説明

カーバメートの製造方法

【課題】下記を全て満たすカーバメートの製造方法を提供すること。
・二酸化炭素と、アルコールと、アミンとを原料として、ケトンやハロゲン化水素のような副生成物を生成することなく該原料からカーバメートを直接製造できる。
・上記アミンとして脂肪族一級モノアミンを用いた場合には、従来よりも高い選択率でカーバメートを直接製造することができる。
・上記アミンとして脂肪族一級モノアミン以外のアミンを用いても、カーバメートを直接製造できる。
【解決手段】二酸化炭素と、アルコールと、アミンとを、酸化セリウムおよび/またはセリウム系複合酸化物の存在下で反応させることを特徴とするカーバメートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素と、アルコールと、アミンとを、酸化セリウムおよび/またはセリウム系複合酸化物の存在下で直接反応させ、カーバメートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素と、アルコールと、アミンとを原料とし、該原料から直接カーバメートを合成する方法は種々知られている。
カーバメートとは、カルバミン酸のエステルをいう(カルバミン酸の窒素に結合した水素は置換されていてもよい)。
まず、これらの方法と問題について説明する。
【0003】
1.アルキル化法
二酸化炭素と、アルコールと、アミンとから直接カーバメートを合成する方法としては、例えば、アルキルハライドのようなアルキル化剤、触媒のオニウム塩と無機塩基を共存させてカーバメートを合成する方法が知られている。
【0004】
具体例としては、J.Org.Chem.,2001,66,1035(非特許文献1)に開示されている方法が挙げられる。非特許文献1には、例えば下記化学反応式で表される反応経路でカーバメートを合成する方法が開示されている。
【0005】
【化1】

このような方法では、アミンの量に対するアルキル化剤の量が化学量論量以上必要となるうえ、カーバメートを合成する過程で腐食性のハロゲン化水素が副成する。生成したハロゲン化水素を中和するためには、該ハロゲン化水素の量に対する中和剤としての無機塩基化合物の量が化学量論量以上に必要となり、しかも、該中和により新たに生成した無機塩基化合物は再生が困難な塩である。これにより、製造コストや製造工程が増加するという問題が生じる。
【0006】
また、オニウム塩触媒は一般的に均一触媒であり、オムニウム塩触媒を反応系から分離して回収するにも、回収したオムニウム塩触媒を再利用するにも、煩雑な工程を経て上記反応に使用したオムニウム塩触媒を処理する必要があるという問題も生じる。
【0007】
2.アセタール法
上記のように化学量論量以上の反応副原料(反応を進行させるために用いられる試薬で、生成物の骨格に取り込まれない原料を言う)が消費される問題を回避するために、再生可能なアセタールを反応副原料に用いてカーバメートを合成する方法がある。
【0008】
具体例としては、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,2001,2238(非特許文献2)に開示されている下記スキーム図で表される方法が挙げられる。
【0009】
【化2】

非特許文献2に記載の方法では、上記スキーム図に示されるように、原料である二酸化炭素、アルコールおよびアミンと、スズ触媒と、アセタールとを共存させてカーバメートを合成する。アセタールは化学量論量以上使用する。
【0010】
この方法では、反応系内で生成した水とアセタールとが反応してケトンを生成する。この反応はカーバメートの生成を促進するために重要であるが、該反応により生成したケトン自体が副反応を起こす。そして、この副反応により生じたケトン由来の副反応生成物と、カーバメートとを分離するための工程が必要となる。
【0011】
さらに、反応後、ケトンは、アセタールを再生するために、反応後に得られた混合物から分離して、アルコールと反応させて再度アセタールに誘導する必要があるが、これには煩雑な工程が必要となる。
【0012】
3.炭酸セシウム触媒法
上記方法とは異なり、反応副原料を用いずに、二酸化炭素と、アルコールと、アミンとのみを原料として、カーバメートを該原料から直接合成する方法も知られている。
【0013】
例えば、Green Chem.,2008,10,111(非特許文献3)には、下記化学式で表される反応経路でカーバメートを製造する方法が開示されており、この方法では、炭酸セシウム触媒の存在下、カーバメートを合成するための原料である二酸化炭素と、アルコールと、アミンとからカーバメートを直接合成する。
【0014】
【化3】

この方法における反応条件は、反応系内の二酸化炭素の反応初期圧が2.5MPa、反応時間が4〜48時間、反応温度が170〜220℃である。この方法により、二酸化炭素と、アルキルアミンと、一級アルコールとから、種々の脂肪族カーバメートを最高で40%台の収率で得られる。
【0015】
この方法は、原料(二酸化炭素とアルコールとアミン)と触媒のみとを使用する方法であるが、生成する尿素のモル量とカーバメートのモル量との合計量100%中の脂肪族カーバメートの割合(選択率)が最高で70%台、収率も最高で40%程度と、いずれも低いという問題がある。しかも、この方法では、脂肪族カーボネートしか得られず、工業的に重要な芳香族カーバメートをはじめする脂肪族カーボネート以外のカーボネートが得られないという問題もある。
【0016】
次に、本発明で用いる酸化セリウムの技術背景について説明する。
酸化セリウムを用いる反応としては、酸化セリウムを用いた二酸化炭素の固定化反応が知られている。
【0017】
例えば、Green Chem.,2004,6,206(非特許文献4)やCatalysis Today, 2006,115,95(非特許文献5)には、酸化セリウムの存在下、二酸化炭素とアルコールとを反応させて、カーボネートを合成する方法が開示されている。非特許文献4や非特許文献5には、例えば、下記化学反応式で表される反応が開示されている。
【0018】
【化4】

これら方法では、アルコールとしてメタノールを用いるとジメチルカーボーネートが得られる。同じく、アルコールとしてエタノールを用いるとジエチルカーボネートのような鎖状カーボネートやジエチレングリコールからエチレンカーボネートが得られ、アルコールとして1,2−プロピレングリコールを用いるとプロピレンカーボネートが得られる。
【0019】
得られるカーボネートの収率は、反応系内に生成する水により化学平衡上の制約を受け、アルコールの使用量を基準としたカーボネートの反応収率は1%程度に留まる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】J.Org.Chem.,2001,66,1035
【非特許文献2】J.Chem.Soc.Chem.Commun.,2001,2238
【非特許文献3】Green Chem.,2008,10,111
【非特許文献4】Green Chem.,2004,6,206
【非特許文献5】Catalysis Today, 2006,115,95
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の課題は、下記条件を全て満たすカーバメートの製造方法を提供することにある。
・二酸化炭素と、アルコールと、アミンとを原料として、上述の水とアセタールとの反応から生じるケトンやハロゲン化水素のような副生成物を生成することなく該原料からカーバメートを直接製造できる。
・上記アミンとして脂肪族一級モノアミンを用いた場合には、従来よりも高い選択率でカーバメートを直接製造することができる。
・上記アミンとして脂肪族一級モノアミン以外のアミンを用いても、カーバメートを直接製造できる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、原料である二酸化炭素と、アルコールと、アミンとを酸化セリウムおよび/またはセリウム系複合酸化物の存在下で反応させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0023】
すなわち、本発明は以下のカーバメートの製造方法に関するものである。
(1)二酸化炭素と、アルコールと、アミンとを、酸化セリウムおよび/またはセリウム系複合酸化物の存在下で反応させることを特徴とするカーバメートの製造方法。
(2)酸化セリウムが二酸化セリウムであることを特徴とする上記(1)に記載のカーバメートの製造方法。
(3)アミンが芳香族アミンであることを特徴とする上記(1)に記載のカーバメートの製造方法。
(4)アミンがジアミンであることを特徴とする上記(1)に記載のカーバメートの製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明のカーバメートの製造方法によれば、反応副原料を用いずに、しかもケトンやハロゲン化水素などの副生成物を生成することなく、原料である二酸化炭素、アルコールおよびアミンからカーバメートを直接製造できる。
【0025】
そして、本発明のカーバメートの製造方法によれば、アミンとして脂肪族一級モノアミンを用いた場合には、従来よりも高い選択率でカーバメートを直接製造できる。
さらに、本発明のカーバメートの製造方法によれば、アミンとして、芳香族アミン、ポリアミンあるいは二級アミンを用いても、二酸化炭素と、アルコールと、該アミンとからカーバメートを直接製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明は、二酸化炭素と、アルコールと、アミンとを、酸化セリウムおよび/またはセリウム系複合酸化物の存在下で反応させることを特徴とするカーバメートの製造方法である。
【0027】
以下、製造条件(反応条件)、原料などについて説明する。
1.製造条件(反応条件)
本発明のカーバメートの製造方法では、原料としての二酸化炭素、アルコールおよびアミン、ならびに、触媒としての酸化セリウムやセリウム系複合酸化物の他に、必要に応じて溶媒などを用いることができる。
【0028】
また、上記反応は、バッチ法で行なっても連続法で行ってもよい。
原料である二酸化炭素とアルコールとアミンとは、同時に反応させることが下記観点から好ましい。すなわち、二酸化炭素とアルコールとアミンとを同時に反応させる態様では、二酸化炭素とアルコールとを先に反応させ、次いで得られた生成物とアミンとを反応させる態様に比べて収率が高い傾向にあり、また、二酸化炭素とアミンと先に反応させ、次いで得られた生成物とアルコールとを反応させる態様に比べて反応性が高い傾向にある。
【0029】
なお、上記反応では水が副成するが、必要に応じて水を反応系外に除去してもよい。水を反応系外に除去すれば、上記反応の化学平衡をカーバメートが生成する方向に傾けることができ、その結果、カーバメートの収率や選択率を向上させることができ、カーバメートをさらに効率よく製造できる。
【0030】
ここで、カーバメートの選択率(以下、単に選択率ともいう)は、下記式(I)に示されるように、原料のアミンの中で反応したアミンのモル量(分母)に対する生成したカーバメートのモル量(分母)の100分率である。
【0031】
【数1】

<反応温度>
本発明における上記反応の反応温度は、特に限定されないが、90℃〜200℃の範囲が好適である。このような範囲で上記反応を行なうと、反応の進行が速く、かつ、工業的な実施も容易である。さらには、高い選択率と収率で、カーバメートを製造することができる。
【0032】
<反応圧力>
本発明における上記反応の反応圧力(ゲージ圧、以下同じ)は、特に限定されないが、常圧0.1MPa〜20MPaの範囲が好適であり、0.2MPa〜10MPaがさらに好適である。
このような範囲で上記反応を行なうと、反応の進行が早く、かつ、大掛かりな装置も必要としない。さらには、高い選択率と収率で、カーバメートを製造することができる。
【0033】
<反応時間>
本発明における上記反応の反応時間は、特に限定されないが、0.1〜16時間の範囲が好適であり、2〜8時間がさらに好適である。このような範囲で上記反応を行なうと、高い選択率と収率で、カーバメートを製造することができる。
【0034】
2.原料など
<アミン>
本発明のカーバメートの製造方法では、アミンとして、一級アミンおよび/または二級アミンが用いられる。
【0035】
より具体的には、一級アミンとしては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ベンジルアミンなどの非環式脂肪族アミンやシクロヘキシルアミンなどの環式脂肪族アミンなどの脂肪族一級アミン、アニリン、アニシジン、p−アミノフェノールなどの芳香族一級アミン;などのモノアミンなどを用いることができる。
【0036】
二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルヘキシルアミン、N−メチルベンジルアミン、ピペリジン、ピロリジン、モルホリンなどの脂肪族二級アミン;N−メチルアニリン、N−メチルアニシジン、p−ヒドロキシ−N−メチルアニリンなどの芳香族二級アミン;などモノアミンを用いることができる。
【0037】
また、上記モノアミンの他にも、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,3’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、などの芳香族ジアミン;などのジアミンを用いることができる。
【0038】
なお、本発明では、アンモニアはアミンに含まれるものとする。
また、本発明では、芳香族アミンとは、芳香環に直接アミノ基が結合したアミンをいい、ベンジルアミンなどのようにメチレン基を介して芳香環にアミンが結合しているものは脂肪族アミンとする。
上記アミンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
<アルコール>
本発明のカーバメートの製造方法では、アルコールとして、一級アルコールおよび/または二級アルコールが用いられる。
【0040】
より具体的には、アルコールとして、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、1−オクタノールなどの1級アルコール;イソプロパノール、sec−ブチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの2級アルコール;などのモノアルコールを用いることができる。
【0041】
また、アルコールとしては、上記モノアルコールの他にも、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどのジオール類、グリセンリン、トリメチロールプロパン、などのトリオール類;ペンタエリスリトールなどのテトラオール類;などのポリオールなどを用いることもできる。
【0042】
これらアルコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、アルコールは、該アルコール1モルに対するアミンの量が、少なくとも当モル以上となるような量で用いられる。
なお、アルコールを大過剰用いて、反応に関与しない過剰分を溶媒として用いることで、アルコールを原料としてだけではなく溶媒としても用いることもできる。
【0043】
<二酸化炭素>
本発明に用いられる二酸化炭素を得る方法としては、工業プロセスで副成した二酸化炭素を回収し、必要に応じて精製する方法を用いることができる。例えば、石油、石炭、あるいは天然ガスを製造、精製する際に発生する二酸化炭素や、廃プラスチックを処理してエネルギーや化学物質を取り出す際に発生する二酸化炭素を回収し、必要に応じて精製する方法が挙げられる。また、二酸化炭素と他の物質との混合物が得られた場合は、精製処理を行い、純度の高い二酸化炭素を得ることが好ましく、二酸化炭素の純度としては99%以上が好適である。
【0044】
本発明において用いる二酸化炭素の量は、特に制限されないが、反応系内の圧力が前述の反応圧力の範囲になるまで二酸化炭素を反応系内に導入して、その量を調整すればよい。
【0045】
上記反応を常圧で行う場合は、バブリングなどにより二酸化炭素を反応系内に導入すればよい。
上記反応を密封容器内で加圧する場合は、例えば、二酸化炭素ガスの導入量で反応系内の圧力を調節して、反応系内の圧力が前述の反応圧力の範囲となるまで二酸化炭素を導入すればよい。
【0046】
<酸化セリウム、セリウム系複合酸化物>
本発明においては、酸化セリウムを単独で用いてもよいし、セリウム系複合酸化物を単独で用いてもよいし、酸化セリウムとセリウム系複合酸化物を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
酸化セリウムとしては、三酸化二セリウム(セリウム原子の価数:3)と二酸化セリウム(セリウム原子の価数:4)が存在し、いずれを用いてもよいが、カーバメートの収率の観点から、二酸化セリウムがより好適である。
【0048】
セリウム系複合酸化物としては、例えば、セリウム、亜鉛およびジルコニウムを含む複合酸化物などが挙げられる。
本発明において、酸化セリウムおよびセリウム系複合酸化物は、上記反応の触媒として用いられる。
【0049】
酸化セリウムおよびセリウム系複合酸化物は、粉体触媒の形態で用いることもできるし、活性炭、シリカ、アルミナ、チタニアまたはゼオライトなどに酸化セリウムおよび/またはセリウム系複合酸化物を担持した担持触媒などの形態で用いることもできる。
【0050】
本発明において、酸化セリウムおよびセリウム系複合酸化物は再利用が可能である。
例えば、上記反応後に、得られた混合液(反応液)を濾過に供して、酸化セリウムおよび/またはセリウム系複合酸化物をろ別して回収して、再度上記反応の触媒として用いることができる。
【0051】
また、ろ過により回収した酸化セリウムおよびセリウム系複合酸化物は、例えば、300〜900℃の温度範囲で焼成すると、完全あるいはそれに近い状態まで賦活する。
本発明の上記反応における酸化セリウムおよび/またはセリウム系複合酸化物と原料とのモル比は、特に限定されないが、上記反応をバッチ式反応で行う場合は、アミンに対して、酸化セリウムおよび/またはセリウム系複合酸化物を0.1モル%〜50モル%の量で使用することが好適である。このような範囲で酸化セリウムおよび/またはセリウム系複合酸化物を用いると、上記反応の反応効率と反応速度が高い。
【0052】
<溶媒>
本発明で使用される溶媒は、上記反応が進行する限り特に制限されないが、例えば、反応原料のアルコールを好適に用いることができる。
【0053】
その他にも、上記反応原料のアルコール以外のアルコール系溶媒;ペンタン、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;などを用いることができる。
【0054】
これらの溶媒を混合して使用することもできるが、使用した溶媒を上記反応後に回収して、再利用する観点から、アルコールを単独で用いることが望ましい。
アルコール以外の溶媒を用いる場合は、アミンに対して2〜50倍重量、好適には5〜30倍重量となる量で用いられる。
【0055】
アルコールを反応溶媒として用いる場合は、アミン1モルに対して、アルコールを少なくとも当モル量以上用いる必要があり、好適にはアミンに対してアルコールを10倍〜200倍モル量で用いる。アルコールは、上記反応後、蒸留により回収し、適宜脱水処理をして再使用することができる。これにより、溶媒の使用量を低減することができる。
【0056】
<カーバメート>
カーバメートが得られたことや、その選択率および収量などは、例えば、得られた生成物をガスクロマトグラフィー(GC)に供するなどして測定できる。
【0057】
本発明のカーバメートの製造方法では、例えば、原料として、アミンにモノアミンを用い、かつ、アルコールにモノアルコールを用いた場合には、例えば実施例2のように(実施例2の反応式を下記に反応式(1)として示す。)、一種類のカーバメートが得られる。
【0058】
【化5】

【実施例】
【0059】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0060】
<生成物の分析装置>
各実施例において得られた生成物(以下、反応混合物ともいう)中の各成分の分析は、ガスクロマトグラフ装置(アジレント社製 6890N)を用いて行った。分析カラムとして、J&W製DB−1カラム(長さ30m、直径0.32mm、膜厚1μm)を用い、検出器として、FID(水素炎イオン検出器)を用いた。
【0061】
<カーバメートの製造>
[実施例1]
100ml容量のオートクレーブに、アミノメチルシクロヘキサン(0.57g)、メタノール(16.02g)および二酸化セリウム(0.17g)を入れ、これらを混合した。
【0062】
次いで、反応器内の気相を二酸化炭素で置換し、反応器内の圧力(ゲージ圧)が5MPaとなるまで二酸化炭素を反応器内に導入した。
次いで、オートクレーブを、150℃で12時間加熱した。
【0063】
反応後の反応混合物をGCに供して、該反応混合物中の成分を定量した結果、N−シクロヘキシルメチル−メチルカーバメートが生成しており、その収率は61.6%であり、選択率は85.3%であった。
【0064】
[実施例2]
実施例1において、アルコールをメタノールからエタノール(23.04g)に変えた以外は、実施例1と同様にカーバメートの製造を行った。
【0065】
反応後の反応混合物をGCに供して、該反応混合物中の成分を定量した結果、N−シクロヘキシルメチル−エチルカーバメートが生成しており、その収率は42.0%であり、選択率は95.5%であった。
【0066】
[実施例3]
実施例1において、アルコールをメタノールから1−プロパノール(30.05g)に変えた以外は、実施例1と同様にカーバメートの製造を行った。
【0067】
反応後の反応混合物をGCに供して、該反応混合物中の成分を定量した結果、N−シクロヘキシルメチル−n−プロピルカーバメートが生成しており、その収率は26.0%であり、選択率は92.2%であった。
【0068】
[実施例4]
100ml容量のオートクレーブに、ベンジルアミン(0.54g)、メタノール(16.02g)gおよび二酸化セリウム(0.17g)gを入れ混合した。
【0069】
次いで、反応器内の気相を二酸化炭素で置換し、反応器内の圧力(ゲージ圧)が5MPaとなるまで二酸化炭素を反応器内に導入した。
オートクレーブを、150℃で12時間加熱した。
【0070】
反応後の反応混合物をGCに供して、該反応混合物中の成分を定量した結果、N−ベンジル−メチルカーバメートが生成しており、その収率は88.0%であり、選択率は92.4%であった。
【0071】
[実施例5]
実施例4において、アルコールをメタノールからエタノール(23.04g)に変えた以外は、カーバメートの製造を実施例1と同様に行った。
反応後の反応混合物をGCで定量した結果、N−ベンジル−エチルカーバメートが生成しており、その収率は64.6%であり、選択率は95.8%であった。
【0072】
[実施例6]
実施例4において、アルコールをメタノールから1−プロパノール(30.05g)に変えた以外、は実施例1と同様にカーバメートの製造を行った。
【0073】
反応後の反応混合物をGCに供して、該反応混合物中の成分を定量した結果、N−ベンジル−n−プロピルカーバメートが生成しており、その収率は42.2%であり、選択率は93.8%であった。
【0074】
[実施例7]
100ml容量のオートクレーブに、アニリン(0.47g)、メタノール(16.02g)および二酸化セリウム(0.17g)を入れ混合した。
【0075】
次いで、反応器内の気相を二酸化炭素で置換し、反応器内の圧力(ゲージ圧)が二酸化炭素を1MPaとなるまで二酸化炭素を反応器内に導入した。
次いで、オートクレーブを、150℃で12時間加熱した。
【0076】
反応後の反応混合物をGCに供して、該反応混合物中の成分を定量した結果、N−フェニル−メチルカーバメートが生成しており、その収率は1.8%であり、選択率は56.3%であった。
【0077】
[実施例8]
実施例7において、アルコールをメタノールからエタノール(23.04g)に変えた以外は、実施例1と同様にカーバメートの製造を行った。
【0078】
反応後の反応混合物をGCに供して、該反応混合物中の成分を定量した結果、N−フェニル−エチルカーバメートが生成しており、その収率は1.2%であり、選択率は66.7%であった。
【0079】
[実施例9]
実施例7において、アルコールをメタノールから1−プロパノール(30.05g)に変えた以外は、実施例1と同様にカーバメートの製造を行った。
【0080】
反応後の反応混合物をGCに供して、該反応混合物中の成分を定量した結果、N−フェニル−n−プロピルカーバメートが生成しており、その収率は1.8%であり、選択率は69.2%であった。
【0081】
[実施例10]
100ml容量のオートクレーブに、1,4−ジアミノメチルシクロヘキサン(0.71g)、メタノール(16.02g)および二酸化セリウム(0.17g)を入れ混合した。
【0082】
次いで、反応器内の気相を二酸化炭素で置換し、反応器内の圧力(ゲージ圧)が1MPaとなるまで二酸化炭素を反応器内に導入した。
次いで、オートクレーブを、150℃で12時間加熱した。
反応後の反応混合物をGCに供して、該反応混合物中の成分を定量した結果、対応するジカーバメートが生成しており、その収率は0.2%であった。
【0083】
[実施例11]
100ml容量のオートクレーブに、N−メチル−ベンジルアミン(1.21g)、メタノール(16.02g)および二酸化セリウム(0.17g)を入れ混合した。
【0084】
次いで、反応器内の気相を二酸化炭素で置換し、反応器内の圧力(ゲージ圧)が2MPaとなるまで二酸化炭素を反応器内に導入した。
次いで、オートクレーブを、170℃で2時間加熱した。
【0085】
反応後の反応混合物をGCに供して、該反応混合物中の成分を定量した結果、N−メチル,N−ベンジル−メチルカーバメートが生成しており、その収率は42.0%であった。
各実施例の結果を、下記表1および表2にまとめた。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素と、アルコールと、アミンとを、酸化セリウムおよび/またはセリウム系複合酸化物の存在下で反応させることを特徴とするカーバメートの製造方法。
【請求項2】
酸化セリウムが二酸化セリウムであることを特徴とする請求項1に記載のカーバメートの製造方法。
【請求項3】
アミンが芳香族アミンであることを特徴とする請求項1に記載のカーバメートの製造方法。
【請求項4】
アミンがジアミンであることを特徴とする請求項1に記載のカーバメートの製造方法。

【公開番号】特開2012−250930(P2012−250930A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124337(P2011−124337)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】