説明

カード状媒体処理装置

【課題】密着型スキャナを有するカード状媒体処理装置において、より精度の高い画像を取得することが可能なカード状媒体処理装置を提供すること。
【解決手段】カード状媒体処理装置1は、カード状媒体2が搬送される搬送路5と、搬送路5で搬送されるカード状媒体2の表面に対向するように配置されカード状媒体2の表面を読み取る密着型スキャナ3と、カード状媒体2の表面に向かってかつZ方向へ密着型スキャナ3を付勢する付勢手段15と、Z方向へ密着型スキャナ3を案内する案内手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード状媒体の表面を読み取る密着型スキャナを備えるカード状媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行のATM(Auto Teller Machine)等で使用されているカードリーダとして、カードのエンボス文字等を撮影して画像を取得するための密着型スキャナを備えるカードリーダが本出願人によって提案されている(たとえば、特許文献1および2参照。)。
【0003】
この特許文献1および2に記載のカードリーダでは、密着型スキャナを保持するホルダが圧縮コイルバネの付勢力でカード搬送路に向かって付勢されている。具体的には、ホルダは、密着型スキャナを保持する保持部とこの保持部よりもカードの搬送方向の奥側に配置されるバネ当接部とを備えており、圧縮コイルバネによってバネ当接部がカード搬送路に向かって付勢されている。
【0004】
このカードリーダでは、バネ当接部に当接する圧縮コイルバネによって密着型スキャナを保持するホルダがカード搬送路に向かって付勢されているため、カード搬送路を搬送されるカードがたとえ湾曲していたとしても、カードと密着型スキャナとの間隔を一定に保つことが可能になる。したがって、このカードリーダでは、被写界深度が浅い密着型スキャナを搭載しているにもかかわらず、カードのエンボス文字等の適切な画像を取得することが可能になる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−342751号公報
【特許文献2】特開2005−27205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、特許文献1および2に記載のカードリーダでは、被写界深度が浅い密着型スキャナを搭載しているにもかかわらず、カードのエンボス文字等の適切な画像を取得することが可能になる。一方、市場では、密着型スキャナを搭載しているカードリーダで、より精度の高い画像を取得したいとのニーズが高まっている。
【0007】
そこで、本発明の課題は、密着型スキャナを有するカード状媒体処理装置において、より精度の高い画像を取得することが可能なカード状媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のカード状媒体処理装置は、カード状媒体が搬送される搬送路と、搬送路で搬送されるカード状媒体の表面に対向するように配置されカード状媒体の表面を読み取る密着型スキャナと、搬送路で搬送されるカード状媒体の厚み方向へかつカード状媒体の表面に向かって密着型スキャナを付勢する付勢手段と、カード状媒体の厚み方向へ密着型スキャナを案内する案内手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のカード状媒体処理装置では、カード状媒体の表面を読み取る密着型スキャナを、付勢手段が、カード状媒体の厚み方向へかつカード状媒体の表面に向かってへ付勢している。また、案内手段が密着型スキャナをカード状媒体の厚み方向へ案内している。そのため、湾曲したカード状媒体が搬送路で搬送され、このカード状媒体が密着型スキャナに接触して、密着型スキャナがカード状媒体の湾曲状態に応じてカード状媒体の厚み方向へ退避する場合であっても、密着型スキャナを傾斜させずに退避させることが可能になる。したがって、本発明では、湾曲したカード状媒体であってもその表面を精度良く読み取ることが可能になり、その結果、より精度の高い画像を取得することが可能になる。
【0010】
また、本発明のカード状媒体処理装置では、湾曲したカード状媒体が搬送路で搬送されても、密着型スキャナがカード状媒体の湾曲状態に応じて退避するため、カード状媒体が密着型スキャナに大きな接触力で接触するのを防止することが可能になる。したがって、搬送路で搬送されるカード状媒体の搬送負荷を低減することが可能になる。また、搬送路に面するように配置される密着型スキャナのガラス面の損傷を防止することが可能になり、カード状媒体の表面を読み取る際の、ガラス面の損傷に起因する読み取り品質の低下を防止することが可能になる。
【0011】
本発明において、付勢手段は、カード状媒体の搬送方向とカード状媒体の厚み方向とに略直交するカード状媒体の幅方向に所定の間隔をあけた状態で配置される複数の圧縮コイルバネであることが好ましい。このように構成すると、カード状媒体の幅方向で密着型スキャナを傾斜させずに密着型スキャナを退避させることが可能になる。したがって、より精度の高い画像を取得することが可能になる。
【0012】
本発明において、案内手段は、密着型スキャナを保持する保持部材に形成される突起部と、カード状媒体の搬送方向で突起部に対向配置され突起部に当接する当接部と、当接部と突起部とが当接するように保持部材を付勢する付勢部材とを備え、突起部および当接部の少なくともいずれか一方には、付勢部材の付勢力で突起部または当接部に当接するとともにカード状媒体の搬送方向に略直交する平面状の平面部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、簡易な構成で、密着型スキャナをカード状媒体の厚み方向へ直線状に案内することができる。
【0013】
本発明において、突起部は、保持部材の、カード状媒体の搬送方向の一方側に形成され、付勢部材は、保持部材の、カード状媒体の搬送方向の他方側に配置されていることが好ましい。また、この場合には、突起部は、保持部材の、カード状媒体の搬送方向とカード状媒体の厚み方向とに略直交するカード状媒体の幅方向の両端側の2箇所に形成され、付勢部材は、保持部材の、カード状媒体の幅方向の略中心位置に配置されていることが好ましい。このように構成すると、密着型スキャナを保持する保持部材が3点で支持されるため、退避するときの密着型スキャナがカード状媒体の搬送方向で傾斜するのを防止することが可能になる。
【0014】
本発明において、カード媒体処理装置は、たとえば、密着型スキャナとして、搬送路を挟んで対向配置される第1密着型スキャナと第2密着型スキャナとを備え、第1密着型スキャナは、付勢手段によって付勢されカード状媒体の厚み方向へ移動可能であり、第2密着型スキャナは、搬送路に面するように固定されている。このように構成すると、第1密着型スキャナと第2密着型スキャナが搬送路を挟んで対向配置されるため、カード状媒体の両面を読み取るために2個の密着型スキャナが設けられる場合であっても、カード状媒体の搬送方向でカード媒体処理装置を小型化することができる。また、湾曲したカード状媒体が搬送路で搬送されると、第1密着型スキャナがカード状媒体の湾曲状態に応じて退避するため、カード状媒体が第1密着型スキャナおよび第2密着型スキャナに大きな接触力で接触するのを防止することが可能になる。したがって、搬送路で搬送されるカード状媒体の搬送負荷を低減すること、および、第1密着型スキャナ、第2密着型スキャナのガラス面の損傷に起因する画像品質の低下を防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明では、密着型スキャナを有するカード状媒体処理装置において、より精度の高い画像を取得することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(カード状媒体処理装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカード状媒体処理装置1の内部の概略構成を説明するための側面図である。
【0018】
本形態のカード状媒体処理装置1は、カード状媒体2の表面の文字等を読み取ってカード状媒体2の表面の文字等の画像を取得するための装置である。このカード状媒体処理装置1は、図1に示すように、カード状媒体2の表面を読み取る2個の密着型スキャナ3、4と、カード状媒体処理装置1内でカード状媒体2を搬送するためのカード搬送機構とを備えている。また、カード状媒体処理装置1内には、カード状媒体2が搬送される搬送路5が図1の左右方向に直線状に形成されている。
【0019】
本形態では、X方向(図1の左右方向)にカード状媒体2が搬送される。すなわち、X方向はカード状媒体2の搬送方向である。また、X方向に直交するY方向(図1の紙面垂直方向)は、カード状媒体2の幅方向(具体的には、カード状媒体2の短手幅方向)であり、X方向およびY方向に直交するZ方向(図1の上下方向)は、カード状媒体2の厚み方向である。なお、以下の説明では、カード状媒体2の入口側となるX1方向側を「手前」側、その反対側となるX2方向側を「奥」側とし、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0020】
本形態のカード状媒体2は、比較的硬いカード状の媒体であり、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。このカード状媒体2の両表面(表側の面および裏側の面)には、文字や図形、模様等が描かれている。また、このカード状媒体2の表面には、磁気情報が記録される磁気ストライプが形成されたり、ICチップが固定されている。なお、カード状媒体2には、通信用のアンテナが内蔵されても良いし、カード状媒体2の表面には、感熱方式によって印字が行われる印字部が形成されても良い。また、カード状媒体2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードや、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0021】
カード搬送機構は、カード状媒体2の表面に当接してカード状媒体2を搬送する搬送ローラ6、7、8と、搬送ローラ6〜8のそれぞれに対向するとともに搬送ローラ6〜8のそれぞれに向かって付勢されるパッドローラ9、10、11とを備えている。搬送ローラ6〜8は、モータ等からなる駆動機構(図示省略)に連結されている。また、搬送ローラ6〜8は、搬送路5の上面側に配置され、パッドローラ9〜11は、搬送路5の下面側に配置されている。また、搬送ローラ6〜8は、手前側から奥側に向かってこの順番で配置されている。
【0022】
密着型スキャナ3と密着型スキャナ4とは同じ構成を備えている。この密着型スキャナ3、4は、そのガラス面がカード状媒体2の表面に対向するように配置されるとともに、搬送路5を挟んで互いに対向配置されている。具体的には、密着型スキャナ3が、搬送路5の上面側に配置され、密着型スキャナ4が、搬送路5の下面側に配置されている。また、X方向において、密着型スキャナ3、4は搬送ローラ7、8の間に配置されている。具体的には、密着型スキャナ3の光が密着型スキャナ4に入射しないように、かつ、密着型スキャナ4の光が密着型スキャナ3に入射しないように、密着型スキャナ4は、密着型スキャナ3よりもわずかに入口側に配置されている。
【0023】
密着型スキャナ3は、搬送路5の上側に配置されるホルダ14の内部に固定されている。ホルダ14は、付勢手段15によって搬送路5に向かって下方向へ付勢されるとともに、Z方向へ移動可能となっている。すなわち、密着型スキャナ3は、付勢手段15によって搬送路5に向かって付勢され、Z方向へ移動可能となっている。一方、密着型スキャナ4は、搬送路5に面するように、搬送路5の下面側を構成するブロック部材16に固定されている。本形態では、密着型スキャナ3は、付勢手段15によって付勢されZ方向へ移動可能な第1密着型スキャナであり、密着型スキャナ4は、搬送路5に面するように固定された第2密着型スキャナである。
【0024】
なお、本形態では、湾曲していない真っ直ぐなカード状媒体2が搬送される場合に、カード状媒体2の表面と密着型スキャナ3、4のガラス面との間に隙間が形成されるように、密着型スキャナ3の移動下限が設定され、また、密着型スキャナ4が固定されている。
【0025】
(付勢手段、ホルダおよびその周辺部の構成)
図2は、図1に示すホルダ14およびその周辺部分の構成を示す拡大図である。図3は、図2のE−E方向からホルダ14等の概略構成を示す概略図である。
【0026】
上述のように、ホルダ14は、付勢手段15によって搬送路5に向かって付勢されている。本形態の付勢手段15は、圧縮コイルバネであり(以下、本形態の付勢部材15を「圧縮コイルバネ15」と表記する。)、Y方向に所定の間隔をあけた状態で配置される2本の圧縮コイルバネ15によって、ホルダ14が搬送路5に向かって付勢されている。圧縮コイルバネ15には、図3に示すように、搬送路5の上面側を構成する第1のブロック部材18に上下方向を長手方向として形成された棒状突起18aが挿通されている。
【0027】
ホルダ14の上面には、図3に示すように、圧縮コイルバネ15の下端側および棒状突起18aの下端側が配置される段付きの配置凹部14aが形成されている。また、ホルダ14の手前側の面14bには、手前側に向かって突出する2個の突起部14cが形成されている。さらに、ホルダ14の上面側には、ホルダ14を手前側に向かって付勢する付勢部材としての板バネ19が固定されるバネ固定部14dが形成されている。
【0028】
配置凹部14aは、X方向では、ホルダ14の略中心位置に形成されるとともに、Y方向では、ホルダ14の両端の近傍に形成されている。配置凹部14aの底面には、図3に示すように、棒状突起18aの下端が当接している。配置凹部14aの段部には、圧縮コイルバネ15の下端が当接している。また、圧縮コイルバネ15の上端は、棒状突起18aの上端(基端)側で第1のブロック18に当接しており、ホルダ14は上側に配置される圧縮コイルバネ15によって下方向へ直線状に付勢されている。
【0029】
上述のように、密着型スキャナ3は、ホルダ14の内部に固定されている。具体的には、密着型スキャナ3は、ホルダ14の下端側に形成された凹部の中に固定されている。また、密着型スキャナ3は、ホルダ14のX方向の略中心位置に固定されている。また、ホルダ14のY方向の幅は、密着型スキャナ3のY方向の幅とほぼ等しくなっている。そのため、密着型スキャナ3は、圧縮コイルバネ15によって、ホルダ14とともに搬送路5に向かって下方向へ直線状に付勢されている。
【0030】
突起部14cは、ホルダ14の下端からホルダ14の上下方向の略中心位置まで形成されている。また、2個の突起部14cは、Y方向に所定の間隔をあけた状態でホルダ14のY方向の両端側に形成されている。突起部14cの手前端の下端側部分は、図1に示すように、YZ平面(Y方向とZ方向とから形成される平面)に平行な平面部14eとなっている。
【0031】
バネ固定部14dは、XY平面(X方向とY方向とから形成される平面)に平行な平面状に形成されるとともに、ホルダ14の奥端側に形成されている。また、バネ固定部14dは、ホルダ14のY方向の略中心位置に形成されている。
【0032】
板バネ19は、バネ固定部14dに当接して固定される平板状部分と、ホルダ14の奥側にYZ平面と略平行に配置される平板状部分とを有する略L形状に形成されている。上述のように、バネ固定部14dは、ホルダ14のY方向の略中心位置に形成されており、板バネ19は、ホルダ14のY方向の略中心位置に配置されている。
【0033】
第1のブロック部材18におけるホルダ14の奥側部分には、板バネ19の配置位置に対応するようにバネ当接部18bが形成されている。また、第1のブロック部材18とともに搬送路5の上面側を構成する第2のブロック部材20には、突起部14cに対向配置される2個の当接部20aが形成されている。具体的には、図1に示すように、第2のブロック部材20における搬送ローラ7の奥側部分に奥側に向かって突出する当接部20aが2個形成されている。当接部20aの奥端の下端側部分は、図1に示すように、YZ平面に平行な平面部20bとなっている。
【0034】
板バネ19の下端側は、第1のブロック部材18のバネ当接部18bに当接しており、板バネ19は、ホルダ14を手前側に付勢している。また、突起部14cは、板バネ19の付勢力で、第2のブロック部材20の当接部20aに当接している。具体的には、突起部14cの平面部14eと当接部20aの平面部20bとが板バネ19の付勢力で当接している。
【0035】
そのため、密着型スキャナ3は、第1のブロック部材18および第2のブロック部材20に対して、ホルダ14とともに、当接部20aの平面部20bに沿ってZ方向へ直線状に移動可能となっている。すなわち、本形態では、第1のブロック部材18のバネ当接部18bと、第2のブロック部材20の当接部20aと、ホルダ14の突起部14cと、板バネ19とによって、密着型スキャナ3をZ方向へ直線状に案内する案内手段が構成されている。
【0036】
(付勢手段および案内手段の作用)
以上のように構成されたカード状媒体処理装置1では、搬送ローラ6〜8等のカード搬送機構によって、搬送路5でカード状媒体2を搬送しながら、密着型スキャナ3、4でカード状媒体2の表面の読み取りが行われる。
【0037】
ここで、たとえば、上方向(Z1方向)に湾曲したカード状媒体2が搬送路5で搬送されると、カード状媒体2の湾曲部分が密着型スキャナ3のガラス面に接触する。カード状媒体2の湾曲部分が密着型スキャナ3のガラス面に接触すると、圧縮コイルバネ15の付勢力に抗して、ホルダ14とともに密着型スキャナ3がカード状媒体2の湾曲状態に応じて上方向へ退避する。このとき、密着型スキャナ3は、当接部20a、突起部14cおよび板バネ19等からなる案内手段によって上方向へ直線状に案内される。
【0038】
また、カード状媒体2の湾曲部分が密着型スキャナ3の下方を通過すると、カード状媒体2の表面が密着型スキャナ3のガラス面から離れるため、圧縮コイルバネ15の付勢力によって、ホルダ14とともに密着型スキャナ3が搬送路5に向かって下方向(Z2方向)へ移動する。このとき、密着型スキャナ3は、当接部20a、突起部14cおよび板バネ19等からなる案内手段によって下方向へ直線状に案内される。
【0039】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、圧縮コイルバネ15が、カード状媒体2の表面に向かって下方向(Z2方向)へ密着型スキャナ3を付勢している。また、当接部20a、突起部14cおよび板バネ19等からなる案内手段がZ方向へ密着型スキャナ3を直線状に案内している。そのため、湾曲したカード状媒体2が搬送路5で搬送され、カード状媒体2が密着型スキャナ3に接触して、密着型スキャナ3がカード状媒体2の湾曲状態に応じて上方向(Z1方向)へ退避する場合であっても、密着型スキャナ3を傾斜させずに退避させることができる。したがって、湾曲したカード状媒体2であってもその表面を精度良く読み取ることが可能になり、より精度の高い画像を取得することが可能になる。
【0040】
また、本形態では、湾曲したカード状媒体2が搬送路5で搬送される場合にのみ、カード状媒体2の湾曲状態に応じて密着型スキャナ3が上方向(Z1方向)へ退避する。そのため、カード状媒体2の湾曲部分および非湾曲部分のそれぞれに対し、安定した被写界深度を保つことができ、精度の高い画像を取得することが可能になる。
【0041】
本形態では、2本の圧縮コイルバネ15が、所定の間隔をあけた状態でY方向におけるホルダ14の両端側に配置されている。そのため、Y方向で密着型スキャナ3を傾斜させずに密着型スキャナ3を退避させることができる。したがって、より精度の高い画像を取得することが可能になる。また、本形態では、2本の圧縮コイルバネ15は、X方向におけるホルダ14の略中心位置に配置されている。そのため、X方向でのホルダ14の傾斜を抑制することが可能になる。
【0042】
本形態では、YZ平面に平行な突起部14cの平面部14eと当接部20aの平面部20bとが板バネ19の付勢力で当接している。そのため、比較的簡易な構成で、密着型スキャナ3をZ方向へ直線状に案内することができる。
【0043】
本形態では、突起部14cがホルダ14の手前側に形成され、板バネ19がホルダ14の奥側に配置されている。また、突起部14cがY方向におけるホルダ14の両端側の2箇所に形成され、板バネ19がY方向におけるホルダ14の略中心位置に配置されている。すなわち、密着型スキャナ3を保持するホルダ14が手前側および奥側から3点で支持されている。そのため、本形態では、退避するときの密着型スキャナ3のX方向での傾斜を確実に防止することが可能になる。
【0044】
本形態では、密着型スキャナ3と密着型スキャナ4とが搬送路5を挟んで対向配置される。そのため、カード状媒体2の両面を読み取るために2個の密着型スキャナ3、4が設けられる場合であっても、X方向でカード媒体処理装置1を小型化することができる。また、湾曲したカード状媒体2が搬送路5で搬送されると、密着型スキャナ3がカード状媒体2の湾曲状態に応じて退避する。そのため、密着型スキャナ3と密着型スキャナ4とが搬送路5を挟んで対向配置される場合であっても、カード状媒体2と密着型スキャナ3、4とが大きな接触力で接触するのを防止することができる。したがって、密着型スキャナ3と密着型スキャナ4とが搬送路5を挟んで対向配置される場合であっても、搬送路5で搬送されるカード状媒体2の搬送負荷を低減することができる。また、搬送路5に面するように配置される密着型スキャナ3、4のガラス面の損傷を防止することができ、カード状媒体2の表面を読み取る際の、ガラス面の損傷に起因する読み取り品質の低下を防止することができる。
【0045】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0046】
上述した形態では、密着型スキャナ3は、2本の圧縮コイルバネ15によって、搬送路5に向かって付勢されている。この他にもたとえば、密着型スキャナ3は、3本以上の圧縮コイルバネ15によって、搬送路5に向かって付勢されても良いし、1本の圧縮コイルバネ15によって、搬送路5に向かって付勢されても良い。
【0047】
また、上述した形態では、圧縮コイルバネ15によって、密着型スキャナ3が搬送路5に向かって付勢されているが、板バネや引っ張りコイルバネ等の他のバネ部材、あるいは、ゴムやスポンジ等の弾性部材によって、密着型スキャナ3が搬送路5に向かって付勢されても良い。すなわち、付勢部材15は、板バネや引っ張りコイルバネ等の他のバネ部材であっても良いし、ゴムやスポンジ等の弾性部材であっても良い。
【0048】
上述した形態では、板バネ19によって、密着型スキャナ3が手前側に付勢されている。この他にもたとえば、圧縮コイルバネや引っ張りコイルバネ等の他のバネ部材によって、密着型スキャナ3が手前側に付勢されても良い。
【0049】
上述した形態では、突起部14cがY方向におけるホルダ14の両端側の2箇所に形成され、板バネ19がY方向におけるホルダ14の略中心位置に配置されている。この他にもたとえば、突起部14cがY方向におけるホルダ14の略中心位置の1箇所に形成され、Y方向におけるホルダ14の両端側に2枚の板バネ19が配置されても良い。この場合には、第2のブロック部材20には、突起部14cに対向配置される1個の当接部20aが形成される。
【0050】
上述した形態では、突起部14cの手前端に平面部14eが形成されるとともに、当接部20aの奥端に平面部20bが形成されている。この他にもたとえば、突起部14cの手前端または当接部20aの奥端のいずれか一方のみにYZ平面に平行な平面部が形成されても良い。
【0051】
上述した形態では、密着型スキャナ3は、付勢手段15によって搬送路5に向かって下方向(Z2方向)へ付勢されてZ方向へ移動可能となっている。また、密着型スキャナ4は、ブロック部材16に固定されている。この他にもたとえば、搬送路5の上側に配置される密着型スキャナ3が第1のブロック部材18に固定され、搬送路5の下側に配置される密着型スキャナ4が付勢手段によって搬送路5に向かって上方向(Z1方向)へ付勢されてZ方向へ移動可能となっても良い。また、密着型スキャナ3、4の両方が、付勢手段によって搬送路5に向かって付勢されてZ方向へ移動可能となっても良い。
【0052】
上述した形態では、密着型スキャナ3は、搬送路5を挟んで密着型スキャナ4と対向配置されている。この他にもたとえば、密着型スキャナ3は、搬送路5を挟んで搬送ローラあるいはパッドローラと対向配置されても良い。
【0053】
なお、上述した形態では、付勢手段15によって密着型スキャナ3が下方向(Z2方向)に付勢され、湾曲したカード状媒体2が密着型スキャナ3に接触すると、密着型スキャナ3が上方向(Z1方向)に退避するが、付勢手段15に代えて、搬送路5で湾曲したカード状媒体2が搬送された場合に密着型スキャナ3を上方向へ退避させるリンク機構を設けることも可能である。この場合には、たとえば、密着型スキャナ3よりも手前側に、湾曲したカード状媒体2の湾曲部に接触する接触部材を設け、この接触部材にカード状媒体2の湾曲部が接触したときに密着型スキャナ3が上方向に退避するように、リンク機構を構成すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態にかかるカード状媒体処理装置の内部の概略構成を説明するための側面図である。
【図2】図1に示すホルダおよびその周辺部分の構成を示す拡大図である。
【図3】図2のE−E方向からホルダ等の概略構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0055】
1 カード状媒体処理装置
2 カード状媒体
3 密着型スキャナ(第1密着型スキャナ)
4 密着型スキャナ(第2密着型スキャナ)
5 搬送路
14 ホルダ(保持部材)
14c 突起部(案内手段の一部)
14e 平面部
15 圧縮コイルバネ(付勢手段)
18b バネ当接部(案内手段の一部)
19 板バネ(付勢部材、案内手段の一部)
20a 当接部(案内手段の一部)
20b 平面部
X カード状媒体の搬送方向
Y カード状媒体の幅方向
Z カード状媒体の厚み方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード状媒体が搬送される搬送路と、前記搬送路で搬送される前記カード状媒体の表面に対向するように配置され前記カード状媒体の表面を読み取る密着型スキャナと、前記搬送路で搬送される前記カード状媒体の厚み方向へかつ前記カード状媒体の表面に向かって前記密着型スキャナを付勢する付勢手段と、前記カード状媒体の厚み方向へ前記密着型スキャナを案内する案内手段とを備えることを特徴とするカード状媒体処理装置。
【請求項2】
前記付勢手段は、前記カード状媒体の搬送方向と前記カード状媒体の厚み方向とに略直交する前記カード状媒体の幅方向に所定の間隔をあけた状態で配置される複数の圧縮コイルバネであることを特徴とする請求項1記載のカード状媒体処理装置。
【請求項3】
前記案内手段は、前記密着型スキャナを保持する保持部材に形成される突起部と、前記カード状媒体の搬送方向で前記突起部に対向配置され前記突起部に当接する当接部と、前記当接部と前記突起部とが当接するように前記保持部材を付勢する付勢部材とを備え、
前記突起部および前記当接部の少なくともいずれか一方には、前記付勢部材の付勢力で前記突起部または前記当接部に当接するとともに前記カード状媒体の搬送方向に略直交する平面状の平面部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のカード状媒体処理装置。
【請求項4】
前記突起部は、前記保持部材の、前記カード状媒体の搬送方向の一方側に形成され、
前記付勢部材は、前記保持部材の、前記カード状媒体の搬送方向の他方側に配置されていることを特徴とする請求項3記載のカード状媒体処理装置。
【請求項5】
前記突起部は、前記保持部材の、前記カード状媒体の搬送方向と前記カード状媒体の厚み方向とに略直交する前記カード状媒体の幅方向の両端側の2箇所に形成され、
前記付勢部材は、前記保持部材の、前記カード状媒体の幅方向の略中心位置に配置されていることを特徴とする請求項4記載のカード状媒体処理装置。
【請求項6】
前記密着型スキャナとして、前記搬送路を挟んで対向配置される第1密着型スキャナと第2密着型スキャナとを備え、
前記第1密着型スキャナは、前記付勢手段によって付勢され前記カード状媒体の厚み方向へ移動可能であり、
前記第2密着型スキャナは、前記搬送路に面するように固定されていることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載のカード状媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−303085(P2009−303085A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157358(P2008−157358)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】