説明

カード用コネクタ

【課題】切欠きを有するカードおよび切欠きを有さないカードの両方を安定して装着できるとともに、小型化(省スペース化)を効果的に図ることができるカード用コネクタを提供する。
【解決手段】ハウジング2、3内で、切欠きを有する厚型カードおよび切欠きを有さない薄型カードと共にスライド可能なスライド部材6に、前記第一のカードの切欠きに係合可能な係合部40を設け、スライド部材6を排出バネ7のほぼ中心軸回りに回動する構成とした。この場合、スライド部材6は、厚型カードの装着時に係合部40を切欠きに係合するように回動し、薄型カードの装着時に係合部40を押し逃がすように回動するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体としてのカードと電気的に接続して該カードに対する情報の書き込み、またはカードからの情報の読み取りを可能にするカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体としてのカードと電気的に接続して該カードに対する情報の書き込みまたはカードからの情報の読み取りを可能にする従来のカード用コネクタにおいては、装着されたカードの不用意な脱落を防止する機能を有するものが知られている。例えば、挿入されたカードと共にスライド移動するスライド部材を備え、このスライド部材の側部にカードの切欠きとカードの幅方向で弾発的に係合する突起を設けることでカードを保持するカード用コネクタが知られている。
【0003】
また、特許文献1には、切欠きを有するカードと切欠きを有さないカードの両方のカードを保持できる構造が開示されている。この構造では、前記スライダに片持ち梁状に支持されてカードの厚み方向に変位可能なロック片が設けられ、切欠きを有するカードに対しては、前記ロック片の突起部をカードの切欠きに係合させることでカードの抜け止めを行ない、一方、切欠きを有さないカードに対しては、コネクタに対するカードの装着を妨げないように前記ロック片を下方へ弾性的に変位させつつカードに押し付けてカードを保持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3965282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来のカード保持構造のように、スライド部材の側部の突起をカードの切欠きにカードの幅方向で弾発的に係合させる場合には、その弾発に伴う変位量も含めて幅方向で寸法が増大し、コネクタの小型化の妨げになるという問題がある。一方、弾性的に変位可能な押え片(ロック片)によってカードを押圧するカード保持構造では、押え片(ロック片)の強度確保等のために押え片(ロック片)の厚み寸法を大きくする必要があり、これがコネクタの小型化の弊害になる。また、押え片(ロック片)の場合には、切欠きを有さないカードがコネクタ内に長期間にわたって装着されたままの状態にあると、押え片(ロック片)が経時的に塑性変形してしまうおそれがあり、その場合には、その後、切欠きを有するカードの抜け止めが不可能になる可能性もある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、切欠きを有するカードおよび切欠きを有さないカードの両方を安定して装着できるとともに、小型化(省スペース化)を効果的に図ることができるカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカード用コネクタは、切欠きを有する第一のカードおよび切欠きを有さない第二のカードを装着可能な装着空間を形成するハウジングと、前記第一のカードおよび前記第二のカードと共に挿入方向及び排出方向に前記ハウジング内をスライド可能に形成され、前記第一のカードの切欠きに係合可能な係合部を有するスライド部材とを備え、前記スライド部材は、スライド方向に略平行な軸回りに回動可能に前記ハウジングに支持され、前記第一のカードの装着時に前記係合部を前記第一のカードの切欠きに係合するように回動し、前記第二のカードの装着時に前記係合部を押し逃がすように回動することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、係合部を有するスライド部材がスライド方向に略平行な軸回りに回動可能に前記ハウジングに支持されているため、最小限の移動量(移動範囲)で係合部を第一のカードの切欠きに係合させることができる。そのため、切欠きを有する第一のカードに対しては、係合部をカードの切欠きに係合させることでカードの不用意な脱落を防止する抜け止めを行なうことができる。例えば、カード用コネクタをノートパソコンのようなモバイル機器に使用する場合は、装置の設置姿勢や移動時の振動によってカードが挿入口から脱落することが懸念されるが、このようなカードの不用意な脱落を防止することができる。一方、切欠きを有さない第二のカードに対しては、係合部がカードから押し逃がされるようにスライド部材が回動することで、カードの装着を可能にする。この場合、係合部は、弾性的に変位してカードに押し付くのではなく、スライド部材と一体に回動してカードから退避するため、無理な力がかかって経時的に塑性変形することもない。すなわち、本構成によれば、コネクタの小型化(省スペース化)を効果的に図りつつ、切欠きを有するカードおよび切欠きを有さないカードの両方を安定して装着できる。
【0009】
また、本発明は、上記構成のカード用コネクタにおいて、前記スライド部材を前記排出方向に付勢するコイル状の付勢部材を更に備え、前記スライド部材が前記付勢部材のほぼ中心軸周りで回動することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、スライド部材がコイル状の付勢部材のほぼ中心軸周りで回動するため、スライド部材の回動に伴って付勢部材が軸振れすることがない。よって、付勢部材の軸振れ時の逃げスペースを確保する必要がなく、コネクタの更なる小型化(省スペース化)を図ることができる。また、スライド部材の回動に伴って付勢部材が軸振れしないため、スライド部材のカード排出方向への安定した付勢を確保できる。
【0011】
また、本発明は、上記構成のカード用コネクタにおいて、前記スライド部材は、前記ハウジングに摺接する摺動面を介して移動するとともに、前記摺動面の傾斜部によって前記ハウジングに対して回動できることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、傾斜部を有する前記摺動面により、カードの厚み方向でのスライド部材の回動と、カードの挿入・排出方向でのスライド部材の移動とを簡単な構成で実現できる。
【0013】
また、本発明は、上記構成のカード用コネクタにおいて、前記スライダの回動軸を挟んで前記係合部側とは逆側を、前記第一のカードおよび前記第二のカードに前記係合部を向かわせる回動方向で付勢する付勢体を更に備えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、切欠きを有する第一のカードに対しては、付勢体の付勢力によってスライド部材を回動させて係合部を確実に係合させることができる。また、切欠きを有さない第二のカードに対しては、付勢体の付勢力により、スライド部材を回動させて係合部を第二のカードに押し付けてカードを保持する付勢力を付与することができる。
【0015】
また、本発明は、上記構成のカード用コネクタにおいて、前記付勢体が前記ハウジングの一部によって形成されることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、付勢体を別個に設ける必要がないため、部品点数を少なくして、コネクタの小型化に寄与し得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、切欠きを有するカードおよび切欠きを有さないカードの両方を安定して装着できるとともに、小型化(省スペース化)を効果的に図ることができるカード用コネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの斜視図である。
【図2】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カバーを外したカード用コネクタの斜視図である。
【図3】図1のカード用コネクタのスライド部材の斜視図である。
【図4】(a)はスライド部材付近の要部平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図5】(a)は薄型カードをコネクタの装着空間に挿入した排出位置における状態図、(b)は装着位置における状態図である。
【図6】(a)は薄型カードをコネクタの装着空間に挿入した際のスライド部材の回動状態を挿入口側から見た部分拡大正面図、(b)はその全体正面図である。
【図7】(a)は厚型カードをコネクタの装着空間に挿入した排出位置における状態図、(b)は装着位置における状態図である。
【図8】(a)は厚型カードをコネクタの装着空間に挿入した際のスライド部材の位置状態を挿入口側から見た部分拡大正面図、(b)はその全体正面図である。
【図9】(a)は薄型カードの上面図、(b)は下面図である。
【図10】(a)は厚型カードの下面図、(b)は上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明を薄型カード(第二のカード)および厚型カード(第一のカード)の2種類のカードを挿入可能としたコンバイン型のカード用コネクタに適用する場合について説明する。しかしながら、本実施の形態に係るカード用コネクタの適用対象については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0020】
まず、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタについて説明する前に装着対象となる薄型カードおよび厚型カードについて説明する。図9は、本発明の実施の形態に係る薄型カードの平面図であり、(a)は上面図、(b)は下面図を示している。図10は、本発明の実施の形態に係る厚型カードの平面図であり、(a)は下面図、(b)は上面図を示している。
【0021】
図9(a)、(b)に示すように、薄型カード41は、挿入方向に一定の厚み(約1.4mm)で形成されたいわゆるマルチメディアカード(MMC)であり、上面視略矩形状に形成されている。薄型カード41の一の角部には、切り欠かれて約45度に傾斜した傾斜面42が形成されている。傾斜面42は、薄型カード41の挿入方向を識別するのに用いられ、この傾斜面42が形成されている側が挿入方向における先端側とされ、逆側が挿入方向における後端側とされる。また、薄型カード41の先端側には、カード用コネクタ1の複数のコンタクト端子11に接触する複数のパッド43が設けられている。
【0022】
図10(a)、(b)に示すように、厚型カード45は、薄型カード41よりも厚い(約2.1mm)厚みで形成されたいわゆるSDカードであり、上面視略矩形状に形成されている。また、厚型カード45は、薄型カード41の仕様に基づいて構成されており、正面視において上段が薄型カードと同一の幅を有する段状に形成されている。厚型カード45の一の角部には、薄型カード41と同様に切り欠かれて約45度に傾斜した挿入方向識別用の傾斜面46が形成されている。
【0023】
また、厚型カード45の傾斜面46が形成された先端側には、挿入方向に延在する複数の仕切りによって溝部47が形成されている。この溝部47には、カード用コネクタ1の複数のコンタクト端子11に接触する複数のパッド48が設けられている。更に、厚型カード45の一の側面には、後述するスライド部材6の係合部40が係合可能な切欠き49が設けられている。また、厚型カード45の他の側面には、カード内のメモリに対する書き込み禁止用の操作部55が設けられている。
【0024】
次に、図1および図2を参照して、カード用コネクタの全体構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの分解斜視図である。
【0025】
図1および図2に示すように、本実施の形態に係るカード用コネクタ1は、上面および前面が開口されたコネクタ本体2と、コネクタ本体2の上面の開口に装着されてカードの装着空間Sを形成するカバー3とを備え、コネクタ本体2およびカバー3が組み合わされて挿入口4を有する箱状体(ハウジング)を成している。挿入口4は、正面視において厚型カード45と相補的な形状を有している。厚型カード45は挿入口4の段状領域に挿入され(図8の(b)参照)、薄型カード41は挿入口4の上段の矩形領域に挿入される(図6の(b)参照)。
【0026】
コネクタ本体2の底壁2bの中央部分には、複数のコンタクト端子11が設けられている。底壁2bに設けられた各コンタクト端子11は、底壁2bの中央部分から奥壁2a側に向かって延在している。コネクタ本体2の一の側壁2cには、厚型カード45の書き込み禁止状態を検出するスイッチ端子12が設けられている。スイッチ端子12は、挿入方向に延在する片持ちの金属バネであり、厚型カード45の操作部55の設定位置に応じて押し下げられることで書き込み禁止状態を検出する。
【0027】
コネクタ本体2の他の側壁2dには、側壁2dに沿ってスライド可能なスライド部材6と、スライド部材6のスライドに伴って伸縮するコイル状の排出バネ(付勢部材)7とが設けられている。排出バネ7は、一端が奥壁2aに当接され、他端がスライド部材6に当接されており、スライド部材6を排出方向に付勢している。
【0028】
スライド部材6は、排出バネ7に付勢された状態で挿入および排出方向にスライド可能に構成されている。スライド部材6の前端側には周知のハートカム溝50が形成されており、このハートカム溝50と側壁2dの前端側に設けられたピン13とによってスライド部材6の位置が周知の態様で規定される。ピン13は、スライド方向に沿って延在し、両端が底壁2bに向かって略直角に屈曲している。ピン13の一端は、側壁2dの前端側に回動可能に支持され、他端はスライド部材6のハートカム溝50上に摺動される。
【0029】
ハートカム溝50は、複数の段差と傾斜を有して上面視ハート型の環状に形成されており、スライド部材6のスライドに応じてピン13の他端を一方向に摺動させる。スライド部材6が奥壁2a近傍の装着位置に押し込まれると、ピン13の他端がハートカム溝50の係止部分に係止され、排出バネ7の付勢によるスライド部材6の復帰が規制される。この状態からさらにスライド部材6が押し込まれると、ピン13とハートカム溝50との係止状態が解除されて、排出バネ7の付勢によりスライド部材6が復帰される。このように、ピン13とハートカム溝50は、スライド部材6の装着位置における保持機能を有している。
【0030】
一方、カバー3は、金属性の板材を折り曲げて形成されており、上面の側壁2dに対応する部分にはピン13を押えるピン押え21が形成されている。ピン押え21は、底壁2b側に切り起された片持ちバネであり、ピン13の中間部分を下方に押圧してピン13の他端をハートカム溝50に押し付けている。また、カバー3上面の挿入口4側の略半部には、カード41、45の飛び出し防止用の一対の制動片56が形成されている。一対の制動片56は、底壁2b側に僅かに切り起された片持ちバネであり、カード41、45の上面に接触して、カード41、45の排出時の飛び出しを抑制している。
【0031】
次に、図3等を参照して、本発明の特徴部分であるスライド部材6の詳細構成について説明する。図3は、本発明の実施の形態に係るスライド部材6の斜視図である。
【0032】
図示のように、スライド部材6は、その移動方向に沿って延びる本体部6aと、本体部6aの後端部からカード装着空間S内へ向けて側方へ延びる腕部32が形成されている。腕部32の側面は、スライド部材6の後端に向かって装着空間Sの幅方向を狭めるような傾斜面32aであり、カード41、45の傾斜面42、46に当接するように約45度に傾斜している。
【0033】
また、本体部6aの装着空間S側には、厚型カード45の切欠き49と係合して厚型カード45を抜け止め保持する係合部40が設けられている。係合部40の前面には、カード41、45を腕部32に当接させる当接位置に案内する傾斜面40aが形成されている。なお、本体部6aの後端側には、排出バネ7の他端が装着される図示しない排出バネ装着部が形成されている。
【0034】
また、本実施形態において、係合部40を有するスライド部材6は、付勢部材としての排出バネ7の中心軸Oをほぼ中心として回動できるようにコネクタ本体2側に支持されている。この場合、スライド部材6は、コネクタ本体2の側壁2dとこれに対向して立設される支持壁2eと底壁2bとからなる移動案内面69(特に、図6、図8参照)上に配置される。スライド部材6は、移動案内面69に摺動する特徴的形態である摺動面を有しており、この摺動面と移動案内面69との回動方向の摺動により排出バネ7の中心軸Oをほぼ中心として回動される。
【0035】
スライド部材6の前記特徴的形態の摺動面は、移動案内面69と対向するスライド部材6の本体部6aの下面に形成されており、スライド部材6の回動を円滑に行なえるようにする少なくとも2つの傾斜面を有している。本実施形態では、スライド部材6に摺動面として側壁2dと略対向する第1の傾斜面64と、底壁2bおよび支持壁2eと略対向する第2の傾斜面65とが設けられている。そして、スライド部材6は、この摺動面を介して挿入・排出方向に移動するとともに、ほぼ中心軸O周りに回動する。なお、傾斜面の数は2つに限定されず、任意の数および傾きの傾斜面を設けることができる。また、傾斜面の代わりに湾曲面を設けるようにしてもよい。
【0036】
なお、スライド部材6は、排出バネ7の中心軸Oをほぼ中心とするその回動がコネクタ本体2またはカバー3の内壁によって妨げられないように、その本体部6aの上縁部が面取りされた湾曲面63として形成されている。なお、湾曲するような面取りの代わりに傾斜するように面取りしてもよい。また、スライド部材6の回動に伴って腕部32が下側のコンタクト端子11と干渉しないように、腕部32の下面は、装着空間S内へ向かうにしたがって厚さが薄くなるように上方へ向かって傾斜する傾斜面62として形成されている。
【0037】
また、本実施形態のコネクタ1は、係合部40を厚型カード45の切欠き49に係合させる方向にスライド部材6を付勢する付勢体を備えている。具体的に、この付勢体は、カバー3の一部を装着空間S側へ向けて切り起こした片持ち梁状のバネ片52によって形成される(図1参照)。バネ片52は、中心軸Oを挟んで係合部40とは逆側を下方に付勢し、スライド部材6を時計回りに回動させる。なお、付勢体は、カバー3に一体に形成されたバネ片52に限定されず、中心軸Oをほぼ中心としてスライド部材6を時計回りに回動させるべく付勢するものであればよい。
【0038】
次に、図4を参照して、スライド部材6に対するピン13による付勢構造について説明する。図4(a)はスライド部材付近の要部平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【0039】
図4(a)に示すように、カード41、45の排出時には、ピン13の他端が中心軸Oを挟んで係合部40とは逆側(図示右側)に位置される。このため、ピン押え21の付勢力が、ピン13を介してスライド部材6における中心軸Oを挟んで係合部40の逆側を下方に付勢する。よって、スライド部材6は、図4(b)に示すように、中心軸Oをほぼ中心としてスライド部材6が矢印に示す時計回り方向に力が作用する。
【0040】
このように、スライド部材6は、排出位置にスライドされると、ピン押え21の付勢力とバネ片52により、係合部40をカード41、45に向かわせる方向に付勢される。したがって、薄型カード41の排出時には、薄型カード41が係合部40により下方から押し上げられ、カバー3の上面に押し付けられる。このため、薄型カード41は、カバー3に押し付けられることで、不用意な脱落が抑制される。
【0041】
また、厚型カード45の排出時には、係合部40が厚型カード45の切欠き49に下方から押し込まれ、スライド部材6と厚型カード45との抜け外れが抑制される。このとき、ピン押え21およびバネ片52の付勢力により、係合部40の押し下げが抑制され、係合部40と切欠き49とが強く係合される。このため、厚型カード45は、係合部40と切欠き49との係合により、不用意な脱落が抑制される。
【0042】
次に、上記構成のカード用コネクタ1の作用について説明する。この場合、最初に、図5および図6を参照して薄型カード41の挿入動作について説明し、次に、図7および図8を参照して厚型カード45の挿入動作について説明する。
【0043】
図5および図6に示されるように、薄型カード41を挿入口4の上段の矩形領域(図6の(b)参照)を通じて装着空間S内へと挿入していくと、カード41の下面がスライド部材6の係合部40に突き当たる。薄型カード41は、装着空間Sにさらに挿入されることで、係合部40の傾斜面40aに乗り上がり、スライド部材6の腕部32に当接される。このとき、カード41が係合部40に乗り上がることにより、その下向きの押圧力によってスライド部材6が反時計まわりに回動される。この場合、スライド部材6は、排出バネ7の中心軸Oをほぼ中心として摺動面(傾斜面64,65)を介して回動し(図6参照)、カード41の挿入経路を確保する。
【0044】
また、この場合、腕部32はその下面が傾斜面62として形成されているため、スライド部材6の回動によって腕部32がその下側のコンタクト端子11と干渉することはない。更に、このようにスライド部材6が回動した状態では、バネ片52の付勢力により、係合部40がカード41の下面を押圧してカード41がスライド部材6に保持される。そして、腕部32にカード41の傾斜面42が当接した時点(図5の(a)に示される排出位置)から更にカード41を奥側に押し込むと、前記保持力も手伝ってスライド部材6がカード41と一体で排出バネ7の付勢力に抗して奥側へ移動され、最終的に図5の(b)に示される装着位置に至る。
【0045】
一方、カード41を排出させる場合には、カード41を奥側へさらに押し込むことにより、ピン13の他端がハートカム溝50の係止部分から外れるため、排出バネ7の付勢力によってカード41が排出方向に押し出される。図5の(a)に示される排出位置では、付勢体52とピン13との相乗作用に伴う付勢力によりカード41がスライド部材6に保持されるため、カード41の脱落が防止される。
【0046】
すなわち、図5の(a)に示される排出位置では、ピン13の他端(作用点)は、スライド部材6の幅方向の右端側位置に位置されるため、付勢体52と協働してスライド部材6を時計回りに回動させるべく付勢する。したがって、付勢体52およびピン13の付勢力により係合部40がカード41の下面に押し当てられ、カード41の脱落が効果的に防止される。
【0047】
一方、図7および図8に示されるように、厚型カード45を挿入口4の段状領域を通じて(図8の(b)参照)装着空間S内へと挿入していくと、カード45の上段の下面がスライド部材6の係合部40に突き当たる。厚型カード45は、装着空間Sにさらに挿入されることで、係合部40の傾斜面40aに乗り上がり、スライド部材6の腕部32に当接される。このとき、カード45が係合部40に乗り上がることにより、その下向きの押圧力によってスライド部材6が反時計まわりに回動される。この場合、スライド部材6は、排出バネ7の中心軸Oをほぼ中心として摺動面(傾斜面64,65)を介して回動し(図6参照)、カード45の挿入経路を確保する。
【0048】
また、この場合、腕部32はその下面が傾斜面62として形成されているため、スライド部材6の回動によって腕部32がその下側のコンタクト端子11と干渉することはない。そして、腕部32にカード45の傾斜面46が付きあたる排出位置(図7の(a)に示される)でカード45の切欠き49が係合部40と対向すると、付勢体52の付勢力によりスライド部材6が回動復帰して(図8の(a)参照)、係合部40がカード45の切欠き49と係合する。
【0049】
また、この場合、ピン13も、スライド部材6の幅方向の右端側位置に位置されるため、付勢体52と協働してスライド部材6を時計回りに回動させるべく付勢して、係合部40と切欠き49との係合に寄与する。すなわち、排出位置では、ピン13も付勢体としての機能を果たす。その後、図7の(a)に示される排出位置から更に厚型カード45を奥側に押し込むと、前記係合状態によりスライド部材6がカード45と一体で排出バネ7の付勢力に抗して奥側へ移動され、最終的に図7の(b)に示される装着位置に至る。
【0050】
一方、カード45を排出させる場合には、カード45を奥側へさらに押し込むことにより、ピン13の他端がハートカム溝50の係止部分から外れるため、排出バネ7の付勢力によってカード41が排出方向に押し出される。図7の(a)に示される排出位置では、付勢体52とピン13との相乗作用に伴う付勢力によりスライド部材6の係合部40がカード45の切欠き49に係合した状態で保持されるため、カード41の不用意な脱落が防止される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、係合部40を有するスライド部材6がスライド方向に略平行な軸回りに回動可能にコネクタ本体(ハウジング)2に支持されているため、最小限の移動量(移動範囲)で係合部40を厚型カード45の切欠き49に係合させることができる。そのため、切欠き49を有する厚型カード45に対しては、係合部40を厚型カード45の切欠き49に係合させることで抜け止めを行なうことができる。一方、切欠きを有さないカード41に対しては、係合部40が薄型カード41から押し逃がされるようにスライド部材6が回動することで、薄型カード41の装着を可能にする。この場合、係合部40は、弾性的に変位してカードに押し付くのではなく、スライド部材6と一体に回動してカードから退避するため、無理な力がかかって経時的に塑性変形することもない。すなわち、本構成によれば、カード用コネクタ1の小型化(省スペース化)を効果的に図りつつ、切欠き49を有する厚型カード45および切欠きを有さない薄型カード41の両方を安定して装着できる。
【0052】
また、本実施形態によれば、スライド部材6が排出バネ(付勢部材)7のほぼ中心軸O周りで回動するため、スライド部材6の回動に伴って排出バネ7が軸振れすることがない。よって、排出バネ7の軸振れ時の逃げスペースを確保する必要がなく、カード用コネクタ1の更なる小型化(省スペース化)を図ることができる。また、スライド部材6の回動に伴って排出バネ7が軸振れしないため、スライド部材6のカード排出方向への安定した付勢を確保できる。
【0053】
また、本実施形態において、スライド部材6は、コネクタ本体2に摺接するその摺動面を介して移動するとともに、前記摺動面の傾斜面64,65によってコネクタ本体2に対して回動できる。このように構成によれば、傾斜面64,65を有する前記摺動面により、カードの厚み方向でのスライド部材6の回動と、カードの挿入・排出方向でのスライド部材6の移動とを簡単な構成で実現できる。
【0054】
また、本実施形態のカード用コネクタ1は、係合部40をカードと係合させるようにスライド部材6をその回動方向で付勢する付勢体としてのバネ片52を更に備えている。このため、切欠き49を有する厚型カード45に対しては、バネ片52の付勢力によって係合部40をスライド部材6に確実に係合させることができる。また、切欠きを有さない薄型カード41に対しては、係合部40を薄型カード41に押し付けて薄型カード41に制動力を付与することができる。
【0055】
また、本実施形態では、付勢体52がカバー(ハウジング)3の一部によって形成されているため、付勢体を別個に設ける必要がなく、部品点数を少なくして、コネクタの小型化に寄与し得る。
【0056】
なお、本実施形態では、スライド部材6が排出バネ7のほぼ中心軸O回りに回動する構成としたが、この構成に限定されるものではない。スライド部材6は、スライド方向に略平行な軸回りに回動する構成であれば、どのような構成でもよい。また、スライド部材6に設けられた係合部40は、スライド部材6と一体に設けられてもよいし、別体に設けられてもよい。また、付勢体は、カバー3と一体でもよいし、別体に設けられてもよい。さらに、付勢体は、カバー3ではなく、コネクタ本体2に設けられる構成としてもよい。
【0057】
なお、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明は、切欠きを有するカードおよび切欠きを有さないカードの両方を安定して装着できるとともに、小型化(省スペース化)を効果的に図ることができるという効果を有し、特に、薄型カードに対応したカード用コネクタに有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 カード用コネクタ
2 コネクタ本体(ハウジング)
3 蓋体(ハウジング)
6 スライド部材
7 排出バネ(付勢部材)
40 係合部
41 薄型カード(第二のカード)
45 厚型カード(第一のカード)
49 切欠き
52 バネ片(付勢体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切欠きを有する第一のカードおよび切欠きを有さない第二のカードを装着可能な装着空間を形成するハウジングと、
前記第一のカードおよび前記第二のカードと共に挿入方向及び排出方向に前記ハウジング内をスライド可能に形成され、前記第一のカードの切欠きに係合可能な係合部を有するスライド部材とを備え、
前記スライド部材は、スライド方向に略平行な軸回りに回動可能に前記ハウジングに支持され、前記第一のカードの装着時に前記係合部を前記第一のカードの切欠きに係合するように回動し、前記第二のカードの装着時に前記係合部を押し逃がすように回動することを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
前記スライド部材を前記排出方向に付勢するコイル状の付勢部材を更に備え、前記スライド部材が前記付勢部材のほぼ中心軸周りで回動することを特徴とする請求項1に記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記スライド部材は、前記ハウジングに摺接するその摺動面を介して移動するとともに、前記摺動面の傾斜部によって前記ハウジングに対して回動できることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカード用コネクタ。
【請求項4】
前記スライダの回動軸を挟んで前記係合部側とは逆側を、前記第一のカードおよび前記第二のカードに前記係合部を向かわせる回動方向で付勢する付勢体を更に備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のカード用コネクタ。
【請求項5】
前記付勢体が前記ハウジングの一部によって形成されることを特徴とする請求項4に記載のカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−258503(P2011−258503A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133893(P2010−133893)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】