説明

カーペット

【課題】 原着ポリ乳酸捲縮糸をパイル糸としても、嵩高性に優れ、高タフネスで耐摩耗性等に優れた植物度の向上したカーペットを提供する。
【解決手段】 パイル糸に用いる原着ポリ乳酸捲縮糸が、下記(1)〜(7)の特性を同時に満足することにより、従来技術では達成できなかった嵩高性に優れ、高タフネスで耐摩耗性等に優れた植物度の向上したカーペットを得る。
(1)単繊維の断面形状が、該繊維断面の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)の比(B/A)で表した異形度が1.5未満の略円形状または円形状
(2)相対粘度(RV)2.5〜3.8
(3)強度が1.75〜3.5cN/dtex
(4)伸度が35〜60%
(5)単糸繊度が2.5〜25dtex
(6)熱水収縮率が2〜8%
(7)乾熱捲縮率が5〜25%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来原料からなる糸をパイル糸として用いたカーペットに関する。更に詳しくは、嵩高性に優れ、高タフネスで耐摩耗性等に優れた原着ポリ乳酸捲縮糸をパイル糸として用いることにより、ボリューム感と風合いに優れ、かつ耐摩耗性に優れた植物度の向上したカーペットを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は、トウモロコシ等の澱粉から得られる乳酸を原料とする生分解性樹脂であり、植物を原料とすることから地球温暖化の要因として考えられる二酸化炭素の削減に有効で、自然の循環サイクルに適合した地球環境にやさしい素材として注目されている。しかしながら、従来のポリ乳酸繊維を使用したカーペットには、嵩高性に劣り、摩耗し易く、かつヘタリ易いという欠点があり、限られた用途にしか実用化できていなかった。これは、植物由来原料からなるポリ乳酸捲縮糸の強度や伸度などの糸物性やその捲縮特性が、石油由来原料からなるナイロンやポリプロピレンそしてポリエステル繊維捲縮糸等に比べ劣るためで、現行のナイロンやポリプロピレンそしてポリエステル繊維捲縮糸等と同様な物性が得られれば、植物由来原料からなるポリ乳酸捲縮糸は、カーペット用途は勿論、他のインテリア用の地球環境にやさしい素材として広く展開できることが期待される。
【0003】
従来技術として、ポリ乳酸捲縮糸を用いたカーペットとその製造法に関して、特許文献1、特許文献2および特許文献3が開示されている。
【0004】
特許文献1は、「不要となったときに自然環境において問題が発生しないタフテッドカーペット用基布およびこの基布を用いたタフテッドカーペットを提供する。」ことを課題とし、その解決手段として、「タフテッドカーペット用基布が、ポリ乳酸系重合体にて形成された長繊維不織布によって構成されており、またこのカーペットがポリ乳酸系重合体にて形成されたパイル糸が上記基布にタフトされた構成であり、バッキング材として生分解性を有する材料で形成されている。」として開示しており、長繊維不織布の横断面形状、複屈折率、結晶化度などの物性を特定し、カーペットに使用するパイル糸をポリ乳酸系重合体、そして、バッキング材が生分解性を有する材料で特定したタフテッドカーペットについて述べている。
【0005】
特許文献2は、「環境と調和した、生分解性を有するカーペットを提供する。」ことを課題とし、その解決手段として「カーペットへの使用に適した嵩高性を有し、かつ生分解性を有する生分解性繊維をパイルとして用い、さらに基布とバッキング材に生分解性を有する素材を使用したカーペット。」として開示しており、脂肪族ポリエステル、特にポリ乳酸を使用して、カーペットのパイル糸、基布およびバッキングフィルムを特定した生分解性カーペットについて述べている。
【0006】
特許文献3は、「埋立処分すると、地中において、自然に分解して消滅し、また、焼却処分しても有害ガスが発生せず、かつ、燃焼熱が低い等容易に廃棄することができるカーペットを提供する。」ことを課題とし、その解決手段として「パイル糸、地糸等用の糸と、基布、裏地等の布地とにポリ乳酸樹脂繊維を用い、基布と裏地を接合する接着剤層にポリ乳酸樹脂組成物を用いたこと。」を開示しており、構成をポリ乳酸樹脂繊維の糸と布、および接着剤をポリ乳酸樹脂組成物としたカーペットについて述べている。
【0007】
上記特許文献1の技術は、ポリ乳酸系重合体を使用した長繊維不織布を基布として使用し、パイル糸にポリ乳酸系重合体、バッキング材に生分解性を有する材料を用いた生分解性カーペットについて言及している。しかしながら、ポリ乳酸系重合体より製造されたカーペットの耐摩耗性や嵩高性等の耐久性に関しては、触れられていない。
【0008】
上記特許文献2の技術は、脂肪族ポリエステル、特にポリ乳酸を使用した生分解性カーペットについて言及している。ポリ乳酸樹脂繊維より製造されたカーペットのカバリング性やハリコシ感などについては記述しているが、カーペットの耐摩耗性や耐ヘタリ性等の耐久性に関しては、一切述べていない。
【0009】
また、上記特許文献3の技術は、ポリ乳酸樹脂の繊維およびその接着剤を使用したカーペット、特に生分解性カーペットにについて言及している。しかしながら、ポリ乳酸樹脂繊維より製造されたカーペットの耐摩耗性や耐ヘタリ性等の耐久性に関して、一切触れられていない。
【0010】
以上の特許文献1〜3の内容は、いずれも、カーペットの耐摩耗性や嵩高性と耐ヘタリ性等の耐久性に関して、言及していないことから、該技術によって得られるカーペットの耐摩耗性、嵩高性および耐ヘタリ性等の耐久性について満足のいくレベルになっているとは到底言えない。
【特許文献1】再公表特許 WO00/65140号公報
【特許文献2】特開2002−248047号公報
【特許文献3】特開2003−10030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、上記の問題点を克服し、従来技術では達成できなかった、原着ポリ乳酸捲縮糸をパイルとして使用したカーペットを提供することにある。すなわち、嵩高性に優れ、高タフネスで耐摩耗性等に優れた原着ポリ乳酸捲縮糸をパイルとして用いることにより、ボリューム感と風合いに優れ、かつ耐摩耗性に優れた植物度の向上したカーペットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために次のような手段を提供する。
【0013】
[1]単繊維の断面形状が略円形状または円形状の原着ポリ乳酸捲縮糸をパイル糸として用いたカーペット。
【0014】
[2]前記原着ポリ乳酸捲縮糸が、次の(1)〜(7)の特性を同時に満足することを特徴とする前項1に記載のカーペット。
(1)単繊維の断面形状が、該繊維断面の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)の比(B/A)で表した異形度が1.5未満の略円形状または円形状である
(2)相対粘度(RV)2.5〜3.8
(3)強度が1.75〜3.5cN/dtex
(4)伸度が35〜60%
(5)単糸繊度が2.5〜25dtex
(6)熱水収縮率が2〜8%
(7)乾熱捲縮率が5〜25%
【0015】
[3]前記パイル糸は、前記原着ポリ乳酸捲縮糸の、無撚糸および/または撚糸を、単糸および/または2本以上の合撚糸として使用したものであることを特徴とする前項1または2に記載のカーペット。
【0016】
[4]カーペット表皮の平均パイル長さが5〜15mm、パイル目付けが500〜3000g/m2であることを特徴とする前項1〜3のいずれか1項に記載のカーペット。
【0017】
[5]テーバー型摩耗試験(摩耗輪:H−18、摩耗回数2500回)によるカーペット表皮のパイル糸の摩耗量が5〜30質量%であることを特徴とする前項1〜4のいずれか1項に記載のカーペット。
【発明の効果】
【0018】
[1]の発明では、原着ポリ乳酸捲縮糸を構成する単繊維の断面形状が略円形状または円形状であるので、耐摩耗性に優れたカーペットとすることができる。また原着ポリ乳酸捲縮糸であるので、カーペットの製造工程において加熱処理のある染色工程を設けなくて済み、加熱処理による悪影響(機械的強度の低下等)を回避でき、高タフネスで耐摩耗性に優れた植物度の向上したカーペットとすることができる。
【0019】
[2]の発明では、原着ポリ乳酸捲縮糸を構成する単繊維の断面形状と異形度を特定構成に限定すると共に、相対粘度を特定範囲に限定し、かつ強度、伸度、単糸繊度、熱水収縮率及び乾熱捲縮率をそれぞれ特定範囲に限定しているから、嵩高性に優れ、高タフネスで耐摩耗性に優れた植物度の向上したカーペットとすることができる。
【0020】
[3]の発明では、カーペットに用いるパイル糸が、前記原着ポリ乳酸捲縮糸の、無撚糸および/または撚糸であって、それらを単糸および/または2本以上の合撚糸として使用するので、カーペットパイル部の風合の要求に合わせて色々な糸を選択することができる。
【0021】
[4]の発明では、原着ポリ乳酸捲縮糸のパイル糸を用いたカーペット表皮の平均パイル長さが5〜15mm、パイル目付けが500〜3000g/m2であるので、嵩高性、耐摩耗性に優れ、底付き感のないカーペットとすることができる。
【0022】
[5]の発明では、原着ポリ乳酸捲縮糸のパイル糸を用いたカーペット表皮のテーバー型摩耗試験(摩耗輪:H−18、摩耗回数2500回)によるパイル糸の摩耗量が5〜30質量%であるので、耐摩耗性に優れたカーペットとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、植物由来原料からなる原着ポリ乳酸捲縮糸をパイル糸として用いたカーペットの耐摩耗性不良や嵩高性の不足等の改善について、鋭意検討し、パイル糸に使用する原着ポリ乳酸捲縮糸の単繊維そのものの断面形状や相対粘度(RV)、強度、伸度、単糸繊度、熱水収縮率、乾熱捲縮率などの繊維特性を特定なものに限定し、更に、カーペット表皮の平均パイル長さ、パイル目付けなどを特定なものにしてみたところ、前記課題を一挙に解決する植物度の向上したカーペットを提供することができた。
【0024】
本発明における、植物由来原料からなる該原着ポリ乳酸捲縮糸は、特定のポリ乳酸ポリマーを製糸して捲縮加工処理した捲縮糸であって、繊維特性を特定なものに限定したパイル糸とするが、カーペットの製造方法については特に限定されず、例えば、織カーペット、刺繍カーペット、接着カーペット、編カーペット等の製造方法を挙げることができる。また、パイルの形態も特に限定されず、カットパイル、ループパイル、カットアンドループのいずれの形態でも選択することができる。
【0025】
原着ポリ乳酸捲縮糸の原料であるポリ乳酸組成物を構成するポリ乳酸ポリマーは、L−乳酸を主成分とする乳酸モノマーを重合してなるポリ乳酸である。前記乳酸モノマーの90質量%以上がL−乳酸よりなる構成を採用するのが好ましい。即ち、前記乳酸モノマーの中に10質量%を超えない範囲でD−乳酸を含有していてもよい。使用する乳酸モノマーの光学純度(L体の光学純度)が90%以上であれば、そのポリマー(ポリ乳酸)は結晶性となり好ましく、使用する乳酸モノマーの光学純度が97%以上であれば、融点が170℃前後となり、さらに好ましい。また、この発明の効果を阻害しない範囲であれば、乳酸以外の成分を共重合したものを用いても良い。乳酸以外の成分を共重合した場合、構成するポリマー分子鎖の全繰り返し単位の70質量%以上100質量%未満、好ましくは80質量%以上100質量%未満、より好ましくは90質量%以上100質量%未満を乳酸単位とする。
【0026】
原着ポリ乳酸捲縮糸の相対粘度(RV)は2.5〜3.8である必要がある。ここで、前記相対粘度は、20℃、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶液で測定した値である。前記相対粘度が2.5未満では、ポリ乳酸捲縮糸の強度や伸度そしてカーペット用途に適した耐摩耗性を付与することができない。一方、前記相対粘度が3.8を超える高粘度の場合は、溶融粘度が高くなりすぎる結果、紡糸温度を上げる必要が生じ、その結果、得られるポリ乳酸捲縮糸の相対粘度が溶融前のレベルよりもかなり低下し、強度が十分に向上しないし、また製糸し難くなるという問題を生じる。中でも原着ポリ乳酸捲縮糸の相対粘度は2.8〜3.6であるのが好ましい。
【0027】
また、原着ポリ乳酸捲縮糸の原料として用いられるポリ乳酸組成物は、着色剤を0.01〜3.0質量%含有した構成である。このような濃度に設定することにより捲縮糸に適当な濃度の色を付与することができて意匠性を向上できる。また、0.01質量%以上とすることで顔料ムラに起因した色むらの発生を防止できると共に3.0質量%以下とすることで糸切れの発生を十分に防止することができる。中でも着色剤の含有率は0.05〜1.0質量%であるのが好ましい。また、着色剤は通常用いられる分散剤(オレフィン系化合物等)を併用して用いることもできる。
【0028】
そして、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、前記ポリ乳酸組成物には、ポリ乳酸以外の他のポリマー(ポリマー粒子を含む)の他、艶消し剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、消臭剤、抗菌剤、抗酸化剤、耐熱剤、耐光剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を必要に応じて含有させても良い。
【0029】
原着ポリ乳酸捲縮糸をパイル糸として用いた本発明のカーペットは、パイル糸に用いる原着ポリ乳酸捲縮糸が、次の(1)〜(7)の特性を同時に満足することを特徴とするカーペットである。
(1)構成単繊維の断面形状が略円形状または円形状(即ち丸断面糸)である。このような断面形状にすることによって摩擦等があっても摩擦し難いものとなる。該繊維断面の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)の比(B/A)で表した異形度が1.5未満の略円形状または円形状であるのが好ましい(図2参照)。異形度が1.5を超えるとポリ乳酸捲縮糸のカバーリング特性は向上するが異形度が高いために、ポリ乳酸の硬くて脆い性状が出やすくなり、糸の耐摩耗性が低下するので好ましくない。
(2)相対粘度(RV)は2.5〜3.8である。
(3)強度が1.75〜3.5cN/dtex
(4)伸度が35〜60%
(5)単糸繊度が2.5〜25dtex
(6)熱水収縮率が2〜8%
(7)乾熱捲縮率が5〜25%
前記原着ポリ乳酸捲縮糸の強度は1.75〜3.5cN/dtexである。前記捲縮糸の強度が1.75cN/dtex未満ではカーペットにした時に耐摩耗性が劣り、使用時に捲縮糸の一部がすり切れてしまうことがある。中でも、前記原着ポリ乳酸捲縮糸の強度は2.0〜3.25cN/dtexであるのが好ましく、更に好ましくは、強度が2.25〜3.25cN/dtexであるのがより好ましい。また、前記原着ポリ乳酸捲縮糸の伸度は35〜60%である。前記捲縮糸の伸度が35%未満ではカーペットにした時に耐摩耗性が劣り、使用時に捲縮糸の一部がすり切れてしまうことがある。中でも、前記原着ポリ乳酸捲縮糸の伸度は40〜55%であるのが好ましい。
【0030】
前記原着ポリ乳酸捲縮糸の強度が2.0〜3.25cN/dtexで、且つ前記原着ポリ乳酸捲縮糸の伸度が40〜55%である場合には、より高タフネスとなるので好ましい。但し、強度を上げていくと通常伸度は低下するものであり、伸度を35%以上とした場合の強度は高々3.5cN/dtexであり、また伸度が60%を超えると強度を1.75cN/dtex以上とすることができない。
【0031】
前記原着ポリ乳酸捲縮糸の総繊度は500〜3500dtexの範囲がよい。このような範囲であれば、タフテッドカーペット用途に最適な原着捲縮糸となるが、特にこのような用途への使用に限定されるものではない。中でも、前記原着ポリ乳酸捲縮糸の総繊度は1,000〜3000dtexの範囲であるのが好ましい。また、前記原着ポリ乳酸捲縮糸の単糸繊度は2.5〜25dtexの範囲である。単糸繊度が2.5dtex未満では、捲縮糸を安定的に製糸することが困難であり、また該捲縮糸を用いて構成したカーペットは嵩高性が不十分なものとなる。一方、単糸繊度が25dtexを超えると、原着ポリ乳酸捲縮糸の糸物性を得るのが困難となり、また、ポリ乳酸の硬くて脆いという性状が出やすくなり、該捲縮糸を用いて構成したカーペットの耐摩耗性が不十分なものとなる。この傾向は、同じ単糸繊度では、ポリ乳酸繊維の断面形状の異形度を高くすると顕著となる。したがって単繊維の異形度は小さい方が好ましい。中でも前記原着ポリ乳酸捲縮糸の単糸繊度は4〜20dtexの範囲であり、より好ましくは5〜15dtexである。なお、単糸繊度2.5〜25dtexの範囲内において、単糸繊度が細くなる程、ポリ乳酸の硬くて脆いという性状が軽減され、原着ポリ乳酸捲縮糸の強度や伸度をより向上させることができると共に、カーペットとした時の耐摩耗性も向上させることができる。
【0032】
また、前記原着ポリ乳酸捲縮糸の熱水収縮率は2〜8%の範囲である。熱水収縮率が2%未満ではポリ乳酸捲縮糸の結晶化度が高くなり、ポリ乳酸の硬くて脆いという性状が出やすくなり、強度と伸度がバランスよく発現しないし、カーペットとした時の耐摩耗性が良くない。一方、熱水収縮率が8%を越えると、ポリ乳酸捲縮糸の熱セット処理時に糸収縮が発生し、またカーペット製造における各工程での管理に困難をきたすという問題がある。中でも、前記原着ポリ乳酸捲縮糸の熱水収縮率は、3〜6%の範囲であるのが好ましい。
【0033】
また、前記原着ポリ乳酸捲縮糸の乾熱捲縮率は、5〜25%の範囲である。この乾熱捲縮率は、原着ポリ乳酸捲縮糸の嵩高性を示すパラメーターであり、原着ポリ乳酸捲縮糸を100℃の熱風で処理して捲縮を発現させ、その捲縮の程度を示した値である。乾熱捲縮率が5%未満では捲縮が不十分であり、カーペットとしての嵩高性が不足し、かつ耐ヘタリ性に劣ったものとなる。一方、乾熱捲縮率が25%を超えるポリ乳酸捲縮糸は、現在の製造技術では得られ難いし、得られたとしても、該捲縮糸を用いて構成したカーペットはフェルト様となり、好ましいカーペットは得られない。中でも、前記原着ポリ乳酸捲縮糸の乾熱捲縮率は、8〜20%の範囲であるのが好ましい。
【0034】
また、前記原着ポリ乳酸捲縮糸に用いる着色剤は、例えば無機顔料、有機顔料等が挙げられ、捲縮糸に色彩を与え得るものであれば特に限定されない。前記着色剤として、例えば、カーボンブラック、酸化系無機顔料、フェロシアン化物無機顔料、珪酸塩無機顔料、炭酸塩無機顔料、燐酸塩無機顔料等の無機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、イソインドリノン系有機顔料からなる群から選ばれた少なくとも1種の顔料を用いる。
【0035】
まず、本発明に必要な原着ポリ乳酸捲縮糸の具体的製造方法(図1参照)について述べるが、この製造方法に限定されるものではない。
【0036】
原着ポリ乳酸捲縮糸の製造のために用いるポリ乳酸ポリマーは、20℃、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶液で測定した相対粘度(RV)が、2.5〜3.8を用いる。本発明のカーペット用途では、捲縮糸の強度や伸度、捲縮特性および耐摩耗性が要求されるため、高分子量のポリ乳酸ポリマー、すなわち上記特定した相対粘度のポリマーが必要である。
【0037】
原着ポリ乳酸捲縮糸の着色剤として用いる無機顔料および有機顔料は、前記特定した化合物から選ばれた少なくとも1種の顔料を使用する。また、着色剤をポリ乳酸ポリマーに添加してマスターバッチとしてから、製糸することもできる。
【0038】
上記ポリ乳酸ポリマーと着色剤が混合機を介して一定割合に混合したポリ乳酸ポリマーを、ベント付き(13)二軸押出機(12)に供給して溶融し、紡糸パックを通して、口金細孔(15)から紡糸する。
【0039】
原着ポリ乳酸捲縮糸の断面は、略円形状断面または円形状断面を有し、単糸断面の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)に比(B/A)で表した異形度は、1.5未満が好ましい。
【0040】
次いで、紡糸された糸条は吹付冷却装置(16)の冷風で冷却固化される。
【0041】
冷却固化した糸条にオイリング装置(17)で油剤を付与した後、所定の速度で回転する引き取りローラー(1)で捲回して引き取る。
【0042】
上記引き取りローラー(1)の速度は400〜1000m/分である。
【0043】
本発明にかかる捲縮糸の製造方法は、ワンステップで捲縮糸を製造する直接紡糸延伸・捲縮加工プロセスを特徴とするため、前記引き取り速度が好ましい。
【0044】
引き取られた未延伸糸フィラメントは、連続して、ローラー群(1〜4)を用いて1段または2段以上の多段で熱延伸する。延伸ローラー(3)温度は、70〜125℃である。また、延伸倍率は、3.0〜6.0の範囲である。特に、本発明原着ポリ乳酸捲縮糸の高強度や伸度および高捲縮特性並びにカーペットとして使用した時の優れた嵩高性、耐摩耗性を得るためには、充分に延伸配向されたポリ乳酸繊維を捲縮加工することが重要である。
【0045】
充分に延伸配向したポリ乳酸繊維は、熱セットローラー(4)により熱セットする。熱セットローラー(4)の温度は、100〜150℃である。熱セットローラー(4)の温度範囲の適正化により、ポリ乳酸繊維の結晶化がコントロールされ、希望とする物性が得られるのである。
【0046】
延伸が終了したポリ乳酸繊維糸条は、連続して加熱流体捲縮付与装置(5)に導入して、捲縮を付与する。加熱流体捲縮付与装置(5)により捲縮加工した糸条(6)は、クーリングドラム(20)上で冷却する。
【0047】
加熱流体は加熱空気が好ましく、その使用温度は、90〜160℃である。ポリ乳酸繊維の繊度、処理速度等に応じて適切な条件を選択する。
【0048】
次に、該捲縮糸は交絡処理装置(21)のノズルを通して交絡処理する。該交絡ノズルは、通常2〜6孔を備え、走行捲縮糸条に対して略直角方向から0.2〜0.5MPaの高圧空気を噴射させて交絡処理する。
【0049】
次いで、ポリ乳酸捲縮糸条をチーズ状(22)に巻き取る。巻き取り張力は、0.10cN/dtex以下の低張力で行う。
【0050】
本発明のカーペットに用いるパイル糸としては、前記原着ポリ乳酸捲縮糸の、無撚糸および/または撚糸であって、それらを単糸および/または2本以上の合撚糸として使用するのが好ましい。
【0051】
具体的には、次の(1)〜(8)等をパイル糸として使用することができる。
(1)原着ポリ乳酸捲縮糸の無撚糸(生糸そのまま)をパイル糸に使用
(2)原着ポリ乳酸捲縮糸の無撚糸をエアーエンタングルしたパイル糸を使用
(3)原着ポリ乳酸捲縮糸の無撚糸を2本以上合撚糸したパイル糸を使用
(4)原着ポリ乳酸捲縮糸に撚り数を50〜250T/mで撚糸したパイル糸を使用
(5)撚糸した原着ポリ乳酸捲縮糸を2本以上合撚糸してパイル糸に使用
(6)原着ポリ乳酸捲縮糸のパイル糸の熱セットを湿熱処理または乾熱処理してパイル糸に使用する
(7)原着ポリ乳酸捲縮糸のパイル糸の乾熱処理温度を90〜130℃としてパイル糸に使用する
(8)原着ポリ乳酸捲縮糸のパイル糸の湿熱処理温度を80〜120℃としてパイル糸に使用する
上記等のパイル糸を適宜選択あるいは組み合わせて使用することにより、原着ポリ乳酸捲縮糸をパイル糸として使用したカーペットを製造することができる。
【0052】
原着ポリ乳酸捲縮糸を用いたパイル糸は、カーペットの製造規格に基き、パイル糸の色、総繊度(dtex)、ポリ乳酸捲縮糸の状態(無撚糸または撚糸等)、ポリ乳酸捲縮糸の合糸本数、撚糸の条件・形態などを決定する。
【0053】
原着ポリ乳酸捲縮糸は、無撚糸の状態で用いてもよく、または、無撚糸と他の無撚糸をエアーエンタングル設備で混繊糸として、そのまま/または撚糸して使用することもできる。
【0054】
また、本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸は、撚糸(撚り数は150〜250T/mが好ましい)の状態で用いてもよく、撚糸後2本以上に撚り(撚り数は50〜200T/mが好ましい)を施して使用することもできる。
【0055】
たとえば、原着ポリ乳酸捲縮糸を2本または3本用い、下撚りと上撚りを施し、撚り捲縮糸とする。その後、100〜125℃の熱風処理または90〜115℃の真空蒸気熱処理で撚りセットをして、カーペット用のパイル糸とする。
【0056】
そして、原着ポリ乳酸捲縮糸のパイル糸を用いたカーペット表皮の平均パイル長さが5〜15mm、パイル目付けが500〜3000g/m2である構成が好適である。原着ポリ乳酸捲縮糸をパイル糸としたカーペットの製造方法は特には限定されず、例えば、織カーペット、刺繍カーペット、接着カーペット、編カーペット等の製造方法を挙げることができる。また、パイルの形態も特に限定されず、カットパイル、ループパイル、カットアンドループのいずれの形態でも求める風合によって選択することができる。
【0057】
本発明のカーペットとなった原着ポリ乳酸捲縮糸のパイル長は、その平均長さは5〜15mmである。好ましくは、6.5〜15mm。更に好ましくは、7.5〜12mmである。特に好ましくは、8〜12mmである。平均パイル長さが5mmを下回ると、パイル表皮の隙間から基布が見え嵩高性に劣り、カーペット使用時に底付き感がでる。平均パイル長さが15mmを超えると、嵩高性に優れ高級感はあるが、コストがかさみ、パイル糸の腰が弱くなりカーペット使用中にパイルが寝やすくなる。
【0058】
本発明のカーペットのパイル目付けは、500〜3000g/m2である。好ましくは、600〜2500g/m2。更に好ましくは、800〜2200g/m2である。パイル目付けが500g/m2未満であると、パイル表皮の隙間から基布が見え嵩高性に劣り、底付き感がでる。パイル目付けが3000g/m2を上回ると、嵩高性に優れ高級感はあるが、重くなり、カーペットの取り扱いが困難になる。
【0059】
例えば、タフティング機を用いて、前記原着ポリ乳酸捲縮糸のパイル糸をタフトする場合、そのゲージは1/16〜1/4(1インチ:2.54cm間の針数)が好ましい。更に好ましくは、1/12〜1/8である。また、ステッチ数は25〜70ステッチ/10cmで、好ましくは35〜65ステッチ/10cmがよい。さらに好ましくは45〜65ステッチ/10cmがよい。
【0060】
上記原着ポリ乳酸捲縮糸をパイル糸として用いたカーペットは、パイル糸を固定するためにバッキング処理が施される。この時乾燥工程や熱セット工程を通過することになり、通常は乾熱処理および/または蒸気処理によって、上記原着ポリ乳酸捲縮糸に潜在化している捲縮を発現させ、嵩高性に優れ、底付き感のないカーペットとすることができる。
【0061】
本発明のカーペットは、原着ポリ乳酸捲縮糸をパイル糸として用いたものであるが、カーペットを構成する基布やバッキング樹脂等に30〜70質量%のポリ乳酸樹脂を含有させれば、さらに植物度が向上し、空気中の二酸化炭素を増加させることの少ない、環境保護の見地から地球環境にやさしいカーペットとすることができる。
【0062】
更に、本発明のカーペット表皮のテーバー型摩耗試験(JIS L1096.8.17.3に規定されたテーバー型摩耗試験に準拠して試験を行う、但し、H−18摩耗輪を用いるものとし、且つ磨耗回数を2500回とする)によるパイル糸の摩耗量は5〜30質量%である。テーバー型摩耗試験によるパイル糸の摩耗量が5〜30質量%であると、耐摩耗性に優れたカーペットとすることができる。パイル糸の摩耗量が5質量%未満であれば好ましいが、実用上は達成が困難な数字である。パイル糸の摩耗量が30質量%を超えると、カーペット使用中に繊維が経時的に脱落し、カーペットの基布が見える状態となり外観が大きく変化し好ましくない。
【0063】
上記特定された植物由来原料からなる原着ポリ乳酸捲縮糸をパイル糸として使用したカーペットは、優れた嵩高性を有し、ボリューム感の良いカーペットとなる。また、耐摩耗性や耐ヘタリ性が従来のポリ乳酸樹脂繊維より製造されたカーペットより大幅に改善されたカーペットが得られ、ロールカーペット、ピースカーペット、タイルカーペット、自動車用カーペットおよびオプションマット、家庭用ラグ・マット等の分野に、本発明のカーペットの特性が活かせ、多くの用途のカーペットに用いることができる。
【0064】
本文および実例中に記述した物性の定義および測定方法は以下の通りである。
【0065】
[相対粘度:RV]
フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶液に試料を1g/dlの濃度となるよう溶解し、20℃でウベローデ粘度管を用いて相対粘度(RV)を測定した。
【0066】
[重量平均分子量の測定]
試料を10mg/mlの濃度になるようクロロホルムに溶かした。クロロホルムを溶媒として、東ソー製 HLC8120 GPCによりGPC分析を行い、重量平均分子量Mwを測定した。検出器はRIを用い分子量の標準物質はポリスチレンを使用した。
【0067】
[L−乳酸の測定]
ポリ乳酸を加水分解し、メタノール性水酸化ナトリウム溶液1.0Nを溶媒として高速液体クロマトグラフィー(HPLC:島津製作所製LC10AD型)を使用してL−乳酸の比率を求めた。
【0068】
[強伸度]
USTER社製TENSORAPID3の引張試験機を用い、試料長25cm、引張速度30cm/分の条件で強力(cN)と伸度(%)を測定した。強度(cN/dtex)は、マルチフィラメントの強力をその繊度で除した値である。
【0069】
[繊度]
JIS L 1013により測定した。
【0070】
[異形度]
単糸を切断後、光学顕微鏡を用いて単糸の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)を測定して、次式にて求めた。
異形度=(B)/(A)
【0071】
[熱水収縮率]
熱水収縮率(%)は、JIS L1013 カセ収縮率(A法)に準じた測定値である。ボビンパッケージからカセ取りしたポリ乳酸捲縮糸を試料とする。この試料糸に総繊度dtex×0.882mN(90mg/dtex)の張力を与える荷重をかけ10秒経過した後に、試料長さ(Ls1)を測定する。無荷重状態にて、98℃の熱水に30分間浸漬した後、一昼夜自然乾燥する。これを熱水処理後のポリ乳酸捲縮糸とする。この試料糸に熱水処理前と同じ総繊度dtex×0.882mN(90mg/dtex)張力を与える荷重をかけ10秒経過した後に、試料長さ(Ls2)を測定する。下記式より、熱水収縮率(%)を求める。
熱水収縮率(%)=[(Ls1−Ls2)/Ls1]×100
【0072】
[乾熱捲縮率]
ボビンパッケージからカセ取りしたポリ乳酸捲縮糸を、無荷重状態で100℃の熱風で10分間処理した後、10分間自然放置する。これを乾熱処理後のポリ乳酸捲縮糸とする。この試料糸に総繊度dtex×0.882mN(90mg/dtex)の張力を与える定荷重をかけ10秒経過した後に、試料長さ(Lc1)を測定する。次いで、同試料に総繊度dtex×0.0176mN(1.8mg/dtex)の張力を与える定荷重をかけ10分経過した後に、試料長さ(Lc2)を測定する。下記式より、乾熱捲縮率(%)を求める。
乾熱捲縮率(%)=[(Lc1−Lc2)/Lc1]×100
【0073】
[嵩高性]
カーペットを真上から見た時に、パイル表皮の隙間から基布が見える状態で目視により評価した。見えない(◎)、見えにくい(○)、やや見える(△)、よく見える(×)。
【0074】
[耐摩耗性]
カーペットの耐摩耗性の評価は、テーバー型摩耗試験(JIS L1096.8.17.3(2004年版)に規定されたテーバー型摩耗試験に準拠して試験を行う、但し、H−18摩耗輪を用いるものとし、且つ磨耗回数を2500回とする)により行った。即ち、H−18摩耗輪を使用し、それぞれの摩耗輪に9.8Nの荷重をかけ試験台を2500回回転して試験片を摩耗させ、そのパイル糸の摩耗量を測定した。下記式より、テーバー摩耗量(質量%)を求める。
テーバー摩耗量(質量%)=試験後の摩耗輪部のパイル脱落質量/試験前の摩耗輪部のパイル部質量×100%
【実施例】
【0075】
<実施例1〜8>
原着ポリ乳酸捲縮糸、パイル糸、カーペットのそれぞれの製造方法を以下のようにし、評価結果を表1に記載した。
[原着ポリ乳酸捲縮糸の製造]
図1に示す構成からなる製造装置を用いて原着ポリ乳酸捲縮糸を製造した。ポリ乳酸樹脂投入口(10)からポリ乳酸チップ(L−乳酸98質量%とD−乳酸質量2%からなる乳酸モノマーの重合体。重量平均分子量:140000、相対粘度:3.2、融点:Tm=170℃、)100質量部を投入する一方、同じポリ乳酸樹脂で作成したカーボンブラック25質量%混練マスターバッチを添加剤投入口(11)から4質量部入れ、二軸押出機(12)で脱気しながら230℃にて溶融混練した。着色剤であるカーボンブラックの含有量を1.0質量%とした。
【0076】
紡糸ヘッド(14)の紡糸温度は225℃、紡糸パック(15)に600メッシュのフィルターを使用し、円形断面(丸断面)64ホールを有するノズルから吐出し、3パック分をまとめて紡糸した。
【0077】
紡出糸条を吹付冷却装置(16)の冷風(20℃×70%)で冷却・固化し、円形断面(丸断面)192本のポリ乳酸マルチフィラメントを得た。
【0078】
紡出糸条は冷却固化後、ポリ乳酸糸用の15質量%濃度の水エマルジョンタイプの油剤をオイリング装置(17)で付与し、速度423m/分で回転する非加熱の引き取りローラー(1)に捲回して引き取った。次いで、該糸条は連続して70℃に加熱した速度426m/分の予熱ローラー(2)で捲回して予熱し、105℃に加熱した速度444m/分で延伸ローラー(3)に捲回した後、速度約2000m/分で回転する123℃に加熱した熱セットローラー(4)との間で延伸を行った。延伸倍率は4.5倍とした。
【0079】
次に、延伸糸条を加熱流体捲縮加工装置(5)に導き、115℃、0.6MPaの加熱圧空によって捲縮加工し、クーリングドラム(20)上で冷却した。次に、ポリ乳酸捲縮糸に、交絡処理装置(21)で32ケ/mの交絡処理を行い、0.05cN/dtexの巻き取り張力で、速度1737m/分でチーズ(22)状に巻き取った。
【0080】
得られた黒原着ポリ乳酸捲縮糸は、繊度1674dtex/192フィラメント(単糸繊度8.7dtex)の円形断面(丸断面)で、相対粘度(RV)が3.0、強度が2.36cN/dtex、伸度が52.5%、熱水収縮率が3.5%、乾熱捲縮率が12.8%の物性を有していた。
【0081】
[パイル糸の製造]
得られた原着ポリ乳酸捲縮糸を2本用い、下撚:Z180T/m、上撚り:Z180T/mを施し合撚糸とした後、スッセン熱セット設備にて115℃の熱風処理で撚り止めを行い、タフテッドカーペット用のパイル糸を製造した。
【0082】
[カーペットの製造]
タフティングマシンを用い、ポリエステル長繊維不織布よりなるタフテッドカーペット用一次基布に、上述のパイル糸をゲージ(針数/1インチ:2.54cm)、ステッチ(ステッチ本数/10cm)、平均パイル長さ(mm)、パイル部目付け(g/m2)の条件を変更し、それぞれの規格で表1の実施例1〜8のタフテッドパイル原反を作成した。
【0083】
次に、パイル糸をタフトした原反の裏面にEVAプレコーティングを行い目止めとし、その後ポリエチレン樹脂シートをバッキング剤として、ポリエステルニードルパンチ不織布層(二次基布、目付け400g/m2)と共に原反の裏面に貼り付け、タフテッドカーペットを製造した。
【0084】
それらカーペットの嵩高性やテーバー摩耗試験結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
<比較例1〜5>
[原着ポリ乳酸捲縮糸の製造]
ノズルをY断面の32ホールを使用する以外は、<実施例>と同じようにして黒原着ポリ乳酸捲縮糸を製造した。
【0087】
得られた黒原着ポリ乳酸捲縮糸は、繊度1105dtex/96フィラメント(単糸繊度11.5dtex)のY断面で異形度は2.2であった。相対粘度(RV)は3.0、強度が1.67cN/dtex、伸度が32.2%、熱水収縮率が4.6%、乾熱捲縮率が14.0%の物性を有していた。
【0088】
[パイル糸の製造]
上記の黒原着ポリ乳酸捲縮糸を3本用い、下撚り:Z180T/m、上撚り:Z180T/mを施し合撚糸とした後、スッセン熱セット設備にて115℃の熱風処理で撚り止めを行い、タフテッドカーペット用のパイル糸を製造した。
【0089】
[カーペットの製造]
タフティングマシンを用い、ポリエステル長繊維不織布よりなるタフテッドカーペット用基布に、上述のパイル糸をゲージ(針数/1インチ:2.54cm)、ステッチ(ステッチ本数/10cm)、平均パイル長さ(mm)、パイル部の目付け(g/m2)の条件を変更し、それぞれの規格で表2の比較例1〜5のタフテッドパイル原反を作成した。
【0090】
実施例と同様にして、パイル糸をタフトした原反の裏面にEVAプレコーティングを行い、その後ポリエチレン樹脂シートをバッキング剤として、ポリエステルニードルパンチ不織布層(二次基布、目付け400g/m2)と共に原反の裏面に貼り付け、タフテッドカーペットを製造した。その<比較例1〜5>のカーペットの嵩高性やテーバー摩耗試験結果を表2に示す。
【0091】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】原着ポリ乳酸捲縮糸の製造方法で用いられる製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】糸の異形度の説明図である。
【符号の説明】
【0093】
1:引き取りローラー
2:予熱ローラー
3:延伸ローラー
4:熱セットローラー
5:加熱流体捲縮付与装置
10:ポリ乳酸樹脂投入口
11:添加剤投入口
12:二軸押出機
14:紡糸ヘッド
16:吹付冷却装置
17:オイリング装置
20:クーリングドラム
21:交絡処理装置
22:チーズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維の断面形状が略円形状または円形状の原着ポリ乳酸捲縮糸をパイル糸として用いたカーペット。
【請求項2】
前記原着ポリ乳酸捲縮糸が、次の(1)〜(7)の特性を同時に満足することを特徴とする請求項1に記載のカーペット。
(1)単繊維の断面形状が、該繊維断面の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)の比(B/A)で表した異形度が1.5未満の略円形状または円形状である
(2)相対粘度(RV)2.5〜3.8
(3)強度が1.75〜3.5cN/dtex
(4)伸度が35〜60%
(5)単糸繊度が2.5〜25dtex
(6)熱水収縮率が2〜8%
(7)乾熱捲縮率が5〜25%
【請求項3】
前記パイル糸は、前記原着ポリ乳酸捲縮糸の、無撚糸および/または撚糸を、単糸および/または2本以上の合撚糸として使用したものであることを特徴とする請求項1または2に記載のカーペット。
【請求項4】
カーペット表皮の平均パイル長さが5〜15mm、パイル目付けが500〜3000g/m2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカーペット。
【請求項5】
テーバー型摩耗試験(摩耗輪:H−18、摩耗回数2500回)によるカーペット表皮のパイル糸の摩耗量が5〜30質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーペット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−89956(P2007−89956A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286444(P2005−286444)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】