説明

カーボンナノチューブの製造システムと方法

所定の直径、長さ、対掌性、及び壁構造(即ち、単壁又は多壁)を有するナノチューブの選択的製造が可能になる、過飽和カーボン溶液源から、エピタキシャル成長を介してカーボンナノチューブを製造するシステムと方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照と優先権主張)
米国市民の私、Gideon Duvallは、以下のページが明細書である、「カーボンナノチューブの製造システムと方法」にある新しい有益な改善を発明したことを知って欲しい。この特許協力条約特許出願は、シリアルNo、11/901,986を割り当てられた、2007年9月19日に提出された、「カーボンナノチューブの製造システムと方法」と題する、米国非仮出願に対する優先権と利益を法律で許容される最大限まで主張する。
【0002】
この開示は、一般にナノ技術、特にカーボンナノチューブの製造システムと方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高いモジュラス、高い対引っ張り損傷比、及び高電流密度を含むカーボンナノチューブの多くの、かつ様々な有利な特性は、広く到来が告げられてきた。これらの利点は十分解説されているので、それについての徹底した議論は不要であり、当業者には理解されるだろう。しかしこの開示のシステムと方法の利点を適切に整理するため、2〜3のカーボンナノチューブの利点に焦点を当てるのが役立つだろう。カーボンナノチューブの一つの利点は、対掌性に依存する半導体又は金属材料の電気的特性を示し、チューブ直径に依存する様々な電気的特性を示すそれらの能力である。別の利点は、直線及び回転相対運動の片方又は両方の間に、内側カーボンナノチューブと外側カーボンナノチューブの間の低摩擦係数により効率的なナノスケールマシンを形成するそれらの能力である。更に別の利点として他の利用可能な繊維に比較して、カーボンナノチューブの高抗張力(特に低密度のカーボンナノチューブと結合した)である。
【0004】
このような有益な特性にも拘らず、カーボンナノチューブの商品への組み込みは、現在問題があり、従って、レーザ切断、アーク放電、及び化学蒸着(CVD)技術を含む、従来の製造法に関連する欠点のため広く普及していない。特に、カーボンナノチューブの従来の製造方法は、高いエネルギ使用、ランダムな構造形成(ランダム寸法、壁構造、及び対掌性を含む)及び手作業分類、触媒材料の消費、廃品又は副産物とカーボンナノチューブの混合のための関連ニーズ、清掃、製造されたカーボンナノチューブにおける欠陥の発生、製造されたカーボンナノチューブの長さ制限、及びバッチサイズの制限のための関連ニーズ、などの1つ以上の欠点のため、様々な程度の影響を受ける。特に、これらの欠点は、カーボンナノチューブの製造コストを上昇させ、カーボンナノチューブの大規模製造のために、特にミリメータレンジ以上の長いナノチューブのための様々な方法を提供することができない。
【0005】
そのようなことで、そのように形成される個々のカーボンナノチューブの直径、長さ、対掌性及び壁構造の選択が可能になる、カーボンナノチューブの製造システムと方法に対する満たされない要求があることは明確である。このようなシステムと方法は、商品への組込み、又は製造のため、1つ以上の所望特性を有するカーボンナノチューブの統一供給が提供される、特に物理的、電気的、光学的及び/又は熱的特性を含む、所望特性を有するカーボンナノチューブの選択的製造を好ましくは可能にするだろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要約して記述すると、好適実施例において、この開示の方法は、上記欠点を克服し、及びカーボンをフラックス融液に溶解し、融液の過飽和部分を生成し、核形成部位を過飽和部分と接触させるステップを含み、それにより、カーボン原子が核形成部位へ結合させてカーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブの製造方法を提供することにより、このような方法に対する認識された要求を満足させる。カーボンナノチューブの開放端が過飽和部分と接触を保つように、カーボンナノチューブを過飽和部分から抽出することにより伸ばされ、これにより開放端はカーボンナノチューブの連続成長の部位を提供する。これにより、ミリメータスケールの長さを有するカーボンナノチューブが製造される。
【0007】
過飽和部分は、好ましくは融液内にほぼ一定に維持される温度勾配の結果として、過冷却を介して形成される。温度勾配は、好ましくは六方晶系分子カーボンリングが安定し、五方晶系及び他の立体化学系分子カーボンリングが不安定である温度で、過飽和部分を維持し、これにより製造されたカーボンナノチューブの欠陥を回避するように制御される。温度勾配は、同様に好ましくはカーボンナノチューブが構造的に安定する温度で過飽和部分を維持し、これにより製造されたカーボンナノチューブの欠陥又は損傷を回避するように制御される。
【0008】
温度勾配、従って過冷却の程度が小さければ、融液は僅か過飽和になるだけで、これによりカーボンの自然な均質の核形成と他の結晶化は回避され、これにより導入された核形成部位、即ち種カーボンナノチューブが、過飽和融液からカーボン沈殿用の部位だけを提供し、これによりナノチューブの開放端又は他の核形成部位に所望の不均質結晶化を保証し又は促進する。温度勾配を利用して、更に開放端種カーボンナノチューブを形成するため、六方晶系又は他の分子カーボンリング構造を溶解することにより、種カーボンナノチューブの半球状端のような閉端部または先端を開放し、これにより、開放端は核形成部位を提供するために利用される。
【0009】
この開示のシステムは、好ましくはフラックス融液の形成手段、フラックス融液へのカーボン供給手段、プローブの核形成部位とフラックス融液との接触手段、及びフラックス融液からのプローブの抽出手段を含み、これによりフラックス融液中に溶解したカーボンが核形成部位と結合し、カーボンナノチューブを形成する。本システムは、更に融液を取り囲む環境からの酸素除去手段を含み、これによりカーボン及び/又は融液材料の酸化を防止又は抑制する。1つ以上の遮蔽板などの流れ制御手段が本システムに含まれ、これにより核形成プロセスは融液内の対流又は他の液体流に妨げられずに進行する。
【0010】
フラックス融液の形成手段は、溶解されたカーボンを伴い、又は伴わずに金属などの溶解フラックス材料、及びその中に配置された1つ以上の抵抗性加熱素子などの熱源を含むため、ジルコニア、アルミナ、又は他のセラミックるつぼ、金属るつぼ等のるつぼを含む炉として形成される。炉又はフラックス融液を形成する他の手段は、熱源制御用にその温度などのフラックス融液の物理的パラメータ決定のため、光温度計、熱電対等のセンサ手段を含み、これによりフラックス融液内の対流、フラックス成分、及び/又は温度勾配を調整し、又は制御する。
【0011】
融液へのカーボン供給手段は、フラックス融液内に出口を有する液体配管などの、フラックス融液へのカーボン含有液の導入手段として形成され、これによりカーボン原子がフラックス材料へ溶解する。又、手段は、それへの溶解のため、フラックス融液へ沈められた、グラファイト、カーボンブラック等の固形棒として形成される。カーボン供給手段は、好ましくは少なくともカーボン供給材料を取り囲む溶解領域内でフラックス融液をカーボンで飽和させるため、及びフラックス融液の夫々の領域における所望カーボン飽和レベルを維持するため、例えばプローブの核形成部位における核形成を介して溶液から沈殿する溶解されたカーボンを補充するのに十分なカーボンを供給する。フラックス材料供給手段は、例えば更に蒸発又は他の消耗によるフラックス融液から失われたフラックス材料の補充を含む。
【0012】
プローブは、好ましくはフラックス融液のカーボン過飽和領域表面にほぼ垂直な方向に直線的に作動可能であり、これにより、1つ以上の種カーボンナノチューブ及び/又は1つ以上のナノメータスケールの触媒粒子などの、プローブ上に配置された1つ以上の核形成部位は、フラックス融液のカーボン過飽和領域と接触し、その上に1つ以上のカーボンナノチューブの形成を可能にする。次にプローブは抽出され、1つ以上のカーボンナノチューブの連続成長と伸びを可能にする。
【0013】
従って、この開示のシステムと方法の1つの特性と利点は、所望特性を有する種カーボンナノチューブの選択を介して、製造されたナノチューブの物理的及び電気的特徴などの特徴を制御する能力であり、これにより様々な選択された特徴のカーボンナノチューブの予想可能な供給を行い工業要求を供給する。
【0014】
この開示のシステムと方法の別の特性と利点は、ミリメータスケール以上の長さを有するカーボンナノチューブの製造を可能にする能力で、これによりカーボンナノチューブ技術の新しい適用が可能になる。
【0015】
この発明の開示のシステムと方法の更に別の特性と利点は、エネルギ使用、分類プロセス、清浄プロセス、欠陥率、及び原材料消費に関連するコストの排除又は抑制を介してカーボンナノチューブの製造コストを低減する能力である。
【0016】
この開示のシステムと方法のこれらの及び他の特性と利点は、付属図面に照らして、以下の詳細説明と特許請求の範囲を読んだ後に、当業者には、より明確になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
従って、この開示のシステムと方法は、様々な図面を通して同様の参照番号は同様の構造を示す。それを参照する詳細説明に関して見られる以下の図面を見ることにより、及びこれを参照することにより最もよく理解されるだろう。
【0018】
【図1】カーボンナノチューブの製造システムの断面図である。
【図2】その詳細を図示する図1のシステムのプローブチップの正面図である。
【図3】代わりの構成によるカーボンナノチューブの製造システムの断面図である。
【図4】カーボンナノチューブの製造システムの更に別の構成の斜視図である。
【図5】この開示のカーボンナノチューブの製造システムの別の構成の平面図である。
【0019】
提示された図面は図示のみを目的としたもので、従ってそれらは請求された発明の基本と考えられる範囲を除き、請求された発明を示された構成の正確な詳細のいずれか又は全てに限定することを望まずに、又意図もしていないことは注目すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
法律で許容される最大限度迄、この特許協力条約特許出願は、割り当てられた連番No11/901,986を有する2007年9月19日に提出された“カーボンナノチューブの製造システムと方法”と題する米国非仮特許出願に対する優先権と利益を主張する。
【0021】
図示されたこの開示のシステムと方法の好適実施例の記載で、明確化のため特有の用語が使用される。しかし、請求された発明は、そのように選択された特有の用語に限定されることを意図せず、各特定要素は類似目的を達成するように類似して作動する全ての技術的同等物を含むと理解されるべきである。
【0022】
図示のために選択されたこの開示のシステムのその形成で、図1〜5はフラックス融液117の生成手段110、フラックス融液117へのカーボン供給手段120、プローブ131の核形成部位133をフラックス融液117と接触させる手段130、及びフラックス融液117からのプローブ131の抽出手段140、を含むカーボンナノチューブの製造システム100を示す。
【0023】
フラックス融液117の生成手段110は、好ましくは例えば炉111の熱絶縁手段111aへ取り付けられる、その中に配置されるるつぼ113、及びるつぼ113の周りに配置された1つ以上の加熱素子115を有する炉111として形成される。加熱素子115は、誘導加熱素子または他の抵抗加熱素子として形成される。加熱素子115の選択的作動が炉111内に熱を生成し、好ましくは、ニッケル、鉄、白金、パラジウム、ロジウム、クロム、及びモリブデン等から構成されるグループから選択された金属などの、るつぼ113内に配置されるフラックス材料の溶解を起こす。更に、フラックス材料は、金属合金グループ又は金属塩グループから選択され、好ましくはニッケル、鉄、白金、パラジウム、及びロジウムの内の少なくとも1つを含む。フラックス材料(添加される場合、及び/又はカーボン)の酸化を防止するため、炉111からの酸素除去手段150が利用される。酸素除去手段150は、一酸化炭素などの還元剤と共に、又はこれを含まずに、アルゴン等の不活性ガスが大気圧以上で炉111へ流入することができるように、炉111と作動可能に結合された不活性ガス源151を含み、これにより酸素及び酸素供与体の化合物が炉111から押し込まれ、酸化物の形成が防止され、又は抑制される。
【0024】
光高温計161、熱電対163、はかり165、及び/又は他のセンサ装置、及び制御装置169を含むフィードバック・制御手段160は、好ましくは炉111と共に作動可能で、これにより炉内111の温度などのパラメータ値を感知し、これによりそれを表示する信号は、制御信号の生成用に制御装置169へ伝送される。制御信号は、感知されたパラメータ値を所定値へ調節するため、加熱素子115、酸素除去手段150、及び/又はカーボン供給手段120等を作動させ、作動停止させ、又は調節又は制御するように作動可能な信号である。又、オペレータは夫々の感知されたパラメータ値の1つ以上の指示を受信し、加熱素子115、酸素除去手段150、カーボン供給手段120等を調節する。例えば、光高温計161、又は熱電対163により感知された温度が所定値より低い場合、制御装置169又はオペレータは、制御信号又は感知された値の別の指示に応答した所定値にほぼ等しい値、又はやや高い値を達成するため、炉内111の温度を上昇させるように加熱素子115を作動又は調節する。
【0025】
製造プロセスの様々なパラメータを監視するため、フィードバック・制御手段160などと共に、様々な他のセンサが追加的に又は代替的に利用される。例えば導電カーボンナノチューブを製造する場合、1つ以上の製造されたカーボンナノチューブの抵抗、それを通過する電流、それにかかる電圧、その周りに誘起された磁界等を監視するセンサが含まれ、これにより、成長の中断又は欠陥形成が検出され、及び/又は表示される。当業者に容易に理解されるように、成長中断、及び/又は欠陥形成は、必要ならば電気抵抗の増加により、製造されたカーボンナノチューブ及びフラックス融液117を通過する電流の流れを、少なくともある程度迄抑制するだろう。電気抵抗のこのような増加は、電流の減少として、電圧低下の増加として、又は磁界強度の減少等として検出される。
【0026】
使用において、制御装置169、又はオペレータは、炉111内に約1300℃〜約1800℃の間の温度を生成するため、加熱素子115を調節し、これにより、フラックス融液117が固形化されず、カーボンがその中に溶解する。加熱素子115は、好ましくは融液117内に定常的な温度勾配を生成するように配置され、ここでフラックス融液117の少なくとも1つのより冷たい部分117aが、るつぼ113の第二部分近辺に配置されるより暖かい部分117b以外に、加熱素子115から離れた、又はるつぼ113のエッジ113aなどのるつぼ113の第一部分近辺に配置される。定常的な温度勾配の生成と維持により、好ましくはフラックス融液117のより冷たい部分117aが、例えばフラックス融液117の液体領域を越える冷却を介して、カーボンで過飽和になり、(即ちカーボン/フラックス状態図の液相線を越えて、又はフラックス‐カーボン均質液平衡状態に関係する温度から、固形グラファイトと液体フラックス‐カーボン液が不均質平衡状態で存在する温度へ)これにより結晶化カーボンがこのような過飽和部分に形成する。
【0027】
鉄またはニッケルをフラックス材料として使用し、溶解されたカーボンが約1300℃より上の温度で分子カーボン(五角形、又は他の形状などの)の他の立体化学的配置の相対的不安定さにより、過飽和部分の結晶上に1つ以上の六方晶系分子カーボンリングを形成する場合、より冷たい部分117aには約1500℃の温度が好ましい。1500℃の温度も望ましく、これにより約1800℃の温度以上でカーボンナノチューブの構造的不安定さにより、製造されたカーボンナノチューブへの損傷が回避される。
【0028】
フラックス融液117へのカーボン供給手段120は、少なくとも一部がフラックス融液117と接触するように配置された一つ以上のカーボンブラック、グラファイト等の棒として形成され、これにより十分な温度が達成されると、棒121がフラックス融液117に溶解する。カーボン供給手段120は、好ましくは溶解されたカーボンでフラックス融液117を飽和させ、及びフラックス融液117から製造された1つ以上のカーボンナノチューブのその形成などの、溶液から沈殿するカーボンを補充するのに十分なカーボンを提供する。好ましくは、このような補充を促進するため、棒121は、例えば棒121が溶解するにつれて、棒121とフラックス融液117の間の連続した接触を保証するため、モータ(表示なし)を介して自動的に、又はオペレータを介して手動で移動可能である。はかり165、又は他のセンサは、カーボンの量及び/又はるつぼ111内に存在するフラックス材料の量を自動的に監視するために利用され、これにより制御装置169又はオペレータは、フラックス融液117の選択された成分を維持するため、追加のカーボン及び/又はフラックス材料を追加する必要があるタイミングを決定する。棒121は、更にフラックス材料の所定%を含み、これによりその損失は、棒121の溶解を介してカーボンとフラックス材料の両方の一時的供給により補償される。
【0029】
又、カーボン供給手段120は、それにカーボンの液体源を提供するため、フラックス融液117と作動可能に結合した、メタン、一酸化炭素又は有機金属液などの炭化水素液または他のカーボン含有液などのカーボン123の液体源として形成され、これによりカーボンはフラックス融液117へ溶解される。カーボンの液体源が利用される場合、作動可能な結合は、アルミナ、ジルコニア、又は他の適当なセラミック材料、金属材料等で形成されるパイプ125を含み、好ましくはそのより暖かい部分117bで、カーボンの液体源をフラックス融液117へ導くことができる。もし液体カーボン源が利用されると、フラックス材料は、例えば有機金属液を介して失われたフラックス材料を補充するため、別の棒(表示なし)を介して、又はフラックス融液117へのフラックス材料の供給の別の方法を介して供給される。
【0030】
フラックス融液117のより冷たい部分117aが過飽和になり、適当な温度、即ち適当な程度の過冷却に達すると、より冷たい部分117aで、核形成部位133をフラックス融液117と接触させるため、例えばモータやリニアタクチュエータの形の手段を介して自動的に、又はオペレータを介して手動でプローブ131を動かす。核形成部位133は、1つ以上の種カーボンナノチューブ133a及び/又はプローブ131上に直接又は基板132を介して取り付けられた1つ以上のナノスケール触媒粒子133bとして形成され、これにより核形成部位133は溶液からのカーボンの沈殿を開始する。核形成部位133は、好ましくは開放した遠方端(プローブ131から離れた)を有する1つ以上の種カーボンナノチューブ133aとして形成され、これにより概ね予め選択された特性を有する夫々の種カーボンナノチューブ131aの選択を介して、チューブ径及び/又は対掌性などの形状特性及び導電性及び/又はバンドギャップエネルギなどの電気的特性を含む、予め選択された特性を有する1つ以上のカーボンナノチューブが製造される。
【0031】
種カーボンナノチューブ133aの開放端は、フラックス融液117内のカーボン原子の結合部位を提供し、これによりカーボン原子が、種カーボンナノチューブ133aの開放端へ結合するにつれて、不均質な沈殿が発生する。こうして、一つ以上のカーボンナノチューブは、核形成部位133の過飽和のより冷たい部分117aとの接触を介して製造され、ここでフラックス融液117からのカーボン原子の種カーボンナノチューブ133aへのこのような結合が発生し、その伸長を起こす。
【0032】
例えば溶液からのカーボン原子の結合を介して、種カーボンナノチューブ133aが成長するにつれて、モータ又はリニアアクチュエータの形などの、プローブ131抽出手段140が、種カーボンナノチューブ133aの成長速度にほぼ等しい速度で、フラックス融液117aからプローブ131を離し、これによりその開放端はより冷たい部分117aなどのフラックス融液117の所望部分近辺での配置を維持する。種カーボンナノチューブ133aとより冷たい部分117aとの接触のこのような維持により、好ましくは伸長を介して、種カーボンナノチューブ133aの連続成長を保証し、又は促進する。そのようなことで、不定長のカーボンナノチューブが成長し、これにより数mmより長いカーボンナノチューブが予想通りに製造され、工業用及び/又は研究用に供給される。更に上記の製造プロセスは、ほぼ所望の特性を有するカーボンナノチューブの選択的製造を可能にし、従来の製造方法に関連する分類と洗浄工程を排除するだけでなく、六方晶系分子カーボンリングのみが安定な温度で、フラックス融液117の温度の選択的維持を介して成長中断と欠陥組込みも排除する。
【0033】
特に、制御装置169又はオペレータは、フラックス融液117がより暖かい部分117bのカーボン/フラックス材料状態図の液体領域を維持し、より冷たい部分117aにおける液体及びグラファイト溶液を特徴とするカーボン/フラックス材料状態図の領域を維持することを保証するため、約1500℃などの約1300℃と約1800℃の間の温度にフラックス融液117の温度を維持する。このような温度の維持は、六方晶系分子カーボンリングの形成、及び関連する非線型チューブ壁成長が防止され、又は抑制されこれにより製造されたカーボンナノチューブの構造的整合性が保証され、又は促進される。更に約1300℃と約1800℃の間の温度でのフラックス融液117の維持により、種カーボンナノチューブ133aの非線型部分(即ち、六方晶系分子カーボンリングを含む部分)がそれと接触することで溶解することができるようになる。そのようなことで、たとえ種カーボンナノチューブ133aが閉止された、又は半球形先端又は端部を含んでも、フラックス融液117は先端又は端部のカーボンを溶解させることにより、このような閉止又は半球形先端又は端部を開放し、これによりカーボン原子は六方晶系パターンで種カーボンナノチューブ133aへ結合し、これにより、連続した線型成長を保証し、又は促進する。こうして、酸化プロセス又は他の先端開放プロセスを回避する。
【0034】
フラックス融液117の生成手段110は、好ましくはフラックス融液117からのカーボンの均質沈殿をほぼ防止するために十分小さい定常温度勾配を生成するように構成される。特に、温度勾配は好ましくは例えば選択されたフラックス材料、及びフラックス融液117の%成分に対して液相温度以下の約2%より大きくない、より冷たい部分117aの過飽和を許容するのに必要以上に大きくない。このような比較的小さい温度勾配の維持、過冷却の関係する程度及びこれによる沈殿のための駆動力は、均質沈殿を防止し、又は抑制するだけでなく、好ましくは種カーボンナノチューブ133aの側面上でのグラファイト又は他のカーボン固形物の形成を防止し、又は減少させ、これにより製造されたカーボンナノチューブにおける欠陥が減少し、又は排除される。
【0035】
しかし、過冷却の程度が、沈殿のための駆動力と結合に利用可能な溶液中のカーボン量を殆ど決定し、これによりカーボンナノチューブの成長に影響を与えるので、過冷却の程度はエピタキシャル成長速度とカーボンナノチューブ欠陥率(即ち品質)の所望バランスを達成するように調節される。勿論、市場の関心は過冷却程度の決定にあり、これにより製造プロセスの経済的効率が増加することにより、製造設備の収益又は利益を増加させることができる。より高いエピタキシャル成長速度が支持される一つの方法は、少なくとも一部がその中のカーボン拡散速度に基づくフラックス材料の選択による。特により速いカーボン拡散速度により、多くのカーボンナノチューブの同時製造により達成される、より速い速度を含む、エピタキシャル成長のより速い速度に関係するカーボン減少速度に合致するのに十分なカーボン補充速度が可能になる。更にシリコンまたは他の添加物が、選択されたフラックス材料におけるカーボン拡散速度を増加させ、及び/又はカーボン黒鉛化を向上させるために含まれる。
【0036】
当業者には明らかなように、上記のカーボンナノチューブ製造システム及び方法は、例えばフィードバック・制御手段160の組込みを介して、大規模製造プロセスへ容易に適用される。他の適用は、システム200の分離したカーボン溶解部分210とカーボンナノチューブ成長部分220を含み、これによりカーボン溶解部分210は、複数のカーボンナノチューブの成長部分220へ例えば1つ以上の配管230とポンプ240を介して、カーボン飽和又はカーボン過飽和フラックス融液117を供給する。加熱手段231は配管230で作動可能であり、これによりフラックス融液117は、未成熟なカーボン沈殿を防止するように、望ましくない冷却(このような望ましくない冷却は冷却か又は単なる過剰冷却か)を防止するため、望ましい温度に維持される。各カーボンナノチューブ成長部分220は、1つ以上の核形成部位133を含む、1つ以上のプローブ131を含む。フラックス融液117の生成手段110などのこのような二重加熱手段は排除され、異なる寸法、対掌性等のカーボンナノチューブは分離した成長部分220から同時に製造される。
【0037】
システムと方法を大規模及び/又は商用プロセスに適用するようにした別の変形は、核形成部位133とフラックス融液117との接触手段130と自動又は手動で作動可能なスプールを含むためのプローブ131の抽出手段140の一つ以上の変形を含み、これにより一つ以上のカーボンナノチューブが、それが製造されると共に、貯蔵スプール上へ直接抽出される。このように、一つ以上の処理及び/又は梱包ステップが回避され、カーボンナノチューブがスプール上に転送され、使用のためそこから払い出される。
【0038】
この開示の製造方法とシステムの合理化に加えて、品質を改善又は維持するように設計された変形も行われる。1つのこの種の例は、望ましくない結晶化を防止するため、定常的温度勾配の熱心な維持と、十分小さい勾配の選択を含む。製造されたカーボンナノチューブの品質(即ち欠陥率を減少させる)を改善するように設計された別の代案は、一つ以上のバッフル171、スクリーン等の一つ以上の流れ制御手段170の使用を含む。バッフル171はアルミナ、ジルコニア、又は他の適当なセラミック材料、金属材料等で形成され、フラックス融液117内の波、さざ波、又は他の有害な表面又は表面下の乱れ等の、少なくとも隣接する核形成部位133の望ましくない液体流を防止し、又は抑制する。同様に、スプリング181や他の機械式振動吸収材などの一つ以上の振動絶縁手段180を利用して、炉111が収容される構造から炉111又はるつぼ113を絶縁し、これにより機械装置、地質学的活動、人間活動などからの振動を、フラックス融液117及び/又は核形成部位133へのその伝達を削減又は排除するため、抑制又は吸収する。又、振動絶縁手段180は、流体(即ち、油圧式又は空気圧式)抑制器等として形成される。一つ以上のバッフル171又は他の制御可能な絶縁手段は、所望熱勾配、過冷却の程度を始め、その間の遷移に関連するフラックス融液117の部分のより冷たい部分117a、より暖かい部分117b及び/又は部分の場所及び寸法を達成又は維持するため、フラックス融液117内の流体及び/又は熱流の制御にも利用される。バッフル171の選択的移動又は設置は、例えば対流、放射等を介して熱の損失又は確保を選択的に可能にし、又は抑制する。
【0039】
更に、この開示の製造方法は、成長メカニズムの駆動力、即ち過冷却の程度を制御するための成長メカニズム及び方法を利用して、ワイヤ、ベルト、シート等の他の細長いナノスケール構造の製造に適用される。同様に、この開示の製造方法は、別の材料の細長いナノスケール構造の製造に適用される。例として限定でなく、窒化ホウ素ナノチューブ、ベルト、ワイヤ、シート等は、ニッケル、鉄、マグネシウム、コバルト、リチウム、カルシウム、とりわけホウ素と窒素が溶解されるそれらの組み合わせなどの適当なフラックス材料の融液を生成するように適合された類似システムを介して製造される。フラックス融液内の温度勾配の生成と維持は、好ましくは少なくともその一部がホウ素と窒素で過飽和となり、その結果選択的かつ制御された沈殿を利用して、一つ以上の選択されたナノスケール構造を成長させる。上で論じたように、成長速度、欠陥率、材料損失率等は、生産量、効率等の所望製造性能特性を得るため、システムの一つ以上のパラメータを選択する場合に考慮されることは当業者には明らかである。
【0040】
製造されたナノスケール構造に選択された材料に関係なく、一つ以上のドーパントが、フラックス融液の生成のための炉又は他の手段、又はその両方内の雰囲気のフラックス融液中に含まれ、これによりこの種のドーパントは、電気的、物理的、熱的又は他の特性などのその特性を選択的に変えるため、ナノスケール構造へ組み込まれる。例えばホウ素はそれから製造されたカーボンナノチューブは金属的電気的特性を示すことを保証するため、カーボン/フラックス溶液に含まれる。カーボンナノ構造ドーパントはホウ素、窒素、とりわけその組み合わせを含む。窒化ホウ素ナノ構造ドーパントは、特にカーボンを含む。
【0041】
この開示のシステムと方法の典型的実施について、このように記載してきたが、開示は典型的なもののみで、様々な他の代案、適用、及び変形は請求される発明の範囲と精神内で行われることは当業者により注意されるべきである。従って請求される発明は、ここに示された特定実施例に限定されない。
【符号の説明】
【0042】
100:システム
110、120、130、140、150:手段
111:炉
111a:熱絶縁手段
113:るつぼ
113a:エッジ
115:加熱要素
117:フラックス融液
117a:より冷たい部分
117b:より暖かい部分
121:棒
123:カーボン
125:パイプ
131:プローブ
132:基板
133:核形成部位
133a:種カーボンナノチューブ
133b:ナノスケール触媒粒子
151:不活性ガス源
160:制御手段
161:光高温計
163:熱電対
165:はかり
169:制御装置
170:流れ制御手段
171:バッフル
180:振動絶縁手段
181:スプリング
200:システム
210:カーボン溶解部分
220:カーボンナノチューブ成長部分
230:導管
231:加熱手段
240:ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックス融液を生成するステップと;
カーボン飽和フラックス融液を生成するため、前記融液へカーボンを供給するステップと;
前記融液の少なくとも1つの過飽和部分を生成するステップと;及び
核形成部位を前記融液の少なくとも1つの過飽和部分と接触させるステップと;
からなるカーボンナノチューブの製造方法であって、
少なくとも1つのカーボン原子はカーボンナノチューブを形成するため、前記核形成部位へ結合することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記核形成部位が種カーボンナノチューブを備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カーボンを前記フラックス融液へ供給する前記ステップが、カーボンブラック、グラファイト,炭化水素材料、一酸化炭素、および有機金属材料から構成されるグループから選択されたカーボン源と前記フラックス融液との接触を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
フラックス融液を生成する前記ステップが、金属、金属合金、及び金属塩から構成されるグル−プから選択されたフラックス材料を約1300℃〜約1800℃の温度へ加熱するステップからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
フラックス融液を生成する前記ステップが、金属、金属合金、及び金属塩から構成されるグル−プから選択されたフラックス材料を約1500℃の温度へ加熱するステップからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フラックス融液の少なくとも1つの過飽和部分を生成する前記ステップが、前記フラックス融液内の定常温度勾配の生成を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、更に前記ナノチューブの前記フラックス融液から前記カーボンナノチューブの成長速度にほぼ等しい速度での抽出を含む方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、更に前記フラックス融液と前記カーボンの内の少なくとも1つの酸化を防止するステップからなる方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、更に、前記フラックス融液内の液体流の防止、前記フラックス融液内の液体流の抑制、および前記フラックス融液内の液体流の制御、から構成されたグループから選択されるステップからなる方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、更に、カーボナノチューブの製造システムの少なくとも1つのパラメータ値を監視するステップ;及び
少なくとも1つのパラメータの前記値を所定値に調節するため、前記システムの少なくとも1つの構成要素を調節するステップからなる方法。
【請求項11】
フラックスを生成する手段と;
カーボンを前記フラックス融液へ供給する手段と;及び
核形成部位と、を含むカーボンナノチューブの製造システムであって、
前記フラックス融液が少なくとも1つの過飽和部分を含むことを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムであって、更に、前記フラックス融液と前記カーボンの中の少なくとも1つの酸化を防止する手段を含むシステム。
【請求項13】
前記核形成部位が種カーボンナノチューブを含むことを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記種カーボンナノチューブが、少なくとも1つの所定特性を含み、これにより前記システムにより製造されたカーボンナノチューブが、前記少なくとも1つの所定特性を含むことを特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
請求項11に記載のシステムであって、更に、カーボンナノチューブの製造用前記システムの少なくとも1つの構成要素の制御に使用される手段の監視を含むシステム。
【請求項16】
前記フラックス融液が、より暖かい部分とより冷たい部分の間の定常温度勾配を含み、前記少なくとも1つの過飽和部分が、前記より冷たい部分近辺に配置されることを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記フラックス融液が、金属、金属合金および金属塩から構成されたグループから選択されることを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
請求項11に記載のシステムであって、更に、前記核形成部位を前記フラックス融液と接触させる手段と、カーボンナノチューブを前記フラックス融液から抽出する手段の中の少なくとも1つを含むシステム。
【請求項19】
前記核形成部位が、種カーボンナノチューブとナノスケール触媒粒子の中の少なくとも1つを含み、前記核形成部位がプローブにより支持された基板に取り付けられることを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項20】
少なくとも1つのフラックス融液に複数のカーボン過飽和部分を形成するステップと;
複数の核形成部位の各々を前記複数のカーボン過飽和部分の夫々の1つと接触させ、これにより前記各カーボン過飽和部分からのカーボン原子が結合し、少なくとも1つのカーボンナノチューブを形成する手段と;及び
各カーボンナノチューブを夫々のカーボン過飽和部分から各それぞれのカーボンナノチューブの成長速度にほぼ等しい速度で抽出する手段と、を含む複数のカーボンナノチューブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−538965(P2010−538965A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525900(P2010−525900)
【出願日】平成20年9月15日(2008.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/076356
【国際公開番号】WO2009/039054
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(510076133)
【Fターム(参考)】