説明

カード製造方法及びカード製造装置

【課題】カードを高速に発行すること。
【解決手段】カードは次のように作られる。まず、カード本体91とそのカード本体91に貼付可能なフィルム92とを所定の対称軸(ミシン目94)に関して互いに線対称の位置に配置したカードキット90を準備する。続いて、カードキット90上のフィルム92にデータを印刷する。そして、カードキット90を対称軸(ミシン目94)において折り曲げて、データが印刷されたフィルム92とカード本体91とを貼り合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード製造方法及びカード製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カードに関する技術として様々なものが知られている。例えば下記特許文献1には、カードの台紙となるカード用シートが開示されている。このカード用シートは、第1及び第2の基材の少なくとも一部を貼り合わせる再剥離再貼付粘着剤層と、第1及び第2の基材の少なくとも一方に設けられたカード用の秘匿情報欄とを備えている。そしてこのカード用シートは、再剥離再貼付粘着剤層の一部又は全部を表出させ、その表出した再剥離再貼付粘着剤層にカードを重ねてカードを固定し、カード、及び/又は、第1及び第2の基材の少なくとも一部を秘匿情報欄に重ねてその秘匿情報欄を隠蔽することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−218792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、視認可能な情報を載せたカードの発行(製造)には一定以上の時間がかかっており、その高速化が望まれている。
【0005】
そこで本発明は、カードを高速に発行することが可能なカード製造方法及びカード製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のカード製造方法は、カード本体と該カード本体に貼付可能なフィルムとを所定の対称軸に関して互いに線対称の位置に配置したカードキットを用意する準備工程と、用意されたカードキット上のフィルムにデータを印刷する印刷工程と、カードキットを対称軸において折り曲げて、データが印刷されたフィルムとカード本体とを貼り合わせる貼付工程と、を含む。
【0007】
本発明の別の態様のカード製造装置は、カード本体と該カード本体に貼付可能なフィルムとを所定の対称軸に関して互いに線対称の位置に配置したカードキットを供給する供給手段と、供給手段により供給されたカードキット上のフィルムにデータを印刷する印刷手段と、カードキットを対称軸において折り曲げて、印刷手段によりデータが印刷されたフィルムとカード本体とを貼り合わせる貼付手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様のカード製造方法または別の態様のカード製造装置によれば、カード本体及びフィルムが互いに線対称の位置に配されたかたちでカードキットとして予め一体化しており、対称軸においてそのカードキットを折り曲げさえすれば、印刷処理されたフィルムとカード本体とを貼り合わせることができる。その結果、カードを高速に発行することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るカード製造装置の正面図である。
【図2】図1に示すカード製造装置の平面図である。
【図3】図1に示す貼付部の拡大図である。
【図4】図1に示す貼付部の側面図である。
【図5】(a)はカードキットの平面図であり、(b)はその側面図である。
【図6】図1に示すカード製造装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】図1に示す貼付部の動作を模式的に示す図である。
【図8】(a)〜(f)はそれぞれ、フィルムの構成例を示す断面図である。
【図9】従来のカード製造手順を模式的に示す図である。
【図10】図1に示すカード製造装置を用いてカードを製造する手順を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
まず、図1〜4を用いて、実施形態に係るカード製造装置1の構成を説明する。カード製造装置1は、ICカードを発行(製造)するシステムであり、図1,2に示すように、集積部(供給手段)10、第1搬送部(供給手段)20、記録部30、印刷部(印刷手段)40、貼付部(貼付手段)50、及び排出部60を備えている。なお、本実施形態では、カード製造装置1がISO14443 Type Bの規格に基づくICカードを発行することを前提とするが、カード製造装置1により発行されるICカードの規格はこれに限定されない。
【0012】
集積部10は、これから処理されるカードキット90を格納しておくための手段(格納庫)である。集積部10には複数のカードキット90が積み上げられている。
【0013】
ここで、図5を用いて、カードキット90について説明する。カードキット90は、ICチップが埋め込まれたカード本体91と、そのカード本体91に貼付可能なフィルム92とを一体的にカード製造装置1に供給するための道具である。
【0014】
カードキット90は、カード本体91及びフィルム92を支持するための長方形の台紙93を備えている。カード本体91がISO14443 Type Bの規格に基づくものであれば、台紙の大きさを例えば葉書サイズ(100mm×148mm)とすることができる。もっとも、台紙の大きさや形状はなんら限定されるものではなく、製造するカードの種類などに基づいて任意に決めてよい。
【0015】
台紙93の長手方向中央には、その幅方向に沿ってミシン目(所定の間隔をおいて設けられた切断部の集合。折り曲げ容易部)94が形成されている。ミシン目94を境として一方の領域にはカード本体91の形状の孔が形成されており、カード本体91はその孔に合わせて配置される。また、ミシン目94を境として他方の領域にはフィルム92の形状の孔が形成されており、フィルム92はその孔に合わせて配置される。
【0016】
カード本体91は一方の孔に差し込まれた上で、テープ基材95a上に微粘着剤95bが塗布されて成るアプリケーションテープ95により固定されている。また、フィルム92は他方の孔に合わせて配置された上で、カード本体91と同様にアプリケーションテープ95により固定されている。
【0017】
カードキット90において、カード本体91及びフィルム92は、ミシン目94を対称軸として互いに線対称の位置に配された上で固定される。これを実現するために、台紙93内の二つの孔はミシン目94を対称軸として互いに線対称の位置に形成されている。
【0018】
図1,2に戻って、第1搬送部20は、集積部10内のカードキット90を一枚ずつ後工程に送る手段である。第1搬送部20は駆動モータやタイミングベルトなどで構成されており、カードキット90を記録部30、印刷部40、そして貼付部50へと順に送る。まず、第1搬送部20は集積部10からカードキット90を取り出し、カード本体91が記録部30の上方に位置するまでそのカードキット90を搬送する。記録部30によりカード本体91にデータが書き込まれると、第1搬送部20はフィルム92が印刷部40に位置するまでそのカードキット90を搬送する。そして、印刷部40によりフィルム92にデータが印刷されると、第1搬送部20はカードキット90を貼付部50へ搬送する。これらの動作は、カードキット90を移動させながら連続的に行うこともできる。
【0019】
記録部30は、カードキット90に固定されたカード本体91内のICチップにデータを書き込む手段であり、ICカードの規格に対応するリーダー・ライターなどで構成されている。記録部30は、第1搬送部20を構成するタイミングベルトの下方に設けられている。第1搬送部20によりカードキット90のカード本体91が記録部30の上方に位置すると、記録部30は所定のコンピュータから送られてきたデータをカード本体91内のICチップに書き込む。書き込まれるデータは任意に決めてよい。例えば、記録部30は識別番号や氏名、生年月日などの個人情報をICチップに書き込むことができる。
【0020】
なお、記録部30は、書込み処理後にICチップからデータを読み出し、そのデータと上記のコンピュータから送られてきたデータとを照合して、書込みが正常に行われたか否かを検査してもよい。
【0021】
印刷部40は、カードキット90に固定されたフィルム92にデータを印刷する手段である。この印刷部40は水性インクジェット印刷を採用しており、インクを貯蔵するインクタンク41や、そのインクをフィルム92に向けて噴射する印字ヘッド42などで構成されている。印刷部40は必要に応じてヘッド洗浄などの準備を行い、その後カードキット90のフィルム92が印刷部40まで至ると、そのフィルム92にデータを左右反転で印刷する。印刷されるデータは所定のコンピュータから送られてくるが、これはICチップに書き込まれたデータの情報源となる所定のコンピュータに保存された同一の基礎データに基づいて生成される。なお、本実施形態では4色のインクを用いることからインクタンク及び印字ヘッド42がそれぞれ4個ずつ設けられているが、インクジェット印刷の具体的な手法や構成は何ら限定されない。
【0022】
貼付部50は、データが印刷されたフィルム92と当該データが書き込まれたカード本体91とを貼り合わせる手段である。以下では図3,4も用いて貼付部50を説明する。
【0023】
貼付部50は、第2搬送部51や押さえロール52、位置決めセンサ53、ブレード54、ラミネータ55、紫外線照射部56などで構成されている。なお、図2ではブレード54を省略している。
【0024】
第2搬送部51は、第1搬送部20により印刷部40から送られてきたカードキット90を受けて貼付部50の内部に案内する手段である。第2搬送部51は、直列に並んだ二つのタイミングベルト51a,51bを含んで構成されている。第1搬送部20に隣接するタイミングベルト51aは駆動モータ51cにより回転し、タイミングベルト51aからカードキット90を受けるタイミングベルト51bは駆動モータ51dにより回転する。タイミングベルト51a,51bの間には、後述するように折り曲げられたカードキット90を貼付部50の下方に案内するための隙間が形成されている。
【0025】
押さえロール52は、第2搬送部51の上方に例えば、4箇所設けられており、印刷部40から流れてくるカードキット90の周縁部を上から押さえる役割を果たす。この押さえロール52はカードキット90を貼付部50内に確実に案内するためであるが、例えば第2搬送部51を吸着ベルトで構成した場合には、この押さえロール52を省略することができる。
【0026】
位置決めセンサ53は、第1搬送部20から離れた方の第2搬送部51の端部付近に設けられており、印刷部40から送られてきたカードキット90の進行を止める役割を果たす。この位置決めセンサ53は検知器を備えており、カードキット90が位置決めセンサ53に接触したことをその検知器を用いて検知する。検知器はカードキット90を検知するとそのことを示す到着信号をブレード54に出力する。
【0027】
ブレード54は、位置決めセンサ53により停止したカードキット90をそのミシン目94の所で折り曲げる手段である。このブレード54は、タイミングベルト51a,51bの間にある隙間の上方において、送られてきたカードキット90の幅方向に沿って延びるように設けられており、上下方向に動くことができる。ブレード54の駆動部は位置決めセンサ53の検知器と電気的に接続されている。
【0028】
カードキット90が印刷部40から貼付部50まで移動してくる際には、ブレード54はそのカードキット90に接触しないように第2搬送部51の上方で待機している。そして、位置決めセンサ53(検知器)から到着信号が入力されると、ブレード54は下降してカードキット90のミシン目94に接触し、そのまま所定の距離だけ更に下降する。このようなブレード54の下降によって、カードキット90はそのミシン目94を境にブレード54を挟むように折り曲がる(ブレード54側から見て谷折り)。
【0029】
折り曲げられたカードキット90は、駆動モータ51cによりタイミングベルト51aがカードキット90を貼付部50内に案内した時と同様に回転するとともに、駆動モータ51dによりタイミングベルト51bがタイミングベルト51aと逆方向に回転することで、ブレード54の下方(タイミングベルト51a,51bの間にある隙間の下方)に上下方向に延びる案内路57(図7参照)に送られる。
【0030】
なお、カードキット90がブレード54により折り曲げられる際には、押さえロール52は跳ね上がってくるカードキット90と接触しないように第2搬送部51の外側に向かって引っ込むように移動する。
【0031】
案内路57にはラミネータ55及び紫外線照射部56が設けられている。カードキット90においてカード本体91及びフィルム92はミシン目94を軸に互いに線対称となる位置に置かれているので、カードキット90が案内路57に送られた時点で、そのカードキット90に固定されているカード本体91とフィルム92とは完全に相対することになる。
【0032】
ラミネータ55は、カードキット90に固定されているカード本体91及びフィルム92を貼り合わせる手段である。このラミネータ55は、案内路57を挟んで対向する加熱ローラ55a及び加圧ローラ55bを含んで構成されており、折り曲げられたカードキット90に固定されているカード本体91とフィルム92とを熱圧着により貼り合わせる。このような貼付処理(ラミネート加工)により、カード本体91及びフィルム92はICカードとして一体化する。ラミネータ55は貼付処理したカードキット90を紫外線照射部56に送る。
【0033】
紫外線照射部56は、ラミネータ55により生成されたICカードの耐水性を高めるためにそのICカードに紫外線を照射する手段であり、複数の紫外線LED56aを含んで構成されている。紫外線照射部56により紫外線を当てられたICカードの付いたカードキット90は、紫外線照射部56の下方に設けられている排出部60に排出される。
【0034】
次に、図6,7を用いて、カード製造装置1の動作を説明するとともに本実施形態に係るカード製造方法について説明する。ここで、本実施形態におけるカードの製造とは、カード本体91及びフィルム92が固定されているカードキット90を用意し、カード本体91内のICチップにデータを書き込み、フィルム92に同じデータを印刷し、カードキット90を折り曲げることでカード本体91とフィルム92とを相対させた上でそれらを貼り合わせるという一連の作業のことをいう。このような作業はカードの発行ということもできる。
【0035】
ICカードを作るために、まずカードキット90を用意して集積部10にセットした上で(ステップS01、準備工程)、カード製造装置1を作動させる。カード製造装置1では、第1搬送部20の動作によりカードキット90が集積部10から記録部30に送られ、記録部30によりカード本体91内のICチップに所定のデータが書き込まれる(ステップS02)。続いて、カードキット90が第1搬送部20により印刷部40に送られ、印刷部40により、ICカードに書き込まれたものと同じデータがフィルム92に印刷される(ステップS03、印刷工程)。続いて、カードキット90が第1搬送部20及び第2搬送部51により貼付部50内に送られる。
【0036】
ここからは図7も用いて説明する。貼付部50に送られてきたカードキット90は位置決めセンサ53により停止する(図7の符号90A参照)。この停止を受けてブレード54が下降してカードキット90のミシン目94を押し下げ、これによりカードキット90が、図7の矢印Aで示すように、ミシン目94を境に二つに折り曲がる(ステップS04、貼付工程。図7の符号90B参照)。続いて、折り曲げられたカードキット90が案内路57を通ってラミネータ55に送られ、ラミネータ55によりカード本体91とフィルム92とが貼り合わされる(ステップS05、貼付工程。図7の符号90C参照)。続いて、その貼付処理(ラミネート加工)により生成されたICカードに対して紫外線照射部56により紫外線が照射される(ステップS06)。そして最後に、これら一連の処理により生成されたICカードの付いたカードキット90が排出部60に排出される(ステップS07。図7の符号90D参照)。これにより、ICカードの製造が完了する。
【0037】
なお、カードキット90からICカードを取り外す処理は、所定の装置を用いて行ってもよいし、人手で行ってもよい。上述した一連の処理は各カードキットに対して流れ作業により行われる。
【0038】
次に、図8を用いて、フィルム92の構造の例をいくつか示す。図8(a)〜(e)に示す例はいずれも、厚さが50〜100μmである透明なポリエステルフィルム(フィルム基材)921と、印刷部40から噴射されるインクを受けるインク受容樹脂922と、フィルム92をカード本体91に貼り付けるための感熱接着剤923とから構成されている。一方、図8(f)に示す例では、感熱接着剤923がポリエステルフィルム921ではなくカード本体91の方に予め塗布されており、ポリエステルフィルム921にはインク受容樹脂922のみが塗布されている。
【0039】
図8(a)に示すフィルム92Aは、カード本体91と接触する方のポリエステルフィルム921の面(以下では塗布面という)全体にインク受容樹脂922を塗布し、そのインク受容樹脂922上に感熱接着剤923をドット状に塗布したものである。塗布されたインク受容樹脂922及び感熱接着剤923の厚さはそれぞれ5〜100μmである。この場合のインク受容樹脂922及び感熱接着剤923の塗布方法としてはシルクスクリーン印刷やグラビア印刷、熱転写法などが挙げられる。
【0040】
図8(b)に示すフィルム92Bは、ポリエステルフィルム921の塗布面にインク受容樹脂922を略台形状且つドット状に塗布し、各インク受容樹脂922上に感熱接着剤923を塗布したものである。この場合も、インク受容樹脂922及び感熱接着剤923の厚さはそれぞれ5〜100μmであり、塗布方法としてはシルクスクリーン印刷やグラビア印刷、熱転写法などが挙げられる。
【0041】
図8(c)に示すフィルム92Cは、ポリエステルフィルム921の塗布面にインク受容樹脂922及び感熱接着剤923をそれぞれドット状に塗布したものである。この場合には、一つの層においてインク受容樹脂922と感熱接着剤923とが略均一に分散しており、塗布面の側からフィルム92Cを見ると、インク受容樹脂922と感熱接着剤923とが市松模様を成すように並んでいる。インク受容樹脂922及び感熱接着剤923から成る層の厚さは5〜100μmである。この場合も、塗布方法としてはシルクスクリーン印刷やグラビア印刷、熱転写法などが挙げられる。
【0042】
図8(d)に示すフィルム92Dは、ポリエステルフィルム921の塗布面全体にインク受容樹脂922を塗布し、そのインク受容樹脂922に感熱接着剤923をドット状に塗布したものである。この場合も、インク受容樹脂922及び感熱接着剤923の厚さはそれぞれ5〜100μmである。この例においては、感熱接着剤923のパウダーを静電塗布法によりインク受容樹脂922上に塗布した。
【0043】
図8(e)に示すフィルム92Eは、ポリエステルフィルム921の塗布面に、インク受容樹脂922及び感熱接着剤923を均一に分散させたポリマーブレンド溶液を塗布して乾燥させたものである。この場合には、一つの層においてインク受容樹脂922と感熱接着剤923とが微細な海島構造を成すように相分離し、略均一にミクロ分散している。インク受容樹脂922及び感熱接着剤923から成る層の厚さは5〜100μmである。
【0044】
図8(f)に示すフィルム92Fは、ポリエステルフィルム921の塗布面全体にシルクスクリーン印刷やグラビア印刷、熱転写法などによりインク受容樹脂922を塗布したものである。この場合、そのフィルム92Fが貼り付くことになるカード本体91の面全体には、シルクスクリーン印刷やグラビア印刷、熱転写法などにより感熱接着剤923が塗布される。塗布されたインク受容樹脂922及び感熱接着剤923の厚さはそれぞれ5〜100μmである。
【0045】
図8のいずれの例においても、ポリエステルフィルム921をその塗布面の側から見た場合には、インク受容樹脂922の少なくとも一部が露出している。このようにインク受容樹脂922を露出させることで、印刷部40から噴射されたインクをインク受容樹脂922に短時間(例えば約2秒)で吸収させることができるので、カードを高速に製造(発行)するとともに、噴射されたインクのにじみを防止することができる。図8(a)〜(e)の例において、インク受容樹脂922の個々の露出部分の幅を、印刷部40から噴射されるインク滴の径よりも小さくすれば、フィルム92上にデータを精細に印刷することができる。
【0046】
上記のインク受容樹脂922としては、市販の親水性樹脂であるアクアコーク(登録商標、住友精化株式会社製、ポリアルキレンオキシド)やパラテコールEG−4X(登録商標、DIC株式会社製)等を使用できる。また、感熱接着剤923としては、市販のバイロン200(登録商標、東洋紡績株式会社製)あるいは、バイロン630(登録商標、東洋紡績株式会社製)等を使用できる。
【0047】
なお、フィルムの構造は図8に挙げたものに限定されない。例えば、インク受容樹脂922や感熱接着剤923の層の構造や形状は上記実施形態に限定されない。
【0048】
図8に示すようなフィルム92を用いれば、フィルム92をカード本体91に貼り付けた後にカード使用者等がそのフィルム92をICカードから剥がすと、インク受容樹脂922を含んで成るインク受容層が破壊されて印刷内容が判読できなくなる。したがって、ICカードの不正な再利用を防止することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、カード本体91及びフィルム92が互いに線対称の位置に配されたかたちでカードキット90として予め一体化しており、対称軸(ミシン目94)においてそのカードキット90を折り曲げさえすれば、印刷処理されたフィルム92とカード本体91とを貼り合わせることができる。その結果、ICカードを高速に発行することが可能になる。
【0050】
このような高速化の効果を、図9,10を用いて従来の手法と比較しつつ説明する。従来の手法ではカード本体とフィルムとを個別に用意しており、また、データは熱転写方式でカード本体に印刷されていた。このような従来の手法では、1枚のICカードを作るのに約40〜60秒かかっていた。図9の例では、カード本体内のデータの書込みに8秒、記録部から印刷部へのカード本体の搬送に1秒、カード本体への印刷に市販の熱転写式プリンタ(アイアンドディ株式会社製「カード発行機DCP3300」を使用した場合の印刷に約28秒、ラミネート処理の準備(ラミネータ装置へのカード本体の移送や、そのカード本体に貼り付けるフィルムの準備など)に約32秒、ラミネート加工に約7秒要し、結局、1枚のICカードの製造に約60秒かかっている。
【0051】
これに対して本実施形態では、図10に示すように、カード本体91内のデータの書込みに8秒、記録部30から印刷部40へのカードキット90の搬送に1秒、フィルム92への印刷(水性インクジェット方式)に2秒、印刷部40から貼付部50へのカードキット90の搬送に約1秒、カードキット90の折り曲げに約2秒、ラミネート加工に約8秒要し、結局、1枚のICカードを約20秒で製造することができる。
【0052】
このように、本実施形態では従来の手法と比較してカード製造時間が大幅に短縮されている。したがって、例えば本実施形態のカード製造装置1をカード発行窓口に設ければ、その窓口でのカード発行業務の効率が上がると期待される。
【0053】
また、本実施形態によれば、上記対称軸上にミシン目94が形成されていることによりカードキット90を容易に折ることができるので、高速且つ正確にフィルム92とカード本体91とを貼り合わせることができる。例えば、仮にブレード54がミシン目94上ではなくその近傍に当たったとしても、カードキット90はミシン目94を境に折り曲がるので、フィルム92とカード本体91との位置合わせが正確に行われ、その結果、フィルム92とカード本体91とを精度良く貼り合わせることができる。
【0054】
また、本実施形態のようにカード本体91とフィルム92の双方に同一のデータを書き込み及び印刷する場面では、それら二つの部材を一つのカードキット90として一体化した上で処理することで、カード本体91内のデータとフィルム92上のデータとの食い違いを防止することができる。
【0055】
また、本実施形態によればフィルム92への印刷がインクジェット方式により行われるので、印刷処理においてカード製造装置1側にデータの内容を判読できるような証拠が残らない。また、図9に示すような、熱転写印刷によるカード本体への印刷よりも早く印刷を完了することができる。
【0056】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0057】
上記実施形態においてカード製造装置1はICカードを製造したが、製造するカードの種類はなんら限定されない。例えば、ICチップを含まないカードの製造にも本発明のカード製造装置を適用できる。その場合には、上記記録部30に相当する手段を省略することができる。また、上記紫外線照射部56は必須ではない。
【0058】
上記実施形態では、カードキット90に折り曲げ容易部としてミシン目94を設けたが、折り曲げ容易部の構成はこれに限定されない。例えば、対称軸上の全部ではなく一部のみにミシン目を形成してもよいし、ミシン目に代えて、カードキットの対称軸上に折り目を予め付けておいてもよい。また、折り曲げ容易部をカードキット上に設けなくてもよい。
【0059】
上記実施形態では水性インクジェット印刷によりデータがフィルム92に印刷されたが、フィルムへのデータの印刷方法はこれに限定されず、任意の印刷方式を採用してよい。
【符号の説明】
【0060】
1…カード製造装置、10…集積部(供給手段)、20…第1搬送部(供給手段)、30…記録部、40…印刷部(印刷手段)、50…貼付部(貼付手段)、51…第2搬送部、52…押さえロール、53…位置決めセンサ、54…ブレード、55…ラミネータ、56…紫外線照射部、57…案内路、60…排出部、90…カードキット、91…カード本体、92,92A〜92E…フィルム、93…台紙、94…ミシン目(対称軸)、921…ポリエステルフィルム、922…インク受容樹脂、923…感熱接着剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード本体と該カード本体に貼付可能なフィルムとを所定の対称軸に関して互いに線対称の位置に配置したカードキットを用意する準備工程と、
用意された前記カードキット上の前記フィルムにデータを印刷する印刷工程と、
前記カードキットを前記対称軸において折り曲げて、データが印刷された前記フィルムと前記カード本体とを貼り合わせる貼付工程と、
を含むカード製造方法。
【請求項2】
前記カードキットには、前記貼付工程における折り曲げを容易にするための折り曲げ容易部が前記対称軸上に形成されている、
請求項1に記載のカード製造方法。
【請求項3】
前記フィルムが、フィルム基材と、該フィルム基材の一方の面に塗布されたインク受容樹脂及び接着剤とを備え、
前記フィルム基材を前記一方の面の側から見た場合に、前記インク受容樹脂の少なくとも一部が露出している、
請求項1又は2に記載のカード製造方法。
【請求項4】
カード本体と該カード本体に貼付可能なフィルムとを所定の対称軸に関して互いに線対称の位置に配置したカードキットを供給する供給手段と、
前記供給手段により供給されたカードキット上の前記フィルムにデータを印刷する印刷手段と、
前記カードキットを前記対称軸において折り曲げて、前記印刷手段によりデータが印刷された前記フィルムと前記カード本体とを貼り合わせる貼付手段と、
を備えるカード製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−258140(P2011−258140A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134413(P2010−134413)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】