説明

カード用コネクタ装置

【課題】長さがほぼ同じで、それらのカードの前端部からの接触端子の位置もほぼ同じ第1カード、第2カードをハウジングの所定の装着部に装着した際のハウジングの挿入口から突出する部分の寸法を同じに設定することができる。
【解決手段】カード1,2がハウジング3の所定の装着位置に配置された際に、スライド部材4の後端部4aがハウジング3の挿入口3aから突出するようにこのスライド部材4を配置し、このスライド部材4にカード1またはカード2を装着させる際に、カード1またはカード2のそれぞれの後端部1e,2dを、スライド部材4の後端部4aから突出させないように位置決めし、カード1,2のそれぞれの接触端子1b,2b位置を互いにカード挿入方向の前後にずらしてこれらカード1,2をスライド部材4上に位置決めさせる係合部10,9c1から成るカード位置決め手段を備えた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状の異なる複数のカードの装着が可能なカード用コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、形状の異なる複数のカードを同一方向から挿入可能なカード用コネクタ装置では、ハウジングの所定の装着位置にカードが装着された際のカードそれぞれの後端部のハウジングのカード挿入口からの突出寸法、あるいはカード排出位置でのカードそれぞれの後端部のハウジングのカード挿入口からの突出寸法を同じにして、ユーザーの使い勝手に影響を与えないようにすることが行なわれている。例えば、特許文献1には、長さが互いに異なり、それぞれの前端部からの接触端子の位置がほぼ同じ複数のカードを、同一方向から挿入可能なカード用コネクタ装置が示され、ユーザーの使い勝手に影響を与えないように、スライド部材を介してカードの保持位置をずらし、ハウジングの所定の装着位置にカードが装着された際の、それぞれのカードの後端部のハウジングのカード挿入口からの突出寸法を同じに設定した構成が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、カードを保持するトレイ内で、長さ及び幅寸法が異なるカードのそれぞれの前端部の角部を規制する位置をずらして、カードそれぞれの後端部のハウジングのカード挿入口からの突出寸法を同じに設定し、ユーザーの使い勝手に影響を与えないようにしたものが開示されている。
【0004】
これらの特許文献1,2に示されるように、ハウジングの所定の装着位置にカードが装着された際の、それぞれのカードの後端部のハウジングのカード挿入口からの突出寸法を同じに設定できるのは、カードの長さの違いに応じてそれぞれのカードの接触端子が接続されるハウジングの接続端子の位置を、カード挿入方向の前後にずらして設けることができるからである。
【特許文献1】特開2005−135627公報
【特許文献2】実用新案登録第3104569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、長さがほぼ同じで、それらのカードの前端部からの接触端子の位置もほぼ同じ複数のカードを、ハウジングから突出する後端部の長さが同じになるように装着させようとする場合に問題を生じる。つまり、ハウジングの所定の装着部に装着された際のそれぞれのカードの後端部のハウジングのカード挿入口からの突出寸法を同じになるように設定しようとすると、それぞれのカードの接触端子が接続されるハウジングの複数の接続端子の位置がほぼ同じ位置となってしまい、本来接続されてはならない接続端子に、この接続端子に対応しないカードの接触端子が接続されて電気的不良を生じてしまう懸念がある。結局、長さがほぼ同じで、それぞれの接触端子のカードの前端部からの位置がほぼ同じ複数のカードを、同一方向から挿入することができるカード用コネクタ装置の実現は物理的に困難となる。上述したような電気的不良を回避しようとすれば、特許文献1,2に示されるように、ハウジングの複数の接続端子の位置をカード挿入方向の前後にずらして配置せざるを得ない。すなわち、ハウジングの所定の装着位置にカードが装着された際の、それぞれのカードの後端部のハウジングのカード挿入口からの突出寸法が異なるものとなり、ユーザーの使い勝手に影響を与えてしまう。
【0006】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、長さがほぼ同じで、それらのカードの前端部からの接触端子の位置もほぼ同じ第1カード、第2カードをハウジングの所定の装着部に装着した際のハウジングの挿入口から突出する部分の寸法を、また、第1カード、第2カードを排出した際のハウジングの挿入口から突出する部分の寸法を、同じに設定することができるカード用コネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、挿入口を有するハウジング内に選択的に挿入される長さがほぼ同じでそれぞれの前端部からの接触端子の位置もほぼ同じ第1カード、第2カードの幅方向、厚さ方向、及び長さ方向を規制し、上記第1カード、または第2カードが装着された状態で上記ハウジング内をカード挿入方向の前後にスライド可能なスライド部材を備え、上記第1カード、上記第2カードが上記ハウジングの所定の装着位置に配置された際に、上記スライド部材の後端部が上記ハウジングの上記挿入口から突出するようにこのスライド部材を配置し、上記スライド部材に上記第1カードまたは上記第2カードを装着させる際に、上記第1カードまたは上記第2カードのそれぞれの後端部を、上記スライド部材の後端部から突出させないように位置決めするとともに、上記第1カードと上記第2カードのそれぞれの上記接触端子位置を互いにカード挿入方向の前後にずらしてこれらの第1カード、第2カードを上記スライド部材上に位置決めするカード位置決め手段を備え、上記スライド部材の後端部を押すことで、第1カード、第2カードが上記ハウジングの所定の装着位置に配置された状態でこのスライド部材をロックし、またはそのロックを解除させることを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明は、カード位置決め手段によって第1カード、第2カードのそれぞれの後端部を、スライド部材の後端部から突出させないように位置決めすることができる。また、カード位置決め手段によって第1カードと第2カードとをスライド部材内においてカード挿入方向の前後にずらして位置決めすることができる。ハウジングには、このように第1カード、第2カードをずらして配置したことによる第1カードの接触端子の位置、第2カードの接触端子の位置に応じてそれぞれ対応する接続端子をずらして配置することができる。したがって、第1カードの接触端子、第2カードの接触端子をそれぞれ該当する接続端子に接続させ、電気的不良を生じさせることなく、第1カード、第2カードに対する信号の送受信が可能となる。
【0009】
また、スライド部材の後端部が押されて、第1カード、第2カードがハウジングの所定の装着位置に装着された際に、スライド部材の後端部がハウジングの挿入口から突出するようにスライド部材を配置してある。これに伴って、第1カード、第2カードが排出された際にも、スライド部材の後端部がハウジングの挿入口から突出するようになっている。したがって、第1カード、第2カードがスライド部材に装着され、これらの第1カード、第2カードがハウジングの所定の装着位置に装着された際に、ハウジングの挿入口から突出する部分の寸法は、ハウジングの挿入口から突出するスライド部材の後端部の寸法であり、第1カード、第2カードのそれぞれの装着時に同じ寸法に設定することができる。
【0010】
また、第1カード、第2カードがハウジングの所定の装着位置に装着された状態でロックされているスライド部材を再度押すと、そのロックが解除されてスライド部材がハウジングの挿入口から押し出され、スライド部材に装着されている第1カード、第2カードが排出される。このようなカード排出時においても、ハウジングの挿入口から突出するスライド部材の後端部の寸法を、第1カード、第2カードのそれぞれに対して同じ寸法に設定することができる。
【0011】
また、本発明は上記発明において、上記カード位置決め手段が、上記スライド部材に設けられ、上記第2カードが係合可能な係合部と、上記スライド部材に備えられカード挿入方向の前後に移動可能であり上記スライド部材に当接することによって移動を停止するとともに上記第2カードの挿入時には移動不能に保持される可動部材に形成され、上記第1カードが係合可能な係合部とから成ることを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明は、スライド部材の係合部の位置を第2カードの長さ寸法を考慮して設定し、可動部材の係合部の位置を、第1カードの長さ寸法を考慮して設定することにより、第1カード、第2カードをスライド部材に装着させた際に、第1カードの後端部、及び第2カードの後端部を、スライド部材の後端部から突出させないように、これらの第1カード、第2カードをスライド部材上に位置決めすることができる。
【0013】
また、本発明は上記発明において、上記スライド部材に設けられる係合部は、上記第2カードの前端部が係合可能なものであり、上記可動部材が、上記スライド部材の両側壁にそれぞれ摺接可能に設けられ、カード挿入方向に沿って延設される第1ガイド、第2ガイドを有し、上記第1ガイド及び上記第2ガイドの少なくとも一方に、上記第1カードが係合する係合部を設けたことを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明は、第1カードがスライド部材に挿入された際には、第1カードが可動部材の第1ガイド及び第2ガイドの少なくとも一方に設けられた係合部に係合し、この係合部を介して可動部材が第1カードとともに移動し、可動部材がスライド部材に当接した位置で可動部材は移動を停止し、第1カードはスライド部材に対して位置決めされる。この間、第1ガイド、第2ガイドは、スライド部材の両側壁に摺接しながら移動する。したがって、可動部材及び第1カードをスライド部材上において円滑に挿入方向へ移動させることができる。第2カードがスライド部材に挿入された際には、第2カードの前端部がスライド部材の係合部に係合した位置でこの第2カードは停止し、スライド部材に対して位置決めされる。
【0015】
また、本発明は上記発明において、上記スライド部材のカード挿入口に切欠きを設けたことを特徴としている。このように構成した本発明は、切欠きを介してスライド部材に装着された第1カード、第2カードを把持し、抜き取ることができ、これらの第1カード、第2カードの取り出しを容易に行なうことができる。
【0016】
また、本発明は上記発明において、上記スライド部材に挿入された上記第1カードと上記第2カードのうちの薄い方のカードの厚さ方向の動きを規制するように、この第2カードを弾性支持可能な支持部材を備えたことを特徴としている。このように構成した本発明は、支持部材を介して薄い方のカードもスライド部材に安定して装着させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、長さがほぼ同じで、それぞれの前端部からの接触端子の位置もほぼ同じ第1カード、第2カードを、カード位置決め手段を介してカード挿入方向の前後に、またスライド部材から後端部が突出しないようにスライド部材に位置決めさせることができるとともに、第1カード、第2カードをハウジングの所定の装着位置に装着させた際の、ハウジングの挿入口から突出するスライド部材の後端部の寸法を同じに設定することができる。また、第1カード、第2カードを排出させた際の、ハウジングの挿入口から突出するスライド部材の後端部の寸法を同じに設定することができる。したがって、このような長さがほぼ同じで、前端部からの接触端子の位置もほぼ同じ第1カード、第2カードを電気的不良を生じさせることなく、ハウジングに装着させることができ、また、ユーザーの使い勝手に影響を与えることなく、これらの第1カード、第2カードをハウジングに装着させ、あるいは排出させることができる。これにより、長さが異なる複数のカードをハウジングに装着させる場合と同様の優れた使い勝手を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下,本発明に係るカード用コネクタ装置を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0019】
[本実施形態に使用される第1カード]
図1は本発明に係るカード用コネクタ装置の一実施形態に使用可能な第1カードを示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は左側面図、(d)図は右側面図、(e)図は背面図、(f)図は裏面図、(g)は斜視図である。
【0020】
この図1に示す第1カード1は、比較的幅寸法が大きく、肉厚のカードから成り、裏面側の前端部1aの近傍には、この図1の(f)図に示すように、信号の送受信に際して活用される複数の接触端子1bを備えている。後端部1eの近傍の両側面には、第1切欠き1c、第2切欠き1dがそれぞれ形成されている。後述する本実施形態への挿入、本実施形態からの取り出しは、後端部1eを把持することにより行なわれる。
【0021】
[本実施形態に使用される第2カード]
図2は本発明に係るカード用コネクタ装置の一実施形態に使用可能な第2カードを示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は左側面図、(d)図は右側面図、(e)図は背面図、(f)図は裏面図、(g)は斜視図である。
【0022】
この図2に示す第2カード2は、第1カード1に比べて幅寸法が小さく、肉薄のカードから成り、裏面側の前端部2aの近傍には、この図2の(f)図に示すように、信号の送受信に際して活用される複数の接触端子2bを備えている。一方の側面に切欠き2cを有するとともに、この切欠き2cが形成されている同じ側面の前端部2a側には、幅寸法を狭めた逃げ部2eが形成されている。後述する本実施形態への挿入、本実施形態からの取り出しは、後端部2dを把持することによって行なわれる。
【0023】
上述した第1カード1と第2カード2は、本実施形態に選択的に使用されるが、これらの第1カード1と第2カード2は、幅寸法は互いに異なるものの長さはほぼ同じに設定され、また、それぞれの前端部1a,2aからの接触端子1b,2bの位置もほぼ同じに設定されている。
【0024】
[本実施形態の構成]
図3は本発明に係るカード用コネクタ装置の一実施形態を示す図で、(a)図はカバーを外した状態を示す平面図、(b)図は右側面図、(c)図は裏面図である。
【0025】
本実施形態は、この図3に示すように、本体を形成する合成樹脂製のハウジング3と、装着される第1カード1、第2カード2の幅方向、厚さ方向、及び長さ方向を規制し、第1カード1、または第2カード2が装着された状態でハウジング3内をカード挿入方向の前後にスライド可能なトレイ状のスライド部材4とを備えている。このスライド部材4は、同図3に示す初期形態では、同図3の(a)図に示すように、その後端部4aがハウジング3の挿入口3aから寸法S1突出するように配置してある。また、第1カード1、第2カード2がハウジング3の所定の装着位置に配置された際にも、このスライド部材4は、後述するように、その後端部4aがハウジング3の挿入口3aから寸法S2突出するように配置してある。
【0026】
ハウジング3内には、スライド部材4をカード排出方向に付勢する付勢部材5を配置してある。また、ハウジング3には、第1カード1の接触端子1bに接続する複数の金属製の第1接続端子6と、第2カード2の接触端子2bに接続する複数の金属製の第2接続端子7とをインサート成形により設けてある。これらの第1接続端子6と第2接続端子7は、互いに接近させて配置してあるとともに、第1接続端子6をハウジング3の手前側に、第2接続端子7をハウジング3の奥側に配置してある。
【0027】
スライド部材4の後端部4a付近のカード挿入口4aには、スライド部材4に挿入された第1カード1と第2カード2のうちの薄い方のカード、すなわち第2カード2の厚さ方向の動きを規制するように、この第2カード2を弾性支持可能な金属製の板ばねから成る支持部材8を設けてある。この支持部材8は、合成樹脂製のスライド部材4の本体にインサート成形によって設けてある。
【0028】
スライド部材4の前端部4b付近には、カード挿入方向と直交する方向に延設され、例えばテーパ面を有する突出部4cを設けてある。また、この突出部4cの付近の手前側には、スライド部材4に挿入された第2カード2の前端部2aが係合可能な係合部10を設けてある。スライド部材4のカード挿入口4dには切欠き12を設けてある。
【0029】
図4は本実施形態に備えられる可動部材を示す図で、(a)図は平面図、(b)は正面図、(c)図は左側面図、(d)図は右側面図、(e)図は背面図、(f)図は裏面図、(g)図は斜視図である。
【0030】
また、本実施形態は、図3,4に示すように、スライド部材4に備えられカード挿入方向の前後に移動可能な可動部材9を備えている。この可動部材9は絶縁材料から成り、図4に示すように、カード挿入方向と直交する方向に延設されるカム板9aと、スライド部材4の両側壁部に摺接し、カード挿入方向の主に手前側に位置し、カード挿入方向に沿って延設される第1ガイド9b、第2ガイド9cと、それぞれカード挿入方向の奥側に延設され、第1ガイド9b側に設けられる第1突起9d、及び第2ガイド9c側に設けられる第2突起9eとを一体的に備えている。
【0031】
図4の(a)図等に示すように、可動部材9は第2ガイド9cに、第1カード1の前端部1aが係合可能な係合部9c1を備えている。この可動部材9は、第2カード2がスライド部材4に挿入された際には、この第2カード2の小さな幅寸法に応じて第2カード2に係合せず、したがってカード挿入方向の前後に移動せず、第1カード1がスライド部材4に挿入された際に、この第1カード1の大きな幅寸法に応じて第1カード1に係合し、カード挿入方向の前後に移動可能なものから成っている。
【0032】
図3に示すように、この可動部材9の第1突起9d、第2突起9eには、奥側部分がスライド部材4に係着保持される一対のばね11が係着されている。すなわち、可動部材9は、これらのばね11によってスライド部材4のカード挿入口4d方向に付勢されている。
【0033】
上述したスライド部材4の前端部4bに設けられる係合部10と、可動部材9の第2ガイド9cに形成された係合部9c1とによって、スライド部材4に第1カード1または第2カード2を装着させる際に、第1カード1の後端部1eを、スライド部材4の後端部4aから突出させないように位置決めするとともに、第1カード1と第2カード2のそれぞれの接触端子1b,2b位置を互いにカード挿入方向の前後にずらしてこれらの第1カード1、第2カード2をスライド部材4上に位置決めするカード位置決め手段が構成されている。
【0034】
スライド部材4は、後述のロック機構を介してプッシュ・プッシュ操作されるようになっている。すなわち、スライド部材4に第1カード1または第2カード2が装着された状態で、このスライド部材4の後端部4aを押すことにより、第1カード1、第2カード2がハウジング3の所定の装着位置に配置された状態でスライド部材4を後述のロック機構によってロックすることができ、このようなロック状態からスライド部材4を押すことにより、ロック機構によるスライド部材4のロックが解除されるようになっている。
【0035】
また、上述したスライド部材4に設けられる可動部材9のカム板9aによって、第1カード1がハウジング3の所定の装着位置に配置された際に、第1カード1の接触端子1bを第1接続端子6に接続させるとともに、第2接続端子7を第1カード1から離れる方向に退避させ、第2カード2がハウジング3の所定の装着位置に配置された際に、第2カード2の接触端子2bを第2接続端子7に接続させるとともに、第1接続端子6を第2カード2から離れる方向に退避させる接続端子退避部材が構成されている。
【0036】
また、上述したスライド部材4に設けられる可動部材9のカム板9aは、第2カード2の厚さ方向を規制しながら、この第2カード2をガイドするガイド部材も兼ねている。
【0037】
上述したスライド部材4のロック機構は、図3に示すように、例えばスライド部材4の一方の側壁部の近傍に設けられ、往路、復路、及びロック部16aを有するハートカム16と、このハートカム16の往路、復路、及びロック部16に係合して相対的に摺動するピンを一端に有し、他端がハウジング3に揺動自在に保持される摺動部材17とから成っている。スライド部材4の他方の側壁部には、第2カード2に形成された切欠き2cに係合可能な板ばね15を配置してある。この板ばね15も、スライド部材4の本体にインサート成形によって設けられている。
【0038】
また、本実施形態は、第1カード1と第2カード2のそれぞれが選択的に挿入されるカード挿入口、例えばスライド部材4のカード挿入口4dの両側壁部に、図3の(a)図に示すように、第1カム13、第2カム14を設けてある。これらの第1カム13、第2カム14は、第1カード1の挿入時には、この第1カード1の挿入動作に伴ってこの第1カード1の厚さ方向に、すなわちスライド部材4の下面方向に退避しつつ、その退避途中にあっては第1カード1の下面の一部をガイドし、装着位置でこの第1カード1の両側面のそれぞれに設けた第1切欠き1c、第2切欠き1dに進入して第1カード1をロックし、第2カード2の挿入時には、上述の退避を行なわずにこの第2カード2の側面をガイドするものからなっている。
【0039】
図5は本実施形態に備えられる上述の第1カムを示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は左側面図、(d)図は右側面図、(e)図は背面図、(f)図は裏面図、(g)図は斜視図、図6は本実施形態に備えられる上述の第2カムを示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は左側面図、(d)図は右側面図、(e)図は背面図、(f)図は裏面図、(g)図は斜視図である。
【0040】
第1カム13は、図5に示すように、スライド部材4のスライド方向に沿うように延設され、このスライド部材4に保持されるとともに、その軸心の回りに回動可能な軸部13aを含んでいる。また、この軸部13aと一体に設けられ、スライド部材4への第1カード1の挿入時に、この第1カード1の下面が摺接して押圧される第1テーパ部13b21が形成され、スライド部材4への第2カード2の挿入時には、この第2カード2の側面をガイドする突起部13b2を具備する作動部13bとを備えている。また、この第1カム13は、スライド部材4のカード挿入口4d側に位置する端部に、挿入された第1カード1をガイドするテーパ部13b1を備えている。さらに、この第1カム13の突起部13b2は、上述した第1テーパ部13b21の反対側、すなわち奥側に位置する部分に、スライド部材4に装着された第1カード1を取り出す際に、第1カード1の下面によって押圧される第2テーパ部13b22を備えている。
【0041】
このように構成される第1カム13は、スライド部材4の一方の側壁部に形成した貫通穴、すなわち空隙部内に配置されるとともに、このスライド部材4の合成樹脂から成る本体にインサート成形されたばねに軸部13aが係着され、この軸部13aの軸心回りに回動可能にスライド部材4に保持されている。したがって、例えば図3に示す初期形態において、第1カード1がスライド部材4に挿入され、第1カム13が第1カード1の厚さ方向に、すなわちスライド部材4の下面方向に押圧された際には、上述した空隙部を介して第1カム13がスライド部材4の下面から突出可能になっている。
【0042】
第2カム14も第1カム13と同様の形状に形成されている。すなわち、図6に示すように、スライド部材4のスライド方向に沿うように延設され、このスライド部材4に保持されるとともに、その軸心の回りに回動可能な軸部14aを含んでいる。また、この軸部14aと一体に設けられ、スライド部材4への第1カード1の挿入時に、この第1カード1の下面が摺接して押圧される第1テーパ部14b21が形成され、スライド部材4への第2カード2の挿入時には、この第2カード2の側面をガイドする突起部14b2を具備する作動部14bとを備えている。また、この第2カム14は、スライド部材4のカード挿入口4d側に位置する端部に、挿入された第1カード1をガイドするテーパ部14b1を備えている。さらに、この第2カム14の突起部14b2は、上述した第1テーパ部14b21の反対側、すなわち奥側に位置する部分に、スライド部材4に装着された第1カード1を取り出す際に、第1カード1の下面によって押圧される第2テーパ部14b22を備えている。
【0043】
このように構成される第2カム14も、スライド部材4の他方の側壁部に形成した貫通穴、すなわち空隙部内に配置されるとともに、このスライド部材4の合成樹脂から成る本体にインサート成形されたばねに軸部14aが係着され、この軸部14aの軸心回りに回動可能にスライド部材4に保持されている。したがって、例えば図3に示す初期状態において、第1カード1がスライド部材4に挿入され、第2カム14が第1カード1の厚さ方向に、すなわちスライド部材4の下面方向に押圧された際には、上述した空隙部を介して第2カム14もスライド部材4の下面から突出可能となっている。
【0044】
[本実施形態への第1カードの挿入]
図7〜10は、第1カードが挿入された際の本実施形態の動作を示す図で、図7は第1カードが本実施形態に挿入された状態を示し、(a)図はカバーを外した状態を示す平面図、(b)図は(a)図のB1−B1断面図、(c)図は裏面図である。図8は第1カードが所定の装着位置に装着された状態を示し、(a)図はカバーを外した状態を示す平面図、(b)図は(a)図のC1−C1断面図、(c)図は裏面図である。図9は第1カードが本実施形態に挿入された際のカムの動作を示し、(a)図は第1カムの動作を示す要部斜視図、(b)図は第2カムの動作を示す要部斜視図である。図10は第1カードの排出に際し第1カードをオーバストロークさせた状態を示し、(a)図はカバーを外した状態を示す平面図、(b)図は(a)図のD1−D1断面図、(c)図は裏面図である。
【0045】
上述した図3に示す初期形態にあっては、スライド部材4は、付勢部材5によってカード排出方向に付勢され、その後端部4aがハウジング3の挿入口3aから寸法S1突出した状態で、ハウジング3に保持されている。スライド部材4上に設けられる可動部材9は、一対のばね11によってスライド部材4のカード挿入口4d方向に付勢され、待機位置に保持されている。スライド部材4のロック機構を形成する摺動部材17の先端のピンは、ハートカム16の往路に係合し、これによってスライド部材4はロックが解除された状態に保たれている。また、スライド部材4の両側壁部に設けた第1カム13、及び第2カム14のそれぞれは、スライド部材4を形成する本体にインサート成形した上述のばねの力によって、スライド部材1上の第1カード1、第2カード2の挿入経路内に突出するように保持されている。
【0046】
この図3に示す初期形態に保たれている本実施形態に、幅寸法の比較的大きな第1カード1が挿入されると、図7に示す状態となる。すなわち、第1カード1がスライド部材4のカード挿入口4dから挿入されると、第1カード1の前端部1aが、図5に示す第1カム13の作動部13bのテーパ部13b2、図6に示す第2カム14の作動部14bのテーパ部14b2に係合してガイドされ、さらにこの第1カード1の前端部1aが、図5に示す第1カム13の作動部13bの突起部13b2に設けられた第1テーパ部13b21に係合し、図6に示す第2カム14の作動部14bの突起部14b2に設けられた第1テーパ部14b21に係合する。これによって、第1カム13、第2カム14の作動部13b,14bの突起部13b2,14b2は、第1カード1の下面によって押し下げられ、図9の(a)図の矢印20、(b)図の矢印22で示すように、軸部13a,14aのそれぞれに係着するばねの力に抗してそれぞれの軸部13a,14aの軸心の回りに回動し、スライド部材4に形成された上述の空隙部から下方向に突出する。
【0047】
さらに、第1カード1がスライド部材4に押し込まれると、第1カード1の前端部1aが可動部材9の第2ガイド9cに形成された係合部9c1に係合し、押し込み力を受けた可動部材9は一対のばね11の力に抗して第1カード1とともにスライド部材4の奥側に向かって移動する。この間、第1カード1の下面の一部は第1カム13の作動部13bの第1テーパ部13b21、及び第2カム14の作動部14bの第1テーパ部14b21によってガイドされ、可動部材9の第1ガイド9b、及び第2ガイド9cは、スライド部材4の両側壁部に摺接し、可動部材9は安定した状態でスライド部材4の奥側に向かって移動する。なお、スライド部材4の挿入口4d付近に設けた弾性を有する支持部材8は、図7の(a)図に示すように、第1カード1の下面によって押圧されて退避する。
【0048】
さらに第1カード1が押し込まれ、可動部材9の係合部9c1が形成された第1ガイド9cがスライド部材4に設けた係合部10に係合すると、第1カード1のスライド部材4に対する押し込みは停止する。これによって第1カード1の一方の側面の第1切欠き1cが第1カム13の作動部13bに対向する位置に至り、第1カード1の他方の第2切欠き1dが第2カム14の作動部14bに対向する位置に至り、軸部13a,14aのそれぞれに係着する上述のばねの力によって、第1カム13の作動部13b、第2カム14の作動部14bが、図9の(a)(b)図の矢印21,23で示すように元の状態まで回動し、第1カム13の作動部13bが第1カード1の第1切欠き1c内に進入し、第2カム14の作動部14bが第1カード1の第2切欠き1d内に進入し、第1カード1がこれらの第1カム13と第2カム14とによってスライド部材4にロックされる。
【0049】
このようにスライド部材4に第1カード1が装着されたものの、スライド部材4がまだハウジング3に押し込まれない状態においては、図7に示すように、スライド部材4の後端部4aがハウジング3の挿入口3aから寸法S1突出した状態に保たれている。また、ロック機構を形成する摺動部材17のピンは、ハートカム16の往路上に配置されている。また、このようにスライド部材4に第1カード1が装着されたときには、スライド部材4の後端部4aから第1カード1の後端部1eが突出しないように、例えばスライド部材4の後端部4aと第1カード1の後端部1eが一致するように、第1カード1はスライド部材4上に保持される。
【0050】
スライド部材4に第1カード1が装着された状態から、スライド部材4が付勢部材5の付勢力に抗してハウジング3に対して押し込まれると、スライド部材4に設けたハートカム16の往路上を、ハウジング3に設けた摺動部材17のピンが相対的に摺動し、第1カード1がハウジング3の所定の装着位置に至ったときに、図8の(a)図に示すように、摺動部材17のピンがハートカム16のロック部16aに係合する。これによって、スライド部材4はハウジング3にロックされる。
【0051】
この間、ハウジング3の奥側に向かってのスライド部材4のスライドに伴って可動部材9がスライド部材4と一体的にハウジング3の奥側に向かって移動し、第2カード2に対応する第2接続端子7が突出部4cのテーパ面によってガイドされ図8の(b)図に示すように、可動部材9のカム板9aによって押し下げられる。すなわち、第2接続端子7が第1カード1の接触端子1bに接触しないように第1カード1から離れる方向に退避させられる。また、このとき第1接続端子6は、可動部材9のカム板9aによって一旦押し下げられ、カム板9aの通過後は自身の弾性力によって復帰する方向に揺動し、図8の(b)図に示すように、第1カード1の接触端子1bに接触する。すなわち、第1カード1の接触端子1bが第1接続端子6に接続される。この状態において、第1カード1に対する信号の送受信が可能となる。
【0052】
上述したように、第1カード1がハウジング3の所定の装着位置に装着されている状態では、図8に示すように、ハウジング3の後端部3aからスライド部材4の後端部4aが、上述した寸法S1より小さい寸法S2突出した状態に保たれる。また、このように第1カード1がハウジング3の所定の装着位置に装着されている状態では、第1カード1の後端部1eを把持して取り出そうとしても、第1カード1の第1切欠き1c、第2切欠き1d内に進入している第1カム13、第2カム14の第1カード1の厚さ方向の動きがハウジング3の第1カード1の装着面によって規制されるので、第1カード1の引き抜き力によってこれらの第1カム13、第2カム14が回動することがない。すなわち、ハウジング3の所定の装着位置に装着された第1カード1は、第1カム13、第2カム14によってハウジング3及びスライド部材4から取り出せないように保たれる。
【0053】
第1カード1を排出させる際には、再びスライド部材4の後端部4aが押し込まれる。これにより、図10に示すように、スライド部材4が付勢部材5の付勢力に抗してハウジング3の後壁付近までオーバストロークし、ロック機構を形成する摺動部材17のピンがハートカム16のロック部16aから離脱する。スライド部材4に加えられていた押し込み力が弱められると、付勢部材5の付勢力により、第1カード1が保持されたスライド部材4がカード排出位置までスライドし、上述した図7に示す状態となる。この排出位置にあっては、スライド部材4の後端部4aは、ハウジング3の挿入口3aから寸法S1突出した状態に保たれる。
【0054】
この間、スライド部材4のハウジング3の挿入口3a方向のスライドに伴って、可動部材9がハウジング3の挿入口3a方向に移動し、この可動部材9のカム板9aによって第2カード2に対応する第2接続端子7が一旦押し下げられ、カム板9aの通過後、突出部4cのテーパ面にガイドされ、自身の弾性力によって初期形態に復帰する。また、第1カード1に対応する第1接続端子6は、第1カード1の接触端子1bから離れ、カム板9aによって一旦押し下げられ、カム板9aの通過後、自身の保有する弾性力によって初期形態に復帰する。また、ロック機構を形成する摺動部材17のピンは、ハートカム16の復路上を相対的に摺動し、初期位置に戻る。
【0055】
この状態において、スライド部材4の切欠き12を介して第1カード1の後端部1eを把持して引き抜くと、第1カード1をスライド部材4から取り出すことができる。
【0056】
なおこの間、第1カード1の取り出しに伴って、第1カード1の下面の一部が第1カム13の作動部13bの突起部13b2に形成された第2テーパ部13b22、及び第2カム14の作動部14bの突起部14b2に形成された第2テーパ部14b22に係合し、これらの第1カム13の作動部13b、第2カム14の作動部14bを第1カード1の厚さ方向に押圧する。図7に示す状態では、第1カム13、第2カム14は、ハウジング3の挿入口3aよりも外方の空間部に位置し、ハウジング3の装着面によるこれらの第1カム13、第2カム14の回動が規制されることがなく、第1カード1の厚さ方向の回動が可能となっている。したがって、第1カード1の取り出しに伴って、第1カム13の作動部13b、第2カム14の作動部14bが、軸部13a,14aに係着されたばねの力に抗して、図9の(a)(b)図の矢印20,22方向に回動する。第1カード1が取り出された後には、軸部13a,14aに係着されたばねによって、第1カム13の作動部13b、第2カム14の作動部14bが、図9の(a)(b)図の矢印21,23方向に回動する。これによって本実施形態は、図3に示す初期形態に復帰する。
【0057】
[本実施形態への第2カードの挿入]
図11〜14は、第2カードが挿入された際の本実施形態の動作を示す図で、図11は第2カードが本実施形態に挿入された状態を示し、(a)図はカバーを外した状態を示す平面図、(b)図は(a)図のB2−B2断面図、(c)図は裏面図である。図12は第2カードが所定の装着位置に装着された状態を示し、(a)図はカバーを外した状態を示す平面図、(b)図は(a)図のC2−C2断面図、(c)図は裏面図である。図13は第2カードが本実施形態に挿入された際の第1カムの状態を示し、(a)図は要部斜視図、(b)図は要部正面図である。図14は第2カードの排出に際し第2カードをオーバストロークさせた状態を示し、(a)図はカバーを外した状態を示す平面図、(b)図は(a)図のD2−D2断面図、(c)図は裏面図である。
【0058】
図3に示す初期形態に保たれている本実施形態に、第1カード1に比べて幅寸法の小さな第2カード2が挿入されると、図11に示す状態となる。すなわち、第2カード2がスライド部材4のカード挿入口4dから挿入されると、第2カード2の両側面が、図13の(a)(b)図に示す例示するように第1カム13の作動部13bの突起部13b2、及び第2カム14の作動部14bの突起部14b2によってガイドされる。したがって、第1カム13、第2カム14が回動することはない。
【0059】
さらに、第2カード2がスライド部材4に押し込まれると、第2カード2の前端部2aがスライド部材4に設けられた係合部10に係合し、停止する。この間、可動部材9の第2ガイド9cに形成された係合部9c1は、第2カード2の側面に形成された逃げ部2e内に収容されるのでカード挿入方向に動くことなく保たれる。したがって、第2カード2の下面は可動部材9のカム板9aによってガイドされる。また、図11の(b)図に示すように、第2カード2はスライド部材4のカード挿入口4d付近に設けられた支持部材8によって弾性保持され、この支持部材8と図示しないカバーとによって第2カード2は、その厚さ方向の動きが規制される。また、スライド部材4に設けた板ばね15が、第2カード2の側面に形成した切欠き2cに係合し、この第2カード2をスライド部材4にロックする。
【0060】
このようにスライド部材4に、第2カード2が装着されたものの、スライド部材4がまだハウジング3に押し込まれない状態においては、図11の(a)図に示すように、上述した第1カード1が装着される場合と同様に、スライド部材4の後端部4aがハウジング3の挿入口3aから寸法S1突出した状態に保たれている。
【0061】
また、ロック機構を形成する摺動部材17のピンはハートカム16の往路上に配置されている。また、このようにスライド部材4に第2カード2が装着されたときには、スライド部材4の後端部4aから第2カード2の後端部2dが突出しないように、例えば図11の(a)図に示すように、第2カード2の後端部2dがスライド部材4の後端部4aよりもわずかに奥側に位置するように、第2カード2はスライド部材4上に保持される。このとき第2カード2の後端部2dと、スライド部材4の後端部4aとの距離は、ハウジング3の所定の装着位置に第1カード1、第2カード2が装着された際の、第1カード1の接触端子1bと第2カード2の接触端子2bとの距離、すなわちハウジング3の第1接続端子6と第2接続端子7との距離にほぼ相当する。
【0062】
このようにスライド部材4に第2カード2が装着された状態から、スライド部材4が付勢部材5の付勢力に抗してハウジング3に対して押し込まれると、スライド部材4に設けたハートカム16の往路上を、ハウジング3に設けた摺動部材17のピンが相対的に摺動し、第2カード2が所定の装着位置に至ったときに、図12の(a)図に示すように、摺動部材17のピンがハートカム16のロック部16aに係合する。これによって、スライド部材4がハウジング3にロックされる。
【0063】
この間、ハウジング3の奥側に向かってのスライド部材4のスライドに伴って可動部材9がスライド部材4と一体的にハウジング3の奥側に向かって移動し、第1カード1に対応する第1接続端子6が可動部材9のカム板9aによって押し下げられる。すなわち第1接続端子6が第2カード2の接触端子2bに接触しないように第2カード2から離れる方向に退避させられる。また、このとき第2接続端子7は、スライド部材4に形成された突出部4cによって一旦押し下げられた後、図12の(b)図に示すように、自身の弾性力によって第2カード2の接触端子2bに接触する状態となる。すなわち、第2カード2の接触端子2bが第2接続端子7に接続される。この状態において、第2カード2に対する信号の送受信が可能となる。
【0064】
上述のように、第2カード2が所定の装着位置に装着されている状態では、図12に示すように、ハウジング3の後端部3aからスライド部材4の後端部4aが、第1カード1がハウジング3の所定の装着位置に装着された場合と同様に、寸法S2突出した状態に保たれる。
【0065】
第2カード2を排出させる際には、再びスライド部材4の後端部4aが押し込まれる。これにより、図14に示すように、スライド部材4が付勢部材5の付勢力に抗してオーバストロークし、ロック機構を形成する摺動部材17のピンがハートカム16のロック部16aから離脱する。スライド部材4に加えられていた押し込み力が弱められると、付勢部材5の付勢力により、第2カード2が保持されたスライド部材4がカード排出位置までスライドし、上述した図11に示す状態となる。この排出位置にあっては、第1カード1の排出時と同様に、スライド部材4の後端部4aは、ハウジング3の挿入口3aから寸法S1突出した状態に保たれる。
【0066】
この間、スライド部材4のハウジング3の挿入口3a方向のスライドに伴って可動部材9がハウジング3の挿入口3a方向に移動し、可動部材9のカム板9aから第1カード1に対応する第1接続端子6が離脱し、自身の弾性力によって初期状態に復帰する。また、第2カード2に対応する第2接続端子7は、第2カード2の接触端子2bから離れた状態となる。また、ロック機構を形成する摺動部材17のピンは、ハートカム16の復路上を相対的に摺動し、初期位置に戻る。
【0067】
この状態において、スライド部材4の切欠き12を介して第2カード2の後端部2dを把持して引き抜くと、板ばね15と第2カード2の切欠き2cとの係合が解かれ、第2カード2をスライド部材4から取り出すことができる。これによって本実施形態は、図3に示す初期形態に復帰する。
【0068】
[本実施形態の効果]
このように構成した本実施形態によれば、スライド部材4に設けた係合部10と、可動部材9の第2ガイド9cに形成した係合部9c1とによって構成されるカード位置決め手段によって、第1カード1、第2カード2のそれぞれの後端部1e,2dを、スライド部材4の後端部4aから突出させないように位置決めすることができる。また、このカード位置決め手段によって、第1カード1と第2カード2とをスライド部材4内においてカード挿入方向の前後にずらして位置決めすることができる。ハウジング3には、このように第1カード1、第2カード2をずらして配置したことによる第1カード1の接触端子1bの位置、第2カード2の接触端子2bの位置に応じてそれぞれ対応する第1接続端子6、第2接続端子7をずらして配置することができる。したがって、第1カード1の接触端子1b、第2カード2の接触端子2bをそれぞれ該当する第1接続端子6、第2接続端子7に接続させ、電気的不良を生じさせることなく、第1カード1、第2カード2に対する信号の送受信が可能となる。
【0069】
また、スライド部材4の後端部4aが押されて、第1カード1、第2カード2がハウジング3の所定の装着位置に装着された際に、スライド部材4の後端部4aがハウジング3の挿入口3aから寸法S2突出するようにスライド部材4を配置してある。これに伴って、第1カード1、第2カード2が排出された際にも、スライド部材4の後端部4aがハウジング3の挿入口3aから寸法S1突出するようになっている。したがって、第1カード1、第2カード2がスライド部材4に装着され、これらの第1カード1、第2カード2がハウジング3の所定の装着位置に装着された際に、ハウジング3の挿入口3aから突出する部分の寸法はスライド部材4の後端部4aの寸法であり、第1カード1または第2カード2のそれぞれの装着時で同じ寸法S2に設定することができる。
【0070】
また、第1カード1、第2カード2がハヴング3の所定の装着位置に装着されてロックされているスライド部材4を再度押すと、そのロックが解除されてスライド部材4がハウジング3の挿入口3aから押し出されるようにスライドし、スライド部材4に装着されている第1カード1、第2カード2が排出される。このようなカード排出時においても、ハウジング3の挿入口3aから突出する部分の寸法、すなわちスライド部材4の後端部4aの寸法を、第1カード1、第2カード2の排出時で同じ寸法S1に設定することができる。
【0071】
したがって、このような長さがほぼ同じで、前端部1a,2aからの接触端子1b,2bの位置もほぼ同じ第1カード1、第2カード2を、電気的不良を生じさせることなくハウジング3に装着させることができ、また、ユーザーの使い勝手に影響を与えることなく、これらの第1カード1、第2カード2をハウジング3に装着させ、あるいは排出させることができる。これにより、長さが異なる複数のカードをハウジング3に装着させる場合と同様の優れた使い勝手が得られる。
【0072】
また、本実施形態は、スライド部材4のカード挿入口4dに切欠き12を設けたことから、この切欠き12を介してスライド部材4に装着された第1カード1、第2カード2を把持し、抜き取ることができ、これらの第1カード1、第2カード2の取り出しを容易に行なうことができる。これによっても、優れた使い勝手を確保することができる。
【0073】
また、第1カード1と第2カード2のうちの薄い方のカード、すなわち第2カード2の厚さ方向の動きを規制するように、この第2カード2を弾性支持可能な支持部材8を備えたことから、支持部材8を介して薄い方のカードである第2カード2もスライド部材4に安定して装着させることができ、信頼性の高い装置を実現できる。
【0074】
また、本実施形態によれば、第1カード1がハウジング3の所定の装着位置に装着された際には、接続端子退避部材、すなわち可動部材9のカム板9aによって、第2カード2の接触端子2bに対応する第2接続端子7を第1カード1から離れる方向に退避させた状態で、第1カード1の接触端子1aを第1接続端子6に接続させ、この第1カード1に対する信号の送受信を実現させることができる。また、第2カード2がハウジング3の所定の装着位置に装着された際には、可動部材9のカム板9aによって、第1カード1の接触端子1bに対応する第1接続端子6を第2カード2から離れるように退避させた状態で、第2カード2の接触端子2bを第2接続部材7に接続させ、この第2カード2に対する信号の送受信を実現させることができる。
【0075】
このようなことから、ハウジング3の第1接続端子6と第2接続端子7とを接近させて配置することが可能になり、本実施形態のように第1接続端子6と第2接続端子7とを接近させてハウジング3内に配置させれば、ハウジング3の奥側の所定の装着位置に配置されるカード、すなわち第2カード2であっても、カード排出時にスライド部材4から容易に取り出すことができ、優れた使い勝手を確保することができる。また、ハウジング3のカード挿入方向の寸法を比較的短くすることができ、このような長さがほぼ同じで、それらのカードの接触端子1b,2bの前端部1a,2aからの位置もほぼ同じ第1カード1、第2カード2が装着される装置の小型化を実現させることができる。
【0076】
また、スライド部材4に設けた可動部材9のカム板9aによって、接続端子退避部材を構成してあることから、この接続端子退避部材の構成を簡単にすることができ、高い実用性が得られる。
【0077】
また、本実施形態によれば、幅寸法の大きな第1カード1が挿入された際には、スライド部材4のカード挿入口4dの両側壁部に設けた第1カム13、第2カム14が第1カード1の挿入動作に伴って第1カード1の厚さ方向に、すなわち第1カード1の挿入経路を避けるように退避しつつ、これらの第1カム13、第2カム14によって第1カード1の下面の一部がガイドされ、スライド部材4の装着位置では第1カード1の両側面の第1切欠き1c、第2切欠き1dに、これらに対応する第1カム13、第2カム14のそれぞれが進入し、この第1カード1がスライド部材4にロックされる。また、幅寸法の小さな第2カード2が挿入された際には、第1カム13、第2カム14が退避することなく、これらの第1カム13、第2カム14の作動部14bによって第2カード2の両側面がガイドされる。第1カム13、第2カム14の退避方向は、上述したように第1カード1の厚さ方向となっている。すなわち、装置の奥行寸法の増加を招くことなく、第1カード1、第2カード2をガイドすることができる。これらにより、装置の奥行寸法を短くすることができ、装置の小型化を実現できる。また、カード挿入口4dの両側壁部に設けた第1カム13、第2カム14のそれぞれによって、スライド部材4の装着位置まで挿入した第1カード1を確実にロックすることができ、スライド部材4をハウジング3内でスライドさせる間、この第1カード1をスライド部材4に安定して保持させることができる。
【0078】
また、スライド部材4のカード挿入口4dの両側壁部の第1カム13、第2カム14間の寸法を第2カード2の幅寸法に適合させた寸法とすることができ、この第1カム13、第2カム14間の寸法よりも大きい寸法を第1カード1の挿入が可能なカード挿入口4dの寸法とすることができる。すなわち、スライド部材4のカード挿入口4dを幅寸法の大きな第1カード1に応じた幅寸法とすることができ、スライド部材4のカード挿入口4dの形状の単純化を実現できる。したがって、第1カード1の幅寸法のみを考慮してスライド部材4のカード挿入口4dを設計することができ、このカード用コネクタ装置の設計、及び製作を簡単にすることができる。
【0079】
なお、ハウジング3に形成される挿入口3aは、スライド部材4の挿入を許容させればよいので、このスライド部材4の形状に依存する一義的な形状とすることができる。したがって、このハウジング3の挿入口3aの形状の単純化も実現できる。
【0080】
また、本実施形態は、スライド部材4に設けたガイド部材、すなわち可動部材9のカム板9aによって、第1カード1に比べて肉薄の第2カード2を、スライド部材4に安定して挿入させることができ、信頼性の高い装置とすることができる。
【0081】
また、第1カム部13、第2カム14のそれぞれを、軸部13a,14aとそれぞれ一体に設けられ、スライド部材4への第1カード1の挿入時に、この第1カード1の下面が摺接して押圧される第1テーパ部13b21,14b21を有する突起部13b2,14b2を具備する作動部13b,14bとを備え、これらの第1カム13、第2カム14のそれぞれの軸部13a,14aに係着されるばねをスライド部材4の本体にインサート成形した構成にしてある。これにより、作動部13b,14bのそれぞれの突起部13b2,14b2の回動、非回動を介してガイドしながら、第1カード1、第2カード2をスライド部材に挿入させることができるとともに、第1カード1がスライド部材4に装着された際には、第1カード1の両側面の第1切欠き1c、第2切欠き1dに第1カム13、第2カム14のそれぞれを確実に進入させ、この第1カード1をスライド部材4にロックさせることができる。したがって、第1カード1をスライド部材4に安定して保持させることができるとともに、ハウジング3の所定の装着位置に第1カード1が装着された際には、この第1カード1が誤って取り出されることによる第1カード1の接触端子1b、第1接続端子6等を含む信号伝達系統の損傷を確実に防止でき、これによっても信頼性の高い装置とすることができる。
【0082】
なお、上記実施形態にあっては、可動部材9の第2ガイド9cに第1カード1の前端部1aが係合可能な係合部9c1を設けたが、第2カード2の形状によっては、第1カード1の前端部1aが係合可能な係合部を第1ガイド9bに備えた構成にしてもよく、また、このような係合部を可動部材9の第1ガイド9bと第2ガイド9cの双方に備える構成としてもよい。
【0083】
[別の実施形態]
図15は本実施形態に係るカード用コネクタ装置の別の実施形態を示す図で、第1カード及び第2カードが挿入されないときの状態を示す要部斜視図、図16は図15に示す別の実施形態において第1カードが挿入されたときの第1板ばねの動作を示す要部斜視図である。図17は図15,16に示す別の実施形態のスライド部材の左側壁部に備えられる第1板ばねを示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は左側面図、(d)図は右側面図、(e)図は背面図、(f)図は裏面図である。図18は図15,16に示す別の実施形態のスライド部材の右側壁部に備えられる第2板ばねを示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は左側面図、(d)図は右側面図、(e)図は背面図、(f)図は裏面図である。
【0084】
この別の実施形態は、挿入された第1カード1及び第2カード2のガイドが可能で、第1カード1の挿入動作に伴ってこの第1カード1の厚さ方向に退避し、第1カード1の装着位置でこの第1カード1をロックするとともに、第2カード2の挿入時には退避を行わないロック部材として、上述した実施形態における第1カム13、第2カム14に代えて、金属製の板ばね、例えば第1板ばね30、第2板ばね31を設けてある。すなわち、これらの第1板ばね30、第2板ばね31は、第1カード1の挿入時には、この第1カード1の挿入動作に伴ってこの第1カード1の厚さ方向に退避しつつ、その途中にあっては第1カード1の下面の一部をガイドし、装着位置でこの第1カード1の両側面のそれぞれに設けた第1切欠き1c、第2切欠き1dに進入して第1カード1をロックし、第2カード2の挿入時にはこの第2カード2の側面をガイドするものから成っている。
【0085】
スライド部材4の左側壁部に備えられる第1板ばね30は、図17に示すように、スライド部材4の合成樹脂から成る本体にインサート成形される固定部30aと、この固定部30aに支持され、第1カード1の挿入に伴って撓み変形が可能なアーム部30bと、このアーム部30bのカード挿入口4d側に位置する端部付近に形成され、第1カード1がスライド部材4上の装着位置まで挿入された際に、第1カード1の左側面に形成された第1切欠き1cに進入して第1カード1をロックする突部30cとを備えている。この第1板ばね30の突部30cは、スライド部材4への第1カード1の挿入時に、この第1カード1の前端部1aが係合する第1テーパ部30c1を有している。また、この第1テーパ部30c1の反対側、すなわち奥側に位置する部分に、スライド部材4に装着された第1カード1の取り出し時に、この第1カード1によって押圧される第2テーパ部30c2を有している。さらに、スライド部材4への第2カード2の挿入時に、この第2カード2の側面をガイドする側壁30c3を有している。
【0086】
同様に、スライド部材4の右側壁部に備えられる第2板ばね31は、図18に示すように、スライド部材4の合成樹脂から成る本体にインサート成形される固定部31aと、この固定部31aに支持され、第1カード1の挿入に伴って撓み変形が可能なアーム部31bと、このアーム部31bのカード挿入口4d側に位置する端部付近に形成され、第1カード1がスライド部材4上の装着位置まで挿入された際に、第1カード1の右側面に形成された第2切欠き1dに進入して第1カード1をロックする突部31cとを備えている。この第2板ばね31の突部31cは、スライド部材4への第1カード1の挿入時に、この第1カード1の前端部1aが係合する第1テーパ部31c1を有している。また、この第1テーパ部31c1の反対側、すなわち奥側に位置する部分に、スライド部材4に装着された第1カード1の取り出し時に、この第1カード1によって押圧される第2テーパ部31c2を有している。さらに、スライド部材4への第2カード2の挿入時に、この第2カード2の側面をガイドする側壁31c3を有している。
【0087】
なお、図15に示すように、第1板ばね30のアーム部30bの下方に位置するスライド部材4の部分には、第1板ばね30がスライド部材4の下面方向に押圧された際に、この第1ばね30のアーム部30bのスライド部材4の下面からの突出を可能にする空隙部32を形成してある。図示しないが、第2板ばね31のアーム部31bの下方に位置するスライド部材4の部分にも、第2板ばね31がスライド部材4の下面方向に押圧された際に、この第2板ばね31のアーム部31bのスライド部材4の下面からの突出を可能とする空隙部を形成してある。その他の構成は、前述した図3等に示す実施形態と同等である。
【0088】
このように構成した別の実施形態では、第1カード1及び第2カード2が挿入されない初期形態にあっては、図15に例示するように、第1板ばね30、第2板ばね31が、スライド部材4の空隙部32等の上方に保持されている。この状態から幅寸法の大きな第1カード1が挿入されると、第1カード1の両側端部が第1板ばね30、第2板ばね31のそれぞれの突部30c,31cの第1テーパ部30c1,31c1に係合する。これによって、第1板ばね30、第2板ばね31のそれぞれの突部30c,31cは、第1カード1の下面によって押し下げられる。これに伴って、アーム部30b,31bも自身の保有する弾性力に抗して図16に例示するように、押し下げられながら撓み変形し、スライド部材4に形成された上述の空隙部32等から下方向に突出する。
【0089】
さらに第1カード1がスライド部材4に押し込まれると、第1カード1の下面の一部は第1板ばね30、第2板ばね31のそれぞれの突部30c,31cによってガイドされながらスライド部材4上の装着位置まで挿入される。このように第1カード1が装着位置に至ると、第1板ばね30、第2板ばね31のそれぞれのアーム部30b,31bの保有する弾性力によって、これらのアーム部30b,31bに形成した突部30c,31cが第1カード1の第1切欠き1c、第2切欠き1dのそれぞれ対応するものに進入する。これにより、第1カード1がスライド部材4上にロックされる。このように第1カード1がスライド部材4上にロックされた状態で、スライド部材4がハウジング3に押し込まれ、第1カード1が所定の装着位置に装着されると、この第1カード1に対する信号の送受信が可能となる。
【0090】
このように第1カード1がハウジング3の所定の装着位置に装着されている状態では、第1カード1の後端部1eを把持して取り出そうとしても、第1カード1の第1切欠き1c、第2切欠き1d内に進入している突部30c,31cを有する第1板ばね30のアーム部30b、第2板ばね31のアーム部31bの第1カード1の厚さ方向の動きがハウジング3の第1カード1の装着面によって規制されているので、第1カード1の引き抜き力によって、これらの第1板ばね30のアーム部30b、第2板ばね31のアーム部31bが撓み変形することがない。すなわち、ハウジング3の所定の装着位置に装着された第1カード1は、第1板ばね30、第2板ばね31によってハウジング3及びスライド部材4から取り出せないように保たれる。
【0091】
また、スライド部材4及び第1カード1が排出位置まで排出されたときには、第1カード1の後端部1eを把持して引き抜くことにより、第1カード1が第1板ばね30、第2板ばね31の突部30c,31cの第2テーパ部30c2,31c2に係合し、この第1カード1によって突部30c,31cが押し下げられる。これに伴って、アーム部30b,31bも第1カード1の下面によって押し下げられながら撓み変形し、スライド部材4に形成された空隙部32等から下方に突出し、第1カード1をスライド部材4から取り出すことができる。
【0092】
なお、第1カード1の排出位置にあっては、図15に例示するように、第1板ばね30、第2板ばね31のアーム部30b,31bは、ハウジング3の挿入口3aよりも外方の空間部に位置し、ハウジング3の装着面によるこれらの第1板ばね30、第2板ばね31の撓み変形が規制されることがない。したがって、第1カード1の取り出しに伴って、第1板ばね30、第2板ばね31のアーム部30b,31bは図16に例示するように、スライド部材4の下面から突出するように押し下げられ、第1カード1を容易に取り出すことができる。第1カード1が取り出された後には、これらの第1板ばね30、第2板ばね31のアーム部30b,31bの自身が保有する弾性力により、図15に例示するように初期形態に復帰する。
【0093】
また、この別の実施形態に、第1カード1に比べて幅寸法の小さな第2カード2が挿入されると、第2カード2の両側面が、第1板ばね30、第2板ばね31のそれぞれのアーム部30b,31bに形成された突部30c,31cの側壁30c3,31c3によってガイドされる。したがって、これらの第1板ばね30、第2板ばね31のアーム部30b,31bが撓み変形することはない。
【0094】
このように構成した別の実施形態にあっても、第1板ばね30と第2板ばね31を備えたことによって第1カード1及び第2カード2のガイドが可能であるとともに、第1カード1をロックすることができるので、上述した図3等に示した実施形態におけるのと同等の作用効果を得ることができる。また特に、上述した第1実施形態は、ロック部材として第1カム13、第2カム14の他に、これらの第1カム13、第2カム14の軸部13a,14aに係着され、スライド部材4の本体にインサート成形される復帰用のばねを要したが、この第2実施形態にあっては、第1板ばね30、第2板ばね31が上述した復帰用のばねの機能を有するので、このようなばねを別に設けることを要しない。すなわち、この第2実施形態では、ロック部材として第1板ばね30、第2板ばね31のそれぞれ一部材を設けるだけで済み、この点で第1実施形態に比べて製作費を安くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に係るカード用コネクタ装置の一実施形態に使用可能な第1カードを示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は左側面図、(d)図は右側面図、(e)図は背面図、(f)図は裏面図、(g)は斜視図である。
【図2】本発明に係るカード用コネクタ装置の一実施形態に使用可能な第2カードを示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は左側面図、(d)図は右側面図、(e)図は背面図、(f)図は裏面図、(g)は斜視図である。
【図3】本発明に係るカード用コネクタ装置の一実施形態を示す図で、(a)図はカバーを外した状態を示す平面図、(b)図は右側面図、(c)図は裏面図である。
【図4】本実施形態に備えられる可動部材を示す図で、(a)図は平面図、(b)は正面図、(c)図は左側面図、(d)図は右側面図、(e)図は背面図、(f)図は裏面図、(g)図は斜視図である。
【図5】本実施形態に備えられる第1カムを示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は左側面図、(d)図は右側面図、(e)図は背面図、(f)図は裏面図、(g)図は斜視図である。
【図6】本実施形態に備えられる第2カムを示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は左側面図、(d)図は右側面図、(e)図は背面図、(f)図は裏面図、(g)図は斜視図である。
【図7】本実施形態の動作を示す図で、第1カードが本実施形態に挿入された状態を示し、(a)図はカバーを外した状態を示す平面図、(b)図は(a)図のB1−B1断面図、(c)図は裏面図である。
【図8】本実施形態の動作を示す図で、第1カードが所定の装着位置に装着された状態を示し、(a)図はカバーを外した状態を示す平面図、(b)図は(a)図のC1−C1断面図、(c)図は裏面図である。
【図9】本実施形態の動作を示す図で、第1カードが本実施形態に挿入された際のカムの動作を示し、(a)図は第1カムの動作を示す要部斜視図、(b)図は第2カムの動作を示す要部斜視図である。
【図10】本実施形態の動作を示す図で、第1カードの排出に際し第1カードをオーバストロークさせた状態を示し、(a)図はカバーを外した状態を示す平面図、(b)図は(a)図のD1−D1断面図、(c)図は裏面図である。
【図11】本実施形態の動作を示す図で、第2カードが本実施形態に挿入された状態を示し、(a)図はカバーを外した状態を示す平面図、(b)図は(a)図のB2−B2断面図、(c)図は裏面図である。
【図12】本実施形態の動作を示す図で、第2カードが所定の装着位置に装着された状態を示し、(a)図はカバーを外した状態を示す平面図、(b)図は(a)図のC2−C2断面図、(c)図は裏面図である。
【図13】本実施形態の動作を示す図で、第2カードが本実施形態に挿入された際の第1カムの状態を示し、(a)図は要部斜視図、(b)図は要部正面図である。
【図14】本実施形態の動作を示す図で、第2カードの排出に際し第2カードをオーバストロークさせた状態を示し、(a)図はカバーを外した状態を示す平面図、(b)図は(a)図のD2−D2断面図、(c)図は裏面図である。
【図15】本実施形態に係るカード用コネクタ装置の別の実施形態を示す図で、第1カード及び第2カードが挿入されないときの状態を示す要部斜視図である。
【図16】図15に示す別の実施形態において第1カードが挿入されたときの第1板ばねの動作を示す要部斜視図である。
【図17】図15,16に示す別の実施形態のスライド部材の左側壁部に備えられる第1板ばねを示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は左側面図、(d)図は右側面図、(e)図は背面図、(f)図は裏面図である。
【図18】図15,16に示す別の実施形態のスライド部材の右側壁部に備えられる第2板ばねを示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は左側面図、(d)図は右側面図、(e)図は背面図、(f)図は裏面図である。
【符号の説明】
【0096】
1 第1カード
1a 前端部
1b 接触端子
1c 第1切欠き
1d 第2切欠き
1e 後端部
2 第2カード
2a 前端部
2b 接触端子
2c 切欠き
2d 後端部
2e 逃げ部
3 ハウジング
3a 挿入口
4 スライド部材
4a 後端部
4b 前端部
4d カード挿入口
6 第1接続端子
7 第2接続端子
8 支持部材
9 可動部材
9a カム板(ガイド部材)〔接続端子退避部材〕
9c1 係合部(カード位置決め手段)
10 係合部(カード位置決め手段)
12 切欠き
13 第1カム(ロック部材)
13a 軸部
13b 作動部
13b2 突起部
13b21 第1テーパ部
14 第2カム(ロック部材)
14a 軸部
14b 作動部
14b2 突起部
14b21 第1テーパ部
16 ハートカム
17 摺動部材
30 第1板ばね(ロック部材)
30a 固定部
30b アーム部
30c 突部
30c1 第1テーパ部
30c3 側壁
31 第2板ばね(ロック部材)
31a 固定部
31b アーム部
31c 突部
31c1 第1テーパ部
31c3 側壁
32 空隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入口を有するハウジング内に選択的に挿入される長さがほぼ同じでそれぞれの前端部からの接触端子の位置もほぼ同じ第1カード、第2カードの幅方向、厚さ方向、及び長さ方向を規制し、上記第1カード、または上記第2カードが装着された状態で上記ハウジング内をカード挿入方向の前後にスライド可能なスライド部材を備え、
上記第1カード、上記第2カードが上記ハウジングの所定の装着位置に配置された際に、上記スライド部材の後端部が上記ハウジングの上記挿入口から突出するようにこのスライド部材を配置し、
上記スライド部材に上記第1カードまたは第2カードを装着させる際に、上記第1カードまたは上記第2カードのそれぞれの後端部を、上記スライド部材の後端部から突出させないように位置決めするとともに、上記第1カードと上記第2カードのそれぞれの上記接触端子位置を互いにカード挿入方向の前後にずらしてこれらの第1カード、第2カードを上記スライド部材上に位置決めするカード位置決め手段を備え、
上記スライド部材の後端部を押すことで、第1カード、第2カードが上記ハウジングの所定の装着位置に配置された状態でこのスライド部材をロックし、またはそのロックを解除させることを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項2】
上記請求項1記載の発明において、
上記カード位置決め手段が、
上記スライド部材に設けられ、上記第2カードが係合可能な係合部と、
上記スライド部材に備えられカード挿入方向の前後に移動可能であり上記スライド部材に当接することによって移動を停止するとともに上記第2カードの挿入時には移動不能に保持される可動部材に形成され、上記第1カードが係合可能な係合部とから成ることを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項3】
上記請求項2記載の発明において、
上記スライド部材に設けられる係合部は、上記第2カードの前端部が係合可能なものであり、
上記可動部材が、上記スライド部材の両側壁にそれぞれ摺接可能に設けられ、カード挿入方向に沿って延設される第1ガイド、第2ガイドを有し、
上記第1ガイド及び上記第2ガイドの少なくとも一方に、上記第1カードが係合する係合部を設けたことを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項4】
上記請求項1記載の発明において、
上記スライド部材のカード挿入口に切欠きを設けたことを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項5】
上記請求項1〜4のいずれか1項記載の発明において、
上記スライド部材に挿入された上記第1カードと上記第2カードのうちの薄い方のカードの厚さ方向の動きを規制するように、この第2カードを弾性支持可能な支持部材を備えたことを特徴とするカード用コネクタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2008−218332(P2008−218332A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57458(P2007−57458)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】