説明

カーペット連結装置

【課題】 テザーベルト付きチャイルドシートの装着作業性を向上させたカーペット連結装置を提供する。
【解決手段】 シートバックSBの背面側に設けられたテザーアンカ61を露出させるようにめくり上げられたカーペット延長部1Aの遊端部分10をシートバックSBの背面に保持する着脱自在な延長部保持手段をカーペット連結装置が備えることで、カーペット延長部1Aを手で持っていなくとも、テザーアンカ61の露出状態を維持させることができ、チャイルドシート7側から延びたテザーベルト71をテザーアンカ61に容易に装着することができる。また、チャイルドシート7を後部座席に固定させる場合に限らず、デッキボード2からカーペット延長部1Aを切り離した際に、車両走行時におけるカーペット延長部1Aのバタツキを無くすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックの下端から延在するカーペット延長部と荷室側のデッキボードとを接合して、カーペット延長部とデッキボードとの一体感を出すためのカーペット連結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開平9−109761号公報がある。この公報に記載されたカーペット連結装置において、カーペット延長部の後端の板状支持部材から切り起こされた凸部は、荷室側のデッキボードの通孔内に弾力的に押し込まれる。これによって、カーペット延長部とデッキボードとを連結し、荷室に一体感を出すことができる。また、カーペット延長部とデッキボードとの連結を解除する必要が生じた場合には、カーペット延長部の凸部をデッキボードの通孔から抜き出すように、カーペット延長部のみを持ち上げる。このように、従来のカーペット連結装置は、カーペット延長部の凸部を荷室側のデッキボードの通孔内に単に押し込むだけでよく、組み付け作業が容易である。
【0003】
【特許文献1】特開平9−109761号公報
【特許文献2】特開2003−48467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
後部座席にチャイルドシートを固定させる場合、チャイルドシート側から延びるデザーベルトをシートバック側のテザーアンカ(引用文献2参照)に連結する必要性を生じる。このとき、作業者は、カーペット連結装置の一部をなすカーペット延長部を手で持ち上げておかなければならず、テザーベルトのフックをテザーアンカに引っ掛ける際の作業性が悪くなるといった問題点があった。
【0005】
本発明は、テザーベルト付きチャイルドシートの装着作業性を向上させたカーペット連結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るカーペット連結装置は、シートバックの下端から延在するカーペット延長部と荷室側のデッキボードとを接合するカーペット連結装置において、シートバックの背面側に設けられたテザーアンカを露出させるようにめくり上げられたカーペット延長部の遊端部分をシートバックの背面に保持する着脱自在な延長部保持手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
カーペット延長部とデッキボードを連結した状態でテザーベルト付きチャイルドシートを後部座席に固定させるとき、シートバック側のテザーアンカがカーペット延長部によって隠されているので、デッキボードからカーペット延長部を切り離す必要がある。そして、めくり上げられたカーペット延長部は作業者の手で持ち上げられておかなければならない。そこで、シートバックの背面側に設けられたテザーアンカを露出させるようにめくり上げられたカーペット延長部の遊端部分をシートバックの背面に保持する着脱自在な延長部保持手段をカーペット連結装置が備えることで、カーペット延長部を手で持っていなくとも、テザーアンカの露出状態を維持させることができ、チャイルドシート側から延びたテザーベルトをテザーアンカに容易に装着することができる。また、チャイルドシートを後部座席に固定させる場合に限らず、デッキボードからカーペット延長部を切り離した際に、車両走行時におけるカーペット延長部のバタツキを無くすことができる。
【0008】
また、カーペット延長部の先端にはループ状の凸片が設けられ、シートバックの背面には凸片が差し込まれるスリットが形成されていると好適である。従って、カーペット延長部の凸片をシートバック側のスリットに差し込むだけで、カーペット延長部をシートバックに簡単に固定することができ、カーペット延長部を引っ張るだけで、カーペット延長部をシートバックから簡単に外すことができる。しかも、凸片がループ状に形成されているので、簡易な抜け止めを達成することができる。このように、ループ状の凸片とスリットとの協働により、簡単な構成をもって、シートバックの背面に対するカーペット延長部の簡易な固定/固定解除が可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、テザーベルト付きチャイルドシートの装着作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るカーペット連結装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1に示すように、トランクスルー型車両の後部座席は、倒立可能なシートクッションSCと前倒可能なシートバックSBとを有し、このシートバックSBはその裏面に、シートバックカーペット1が貼り付けられ、ブラケット6を介して車床に連結されている。さらに、シートバックSBの下端からはカーペット延長部1Aが延在し、このカーペット延長部1Aは、デッキボード2と繋げて荷室に一体感を出すために、シートバックカーペット1から略同幅で延長されたものである。
【0012】
図1及び図2に示すように、カーペット延長部1Aの遊端部分10の裏面には、この先端から少し奥まった位置に断面略U字状のフック部3が2本固定されている。弾性材によって形成された各フック部3は、所定長さの中空部を有した状態で車幅方向に延在すると共に、一直線上に並べられている。そして、各フック部3の先端部がデッキボード2側に向けられるように、フック部3の基端部は、縫合部によってカーペット延長部1Aに固定され、フック部3の中空部はデッキボード2側で開放される。
【0013】
このようにして固定されたフック部3の中空部内にはデッキボード2の先端部を差し入れることができる。また、デッキボード2の先端部は、「へ」の字状に折り曲げられ、フック部3への装着性を高めている。さらに、デッキボード2の表側には、荷室の一体感を出すために、カーペット延長部1Aと同じ材質のカーペット生地が貼り付けられている。
【0014】
さらに、カーペット連結装置には、フック部3とカーペット延長部1Aの先端との間の遊端部分10において、デッキボード2に対してカーペット延長部1Aを着脱自在にする締結手段4A,4Bが設けられている。この締結手段4A,4Bは面ファスナであり、カーペット延長部1Aの裏面には雄型面ファスナ(第1の面ファスナ半部)4Aが縫合によって固定され、デッキボード2の表面をなすカーペット生地には雌型面ファスナ(第2の面ファスナ半部)4Bが縫合によって固定されている。そして、第1の面ファスナ4Aは、各フック部3に並設させるようにカーペット延長部1Aの先端側に固定されている。
【0015】
前述したように、カーペット連結装置を、フック部3と締結手段4A,4Bとで構成することで、デッキボード2にカーペット延長部1Aを固定する際に、デッキボード2の先端部がカーペット延長部1A側のフック部3の中空部内に差し入れられるので、デッキボード2に対するカーペット延長部1Aの容易且つ正確な位置合わせを可能にしている。
【0016】
そして、このような正確な位置決めは、デッキボード2とカーペット延長部1Aとの連結にあたって、着脱自在な第1の面ファスナ4Aと第2の面ファスナ4Bとの正確な位置合わせをも可能にしている。従って、デッキボード2とカーペット延長部1Aとを簡単な構成をもって容易且つ確実に連結することができる。さらに、面ファスナ4A,4Bを採用することで、ワンタッチ式の着脱を可能にすると同時に、デッキボード2の表面にフラット感を出すことができる。
【0017】
さらに、図1〜図3に示すように、後部座席には、ISO−FIXチャイルドシート7を固定するための部材が設けられている。後部座席の前側において、シートクッションSRとシートバックSBとの隙間には、チャイルドシート7のワンタッチ装着を可能にする固定専用バー62が設けられている。そして、この固定専用バー62は、左右のブラケット6間に掛け渡されたフレーム60に固定されると共に、チャイルドシート7のベースシートの後部から突出する着脱自在型コネクタ72Aに接続される。
【0018】
一方、後部座席の後側において、シートバックSBの下端には、フレーム60に固定されたテザーアンカ61が設けられている。このテザーアンカ61には、チャイルドシート7の上部から延びるテザーベルト71のフック71Aが引っ掛けられる。
【0019】
図2に示すように、カーペット延長部1Aとデッキボード2とを連結した状態でシートバックSB側のテザーアンカ61は、カーペット延長部1Aによって隠されているので、チャイルドシート7側のテザーベルト71のフック71Aをテザーアンカ61に引っ掛けるとき、デッキボード2からカーペット延長部1Aを切り離す必要がある。さらに、テザーアンカ61を露出させるために、めくり上げられたカーペット延長部1Aを作業者が手で持ち上げておくかシートバックSBに押し付けておく必要性が生じ、チャイルドシート7の装着作業に支障をきたす。
【0020】
そこで、図4に示すように、カーペット連結装置には、シートバックSBの背面側に設けられたテザーアンカ61を露出させるようにめくり上げられたカーペット延長部1Aの遊端部分10をシートバックSBの背面に保持する着脱自在な延長部保持手段が設けられている。
【0021】
この延長部保持手段は、カーペット延長部1Aの先端において車両方向の一方の端部に設けられたループ状の凸片10Aと、シートバックSBの背面に形成されたスリット11とからなる。舌片状の凸片10Aは、カーペット延長部1Aの裾を長手方向に延長させた部分を折り返した後に、凸片10Aの先端と凸片10Aの基端とを縫い糸103で縫合することで、空間102をもったループ状に形成されている。そして、ループ状の凸片10Aは、凸片10Aの先端部分101側に厚みをもたせることができる。
【0022】
これに対し、図5及び図6に示すように、シートバックSB側のスリット11は、シートバックSBの裏面のシートバックカーペット1に水平な切れ目を入れることで形成されている。表皮65が設けられたシートバックSBの発泡パッド64には、パイプフレーム66が縦に延在し、発泡パッド64の裏面側には金属ボード63が固定され、金属ボード63の裏面には、シートバックカーペット1が貼り付けられている。
【0023】
さらに、スリット11に凸片10Aの差し込むことを可能にするために、スリット11の上方は、シートバックカーペット1と金属ボード63との間が非接着状態にされ、この非接着部分が凸片収容空間部63Aとして形成される。なお、シートバックカーペット1には、スリット11の両端に丸穴11Aが設けられている。この丸穴11Aの採用により、凸片10Aの着脱時にスリット11が横方向に裂けるのを防止し、スリット11を開き易くしている。
【0024】
このような構成により、カーペット延長部1Aの凸片10AをシートバックSB側のスリット11内に下から差し込むだけで、カーペット延長部1AをシートバックSBに簡単に固定することができる。さらに、カーペット延長部1Aを引っ張るだけで、カーペット延長部1AをシートバックSBのスリット11から簡単に外すことができる。しかも、凸片10Aがループ状に形成されているので、簡易な抜け止めが達成されている。
【0025】
従って、カーペット延長部1Aを手で持っていなくとも、テザーアンカ61の露出状態を維持させることができ(図1参照)、ISO−FIXチャイルドシート7のテザーベルト71のフック71Aをテザーアンカ61に容易に引っ掛けることができる。また、チャイルドシート7を後部座席に固定させる場合に限らず、デッキボード2からカーペット延長部1Aを切り離した際、車両走行時におけるカーペット延長部1Aのバタツキを無くすこともできる。
【0026】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、延長部保持手段として、マグネット、面ファスナ、ホックなどの利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るカーペット連結装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】カーペット延長部とデッキボードとを連結した状態を示す断面図である。
【図3】後部座席にチャイルドシートを固定した状態を示す断面図である。
【図4】本発明に係るカーペット連結装置に適用する延長部保持手段を示す斜視図である。
【図5】凸片をスリット内に差し込んだ状態を示す斜視図である。
【図6】図5の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 シートバックカーペット
1A カーペット延長部
2 デッキボード
3 フック部
4A 第1の面ファスナ
4B 第2の面ファスナ
7 チャイルドシート
10 カーペット延長部の遊端部分
10A 凸片
11 スリット
61 テザーアンカ
71 テザーベルト
SB シートバック


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの下端から延在するカーペット延長部と荷室側のデッキボードとを接合するカーペット連結装置において、
前記シートバックの背面側に設けられたテザーアンカを露出させるようにめくり上げられた前記カーペット延長部の遊端部分をシートバックの背面に保持する着脱自在な延長部保持手段を備えたことを特徴とするカーペット連結装置。
【請求項2】
前記カーペット延長部の先端にはループ状の凸片が設けられ、シートバックの背面には前記凸片が差し込まれるスリットが形成されていることを特徴とする請求項1記載のカーペット連結装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−91137(P2007−91137A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286044(P2005−286044)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】