで)待機する。
【0062】
CPUは、オペパネ部5の印刷開始ボタンが押下されると(又は、外部コンピュータからの印刷命令があると)、電磁クラッチをオン状態としてモータAの回転駆動力をキックローラ15に伝達させると共に、他の及び別の電磁クラッチをオン状態としてモータBの回転駆動力をクリーナ71の圧接ローラ及びカード回転部72のピンチローラに伝達させる。これにより、キックローラ15は回転し、キックローラ15に当接している最下位のカードCのみが第1搬送路p1に沿ってカードスタッカ11から繰り出され、クリーナ71を経てカード回転部72まで搬送される。
【0063】
このとき、透過型センサ61(の受光素子61a)によりカードスタッカ11から繰り出されるカードCが検出される。CPUは、検出されたカードCの数をカウントする。すなわち、CPUはカードスタッカ11から繰り出されるカードCの数をカウントするカウンタとして機能する。CPUは、カウンタが所定数(例えば、5)か否かを判断し、肯定判断のときは、カード供給機構10側で、上述した可動部材14の昇降動作を実行して、すなわち、所定数のカードCが繰り出される毎に可動部材14の昇降動作を実行して、カードC相互の捌きを促進する。
【0064】
一方、否定判断のときは、センサS1がカードCの先端を検出した後、所定パルス分モータAを駆動したときに、電磁クラッチをオフ状態としてキックローラ15の回転を停止させる。また、センサS1がカードCの後端を検出すると、他の電磁クラッチをオフ状態として、クリーナ71の圧接ローラの回転を停止させる。
【0065】
第1搬送路p1に沿って移動するカードCの中心が第1、第2搬送路の交点Xに到達するまで送り込まれると、CPUは、カードCをカード回転部72のピンチローラで挟持した状態で、更に別の電磁クラッチをオン状態としてモータAからの回転駆動力を伝達させ、カード回転部72の回動枠を交点Xを中心として90°回転させる。
【0066】
CPUは、回動枠が90°回動してカードCが第2搬送路p2に平行一致するかを図示しないセンサで監視しており、回動枠が90°回動すると、第2搬送路p2上に配設された搬送ローラ対75、76及びプラテンローラ77を回転させるモータMを駆動させると共に、別の電磁クラッチをオン状態としてモータBの回転駆動力をカード回転部72のピンチローラに伝達させて、カードCをカード印刷部90に向けて送り出す。カードCのカード印刷部90への送り込みは、カードCの記録開始点(カードCの先端)が印刷位置Srに達したところで完了する。カードCの先端位置は、例えば、第2搬送路p2上を搬送されるカードCの後端を、センサS2で検出した後、その後のモータMのパルス数をカウントすることで把握することができる。
【0067】
次いで、モータYを駆動してインクリボンRをリボン巻取リール82で巻き取る方向に搬送し、センサS3でインクリボンRの所定部位に設けられた位置検出用マークが検出されると、所定距離(モータYによるインクリボンRの搬送を所定パルス分)インクリボンRを戻し方向に逆搬送してインク層Yの先端位置をサーマルヘッド80に対向するように位置付ける。次に、モータZを駆動させることでヘッド進退駆動ユニットのカムを回転させ、印刷待機状態にあるサーマルヘッド80をカードCに向けて移動させ印刷実行状態に移行させる。これにより、サーマルヘッド80はインクリボンRのインク層YをカードCの表面を押圧する。この状態でカードCをカード回転部72に向けて移動させながら、Yの熱エネルギー変換量に従って、サーマルヘッド制御ユニットを介してサーマルヘッド80の発熱素子を選択的に加熱動作させインクリボンRのインク層Yのインク成分をカードCの表面に熱昇華させて印刷する。なお、インク層Yによる印刷が完了すると、モータZを駆動させることでサーマルヘッド80を印刷実行状態から印刷待機状態に移行させて、次のインク層の印刷に備える。
【0068】
インク層Yによる印刷が完了すると、カードCの印刷開始点が印刷位置Srに達するまでモータMを逆転させると共に、モータYを駆動してインクリボンRを搬送してインク層Mの先端位置をサーマルヘッド80に対向するように位置付ける。次いで、モータZを駆動させることでサーマルヘッド80を印刷実行状態に移行させ、サーマルヘッド80でインク層MをカードCの表面に対して押圧させる。この状態でカードCをカード回転部72に向けて移動させながら、Mの熱エネルギー変換量に従って、サーマルヘッド80の発熱素子を選択的に加熱動作させインクリボンRのインク層Mのインク成分をカードCの表面に熱昇華させて印刷する。同様に、インク層Cのインク成分をカードCの表面に印刷する。これにより、カードCには画情報に従ってカラー印刷される。なお、カラー印刷に代えてインク層Bkによる単色印刷をするようにしてもよい。
【0069】
CPUは、カードCへの印刷が終了すると、モータMを逆転駆動させて、第2搬送路p2に沿って、カードCをカード回転部72側に搬送する。第2搬送路p2に沿って搬送中のカードCの先端をセンサS2が検出すると、別の電磁クラッチをオン状態としてモータBの回転駆動力をカード回転部72のピンチローラに伝達する。これにより、カードCは垂直状態のカード回転部72の一方のピンチローラに捕捉されてカード回転部72の中央に導かれる。カードCの中心が交点Xに到達するまで搬送されると、カードCをピンチローラ71で挟持した状態で、更に別の電磁クラッチをオン状態としてモータAからの回転(逆転)駆動力を伝達させてカード回転部72の回動枠を反時計回り方向に90°回転させる。次いで、CPUは、別の電磁クラッチ及び更に他の電磁クラッチをオン状態としてモータAの回転駆動力をカード回転部72のピンチローラ及び排出ローラ対78に伝達させる。これにより、カードCは、第1搬送路p1の終端のカード排出部79を越えて、ケーシング7の外部に排出され、カードC1枚分に対する印刷処理を終了する。なお、カード回転部72のピンチローラ及び排出ローラ対79は、モータBのパルス数が所定数となった時点で停止される。以下、同様に連続して上記印刷処理が繰り返えされる。
【0070】
(作用等)
次に、本実施形態のプリンタ装置1の作用等について説明する。
【0071】
本実施形態のプリンタ装置1では、イニシャル処理で、可動部材14の昇降動作を実行することで、カードスタッカ11内に上下方向に積層状態で収容されたカードCがカード当接面14aで持ち上げられた後、傾斜状カード支持面12a上に一方端が位置付けられることで、密着状態から開放されて互いに分離された状態となる。また、連続印刷処理に伴って、第1の積層部位GR1に属するカードCが順次減少し、カード支持面12a上にばらけた状態で支持された複数のカードC等の第1の積層部位GR1より上方に位置するカードが順次落下して第1の積層部位GR1に組み入れられるとともに、印刷処理でカウンタが所定数となる毎に、可動部材14の昇降動作が実行されるため、カードCは密着状態から開放されて互いに分離された状態となる。プリンタ装置1に用いられるカードCが、例えば、ポリ塩化ビニル等からなるプラスチックカードの場合には、カード同士が貼りつき易く、特に高温多湿な条件下においてはこの現象は顕著に現れ、カード相互の分離が行われない等によりカードの供給動作に支障を来たすことがあるる。このため、本実施形態のプリンタ装置1のカード供給機構10では、上述したように可動部材14を所定のタイミングで昇降させることにより、カードCの落下を促進させるとともにカードC相互の分離作用を向上させ、繰り出される最下層のカードCに作用する荷重を低減させてカードCのプリンタ装置1への供給を確保することができる。
【0072】
また、カードスタッカ11からプリンタ装置1内へカードCを供給する途上で電源供給遮断による動作停止や搬送不良等が生じる場合がある。カードCがカードスタッカ11とプリンタ装置1とに跨る状態でジャムが発生した際に、当該カードCを取り除くためにカセット構造のカードスタッカ11を外してジャム処理を行う必要がある。当該カードCはカードスタッカ11とプリンタ装置1とに跨った状態で滞留しているため、カードスタッカ11を真上方向に持ち上げることができず、強引に持ち上げれば当該カードCを傷付け破損させることになり、当該カードCを再使用することはできなくなる。場合によっては、カードスタッカ11乃至カードプリンタ装置1を破損させることにもなる。一方、カードスタッカ11を水平方向に引き抜くことも考えられるが、カードスタッカ11の下方であってプリンタ装置1側に設けられたキックローラ15が障害(邪魔)となり、カードスタッカ11をプリンタ装置1から離間する水平方向に引き抜くことは難しい。
【0073】
本実施形態のプリンタ装置1では、カードスタッカ11の装着部30に形成した案内溝21及び22を、略45°の角度を有する傾斜形状部分21a、22aとこれらにそれぞれ連通する水平形状部分21b、22bとで形成し、図3の矢印Bで示したように、カードスタッカ11を斜め上方から差し込み、次いで水平方向に移動させることでプリンタ装置1に装着させ、この手順を逆に、図3の矢印B方向とは逆方向にカードスタッカ11を移動させることでカードスタッカ11をプリンタ装置1から離脱させることができる。このため、カードCのジャム処理を行う場合でも、ジャムを起こした当該カードCを傷付けたり破損させたりすることなく再利用でき、更には、プリンタ装置1側に設けられた部材、例えば、キックローラ15との干渉を回避することも可能であり、カードスタッカ11乃至カードプリンタ装置1を破損させることもない。
【0074】
更に、本実施形態のプリンタ装置1では、コロ38が、開口スロット35の直下に位置付けられているとともに、カードスタッカ11の底部のカード繰り出し方向先端に設けられているため、カセット状のカードスタッカ11をプリンタ装置1に対して装着する際に(カードスタッカ11を斜め上方から差し込む際に)、プリンタ装置1側に設けられたキックローラ15の周面に沿ってコロ38が回転(摺動)してカードスタッカ11が案内されることによりカードスタッカ11の装着時の操作性を容易にしている。
【0075】
なお、本実施形態では、可動部材14の昇降動作のタイミングを、カードスタッカ11から搬送路p1に繰出されるカードCを透過型センサ61により検出して所定数に達した時点で行う例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図12に示すように、カードスタッカ11内の第1の積層部位GR1に収容されるカードCを検出する透過型センサ62を所定高さ位置に配置し、カードスタッカ11からのカード供給に伴って減少する第1の積層部位GR1内の所定の高さ位置でカードCがないことを検出したときに、モータ41を駆動して可動部材14を昇降させるようにしてもよい。
【0076】
或いは、制御部92の内部時間で時間を計測することにより、すなわち、制御部92をタイマとして機能させることにより、または、制御部92内にタイマIC等を設けることにより、所定時間(例えば、3分30秒)毎に、モータ41を駆動して可動部材14を昇降させるようにしてもよい。この場合に、カードCを連続印刷する印刷形態がY、M、C等のインクを用いて重ね印刷によるカラー印刷の場合と、Bkインクによる単色印刷の場合とではカードCの1枚にかかる処理時間が異なり、また、プリンタ装置1が印刷機能以外に、カードCに対して磁気記録乃至電気的記録を行うエンコーダ機能を備えて付加的記録を行う場合についても、カードCの1枚にかかる処理時間が異なるので、いずれの場合であっても対応できるように、タイマ設定時間(所定時間)をプリンタ装置1のオペパネ部5(又は、外部コンピュータ)により、任意に時間を変更可能に構成することが望ましい。
【0077】
また、本実施形態では、カードCを繰り出すキックローラ15や昇降動作の駆動源となるモータ41等をプリンタ装置1側に配設した例を示したが、カード供給機構10側に配置するようにしてもよい。このような形態では、本実施形態で例示したカード供給機構10を、カード供給装置として単体の周辺機器で構成することができる。この場合に、カード供給装置にはマイコン等で構成された制御部を別途設けるようにしてもよく、このような制御部は制御部92のスレーブ(奴隷)コンピュータとして機能させるようにしてもよい。更に、本実施形態では、可動部材14を支持部材12内に配置した例を示したが、本発明はこれに制限されず、支持部材12が、支持したカードC及びその上方に積層された複数のカードCの一方側(カード繰り出し方向後端側)を持ち上げ可能に昇降自在に構成されていてもよく、また、可動部材14と支持部材12とは一体または別体に構成されていてもよい。
【0078】
更に、本実施形態では、可動部材14を昇降させるために、直流駆動モータ41、偏心カム46、従動ローラ49等を例示したが、これらに代えてリニアモータを用い、リニアモータを駆動するパルスを制御することにより可動部材14を昇降させるように構成してもよい。
【0079】
更にまた、本実施形態では、カードCの片面に印刷する例を示したが、カードCの片面に印刷した後、カード回転部72にカードCを搬送して180°回動させ、カードCの他面に印刷を行って、両面印刷されたカードCをカード排出部79から排出するようにしてもよい。そして、本実施形態では、センサ61等を発光素子と受光素子とで構成される透過型センサとして例示したが、例えば、反射型センサを用いてもよいことは論を待たない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、カード相互の分離作用を向上させ、繰り出される最下層カードに作用する荷重を低減させて確実なカード供給を行うことが可能なカード供給機構およびその供給方法を提供するものであるため、カード供給機構乃至カード供給装置の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明が適用可能な実施形態のプリンタ装置の概略正断面図である。
【図2】カード供給機構のカードスタッカを実施形態のプリンタ装置に装着した状態を示す正面図である。
【図3】カードスタッカをプリンタ装置に装着する状態を示す外観斜視図である。
【図4】カード供給機構の駆動部を示す斜視図である。
【図5】カード供給機構のカード支持部材と可動部材とを示す駆動部の一部拡大図である。
【図6】カードスタッカの内壁部の一部を示す斜視図である。
【図7】カードスタッカの内壁部の一部の可動壁部を示す斜視図である。
【図8】カードスタッカに複数のカードを積層した際の初期状態を示す正面図である。
【図9】可動部材が上昇した状態を示す正面図である。
【図10】可動部材が下降してカード供給機構のイニシャル処理が終了した状態を示す正面図である。
【図11】可動部材の動作を説明するための部分拡大図であり、(A)は図8示す状態の部分拡大図、(B)は図9に示す状態の部分拡大図、(C)は図10に示す状態の部分拡大図である。
【図12】本発明が適用可能な他の実施形態のカード供給機構の正面図である。
【符号の説明】
【0082】
1 プリンタ装置
10 カード供給機構
11 カードスタッカ(カード収容部)
12 支持部材(支持手段)
13 規制部材(規制手段)
14 可動部材
15 キックローラ(繰出手段の一部)
27 可動壁部
28A、28B バネ(弾性部材)
31 内壁部
32 内壁部
41 直流駆動モータ(駆動部の一部)
61 透過型センサ(第1の検出手段)
62 透過型センサ(第2の検出手段)
92 制御部(駆動部の一部、カウンタ、タイマ)
C カード
G1 第1の積層部位
G2 第2の積層部位
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカードを上下方向に積層状態で収容するカード収容部と、
前記カード収容部の所定の高さ位置でカードの一方側を支持する支持手段と、
前記カード収容部の前記支持手段と対向する側に固設され、カードの他方側を規制する規制手段と、
前記支持手段と一体または別体に設けられ、前記カード収容部に収容されたカードの一部の一方側を持ち上げ可能に移動する可動部材と、
前記可動部材を昇降可能に駆動する駆動部と、
前記カード収容部に収容されたカードのうち、最下層のカードを順次一枚ずつ繰り出す繰出手段と、
を備えたカード供給機構。
【請求項2】
前記可動部材のカード当接面が傾斜状、かつ、段差状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のカード供給機構。
【請求項3】
前記支持手段のカード支持面が傾斜状、かつ、直線状に形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカード供給機構。
【請求項4】
前記カード収容部が上下方向に延在する内壁部を有し、該内壁部は、前記支持手段及び前記規制手段によって上下方向で仕分けられた複数のカードからなる第1の積層部位と第2の積層部位とがずれた状態で積層されるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載のカード供給機構。
【請求項5】
前記内壁部の一部であって前記規制手段の上部に設けられ回動可能な可動壁部と、この可動壁部を前記支持手段乃至前記可動部材側に付勢する弾性部材と、を更に備えたことを特徴とする請求項4に記載のカード供給機構。
【請求項6】
前記繰出手段の近傍に設けられ、前記繰出手段により繰り出されたカードを検出する第1の検出手段と、前記第1の検出手段により検出されたカードの数をカウントするカウンタと、を備え、前記駆動部は、前記カウンタが所定枚数をカウントする毎に前記可動部材を昇降させることを特徴とする請求項1に記載のカード供給機構。
【請求項7】
前記第1の積層部位は前記第2の積層部位の下方に位置付けられており、前記第1の積層部位に収容されたカードを検出する第2の検出手段を更に備え、前記駆動部は、前記第2の検出手段が前記カードを検出しないときに前記可動部材を昇降させることを特徴とする請求項4に記載のカード供給機構。
【請求項8】
時間を計測するタイマを更に備え、前記駆動部は、前記タイマが所定時間を計測する毎に前記可動部材を昇降させることを特徴とする請求項1に記載のカード供給機構。
【請求項9】
前記カード収容部が、本体装置に対して着脱可能なカセット構造を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のカード供給機構。
【請求項10】
積層状態で収容された複数のカードの一部において、カードの一側を規制しつつ他側を昇降させる昇降工程と、
前記昇降工程の後、前記積層状態で収容された複数のカードを上下方向に2つの部位に分離する分離工程と、
前記分離工程によって分離された2つの部位のうち、下方側の部位に属し積層状態で収容された複数のカードの最下層のカードを順次一枚ずつ繰り出す繰出工程と、
を含むカード供給方法。
【請求項11】
前記繰出工程により繰り出されたカードの数をカウントする計数工程を更に含み、前記計数工程でカウントされた所定カウント毎に前記昇降工程が行われることを特徴とする請求項10に記載のカード供給方法。
【請求項12】
前記昇降工程において、昇降されるカードが互いにずれた状態で位置決めされることを特徴とする請求項10または請求項11に記載のカード供給方法。
【請求項1】
複数のカードを上下方向に積層状態で収容するカード収容部と、
前記カード収容部の所定の高さ位置でカードの一方側を支持する支持手段と、
前記カード収容部の前記支持手段と対向する側に固設され、カードの他方側を規制する規制手段と、
前記支持手段と一体または別体に設けられ、前記カード収容部に収容されたカードの一部の一方側を持ち上げ可能に移動する可動部材と、
前記可動部材を昇降可能に駆動する駆動部と、
前記カード収容部に収容されたカードのうち、最下層のカードを順次一枚ずつ繰り出す繰出手段と、
を備えたカード供給機構。
【請求項2】
前記可動部材のカード当接面が傾斜状、かつ、段差状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のカード供給機構。
【請求項3】
前記支持手段のカード支持面が傾斜状、かつ、直線状に形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカード供給機構。
【請求項4】
前記カード収容部が上下方向に延在する内壁部を有し、該内壁部は、前記支持手段及び前記規制手段によって上下方向で仕分けられた複数のカードからなる第1の積層部位と第2の積層部位とがずれた状態で積層されるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載のカード供給機構。
【請求項5】
前記内壁部の一部であって前記規制手段の上部に設けられ回動可能な可動壁部と、この可動壁部を前記支持手段乃至前記可動部材側に付勢する弾性部材と、を更に備えたことを特徴とする請求項4に記載のカード供給機構。
【請求項6】
前記繰出手段の近傍に設けられ、前記繰出手段により繰り出されたカードを検出する第1の検出手段と、前記第1の検出手段により検出されたカードの数をカウントするカウンタと、を備え、前記駆動部は、前記カウンタが所定枚数をカウントする毎に前記可動部材を昇降させることを特徴とする請求項1に記載のカード供給機構。
【請求項7】
前記第1の積層部位は前記第2の積層部位の下方に位置付けられており、前記第1の積層部位に収容されたカードを検出する第2の検出手段を更に備え、前記駆動部は、前記第2の検出手段が前記カードを検出しないときに前記可動部材を昇降させることを特徴とする請求項4に記載のカード供給機構。
【請求項8】
時間を計測するタイマを更に備え、前記駆動部は、前記タイマが所定時間を計測する毎に前記可動部材を昇降させることを特徴とする請求項1に記載のカード供給機構。
【請求項9】
前記カード収容部が、本体装置に対して着脱可能なカセット構造を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のカード供給機構。
【請求項10】
積層状態で収容された複数のカードの一部において、カードの一側を規制しつつ他側を昇降させる昇降工程と、
前記昇降工程の後、前記積層状態で収容された複数のカードを上下方向に2つの部位に分離する分離工程と、
前記分離工程によって分離された2つの部位のうち、下方側の部位に属し積層状態で収容された複数のカードの最下層のカードを順次一枚ずつ繰り出す繰出工程と、
を含むカード供給方法。
【請求項11】
前記繰出工程により繰り出されたカードの数をカウントする計数工程を更に含み、前記計数工程でカウントされた所定カウント毎に前記昇降工程が行われることを特徴とする請求項10に記載のカード供給方法。
【請求項12】
前記昇降工程において、昇降されるカードが互いにずれた状態で位置決めされることを特徴とする請求項10または請求項11に記載のカード供給方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−99224(P2006−99224A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281959(P2004−281959)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]