説明

カード式錠前装置

【課題】錠前装置のカードキースペースの拡大化を図ることで、カードキーの挿入操作性の向上を図ることができ、しかも簡単な構成によってロッカー使用者による扉の閉鎖前の誤施錠を阻止できるようにしたカード式錠前装置を提供する。
【解決手段】略中央に矩形状の窓部3を備えた前枠4と、前枠4の背面側に配設された背部ケーシング1と、上方からカードキーaを挿入するカードキー挿入部5と、カードキー挿入部5に隣接配置したシリンダー錠QのラッチLと、ラッチLの下側に配置したラッチ規制手段Pそれぞれを備え、ラッチ規制手段Pは、ラッチL基部の解錠時用と施錠時用との2つの係合凹部15a,15bに係合する係合板6と、係合板6の下方移動を規制する横スライド式ストッパー7と、ラッチLの回動を規制する扉開閉検知ラッチ8とを背部ケーシング1内に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードキーの差込みにより施錠可能状態にあっても扉開放中は施錠を阻止できるカード式錠前装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に開示されているように、扉の開状態では、キー回動操作による誤施錠を確実に阻止することができるカード式錠前装置が存在する。すなわち、扉の裏面に、錠機構を内臓しかつ一側にカードキーとラッチの出入口を各設けたケーシングを固定し、前記出入口からカードキーを差し込むことにより、前記錠機構に備わっているラッチに対する第1ストッパの係合が外れ、キーの回動操作で当該ラッチをロッカー本体の係止孔へ回動挿入し、施錠が完了するようにしてある。そして、前記ケーシングに、扉の開状態では前記ラッチを係止し、扉の閉鎖によりロッカー本体から押圧力を受けてラッチに対する係止が解除されるようバネ付勢された第2ストッパを設けている。
【0003】
具体的には、扉の開状態において、ケーシングの横方向からカードキーを差し込ことによって、カードキーは、その後端上縁が第1ストッパ後端の係止片に突き当って当該第1ストッパをバネの付勢力に抗してスライド溝内に沿って後退させる。同時に、先端のピンストッパも後退させられるため、ラッチの係合ピンに対する係合状態が解除される。したがって、シリンダー錠の錠孔に差し込んだキーを回動操作することでラッチは施錠可能な状態となるのであるが、第2ストッパのストッパ部がラッチを係止しているため、扉の開状態では例え第1ストッパが外れてもキー操作により施錠を行なうことはできないものとなっている。
【0004】
一方、扉を閉鎖すると、第2ストッパの先端部が、ロッカー本体の端面に突き当って押されるため、コイルバネの付勢力に抗してケーシングの内側から外側へ回動する。つまり、第2ストッパの先端部は、扉とロッカー本体とにより狭持されつつ扉の閉状態を維持する。このようにして第2ストッパの先端部が、支持板の軸支片間に掛け渡された支軸を支点として扉側へ回動することでラッチに対するストッパ部による係止状態が解除される。したがって、シリンダー錠のラッチは、第1ストッパに続いて第2ストッパからも外れるため、扉の閉鎖と共にキーの回動操作によりラッチが回動してロッカー本体の係止孔内に挿入され、施錠が完了するものとなっている。
【0005】
また、特許文献2に開示されているように、ミス操作を防止できて、閉扉および施錠を容易迅速に行ない得る錠前装置が存在する。すなわち、この錠前装置は、図11乃至図13に示すように、扉の取付孔に外ケースを嵌合して固定した取付ケースと、外ケースに嵌合して錠本体を固定する内ケースと錠本体の回転軸後端に固定した施錠・開錠用ラッチとを備えている。そして、内ケース後端のフランジにスライド自在に、かつバネにてラッチ外周面側へ押圧する方向へ付勢して係合板を配置し、取付ケースに、後端を開口部に、係合片と係止面を、側壁に挿入口を各設けた凹溝を前後方向に形成し、凹溝には、後端を円弧面に、一側に係合板と係脱自在な側壁と、この側壁に前後方向に長い係合板の挿入凹部を各設けた扉開・閉検知ラッチを、圧縮バネにて後方へ付勢して前後方向へ摺動自在に嵌合して構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−206653号公報
【特許文献2】特開2003−314111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来における特許文献1の場合は、カードキーをケーシングの横方向(ラッチの位置する側)から挿入し、当該カードキーを錠機構背面側に配置させるものとしたシステムであることから、カード式錠前装置のカードキースペースが狭くなる。また、第2ストッパの先端部が、支持板の軸支片間に掛け渡された支軸を支点として扉側へ回動することでラッチに対するストッパ部による係止状態が解除させることから、狭いケーシング内での第2ストッパの配置構造が複雑化し、しかもカードキーの挿入操作性も低下してしまう等の問題があった。
【0008】
また、特許文献2においては、扉開・閉検知ラッチを手操作によって押圧することから、操作性が劣るものとなっている。
【0009】
そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み案出されたもので、錠前装置のカードキースペースの拡大化を図ることで、カードキーの挿入操作性をさらに向上させることができ、しかも簡単な構成によってロッカー使用者による扉の閉鎖前の誤施錠を阻止できるようにしたカード式錠前装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明にあっては、略中央に矩形状の窓部を備えた前枠と、前枠の背面側に配設された背部ケーシングとを有し、背部ケーシングには、上方からカードキーを挿入するカードキー挿入部と、カードキー挿入部に隣接配置されたシリンダー錠のラッチと、ラッチの下側に配置されたラッチ規制手段それぞれを備え、ラッチ規制手段は、ラッチ基部の解錠時用と施錠時用との2つの係合凹部に係合する係合板と、係合板の下方移動を規制する横スライド式ストッパーと、ラッチの回動を規制する扉開閉検知ラッチを備えて成ることを特徴とする。
【0011】
ラッチ規制手段は、ラッチ基部に形成された解錠時用と施錠時用の係合凹部に板バネの弾発力を介して係合されるよう上下方向にスライド自在とした係合板と、カードキー挿入部に対するカードキーの挿脱によって横方向にスライド可能とし、係合板の下方移動を規制する横スライド式ストッパーと、外方への突出移動により係合板の下端部を係止してラッチの回動を阻止し、また内方への退避移動により係合板の下端部の係止を解除してラッチの回動を許容する扉開閉検知ラッチとを備えて成る。
【0012】
上方のカードキー挿入部近傍に配され、中央にカード挿入溝を有し且つ水平方向に揺動可能としたカードキーストッパーを備え、解錠方向に立ち上がったラッチによってカードキーストッパーが押圧されることで、カード挿入溝と、背部ケーシング内のカード挿入孔とが合致してカードキー挿脱が可能な状態とし、施錠方向に回動したラッチによってカードキーストッパーの押圧が解除されることで、カード挿入溝がカード挿入孔からずれてカードキー挿入部を閉鎖させ、カードキーの挿脱を阻止するよう形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、錠前装置のカードキースペースの拡大化を図ることで、カードキーの挿入操作性をさらに向上させることができ、しかも簡単な構成によってロッカー使用者による扉の閉鎖前の誤施錠を阻止できるようにしたカード式錠前装置を提供することができる。
【0014】
すなわち、略中央に矩形状の窓部を備えた前枠と、前枠の背面側に配設された背部ケーシングとを有し、背部ケーシングには、上方からカードキーを挿入するカードキー挿入部と、カードキー挿入部に隣接配置されたシリンダー錠のラッチと、ラッチの下側に配置されたラッチ規制手段それぞれを備えて成るので、錠前装置のカードキースペースの拡大化が図れ、カードキーの挿入操作性をさらに向上させることができる。
【0015】
ラッチ規制手段は、ラッチ基部に形成された解錠時用と施錠時用との2つの係合凹部に板バネの弾発力を介して係合されるよう上下方向にスライド自在とした係合板と、カードキー挿入部に対するカードキーの挿脱によって横方向にスライド可能とし、係合板の下方移動を規制する横スライド式ストッパーと、外方への突出移動により係合板の下端部を係止してラッチの回動を阻止し、また内方への退避移動により係合板の下端部の係止を解除してラッチの回動を許容する扉開閉検知ラッチとを備えて成るので、係合板、横スライド式ストッパー、扉開閉検知ラッチという3つの簡単な構成によってロッカー使用者による扉の閉鎖前の誤施錠を阻止することができる。
【0016】
上方のカードキー挿入部近傍に配され、中央にカード挿入溝を有し且つ水平方向に揺動可能としたカードキーストッパーを備え、解錠方向に立ち上がったラッチによってカードキーストッパーが押圧されることで、カード挿入溝と、背部ケーシング内のカード挿入孔とが合致してカードキーの挿脱を許容させ、施錠方向に回動したラッチによってカードキーストッパーの押圧が解除されることで、カード挿入溝がカード挿入孔からずれてカードキー挿入部を閉鎖させ、カードキーの挿脱を阻止するよう形成されているので、簡単な構成によって、施錠中のカードキーを確実に抜けないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を実施するための一形態を示すもので、(a)はカード式錠前装置の正面図、(b)は同じく(a)のX−X断面図、(c)は(a)のY−Y断面図である。
【図2】同じくカード式錠前装置の背面図である。
【図3】同じくカード式錠前装置にカードキーを挿入する例を示す縦断面図である。
【図4】同じく開扉解錠状態のカード式錠前装置を示す説明図である。
【図5】同じく開扉解錠状態でカードキーを挿入した状態のカード式錠前装置を示す説明図である。
【図6】同じくカードキーを挿入し、閉扉して、キーを施錠方向に回動させる状態のカード式錠前装置を示す説明図である。
【図7】同じくシリンダー錠と係合板との分解状態の斜視図である。
【図8】同じく係合板と横スライド式ストッパーとの配置関係を説明するもので、(a)は横スライド式ストッパーによって係合板の下方移動を規制している状態の斜視図、(b)は横スライド式ストッパーによって係合板の下方移動を許容している状態の斜視図である。
【図9】同じく扉開閉検知ラッチの構成例を示す分解斜視図である。
【図10】同じくカードキーストッパーの具体的構成を示し、(a)はカードキーが挿脱可能な状態となっている場合の平面図、(b)カードキーが挿脱不可能な状態となっている場合の平面図である。
【図11】従来例におけるカード式錠前装置の解錠状態を示す背面図である。
【図12】同じく図11におけるA−A線矢視拡大縦断面図である。
【図13】同じく施錠状態を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態を詳細に説明する。
本発明のカード式錠前装置は、図1乃至図6に示すように、略中央に矩形状の窓部3を備えた前枠4と、前枠4の背面側に配設された背部ケーシング1とを有し、前記背部ケーシング1内において、カードキーストッパー9を上方のカード挿入孔5a内側に備えたカードキー挿入部5と、カードキー挿入部5に隣接して配置された略L字型鈎状のラッチLを備えたシリンダー錠Qと、ラッチLの回動を規制するためにシリンダー錠Q下方に備えられ、ラッチL係止用の係合板6、係合板6の下方移動規制用の横スライド式ストッパー7、横スライド式ストッパー7下方に配した扉開閉検知ラッチ8それぞれを備えて成るラッチ規制手段Pとから概ね構成されている。
【0019】
図1(a)乃至図1(c)に示すように、背部ケーシング1と前枠3は、開閉扉の開放縁部側に形成された開口部に背面側から取付ベース2を介して取り付けられる。この取付ベース2の背面側に、図4乃至図6に示すように、前記カードキー挿入部5、シリンダー錠QのラッチL、ラッチ規制手段Pそれぞれが隣接した状態で配されている。
【0020】
而して、図1(a)乃至図1(c)に示すように、背部ケーシング1内のカードキー挿入部5に対応して、取付ベース2の略中央には、カードキーaの片面を外側から視認できるようにするため、透明プラスチック製の枠板で覆った矩形状の窓部3が形成されている。
【0021】
また、この窓部3に隣接して、前枠4および取付ベース2それぞれには、円筒状のシリンダー錠Qを嵌め込むための円形の開口部が形成されている。そして、シリンダー錠Qのキー孔K側が前枠4の開口部を通じて前方に露出し、シリンダー錠QのラッチLが取付ベース2の開口部背面に配置されている。
【0022】
図1(b)および図1(c)に示すように、背部ケーシング1の上壁部には、カードキー挿入部5としてスリット状のカード挿入孔5aが設けられ、その背面側中央の一部が横長U字状に抉られており、挿入されたカードキーaのカード挿入孔5aからの取り出しが容易に行えるものとなっている。また、開閉扉の開放縁部側に面する背部ケーシング1の側壁部には、ラッチLの出入口が凹欠状に形成され、回動するシリンダー錠QのラッチLがこの出入口を介して側方に突出できるようにしてある。さらに、このラッチL用の出入口の下方側には、扉開閉検知ラッチ8を扉側方へ突出させるための扉開閉検知ラッチ8用の出入口が凹欠状に形成されている。
【0023】
図2および図3に示すように、背部ケーシング1の背面部下側には、カードキー挿入部5に対応して、例えば、5つのネジ孔11a、11b、…11eが等間隔に形成され、これらネジ孔11a、11b、…11eの一つにネジ12をねじ込んである。そして、カードキーaの下端縁部にはこのネジ12のねじ込み位置に対応して略円弧状の凹溝13が形成されている。
【0024】
これによって、正規のカードキーaがカードキー挿入部5の挿入孔5aに挿入された場合には、当該カードキーaの凹溝13にネジが係入されることで、カードキーaは最大降下位置に至るものとなる。一方、ネジ12の位置に対応しない凹溝13を備えた非正規のカードキーaをカードキー挿入孔5aに挿入された場合には、ネジ12によってカードキーaの下端縁部が係止され、カードキーaは最大降下位置に挿入されないものとなっている。尚、カードキーaとして、下端縁部に凹溝13を有しない形状のものを採用してもよいことは勿論である。
【0025】
シリンダー錠Qは、閉扉の状態において、キー孔Kに不図示のキーを差し込み施錠方向に回動した際には、後述するラッチ規制手段Pの動作に基づいてラッチLが扉側方へ回動され、ロッカー本体の扉枠に形成されているラッチ孔へ挿入されて施錠が完了しするものとなっている。このとき、キーはキー孔Kから抜き出せるようになっている。
【0026】
また、キー孔Kにキーを差し込み、後述するラッチ規制手段Pの動作に基づいて解錠方向にキーを回動して開扉状態とすることができるが、このときにはキーの紛失防止のためにキーはキー孔Kから抜くことができないようになっている。
【0027】
次に、ラッチ規制手段Pの具体的な構成例について図4乃至図9に基づいて詳細に説明する。
先ず、ラッチLは取付ベース2の開口部に台座Sを介して回動自在に配されており、台座Sの裏面下方には縦長状のスライド溝13aが形成され、このスライド溝13aに対応した台座Sの下縁は係合板6の出入口が凹欠状となって形成されている(図7参照)。
【0028】
すなわち、ラッチL係止用の係合板6は、図7に示すように、略縦長矩形状の駒型に形成されており、この片面中央に突設した係合突起6dが前記台座Sの縦長状のスライド溝13aに嵌り込んで上下方向にスライドできるようになっている。
【0029】
そして、係合板6の一側面(カードキー挿入部5に向く側面)における上方側には、コ字型の溝部6aが形成され、台座Sの下方端側に突設された軸部13bに略U字状に巻回された板バネ14の一端がこの溝部6aに係合され、板バネ14の他端は軸部13bを囲む台座S内壁面によって係止されている。これによって、係合板6は板バネ14の弾発力により常時上方向へ付勢保持される。
【0030】
また、係合板6の上部角側には傾斜状となった上端係合部6bが形成されており、ラッチL基部の90°間隔毎に形成された施錠時用と解錠時用の2つの係合凹部15a、15bに前記板バネ14の弾発力によって圧接状に係合されるようになっている。
【0031】
この2つの係合凹部15a、15bのうち、ラッチL突出方向に対して180°側に位置する係合凹部15bは解錠用であり、ラッチL突出方向に対して90°側に位置する係合凹部15aは施錠用である。
【0032】
さらに、係合板6の他側面(扉側方に向く側面)における下方角側には、L字切欠状の下端係合部6cが形成されており、カードキー挿入部5の挿入孔5aにカードキーaが挿入されていないときには、後述する横スライド式ストッパー7の凹欠状の出入口における内側縁部の一方に下端係合部6cが係止されることで、ラッチLが回動できないようになっている。
【0033】
図8(a)および図8(b)に示すように、係合板6の下方移動を規制するための横スライド式ストッパー7は、傾斜状の角部7aを介して下方に向く一端アーム7b側が幅長で短く、横方に向く他端アーム7c側が細長となっている。この他端アーム7c側の長手方向に沿って突設した係合突起7dが、台座Sの横長となった不図示のスライド溝に嵌り込んで左右方向にスライドできるようになっている。
【0034】
また、横スライド式ストッパー7の横方に向く他端アーム7c側における手前側面には、係合板6用の出入口7eが凹欠状に形成されている。この出入口7eは、略中間に位置する段差を介して、係合板6の幅狭の下端部および幅広の中間部(下端係合部6c位置よりも上側)が出入できるようになっている。
【0035】
そして、横スライド式ストッパー7の下方に向く一端側内面は、取付ベース2に取り付けられたL字板状の係止板16と一体となって配されているコイルスプリング17を介して連結されており、横スライド式ストッパー7自体をカードキー挿入部5の挿入孔5a側へ向けて付勢している。
【0036】
このとき、図4に示すように、横スライド式ストッパー7の凹欠状の出入口7eにおける先端方向に位置する内側縁部に係合板6の下端係合部6cが係止され下方移動が規制されることで、シリンダー錠Qのキー孔Kに差し込まれたキーを施錠方向に回してもラッチLが回動できないようにしている。
【0037】
また、図8(b)に示すように、カードキー挿入部5の挿入孔5aにカードキーaが挿入された際には、当該カードキーaの下端側角部が横スライド式ストッパー7の傾斜状の角部7aを圧接し、横スライド式ストッパー7自体をコイルスプリング17の弾発力に抗して外側の扉側方に向けてスライドさせるものとなっている。
【0038】
そして、この横スライド式ストッパー7の移動により、当該横スライド式ストッパー7の出入口7eにおける内側縁部と係合板6の下端係合部6cとの係合が外れ、係合板6の幅広の中間部(下端係合部6c位置よりも上側)を出入口7eの下方側に移動できるようにしている。
【0039】
横スライド式ストッパー7の下方に配した扉開閉検知ラッチ8は、図9に示すように、平面船底型に形成され、背部ケーシング1の側面に凹欠状に形成された出入口1aに、コイルバネ18を介して挿入されている。すなわち、扉開閉検知ラッチ8は、上面側に凹溝部8aが形成され、その中央は後方および上下方向にわたって開放されている。
【0040】
また、開放部分に後方側からコイルバネ18が挿入され、開放部分内奥部から後方に向けて形成された突起8bと、背部ケーシング1の出入口内奥部から外方に向けて突設した突起1aとによってコイルバネ18が係止された状態で介装される。
【0041】
さらに、扉開閉検知ラッチ8の凹溝部8aに対向する他側面に外方に向けて湾曲して成る係止爪18bが設けられており、扉開閉検知ラッチ8が外方へ移動しても、この係止爪18bが背部ケーシング1背面に形成された係止孔18cに係合されることで、背部ケーシング1側面の出入口から扉開閉検知ラッチ8が抜脱されないようになっている。
【0042】
図5および図8(b)に示すように、カードキー挿入部5の挿入孔5aにカードキーaが挿入されて係合板6の幅広の中間部(下端係合部6cよりも上側)を横スライド式ストッパー7の出入口7eの下方側に移動した際においても、扉開閉検知ラッチ8が内側に移動しない限り、この凹溝部8a後方の上壁面に、係合板6の下端部が係止されてラッチLが回動しないものとなっている。
【0043】
一方、扉開閉検知ラッチ8がコイルバネ18の弾発力に抗して内側に退避移動した際には、係合板6の幅狭の下端部(下端係合部6cよりも下側)が扉開閉検知ラッチ8の凹溝部8aに係入可能となるから、ラッチL基部の90°間隔毎に形成された2つの係合凹部15a、15b間での回動が自由に行えるものとなっている。
【0044】
カード挿入孔5a内側に備えたカードキーストッパー9は、図10(a)および図10(b)に示すように、カードキーaの厚み分に相当する幅のカード挿入溝9aを中央に有する板材によって形成されており、その基部が、取付ベース2に固定されている支持板19の一端から前方に突出したアーム部19a先端に支持軸20を介して取り付けられていることで、カードキーストッパー9自体が水平方向に揺動可能となっている。このとき、支持軸20にはツル巻バネ21の中間コイル部分が巻装され、コイル一端側がアーム部19aの側面に掛架され、コイル他端側がカードキーストッパー9の基部側に形成した不図示の係止孔に係架されている。
【0045】
そして、図4、図5および図10(a)に示すように立ち上がっているラッチL背面部によってカードキーストッパー9が押圧されることで自体が外側方向に揺動し、カードキーストッパー9のカード挿入溝9aと、背部ケーシング1内のカード挿入孔5aとが合致する。
【0046】
一方、図6および図10(b)に示すように、キーを回してラッチLを90°回動させて施錠した際には、ラッチL背面部による押圧が解除され、カードキーストッパー9はツル巻バネ21のバネ力によって内側方向に揺動し、これによって背部ケーシング1内のカード挿入孔5aがカードキーストッパー9で閉鎖されるものとしてある。
【0047】
次に、以上のように構成された本発明に係るカード式錠前装置の形態についての使用、動作の一例について説明する。
先ず、施錠操作について述べると、図4および図8(a)に示すように、最初は横スライド式ストッパー7の凹欠状の出入口7eにおける先端方向に位置する内側縁部に係合板6の下端係合部6cが係止されていることで、ラッチLは立ち上がったまま、横に回動できない状態(施錠不可能な状態)となっている。
【0048】
そして、開扉した状態で前記した正規のカードキーaをカード挿入部5の挿入孔5aに上方から挿入する。このとき、カードキーaの下端角部が横スライド式ストッパー7の傾斜状の角部7aに突き当たり、さらに上から強く押すことで最大降下位置に至り、カードキーaの挿入作業が終了する。
【0049】
この横スライド式ストッパー7は、図5および図8(b)に示すように、カードキーaの下端角部によって押され、横スライド式ストッパー7自体をコイルスプリング17の弾発力に抗して外側の扉側方に向けてスライドされる。このとき、係合板6の下端係合部6cと横スライド式ストッパー7の他端アーム7cの内縁部との係合が外れるが、扉開閉検知ラッチ8が内側に移動していない場合は、扉開閉検知ラッチ8の凹溝部8a後方の上壁面に、係合板6の幅狭の下端部が係止されてラッチLは回動しない。
【0050】
さらに、この状態で閉扉すると、扉開閉検知ラッチ8の先端がロッカー本体の扉枠と突き当たり、コイルバネ18に抗して後退する。そして、係合板6の下端部が凹溝部8a後方の上壁面から外れて凹溝部8a内側に係入する。これによって、図6に示すように、シリンダー錠Qのキー孔Kに差し込まれているキーを回し、ラッチを90°回動させて施錠することができる。この施錠回転により、ラッチLの施錠時用の係合凹部15aと、係合板6の上端係合部6bが係合する。
【0051】
これと同時に、図10(b)に示すように、ラッチLの背面部による押圧が解除され、カードキーストッパー9はツル巻バネ21の弾発力によって内側に揺動し、これによって背部ケーシング1内のカード挿入部5の挿入孔5aがカードキーストッパー9で閉鎖される。而して、カードキーaは施錠中、カードキー挿入孔5aから抜くことはできない。これに対し、閉扉施錠時にはキー孔Kからのキーの抜脱が可能な状態となっており、このキーをキー孔Kから抜いて保管する。
【0052】
また、この状態で開扉するには、キーをキー孔Kに差し込み、反対方向に回動して解錠するが、このとき、キーはキー孔Kから抜けない。つまり、開扉状態で且つ解錠時においてはキーの紛失防止のためにキーが抜脱不可能となる。
【0053】
次に、解錠操作について説明すると、キー孔Kにキーを挿入して解錠方向に回動する。このとき、扉開閉検知ラッチ8は、この先端がロッカー本体の扉枠と突き当たってコイルバネ18の弾発力に抗して後退している状態であるから、図6に示すように、係合板6の下端部が凹溝部8a後方の上壁面から外れて凹溝部8a内側に係入され、ラッチLを90°反対方向に回動して立ち上げ、解錠することができる。
【0054】
そして、開扉すると、図5に示すように、扉開閉検知ラッチ8はコイルバネ18の弾発力によって扉側方へ突出する。これによって、係合板6の下端部が凹溝部8a後方の上壁面に上昇して係止され、ラッチLは施錠方向に回動できない状態となる。
【0055】
これと同時に、ラッチL背面部によってカードキーストッパー9が押圧されることで自体が揺動し、カードキーストッパー9のカード挿入溝9aと、背部ケーシング1内のカード挿入孔5aとが合致する。而して、カードキーa指先で摘んでを上方へ引き抜くことができる。
【0056】
一方、カードキーaを引き抜いた際には、図4および図8(a)に示すように、横スライド式ストッパー7は、コイルスプリング18の弾発力により後退し、横スライド式ストッパー7の凹欠状の出入口7eにおける先端方向に位置する内側縁部に係合板6の下端係合部6cが係止されることで係合板6の下方移動が阻止され、キーの施錠方向への回動ができない状態となる。このキーの施錠方向への回動を行うためには、前記した施錠操作の手順を繰り返えせば良い。
【符号の説明】
【0057】
a カードキー
K キー孔
L ラッチ
P ラッチ規制手段
Q シリンダー錠
S 台座
1 背部ケーシング
1a 突起
2 取付ベース
3 窓部
4 前枠
5 カードキー挿入部
5a カード挿入孔
6 係合板
6a 溝部
6b 上端係合部
6c 下端係合部
6d 係合突起
7 横スライド式ストッパー
7a 角部
7b 一端アーム
7c 他端アーム
7d 係合突起
7e 出入口
8 扉開閉検知ラッチ
8a 凹溝部
8b 突起
9 カードキーストッパー
9a カード挿入溝
(11a、11b、…11e) ネジ孔
12 ネジ
13 凹溝
13a スライド溝
13b 軸部
14 板バネ
15a 施錠時用の係合凹部
15b 解錠時用の係合凹部
16 係止板
17 コイルスプリング
18 コイルバネ
18c 係止孔
19 支持板
19a アーム部
20 支持軸
21 ツル巻バネ
103 取付ケース
105 外ケース
106 凹溝
107 開口部
109 内ケース
111 錠本体
111a 回転軸
114 係合板
116 ラッチ
124 バネ
128 係合片
133 扉開・閉検知ラッチ
138 圧縮バネ
143 挿入凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略中央に矩形状の窓部を備えた前枠と、前枠の背面側に配設された背部ケーシングとを有し、背部ケーシングには、上方からカードキーを挿入するカードキー挿入部と、カードキー挿入部に隣接配置されたシリンダー錠のラッチと、ラッチの下側に配置されたラッチ規制手段それぞれを備え、ラッチ規制手段は、ラッチ基部の解錠時用と施錠時用との2つの係合凹部に係合する係合板と、係合板の下方移動を規制する横スライド式ストッパーと、ラッチの回動を規制する扉開閉検知ラッチを備えて成ることを特徴とするカード式錠前装置。
【請求項2】
ラッチ規制手段は、ラッチ基部に形成された解錠時用と施錠時用の係合凹部に板バネの弾発力を介して係合されるよう上下方向にスライド自在とした係合板と、カードキー挿入部に対するカードキーの挿脱によって横方向にスライド可能とし、係合板の下方移動を規制する横スライド式ストッパーと、外方への突出移動により係合板の下端部を係止してラッチの回動を阻止し、また内方への退避移動により係合板の下端部の係止を解除してラッチの回動を許容する扉開閉検知ラッチとを備えて成る請求項1記載のカード式錠前装置。
【請求項3】
上方のカードキー挿入部近傍に配され、中央にカード挿入溝を有し且つ水平方向に揺動可能としたカードキーストッパーを備え、解錠方向に立ち上がったラッチによってカードキーストッパーが押圧されることで、カード挿入溝と、背部ケーシング内のカード挿入孔とが合致してカードキー挿脱が可能な状態とし、施錠方向に回動したラッチによってカードキーストッパーの押圧が解除されることで、カード挿入溝がカード挿入孔からずれてカードキー挿入部を閉鎖させ、カードキーの挿脱を阻止するよう形成された請求項1または2記載のカード式錠前装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−248826(P2010−248826A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100864(P2009−100864)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(591225109)ジーエスケー販売株式会社 (14)