カーボンナノチューブを含む物品および流体の浄化にこれを使用するための方法
【課題】
液体または気体などの流体から汚染物質を除去する。
【解決手段】
液体または気体などの流体から汚染物質を除去するための物品。この物品は、そこに付着または位置する少なくとも1つの分子またはクラスターを含むカーボンナノチューブから構成され、カーボンナノチューブは、物品に接触した流体内の汚染物質の濃度を減少させるのに十分な量で物品中に存在している。また、上記物品において使用されるナノメッシュ材料を作成するための方法が開示され、上記物品を用いて流体を浄化する方法も開示される。
液体または気体などの流体から汚染物質を除去する。
【解決手段】
液体または気体などの流体から汚染物質を除去するための物品。この物品は、そこに付着または位置する少なくとも1つの分子またはクラスターを含むカーボンナノチューブから構成され、カーボンナノチューブは、物品に接触した流体内の汚染物質の濃度を減少させるのに十分な量で物品中に存在している。また、上記物品において使用されるナノメッシュ材料を作成するための方法が開示され、上記物品を用いて流体を浄化する方法も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001] 本出願は、2004年3月8日出願の米国特許第10/794,056号の一部継続出願であり、2003年3月7日出願の米国仮特許出願第60/452,530号、2003年5月6日出願の米国仮特許出願第60/468,109および2003年9月3日出願の米国仮特許出願第60/499,375号に対する国内優先権の利益を主張するものである。いずれも参照により全体を本明細書に組み込むものとする。
【0002】
[002] 本開示は、液体または気体などの流体から汚染物質を除去するための物品に関し、この物品はカーボンナノチューブを含む。本開示は、また、このような物品を製造するための方法、ならびにこの物品を用いて流体から汚染物質を除去するための方法に関する。一部の実施形態では、開示された物品を使って、微生物に汚染された水から飲用に適した水を作り出したり、塩水を脱塩したりしている。
【背景技術】
【0003】
[003] 消費、使用、処理及び他の必要のために流体を処理する方法および工程は多数ある。最も一般的な方法としては、水を滅菌する化学処理、液体を浄化するための蒸留、微粒子を除去するための遠心分離および濾過(液体中でも空気中でも)、流体の2つの相を分離する上澄み移動、液体からイオンを取除くための逆浸透および電気透析、食料品を滅菌するための低温殺菌、望ましくない反応物を有用な生成物に変える触媒法がある。上記方法のそれぞれは、特定の用途のために設計されていて、最終製品を得るには一般に複数の方法の組合せが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[004] 流体処理においてバランスを取るなくてはならないファクターとしては、液体の流量、流れの抵抗、および汚染物質の除去レベルがある。従来可能であったよりも高レベルの汚染物質除去を達成すると同時に、最初の2つのファクターのバランスが取れる材料が望まれる。
【0005】
[005] ナノテクノロジーマテリアルの有望性は、これにより、液体の浄化などの旧来のマクロスケールの材料ではできなかったことができるようになるだろうという点である。現在の工程の多くが、カーボンナノチューブなどのナノマテリアルを含む物品またはフィルタを利用することにより改良できる。適切に調製したカーボンナノチューブを含むメッシュ(ナノメッシュ)を、ウイルス、バクテリア、有機および無機の汚染物質、塩イオン、ナノサイズまたはミクロンサイズの微粒子、化学物質(天然物質も合成物質も)など、無数の汚染物質を流体から除去するために利用でき、同時に、物品を通過する際の流体流量の維持または改善、物品を通過する流れの抵抗の削減、または結果として得られる物品の軽量化など、さらなる利点を少なくとも1つは達成できることが分かった。
【0006】
[006] 本明細書において、「ナノ」という用語は、分子レベルなど大きさが1メートルの10億分の1(すなわちnm)程度の規模の材料または構造を指す。例えば、「ナノテクノロジー」という用語は一般に、少なくとも一次元の寸法が、たとえば1から100nmの間であるなど、1から500nm程度の大きさであり、規模の小ささゆえに少なくとも1つの特性または機能を示し、個別の原子または分子を制御または操作できるテクノロジーを言う。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[007] 上記目的を達成するため、少なくとも1個のカーボンナノチューブが別のカーボンナノチューブ、またはファイバ、微粒子または基体などの他の材料に付着または接続している複数のカーボンナノチューブから構成される物品を提供する。「カーボンナノチューブ」とは、その結合パターンが六角形の格子を作り出し、自身に向かって閉じて円筒構造の壁を形成する六員環の炭素からなるナノスケールの管状構造をいう。少なくとも部分的にナノチューブから構成される相互連結した構造体を、本明細書では「ナノメッシュ」と称する。
【0008】
[008] 本明細書に開示するのは、水または空気などの流体から汚染物質を除去するための物品である。この物品は一般にカーボンナノチューブを含み、それに付着またはその中に位置する少なくとも1つの分子またはクラスターを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよいのであって、カーボンナノチューブは、その物品に接触する流体中の汚染物質の濃度を減少させるのに十分な量で物品内に存在する。
【0009】
[009] また、流体中の汚染物質量を減少させるための方法、ならびに流体から少なくとも1種類の汚染物質を分離、除去、固定するか、変性させる、または破壊するために十分な時間だけ、流体を本明細書に記載の物品に接触させることを含む方法についても述べる。ある実施形態では、この方法を、水または空気から汚染物質を除去するために用いることができる。
【0010】
[010] さらに、カーボンナノチューブを含むナノメッシュ材料を調製するための方法を提供する。この方法は、少なくとも1つの官能化学基をカーボンナノチューブの表面に付着させ、これにより官能基化カーボンナノチューブを形成することができる媒体中でのカーボンナノチューブの機械的処理、化学的処理または放射処理か、またはその組合せを含む。この方法は、さらに、水性、無機質、有機質の溶剤の中から選択した少なくとも1つの溶剤の中で官能基化されたカーボンナノチューブをすすぐことおよび/またはこれに分散させることを含む。また、この方法は、さらに、種々の化学的官能基化を行う多種類のカーボンナノチューブを組合せて、汚染物質の除去、破壊または変性を支援することも含む。
【0011】
[011] ある実施形態では、この方法は、さらに、官能基化されたカーボンナノチューブをファイバおよび少なくとも1種類の溶剤と混合し、官能基化カーボンナノチューブとファイバとの懸濁液を形成することを含む。真空濾過法などの標準的な方法で基体上に懸濁液を堆積させることにより、一般的には多孔基体上にナノメッシュの層が形成される。
【0012】
[012] 上述の内容のほかに、本開示は、以下に説明する他の例示的な特徴を多数含んでいる。前述の内容と以下の説明のいずれも例示的なものに過ぎないことを了解されたい。
【0013】
[013] 添付の図面は本明細書に組み込まれ、その一部分を構成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[036] 本開示の1つの態様において、流体から汚染物質を除去する物品が提供される。「流体」とは、液体または気体を包含することを意図している。「汚染物質」とは、流体中の少なくとも1種類の欲されない、または望まれない元素、分子または有機体である。「除去」(またはその活用形)とは、粒径除外、吸収、吸着、化学的または生物学的な相互作用または反応といったメカニズムのうち少なくとも1つを利用して汚染物質を破壊するか、変性させるか、分離することを意味するものと理解される。「化学的または生物学的な相互作用または反応」とは、汚染物質が害を引き起こせないようにする化学的過程か生物学的過程のいずれかを通じた汚染物質との相互作用を意味すると理解される。このような例としては還元、酸化、化学変性、微生物、生体分子、摂取および入れ子に対する物理的損傷等が挙げられる。
【0015】
[037] 「粒径」とは、分布数、たとえばある粒径を有する微粒子の数により定義される。この方法は、通常、目盛り付き光学顕微鏡によって、目盛り付きポリスチレンビーズによって、目盛り付き走査型プローブ顕微鏡、走査型電子顕微鏡、または光学近接場顕微鏡によってなど、顕微鏡的技術により測定される。本明細書に記載する大きさの微粒子の測定方法は、Walter C. McCrone’sほか著の「The Particle Atlas, (An encyclopedia of techniques for small particle identification), Vol. I, Principles and Techniques, Ed.2」(Ann Arbor Science Pub.社)に教示されている。上記文書は、参照により本明細書に組み込むものとする。
【0016】
[038] 本明細書に記載の物品を用いて浄化できる液体の例を挙げると、水、食料品、生物学的流体、石油およびその副産物、非石油燃料、薬剤、有機溶剤および無機溶剤、ならびに水素、酸素、窒素および二酸化炭素の液体であって、ロケット推進燃料または工業用途で使用されるものなどであるが、これらに限定されない。
【0017】
[039] この物品で処理することが可能な食料品の例を挙げると、動物の副産物(卵および牛乳など)、果汁、アルコール飲料およびノンアルコール飲料、天然および合成シロップ、ならびに料理または食品産業で用いられる天然および合成の油(オリーブ油、ピーナツ油、花油(ひまわり、紅花)、野菜油、または動物を供給源とする油(すなわちバター、ラード)、またはその組合せがあるが、これらに限定されない。一例として、亜硫酸塩をワインに加えて退色を防ぎ、保存を助けることはよくある。しかし、亜硫酸塩は健康面の心配が高まるため、避けるべきである。本発明の1つの態様として、販売の際に亜硫酸塩に的を絞って除去することを含み、本明細書に記載の浄化方法をワイン産業に利用することもできる。
【0018】
[040] 本明細書に記載の物品で除染できる生物学的流体は、一般に、動物、人間、植物から得られるものか、またはバイオテクノロジー生成物および/または薬品の処理に用いる培養液などである。一実施形態では、浄化できる生物学的流体は、全血(または血中物質)、血清、および牛乳である。薬品に用いる生物学的試薬は、多くの場合非常に不安定であり、従来の技術では滅菌が難しかった。小型微生物(マイコプラズマ、ウイルスなど)の除去は、従来の濾過では達成できない。本発明のカーボンナノメッシュ物品は、しばしば存在する、生物学的試薬に必要な血清蛋白質に損傷を与えることなく、ウイルスの除去に利用することができる。一実施形態では、ナノメッシュの物理的特性および化学的特性を、薬品製造中に作り出される汚染物質の除去が可能なように制御できる。
【0019】
[041] 別の実施形態では、発明された物品は、石油製品の滅菌に用いることができる。重大な汚染問題は、貯蔵中の石油またはその派生物でのバクテリアの潜在的な成長であり、これは、特に航空燃料で問題になってきた。このようなバクテリアが存在すると燃料が非常に汚くなり、最終的には使えなくなってしまう。従って、液体浄化分野での主な関心分野は、天然および/または合成の石油製品からバクテリアを一掃することである。天然石油および/または合成石油およびその副産物としては、航空機、自動車、船舶、機関車、およびロケットの燃料、ならびに工業用油および機械油、潤滑油、ならびに暖房用の石油およびガスなどがある。
【0020】
[042] 石油製品についてのもう1つの重大な汚染問題は、硫黄含有量の高さと一部の金属が過剰なレベルで含有されていることで、重要な例としては鉛がある。政府の規制では、炭化水素燃料(内燃機関で用いられる)中の硫黄および鉛の濃度が特定量(MCL−最大汚染レベル)を超えることを禁じている。従って、他の望まれない成分を添加することなく石油から特定の化学汚染物質を除去する物品の需要はある。一実施形態では、本明細書に記載の物品を用いて、炭化水素または燃料電池に用いる気体など他の種類の燃料から硫黄および/または特定の金属を除去することができる。
【0021】
[043] 前述の汚染物質の多くは空気中に分散するため、気体をきれいにする物品の需要がある。従って、本発明の別の態様は、すでに挙がっている汚染物質のいずれかを除去するための空気を清浄化するための方法を含む。本明細書に記載の物品を用いて清浄化できる気体の例を挙げると、空気または自動車、大煙突、煙突、または煙草の排気または煙から選んだ1つまたは複数の気体などであるが、これらに限定されない。空気の清浄化に用いられる場合、この物品を平らな形状にして、広い表面積を空気の流れに当てることができる。この平らな形状により、HVACシステムだけでなくガスマスクで用いるものなど、様々なフィルタデザインに合わせて容易に適切な形状に切断できるという利点も新たに生じる。気体浄化のために洗浄されたり、排気から除去されるなど、本開示に従って処理することができる気体としては、以下の通り、アルゴン、アセチレン、窒素、酸化窒素、ヘリウム、水素、酸素、アンモニア、一酸化炭素、二酸化炭素、プロパン、ブタン、天然ガス、エチレン、塩素、または空気、酸化窒素など、上記物質の混合物、ならびにヘリウム/酸素混合物などのダイビングに用いる気体などがある。
【0022】
[044] さらに、ある流体の用途で汚染物質と認識されるものが、実際には別の用途では望まれる生成物であるかもしれないことに留意すべきである。例えば、汚染物質は貴金属または有益な薬品を含むかもしれない。従って、一実施形態では、単に汚染物質を除去して破棄するよりは、これを分離、保持して回収するほうが有益かもしれない。有用な汚染物質または特定の反応副産物を分離することのできる、望まれる汚染物質を「獲得して放出する」能力は、以下に詳細に記述するように、ゼータ電位を調整したり、ナノメッシュ物品のナノ電子制御を行なったりすることにより達成できる。
【0023】
[045] 本明細書に記載の物品の用途としては、家庭用(例:家庭用水および空気の濾過)、娯楽用(環境濾過)、工業用(例:溶媒の再生、反応物の精製)、政府用(例:免疫形成プロジェクト、軍用、廃棄物改善)および医療用(例:手術室、清浄な空気およびマスク)の分野がある。
【0024】
[046] カーボンナノチューブには一般に二種類の形態がある。すなわち、シングルウォールとマルチウォールである。シングルウォールカーボンナノチューブは、これらの管状構造の1つを含み、相互に接続された六角形が互いに整列している。図1はシングルウォールカーボンナノチューブを示している。一実施形態では、こうしたシングルウォールナノチューブは一般に直径が1〜2nm程度であって、人間のDNA(2nmまで)に似ていて、通常、長さは数百ナノメータから何ミクロンにも及ぶ。マルチウォールカーボンナノチューブは、こうした管状構造の同心シェルを多数含む。直径は数十ナノメータになることもあり、理論的には長さは数百メートルにもなり得る。
【0025】
[047] そうなっている必要があるわけではないが、本明細書に記載のナノメッシュは、互いに、または他の材料に付着したカーボンナノチューブから構成することができる。ナノメッシュ内での付着および/または接続は、ナノスケールで働く力の結果であり、その例を挙げると、ファンデルワールス力、共有結合、イオン結合、幾何制約、静電気、磁力、電磁力、またはカシミール力、またはその組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0026】
[048] 本開示は、また、汚染された流体を本明細書に記載の物品中でナノメッシュに接触させることにより流体を浄化するための方法に関する。一実施形態では、流体を浄化する方法は、流体をナノメッシュに接触させることを含み、ナノメッシュまたはナノメッシュが作り出す相互作用ゾーンに接触する流体中の少なくとも1つの汚染物質の濃度を下げるのに十分なだけの量、カーボンナノチューブがナノメッシュの中に存在している。本明細書で言う「少なくとも1つの汚染物質の濃度を下げる」とは、少なくとも1つの汚染物質を、本発明の物品により処理後、適切な規制当局が定義する最大汚染レベル(MCL)未満、または特定の流体の品質基準が準拠する業界の要求条件未満など、未処理の流体の場合より低いレベルに下げることを意味する。
【0027】
[049] 本開示の1つの態様は、炭素環が渦を巻いた管状または非管状のナノ構造を有するカーボンナノチューブを使用することに関している。こうしたカーボンナノチューブは、通常、シングルウォール、マルチウォールまたはその組合せであって、様々な形態をとることができる。例えば、本開示で用いているカーボンナノチューブは、角状、らせん状、多数の糸を撚り合せた渦巻状、スプリング、デンドライト状、樹木状、放射状のナノチューブ構造、ナノチューブのY分岐合、竹状の形態から選択した形態を有することができる。上述した形状の一部は、M.S. Dresselhaus、G. Dresselhaus、P.Avouris eds. による「Carbon Nanotubes:Synthesis, Structure, Properties,and Applications」(Applied Physics(80.2000)に掲載、Springer−Verlag社)ならびに「A Chemical Route to Carbon Nanoscrolls」(Lisa M. Viculis、Julia J.Mack、Richard B.Kaner、Science誌 2003年2月28日号、299)にさらに詳しく定義されている。いずれの文書も参照により本明細書に組み込むものとする。
【0028】
[050] 開示される物品の1つの態様では、カーボンナノチューブの過半数は、結晶欠陥により歪んでおり、歪みのないカーボンナノチューブよりも高い浄化性能を示している。「結晶欠陥」とは、カーボンナノチューブの管壁内の、少なくとも1つの炭素環に格子の歪みのある箇所を言う。
【0029】
[051] 「格子の歪み」とは、管状シート構造を形成するカーボンナノチューブ原子の結晶格子の歪みを意味する。図2で例示しているように、格子の歪みとしては、非弾性変形のために生じる原子のずれ、または五員および/または七員の炭素環の存在、または化学的相互作用に続いて生じた炭素原子の結合のsp2混成の変化などがある。このような欠陥または歪みのために、カーボンナノチューブが自然に折れることがある。
【0030】
[052] 「高い浄化性能を示す」という文言は、ナノメッシュが、結果的に得られる材料の構造的な完全性、その多孔率、多孔分布、導電性、流体の流れへの抵抗、幾何制約、またはその組合せであって、汚染物質の除去の強化につながるものに対して改善を示すことを意味する。例えば、高い浄化性能は、個別のカーボンナノチューブの改善された、高効率の吸着または吸収特性によるのかもしれない。また、カーボンナノチューブに欠陥が多ければ多いほど、化学官能基の付着箇所は多くなる。一実施形態では、ナノメッシュに存在する官能基の数を増やすことにより、結果として得られる物品の性能は改善されるはずである。
【0031】
カーボンナノチューブの処理
[053] 本開示では、カーボンナノチューブには、化学的挙動および/または物理的挙動の改変のため、化学的処理および/または物理的処理を施すことがある。こうした処理は一般に、結果としての物品が、上記で定義した意味でより高い浄化性能を示すように行う。
【0032】
[054] 一実施形態では、カーボンナノチューブは、以下の効果のうち少なくとも1つを達成するように、化学的または物理的に処理される。すなわち、汚染物質の除去、欠陥の付与、または欠陥箇所および/またはナノチューブ表面に官能基を付着させることである。
【0033】
[055] ここでは「化学的処理または物理的処理」というのは、カーボンナノチューブの製造工程に由来するアモルファス炭素、酸化物または微量の副生成物などの望まれない成分を除去するのに十分な時間をかけて、酸、溶剤または酸化剤を用いて処理することを意味する。
【0034】
[056] 第2の種類の化学処理の例を挙げると、カーボンナノチューブを、カーボンナノチューブ表面に欠陥密度を作り出すのに十分な時間だけ酸化剤に暴露することである。
【0035】
[057] 第3の種類の化学処理の例を挙げると、希望のゼータ電位(参照により本明細書に組み込むものとするJohnson, P.R.著、「Fundamentals of Fluid Filtration」(2nd Edition, 1998, Tall Oaks Publishing Inc.)の定義による)を有する特定の官能基を付着させることである。これは、特定の流体から希望の汚染物質を特定の組合せで除去できるように、カーボンナノチューブのゼータ電位または等電点(ゼータ電位がゼロになるpH)を調整する作用がある。
【0036】
[058] 別の実施形態では、カーボンナノチューブは、それに付着しているか、またはその中に位置している、流体中の汚染物質の除去および/または変性を助ける効果のある分量の原子、イオン、分子またはクラスターを含む。
【0037】
[059] 本明細書に記載のカーボンナノチューブは、流体から除去されたり流体中で変性させられたりする汚染物質同様に、その特性の改変のために処理されることもある。例えば、一実施形態では、カーボンナノチューブは、酸素を含む気体、硝酸、硫酸、過酸化水素、過マンガン酸カリウムおよびその組合せから選ばれるがこれに限定されるものではない酸化剤で化学的に処理される。酸化剤で処理されたナノチューブは、流体の流れまたは堆積流体中におけるナノチューブの分散に関して、または官能基化の観点から(例えば特に官能基化される能力があるなど)、独自の特性を提供することができる。
【0038】
[060] 本明細書で使用する場合、「官能基化された」(またはその活用形)とは、ゼータ電位など、ナノチューブの特性を改変することのある原子または原子グループが表面に付着したカーボンナノチューブを言う。官能基化は一般に、ウェットケミストリー法または蒸気、気体またはプラズマ処理などの化学技術、およびマイクロ波を利用した化学技術を用いてカーボンナノチューブ表面を変化させることにより、ならびにカーボンナノチューブの表面に材料を結合させる表面化学を利用することにより行われる。上記方法は、カーボンナノチューブを「活性化」させるために使用され、これは、少なくとも1つのC−C結合またはC−ヘテロ原子結合を壊し、それにより分子またはクラスターが付着する表面を提供することとして定義される。図3に示すように、官能基化されたカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの外側の側壁などの表面に付着したカルボキシル基などの化学基を含む。さらに、ナノチューブの官能基化は、官能基がナノチューブに連続的に付加されて特定の所望の官能基化ナノチューブとなる多段階の方法によっても生じる。
【0039】
[061] 官能基化カーボンナノチューブでは、カーボンナノチューブの表面で、各種官能基の種類または種等の官能基の組成および/または密度がばらつくことがある。同様に、官能基化カーボンナノチューブでは、カーボンナノチューブ表面で、官能基がほぼ均一な傾きを示すこともある。例えば、1つのナノチューブの下の方か、複数のナノチューブを集めた中かのいずれかに、多くの異なる官能基(すなわち、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミド、アミン、ポリアミンおよび/または他の化学官能基)および/または官能基化密度が存在することがある。
【0040】
[062] さらに、ファイバおよび/またはナノ粒子などのナノメッシュの他の構成要素も、ゼータ電位および/または架橋能力を変化させ、それによりナノメッシュの濾過性能を改善するため、化学基、デコレーション、コーティングまたはその組合せにより官能基化されることがある。
【0041】
[063] 特定の多段階官能基化を行う例を限定することなく挙げると、カーボンナノチューブのゼータ電位を制御させ、ウイルス除去能力を改善することが挙げられる。カーボンナノチューブは酸を混合した中で還流される。いかなる理論にも拘束されないが、こうした工程により、ナノチューブ表面の欠陥の数が増加し、欠陥箇所に付着するカルボキシル官能基が増えたり、水中のカルボキシル官能基の負の電荷のためにナノチューブのゼータ電位が変化したりすると考えられている。
【0042】
[064] カルボキシル官能基化ナノチューブを、次いで、窒素雰囲気中で塩化チオニル溶液の中で還流することができる。いかなる理論にも拘束されないが、この行為により、それまで付着していたカルボキシル官能基が塩化アシル官能基に転化すると考えられている。続いて、こうした塩化アシル官能基化ナノチューブは、再度窒素雰囲気中で、エチレンジアミン溶液の中で還流される。これにより、ジアミン末端のアミン基を塩化アシル官能基と反応させ、塩化アシル官能基を、塩素原子をジアミンのアミン基1個に置換することにより2−アミノエチルアミド官能基に転化させるものと考えられている。アミン基を用いたナノチューブの官能基化が終わると、水中でナノチューブに正の電荷が分与され、ゼータ電位が正になるか、または負の程度が軽減される。上記内容から、この種のナノチューブで構成されたナノメッシュ装置で、負の電荷を帯びた汚染物質(陰イオン、一定の分子、ウイルスの粒子など)をファンデルワールス力および/または静電気の力で捉えるように特に目標とし、汚染された流れからこうした物質を除去することができる。
【0043】
[065] 別の実施形態では、有機受容体および/または無機受容体より構成される官能基のための表面積の大きい分子骨格のためか、または、天然または生物工学により設計された細胞(バクテリア、ナノバクテリアおよび極限バクテリアなど)に構造を与え、又はこれら支持るために、カーボンナノチューブを利用することもできる。ナノバクテリアの例としては、炭酸塩堆積物と岩との中にいるナノバクテリアの概念が挙げられ、参照により本明細書に組込まれる以下の参考文献で見ることができる。すなわち、R.L.Folk著、J.Sediment.Petrol.63:990−999(1993)ならびにR.H.Sillitoe、R.L.Folk、N.Saric著、Science 272:1153−1155(1996)である。有機受容体および/または無機受容体は、流体の流れから特定の汚染物質を選択的に除去することを目標とする。ナノチューブに支持された天然細胞または生物工学設計された細胞は、生物学的に活発な特定の汚染物質を消費し、新陳代謝させ、中和し、生物学的に鉱化させる。例えば、石油流出の毒性を削減することのできる、ナノチューブに付着した特定の微生物がいる。
【0044】
[066] 本発明の別の態様では、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ材料、またはそのサブアセンブリを、放射線で処理してもよい。放射線は、電磁放射線、および/または電子、放射性核種、イオン、微粒子、クラスター、分子またはその組合せから選択される少なくとも1つからの照射を選択できるが、これに限定されるものではない。前述の通り、放射線は、1)少なくとも1個の炭素―炭素結合または炭素―ヘテロ原子結合を破壊する、2)ナノチューブとナノチューブとの間で、ナノチューブから他のナノメッシュ成分へ、またはナノチューブから基体へ架橋を行う、3)粒子の注入、4)カーボンナノチューブの化学処理を改善する、のいずれかかその組合せを生じさせるのに十分な量でカーボンナノチューブに照射される。放射線照射により、ナノチューブに差異のある被爆量を与え(例えば放射の透過量の差異により)、これによりナノメッシュ構造内に均一でない欠陥構造が生じる。これは、カーボンナノチューブに付着した様々な官能基を通じて、様々な特性を提供するために用いることができる。
【0045】
[067] 本明細書に記載のカーボンナノチューブは、一定の有益な特性を達成するため、所望の材料を充填または浸透させることができる。「充填する」または「浸透させる」といった用語は相互に交換して使用でき、利益のある物質を少なくとも部分的には充填したカーボンナノチューブに対して用いる。カーボンナノチューブに充填されたか、浸透させられた物質は、一般的に、ナノメッシュの濾過性能を改善でき、特にその用途の目標を定め直すことができる。限定せずに例を挙げると、特定汚染物質用に対してナノチューブの親和力を強めることによる濾過の改善などが挙げられる。例えば、水中の砒素錯体などの陰性の汚染物質を除去するために物品を用いる場合、カーボンナノチューブをまず陽性の物質に浸漬する。図4はある物質で充填されたカーボンナノチューブを例示している。
【0046】
[068] さらに、本開示によれば、流体からの汚染物質の除去を助けたり、機構的強度、容積導電率、ナノメカニカル特徴といった他の性能特徴を増強したりする材料および/または微粒子でコーティングまたはデコレーションすることにより、カーボンナノチューブを修飾することができる。官能基化カーボンナノチューブとは異なり、コーティングまたはデコレーションしたカーボンナノチューブは、官能基とは違って必ずしもナノチューブと化学的に結合していない材料および/または粒子の層で被覆され、この層が、ナノメッシュの濾過性能を改善できるようにナノチューブの表面積を覆っている。
【0047】
[069] 本明細書に記載の物品で使用されるカーボンナノチューブには、流体からの汚染物質の除去を助けるための成分をドーピングすることもできる。本明細書で言う「ドーピングした」カーボンナノチューブとは、六角形の炭素を巻物状にしたシートの結晶構造の中に炭素以外のイオンまたは原子が存在することを言う。図5に例示するように、ドーピングしたカーボンナノチューブとは、六角形の環のうち少なくとも1個の炭素が炭素以外の原子に置換されていることを意味する。
【0048】
[070] 別の実施形態では、本明細書に記載のカーボンナノチューブは、原子または分子の1つまたは複数のクラスターでデコレーションできる。本明細書で「デコレーションされた」とは、部分的にコーティングされたカーボンナノチューブを言う。「クラスター」とは、化学的または物理的な結合により付着した少なくとも2個の原子または分子を意味する。
【0049】
[071] クラスターは、量子ドットの特性を示し、その結果、幅広い吸収スペクトルと狭い発光ピークを有する、光安定性で波長可変のナノクリスタルとなる。クラスターは、量子ドットを含めて、金属、非金属およびその組合せから構成される。こうした付着クラスターが光活性化して、汚染物質を除去、無力化または破壊する。量子ドットは非常に小さいため電子1個の付加または除去も検知できる粒子であり、何らか有用にその特性を変化させる。一実施形態では、量子ドットは直径が数ナノメータの半導体結晶であって、ナノクリスタルとも呼ばれ、その小ささのため、数ナノメータの領域に三次元で電子を閉じ込めるポテンシャル井戸のような挙動をする。
【0050】
[072] 分子は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、セシウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、ビスマスの中から選択される少なくとも1個の金属原子、ならびに水素、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、珪素、リン、硫黄、塩素、臭素、アンチモン、ヨウ素およびその組合せの中から選択される少なくとも1つの非金属原子を含む無機化合物などである。
【0051】
[073] 分子またはクラスターには、少なくとも1つのペプチド結合により結合されるアミノ酸から構成される天然重合体などのたんぱく質、炭水化物、重合体、芳香族アルコール類または脂肪族アルコール類、および、RNAおよびDNAなどの核酸または非核酸を含む有機化合物も含まれる。
【0052】
[074] 有機化合物の例を限定せずに挙げると、カルボキシル、アミン、アレーン、ニトリル、アミド、アルカン、アルケン、アルキン、アルコール、エーテル、エステル、アルデヒド、ケトン、ポリアミド、ポリアンフィフィル、ジアゾニウム塩、金属塩、ピレニル、チオール、チオエーテル、スルフヒドリル、シランおよびその組合せの中から選択される少なくとも1つの化学基を挙げることができる。
【0053】
[075] 重合体材料、セラミック材料、金属材料および生体材料の前述のリストには、カーボンナノチューブを充填するか、官能基化するか、コーティングするための同じ材料が包含されている。こうした材料は、カーボンナノチューブの表面に故意に欠陥が設けてあった方が容易にカーボンナノチューブに付着または配置することができることが分かったる。
【0054】
ナノメッシュに含まれるファイバ
[076] 本明細書に記載のナノメッシュは、処理中、カーボンナノチューブの分散(または剥離)を維持する働きをするファイバからも構成することができる。こうしたファイバは犠牲的になる(化学処理、熱処理などにさらに処理される間に構造から取除かれる)こともあり、また、完成した装置の不可欠の一部分として残ることもある。一般にはこうしたファイバの直径は、10nmから100μmなど、1nmから1mmの範囲内である。
【0055】
[077] 本明細書で用いる場合、「ファイバ」とは、長さLと直径DについてLがDよりも大きいものを意味する。ここで、Dはファイバの断面を示す円の直径である。例えば、アスペクト比L/D(または形状ファクター)が、5から107、およびさらに5から106など、2から109の間で選択される。
【0056】
[078] 本明細書で開示する構成で使用するファイバは、合成または天然の無機または有機のファイバとすることができる。これらは短くても長くてもよく、個別でも組織的でも、例えば編んであってもよく、中空でも中身がつまっていてもよい。これらはどんな形状でもよく、意図される特定の用途によって、例えば、断面が円形または多角形(四角形、六角形または八角形)であってもよい。
【0057】
[079] ファイバは、例えば20nmから1cmなど、10nmから10mの範囲内の長さである。その断面は例えば1nmから1mmに分布する直径を有する円の範囲内とすることができる。
【0058】
[080] ファイバは、絹繊維、綿繊維、ウール繊維、亜麻繊維、羽毛繊維、または例えば木材、豆類または藻類から引き出したセルロース繊維といった、バイオミネラリゼーションまたはバイオ重合に由来する織物製造に用いるものとすることができる。
【0059】
[081] 本開示では、医療ファイバも使用することができる。例として、再吸収合成繊維としては、グリコール酸とカプロラクトンから調製したもの、乳酸とグリコール酸の共重合体である再吸収合成繊維、ならびにポリテレフタリックエステル繊維などがある。ステンレス鋼糸などの再吸収されない繊維も使用することができる。
【0060】
[082] ファイバは以下のものから選択することができる。
【0061】
[083] (a)ナイロン、アクリル、メタクリル、エポキシ、シリコーンゴム、合成ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アラミド(すなわちケブラーRおよびノーメックスR)、ポリクロロプレン、ポリブチレンテレフタル酸塩、ポリ−パラフィレンテレフタルアミド、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、およびポリエステルエステルケトン、ポリエステル類(例えばダクロンなどのポリ(エチレンテレフタレート))、ポリテトラフルオロエチレン(すなわちテフロンR)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、バイトンフッ素ゴム、ポリメタクリル酸メチル(すなわちプレキシガラスR)、ポリアクリロニトリル(すなわちオルロンR)、ならびにその組合せなどの単成分または多成分重合体から選択される少なくとも1つの重合材料、
【0062】
[084] (b)炭化ホウ素、窒化ホウ素、尖晶石、ガーネット、フッ化ランタン、フッ化カルシウム、炭化珪素、炭素およびその同素体、酸化珪素、ガラス、石英(quartz)、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ホウ化ハフニウム、酸化トリウム、菫青石、ムライト、フェライト、サファイヤ、凍石、炭化チタン、窒化チタン、ホウ化チタン、炭化ジルコニウム、ホウ化ジルコニウム、窒化ジルコニウムおよびその組合せの中から選択される少なくとも1つのセラミック材料、
【0063】
[085] (c)アルミニウム、ホウ素、銅、コバルト、金、プラチナ、パラジウム、珪素、鋼、チタン、ロジウム、イリジウム、インジウム、鉄、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、タングステン、ニオブ、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、銀、ジルコニウム、イットリウムおよびその酸化物、水素化物、水酸化物ならびにその合金から選択される少なくとも1つの金属材料、
【0064】
[086] (d)綿、セルロース、ウール、絹、および羽毛ならびにその組合せから選択される少なくとも1つの生体材料またはその誘導体、
【0065】
[087] (e)ナノ角状、ナノらせん状、ナノスプリング状、デンドライト状、樹木状、放射状ナノチューブ構造、ナノチューブY分岐、竹状または多数の糸を撚り合わせた渦巻状の、入れ子形態または非入れ子形態のシングルウォール、ダブルウォールまたはマルチウォールのカーボンナノチューブから選択される少なくとも1つのカーボンナノチューブ、
【0066】
[088] (f)少なくとも1つの金属酸化物または金属水酸化物のナノワイヤ。例えば、金属酸化物のナノワイヤは、反応容器中で金属線を酸素と共に230℃から1000℃の範囲の温度にまで、30分から2時間加熱することにより調製できる。ナノワイヤは、供給原料としてすでに述べたいずれかの金属で作成したマクロスケールのワイヤを用いることにより成長する。結果として得られる金属酸化物のナノワイヤは、直径が、1〜100ナノメータ、例えば、1〜50ナノメータ、例えば2〜5ナノメータの範囲とすることができる。この方法の利点は、基礎となる線材の表面が磨り減っていて表面の肌理が粗いため、ナノメッシュの内部にナノチューブが付着しやすくなり、物質の浄化性能が強化されることである。こうした金属酸化物または金属水酸化物も、市場の業者から入手することができる。
【0067】
装置に用いる基体
[089] 一実施形態では、物品は、差圧方法を用いてカーボンナノチューブを堆積させるための多孔質の支持基体を含む。多孔質の支持基体は、ブロック、管(または筒)、シートまたはロールなど、結果としての物品の形状に合ったいかなる形でもよく、セラミック、カーボン、金属、合金、プラスチックまたはその組合せから選択される材料で構成できる。一実施形態では、基体は織った、または織っていない繊維材料である。
【0068】
[090] さらに、基体がシートの形を取る場合、基体は平らまたは平面のシートであっても、ひだのついた形(図6)であってもよい。ひだのある形は、汚染流体に暴露されるナノメッシュの表面積を増やすために選択される。
【0069】
[091] 一実施形態では、基体はナノメッシュが堆積した材料のロールである。この方法ではロールを連続的または半連続的な形で一連の堆積その他の処理ステーション中をスクロールさせることができる。
【0070】
[092] ナノメッシュがロール方法で作られる別の実施形態では、これを用いて中空で多孔質の円筒、ブロックまたは他の支持構造に巻きつき、図7に示すフィルタ媒体を形成する。
【0071】
[093] 別の実施形態では、多孔質の管状基体が、活性炭(塊または繊維)などのカーボン材料を含み、その外側表面が本明細書に記載のカーボンナノチューブでコーティングされている。
【0072】
[094] 別の実施形態では、上述のように作成された金属酸化物または金属水酸化物のナノワイヤの集合を、差圧堆積方法を用いてカーボンナノチューブを堆積させるための基体として用いることができる。結果として得られるナノワイヤ/カーボンナノチューブのナノメッシュは、構造的な一体性の強化および/または物品の浄化性能の改善のため、熱処理、機構的処理、または化学処理を行ってもよいし、行わなくてもよい。化学処理としては、化学基、金属、セラミック、プラスチックまたは重合体による、最終的に得られるナノメッシュの官能基化、コーティングまたはデコレーションなどが挙げられる。さらに、こうした化学処理は、ナノメッシュ物品が汚染物質と化学的または物理的に反応または相互作用して、これを破壊するか、変性させるか、固定、除去または分離するように行われる。
【0073】
[095] 他の実施形態では、差圧堆積方法で用いられる多孔質の支持基体は、製紙に類似した方法でナノメッシュを形成するための堆積の際に、犠牲的に用いてもよいし、単に一時的に用いてもよい。
【0074】
装置の他の明示事項
[096] 物品の別の実施形態は、特定の汚染物質の分布を除去するため、または物品の他の性能特徴を改善するために、それぞれがゼータ電位その他の手段により具体的かつ独立に調整された、多数のナノメッシュの層を含む。「その他の手段」とは、多孔率、汚染物質との親和性(例:ナノメッシュ構成要素、特定汚染物質の受容体の官能基化)、強度(例:使用する接着剤、架橋剤)など、ナノメッシュ層の具体的な特性の調整を意味することを意図している。
【0075】
[097] 別の実施形態では、ナノメッシュは、物品の濾過性能を改善する働きをする接着剤(ポリビニルアルコールなど)を含んでいる。このような接着剤は、ナノメッシュ構造の形成前に、カーボンナノチューブおよび他のナノメッシュ構成要素を含む懸濁液中に導入することができる。
【0076】
[098] 別の実施形態では、ナノメッシュは自己集合過程を利用して形成することができる。「自己集合」とは、ナノメッシュの構成要素が自ら整列して最終的なナノメッシュ構造になることを意味する。これは、官能基、表面電荷分布、分散剤の組成または特性またはその組合せの選択を通じて、電気的、磁気的、化学的および幾何学的な制約を制御することにより達成される。例えば、ナノメッシュ構成要素の表面電荷分布を調整することでその電気的挙動を制御でき、これにより、集合したナノメッシュの構造の中でそれらがどのように整列するかを決定する。この自己集合は、除去特性、多孔率、電気抵抗、流体の流れへの抵抗、強度特徴またはその組合せを改善する、ナノメッシュ内の強化された構造組織へと導くものであれば、どのような形態であってもよい。
【0077】
[099] さらに、上記の自己集合は、外界からの強制により「指揮」することができる。このように適用された外界が、一部または全部のナノメッシュ構成要素および/または構成要素が懸濁されている流体の特性と共に作用して、集合体を導いて、最終的にナノメッシュになるようにする。例えば、ナノメッシュの構成要素の一部または全部を含む懸濁液に、ナノメッシュの形成中、電磁的な刺激を与えて、所望の構成要素の配列および/または編成を達成し、流体浄化性能を強化することができる。
【0078】
作用のメカニズム
流体の滅菌
[0100] いかなる理論にも拘束されることを願わないが、本明細書に記載のナノメッシュは、流体の流れから微生物および他の病原体をまず引付け、次に変性させるか分離する化学的および物理的な力を用いる独特のナノスケールの相互作用ゾーンを形成すると考えられている。例えば、流体の滅菌中、微生物がナノメッシュに接触すると、微生物に作用する集中的な力が生じることになると考えられる。こうした力はまず細胞を引付け、次にその付着および/または変性のいずれかを引き起こす。この変性が細胞膜の崩壊または細胞内部の損傷を伴い、そうして微生物またはその繁殖能力を無力化または破壊することが可能である。このようにして、微生物に関して流体を効果的に滅菌することができる。一般的な微生物は全長1〜5ミクロンの大きさであり、つまり、カーボンナノチューブなどのナノ構造の少なくとも100倍の大きさである。こうした微生物として知られている例は、大腸菌、コレラ菌、チフス菌、志賀赤痢菌、クリプトスポリジウム、ランブル鞭毛虫、赤痢アメーバおよびその他多数がある。水を媒介して伝染すりウイルスの例としては、ポリオ、A型肝炎、ロタウイルス、腸内ウイルス、およびその他多数がある。化学剤の例としては、イオン、重金属、農薬、除草剤、有機および無機の毒素、微生物毒素(ボツリヌス中毒を引き起こすものなど)などがあるが、これに限定されるものではない。
【0079】
[0101] 大きさが大幅に異なるため、ナノスケールにかかる力は、ミクロスケール、またはマクロスケールテクノロジーに基づく力と比べて、桁違いに強い。集光によりレーザ光線を強くする方法と同様に、力が収束することで、ナノスケールでの微生物を引付ける力および/または破壊する力が強くなるのである。こうして、大きな規模では効果を発揮するには小さすぎるか、または多大のエネルギーを消費するような機械的および電気的な力を、ナノスケールでは、微生物の効果的かつ効率的な除去または破壊に用いることができる。
【0080】
[0102] このナノの世界で微生物を吸着して破壊することができると考えられているメカニズムは、独立して作用することも、別のものと共同で作用することもある。限定せずにそうした例を挙げると、次のようなものがある。
[0103]−集束した力を利用した細胞壁への機械的浸透および/または細胞壁の摩擦
[0104]−細胞壁および移動路への外的な損傷、および/またはDNA、RNA、蛋白質、細胞小器官等への細胞内部の損傷のいずれかを引き起こす振動波
[0105]−セル構造に損傷を与える、カーボンナノチューブ周囲の液体における衝撃波によるバブルキャビテーション
[0106]−生物学的汚染物質を捕捉する電磁力、静電気、ファンデルワールス力
[0107]−ゼータ作用を利用してナノ構造近くで水素結合を破壊し、細胞壁および/またはDNAに損傷を与える
[0108]−特定のナノチューブを官能基化して水中で自然発生するH+イオンを引付けることによりナノ構造の周辺環境が酸性化され、細胞壁および/またはDNAが損傷する
【0081】
[0109] 一般的な微生物の細胞内の浸透圧は周囲の流体の圧力よりも高いため、非生理学的な条件を想定すると、細胞壁に対する些細な損傷であっても、高圧から低圧へと細胞の内容物が流出するため、全体的な破裂を引き起こすことができる。さらに、ウイルスまたは微生物の細胞のDNAに十分な損傷を与えれば、少なくとも1つの微生物について、繁殖力か、または増殖細胞に感染させる能力を破壊し、感染を引き起こせないようにすることができる。
【0082】
ナノ電子流体浄化
[0110] 本開示によれば、流体浄化に関する別の方法も、ナノメッシュ物品に基づいている。この場合、静電界または電磁界がナノメッシュに課され、流体の浄化を制御する。静電気分離装置の挙動のように、ナノメッシュに電位をかけることでナノスケールの汚染物質を除去できる。さらに、この方法は逆に、フィルタ物品を清潔にする際にも使用できる。
【0083】
[0111] また、ナノメッシュ全体を動電磁界で刺激することができ、適切に調整してあれば、これによりナノメッシュ全体に振動を起こすことができる。こうした振動は、微生物に損傷を与える効果があり、また、超音波自浄効果を誘発する。これに関連して、本発明の物品の有用性は、強度の高さ、剛性の高さ(ヤング率が大きい)、導電率の高さ、そしてナノチューブの圧電特性を利用していることである。
【0084】
[0112] さらに、一部の用途については、より一般化した電磁界をかけることで既存技術を超える流体浄化性能を実現することができる。例えば、導電性のあるナノメッシュ層が2層ある場合、電流をかけるとナノメッシュ層間に磁界が生じる(図8)。この磁界を調整して、流体の流れから電荷を有する微粒子すべてを捕らえることができる。
【0085】
液体の脱塩
[0113] 本開示によれば、液体の脱塩工程も、記載したナノメッシュ物品に基づいている。記載したナノメッシュを用いて液体の脱塩ができると考えられているメカニズムは、2つ以上のナノメッシュ膜に電圧差をかけることである。この場合、一方のナノメッシュ膜が正の電荷を帯び、他方のナノメッシュ膜が負の電荷を帯びている。電位をかけると、陽イオンは負の電荷を帯びた膜の方へ移動していき、陰イオンは正の電荷を帯びた膜の方へ移動していく。カーボンナノチューブの表面積は大きい(1000m2/グラム)ので、ナノメッシュ膜全体に対する電圧差の印加により、非常に静電容量の高い装置を作り出すことになり、それにより効率的で、小型で、可逆のイオン分離ゾーン(すなわちイオントラップ)ができる。
【0086】
[0114] 脱塩ユニットには、支持された導電ナノメッシュ2層以上を平行に、電気的に互いに絶縁された状態で組み込むことができる。2層以上の層は、静止モードまたは活性モードのいずれかで電荷を帯びることができる。静止モードでは、例えば、ナノメッシュ層は反対の電荷を帯び、間に塩トラップを作る。4層以上の層を有する活性モードの装置では、例えば、四相の信号が複数層のナノメッシュ構造に印加され、信号の4本の脚が4つの連続したナノメッシュ層に印加される。このパターンが4つのナノメッシュ毎に繰返される(図9)。このようにして、それぞれのナノメッシュ層上およびデバイス全体に対する電荷は時間と共に順次、陽性から中性に、中性から陰性に、そして中性にと移行する。これを時間と共に順次行うと、そこに通すことで水の流れとは異なる方向に塩イオンを移動させることのできる装置の中に、電子的に、移動する仮想のコンデンサが作り出される。濃縮された塩水は、仮想コンデンサの末端に集まって装置の塩水ポートから流出し、その一方で、真水が装置を通過する。
【0087】
[0115] 実際には、水分子の極性を持つ性質のために、水溶液中のイオンは、その電荷が、周囲を取り囲む水分子の集まりに保護されていて、この様子は図10示すようなデバイ雰囲気と呼ばれる。この水分子の集団がイオンが動くにつれて一緒に移動するため、イオンの有効質量とイオン半径を増やす働きをする。そこで、脱塩装置内の膜の層に(イオンの分離を誘導するために必要な周波数と比較して)高い周波数のAC信号が印加する。この高周波数信号の目的は、溶液中でイオンを守っているデバイ雰囲気を破壊することである。この水分子の殻を外すことにより、イオンは小さくなって嵩が減ったように見え、流体中を移動する際の抵抗が少なくなる。本発明のこの態様により、脱塩装置の効率が改善される。
【0088】
[0116] また、本明細書に記載の脱塩装置は、上述のように、得られる真水を浄化するためにナノメッシュ構造の生物学的除去特徴を利用して設計することができるであろう。
【0089】
バイオフィルムの防止
[0117] 本開示の1つの態様によれば、汚染微生物の付着と成長によりバイオフィルムが生じやすい表面をナノマテリアルの層でコーティングし、カビやバクテリアなどの望まれない要素の付着またはその後の成長を防止することができる。こうしたナノマテリアルの例を限定せずに挙げると、抗菌特性を有する元素または化合物(ヨウ素樹脂、銀、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、トリクロサン)で、表面に付着しているか、カーボンナノチューブ内部にあるか、または他のナノメッシュ構成要素に付着しているものが挙げられる。
【0090】
本発明で除去できる汚染物質の種類
[0118] 開示した物品を用いて流体から除去できる汚染物質の例を挙げると、病原性微生物[ウイルス(例えば天然痘および肝炎)、バクテリア(例えば炭疽菌、発疹チフス、コレラ)、接合子嚢、胞子(天然のものも兵器化されたものも)、カビ、菌類、大腸菌および腸内寄生虫など]、生体分子(例えばDNA、RNA)ならびに他の病原体[プリオン、ナノバクテリアなど(天然のものでも合成のものでも)]などの生物学的薬剤があるが、これに限定されるものではない。
【0091】
[0119] 「プリオン」とは、核酸および他のほとんどの蛋白質を修飾する方法による不活性化に抵抗する、小型で感染性、蛋白性の微粒子として定義される。人間も動物もプリオン病にかかり得る[牛の海綿状脳症(BSEまたは狂牛病)、または人間のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)など]。
【0092】
[0120] 「ナノバクテリア」とは、ナノスケールのバクテリアであり、一部は最近、人間にも動物にもバイオミネラリゼーションを引き起こすと主張された。さらに、ナノバクテリアは腎臓結石、一部形態の心臓病、アルツハイマー病の成立でも役割を果たしていると主張された。また、ナノバクテリアは、一部の工業工程で、望まれないバイオミネラリゼーションおよび/または化学反応を引き起こしているとも疑われている。
【0093】
[0121] 開示した物品を用いて流体から除去できる汚染物質その他の例を限定せずに挙げると、天然および合成の有機分子(毒素、エンドトキシン、蛋白質、酵素、農薬および除草剤)より構成される、有害か、危険か、または発がん性のある化学薬品、無機汚染物質(重金属、肥料、無機毒など)およびイオン(海水中の塩または帯電した空気で運ばれる微粒子など)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0094】
[0122] 清浄化した流体、特にきれいな水の用途としては、飲料水、灌漑、医療用および工業用などがある。例えば、半導体製造、金属めっき、一般化学産業が挙げられるがこれに限定されない工業用工程および実験用途での脱イオン水の原料として利用できる。
【0095】
[0123] さらに具体的には、本明細書に記載の物品を用いて流体から除去できる化学的化合物としては、以下の元素から選択される少なくとも1つの原子またはイオンを含む除去対象原子または分子が挙げられる:アンチモン、砒素、アルミニウム、セレン、水素、リチウム、ホウ素、炭素、酸素、カルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素、ニオブ、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、臭素、ストロンチウム、ジルコニウム、イットリウム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、ヨウ素、銀、カドミウム、インジウム、セシウム、スズ、バリウム、ランタン、タンタル、ベリリウム、銅、フッ化物、水銀、タングステン、イリジウム、ハフニウム、レニウム、オスミウム、プラチナ、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、ラドン、ラジウム、トリウム、ウラン、プルトニウム、ラドンならびにその組合せ。
【0096】
発明の一般的な構成
[0124] 本開示の別の態様は、官能基化カーボンナノチューブを含むナノメッシュ材料など、流体から汚染物質を除去するのに用いる物品に使用するナノメッシュ材料を作成するための方法に関する。最終的には円筒形の物品で用いられる、官能基化カーボンナノチューブおよび処理済ガラスファイバを含むナノメッシュを作成する一般的な工程を図11に示す。しかし、堆積に先立ってカーボンナノチューブが追加の基体と混合されるにせよ、されないにせよ、以下の工程は、いかなる形状の物品の製造についての記述としても利用できることに注意されたい。例えば、以下に示す工程の略図において、ステップ2の「処理済ガラスファイバ」は、本明細書に記載のいかなるものから選択される別の物質と単純に置換されることがあり、ステップ4に記載の基体は、空気浄化装置に用いる場合には、単純に「円筒形の炭素ブロック」から、平らに織った基体などの望ましい材料および形状に変更される。
【0097】
[0125] 前述のナノメッシュフィルタを含む結果として得られる装置の例を、図12および図13に示す。例えば、図12はカーボンナノチューブのナノメッシュを載せた活性炭でできた中空の管を有する物品の側面斜視図である。この実施形態では、汚染された流体は、管の外壁を通って流れ、浄化された流体は中空の管の内部から装置の外に流出する。例えば、図13は、平らな、または平面状の浄化装置を示している。
【0098】
1.官能基化カーボンナノチューブの調製
[0126] 官能基化カーボンナノチューブを調製する1つの方法は、一般に、市販のカーボンナノチューブに対して、溶液中で最初の超音波分解を行うことを含む。このようなカーボンナノチューブとしては、標準的には重量パーセントで95%超の純度を有し、長さは10〜20μmなど500nmから50μmの範囲内で、直径は2〜200nmという特徴的な寸法を有する、化学気相成長(CVD)炉法などの化学的な製法により製作されたマルチウォールのカーボンナノチューブパウダーなどが挙げられる。
【0099】
[0127] 従って、超音波分解に続いて、またはこれと同時に、硝酸、硫酸、塩酸、および/またはフッ化水素酸、またはその組合せから選択されるがこれに限定されるものではない酸の中でカーボンナノチューブを処理する。こうした酸類は単独でカーボンナノチューブの洗浄に用いることができ、または様々な組合せで用いることができる。例えば、一実施形態では、カーボンナノチューブはまず硝酸で洗浄され、次にフッ化水素酸で洗浄される。別の実施形態では、カーボンナノチューブは、硝酸での洗浄の後、硫酸で洗浄される。
【0100】
[0128] 酸洗浄は、アモルファス炭素、触媒微粒子およびその支持体であってナノチューブの表面化学に干渉しそうなものなどの汚染物質を除去するために行われ、カーボンナノチューブの表面の欠陥箇所に付着する官能基(例えばカルボキシル基など)を形成する。
【0101】
[0129] この官能基化により、カーボンナノチューブは親水性をも有することになる。これは、結果として得られる物品の濾過性能を改善すると考えられている。カーボンナノチューブは、次いで最終的な蒸留水でのすすぎを行い、蒸留水などの適切な分散剤、またはエタノールまたはイソプロパノールなどのアルコールの中で懸濁させる。一実施形態では、洗浄中のナノチューブの適切な分散を維持するために、この官能基化工程の間、超音波分解、攪拌および加熱が行われる。
【0102】
2.金属酸化物で処理したファイバの調製
[0130] 一実施形態では、記載した物品で用いるためのナノメッシュを作る製法には、前述の官能基化カーボンナノチューブを、本明細書に開示する、金属酸化物(酸化鉄など)または金属水酸化物(水酸化鉄など)で処理した(コーティングまたはデコレーション)ファイバと混合することが含まれる。このような金属酸化物または金属水酸化物で処理したガラスファイバの調製には、金属酸化物または金属水酸化物を含有する溶液と、直径が0.2μm〜5μmの範囲のファイバなどの市販のガラスファイバとを混合することが含まれる。
【0103】
[0131] 一実施形態では、この製法は、ガラスファイバを、蒸留水とコロイド状の金属酸化物または金属水酸化物の溶液との混合液と共に、ガラスファイバの処理に十分な時間だけ攪拌することを含む。次いで、処理したファイバを炉で乾燥させる。
【0104】
3.懸濁液の調製
[0132] 懸濁液を作るのに用いる成分は、官能基化カーボンナノチューブ溶液と、上記の製法で調製した金属酸化物または金属水酸化物で処理したファイバである。懸濁液の構成要素パーツを調製するには、まず、官能基化カーボンナノチューブを、水かエタノールなどの適切な媒体中で、超音波分解により分散させる。金属酸化物または金属水酸化物で処理したガラスファイバも、同様に水またはエタノールなどの適切な媒体中で、容器内で上記とは別に分散される。次に、これらの別々の分散液を混合して官能基化カーボンナノチューブと金属酸化物または金属水酸化物で処理したファイバの懸濁液を調製する。
【0105】
[0133] 一実施形態では、最終的なナノメッシュの構造は、官能基化カーボンナノチューブと金属酸化物または金属水酸化物で処理したガラスファイバの別々の層を含む。こうした別々の層は、比率の異なるカーボンナノチューブと処理済ガラスファイバとから作成した別個の懸濁液から形成される。
【0106】
4.カーボンナノメッシュの堆積
[0134] 官能基化カーボンナノチューブと処理済ファイバの混合物を堆積する手順としては、本明細書に開示するいずれかのファイバの金属酸化物または金属水酸化物によるコーティングなどが挙げられる、これに限定されるものではない。例えば、ナノメッシュは差圧堆積または直接集合を用いてカーボンナノチューブと処理済ファイバの混合物から作ることができる。この実施形態では、堆積工程で、基体に差圧をかけて官能基化カーボンナノチューブと金属処理済ファイバとの懸濁液をカーボンブロック基体に堆積させる。この実施形態では、基体にかける圧力の差は、基体ブロックの内側で圧力が低くなるように調整する。この差圧により、懸濁液を含む流体を強制的に基体を通して流し、基体の外側表面にカーボンナノチューブとガラスファイバの混合物が堆積して、それによりナノメッシュを形成する。
【0107】
5.物品の組立て
[0135] ナノメッシュ材料が乾燥したら、コーティングした基体を多孔質の保護紙と目の粗いプラスチックの網で覆い、ナノメッシュ材料を保護する。次にエンドキャップを取付け、流体がナノメッシュを迂回するのを防止するため、ナノメッシュの各辺を密封する。このアセンブリは次に外部ハウジングに組み込まれ、このハウジングが密封されて、流体から汚染物質を除去する物品を形成する。外側のプラスチックハウジングのさらに内部にある、こうした最終的なナノメッシュを含むフィルタアセンブリを図19に示す。
【0108】
効果判定方法
[0136] 本明細書に記載の確立された微生物技術を用いれば、カーボンナノメッシュフィルタで、7log超のバクテリア汚染物質(大腸菌)および4log超の代用ウイルス病原体(MS2バクテリオファージ)を除去できることが実証された。こうした除去能力は、US−EPA(「Guidance Manual for Compliance with the Filtration and Disinfection Requirements for Public Water Systems Using Surface Water, U.S. Environmental Protection Agency」、1991年3月)の定めるバクテリア除去の要求条件およびウイルス除去の推奨レベルを超えている。本発明の物品の独立した試験では、この物品が米国における水の浄化の基本的な基準を満足することが確認された。
【0109】
[0137] 大腸菌などのバクテリアおよびMS2バクテリオファージなどのウイルスを用いて、おおむね上に述べた方法で作成したサンプルについて、多数の試験を行った。MS2バクテリオファージは、一般に飲料水のウイルス除去能力について装置を評価する際に代用品として使用されるが、これは雄特異の一本鎖RNAウイルスで、直径0.025μm、形状は二十面体である。その大きさおよび形状は、ポリオや肝炎ウイルスなど、他の飲料水媒介ウイルスに似ているが、MS2バクテリオファージは人間の病原体ではない。
【0110】
[0138] 以下の例すべてで大腸菌バクテリアおよびMS2バクテリオファージの水からの除去試験に用いているプロトコルは、(i)Standard Operating Procedure for MS2 bacteriophage Propagation/Enumeration. Margolin, Aaron, 2001, University of New Hampshire, Durham, NHおよび(ii)Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater, 20th Edition, Standard Methods,1998,APHA,AWWA,WEF,Washington,DCに一致し、これにおおむね忠実に従っている。上記文書は、参照により本明細書に組み込むものとする。
【0111】
[0139] 上述の方法を用いると、以下の例に示すように、バクテリアとカーボンナノチューブとの間には強い付着力が観察される。例えば、バクテリアはカーボンナノチューブ表面に、特に超音波分解中に分散された場合、に付着する。開示のカーボンナノチューブのナノメッシュにこれを通したとき、大腸菌(E.coli)の懸濁液と同じ付着が起こると考えられる。
【0112】
[0140] また、バクテリアの細胞の完全性がカーボンナノメッシュとの相互作用により部分的に危うくなるかもしれない証拠が観察された。例えば、本明細書に記載のカーボンナノチューブの存在下のバクテリアを電子顕微鏡で観察すると明らかになる画像では、バクテリアの殻/細胞壁で、明らかな浸食を示している部分がある。長時間(24時間)置くと、明らかに細胞壁の一体性が下の方から崩壊し始め、細胞の内外で浸透圧が異なるために、細胞壁の大きな破損ならびにバクテリアの分解が生じる。しかし、この細胞の完全性の崩壊は、相顕微鏡の光学顕微鏡により観察される通り、カーボンナノチューブとの接触後、即座に生じた様子であった。
【0113】
[0141] さらに試験を重ねて、一部バクテリアの崩壊を確認した。これは、少なくとも少量のフリーバクテリアDNAおよび蛋白質が濾液中に存在することにより証明される。しかし、ほとんどのバクテリア細胞は、ナノチューブとの接触直後は無傷のままの状態である。本発明のナノメッシュ物品により、流出する流れから効果的にバクテリアを除去できることが実証済みだが、ナノチューブのバクテリア細胞を殺す能力については、可能性は高いものの、まだ確立されていない。
【0114】
[0142] さらに、本発明の物品の他の試験で、前述したような他の汚染物質(金属、塩、有機汚染物質、エンドトキシンなど)を水および空気から除去することができる。
【0115】
[0143] 本発明は、以下に示す非限定的な例によりさらに明確になるであろう。これらの例は純粋に本発明の例を示すことを意図している。
【0116】
実施例#1 大腸菌(E.coli)とカーボンナノチューブとの相互作用
[0144] 大腸菌バクテリアの培養菌とカーボンナノチューブの懸濁液との相互作用を調査して、カーボンナノチューブがバクテリアの細胞に付着し、次いでこれを無力化または破壊する効果を測定した。さらに、この研究により、本発明のナノ浄化物品において働いているメカニズムを見抜くことができるだろう。手順として、バクテリア培養菌を含む未処理サンプルを、カーボンナノチューブを混合したサンプルと比較した。比較は、光学顕微鏡および原子力顕微鏡の両方の技術を用いて高い倍率のもとで行う。
【0117】
大腸菌懸濁液の調製
[0145] 大腸菌懸濁液は、滅菌した生物学的ループ(市販品)を用いて作成され、再構成された菌株[米国微生物系統保存機関(ATCC)から入手できる。微生物株番号ATCC#25922]で満たされたループを取出した。これを市販の血液寒天培地のプレートに筋のように付けた。このプレートを、この後、36℃で12時間から18時間培養し、培養器から取外して、純度を検査した。
【0118】
[0146] 滅菌した生物学的ループ(市販品)を用いて、培養した菌で満たされたループ1つを取出し、10mlの滅菌した市販のトリプシン大豆培養液(レメル社カタログ番号07228)の中に置いた。大腸菌を、得られたトリプシン大豆培養液で、温度37℃で18時間培養し、次に遠心分離と懸濁を行って、純水中に1ml当たりおよそ5の109倍のコロニー形成単位(cfu)を含む濃縮されたバクテリア培養株を作り出した。
【0119】
硝酸を用いたカーボンナノチューブの官能基化
[0147] カーボンナノチューブは、硝酸溶液で処理して汚染物質(アモルファスカーボン、触媒粒子およびその土台であってナノチューブの表面化学に干渉する可能性のあるもの)を除去し、ナノチューブの結晶欠陥箇所の数を増やして、こうした欠陥箇所にカルボキシル化学基を付着させる。この官能基化により、カーボンナノチューブに親水挙動も与えられる。
【0120】
[0148] 処理としては、浄化したナノチューブ250mgを、総量35mlの濃硝酸と遠心管内で混合し、よく振ってから、コールパーマー社8851超音波分解装置内で、最高出力で10分間、50℃の水浴で超音波分解を行った。硝酸/カーボンナノチューブ混合液は、上澄みがきれいになるまで(6〜10分)2,500rpmの遠心分離機にかけ、次に上澄みを別の容器に移した。硝酸処理を繰返すが、但し超音波分解は20分とした。次に、硝酸処理したカーボンナノチューブを総量35mlの蒸留水に浮かべ、10分間(上述のように)超音波分解を行い、遠心分離を行い(上述のように)、上澄みを他の容器に移すことにより、水洗いした。この水洗いはpHが少なくとも5.5になるまで(3〜4回)繰返し、毎回、超音波分解を5分間行った。
【0121】
試験溶液の調製
[0149] 上に概略を示したように調製した大腸菌懸濁液を、次に二等分した。未処理溶液(試験溶液#1)は、分割した大腸菌懸濁液の一方を蒸留水で希釈し、大腸菌濃度を〜2×109cfu/ml(2:5で希釈)にして調製した。もう一方の溶液(試験溶液#2)は、もう一方の分割された大腸菌懸濁液に官能基化ナノチューブを添加することにより調製した。次にこの溶液を、試験溶液#1と同じ大腸菌濃度になるまで、蒸留水で希釈する。この希釈により、試験溶液#2のカーボンナノチューブの濃度は625ppmとなった。
【0122】
[0150] 試験溶液#1と#2の両方について、ブランソン2510超音波分解装置で3分間、同時に超音波分解を行った。次いで、これらの試験溶液を、市販の遠心分離機を用いて2500rpmで2分間の遠心分離して、ペレットを形成し、上澄みは1mlを残して他の容器に移した。次に、試験溶液#1と#2のペレットを用いて、下記の2種類のサンプル(#1と#2)を作成する。
【0123】
サンプル#1の調製:カーボンナノチューブを含まないもの
[0151] サンプル#1は、カーボンナノチューブを含まない試験溶液の滴を市販の顕微鏡用スライドガラス(American Scientific Products社のマイクロスライド(プレーン、カタログ番号M6145、大きさ75×25mm)を硫酸で洗浄し、蒸留水ですすいだもの)にたらし、19時間にわたって4℃で冷蔵した。冷蔵後、タッピングモードでビーコ社のDimension 3100走査型プローブシステムを用いて原子力顕微鏡(AFM)で分析を行い(固定せずに)、サンプルを調査した。
【0124】
[0152] サンプル#1は、熱的に固定(短時間、裸火にかざすことにより)した上で着色(グラム染色のクリスタルバイオレット液を使用)し、水洗いした。オリンパス光学顕微鏡を用い、倍率1000xで、浸漬油の中で光学顕微鏡による観察を行った。デジタル画像はオリンパスDP10 CCDで作成した。
【0125】
サンプル#2の調製:カーボンナノチューブ処理したもの
[0153] サンプル#2は、カーボンナノチューブと大腸菌の試験溶液(試験溶液#2)の滴を上述の顕微鏡用スライドガラスにたらして(塗って)調製した。サンプルを熱的に固定し、着色した上で、上記#1と同様に光学顕微鏡観察を行った。次にサンプル#2を4℃の冷蔵庫に19時間放置し、その後これを取外して、サンプル#1と同様にAMF分析(上述の通り)を行った。サンプル#2を冷蔵庫に戻してさらに24時間置いた後、光学顕微鏡観察をもう一度行った。
【0126】
顕微鏡分析の結果
[0154] サンプル#1(カーボンナノチューブのないバクテリアの懸濁液)では、スライドの表面全体に大腸菌のバクテリア細胞が均一に分布していた(図14)。画像からさらに、バクテリアの境界線がくっきりとして、バクテリア細胞が無傷であることを示唆していることがわかる。冷蔵庫に乾燥状態で2日間保管した後も、形状に変化は見られなかった。
【0127】
[0155] カーボンナノチューブで処理した試験溶液からのサンプル(サンプル#2)についての結果は、バクテリアがカーボンナノチューブに凝集していることを示していた(図15)。ナノチューブの大多数は、スライドから余分な汚れを洗い流すときに除去された。バクテリアの集中は、カーボンナノチューブの境界部分で観察された。
【0128】
[0156] カーボンナノチューブを含まないサンプル(サンプル#1)については、多数の個別のバクテリア細胞が、スライド全体にわたって存在する。バクテリア細胞は、カーボンナノチューブを含むサンプル(サンプル#2)では、ほとんどのスライドで見られない。図15に示すように、後者の場合に存在するバクテリアは、カーボンナノチューブの周辺にしっかりとかたまって、カーボンナノチューブがバクテリアを捕らえ、保持していることを示している。
【0129】
[0157] サンプル#1では、大腸菌が近接して一緒に固まっている様子が見られた。図16に示すように、正常な細胞のバクテリア細胞は、境界が明瞭である。バクテリアの大きさおよび凝集密度の低下が、熱処理前のサンプル#1のAFM画像と、熱処理後のこのサンプルの光学画像で見られた。
【0130】
[0158] サンプル#2では、ナノチューブの近くに一部の細胞があり、大腸菌の細胞壁の境界は拡散または損傷していた。実際、ナノチューブの混合後、大腸菌細胞の中には認識できる程度を超えて崩壊したものもあった。拡散した大腸菌のかけらの存在は、ナノチューブの近くでも見られた。
【0131】
[0159] 大腸菌および官能基化カーボンナノチューブを蒸留水中で超音波分解したところ、2つの構成要素が固まりになった。これは、ナノスケールで作用した静電気とファンデルワールス力のためであると考えられる。検知できる限り、懸濁液中のすべてのバクテリアがナノチューブと接触し、付着していた。水溶液#2には、もはや自由な大腸菌細胞はなかった。これは、分散されたカーボンナノチューブの、バクテリアを強く引付けて動けなくする能力を示していた。
【0132】
[0160] 大腸菌の崩壊は、これに注目すると、細胞がナノチューブと密着した後に発生していた。結果的に、こうしたバクテリア細胞は、細胞境界の鮮明さを失った様子で、内容物が細胞から流れ出しているように見えた。例えば、図17は、カーボンナノチューブとの相互作用により破裂したバクテリア細胞の走査式電子顕微鏡(SEM)による画像を示している。
【0133】
[0161] 影響される細胞内では、このプロセスの始まりは3時間後に注目され、22時間後には内容物が非常に遠くまで広がって、細胞の形状を見分けることが困難になった。
【0134】
[0162] 運動性の高いバクテリアである蛍光菌を、室温において栄養培養液(Difco Laboratory社製)中で12時間培養し、カーボンナノチューブの溶液と混合した。暗視野の顕微鏡で見ると、運動性のあるバクテリアが近くを泳ぎ、集まっているカーボンナノチューブに引き込まれて、露出しているカーボンナノチューブのファイバにしっかりと付着する様子が観察された。接触5分以内で、カーボンナノチューブの集まりの表面全体が数百の無傷のバクテリアで覆われ、バクテリアがもがいても離れられないでいる様子からすると、しっかりと付着したのは明らかであった。こうしたバクテリアは運動性をすっかり失い、カーボンナノチューブファイバと最初に接触してから30秒以内に完全に固定された。これは、微細に分散したカーボンナノチューブファイバの、多数のバクテリアに迅速に付着して固定する能力を示していた。これにより、微生物除去におけるカーボンナノチューブフィルタの効果の基礎が確認された。
【0135】
実施例2:円筒形浄化物品
円筒形浄化物品の構成
水酸化鉄処理ガラスファイバの調製
[0163] 蒸留水23.5リットルと10N水酸化ナトリウム(NaOH)9.62mlとの溶液を作成し、1時間攪拌した。塩化鉄(FeCl3・6H2O)を添加し、最終的にpHが2.2以下になるまで攪拌した(24時間以下)。この溶液に、直径100〜500nm、長さ300〜500μmのガラスファイバ(Johns−Mansville社製)200グラムを加え、溶液中に鉄が見えなくなるまで攪拌を続けた(3時間以下)。溶液を蒸留水で希釈して、1リットル当たり10グラムの濃度のガラスファイバを得た。
【0136】
堆積懸濁液の調製
[0164] 官能基化カーボンナノチューブと、上記の通り調製した水酸化鉄処理ガラスファイバとの溶液を用いて懸濁液を用意した。懸濁液の構成要素パーツを調製するために、5gの官能基化したカーボンナノチューブ(実施例#1で述べた硝酸洗浄手順によりカルボキシル基を導入したもの)を水1リットル中で懸濁させ、コールパーマー社8851超音波分解装置内の室温の水浴に入れて、最高出力で20分間、超音波分解を行った。超音波分解した官能基化カーボンナノチューブ/水混合液に蒸留水4リットルを加え、水1mlに対して官能基化カーボンナノチューブ1mgの濃度とした。およそ100mlの鉄でデコレーションしたガラスファイバ溶液を別の容器に入れて、蒸留水1リットルで希釈した。この混合液を市販のブレンダーで5分間混ぜ合わせた。
【0137】
[0165] 最初の堆積懸濁液を混合するため、懸濁した官能基化カーボンナノチューブ(上記の通り)600mlを、ガラスファイバ溶液(重量によるCNT/ガラスの比率は5:8)960mlに加えた。この混合液を、十分な量の蒸留水を加えることにより4リットルまで希釈し、ブランソン社のモデル900Bのプローブ式超音波分解装置を使用し、最高出力で10分間、超音波分解を行った。
【0138】
カーボンナノメッシュの堆積
[0166] 最終的なナノメッシュの構造は、官能基化カーボンナノチューブと水酸化鉄をコーティングしたガラスファイバとの混合物の層をカーボンブロック基体に堆積させることにより得られた。
【0139】
[0167] 官能基化カーボンナノチューブと水酸化鉄のコーティングまたはデコレーションを施したガラスファイバとの混合物を堆積させる手順を、図18に略図として示した。円筒形のカーボンブロックを穴のあいたの回転軸に載せることによりフィルタアセンブリを作成した。堆積チャンバをカーボンナノチューブ/ガラスファイバの懸濁液(5:8の比率)で満たした。フィルタアセンブリを、フランクリン・エレクトロニクス・ヴァリアン社のトリスクロール真空ポンプに導く真空配管に接続し、次にこれを満たされた堆積チャンバ内に沈めた。フィルタアセンブリに取り付けた真空ポンプのスイッチを入れると、懸濁液全体が真空下でカーボンフィルタの基体を通って引き込まれ、外側の表面にナノメッシュを堆積させる。堆積後、堆積フィルタアセンブリを堆積チャンバから取り外し、真空ポンプに接続したままにして、堆積ナノメッシュフィルタアセンブリを真空下で1時間から2時間、窒素雰囲気内で50℃に設定した乾燥炉の中で乾燥させた。
【0140】
[0168] 完全に組み立てたフィルタ物品は、官能基化カーボンナノチューブのナノメッシュでコーティングされ、円筒形のプラスチックの網で保持された多孔質の保護紙で覆われた、中央のカーボンフィルタコアから構成された。このカートリッジには蓋をかぶせ、流体がナノメッシュを迂回するのを防止するためにナノメッシュの縁の部分を密封し、外側のハウジングの中に置いて、最終製品を作成した(図19)。
【0141】
円筒形浄化物品の効果
[0169] 汚染された水での円筒形の発明物品の流体浄化試験として、大腸菌バクテリア培養株[米国微生物系統保存機関(ATCC)から入手]を用いて試験を行う。
【0142】
[0170] バクテリア評価分析は、この例(実施例2)に従って作成したナノメッシュを、大腸菌培養株ATCC#25922で再構成した流体を用いて試験することにより行った。この試験用流体は、滅菌生物学ループ(市販品)を用いて、再構成された菌株で満たされたループを取出し、これを市販の血液寒天培地に筋状に付けることにより作成した。このプレートを次に36℃で12〜18時間培養した。次に培養装置から培養株を取出し、純度を検査した。
【0143】
[0171] 滅菌した生物学的ループ(市販品)を用いて、培養した菌で満たされたループ1つを取出し、10mlの滅菌した市販のトリプシン大豆培養液(レメル社カタログ番号07228)の中に置いた。大腸菌を、得られたトリプシン大豆培養液で、温度37℃で18時間培養し、1ml当たりおよそ1の109倍のコロニー形成単位(cfu)を含む培養株を作り出した。この培養株のサンプル1mlを、100mlの水に加えて試験に使用し、これにより濃度をおよそ1ml当たり1×107cfuに希釈した。次に、得られた試験用の水を、円筒形の浄化物品に通した。
【0144】
[0172] 試験は、上に引用した「Standard Methods for the Examination of Water and Waste Water」に従って行った。上記の実験プロトコル案に従った試験の結果によれば、検査流体を本発明のナノメッシュに通したとき、6log超(>99.99995%)から7log超(>99.999995%)の範囲で安定して大腸菌バクテリアを除去できた。この試験の結果、水からのバクテリア除去に関して、EPAの飲料水基準(既出)を超える除去率を確立した。EPA基準では、飲料水とするには大腸菌バクテリアを6log超(>99.99995%)除去することと規定している。上記のように作成した試験用懸濁液よりも大腸菌バクテリアの濃度の高いバクテリア濃度既知の溶液(すなわち試験溶液)を、ナノメッシュに通したところ、大腸菌バクテリア除去のlogの高い浄化改善を達成した。このような高濃度での試験により、7log(>99.999995%)を超える除去率が確認された。この例で説明している試験手順を用いたナノメッシュの独立した試験により、この材料が大腸菌バクテリアに対して障壁となることがわかる。さらに、独立した研究室での試験の結果としても、様々な試験バクテリア(Klebsiella terrigeneおよびBrevindomonas)の6logを超える除去率が示され、この材料がバクテリア全般に対して障壁となることが立証された。
【0145】
実施例3:平面浄化物品の製造
[0173] 実施例2と同様、平面ナノメッシュを、市販の浄化カーボンナノチューブと不織溶融ポリプロピレンファブリック基体から作成した。最初に、官能基化カーボンナノチューブ100mg(実施例#1に記載したように硝酸でカルボキシル基を導入)を市販そのままのイソプロパノールに加え、「ブランソン900B超音波分解装置」で出力を80%にして、カーボンナノチューブが十分に分散するまで(約10分間)超音波分解を行った。混合液はイソプロパノール2リットルを加えてさらに希釈し、最終的な混合物の総量が2.4リットルになるようにした。この希釈混合物についてさらに10分間超音波分解を行った。
【0146】
[0174] 次に、市販の直径200nmのガラスナノファイバ800mgを、市販のブレンダーを最高出力にして10分間、市販のままのイソプロパノール500ml中で均質化した。均質化した混合物に次に市販のままのイソプロパノールをさらに1リットル加えて希釈した。
【0147】
[0175] カーボンナノチューブとガラスナノファイバの混合物を混ぜ合わせ、次に十分な量(Q.S.)のイソプロパノールを加えて4リットルとした。この4リットルの溶液を次に「ブランソン900B超音波分解装置」で、出力80%で15分間超音波分解を行い、これによりカーボンナノチューブのナノマテリアルを均一に分散した。
【0148】
[0176] 次に、4リットルの溶液全体を、1雰囲気の差圧の下で市販の5ミクロンの不織溶融活性化カーボンファブリックに通し、カーボンナノチューブと処理済ガラスファイバのナノメッシュを堆積させた。得られたナノメッシュを製造装置から取外し、50℃の炉で2時間乾燥させた。
【0149】
[0177] 得られた平らで四角形のナノメッシュ/基体膜を、NSFに準拠したホットメルト接着剤を使って平らなハウジングの片側に糊付けする。この半分のハウジングをもう一方と噛み合わせ、糊付けして密封する。得られた装置の構造を、図13に略図として示す。
【0150】
平面浄化物品の効果の試験
a)大腸菌に汚染された水−化学分析
[0178] 以下に、本例に従って作成した平面ナノメッシュ浄化物品について、実施例2に記載したように行った大腸菌試験からの濾液の化学分析の結果を示す。この実施例は、本発明のナノメッシュを通過した大腸菌バクテリアの一部の破壊について証拠を提供した。この汚染物質(大腸菌バクテリア)一部破壊の証拠は、試験濾液にバクテリアのDNAと蛋白質が存在することにより立証された。
【0151】
[0179] 試験は、実施例2と同じ手順に従って行われたが、但し、試験溶液の組成は大腸菌〜1×108cfu/mlであった。合計100ml(計〜1×1010cfu)のこの試験溶液を、〜0.25psiの差圧をかけて、カーボンナノメッシュ/基体材料に通した。対照濾液は、大腸菌の試験濾液を市販の0.45ミクロンのミリポアフィルタに通して得た。試験濾液は凝縮されていなかった。得られた濾液、対照用および試験用、を、次に市販のスペクトル光度計で分析し、蛋白質およびDNAの存在を判定した。しかし、濾液を市販のスペクトル光度計で分析したところ、40μg/mlのDNAおよび0.5mg/mlの蛋白質が見つかった。凝縮していない試験濾液中の蛋白質とDNAがこのレベルの濃度であり、ミリポアフィルタを通して濾過することにより得た対照の材料よりも6倍高かった。これらの濃度から、ナノメッシュにより添加された大腸菌の少なくとも一部が破壊されたことが確認された。
【0152】
b)MS−2バクテリオファージウイルスで汚染された水
[0180] この例(実施例3)に従って作成された平面浄化物品を、上述の手順および「Standard Operating Procedure for MS−2 Bacteriophage Propagation/Enumeration, Margolin, Aaron, 2001, An EPA Reference Protocol」に記載の手順を用いてMS−2 バクテリオファージウイルスで汚染された水で試験した。MS−2バクテリオファージウイルスは一般に、飲用水の処理用に設計された膜の処理能力の評価に用いられる(NSF1998)。このサンプルについて、加圧した上での試験を、上述の実験プロトコルを用いて、試験溶液100mlで行った。MS−2試験材料は、上記の手順に従って調製された。
【0153】
[0181] この試験では、本例(実施例3)に従って作成された、カーボンナノチューブのナノ構造材料より構成される80枚の膜が試験された。使用した試験材料は、MS−2バクテリオファージウイルスで1ml当たりおよそ5×106のプラーク形成単位(pfu)という濃度まで汚染された水であった。
【0154】
[0182] 試験した80個のうち、50個では5log(99.999%)または5log超(>99.995%)のMS−2除去を達成した。残りの30個では、MS−2の除去は、4 log(99.99%)または4log超(>99.995%)であった。EPAの基準では、飲用水について、MS−2バクテリオファージの4logの除去が推奨されているが、より高いlogでのMS−2で試験することにより、さらに高い感度(さらに高いlogでの除去)が達成できると考えられている。本例(実施例3)に従って作成されたカーボンナノチューブのナノメッシュを、上述のように作成したMS−2バクテリオファージの高濃度の試験用懸濁液を使って試験することにより、こうした試験で、MS−2バクテリオファージの除去のlogを高めて浄化改善を達成した。本例(実施例3)に従って作成されたカーボンナノメッシュ物品の独立した試験により、この材料がMS−2バクテリオファージに対する障壁となることがわかる。
【0155】
c)砒素(As)で汚染された水
[0183] 本例(実施例3)に従って作成された平面浄化物品と、砒素で汚染された水とを用いる。この試験では、〜150ppb(ppb:十億分の一)の砒素を含む水溶液100mlを、本例(実施例3)に従って作成したカーボンナノメッシュに通した。砒素処理した水のサンプルをEPA法#SM183113Bに従って分析した。試験用砒素処理水を本発明のカーボンナノメッシュ材料に1回通した後の試験濾液の分析から、砒素レベルが86%±5%下がっていることが確認された。
【0156】
d)バクテリアに汚染された航空機燃料
[0184] 本例(実施例3)に従って作成された平面浄化物品を、汚染された航空機燃料に関して試験した。汚染航空機燃料(JP8)のサンプルは、Wright Patterson空軍基地内の米国空軍研究施設にある33,000ガロンの貯蔵タンクから入手した。入手後、このサンプルをトリプシン大豆寒天培地で培養したところ、3種類のバクテリアが見つかった。すなわち、バチルス2種類と単球菌1種類であった。サンプルを2リットルずつ2つの容器に分けた。両方の容器で、航空機燃料が上に水が下にと、はっきりと2層に分かれた。容器Aでは、水と燃料の境界に、ひどく汚染された成長層があった。容器Bでは、わずかな汚染しか見られなかった。試験用のバクテリアは、容器Bの燃料と水の境界面から入手した。
【0157】
[0185] 試験用の燃料/水/バクテリアを1分間、精力的に揺り動かすことにより行う均質化の後、燃料/水/バクテリアの試験用混合物200mlを1回、〜1.5psiの差圧を用いて、本例(実施例3)に従って作成されたカーボンナノチューブ、ナノ構造材料に通した。
【0158】
[0186] 燃料/水/バクテリアの試験濾過物サンプルは、燃料と水の構成部分に分離させることができ、各構成部分から4種の試験サンプルが得られた。各試験サンプルを寒天培地に置いた。サンプルを、バクテリアの成長を分析するために37℃で培養し、菌の成長を分析するために室温で培養した。サンプルを24時間および48時間培養した後、試験濾過物の試験プレート上では、バクテリアまたは菌の培養物の成長は観察されなかった。対照サンプルでは、24時間および48時間の培養後、活発なバクテリアの群体および菌の成長が見られた。この結果から、本例(実施例3)に従って作成したカーボンナノメッシュは、実験プロトコルによる探知の限度を超えて燃料からバクテリアおよび菌をの除去することを達成したことから、燃料中でバクテリアの障壁になったことが確認された。
【0159】
実施例#4:多段階官能基化を用いた平面浄化物品
[0187] 平面のナノメッシュ装置は、市販の浄化したカーボンナノチューブと、不織溶融カーボンティッシュペーパー基体(0.5oz/yd2)とから作成された。この装置の製造には、上に定義した自己集合過程を利用していた。この自己集合を可能とするために、特定の陽性および陰性の官能構成部分を用いた。カーボンナノチューブは、アミン基で官能基化されていて、水に分散されたとき、陽性になった(すなわち正のゼータ電位)。ガラスファイバは水酸化鉄のクラスターでデコレーションされ、水に分散されたとき、陰性になった。図22に示すように、2つの懸濁液が混合された時、電気力で、ナノチューブはガラスファイバに巻きついた。
【0160】
[0188] まず、カーボンナノチューブ20gを60%の36N硫酸と40%の15.8N硝酸からなる400mlの液を用いて、110℃で30分間、還流させる。これによりカーボンナノチューブにカルボキシル官能基が付加されることがわかっている。こうしたカルボキシル官能基化ナノチューブを濾過し、蒸留水で洗浄し、次に100℃の炉で乾燥した。乾燥ナノチューブを次に500mlの塩化チオニルに懸濁し、60℃で20時間の超音波分解を行った。塩化チオニルを蒸留し、カーボンナノチューブのサンプルを真空ポンプを使って脱水した。脱水したナノチューブを500mlのエチレンジアミン中に懸濁し、窒素雰囲気中で、60℃で20時間、超音波分解を行った。エチレンジアミンを蒸留し、サンプルを0.1M塩酸で洗浄し、pHが中性になるまで蒸留水で濾過とすすぎを繰返した。すすいだアミン官能基化カーボンナノチューブを、次いで100℃の炉で24時間乾燥させた。
【0161】
[0189] アミン官能基化カーボンナノチューブ360gと処理済ガラスファイバ960mgの混合物を混ぜ合わせ、十分な量(Q.S.)の蒸留水を加えて4リットルとした。この4リットルの溶液について、「ブランソン900B超音波分解装置」を使って出力80%で15分間超音波分解を行い、カーボンナノチューブ/ガラスファイバからなるナノマテリアルを均一に分散した。
【0162】
[0190] 溶液4リットル全部を、1気圧までの差圧の雰囲気の下で、市販の不織溶融カーボン組織(5oz/yd2)に通し、自己集合したカーボンナノチューブ/処理済ガラスファイバからなるナノメッシュを堆積させた。得られたナノメッシュを製造装置から取り外し、50℃の炉で2時間乾燥させた。
【0163】
[0191] 得られた平らで四角形のナノメッシュ/基体膜を、NSFに準拠したホットメルト接着剤を使って平らなハウジングの片側に糊付けする。この半分のハウジングをもう一方と噛み合わせ、糊付けして密封する。結果的に得られる装置の構造を、図13に略図として示す。
【0164】
平面浄化物品の効果の試験
[0192] 本例(実施例4)で構成される、アミン官能基化カーボンナノチューブおよび水酸化鉄でデコレーションされたガラスファイバを使った平面浄化装置を、実施例#3についての効果の試験で記述したように、生物学的除去状況について試験[試験a)大腸菌およびb)MS−2バクテリオファージ]した。これらの試験から、自己集合ナノメッシュ物品が、バクテリアおよびウイルスに対して、それぞれ8logおよび7logの除去能力を達成したことが実証された。
【0165】
実施例#5:流体の脱塩
[0193] 64層の平らなナノメッシュ装置は、市販の浄化され官能基化されたカーボンナノチューブと、直径100〜500nm、長さ300から500μmのガラスファイバ、蒸留水中での分子量が20,000gの0.0125重量%のポリビニルアルコール溶液、絶縁体として1.5oz/ydのセルロース濾紙、不織溶融導電カーボンティッシュペーパー基体(0.5oz/yd2)、銀を埋め込んだ導電性および絶縁性のエポキシ樹脂、プラスチックの非導電性ハウジング、ならびに導電性ナノメッシュ層の隣合う各組に直流1.5Vを供給する電源で作成された。
【0166】
[0194] まず、官能基化ナノチューブ(実施例#1に記載の硝酸洗浄手順を通じてカルボキシル基を導入)25mgと、ガラスファイバ50g(上述の通り)を、上記の通り濃度0.0125%のポリビニルアルコールを含む蒸留水4リットルに懸濁した。懸濁液を、IKA社のウルトラタラックスT18浸漬ブレンダーを使い、速度3で3分間攪拌した。
【0167】
[0195] このカーボンナノチューブ/ガラスファイバ懸濁液を、〜1psiの差圧の下で、5.5インチ×5.5インチ(14.0cm×14.0cm)のシート状になったカーボンティッシュペーパー(0.5oz/yd2)の5インチ×5インチ(12.7cm×12.7cm)の面積の中に堆積させた。直径2インチ(5.08cm)の円板4枚をこの5インチ×5インチ(14.0cm×14.0cm)のナノメッシュシートから切取り、これにより64層、直径2インチ(5.08cm)の装置の4層を完成した(64層中32層は導電性があり、他は絶縁性がある)。
【0168】
[0196] 銀を充填した導電性のエポキシ樹脂を用いて、各導電性ナノメッシュ層に電気配線を取り付けた。導電性ナノメッシュ層はすべて絶縁層に挟まれ、この「サンドイッチ」が積み重なり、電気配線は方位角上、等間隔となる(すなわち上下の層の配線から〜11.25°回転している)。電気配線を束ねた上でプラスチックのハウジング壁を通して電源へ引きまわし、アセンブリ全体を密封した(プロトタイプ脱塩装置で、導電層が16層の例を図20に示す)。
【0169】
[0197] 静態保持力試験を、1‰の塩分を含んだ溶液(1‰=塩分1g/水分1000g)1リットルを、電荷または刺激の負荷を与えずに装置に流すことにより行った。濾過液について塩分を調べたところ、塩分がないか、多くて13mgであることがわかった。従って、本発明の装置は静態で(すなわち電子的な刺激なしで)塩分濃度を1.3%までに減少させた。この削減は、本発明の装置のカーボンナノチューブ1グラム当たりでは0.42グラムの塩分を取除いたことになる。
【0170】
[0198] 動態保持力試験を行った。ここでは、4.0mVの差分直流電圧を導電性ナノメッシュ層の隣り合う16組のそれぞれに印加した(すなわち、偶数ナノメッシュ層は正、奇数層は負の電荷を帯びた)。蒸留水1000mlに塩化ナトリウム1gを溶解した塩分を含んだ試験溶液(塩分1‰)を用いて装置の効力を試験した。装置を1回通すと、塩分の1.6%が除去された。この除去率は、カーボンナノチューブの1g当たり塩分0.52gと同等であった。これは、静態での装置に比べて塩分の除去率が23%増加し、きわめて弱い電圧であっても水溶液からの塩イオンの除去を強化することを示し、これによりナノエレクトリック除去効果を実証した。直流電圧が高まり、デバイ雰囲気を破壊する交流信号が課されれば、塩分除去能力がさらに強化されることは確実である。
【0171】
実施例#6:空気膜
[0199] 官能基化されたカーボンナノチューブ(実施例#1に記載の通り硝酸で洗浄してカルボキシル基を導入)を使って平面空気膜フィルタを構成した。手順に従い、蒸留水25gにこうした官能基化ナノチューブ25mgを懸濁し、ブランソンのモデル900B超音波分解装置内の室温の水浴に入れて、10分間の超音波分解を行った。この溶液を次に蒸留水で4リットルに希釈し、ポリビニルアルコールを添加することで、0.125重量%のポリビニルアルコール濃度を作成した。懸濁液を、ウルトラタラックスT18基本浸漬ブレンダーで速度設定を3にして3分間混ぜ合わせた。1psiまでの差圧の下、差圧濾過法を使って、四角形(5.25インチ×5.25インチ)(13.3cm×13.3cm)の多孔質の重合基体のうち5インチ×5インチ(12.7cm×12.7cm)の面積の中への堆積により、ナノメッシュを作成した。
【0172】
空気膜物品の効果の試験
[200] 効果を判断するため、膜について生物学的除去試験を行った。四角形の膜から2.5インチ(6.35cm)の円板2枚を切取り、内径2インチ(5.08cm)、外径2.5インチ(6.35cm)の平らな金属リング2個の間に取り付けた。一方の円板は、膜物品装置について圧力滴と流速曲線の関係を測定するのに用いられ、他方は生物学的除去試験に用いられた。生物学的除去試験は、フィルタ円板を内径2インチ(5.08cm)の、枯草菌のバクテリア胞子捕捉効率を試験できる円筒形の風洞(図21に略図を示す)に取付けて行った。枯草菌は、生物学的エージェントに関して広く受入れられている代用菌であるが、人間に対する病原体ではなく、そのおかげで実験室での試験を安全に行うことができる。
【0173】
[201] 試験では、バクテリア胞子をフィルタ円板の上流にエアロゾル装置を通して放出し、試験装置の下流の端で、流体を満たした総ガラスのインピンジャーで、フィルタを通過した部分を捕捉する必要がある。試験装置の胞子の補足力を評価するため、対照実験一組を行った。この生物学的試験では、枯草菌胞の6logを超える除去を達成した。さらに、生物学的エージェントの除去が、非生物学的粒子の除去および気流に対するフィルタの抵抗からは独立していると判断することができた。
【0174】
[202] 特段のことわりがない限り、明細書および特許請求の範囲の中で使われている成分量、反応条件等を表す数字一切は、「約」という用語によりいずれの例でも修正されるものとして理解される。従って、これに反する内容の記載がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に定める数的パラメータは概数であって、本発明により得ようとする望まれる特性によって異なる。
【0175】
[203] 本発明の他の実施形態は、明細書を検討し、本明細書に開示する発明を実践すれば、当業者には明らかであろう。明細書および実施形態は例示のみを目的としていると考えられ、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲に示すことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】[014] シングルウォールカーボンナノチューブの結合構造および形状を示す略図である。
【図2】[015] 欠陥のあるカーボンナノチューブの格子の歪みを示す図である。
【図3】[016] カルボキシル官能基で官能基化されたカーボンナノチューブの断面図である。
【図4】[017] 充填されたカーボンナノチューブを示す図である。
【図5】[018] 様々な原子をドーピングしたカーボンナノチューブの断面図である。
【図6】[019] 基体がひだのある設計となっているカーボンナノチューブを含む流体浄化装置を示す図である。
【図7】[020] 円筒、ブロックまたは他の嵩のある物体に巻きつけた巻物状の基体にカーボンナノチューブを堆積させる方法を示す図である。
【図8】[021] ナノメッシュ層との電気接続を示す脱塩装置の略図である。
【図9】[022] 低周波三相交流信号(イオンの動きを駆動するため)と高周波の交流信号(デバイ雰囲気を混乱させるため)の両方を一連のナノメッシュ膜にかけて用いることにより、活性化された一続きのナノメッシュ膜を通過するイオンの動きの動態を示す図である。
【図10】[023] 水溶液中の隣り合うイオンの概略を示し、水分子の極性の性質による分子雲(デバイ雰囲気)形成での電荷の保護を示す図である。
【図11】[024] 流体浄化装置の製造に用いられる工程のフローチャートであって、この例は円筒基体に関するものであるが、どんな基体、ファイバ、溶液内微粒子を用いたどのような形状の物品にでも容易に一般化することができる図である。
【図12】[025] 本発明による円筒形の流体浄化物品の構造を示す図である。
【図13】[026] 本発明による平らな流体浄化物品を示す図である。
【図14】[027] 実施例#1、サンプル#1の未処理溶液についてバクテリア(染色)がほぼ均一に広がっている様子を示す光学顕微鏡写真である。
【図15】[028] 実施例#1、サンプル#2のナノチューブ処理した溶液中のカーボンナノチューブに凝集したバクテリア(染色)を示す光学顕微鏡写真である。
【図16】[029] 実施例#1、サンプル#1でナノチューブがない正常な細胞壁を有するバクテリアを示す走査型電子顕微鏡(SEM)の画像である。
【図17】[030] ナノチューブ(実施例#1、サンプル#2)と相互作用したバクテリアの拡散し、損傷した細胞壁を示し、この相互作用によりバクテリア細胞を破壊できることを示唆する図である。
【図18】[031] 円筒形の基体上にナノメッシュを作り出すための堆積装置の略図である。
【図19】[032] 組立てた円筒形の流体浄化物品を示す図である。
【図20】[033] 試験脱塩装置の写真である。
【図21】[034] 空気膜試験装置を示す略図である。
【図22】[035] 自己集合カーボンナノチューブ/ガラスファイバのナノメッシュのSEM顕微鏡写真である。
【技術分野】
【0001】
[001] 本出願は、2004年3月8日出願の米国特許第10/794,056号の一部継続出願であり、2003年3月7日出願の米国仮特許出願第60/452,530号、2003年5月6日出願の米国仮特許出願第60/468,109および2003年9月3日出願の米国仮特許出願第60/499,375号に対する国内優先権の利益を主張するものである。いずれも参照により全体を本明細書に組み込むものとする。
【0002】
[002] 本開示は、液体または気体などの流体から汚染物質を除去するための物品に関し、この物品はカーボンナノチューブを含む。本開示は、また、このような物品を製造するための方法、ならびにこの物品を用いて流体から汚染物質を除去するための方法に関する。一部の実施形態では、開示された物品を使って、微生物に汚染された水から飲用に適した水を作り出したり、塩水を脱塩したりしている。
【背景技術】
【0003】
[003] 消費、使用、処理及び他の必要のために流体を処理する方法および工程は多数ある。最も一般的な方法としては、水を滅菌する化学処理、液体を浄化するための蒸留、微粒子を除去するための遠心分離および濾過(液体中でも空気中でも)、流体の2つの相を分離する上澄み移動、液体からイオンを取除くための逆浸透および電気透析、食料品を滅菌するための低温殺菌、望ましくない反応物を有用な生成物に変える触媒法がある。上記方法のそれぞれは、特定の用途のために設計されていて、最終製品を得るには一般に複数の方法の組合せが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[004] 流体処理においてバランスを取るなくてはならないファクターとしては、液体の流量、流れの抵抗、および汚染物質の除去レベルがある。従来可能であったよりも高レベルの汚染物質除去を達成すると同時に、最初の2つのファクターのバランスが取れる材料が望まれる。
【0005】
[005] ナノテクノロジーマテリアルの有望性は、これにより、液体の浄化などの旧来のマクロスケールの材料ではできなかったことができるようになるだろうという点である。現在の工程の多くが、カーボンナノチューブなどのナノマテリアルを含む物品またはフィルタを利用することにより改良できる。適切に調製したカーボンナノチューブを含むメッシュ(ナノメッシュ)を、ウイルス、バクテリア、有機および無機の汚染物質、塩イオン、ナノサイズまたはミクロンサイズの微粒子、化学物質(天然物質も合成物質も)など、無数の汚染物質を流体から除去するために利用でき、同時に、物品を通過する際の流体流量の維持または改善、物品を通過する流れの抵抗の削減、または結果として得られる物品の軽量化など、さらなる利点を少なくとも1つは達成できることが分かった。
【0006】
[006] 本明細書において、「ナノ」という用語は、分子レベルなど大きさが1メートルの10億分の1(すなわちnm)程度の規模の材料または構造を指す。例えば、「ナノテクノロジー」という用語は一般に、少なくとも一次元の寸法が、たとえば1から100nmの間であるなど、1から500nm程度の大きさであり、規模の小ささゆえに少なくとも1つの特性または機能を示し、個別の原子または分子を制御または操作できるテクノロジーを言う。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[007] 上記目的を達成するため、少なくとも1個のカーボンナノチューブが別のカーボンナノチューブ、またはファイバ、微粒子または基体などの他の材料に付着または接続している複数のカーボンナノチューブから構成される物品を提供する。「カーボンナノチューブ」とは、その結合パターンが六角形の格子を作り出し、自身に向かって閉じて円筒構造の壁を形成する六員環の炭素からなるナノスケールの管状構造をいう。少なくとも部分的にナノチューブから構成される相互連結した構造体を、本明細書では「ナノメッシュ」と称する。
【0008】
[008] 本明細書に開示するのは、水または空気などの流体から汚染物質を除去するための物品である。この物品は一般にカーボンナノチューブを含み、それに付着またはその中に位置する少なくとも1つの分子またはクラスターを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよいのであって、カーボンナノチューブは、その物品に接触する流体中の汚染物質の濃度を減少させるのに十分な量で物品内に存在する。
【0009】
[009] また、流体中の汚染物質量を減少させるための方法、ならびに流体から少なくとも1種類の汚染物質を分離、除去、固定するか、変性させる、または破壊するために十分な時間だけ、流体を本明細書に記載の物品に接触させることを含む方法についても述べる。ある実施形態では、この方法を、水または空気から汚染物質を除去するために用いることができる。
【0010】
[010] さらに、カーボンナノチューブを含むナノメッシュ材料を調製するための方法を提供する。この方法は、少なくとも1つの官能化学基をカーボンナノチューブの表面に付着させ、これにより官能基化カーボンナノチューブを形成することができる媒体中でのカーボンナノチューブの機械的処理、化学的処理または放射処理か、またはその組合せを含む。この方法は、さらに、水性、無機質、有機質の溶剤の中から選択した少なくとも1つの溶剤の中で官能基化されたカーボンナノチューブをすすぐことおよび/またはこれに分散させることを含む。また、この方法は、さらに、種々の化学的官能基化を行う多種類のカーボンナノチューブを組合せて、汚染物質の除去、破壊または変性を支援することも含む。
【0011】
[011] ある実施形態では、この方法は、さらに、官能基化されたカーボンナノチューブをファイバおよび少なくとも1種類の溶剤と混合し、官能基化カーボンナノチューブとファイバとの懸濁液を形成することを含む。真空濾過法などの標準的な方法で基体上に懸濁液を堆積させることにより、一般的には多孔基体上にナノメッシュの層が形成される。
【0012】
[012] 上述の内容のほかに、本開示は、以下に説明する他の例示的な特徴を多数含んでいる。前述の内容と以下の説明のいずれも例示的なものに過ぎないことを了解されたい。
【0013】
[013] 添付の図面は本明細書に組み込まれ、その一部分を構成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[036] 本開示の1つの態様において、流体から汚染物質を除去する物品が提供される。「流体」とは、液体または気体を包含することを意図している。「汚染物質」とは、流体中の少なくとも1種類の欲されない、または望まれない元素、分子または有機体である。「除去」(またはその活用形)とは、粒径除外、吸収、吸着、化学的または生物学的な相互作用または反応といったメカニズムのうち少なくとも1つを利用して汚染物質を破壊するか、変性させるか、分離することを意味するものと理解される。「化学的または生物学的な相互作用または反応」とは、汚染物質が害を引き起こせないようにする化学的過程か生物学的過程のいずれかを通じた汚染物質との相互作用を意味すると理解される。このような例としては還元、酸化、化学変性、微生物、生体分子、摂取および入れ子に対する物理的損傷等が挙げられる。
【0015】
[037] 「粒径」とは、分布数、たとえばある粒径を有する微粒子の数により定義される。この方法は、通常、目盛り付き光学顕微鏡によって、目盛り付きポリスチレンビーズによって、目盛り付き走査型プローブ顕微鏡、走査型電子顕微鏡、または光学近接場顕微鏡によってなど、顕微鏡的技術により測定される。本明細書に記載する大きさの微粒子の測定方法は、Walter C. McCrone’sほか著の「The Particle Atlas, (An encyclopedia of techniques for small particle identification), Vol. I, Principles and Techniques, Ed.2」(Ann Arbor Science Pub.社)に教示されている。上記文書は、参照により本明細書に組み込むものとする。
【0016】
[038] 本明細書に記載の物品を用いて浄化できる液体の例を挙げると、水、食料品、生物学的流体、石油およびその副産物、非石油燃料、薬剤、有機溶剤および無機溶剤、ならびに水素、酸素、窒素および二酸化炭素の液体であって、ロケット推進燃料または工業用途で使用されるものなどであるが、これらに限定されない。
【0017】
[039] この物品で処理することが可能な食料品の例を挙げると、動物の副産物(卵および牛乳など)、果汁、アルコール飲料およびノンアルコール飲料、天然および合成シロップ、ならびに料理または食品産業で用いられる天然および合成の油(オリーブ油、ピーナツ油、花油(ひまわり、紅花)、野菜油、または動物を供給源とする油(すなわちバター、ラード)、またはその組合せがあるが、これらに限定されない。一例として、亜硫酸塩をワインに加えて退色を防ぎ、保存を助けることはよくある。しかし、亜硫酸塩は健康面の心配が高まるため、避けるべきである。本発明の1つの態様として、販売の際に亜硫酸塩に的を絞って除去することを含み、本明細書に記載の浄化方法をワイン産業に利用することもできる。
【0018】
[040] 本明細書に記載の物品で除染できる生物学的流体は、一般に、動物、人間、植物から得られるものか、またはバイオテクノロジー生成物および/または薬品の処理に用いる培養液などである。一実施形態では、浄化できる生物学的流体は、全血(または血中物質)、血清、および牛乳である。薬品に用いる生物学的試薬は、多くの場合非常に不安定であり、従来の技術では滅菌が難しかった。小型微生物(マイコプラズマ、ウイルスなど)の除去は、従来の濾過では達成できない。本発明のカーボンナノメッシュ物品は、しばしば存在する、生物学的試薬に必要な血清蛋白質に損傷を与えることなく、ウイルスの除去に利用することができる。一実施形態では、ナノメッシュの物理的特性および化学的特性を、薬品製造中に作り出される汚染物質の除去が可能なように制御できる。
【0019】
[041] 別の実施形態では、発明された物品は、石油製品の滅菌に用いることができる。重大な汚染問題は、貯蔵中の石油またはその派生物でのバクテリアの潜在的な成長であり、これは、特に航空燃料で問題になってきた。このようなバクテリアが存在すると燃料が非常に汚くなり、最終的には使えなくなってしまう。従って、液体浄化分野での主な関心分野は、天然および/または合成の石油製品からバクテリアを一掃することである。天然石油および/または合成石油およびその副産物としては、航空機、自動車、船舶、機関車、およびロケットの燃料、ならびに工業用油および機械油、潤滑油、ならびに暖房用の石油およびガスなどがある。
【0020】
[042] 石油製品についてのもう1つの重大な汚染問題は、硫黄含有量の高さと一部の金属が過剰なレベルで含有されていることで、重要な例としては鉛がある。政府の規制では、炭化水素燃料(内燃機関で用いられる)中の硫黄および鉛の濃度が特定量(MCL−最大汚染レベル)を超えることを禁じている。従って、他の望まれない成分を添加することなく石油から特定の化学汚染物質を除去する物品の需要はある。一実施形態では、本明細書に記載の物品を用いて、炭化水素または燃料電池に用いる気体など他の種類の燃料から硫黄および/または特定の金属を除去することができる。
【0021】
[043] 前述の汚染物質の多くは空気中に分散するため、気体をきれいにする物品の需要がある。従って、本発明の別の態様は、すでに挙がっている汚染物質のいずれかを除去するための空気を清浄化するための方法を含む。本明細書に記載の物品を用いて清浄化できる気体の例を挙げると、空気または自動車、大煙突、煙突、または煙草の排気または煙から選んだ1つまたは複数の気体などであるが、これらに限定されない。空気の清浄化に用いられる場合、この物品を平らな形状にして、広い表面積を空気の流れに当てることができる。この平らな形状により、HVACシステムだけでなくガスマスクで用いるものなど、様々なフィルタデザインに合わせて容易に適切な形状に切断できるという利点も新たに生じる。気体浄化のために洗浄されたり、排気から除去されるなど、本開示に従って処理することができる気体としては、以下の通り、アルゴン、アセチレン、窒素、酸化窒素、ヘリウム、水素、酸素、アンモニア、一酸化炭素、二酸化炭素、プロパン、ブタン、天然ガス、エチレン、塩素、または空気、酸化窒素など、上記物質の混合物、ならびにヘリウム/酸素混合物などのダイビングに用いる気体などがある。
【0022】
[044] さらに、ある流体の用途で汚染物質と認識されるものが、実際には別の用途では望まれる生成物であるかもしれないことに留意すべきである。例えば、汚染物質は貴金属または有益な薬品を含むかもしれない。従って、一実施形態では、単に汚染物質を除去して破棄するよりは、これを分離、保持して回収するほうが有益かもしれない。有用な汚染物質または特定の反応副産物を分離することのできる、望まれる汚染物質を「獲得して放出する」能力は、以下に詳細に記述するように、ゼータ電位を調整したり、ナノメッシュ物品のナノ電子制御を行なったりすることにより達成できる。
【0023】
[045] 本明細書に記載の物品の用途としては、家庭用(例:家庭用水および空気の濾過)、娯楽用(環境濾過)、工業用(例:溶媒の再生、反応物の精製)、政府用(例:免疫形成プロジェクト、軍用、廃棄物改善)および医療用(例:手術室、清浄な空気およびマスク)の分野がある。
【0024】
[046] カーボンナノチューブには一般に二種類の形態がある。すなわち、シングルウォールとマルチウォールである。シングルウォールカーボンナノチューブは、これらの管状構造の1つを含み、相互に接続された六角形が互いに整列している。図1はシングルウォールカーボンナノチューブを示している。一実施形態では、こうしたシングルウォールナノチューブは一般に直径が1〜2nm程度であって、人間のDNA(2nmまで)に似ていて、通常、長さは数百ナノメータから何ミクロンにも及ぶ。マルチウォールカーボンナノチューブは、こうした管状構造の同心シェルを多数含む。直径は数十ナノメータになることもあり、理論的には長さは数百メートルにもなり得る。
【0025】
[047] そうなっている必要があるわけではないが、本明細書に記載のナノメッシュは、互いに、または他の材料に付着したカーボンナノチューブから構成することができる。ナノメッシュ内での付着および/または接続は、ナノスケールで働く力の結果であり、その例を挙げると、ファンデルワールス力、共有結合、イオン結合、幾何制約、静電気、磁力、電磁力、またはカシミール力、またはその組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0026】
[048] 本開示は、また、汚染された流体を本明細書に記載の物品中でナノメッシュに接触させることにより流体を浄化するための方法に関する。一実施形態では、流体を浄化する方法は、流体をナノメッシュに接触させることを含み、ナノメッシュまたはナノメッシュが作り出す相互作用ゾーンに接触する流体中の少なくとも1つの汚染物質の濃度を下げるのに十分なだけの量、カーボンナノチューブがナノメッシュの中に存在している。本明細書で言う「少なくとも1つの汚染物質の濃度を下げる」とは、少なくとも1つの汚染物質を、本発明の物品により処理後、適切な規制当局が定義する最大汚染レベル(MCL)未満、または特定の流体の品質基準が準拠する業界の要求条件未満など、未処理の流体の場合より低いレベルに下げることを意味する。
【0027】
[049] 本開示の1つの態様は、炭素環が渦を巻いた管状または非管状のナノ構造を有するカーボンナノチューブを使用することに関している。こうしたカーボンナノチューブは、通常、シングルウォール、マルチウォールまたはその組合せであって、様々な形態をとることができる。例えば、本開示で用いているカーボンナノチューブは、角状、らせん状、多数の糸を撚り合せた渦巻状、スプリング、デンドライト状、樹木状、放射状のナノチューブ構造、ナノチューブのY分岐合、竹状の形態から選択した形態を有することができる。上述した形状の一部は、M.S. Dresselhaus、G. Dresselhaus、P.Avouris eds. による「Carbon Nanotubes:Synthesis, Structure, Properties,and Applications」(Applied Physics(80.2000)に掲載、Springer−Verlag社)ならびに「A Chemical Route to Carbon Nanoscrolls」(Lisa M. Viculis、Julia J.Mack、Richard B.Kaner、Science誌 2003年2月28日号、299)にさらに詳しく定義されている。いずれの文書も参照により本明細書に組み込むものとする。
【0028】
[050] 開示される物品の1つの態様では、カーボンナノチューブの過半数は、結晶欠陥により歪んでおり、歪みのないカーボンナノチューブよりも高い浄化性能を示している。「結晶欠陥」とは、カーボンナノチューブの管壁内の、少なくとも1つの炭素環に格子の歪みのある箇所を言う。
【0029】
[051] 「格子の歪み」とは、管状シート構造を形成するカーボンナノチューブ原子の結晶格子の歪みを意味する。図2で例示しているように、格子の歪みとしては、非弾性変形のために生じる原子のずれ、または五員および/または七員の炭素環の存在、または化学的相互作用に続いて生じた炭素原子の結合のsp2混成の変化などがある。このような欠陥または歪みのために、カーボンナノチューブが自然に折れることがある。
【0030】
[052] 「高い浄化性能を示す」という文言は、ナノメッシュが、結果的に得られる材料の構造的な完全性、その多孔率、多孔分布、導電性、流体の流れへの抵抗、幾何制約、またはその組合せであって、汚染物質の除去の強化につながるものに対して改善を示すことを意味する。例えば、高い浄化性能は、個別のカーボンナノチューブの改善された、高効率の吸着または吸収特性によるのかもしれない。また、カーボンナノチューブに欠陥が多ければ多いほど、化学官能基の付着箇所は多くなる。一実施形態では、ナノメッシュに存在する官能基の数を増やすことにより、結果として得られる物品の性能は改善されるはずである。
【0031】
カーボンナノチューブの処理
[053] 本開示では、カーボンナノチューブには、化学的挙動および/または物理的挙動の改変のため、化学的処理および/または物理的処理を施すことがある。こうした処理は一般に、結果としての物品が、上記で定義した意味でより高い浄化性能を示すように行う。
【0032】
[054] 一実施形態では、カーボンナノチューブは、以下の効果のうち少なくとも1つを達成するように、化学的または物理的に処理される。すなわち、汚染物質の除去、欠陥の付与、または欠陥箇所および/またはナノチューブ表面に官能基を付着させることである。
【0033】
[055] ここでは「化学的処理または物理的処理」というのは、カーボンナノチューブの製造工程に由来するアモルファス炭素、酸化物または微量の副生成物などの望まれない成分を除去するのに十分な時間をかけて、酸、溶剤または酸化剤を用いて処理することを意味する。
【0034】
[056] 第2の種類の化学処理の例を挙げると、カーボンナノチューブを、カーボンナノチューブ表面に欠陥密度を作り出すのに十分な時間だけ酸化剤に暴露することである。
【0035】
[057] 第3の種類の化学処理の例を挙げると、希望のゼータ電位(参照により本明細書に組み込むものとするJohnson, P.R.著、「Fundamentals of Fluid Filtration」(2nd Edition, 1998, Tall Oaks Publishing Inc.)の定義による)を有する特定の官能基を付着させることである。これは、特定の流体から希望の汚染物質を特定の組合せで除去できるように、カーボンナノチューブのゼータ電位または等電点(ゼータ電位がゼロになるpH)を調整する作用がある。
【0036】
[058] 別の実施形態では、カーボンナノチューブは、それに付着しているか、またはその中に位置している、流体中の汚染物質の除去および/または変性を助ける効果のある分量の原子、イオン、分子またはクラスターを含む。
【0037】
[059] 本明細書に記載のカーボンナノチューブは、流体から除去されたり流体中で変性させられたりする汚染物質同様に、その特性の改変のために処理されることもある。例えば、一実施形態では、カーボンナノチューブは、酸素を含む気体、硝酸、硫酸、過酸化水素、過マンガン酸カリウムおよびその組合せから選ばれるがこれに限定されるものではない酸化剤で化学的に処理される。酸化剤で処理されたナノチューブは、流体の流れまたは堆積流体中におけるナノチューブの分散に関して、または官能基化の観点から(例えば特に官能基化される能力があるなど)、独自の特性を提供することができる。
【0038】
[060] 本明細書で使用する場合、「官能基化された」(またはその活用形)とは、ゼータ電位など、ナノチューブの特性を改変することのある原子または原子グループが表面に付着したカーボンナノチューブを言う。官能基化は一般に、ウェットケミストリー法または蒸気、気体またはプラズマ処理などの化学技術、およびマイクロ波を利用した化学技術を用いてカーボンナノチューブ表面を変化させることにより、ならびにカーボンナノチューブの表面に材料を結合させる表面化学を利用することにより行われる。上記方法は、カーボンナノチューブを「活性化」させるために使用され、これは、少なくとも1つのC−C結合またはC−ヘテロ原子結合を壊し、それにより分子またはクラスターが付着する表面を提供することとして定義される。図3に示すように、官能基化されたカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの外側の側壁などの表面に付着したカルボキシル基などの化学基を含む。さらに、ナノチューブの官能基化は、官能基がナノチューブに連続的に付加されて特定の所望の官能基化ナノチューブとなる多段階の方法によっても生じる。
【0039】
[061] 官能基化カーボンナノチューブでは、カーボンナノチューブの表面で、各種官能基の種類または種等の官能基の組成および/または密度がばらつくことがある。同様に、官能基化カーボンナノチューブでは、カーボンナノチューブ表面で、官能基がほぼ均一な傾きを示すこともある。例えば、1つのナノチューブの下の方か、複数のナノチューブを集めた中かのいずれかに、多くの異なる官能基(すなわち、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミド、アミン、ポリアミンおよび/または他の化学官能基)および/または官能基化密度が存在することがある。
【0040】
[062] さらに、ファイバおよび/またはナノ粒子などのナノメッシュの他の構成要素も、ゼータ電位および/または架橋能力を変化させ、それによりナノメッシュの濾過性能を改善するため、化学基、デコレーション、コーティングまたはその組合せにより官能基化されることがある。
【0041】
[063] 特定の多段階官能基化を行う例を限定することなく挙げると、カーボンナノチューブのゼータ電位を制御させ、ウイルス除去能力を改善することが挙げられる。カーボンナノチューブは酸を混合した中で還流される。いかなる理論にも拘束されないが、こうした工程により、ナノチューブ表面の欠陥の数が増加し、欠陥箇所に付着するカルボキシル官能基が増えたり、水中のカルボキシル官能基の負の電荷のためにナノチューブのゼータ電位が変化したりすると考えられている。
【0042】
[064] カルボキシル官能基化ナノチューブを、次いで、窒素雰囲気中で塩化チオニル溶液の中で還流することができる。いかなる理論にも拘束されないが、この行為により、それまで付着していたカルボキシル官能基が塩化アシル官能基に転化すると考えられている。続いて、こうした塩化アシル官能基化ナノチューブは、再度窒素雰囲気中で、エチレンジアミン溶液の中で還流される。これにより、ジアミン末端のアミン基を塩化アシル官能基と反応させ、塩化アシル官能基を、塩素原子をジアミンのアミン基1個に置換することにより2−アミノエチルアミド官能基に転化させるものと考えられている。アミン基を用いたナノチューブの官能基化が終わると、水中でナノチューブに正の電荷が分与され、ゼータ電位が正になるか、または負の程度が軽減される。上記内容から、この種のナノチューブで構成されたナノメッシュ装置で、負の電荷を帯びた汚染物質(陰イオン、一定の分子、ウイルスの粒子など)をファンデルワールス力および/または静電気の力で捉えるように特に目標とし、汚染された流れからこうした物質を除去することができる。
【0043】
[065] 別の実施形態では、有機受容体および/または無機受容体より構成される官能基のための表面積の大きい分子骨格のためか、または、天然または生物工学により設計された細胞(バクテリア、ナノバクテリアおよび極限バクテリアなど)に構造を与え、又はこれら支持るために、カーボンナノチューブを利用することもできる。ナノバクテリアの例としては、炭酸塩堆積物と岩との中にいるナノバクテリアの概念が挙げられ、参照により本明細書に組込まれる以下の参考文献で見ることができる。すなわち、R.L.Folk著、J.Sediment.Petrol.63:990−999(1993)ならびにR.H.Sillitoe、R.L.Folk、N.Saric著、Science 272:1153−1155(1996)である。有機受容体および/または無機受容体は、流体の流れから特定の汚染物質を選択的に除去することを目標とする。ナノチューブに支持された天然細胞または生物工学設計された細胞は、生物学的に活発な特定の汚染物質を消費し、新陳代謝させ、中和し、生物学的に鉱化させる。例えば、石油流出の毒性を削減することのできる、ナノチューブに付着した特定の微生物がいる。
【0044】
[066] 本発明の別の態様では、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ材料、またはそのサブアセンブリを、放射線で処理してもよい。放射線は、電磁放射線、および/または電子、放射性核種、イオン、微粒子、クラスター、分子またはその組合せから選択される少なくとも1つからの照射を選択できるが、これに限定されるものではない。前述の通り、放射線は、1)少なくとも1個の炭素―炭素結合または炭素―ヘテロ原子結合を破壊する、2)ナノチューブとナノチューブとの間で、ナノチューブから他のナノメッシュ成分へ、またはナノチューブから基体へ架橋を行う、3)粒子の注入、4)カーボンナノチューブの化学処理を改善する、のいずれかかその組合せを生じさせるのに十分な量でカーボンナノチューブに照射される。放射線照射により、ナノチューブに差異のある被爆量を与え(例えば放射の透過量の差異により)、これによりナノメッシュ構造内に均一でない欠陥構造が生じる。これは、カーボンナノチューブに付着した様々な官能基を通じて、様々な特性を提供するために用いることができる。
【0045】
[067] 本明細書に記載のカーボンナノチューブは、一定の有益な特性を達成するため、所望の材料を充填または浸透させることができる。「充填する」または「浸透させる」といった用語は相互に交換して使用でき、利益のある物質を少なくとも部分的には充填したカーボンナノチューブに対して用いる。カーボンナノチューブに充填されたか、浸透させられた物質は、一般的に、ナノメッシュの濾過性能を改善でき、特にその用途の目標を定め直すことができる。限定せずに例を挙げると、特定汚染物質用に対してナノチューブの親和力を強めることによる濾過の改善などが挙げられる。例えば、水中の砒素錯体などの陰性の汚染物質を除去するために物品を用いる場合、カーボンナノチューブをまず陽性の物質に浸漬する。図4はある物質で充填されたカーボンナノチューブを例示している。
【0046】
[068] さらに、本開示によれば、流体からの汚染物質の除去を助けたり、機構的強度、容積導電率、ナノメカニカル特徴といった他の性能特徴を増強したりする材料および/または微粒子でコーティングまたはデコレーションすることにより、カーボンナノチューブを修飾することができる。官能基化カーボンナノチューブとは異なり、コーティングまたはデコレーションしたカーボンナノチューブは、官能基とは違って必ずしもナノチューブと化学的に結合していない材料および/または粒子の層で被覆され、この層が、ナノメッシュの濾過性能を改善できるようにナノチューブの表面積を覆っている。
【0047】
[069] 本明細書に記載の物品で使用されるカーボンナノチューブには、流体からの汚染物質の除去を助けるための成分をドーピングすることもできる。本明細書で言う「ドーピングした」カーボンナノチューブとは、六角形の炭素を巻物状にしたシートの結晶構造の中に炭素以外のイオンまたは原子が存在することを言う。図5に例示するように、ドーピングしたカーボンナノチューブとは、六角形の環のうち少なくとも1個の炭素が炭素以外の原子に置換されていることを意味する。
【0048】
[070] 別の実施形態では、本明細書に記載のカーボンナノチューブは、原子または分子の1つまたは複数のクラスターでデコレーションできる。本明細書で「デコレーションされた」とは、部分的にコーティングされたカーボンナノチューブを言う。「クラスター」とは、化学的または物理的な結合により付着した少なくとも2個の原子または分子を意味する。
【0049】
[071] クラスターは、量子ドットの特性を示し、その結果、幅広い吸収スペクトルと狭い発光ピークを有する、光安定性で波長可変のナノクリスタルとなる。クラスターは、量子ドットを含めて、金属、非金属およびその組合せから構成される。こうした付着クラスターが光活性化して、汚染物質を除去、無力化または破壊する。量子ドットは非常に小さいため電子1個の付加または除去も検知できる粒子であり、何らか有用にその特性を変化させる。一実施形態では、量子ドットは直径が数ナノメータの半導体結晶であって、ナノクリスタルとも呼ばれ、その小ささのため、数ナノメータの領域に三次元で電子を閉じ込めるポテンシャル井戸のような挙動をする。
【0050】
[072] 分子は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、セシウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、ビスマスの中から選択される少なくとも1個の金属原子、ならびに水素、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、珪素、リン、硫黄、塩素、臭素、アンチモン、ヨウ素およびその組合せの中から選択される少なくとも1つの非金属原子を含む無機化合物などである。
【0051】
[073] 分子またはクラスターには、少なくとも1つのペプチド結合により結合されるアミノ酸から構成される天然重合体などのたんぱく質、炭水化物、重合体、芳香族アルコール類または脂肪族アルコール類、および、RNAおよびDNAなどの核酸または非核酸を含む有機化合物も含まれる。
【0052】
[074] 有機化合物の例を限定せずに挙げると、カルボキシル、アミン、アレーン、ニトリル、アミド、アルカン、アルケン、アルキン、アルコール、エーテル、エステル、アルデヒド、ケトン、ポリアミド、ポリアンフィフィル、ジアゾニウム塩、金属塩、ピレニル、チオール、チオエーテル、スルフヒドリル、シランおよびその組合せの中から選択される少なくとも1つの化学基を挙げることができる。
【0053】
[075] 重合体材料、セラミック材料、金属材料および生体材料の前述のリストには、カーボンナノチューブを充填するか、官能基化するか、コーティングするための同じ材料が包含されている。こうした材料は、カーボンナノチューブの表面に故意に欠陥が設けてあった方が容易にカーボンナノチューブに付着または配置することができることが分かったる。
【0054】
ナノメッシュに含まれるファイバ
[076] 本明細書に記載のナノメッシュは、処理中、カーボンナノチューブの分散(または剥離)を維持する働きをするファイバからも構成することができる。こうしたファイバは犠牲的になる(化学処理、熱処理などにさらに処理される間に構造から取除かれる)こともあり、また、完成した装置の不可欠の一部分として残ることもある。一般にはこうしたファイバの直径は、10nmから100μmなど、1nmから1mmの範囲内である。
【0055】
[077] 本明細書で用いる場合、「ファイバ」とは、長さLと直径DについてLがDよりも大きいものを意味する。ここで、Dはファイバの断面を示す円の直径である。例えば、アスペクト比L/D(または形状ファクター)が、5から107、およびさらに5から106など、2から109の間で選択される。
【0056】
[078] 本明細書で開示する構成で使用するファイバは、合成または天然の無機または有機のファイバとすることができる。これらは短くても長くてもよく、個別でも組織的でも、例えば編んであってもよく、中空でも中身がつまっていてもよい。これらはどんな形状でもよく、意図される特定の用途によって、例えば、断面が円形または多角形(四角形、六角形または八角形)であってもよい。
【0057】
[079] ファイバは、例えば20nmから1cmなど、10nmから10mの範囲内の長さである。その断面は例えば1nmから1mmに分布する直径を有する円の範囲内とすることができる。
【0058】
[080] ファイバは、絹繊維、綿繊維、ウール繊維、亜麻繊維、羽毛繊維、または例えば木材、豆類または藻類から引き出したセルロース繊維といった、バイオミネラリゼーションまたはバイオ重合に由来する織物製造に用いるものとすることができる。
【0059】
[081] 本開示では、医療ファイバも使用することができる。例として、再吸収合成繊維としては、グリコール酸とカプロラクトンから調製したもの、乳酸とグリコール酸の共重合体である再吸収合成繊維、ならびにポリテレフタリックエステル繊維などがある。ステンレス鋼糸などの再吸収されない繊維も使用することができる。
【0060】
[082] ファイバは以下のものから選択することができる。
【0061】
[083] (a)ナイロン、アクリル、メタクリル、エポキシ、シリコーンゴム、合成ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アラミド(すなわちケブラーRおよびノーメックスR)、ポリクロロプレン、ポリブチレンテレフタル酸塩、ポリ−パラフィレンテレフタルアミド、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、およびポリエステルエステルケトン、ポリエステル類(例えばダクロンなどのポリ(エチレンテレフタレート))、ポリテトラフルオロエチレン(すなわちテフロンR)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、バイトンフッ素ゴム、ポリメタクリル酸メチル(すなわちプレキシガラスR)、ポリアクリロニトリル(すなわちオルロンR)、ならびにその組合せなどの単成分または多成分重合体から選択される少なくとも1つの重合材料、
【0062】
[084] (b)炭化ホウ素、窒化ホウ素、尖晶石、ガーネット、フッ化ランタン、フッ化カルシウム、炭化珪素、炭素およびその同素体、酸化珪素、ガラス、石英(quartz)、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ホウ化ハフニウム、酸化トリウム、菫青石、ムライト、フェライト、サファイヤ、凍石、炭化チタン、窒化チタン、ホウ化チタン、炭化ジルコニウム、ホウ化ジルコニウム、窒化ジルコニウムおよびその組合せの中から選択される少なくとも1つのセラミック材料、
【0063】
[085] (c)アルミニウム、ホウ素、銅、コバルト、金、プラチナ、パラジウム、珪素、鋼、チタン、ロジウム、イリジウム、インジウム、鉄、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、タングステン、ニオブ、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、銀、ジルコニウム、イットリウムおよびその酸化物、水素化物、水酸化物ならびにその合金から選択される少なくとも1つの金属材料、
【0064】
[086] (d)綿、セルロース、ウール、絹、および羽毛ならびにその組合せから選択される少なくとも1つの生体材料またはその誘導体、
【0065】
[087] (e)ナノ角状、ナノらせん状、ナノスプリング状、デンドライト状、樹木状、放射状ナノチューブ構造、ナノチューブY分岐、竹状または多数の糸を撚り合わせた渦巻状の、入れ子形態または非入れ子形態のシングルウォール、ダブルウォールまたはマルチウォールのカーボンナノチューブから選択される少なくとも1つのカーボンナノチューブ、
【0066】
[088] (f)少なくとも1つの金属酸化物または金属水酸化物のナノワイヤ。例えば、金属酸化物のナノワイヤは、反応容器中で金属線を酸素と共に230℃から1000℃の範囲の温度にまで、30分から2時間加熱することにより調製できる。ナノワイヤは、供給原料としてすでに述べたいずれかの金属で作成したマクロスケールのワイヤを用いることにより成長する。結果として得られる金属酸化物のナノワイヤは、直径が、1〜100ナノメータ、例えば、1〜50ナノメータ、例えば2〜5ナノメータの範囲とすることができる。この方法の利点は、基礎となる線材の表面が磨り減っていて表面の肌理が粗いため、ナノメッシュの内部にナノチューブが付着しやすくなり、物質の浄化性能が強化されることである。こうした金属酸化物または金属水酸化物も、市場の業者から入手することができる。
【0067】
装置に用いる基体
[089] 一実施形態では、物品は、差圧方法を用いてカーボンナノチューブを堆積させるための多孔質の支持基体を含む。多孔質の支持基体は、ブロック、管(または筒)、シートまたはロールなど、結果としての物品の形状に合ったいかなる形でもよく、セラミック、カーボン、金属、合金、プラスチックまたはその組合せから選択される材料で構成できる。一実施形態では、基体は織った、または織っていない繊維材料である。
【0068】
[090] さらに、基体がシートの形を取る場合、基体は平らまたは平面のシートであっても、ひだのついた形(図6)であってもよい。ひだのある形は、汚染流体に暴露されるナノメッシュの表面積を増やすために選択される。
【0069】
[091] 一実施形態では、基体はナノメッシュが堆積した材料のロールである。この方法ではロールを連続的または半連続的な形で一連の堆積その他の処理ステーション中をスクロールさせることができる。
【0070】
[092] ナノメッシュがロール方法で作られる別の実施形態では、これを用いて中空で多孔質の円筒、ブロックまたは他の支持構造に巻きつき、図7に示すフィルタ媒体を形成する。
【0071】
[093] 別の実施形態では、多孔質の管状基体が、活性炭(塊または繊維)などのカーボン材料を含み、その外側表面が本明細書に記載のカーボンナノチューブでコーティングされている。
【0072】
[094] 別の実施形態では、上述のように作成された金属酸化物または金属水酸化物のナノワイヤの集合を、差圧堆積方法を用いてカーボンナノチューブを堆積させるための基体として用いることができる。結果として得られるナノワイヤ/カーボンナノチューブのナノメッシュは、構造的な一体性の強化および/または物品の浄化性能の改善のため、熱処理、機構的処理、または化学処理を行ってもよいし、行わなくてもよい。化学処理としては、化学基、金属、セラミック、プラスチックまたは重合体による、最終的に得られるナノメッシュの官能基化、コーティングまたはデコレーションなどが挙げられる。さらに、こうした化学処理は、ナノメッシュ物品が汚染物質と化学的または物理的に反応または相互作用して、これを破壊するか、変性させるか、固定、除去または分離するように行われる。
【0073】
[095] 他の実施形態では、差圧堆積方法で用いられる多孔質の支持基体は、製紙に類似した方法でナノメッシュを形成するための堆積の際に、犠牲的に用いてもよいし、単に一時的に用いてもよい。
【0074】
装置の他の明示事項
[096] 物品の別の実施形態は、特定の汚染物質の分布を除去するため、または物品の他の性能特徴を改善するために、それぞれがゼータ電位その他の手段により具体的かつ独立に調整された、多数のナノメッシュの層を含む。「その他の手段」とは、多孔率、汚染物質との親和性(例:ナノメッシュ構成要素、特定汚染物質の受容体の官能基化)、強度(例:使用する接着剤、架橋剤)など、ナノメッシュ層の具体的な特性の調整を意味することを意図している。
【0075】
[097] 別の実施形態では、ナノメッシュは、物品の濾過性能を改善する働きをする接着剤(ポリビニルアルコールなど)を含んでいる。このような接着剤は、ナノメッシュ構造の形成前に、カーボンナノチューブおよび他のナノメッシュ構成要素を含む懸濁液中に導入することができる。
【0076】
[098] 別の実施形態では、ナノメッシュは自己集合過程を利用して形成することができる。「自己集合」とは、ナノメッシュの構成要素が自ら整列して最終的なナノメッシュ構造になることを意味する。これは、官能基、表面電荷分布、分散剤の組成または特性またはその組合せの選択を通じて、電気的、磁気的、化学的および幾何学的な制約を制御することにより達成される。例えば、ナノメッシュ構成要素の表面電荷分布を調整することでその電気的挙動を制御でき、これにより、集合したナノメッシュの構造の中でそれらがどのように整列するかを決定する。この自己集合は、除去特性、多孔率、電気抵抗、流体の流れへの抵抗、強度特徴またはその組合せを改善する、ナノメッシュ内の強化された構造組織へと導くものであれば、どのような形態であってもよい。
【0077】
[099] さらに、上記の自己集合は、外界からの強制により「指揮」することができる。このように適用された外界が、一部または全部のナノメッシュ構成要素および/または構成要素が懸濁されている流体の特性と共に作用して、集合体を導いて、最終的にナノメッシュになるようにする。例えば、ナノメッシュの構成要素の一部または全部を含む懸濁液に、ナノメッシュの形成中、電磁的な刺激を与えて、所望の構成要素の配列および/または編成を達成し、流体浄化性能を強化することができる。
【0078】
作用のメカニズム
流体の滅菌
[0100] いかなる理論にも拘束されることを願わないが、本明細書に記載のナノメッシュは、流体の流れから微生物および他の病原体をまず引付け、次に変性させるか分離する化学的および物理的な力を用いる独特のナノスケールの相互作用ゾーンを形成すると考えられている。例えば、流体の滅菌中、微生物がナノメッシュに接触すると、微生物に作用する集中的な力が生じることになると考えられる。こうした力はまず細胞を引付け、次にその付着および/または変性のいずれかを引き起こす。この変性が細胞膜の崩壊または細胞内部の損傷を伴い、そうして微生物またはその繁殖能力を無力化または破壊することが可能である。このようにして、微生物に関して流体を効果的に滅菌することができる。一般的な微生物は全長1〜5ミクロンの大きさであり、つまり、カーボンナノチューブなどのナノ構造の少なくとも100倍の大きさである。こうした微生物として知られている例は、大腸菌、コレラ菌、チフス菌、志賀赤痢菌、クリプトスポリジウム、ランブル鞭毛虫、赤痢アメーバおよびその他多数がある。水を媒介して伝染すりウイルスの例としては、ポリオ、A型肝炎、ロタウイルス、腸内ウイルス、およびその他多数がある。化学剤の例としては、イオン、重金属、農薬、除草剤、有機および無機の毒素、微生物毒素(ボツリヌス中毒を引き起こすものなど)などがあるが、これに限定されるものではない。
【0079】
[0101] 大きさが大幅に異なるため、ナノスケールにかかる力は、ミクロスケール、またはマクロスケールテクノロジーに基づく力と比べて、桁違いに強い。集光によりレーザ光線を強くする方法と同様に、力が収束することで、ナノスケールでの微生物を引付ける力および/または破壊する力が強くなるのである。こうして、大きな規模では効果を発揮するには小さすぎるか、または多大のエネルギーを消費するような機械的および電気的な力を、ナノスケールでは、微生物の効果的かつ効率的な除去または破壊に用いることができる。
【0080】
[0102] このナノの世界で微生物を吸着して破壊することができると考えられているメカニズムは、独立して作用することも、別のものと共同で作用することもある。限定せずにそうした例を挙げると、次のようなものがある。
[0103]−集束した力を利用した細胞壁への機械的浸透および/または細胞壁の摩擦
[0104]−細胞壁および移動路への外的な損傷、および/またはDNA、RNA、蛋白質、細胞小器官等への細胞内部の損傷のいずれかを引き起こす振動波
[0105]−セル構造に損傷を与える、カーボンナノチューブ周囲の液体における衝撃波によるバブルキャビテーション
[0106]−生物学的汚染物質を捕捉する電磁力、静電気、ファンデルワールス力
[0107]−ゼータ作用を利用してナノ構造近くで水素結合を破壊し、細胞壁および/またはDNAに損傷を与える
[0108]−特定のナノチューブを官能基化して水中で自然発生するH+イオンを引付けることによりナノ構造の周辺環境が酸性化され、細胞壁および/またはDNAが損傷する
【0081】
[0109] 一般的な微生物の細胞内の浸透圧は周囲の流体の圧力よりも高いため、非生理学的な条件を想定すると、細胞壁に対する些細な損傷であっても、高圧から低圧へと細胞の内容物が流出するため、全体的な破裂を引き起こすことができる。さらに、ウイルスまたは微生物の細胞のDNAに十分な損傷を与えれば、少なくとも1つの微生物について、繁殖力か、または増殖細胞に感染させる能力を破壊し、感染を引き起こせないようにすることができる。
【0082】
ナノ電子流体浄化
[0110] 本開示によれば、流体浄化に関する別の方法も、ナノメッシュ物品に基づいている。この場合、静電界または電磁界がナノメッシュに課され、流体の浄化を制御する。静電気分離装置の挙動のように、ナノメッシュに電位をかけることでナノスケールの汚染物質を除去できる。さらに、この方法は逆に、フィルタ物品を清潔にする際にも使用できる。
【0083】
[0111] また、ナノメッシュ全体を動電磁界で刺激することができ、適切に調整してあれば、これによりナノメッシュ全体に振動を起こすことができる。こうした振動は、微生物に損傷を与える効果があり、また、超音波自浄効果を誘発する。これに関連して、本発明の物品の有用性は、強度の高さ、剛性の高さ(ヤング率が大きい)、導電率の高さ、そしてナノチューブの圧電特性を利用していることである。
【0084】
[0112] さらに、一部の用途については、より一般化した電磁界をかけることで既存技術を超える流体浄化性能を実現することができる。例えば、導電性のあるナノメッシュ層が2層ある場合、電流をかけるとナノメッシュ層間に磁界が生じる(図8)。この磁界を調整して、流体の流れから電荷を有する微粒子すべてを捕らえることができる。
【0085】
液体の脱塩
[0113] 本開示によれば、液体の脱塩工程も、記載したナノメッシュ物品に基づいている。記載したナノメッシュを用いて液体の脱塩ができると考えられているメカニズムは、2つ以上のナノメッシュ膜に電圧差をかけることである。この場合、一方のナノメッシュ膜が正の電荷を帯び、他方のナノメッシュ膜が負の電荷を帯びている。電位をかけると、陽イオンは負の電荷を帯びた膜の方へ移動していき、陰イオンは正の電荷を帯びた膜の方へ移動していく。カーボンナノチューブの表面積は大きい(1000m2/グラム)ので、ナノメッシュ膜全体に対する電圧差の印加により、非常に静電容量の高い装置を作り出すことになり、それにより効率的で、小型で、可逆のイオン分離ゾーン(すなわちイオントラップ)ができる。
【0086】
[0114] 脱塩ユニットには、支持された導電ナノメッシュ2層以上を平行に、電気的に互いに絶縁された状態で組み込むことができる。2層以上の層は、静止モードまたは活性モードのいずれかで電荷を帯びることができる。静止モードでは、例えば、ナノメッシュ層は反対の電荷を帯び、間に塩トラップを作る。4層以上の層を有する活性モードの装置では、例えば、四相の信号が複数層のナノメッシュ構造に印加され、信号の4本の脚が4つの連続したナノメッシュ層に印加される。このパターンが4つのナノメッシュ毎に繰返される(図9)。このようにして、それぞれのナノメッシュ層上およびデバイス全体に対する電荷は時間と共に順次、陽性から中性に、中性から陰性に、そして中性にと移行する。これを時間と共に順次行うと、そこに通すことで水の流れとは異なる方向に塩イオンを移動させることのできる装置の中に、電子的に、移動する仮想のコンデンサが作り出される。濃縮された塩水は、仮想コンデンサの末端に集まって装置の塩水ポートから流出し、その一方で、真水が装置を通過する。
【0087】
[0115] 実際には、水分子の極性を持つ性質のために、水溶液中のイオンは、その電荷が、周囲を取り囲む水分子の集まりに保護されていて、この様子は図10示すようなデバイ雰囲気と呼ばれる。この水分子の集団がイオンが動くにつれて一緒に移動するため、イオンの有効質量とイオン半径を増やす働きをする。そこで、脱塩装置内の膜の層に(イオンの分離を誘導するために必要な周波数と比較して)高い周波数のAC信号が印加する。この高周波数信号の目的は、溶液中でイオンを守っているデバイ雰囲気を破壊することである。この水分子の殻を外すことにより、イオンは小さくなって嵩が減ったように見え、流体中を移動する際の抵抗が少なくなる。本発明のこの態様により、脱塩装置の効率が改善される。
【0088】
[0116] また、本明細書に記載の脱塩装置は、上述のように、得られる真水を浄化するためにナノメッシュ構造の生物学的除去特徴を利用して設計することができるであろう。
【0089】
バイオフィルムの防止
[0117] 本開示の1つの態様によれば、汚染微生物の付着と成長によりバイオフィルムが生じやすい表面をナノマテリアルの層でコーティングし、カビやバクテリアなどの望まれない要素の付着またはその後の成長を防止することができる。こうしたナノマテリアルの例を限定せずに挙げると、抗菌特性を有する元素または化合物(ヨウ素樹脂、銀、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、トリクロサン)で、表面に付着しているか、カーボンナノチューブ内部にあるか、または他のナノメッシュ構成要素に付着しているものが挙げられる。
【0090】
本発明で除去できる汚染物質の種類
[0118] 開示した物品を用いて流体から除去できる汚染物質の例を挙げると、病原性微生物[ウイルス(例えば天然痘および肝炎)、バクテリア(例えば炭疽菌、発疹チフス、コレラ)、接合子嚢、胞子(天然のものも兵器化されたものも)、カビ、菌類、大腸菌および腸内寄生虫など]、生体分子(例えばDNA、RNA)ならびに他の病原体[プリオン、ナノバクテリアなど(天然のものでも合成のものでも)]などの生物学的薬剤があるが、これに限定されるものではない。
【0091】
[0119] 「プリオン」とは、核酸および他のほとんどの蛋白質を修飾する方法による不活性化に抵抗する、小型で感染性、蛋白性の微粒子として定義される。人間も動物もプリオン病にかかり得る[牛の海綿状脳症(BSEまたは狂牛病)、または人間のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)など]。
【0092】
[0120] 「ナノバクテリア」とは、ナノスケールのバクテリアであり、一部は最近、人間にも動物にもバイオミネラリゼーションを引き起こすと主張された。さらに、ナノバクテリアは腎臓結石、一部形態の心臓病、アルツハイマー病の成立でも役割を果たしていると主張された。また、ナノバクテリアは、一部の工業工程で、望まれないバイオミネラリゼーションおよび/または化学反応を引き起こしているとも疑われている。
【0093】
[0121] 開示した物品を用いて流体から除去できる汚染物質その他の例を限定せずに挙げると、天然および合成の有機分子(毒素、エンドトキシン、蛋白質、酵素、農薬および除草剤)より構成される、有害か、危険か、または発がん性のある化学薬品、無機汚染物質(重金属、肥料、無機毒など)およびイオン(海水中の塩または帯電した空気で運ばれる微粒子など)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0094】
[0122] 清浄化した流体、特にきれいな水の用途としては、飲料水、灌漑、医療用および工業用などがある。例えば、半導体製造、金属めっき、一般化学産業が挙げられるがこれに限定されない工業用工程および実験用途での脱イオン水の原料として利用できる。
【0095】
[0123] さらに具体的には、本明細書に記載の物品を用いて流体から除去できる化学的化合物としては、以下の元素から選択される少なくとも1つの原子またはイオンを含む除去対象原子または分子が挙げられる:アンチモン、砒素、アルミニウム、セレン、水素、リチウム、ホウ素、炭素、酸素、カルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素、ニオブ、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、臭素、ストロンチウム、ジルコニウム、イットリウム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、ヨウ素、銀、カドミウム、インジウム、セシウム、スズ、バリウム、ランタン、タンタル、ベリリウム、銅、フッ化物、水銀、タングステン、イリジウム、ハフニウム、レニウム、オスミウム、プラチナ、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、ラドン、ラジウム、トリウム、ウラン、プルトニウム、ラドンならびにその組合せ。
【0096】
発明の一般的な構成
[0124] 本開示の別の態様は、官能基化カーボンナノチューブを含むナノメッシュ材料など、流体から汚染物質を除去するのに用いる物品に使用するナノメッシュ材料を作成するための方法に関する。最終的には円筒形の物品で用いられる、官能基化カーボンナノチューブおよび処理済ガラスファイバを含むナノメッシュを作成する一般的な工程を図11に示す。しかし、堆積に先立ってカーボンナノチューブが追加の基体と混合されるにせよ、されないにせよ、以下の工程は、いかなる形状の物品の製造についての記述としても利用できることに注意されたい。例えば、以下に示す工程の略図において、ステップ2の「処理済ガラスファイバ」は、本明細書に記載のいかなるものから選択される別の物質と単純に置換されることがあり、ステップ4に記載の基体は、空気浄化装置に用いる場合には、単純に「円筒形の炭素ブロック」から、平らに織った基体などの望ましい材料および形状に変更される。
【0097】
[0125] 前述のナノメッシュフィルタを含む結果として得られる装置の例を、図12および図13に示す。例えば、図12はカーボンナノチューブのナノメッシュを載せた活性炭でできた中空の管を有する物品の側面斜視図である。この実施形態では、汚染された流体は、管の外壁を通って流れ、浄化された流体は中空の管の内部から装置の外に流出する。例えば、図13は、平らな、または平面状の浄化装置を示している。
【0098】
1.官能基化カーボンナノチューブの調製
[0126] 官能基化カーボンナノチューブを調製する1つの方法は、一般に、市販のカーボンナノチューブに対して、溶液中で最初の超音波分解を行うことを含む。このようなカーボンナノチューブとしては、標準的には重量パーセントで95%超の純度を有し、長さは10〜20μmなど500nmから50μmの範囲内で、直径は2〜200nmという特徴的な寸法を有する、化学気相成長(CVD)炉法などの化学的な製法により製作されたマルチウォールのカーボンナノチューブパウダーなどが挙げられる。
【0099】
[0127] 従って、超音波分解に続いて、またはこれと同時に、硝酸、硫酸、塩酸、および/またはフッ化水素酸、またはその組合せから選択されるがこれに限定されるものではない酸の中でカーボンナノチューブを処理する。こうした酸類は単独でカーボンナノチューブの洗浄に用いることができ、または様々な組合せで用いることができる。例えば、一実施形態では、カーボンナノチューブはまず硝酸で洗浄され、次にフッ化水素酸で洗浄される。別の実施形態では、カーボンナノチューブは、硝酸での洗浄の後、硫酸で洗浄される。
【0100】
[0128] 酸洗浄は、アモルファス炭素、触媒微粒子およびその支持体であってナノチューブの表面化学に干渉しそうなものなどの汚染物質を除去するために行われ、カーボンナノチューブの表面の欠陥箇所に付着する官能基(例えばカルボキシル基など)を形成する。
【0101】
[0129] この官能基化により、カーボンナノチューブは親水性をも有することになる。これは、結果として得られる物品の濾過性能を改善すると考えられている。カーボンナノチューブは、次いで最終的な蒸留水でのすすぎを行い、蒸留水などの適切な分散剤、またはエタノールまたはイソプロパノールなどのアルコールの中で懸濁させる。一実施形態では、洗浄中のナノチューブの適切な分散を維持するために、この官能基化工程の間、超音波分解、攪拌および加熱が行われる。
【0102】
2.金属酸化物で処理したファイバの調製
[0130] 一実施形態では、記載した物品で用いるためのナノメッシュを作る製法には、前述の官能基化カーボンナノチューブを、本明細書に開示する、金属酸化物(酸化鉄など)または金属水酸化物(水酸化鉄など)で処理した(コーティングまたはデコレーション)ファイバと混合することが含まれる。このような金属酸化物または金属水酸化物で処理したガラスファイバの調製には、金属酸化物または金属水酸化物を含有する溶液と、直径が0.2μm〜5μmの範囲のファイバなどの市販のガラスファイバとを混合することが含まれる。
【0103】
[0131] 一実施形態では、この製法は、ガラスファイバを、蒸留水とコロイド状の金属酸化物または金属水酸化物の溶液との混合液と共に、ガラスファイバの処理に十分な時間だけ攪拌することを含む。次いで、処理したファイバを炉で乾燥させる。
【0104】
3.懸濁液の調製
[0132] 懸濁液を作るのに用いる成分は、官能基化カーボンナノチューブ溶液と、上記の製法で調製した金属酸化物または金属水酸化物で処理したファイバである。懸濁液の構成要素パーツを調製するには、まず、官能基化カーボンナノチューブを、水かエタノールなどの適切な媒体中で、超音波分解により分散させる。金属酸化物または金属水酸化物で処理したガラスファイバも、同様に水またはエタノールなどの適切な媒体中で、容器内で上記とは別に分散される。次に、これらの別々の分散液を混合して官能基化カーボンナノチューブと金属酸化物または金属水酸化物で処理したファイバの懸濁液を調製する。
【0105】
[0133] 一実施形態では、最終的なナノメッシュの構造は、官能基化カーボンナノチューブと金属酸化物または金属水酸化物で処理したガラスファイバの別々の層を含む。こうした別々の層は、比率の異なるカーボンナノチューブと処理済ガラスファイバとから作成した別個の懸濁液から形成される。
【0106】
4.カーボンナノメッシュの堆積
[0134] 官能基化カーボンナノチューブと処理済ファイバの混合物を堆積する手順としては、本明細書に開示するいずれかのファイバの金属酸化物または金属水酸化物によるコーティングなどが挙げられる、これに限定されるものではない。例えば、ナノメッシュは差圧堆積または直接集合を用いてカーボンナノチューブと処理済ファイバの混合物から作ることができる。この実施形態では、堆積工程で、基体に差圧をかけて官能基化カーボンナノチューブと金属処理済ファイバとの懸濁液をカーボンブロック基体に堆積させる。この実施形態では、基体にかける圧力の差は、基体ブロックの内側で圧力が低くなるように調整する。この差圧により、懸濁液を含む流体を強制的に基体を通して流し、基体の外側表面にカーボンナノチューブとガラスファイバの混合物が堆積して、それによりナノメッシュを形成する。
【0107】
5.物品の組立て
[0135] ナノメッシュ材料が乾燥したら、コーティングした基体を多孔質の保護紙と目の粗いプラスチックの網で覆い、ナノメッシュ材料を保護する。次にエンドキャップを取付け、流体がナノメッシュを迂回するのを防止するため、ナノメッシュの各辺を密封する。このアセンブリは次に外部ハウジングに組み込まれ、このハウジングが密封されて、流体から汚染物質を除去する物品を形成する。外側のプラスチックハウジングのさらに内部にある、こうした最終的なナノメッシュを含むフィルタアセンブリを図19に示す。
【0108】
効果判定方法
[0136] 本明細書に記載の確立された微生物技術を用いれば、カーボンナノメッシュフィルタで、7log超のバクテリア汚染物質(大腸菌)および4log超の代用ウイルス病原体(MS2バクテリオファージ)を除去できることが実証された。こうした除去能力は、US−EPA(「Guidance Manual for Compliance with the Filtration and Disinfection Requirements for Public Water Systems Using Surface Water, U.S. Environmental Protection Agency」、1991年3月)の定めるバクテリア除去の要求条件およびウイルス除去の推奨レベルを超えている。本発明の物品の独立した試験では、この物品が米国における水の浄化の基本的な基準を満足することが確認された。
【0109】
[0137] 大腸菌などのバクテリアおよびMS2バクテリオファージなどのウイルスを用いて、おおむね上に述べた方法で作成したサンプルについて、多数の試験を行った。MS2バクテリオファージは、一般に飲料水のウイルス除去能力について装置を評価する際に代用品として使用されるが、これは雄特異の一本鎖RNAウイルスで、直径0.025μm、形状は二十面体である。その大きさおよび形状は、ポリオや肝炎ウイルスなど、他の飲料水媒介ウイルスに似ているが、MS2バクテリオファージは人間の病原体ではない。
【0110】
[0138] 以下の例すべてで大腸菌バクテリアおよびMS2バクテリオファージの水からの除去試験に用いているプロトコルは、(i)Standard Operating Procedure for MS2 bacteriophage Propagation/Enumeration. Margolin, Aaron, 2001, University of New Hampshire, Durham, NHおよび(ii)Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater, 20th Edition, Standard Methods,1998,APHA,AWWA,WEF,Washington,DCに一致し、これにおおむね忠実に従っている。上記文書は、参照により本明細書に組み込むものとする。
【0111】
[0139] 上述の方法を用いると、以下の例に示すように、バクテリアとカーボンナノチューブとの間には強い付着力が観察される。例えば、バクテリアはカーボンナノチューブ表面に、特に超音波分解中に分散された場合、に付着する。開示のカーボンナノチューブのナノメッシュにこれを通したとき、大腸菌(E.coli)の懸濁液と同じ付着が起こると考えられる。
【0112】
[0140] また、バクテリアの細胞の完全性がカーボンナノメッシュとの相互作用により部分的に危うくなるかもしれない証拠が観察された。例えば、本明細書に記載のカーボンナノチューブの存在下のバクテリアを電子顕微鏡で観察すると明らかになる画像では、バクテリアの殻/細胞壁で、明らかな浸食を示している部分がある。長時間(24時間)置くと、明らかに細胞壁の一体性が下の方から崩壊し始め、細胞の内外で浸透圧が異なるために、細胞壁の大きな破損ならびにバクテリアの分解が生じる。しかし、この細胞の完全性の崩壊は、相顕微鏡の光学顕微鏡により観察される通り、カーボンナノチューブとの接触後、即座に生じた様子であった。
【0113】
[0141] さらに試験を重ねて、一部バクテリアの崩壊を確認した。これは、少なくとも少量のフリーバクテリアDNAおよび蛋白質が濾液中に存在することにより証明される。しかし、ほとんどのバクテリア細胞は、ナノチューブとの接触直後は無傷のままの状態である。本発明のナノメッシュ物品により、流出する流れから効果的にバクテリアを除去できることが実証済みだが、ナノチューブのバクテリア細胞を殺す能力については、可能性は高いものの、まだ確立されていない。
【0114】
[0142] さらに、本発明の物品の他の試験で、前述したような他の汚染物質(金属、塩、有機汚染物質、エンドトキシンなど)を水および空気から除去することができる。
【0115】
[0143] 本発明は、以下に示す非限定的な例によりさらに明確になるであろう。これらの例は純粋に本発明の例を示すことを意図している。
【0116】
実施例#1 大腸菌(E.coli)とカーボンナノチューブとの相互作用
[0144] 大腸菌バクテリアの培養菌とカーボンナノチューブの懸濁液との相互作用を調査して、カーボンナノチューブがバクテリアの細胞に付着し、次いでこれを無力化または破壊する効果を測定した。さらに、この研究により、本発明のナノ浄化物品において働いているメカニズムを見抜くことができるだろう。手順として、バクテリア培養菌を含む未処理サンプルを、カーボンナノチューブを混合したサンプルと比較した。比較は、光学顕微鏡および原子力顕微鏡の両方の技術を用いて高い倍率のもとで行う。
【0117】
大腸菌懸濁液の調製
[0145] 大腸菌懸濁液は、滅菌した生物学的ループ(市販品)を用いて作成され、再構成された菌株[米国微生物系統保存機関(ATCC)から入手できる。微生物株番号ATCC#25922]で満たされたループを取出した。これを市販の血液寒天培地のプレートに筋のように付けた。このプレートを、この後、36℃で12時間から18時間培養し、培養器から取外して、純度を検査した。
【0118】
[0146] 滅菌した生物学的ループ(市販品)を用いて、培養した菌で満たされたループ1つを取出し、10mlの滅菌した市販のトリプシン大豆培養液(レメル社カタログ番号07228)の中に置いた。大腸菌を、得られたトリプシン大豆培養液で、温度37℃で18時間培養し、次に遠心分離と懸濁を行って、純水中に1ml当たりおよそ5の109倍のコロニー形成単位(cfu)を含む濃縮されたバクテリア培養株を作り出した。
【0119】
硝酸を用いたカーボンナノチューブの官能基化
[0147] カーボンナノチューブは、硝酸溶液で処理して汚染物質(アモルファスカーボン、触媒粒子およびその土台であってナノチューブの表面化学に干渉する可能性のあるもの)を除去し、ナノチューブの結晶欠陥箇所の数を増やして、こうした欠陥箇所にカルボキシル化学基を付着させる。この官能基化により、カーボンナノチューブに親水挙動も与えられる。
【0120】
[0148] 処理としては、浄化したナノチューブ250mgを、総量35mlの濃硝酸と遠心管内で混合し、よく振ってから、コールパーマー社8851超音波分解装置内で、最高出力で10分間、50℃の水浴で超音波分解を行った。硝酸/カーボンナノチューブ混合液は、上澄みがきれいになるまで(6〜10分)2,500rpmの遠心分離機にかけ、次に上澄みを別の容器に移した。硝酸処理を繰返すが、但し超音波分解は20分とした。次に、硝酸処理したカーボンナノチューブを総量35mlの蒸留水に浮かべ、10分間(上述のように)超音波分解を行い、遠心分離を行い(上述のように)、上澄みを他の容器に移すことにより、水洗いした。この水洗いはpHが少なくとも5.5になるまで(3〜4回)繰返し、毎回、超音波分解を5分間行った。
【0121】
試験溶液の調製
[0149] 上に概略を示したように調製した大腸菌懸濁液を、次に二等分した。未処理溶液(試験溶液#1)は、分割した大腸菌懸濁液の一方を蒸留水で希釈し、大腸菌濃度を〜2×109cfu/ml(2:5で希釈)にして調製した。もう一方の溶液(試験溶液#2)は、もう一方の分割された大腸菌懸濁液に官能基化ナノチューブを添加することにより調製した。次にこの溶液を、試験溶液#1と同じ大腸菌濃度になるまで、蒸留水で希釈する。この希釈により、試験溶液#2のカーボンナノチューブの濃度は625ppmとなった。
【0122】
[0150] 試験溶液#1と#2の両方について、ブランソン2510超音波分解装置で3分間、同時に超音波分解を行った。次いで、これらの試験溶液を、市販の遠心分離機を用いて2500rpmで2分間の遠心分離して、ペレットを形成し、上澄みは1mlを残して他の容器に移した。次に、試験溶液#1と#2のペレットを用いて、下記の2種類のサンプル(#1と#2)を作成する。
【0123】
サンプル#1の調製:カーボンナノチューブを含まないもの
[0151] サンプル#1は、カーボンナノチューブを含まない試験溶液の滴を市販の顕微鏡用スライドガラス(American Scientific Products社のマイクロスライド(プレーン、カタログ番号M6145、大きさ75×25mm)を硫酸で洗浄し、蒸留水ですすいだもの)にたらし、19時間にわたって4℃で冷蔵した。冷蔵後、タッピングモードでビーコ社のDimension 3100走査型プローブシステムを用いて原子力顕微鏡(AFM)で分析を行い(固定せずに)、サンプルを調査した。
【0124】
[0152] サンプル#1は、熱的に固定(短時間、裸火にかざすことにより)した上で着色(グラム染色のクリスタルバイオレット液を使用)し、水洗いした。オリンパス光学顕微鏡を用い、倍率1000xで、浸漬油の中で光学顕微鏡による観察を行った。デジタル画像はオリンパスDP10 CCDで作成した。
【0125】
サンプル#2の調製:カーボンナノチューブ処理したもの
[0153] サンプル#2は、カーボンナノチューブと大腸菌の試験溶液(試験溶液#2)の滴を上述の顕微鏡用スライドガラスにたらして(塗って)調製した。サンプルを熱的に固定し、着色した上で、上記#1と同様に光学顕微鏡観察を行った。次にサンプル#2を4℃の冷蔵庫に19時間放置し、その後これを取外して、サンプル#1と同様にAMF分析(上述の通り)を行った。サンプル#2を冷蔵庫に戻してさらに24時間置いた後、光学顕微鏡観察をもう一度行った。
【0126】
顕微鏡分析の結果
[0154] サンプル#1(カーボンナノチューブのないバクテリアの懸濁液)では、スライドの表面全体に大腸菌のバクテリア細胞が均一に分布していた(図14)。画像からさらに、バクテリアの境界線がくっきりとして、バクテリア細胞が無傷であることを示唆していることがわかる。冷蔵庫に乾燥状態で2日間保管した後も、形状に変化は見られなかった。
【0127】
[0155] カーボンナノチューブで処理した試験溶液からのサンプル(サンプル#2)についての結果は、バクテリアがカーボンナノチューブに凝集していることを示していた(図15)。ナノチューブの大多数は、スライドから余分な汚れを洗い流すときに除去された。バクテリアの集中は、カーボンナノチューブの境界部分で観察された。
【0128】
[0156] カーボンナノチューブを含まないサンプル(サンプル#1)については、多数の個別のバクテリア細胞が、スライド全体にわたって存在する。バクテリア細胞は、カーボンナノチューブを含むサンプル(サンプル#2)では、ほとんどのスライドで見られない。図15に示すように、後者の場合に存在するバクテリアは、カーボンナノチューブの周辺にしっかりとかたまって、カーボンナノチューブがバクテリアを捕らえ、保持していることを示している。
【0129】
[0157] サンプル#1では、大腸菌が近接して一緒に固まっている様子が見られた。図16に示すように、正常な細胞のバクテリア細胞は、境界が明瞭である。バクテリアの大きさおよび凝集密度の低下が、熱処理前のサンプル#1のAFM画像と、熱処理後のこのサンプルの光学画像で見られた。
【0130】
[0158] サンプル#2では、ナノチューブの近くに一部の細胞があり、大腸菌の細胞壁の境界は拡散または損傷していた。実際、ナノチューブの混合後、大腸菌細胞の中には認識できる程度を超えて崩壊したものもあった。拡散した大腸菌のかけらの存在は、ナノチューブの近くでも見られた。
【0131】
[0159] 大腸菌および官能基化カーボンナノチューブを蒸留水中で超音波分解したところ、2つの構成要素が固まりになった。これは、ナノスケールで作用した静電気とファンデルワールス力のためであると考えられる。検知できる限り、懸濁液中のすべてのバクテリアがナノチューブと接触し、付着していた。水溶液#2には、もはや自由な大腸菌細胞はなかった。これは、分散されたカーボンナノチューブの、バクテリアを強く引付けて動けなくする能力を示していた。
【0132】
[0160] 大腸菌の崩壊は、これに注目すると、細胞がナノチューブと密着した後に発生していた。結果的に、こうしたバクテリア細胞は、細胞境界の鮮明さを失った様子で、内容物が細胞から流れ出しているように見えた。例えば、図17は、カーボンナノチューブとの相互作用により破裂したバクテリア細胞の走査式電子顕微鏡(SEM)による画像を示している。
【0133】
[0161] 影響される細胞内では、このプロセスの始まりは3時間後に注目され、22時間後には内容物が非常に遠くまで広がって、細胞の形状を見分けることが困難になった。
【0134】
[0162] 運動性の高いバクテリアである蛍光菌を、室温において栄養培養液(Difco Laboratory社製)中で12時間培養し、カーボンナノチューブの溶液と混合した。暗視野の顕微鏡で見ると、運動性のあるバクテリアが近くを泳ぎ、集まっているカーボンナノチューブに引き込まれて、露出しているカーボンナノチューブのファイバにしっかりと付着する様子が観察された。接触5分以内で、カーボンナノチューブの集まりの表面全体が数百の無傷のバクテリアで覆われ、バクテリアがもがいても離れられないでいる様子からすると、しっかりと付着したのは明らかであった。こうしたバクテリアは運動性をすっかり失い、カーボンナノチューブファイバと最初に接触してから30秒以内に完全に固定された。これは、微細に分散したカーボンナノチューブファイバの、多数のバクテリアに迅速に付着して固定する能力を示していた。これにより、微生物除去におけるカーボンナノチューブフィルタの効果の基礎が確認された。
【0135】
実施例2:円筒形浄化物品
円筒形浄化物品の構成
水酸化鉄処理ガラスファイバの調製
[0163] 蒸留水23.5リットルと10N水酸化ナトリウム(NaOH)9.62mlとの溶液を作成し、1時間攪拌した。塩化鉄(FeCl3・6H2O)を添加し、最終的にpHが2.2以下になるまで攪拌した(24時間以下)。この溶液に、直径100〜500nm、長さ300〜500μmのガラスファイバ(Johns−Mansville社製)200グラムを加え、溶液中に鉄が見えなくなるまで攪拌を続けた(3時間以下)。溶液を蒸留水で希釈して、1リットル当たり10グラムの濃度のガラスファイバを得た。
【0136】
堆積懸濁液の調製
[0164] 官能基化カーボンナノチューブと、上記の通り調製した水酸化鉄処理ガラスファイバとの溶液を用いて懸濁液を用意した。懸濁液の構成要素パーツを調製するために、5gの官能基化したカーボンナノチューブ(実施例#1で述べた硝酸洗浄手順によりカルボキシル基を導入したもの)を水1リットル中で懸濁させ、コールパーマー社8851超音波分解装置内の室温の水浴に入れて、最高出力で20分間、超音波分解を行った。超音波分解した官能基化カーボンナノチューブ/水混合液に蒸留水4リットルを加え、水1mlに対して官能基化カーボンナノチューブ1mgの濃度とした。およそ100mlの鉄でデコレーションしたガラスファイバ溶液を別の容器に入れて、蒸留水1リットルで希釈した。この混合液を市販のブレンダーで5分間混ぜ合わせた。
【0137】
[0165] 最初の堆積懸濁液を混合するため、懸濁した官能基化カーボンナノチューブ(上記の通り)600mlを、ガラスファイバ溶液(重量によるCNT/ガラスの比率は5:8)960mlに加えた。この混合液を、十分な量の蒸留水を加えることにより4リットルまで希釈し、ブランソン社のモデル900Bのプローブ式超音波分解装置を使用し、最高出力で10分間、超音波分解を行った。
【0138】
カーボンナノメッシュの堆積
[0166] 最終的なナノメッシュの構造は、官能基化カーボンナノチューブと水酸化鉄をコーティングしたガラスファイバとの混合物の層をカーボンブロック基体に堆積させることにより得られた。
【0139】
[0167] 官能基化カーボンナノチューブと水酸化鉄のコーティングまたはデコレーションを施したガラスファイバとの混合物を堆積させる手順を、図18に略図として示した。円筒形のカーボンブロックを穴のあいたの回転軸に載せることによりフィルタアセンブリを作成した。堆積チャンバをカーボンナノチューブ/ガラスファイバの懸濁液(5:8の比率)で満たした。フィルタアセンブリを、フランクリン・エレクトロニクス・ヴァリアン社のトリスクロール真空ポンプに導く真空配管に接続し、次にこれを満たされた堆積チャンバ内に沈めた。フィルタアセンブリに取り付けた真空ポンプのスイッチを入れると、懸濁液全体が真空下でカーボンフィルタの基体を通って引き込まれ、外側の表面にナノメッシュを堆積させる。堆積後、堆積フィルタアセンブリを堆積チャンバから取り外し、真空ポンプに接続したままにして、堆積ナノメッシュフィルタアセンブリを真空下で1時間から2時間、窒素雰囲気内で50℃に設定した乾燥炉の中で乾燥させた。
【0140】
[0168] 完全に組み立てたフィルタ物品は、官能基化カーボンナノチューブのナノメッシュでコーティングされ、円筒形のプラスチックの網で保持された多孔質の保護紙で覆われた、中央のカーボンフィルタコアから構成された。このカートリッジには蓋をかぶせ、流体がナノメッシュを迂回するのを防止するためにナノメッシュの縁の部分を密封し、外側のハウジングの中に置いて、最終製品を作成した(図19)。
【0141】
円筒形浄化物品の効果
[0169] 汚染された水での円筒形の発明物品の流体浄化試験として、大腸菌バクテリア培養株[米国微生物系統保存機関(ATCC)から入手]を用いて試験を行う。
【0142】
[0170] バクテリア評価分析は、この例(実施例2)に従って作成したナノメッシュを、大腸菌培養株ATCC#25922で再構成した流体を用いて試験することにより行った。この試験用流体は、滅菌生物学ループ(市販品)を用いて、再構成された菌株で満たされたループを取出し、これを市販の血液寒天培地に筋状に付けることにより作成した。このプレートを次に36℃で12〜18時間培養した。次に培養装置から培養株を取出し、純度を検査した。
【0143】
[0171] 滅菌した生物学的ループ(市販品)を用いて、培養した菌で満たされたループ1つを取出し、10mlの滅菌した市販のトリプシン大豆培養液(レメル社カタログ番号07228)の中に置いた。大腸菌を、得られたトリプシン大豆培養液で、温度37℃で18時間培養し、1ml当たりおよそ1の109倍のコロニー形成単位(cfu)を含む培養株を作り出した。この培養株のサンプル1mlを、100mlの水に加えて試験に使用し、これにより濃度をおよそ1ml当たり1×107cfuに希釈した。次に、得られた試験用の水を、円筒形の浄化物品に通した。
【0144】
[0172] 試験は、上に引用した「Standard Methods for the Examination of Water and Waste Water」に従って行った。上記の実験プロトコル案に従った試験の結果によれば、検査流体を本発明のナノメッシュに通したとき、6log超(>99.99995%)から7log超(>99.999995%)の範囲で安定して大腸菌バクテリアを除去できた。この試験の結果、水からのバクテリア除去に関して、EPAの飲料水基準(既出)を超える除去率を確立した。EPA基準では、飲料水とするには大腸菌バクテリアを6log超(>99.99995%)除去することと規定している。上記のように作成した試験用懸濁液よりも大腸菌バクテリアの濃度の高いバクテリア濃度既知の溶液(すなわち試験溶液)を、ナノメッシュに通したところ、大腸菌バクテリア除去のlogの高い浄化改善を達成した。このような高濃度での試験により、7log(>99.999995%)を超える除去率が確認された。この例で説明している試験手順を用いたナノメッシュの独立した試験により、この材料が大腸菌バクテリアに対して障壁となることがわかる。さらに、独立した研究室での試験の結果としても、様々な試験バクテリア(Klebsiella terrigeneおよびBrevindomonas)の6logを超える除去率が示され、この材料がバクテリア全般に対して障壁となることが立証された。
【0145】
実施例3:平面浄化物品の製造
[0173] 実施例2と同様、平面ナノメッシュを、市販の浄化カーボンナノチューブと不織溶融ポリプロピレンファブリック基体から作成した。最初に、官能基化カーボンナノチューブ100mg(実施例#1に記載したように硝酸でカルボキシル基を導入)を市販そのままのイソプロパノールに加え、「ブランソン900B超音波分解装置」で出力を80%にして、カーボンナノチューブが十分に分散するまで(約10分間)超音波分解を行った。混合液はイソプロパノール2リットルを加えてさらに希釈し、最終的な混合物の総量が2.4リットルになるようにした。この希釈混合物についてさらに10分間超音波分解を行った。
【0146】
[0174] 次に、市販の直径200nmのガラスナノファイバ800mgを、市販のブレンダーを最高出力にして10分間、市販のままのイソプロパノール500ml中で均質化した。均質化した混合物に次に市販のままのイソプロパノールをさらに1リットル加えて希釈した。
【0147】
[0175] カーボンナノチューブとガラスナノファイバの混合物を混ぜ合わせ、次に十分な量(Q.S.)のイソプロパノールを加えて4リットルとした。この4リットルの溶液を次に「ブランソン900B超音波分解装置」で、出力80%で15分間超音波分解を行い、これによりカーボンナノチューブのナノマテリアルを均一に分散した。
【0148】
[0176] 次に、4リットルの溶液全体を、1雰囲気の差圧の下で市販の5ミクロンの不織溶融活性化カーボンファブリックに通し、カーボンナノチューブと処理済ガラスファイバのナノメッシュを堆積させた。得られたナノメッシュを製造装置から取外し、50℃の炉で2時間乾燥させた。
【0149】
[0177] 得られた平らで四角形のナノメッシュ/基体膜を、NSFに準拠したホットメルト接着剤を使って平らなハウジングの片側に糊付けする。この半分のハウジングをもう一方と噛み合わせ、糊付けして密封する。得られた装置の構造を、図13に略図として示す。
【0150】
平面浄化物品の効果の試験
a)大腸菌に汚染された水−化学分析
[0178] 以下に、本例に従って作成した平面ナノメッシュ浄化物品について、実施例2に記載したように行った大腸菌試験からの濾液の化学分析の結果を示す。この実施例は、本発明のナノメッシュを通過した大腸菌バクテリアの一部の破壊について証拠を提供した。この汚染物質(大腸菌バクテリア)一部破壊の証拠は、試験濾液にバクテリアのDNAと蛋白質が存在することにより立証された。
【0151】
[0179] 試験は、実施例2と同じ手順に従って行われたが、但し、試験溶液の組成は大腸菌〜1×108cfu/mlであった。合計100ml(計〜1×1010cfu)のこの試験溶液を、〜0.25psiの差圧をかけて、カーボンナノメッシュ/基体材料に通した。対照濾液は、大腸菌の試験濾液を市販の0.45ミクロンのミリポアフィルタに通して得た。試験濾液は凝縮されていなかった。得られた濾液、対照用および試験用、を、次に市販のスペクトル光度計で分析し、蛋白質およびDNAの存在を判定した。しかし、濾液を市販のスペクトル光度計で分析したところ、40μg/mlのDNAおよび0.5mg/mlの蛋白質が見つかった。凝縮していない試験濾液中の蛋白質とDNAがこのレベルの濃度であり、ミリポアフィルタを通して濾過することにより得た対照の材料よりも6倍高かった。これらの濃度から、ナノメッシュにより添加された大腸菌の少なくとも一部が破壊されたことが確認された。
【0152】
b)MS−2バクテリオファージウイルスで汚染された水
[0180] この例(実施例3)に従って作成された平面浄化物品を、上述の手順および「Standard Operating Procedure for MS−2 Bacteriophage Propagation/Enumeration, Margolin, Aaron, 2001, An EPA Reference Protocol」に記載の手順を用いてMS−2 バクテリオファージウイルスで汚染された水で試験した。MS−2バクテリオファージウイルスは一般に、飲用水の処理用に設計された膜の処理能力の評価に用いられる(NSF1998)。このサンプルについて、加圧した上での試験を、上述の実験プロトコルを用いて、試験溶液100mlで行った。MS−2試験材料は、上記の手順に従って調製された。
【0153】
[0181] この試験では、本例(実施例3)に従って作成された、カーボンナノチューブのナノ構造材料より構成される80枚の膜が試験された。使用した試験材料は、MS−2バクテリオファージウイルスで1ml当たりおよそ5×106のプラーク形成単位(pfu)という濃度まで汚染された水であった。
【0154】
[0182] 試験した80個のうち、50個では5log(99.999%)または5log超(>99.995%)のMS−2除去を達成した。残りの30個では、MS−2の除去は、4 log(99.99%)または4log超(>99.995%)であった。EPAの基準では、飲用水について、MS−2バクテリオファージの4logの除去が推奨されているが、より高いlogでのMS−2で試験することにより、さらに高い感度(さらに高いlogでの除去)が達成できると考えられている。本例(実施例3)に従って作成されたカーボンナノチューブのナノメッシュを、上述のように作成したMS−2バクテリオファージの高濃度の試験用懸濁液を使って試験することにより、こうした試験で、MS−2バクテリオファージの除去のlogを高めて浄化改善を達成した。本例(実施例3)に従って作成されたカーボンナノメッシュ物品の独立した試験により、この材料がMS−2バクテリオファージに対する障壁となることがわかる。
【0155】
c)砒素(As)で汚染された水
[0183] 本例(実施例3)に従って作成された平面浄化物品と、砒素で汚染された水とを用いる。この試験では、〜150ppb(ppb:十億分の一)の砒素を含む水溶液100mlを、本例(実施例3)に従って作成したカーボンナノメッシュに通した。砒素処理した水のサンプルをEPA法#SM183113Bに従って分析した。試験用砒素処理水を本発明のカーボンナノメッシュ材料に1回通した後の試験濾液の分析から、砒素レベルが86%±5%下がっていることが確認された。
【0156】
d)バクテリアに汚染された航空機燃料
[0184] 本例(実施例3)に従って作成された平面浄化物品を、汚染された航空機燃料に関して試験した。汚染航空機燃料(JP8)のサンプルは、Wright Patterson空軍基地内の米国空軍研究施設にある33,000ガロンの貯蔵タンクから入手した。入手後、このサンプルをトリプシン大豆寒天培地で培養したところ、3種類のバクテリアが見つかった。すなわち、バチルス2種類と単球菌1種類であった。サンプルを2リットルずつ2つの容器に分けた。両方の容器で、航空機燃料が上に水が下にと、はっきりと2層に分かれた。容器Aでは、水と燃料の境界に、ひどく汚染された成長層があった。容器Bでは、わずかな汚染しか見られなかった。試験用のバクテリアは、容器Bの燃料と水の境界面から入手した。
【0157】
[0185] 試験用の燃料/水/バクテリアを1分間、精力的に揺り動かすことにより行う均質化の後、燃料/水/バクテリアの試験用混合物200mlを1回、〜1.5psiの差圧を用いて、本例(実施例3)に従って作成されたカーボンナノチューブ、ナノ構造材料に通した。
【0158】
[0186] 燃料/水/バクテリアの試験濾過物サンプルは、燃料と水の構成部分に分離させることができ、各構成部分から4種の試験サンプルが得られた。各試験サンプルを寒天培地に置いた。サンプルを、バクテリアの成長を分析するために37℃で培養し、菌の成長を分析するために室温で培養した。サンプルを24時間および48時間培養した後、試験濾過物の試験プレート上では、バクテリアまたは菌の培養物の成長は観察されなかった。対照サンプルでは、24時間および48時間の培養後、活発なバクテリアの群体および菌の成長が見られた。この結果から、本例(実施例3)に従って作成したカーボンナノメッシュは、実験プロトコルによる探知の限度を超えて燃料からバクテリアおよび菌をの除去することを達成したことから、燃料中でバクテリアの障壁になったことが確認された。
【0159】
実施例#4:多段階官能基化を用いた平面浄化物品
[0187] 平面のナノメッシュ装置は、市販の浄化したカーボンナノチューブと、不織溶融カーボンティッシュペーパー基体(0.5oz/yd2)とから作成された。この装置の製造には、上に定義した自己集合過程を利用していた。この自己集合を可能とするために、特定の陽性および陰性の官能構成部分を用いた。カーボンナノチューブは、アミン基で官能基化されていて、水に分散されたとき、陽性になった(すなわち正のゼータ電位)。ガラスファイバは水酸化鉄のクラスターでデコレーションされ、水に分散されたとき、陰性になった。図22に示すように、2つの懸濁液が混合された時、電気力で、ナノチューブはガラスファイバに巻きついた。
【0160】
[0188] まず、カーボンナノチューブ20gを60%の36N硫酸と40%の15.8N硝酸からなる400mlの液を用いて、110℃で30分間、還流させる。これによりカーボンナノチューブにカルボキシル官能基が付加されることがわかっている。こうしたカルボキシル官能基化ナノチューブを濾過し、蒸留水で洗浄し、次に100℃の炉で乾燥した。乾燥ナノチューブを次に500mlの塩化チオニルに懸濁し、60℃で20時間の超音波分解を行った。塩化チオニルを蒸留し、カーボンナノチューブのサンプルを真空ポンプを使って脱水した。脱水したナノチューブを500mlのエチレンジアミン中に懸濁し、窒素雰囲気中で、60℃で20時間、超音波分解を行った。エチレンジアミンを蒸留し、サンプルを0.1M塩酸で洗浄し、pHが中性になるまで蒸留水で濾過とすすぎを繰返した。すすいだアミン官能基化カーボンナノチューブを、次いで100℃の炉で24時間乾燥させた。
【0161】
[0189] アミン官能基化カーボンナノチューブ360gと処理済ガラスファイバ960mgの混合物を混ぜ合わせ、十分な量(Q.S.)の蒸留水を加えて4リットルとした。この4リットルの溶液について、「ブランソン900B超音波分解装置」を使って出力80%で15分間超音波分解を行い、カーボンナノチューブ/ガラスファイバからなるナノマテリアルを均一に分散した。
【0162】
[0190] 溶液4リットル全部を、1気圧までの差圧の雰囲気の下で、市販の不織溶融カーボン組織(5oz/yd2)に通し、自己集合したカーボンナノチューブ/処理済ガラスファイバからなるナノメッシュを堆積させた。得られたナノメッシュを製造装置から取り外し、50℃の炉で2時間乾燥させた。
【0163】
[0191] 得られた平らで四角形のナノメッシュ/基体膜を、NSFに準拠したホットメルト接着剤を使って平らなハウジングの片側に糊付けする。この半分のハウジングをもう一方と噛み合わせ、糊付けして密封する。結果的に得られる装置の構造を、図13に略図として示す。
【0164】
平面浄化物品の効果の試験
[0192] 本例(実施例4)で構成される、アミン官能基化カーボンナノチューブおよび水酸化鉄でデコレーションされたガラスファイバを使った平面浄化装置を、実施例#3についての効果の試験で記述したように、生物学的除去状況について試験[試験a)大腸菌およびb)MS−2バクテリオファージ]した。これらの試験から、自己集合ナノメッシュ物品が、バクテリアおよびウイルスに対して、それぞれ8logおよび7logの除去能力を達成したことが実証された。
【0165】
実施例#5:流体の脱塩
[0193] 64層の平らなナノメッシュ装置は、市販の浄化され官能基化されたカーボンナノチューブと、直径100〜500nm、長さ300から500μmのガラスファイバ、蒸留水中での分子量が20,000gの0.0125重量%のポリビニルアルコール溶液、絶縁体として1.5oz/ydのセルロース濾紙、不織溶融導電カーボンティッシュペーパー基体(0.5oz/yd2)、銀を埋め込んだ導電性および絶縁性のエポキシ樹脂、プラスチックの非導電性ハウジング、ならびに導電性ナノメッシュ層の隣合う各組に直流1.5Vを供給する電源で作成された。
【0166】
[0194] まず、官能基化ナノチューブ(実施例#1に記載の硝酸洗浄手順を通じてカルボキシル基を導入)25mgと、ガラスファイバ50g(上述の通り)を、上記の通り濃度0.0125%のポリビニルアルコールを含む蒸留水4リットルに懸濁した。懸濁液を、IKA社のウルトラタラックスT18浸漬ブレンダーを使い、速度3で3分間攪拌した。
【0167】
[0195] このカーボンナノチューブ/ガラスファイバ懸濁液を、〜1psiの差圧の下で、5.5インチ×5.5インチ(14.0cm×14.0cm)のシート状になったカーボンティッシュペーパー(0.5oz/yd2)の5インチ×5インチ(12.7cm×12.7cm)の面積の中に堆積させた。直径2インチ(5.08cm)の円板4枚をこの5インチ×5インチ(14.0cm×14.0cm)のナノメッシュシートから切取り、これにより64層、直径2インチ(5.08cm)の装置の4層を完成した(64層中32層は導電性があり、他は絶縁性がある)。
【0168】
[0196] 銀を充填した導電性のエポキシ樹脂を用いて、各導電性ナノメッシュ層に電気配線を取り付けた。導電性ナノメッシュ層はすべて絶縁層に挟まれ、この「サンドイッチ」が積み重なり、電気配線は方位角上、等間隔となる(すなわち上下の層の配線から〜11.25°回転している)。電気配線を束ねた上でプラスチックのハウジング壁を通して電源へ引きまわし、アセンブリ全体を密封した(プロトタイプ脱塩装置で、導電層が16層の例を図20に示す)。
【0169】
[0197] 静態保持力試験を、1‰の塩分を含んだ溶液(1‰=塩分1g/水分1000g)1リットルを、電荷または刺激の負荷を与えずに装置に流すことにより行った。濾過液について塩分を調べたところ、塩分がないか、多くて13mgであることがわかった。従って、本発明の装置は静態で(すなわち電子的な刺激なしで)塩分濃度を1.3%までに減少させた。この削減は、本発明の装置のカーボンナノチューブ1グラム当たりでは0.42グラムの塩分を取除いたことになる。
【0170】
[0198] 動態保持力試験を行った。ここでは、4.0mVの差分直流電圧を導電性ナノメッシュ層の隣り合う16組のそれぞれに印加した(すなわち、偶数ナノメッシュ層は正、奇数層は負の電荷を帯びた)。蒸留水1000mlに塩化ナトリウム1gを溶解した塩分を含んだ試験溶液(塩分1‰)を用いて装置の効力を試験した。装置を1回通すと、塩分の1.6%が除去された。この除去率は、カーボンナノチューブの1g当たり塩分0.52gと同等であった。これは、静態での装置に比べて塩分の除去率が23%増加し、きわめて弱い電圧であっても水溶液からの塩イオンの除去を強化することを示し、これによりナノエレクトリック除去効果を実証した。直流電圧が高まり、デバイ雰囲気を破壊する交流信号が課されれば、塩分除去能力がさらに強化されることは確実である。
【0171】
実施例#6:空気膜
[0199] 官能基化されたカーボンナノチューブ(実施例#1に記載の通り硝酸で洗浄してカルボキシル基を導入)を使って平面空気膜フィルタを構成した。手順に従い、蒸留水25gにこうした官能基化ナノチューブ25mgを懸濁し、ブランソンのモデル900B超音波分解装置内の室温の水浴に入れて、10分間の超音波分解を行った。この溶液を次に蒸留水で4リットルに希釈し、ポリビニルアルコールを添加することで、0.125重量%のポリビニルアルコール濃度を作成した。懸濁液を、ウルトラタラックスT18基本浸漬ブレンダーで速度設定を3にして3分間混ぜ合わせた。1psiまでの差圧の下、差圧濾過法を使って、四角形(5.25インチ×5.25インチ)(13.3cm×13.3cm)の多孔質の重合基体のうち5インチ×5インチ(12.7cm×12.7cm)の面積の中への堆積により、ナノメッシュを作成した。
【0172】
空気膜物品の効果の試験
[200] 効果を判断するため、膜について生物学的除去試験を行った。四角形の膜から2.5インチ(6.35cm)の円板2枚を切取り、内径2インチ(5.08cm)、外径2.5インチ(6.35cm)の平らな金属リング2個の間に取り付けた。一方の円板は、膜物品装置について圧力滴と流速曲線の関係を測定するのに用いられ、他方は生物学的除去試験に用いられた。生物学的除去試験は、フィルタ円板を内径2インチ(5.08cm)の、枯草菌のバクテリア胞子捕捉効率を試験できる円筒形の風洞(図21に略図を示す)に取付けて行った。枯草菌は、生物学的エージェントに関して広く受入れられている代用菌であるが、人間に対する病原体ではなく、そのおかげで実験室での試験を安全に行うことができる。
【0173】
[201] 試験では、バクテリア胞子をフィルタ円板の上流にエアロゾル装置を通して放出し、試験装置の下流の端で、流体を満たした総ガラスのインピンジャーで、フィルタを通過した部分を捕捉する必要がある。試験装置の胞子の補足力を評価するため、対照実験一組を行った。この生物学的試験では、枯草菌胞の6logを超える除去を達成した。さらに、生物学的エージェントの除去が、非生物学的粒子の除去および気流に対するフィルタの抵抗からは独立していると判断することができた。
【0174】
[202] 特段のことわりがない限り、明細書および特許請求の範囲の中で使われている成分量、反応条件等を表す数字一切は、「約」という用語によりいずれの例でも修正されるものとして理解される。従って、これに反する内容の記載がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に定める数的パラメータは概数であって、本発明により得ようとする望まれる特性によって異なる。
【0175】
[203] 本発明の他の実施形態は、明細書を検討し、本明細書に開示する発明を実践すれば、当業者には明らかであろう。明細書および実施形態は例示のみを目的としていると考えられ、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲に示すことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】[014] シングルウォールカーボンナノチューブの結合構造および形状を示す略図である。
【図2】[015] 欠陥のあるカーボンナノチューブの格子の歪みを示す図である。
【図3】[016] カルボキシル官能基で官能基化されたカーボンナノチューブの断面図である。
【図4】[017] 充填されたカーボンナノチューブを示す図である。
【図5】[018] 様々な原子をドーピングしたカーボンナノチューブの断面図である。
【図6】[019] 基体がひだのある設計となっているカーボンナノチューブを含む流体浄化装置を示す図である。
【図7】[020] 円筒、ブロックまたは他の嵩のある物体に巻きつけた巻物状の基体にカーボンナノチューブを堆積させる方法を示す図である。
【図8】[021] ナノメッシュ層との電気接続を示す脱塩装置の略図である。
【図9】[022] 低周波三相交流信号(イオンの動きを駆動するため)と高周波の交流信号(デバイ雰囲気を混乱させるため)の両方を一連のナノメッシュ膜にかけて用いることにより、活性化された一続きのナノメッシュ膜を通過するイオンの動きの動態を示す図である。
【図10】[023] 水溶液中の隣り合うイオンの概略を示し、水分子の極性の性質による分子雲(デバイ雰囲気)形成での電荷の保護を示す図である。
【図11】[024] 流体浄化装置の製造に用いられる工程のフローチャートであって、この例は円筒基体に関するものであるが、どんな基体、ファイバ、溶液内微粒子を用いたどのような形状の物品にでも容易に一般化することができる図である。
【図12】[025] 本発明による円筒形の流体浄化物品の構造を示す図である。
【図13】[026] 本発明による平らな流体浄化物品を示す図である。
【図14】[027] 実施例#1、サンプル#1の未処理溶液についてバクテリア(染色)がほぼ均一に広がっている様子を示す光学顕微鏡写真である。
【図15】[028] 実施例#1、サンプル#2のナノチューブ処理した溶液中のカーボンナノチューブに凝集したバクテリア(染色)を示す光学顕微鏡写真である。
【図16】[029] 実施例#1、サンプル#1でナノチューブがない正常な細胞壁を有するバクテリアを示す走査型電子顕微鏡(SEM)の画像である。
【図17】[030] ナノチューブ(実施例#1、サンプル#2)と相互作用したバクテリアの拡散し、損傷した細胞壁を示し、この相互作用によりバクテリア細胞を破壊できることを示唆する図である。
【図18】[031] 円筒形の基体上にナノメッシュを作り出すための堆積装置の略図である。
【図19】[032] 組立てた円筒形の流体浄化物品を示す図である。
【図20】[033] 試験脱塩装置の写真である。
【図21】[034] 空気膜試験装置を示す略図である。
【図22】[035] 自己集合カーボンナノチューブ/ガラスファイバのナノメッシュのSEM顕微鏡写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体から汚染物質を除去するための物品であって、前記物品はカーボンナノチューブを含み、そのうち少なくとも1つは、それに付着またはその中に位置する少なくとも1つの分子またはクラスターを含み、カーボンナノチューブが物品内に物品に接触する流体中の汚染物質の濃度を削減するのに十分な量存在する物品。
【請求項2】
剛性または可撓性の、多孔質の支持基体をさらに有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記多孔質の支持基体が、セラミック、炭素または炭素を基本とした材料、金属または合金、非金属、プラスチック、および繊維状の材料の中から選択される材料を含み、前記繊維質素材は織地か不織地か、またはその組合せである、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブが、他のカーボンナノチューブ、ファイバ、微粒子またはそれらの組合せに接続または付着した組立ナノメッシュの形をしている、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
少なくとも1つの分子またはクラスターが、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、セシウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金およびビスマスの中から選択される金属原子1個以上と、水素、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、珪素、リン、硫黄、塩素、臭素、アンチモン、ヨウ素およびそれらの組合せの中から選択される1個以上の非金属原子とを含む無機質の化合物を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記クラスターが、量子ドットを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
少なくとも1つの分子またはクラスターが、1つまたは複数の蛋白質、炭水化物、重合体、芳香族または脂肪族のアルコール、および核酸を含む有機化合物を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
少なくとも1つのクラスターが、少なくとも1つの微生物、組織細胞、バクテリアまたはナノバクテリアを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
少なくとも1つの分子またはクラスターが、カルボキシル、アミン、アレーン、ニトリル、アミド、アルカン、アルケン、アルキン、アルコール、エーテル、エステル、アルデヒド、ケトン、ポリアミド、ポリアンフィフィル(polyamphiphile)、ジアゾニウム塩、金属塩、ピレニル、チオール、チオエーテル、スルフヒドリル、シランおよびそれらの組合せの中から選択される1つまたは複数の化学基を含む有機化合物を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記組立ナノメッシュが、カーボンナノチューブとガラスファイバを含む、請求項4に記載の物品。
【請求項11】
前記ナノチューブの過半数が、他のカーボンナノチューブ、ファイバまたは微粒子から分散し、これらに接続または付着していない、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記ファイバが、
(a)ナイロン、アクリル、メタクリル、エポキシ、シリコーンゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アラミド、ポリクロロプレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−パラフィレンテレフタルアミド、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、およびポリエステルエステルケトン、ポリエステル類、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、バイトンフッ素ゴム、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、およびそれらの組合せの中から選択される単成分または多成分重合体から選択される重合体材料、
(b)炭化ホウ素、窒化ホウ素、酸化ホウ素、尖晶石、ガーネット、フッ化ランタン、フッ化カルシウム、炭化珪素、炭素およびその同素体、ガラス、石英、アルミナ、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、ホウ化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、ホウ化ハフニウム、酸化トリウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、菫青石、ムライト、窒化珪素、フェライト、サファイヤ、凍石、炭化チタン、窒化チタン、酸化チタン、ホウ化チタンおよびそれらの組合せの中から選択されるセラミック材料、
(c) アルミニウム、ホウ素、銅、コバルト、金、プラチナ、パラジウム、珪素、鋼、イリジウム、インジウム、鉄、ロジウム、パラジウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、チタン、タングステン、ニッケル、ニオブ、マグネシウム、マンガン、モリブデン、銀、ジルコニウム、イットリウム、それらの酸化物、水素化物、水酸化物およびそれらの合金の中から選択される少なくとも1つの金属材料、
(d)絹繊維、綿繊維、ウール繊維、亜麻繊維、羽毛繊維、木材、豆類または藻類から引き出したセルロース繊維の中から選択される少なくとも1つの生物材料またはその誘導体、
(e)ナノ角状、ナノらせん状、ナノスプリング状、デンドライト状、樹木状、放射状ナノチューブ構造、ナノチューブのY分岐、竹状または多数の糸を撚り合わせた渦巻状の、入れ子形態または非入れ子形態のシングルウォール、ダブルウォールまたはマルチウォールのカーボンナノチューブから選択される少なくとも1つのカーボンナノチューブ、および
(f)少なくとも1つの金属酸化物または金属水酸化物のナノワイヤ
から選択される、請求項4または11の物品。
【請求項13】
ファイバの直径が1nm〜1cmであり、アスペクト比(長さ/直径)が2〜109である、請求項4または11に記載の物品。
【請求項14】
少なくとも1つのカーボンナノチューブを、ナノ角状、ナノらせん状、ナノスプリング状、デンドライト状、樹木状、放射状ナノチューブ構造、ナノチューブのY分岐、竹状、多数の糸を撚り合わせた渦巻状、多数の糸を撚り合わせた入れ子型渦巻状、または入れ子型渦巻状の、入れ子形態または非入れ子形態のシングルウォール、ダブルウォールまたはマルチウォールのカーボンナノチューブから選択した、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記汚染物質が、1つまたは複数のバクテリア、ウイルス、接合子嚢、胞子、カビ、大腸菌、寄生体、花粉および菌を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記バクテリアが、炭疽菌、発疹チフス、またはコレラを含み、前記ウイルスが、天然痘および肝炎を含む、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記汚染物質が、DNA、RNAおよび天然有機分子の中から選択される1つまたは複数の生体分子を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項18】
前記汚染物質が、天然および合成の有機分子、無機汚染物質、薬品およびイオンの中から選択される1つまたは複数の化合物を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項19】
前記天然および合成の有機分子が、毒素、エンドトキシン、蛋白質、酵素、農薬および除草剤の中から選択され、前記無機汚染物質が、重金属、洗剤、肥料、無機毒の中から選択され、前記薬品が、薬剤、溶剤、試薬の中から選択され、前記イオンが、海水中の塩および空気で運ばれる微粒子の中から選択される、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
少なくとも1つの汚染物質が、次の元素の中から選択される少なくとも1つの原子またはイオンを含む、請求項1に記載の物品:アンチモン、砒素、アルミニウム、セレン、水素、リチウム、ホウ素、炭素、酸素、カルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素、ニオブ、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、臭素、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、ヨウ素、銀、カドミウム、インジウム、スズ、セシウム、バリウム、ランタン、タンタル、ベリリウム、銅、フッ化物、水銀、タングステン、イリジウム、ハフニウム、レニウム、オスミウム、プラチナ、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、ラドン、ラジウム、トリウム、ウラン、プルトニウムおよびラドン。
【請求項21】
前記流体が、
(a)水、石油およびその副産物、生物学的流体、食料品、アルコール飲料および薬品の中から選択される液体、または
(b)空気、工業用気体、および車両、排気筒、煙突、または煙草からの煙の中から選択される気体であって、該工業用気体はアルゴン、窒素、ヘリウム、アンモニア、および二酸化炭素を含む気体、
を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項22】
複数のカーボンナノチューブの異なる層をさらに有し、各層が異なる汚染物質の量を減少させる、請求項1に記載の物品。
【請求項23】
複数のカーボンナノチューブの異なる層をさらに有し、該層の少なくとも2層の間に電圧の差がある、請求項1に記載の物品。
【請求項24】
交流電圧、直流電圧またはその組合せのいずれかが、汚染物質の除去、分離、固定および/または破壊を促進するために少なくとも1つの前記カーボンナノチューブの層に印加される、請求項23に記載の物品。
【請求項25】
前記電圧が、前記流体中の少なくとも1つの帯電汚染物質を取り囲むデバイ雰囲気を破壊するのに十分な周波数および振幅の信号を有する交流電圧を含む、請求項24に記載の物品。
【請求項26】
前記帯電汚染物資が、海水中および汽水性の水の中の塩を含むイオンである、請求項25に記載の物品。
【請求項27】
前記イオンが、ナトリウム、塩化物、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫酸塩、重炭酸塩、マンガン、鉄、銅、水銀、金、銀、プラチナ、鉛、砒素、ウランおよびパラジウムを含む、請求項25に記載の物品。
【請求項28】
前記帯電汚染物質が、真水、廃液、および排水中にあるイオンである、請求項25に記載の物品。
【請求項29】
前記複数の層のうち少なくとも1つが、水を脱塩でき、少なくとも1つの他の層が、その他の汚染物質を除去、分離、固定および/または破壊できる、請求項26に記載の物品。
【請求項30】
前記その他の汚染物質が、1つまたは複数の病原菌、ウイルス、微生物有機体、DNA、RNA、天然有機分子、カビ、菌、天然および合成の毒素、重金属、エンドトキシン、蛋白質、プリオンおよび酵素を含む、請求項29に記載の物品。
【請求項31】
前記その他の汚染物質が、アンチモン、砒素、アルミニウム、セレン、水素、リチウム、ホウ素、炭素、酸素、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素、ニオブ、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、臭素、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、ヨウ素、銀、カドミウム、インジウム、スズ、セシウム、タングステン、イリジウム、ハフニウム、レニウム、オスミウム、プラチナ、金、水銀、タリウム、鉛、ポロニウム、ラドン、ラジウム、トリウム、ウランおよびプルトニウムの中から選択される少なくとも1つの原子またはイオンを含む、請求項29に記載の物品。
【請求項32】
前記流体が、水である、請求項1に記載の物品。
【請求項33】
前記流体が、空気を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項34】
ガラス、石英、アルミナおよび水酸化アルミニウムの中から選択される少なくとも1つのファイバをさらに有する、請求項1に記載の物品。
【請求項35】
流体中の汚染物質の量を減少させるための方法であって、
(a)流体を、過半数がそれに付着またはその中に位置している少なくとも1つの分子またはクラスターを含むカーボンナノチューブを含む物品であって、カーボンナノチューブが物品と接触する流体中の少なくとも1つの汚染物質の濃度を減少させるのに十分な量で物品中に存在している物品と接触させる工程と、
(b)流体から少なくとも1つの汚染物質を除去する工程と、
を含む方法。
【請求項36】
前記物品が、前記カーボンナノチューブの複数の異なる層を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記複数の異なる層のそれぞれが、異なる汚染物質の量を減少させる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
カーボンナノチューブの複数の異なる層をさらに有し、該層の少なくとも2層の間に電圧の差がある、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
交流電圧、直流電圧またはそれらの組合せのいずれかが、汚染物質の除去、分離、固定および/または破壊を促進するために少なくとも1つの前記カーボンナノチューブ層に印加される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記電圧が、前記流体中の少なくとも1つの帯電汚染物質を取り囲むデバイ雰囲気を破壊するのに十分な周波数および振幅の信号を有する交流電圧を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
直流電圧の差が、0.0を超えて200kVまでの範囲にある、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
交流電圧のピーク間振幅が、0.0を超えて200kVまでの範囲にある、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
AC周波数が、1.0ミリヘルツ〜1.0テラヘルツである、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記帯電汚染物質が、海水中および汽水性の水の中の塩を含むイオンである、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記イオンが、ナトリウム、塩化物、カリウム、カルシウム、マンガン、硫酸塩、重炭酸塩、マンガン、鉄、銅、水銀、金、銀、プラチナ、鉛、砒素、ウランおよびパラジウムを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
前記帯電汚染物質が、真水、廃液および排水の中にあるイオンである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記流体が、塩水を含み、前記複数の層のうち少なくとも1つが水を脱塩でき、少なくとも1つの他の層が、前記塩水中のそ他の汚染物質を除去、分離、固定および/または破壊できる、請求項35に記載の方法。
【請求項48】
前記その他の汚染物質が、1つまたは複数の病原体、ウイルス、微生物有機体、DNA、RNA、天然有機分子、カビ、菌、天然および合成の毒素、重金属、エンドトキシン、蛋白質、プリオンおよび酵素を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記その他の汚染物質が、アンチモン、砒素、アルミニウム、セレン、水素、リチウム、ホウ素、炭素、酸素、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素、ニオブ、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、臭素、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、ヨウ素、銀、カドミウム、インジウム、スズ、セシウム、タングステン、イリジウム、ハフニウム、レニウム、オスミウム、プラチナ、金、水銀、タリウム、鉛、ポロニウム、ラドン、ラジウム、トリウム、ウランおよびプルトニウムの中から選択される少なくとも1つの原子またはイオンを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記流体が、水である、請求項35に記載の方法。
【請求項51】
前記流体が、空気を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項52】
ガラスまたはアルミナから選択される少なくとも1つのファイバをさらに有する、請求項35に記載の方法。
【請求項53】
カーボンナノチューブを含むナノメッシュ材料を製造するための方法であって、
(a)カーボンナノチューブについて少なくとも1つの化学的処理、放射処理または機械的処理を施すことにより、カーボンナノチューブを処理する工程と、
(b)水性、無機、有機の溶剤の中から選択される少なくとも1つの溶剤中でカーボンナノチューブをすすぐ工程と、
(c)前記カーボンナノチューブを水性、無機、有機の溶剤の中から選択される少なくとも1つの溶剤と混合してカーボンナノチューブの懸濁液を形成する工程であって、前記懸濁液が、任意にファイバ、微粒子またはその組合せを含む工程と、
(d)多孔質の基体に懸濁液を堆積させて、多孔質の基体上にカーボンナノチューブのナノメッシュ層を形成する工程と、
を含む方法。
【請求項54】
前記化学的処理が、酸化剤による処理を含み、前記放射処理が、マイクロ波、電子ビームおよび熱処理のうち少なくとも1つを含み、前記機械的処理が、超音波分解および攪拌のうち少なくとも1つを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記(a)の処理が、欠陥を作り出すのに十分な量であり、前記カーボンナノチューブが、前記欠陥の少なくとも1つまたは前記カーボンナノチューブの欠陥のない表面に付着させた少なくとも1つの官能基を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記官能化学基のカーボンナノチューブへの付着が、得られる官能基化カーボンナノチューブのゼータ電位を調整するのに十分な量である、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記カーボンナノチューブが、マルチウォールであって、長さが0.1μm〜100mm、直径が1〜300nmである、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記酸化剤が、硝酸、硫酸、塩化水素酸またはフッ化水素酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素またはその混合物の中から選択される1つまたは複数の酸化剤を含み、カーボンナノチューブの表面に少なくとも1つの官能基を付着させるのに十分な量である、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
少なくとも1つの官能基が、カルボキシル基である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
少なくとも1つの官能基が、アミン基またはポリアミン基である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記少なくとも1つの溶剤が、水、アルコールまたはそれらの混合物である、請求項53に記載の方法。
【請求項62】
前記懸濁液が、差圧堆積によって堆積される、請求項53に記載の方法。
【請求項63】
前記懸濁液が、カーボンを基礎とする基体に堆積される、請求項53に記載の方法。
【請求項64】
少なくとも1つの追加懸濁液を形成する工程をさらに含み、前記追加懸濁液が、第1の懸濁液とは異なる官能基化カーボンナノチューブとファイバとの比率を有する、請求項55に記載の方法。
【請求項65】
少なくとも2層交互のナノメッシュ層を形成する工程を含み、少なくとも1つの層は第1の懸濁液から形成され、少なくとも1つの追加層は前記追加懸濁液から形成される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記多孔質の支持基体が、セラミック、カーボン、金属、プラスチックおよび繊維素材の中から選択される材料のシートまたはブロックから形成され、前記繊維質素材が織素材または不織素材である、請求項53に記載の方法。
【請求項67】
少なくとも1つの分子またはクラスターが、アルミニウム、セレン、水素、リチウム、ホウ素、炭素、酸素、カルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、臭素、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ロジウム、パラジウム、ヨウ素、銀、インジウム、スズ、セシウム、バリウム、ランタン、タンタル、タングステン、イリジウム、ハフニウム、レニウム、オスミウム、プラチナ、金、水銀、タリウム、ビスマスの中から選択される少なくとも1つの原子を含む無機化合物を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項68】
前記クラスターが、量子ドットを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項69】
少なくとも1つの分子またはクラスターが、1つまたは複数の蛋白質、炭水化物、重合体、芳香族アルコールまたは脂肪族アルコール、および、核酸または非核酸を含む有機化合物を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項70】
少なくとも1つの分子またはクラスターが、カルボキシル、アミン、アレーン、ニトリル、アミド、アルカン、アルケン、アルキン、アルコール、エーテル、エステル、アルデヒド、ケトン、ポリアミド、ポリアンフィフィル、ジアゾニウム塩、金属塩、ピレニル、チオール、チオエーテル、スルフヒドリル、シランおよびそれらの組合せの中から選択される1つまたは複数の化学基を含む有機化合物を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項71】
前記ファイバが、
(a)ナイロン、アクリル、メタクリル、エポキシ、シリコーンゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アラミド、ポリクロロプレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−パラフィレンテレフタルアミド、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、およびポリエステルエステルケトン、ポリエステル類、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、バイトンフッ素ゴム、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、およびそれらの組合せの中から選択される単成分または多成分重合体から選択される少なくとも1つの重合体素材、
(b)炭化ホウ素、窒化ホウ素、酸化ホウ素、尖晶石、ガーネット、フッ化ランタン、フッ化カルシウム、ガラス、石英、炭化珪素、窒化珪素、炭素およびその同素体、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、ホウ化ハフニウム、酸化トリウム、酸化イットリウム、酸化マンガン、水酸化マンガン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、菫青石、ムライト、フェライト、サファイヤ、凍石、炭化チタン、窒化チタン、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、およびそれらの組合せの中から選択される少なくとも1つのセラミック素材、
(c) アルミニウム、ホウ素、銅、コバルト、金、プラチナ、パラジウム、珪素、鋼、チタン、ロジウム、イリジウム、インジウム、鉄、パラジウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、タングステン、ニオブ、マンガン、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、銀、ジルコニウム、イットリウム、および、それらの酸化物、水酸化物および/または合金の中から選択される少なくとも1つの金属素材、および
(d)綿、セルロース、ウール、絹、羽毛およびそれらの組合せの中から選択される少なくとも1つの生物材料またはその誘導体、
から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項72】
金属でコーティングまたはデコレーションしたガラスファイバ中の金属が、水酸化鉄を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項73】
前記ファイバが、金属、金属酸化物、または金属水酸化物でコーティングまたはデコレーションした、直径が0.1μm〜5μmのガラスファイバである、請求項53に記載の方法。
【請求項74】
前記カーボンナノチューブが、他のカーボンナノチューブ、微粒子、ファイバまたはそれらの組合せに対する誘引力を制御するために、そのゼータ電位を調整するために官能基化される、請求項55に記載の方法。
【請求項1】
流体から汚染物質を除去するための物品であって、前記物品はカーボンナノチューブを含み、そのうち少なくとも1つは、それに付着またはその中に位置する少なくとも1つの分子またはクラスターを含み、カーボンナノチューブが物品内に物品に接触する流体中の汚染物質の濃度を削減するのに十分な量存在する物品。
【請求項2】
剛性または可撓性の、多孔質の支持基体をさらに有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記多孔質の支持基体が、セラミック、炭素または炭素を基本とした材料、金属または合金、非金属、プラスチック、および繊維状の材料の中から選択される材料を含み、前記繊維質素材は織地か不織地か、またはその組合せである、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブが、他のカーボンナノチューブ、ファイバ、微粒子またはそれらの組合せに接続または付着した組立ナノメッシュの形をしている、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
少なくとも1つの分子またはクラスターが、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、セシウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金およびビスマスの中から選択される金属原子1個以上と、水素、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、珪素、リン、硫黄、塩素、臭素、アンチモン、ヨウ素およびそれらの組合せの中から選択される1個以上の非金属原子とを含む無機質の化合物を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記クラスターが、量子ドットを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
少なくとも1つの分子またはクラスターが、1つまたは複数の蛋白質、炭水化物、重合体、芳香族または脂肪族のアルコール、および核酸を含む有機化合物を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
少なくとも1つのクラスターが、少なくとも1つの微生物、組織細胞、バクテリアまたはナノバクテリアを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
少なくとも1つの分子またはクラスターが、カルボキシル、アミン、アレーン、ニトリル、アミド、アルカン、アルケン、アルキン、アルコール、エーテル、エステル、アルデヒド、ケトン、ポリアミド、ポリアンフィフィル(polyamphiphile)、ジアゾニウム塩、金属塩、ピレニル、チオール、チオエーテル、スルフヒドリル、シランおよびそれらの組合せの中から選択される1つまたは複数の化学基を含む有機化合物を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記組立ナノメッシュが、カーボンナノチューブとガラスファイバを含む、請求項4に記載の物品。
【請求項11】
前記ナノチューブの過半数が、他のカーボンナノチューブ、ファイバまたは微粒子から分散し、これらに接続または付着していない、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記ファイバが、
(a)ナイロン、アクリル、メタクリル、エポキシ、シリコーンゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アラミド、ポリクロロプレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−パラフィレンテレフタルアミド、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、およびポリエステルエステルケトン、ポリエステル類、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、バイトンフッ素ゴム、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、およびそれらの組合せの中から選択される単成分または多成分重合体から選択される重合体材料、
(b)炭化ホウ素、窒化ホウ素、酸化ホウ素、尖晶石、ガーネット、フッ化ランタン、フッ化カルシウム、炭化珪素、炭素およびその同素体、ガラス、石英、アルミナ、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、ホウ化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、ホウ化ハフニウム、酸化トリウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、菫青石、ムライト、窒化珪素、フェライト、サファイヤ、凍石、炭化チタン、窒化チタン、酸化チタン、ホウ化チタンおよびそれらの組合せの中から選択されるセラミック材料、
(c) アルミニウム、ホウ素、銅、コバルト、金、プラチナ、パラジウム、珪素、鋼、イリジウム、インジウム、鉄、ロジウム、パラジウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、チタン、タングステン、ニッケル、ニオブ、マグネシウム、マンガン、モリブデン、銀、ジルコニウム、イットリウム、それらの酸化物、水素化物、水酸化物およびそれらの合金の中から選択される少なくとも1つの金属材料、
(d)絹繊維、綿繊維、ウール繊維、亜麻繊維、羽毛繊維、木材、豆類または藻類から引き出したセルロース繊維の中から選択される少なくとも1つの生物材料またはその誘導体、
(e)ナノ角状、ナノらせん状、ナノスプリング状、デンドライト状、樹木状、放射状ナノチューブ構造、ナノチューブのY分岐、竹状または多数の糸を撚り合わせた渦巻状の、入れ子形態または非入れ子形態のシングルウォール、ダブルウォールまたはマルチウォールのカーボンナノチューブから選択される少なくとも1つのカーボンナノチューブ、および
(f)少なくとも1つの金属酸化物または金属水酸化物のナノワイヤ
から選択される、請求項4または11の物品。
【請求項13】
ファイバの直径が1nm〜1cmであり、アスペクト比(長さ/直径)が2〜109である、請求項4または11に記載の物品。
【請求項14】
少なくとも1つのカーボンナノチューブを、ナノ角状、ナノらせん状、ナノスプリング状、デンドライト状、樹木状、放射状ナノチューブ構造、ナノチューブのY分岐、竹状、多数の糸を撚り合わせた渦巻状、多数の糸を撚り合わせた入れ子型渦巻状、または入れ子型渦巻状の、入れ子形態または非入れ子形態のシングルウォール、ダブルウォールまたはマルチウォールのカーボンナノチューブから選択した、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記汚染物質が、1つまたは複数のバクテリア、ウイルス、接合子嚢、胞子、カビ、大腸菌、寄生体、花粉および菌を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記バクテリアが、炭疽菌、発疹チフス、またはコレラを含み、前記ウイルスが、天然痘および肝炎を含む、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記汚染物質が、DNA、RNAおよび天然有機分子の中から選択される1つまたは複数の生体分子を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項18】
前記汚染物質が、天然および合成の有機分子、無機汚染物質、薬品およびイオンの中から選択される1つまたは複数の化合物を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項19】
前記天然および合成の有機分子が、毒素、エンドトキシン、蛋白質、酵素、農薬および除草剤の中から選択され、前記無機汚染物質が、重金属、洗剤、肥料、無機毒の中から選択され、前記薬品が、薬剤、溶剤、試薬の中から選択され、前記イオンが、海水中の塩および空気で運ばれる微粒子の中から選択される、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
少なくとも1つの汚染物質が、次の元素の中から選択される少なくとも1つの原子またはイオンを含む、請求項1に記載の物品:アンチモン、砒素、アルミニウム、セレン、水素、リチウム、ホウ素、炭素、酸素、カルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素、ニオブ、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、臭素、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、ヨウ素、銀、カドミウム、インジウム、スズ、セシウム、バリウム、ランタン、タンタル、ベリリウム、銅、フッ化物、水銀、タングステン、イリジウム、ハフニウム、レニウム、オスミウム、プラチナ、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、ラドン、ラジウム、トリウム、ウラン、プルトニウムおよびラドン。
【請求項21】
前記流体が、
(a)水、石油およびその副産物、生物学的流体、食料品、アルコール飲料および薬品の中から選択される液体、または
(b)空気、工業用気体、および車両、排気筒、煙突、または煙草からの煙の中から選択される気体であって、該工業用気体はアルゴン、窒素、ヘリウム、アンモニア、および二酸化炭素を含む気体、
を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項22】
複数のカーボンナノチューブの異なる層をさらに有し、各層が異なる汚染物質の量を減少させる、請求項1に記載の物品。
【請求項23】
複数のカーボンナノチューブの異なる層をさらに有し、該層の少なくとも2層の間に電圧の差がある、請求項1に記載の物品。
【請求項24】
交流電圧、直流電圧またはその組合せのいずれかが、汚染物質の除去、分離、固定および/または破壊を促進するために少なくとも1つの前記カーボンナノチューブの層に印加される、請求項23に記載の物品。
【請求項25】
前記電圧が、前記流体中の少なくとも1つの帯電汚染物質を取り囲むデバイ雰囲気を破壊するのに十分な周波数および振幅の信号を有する交流電圧を含む、請求項24に記載の物品。
【請求項26】
前記帯電汚染物資が、海水中および汽水性の水の中の塩を含むイオンである、請求項25に記載の物品。
【請求項27】
前記イオンが、ナトリウム、塩化物、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫酸塩、重炭酸塩、マンガン、鉄、銅、水銀、金、銀、プラチナ、鉛、砒素、ウランおよびパラジウムを含む、請求項25に記載の物品。
【請求項28】
前記帯電汚染物質が、真水、廃液、および排水中にあるイオンである、請求項25に記載の物品。
【請求項29】
前記複数の層のうち少なくとも1つが、水を脱塩でき、少なくとも1つの他の層が、その他の汚染物質を除去、分離、固定および/または破壊できる、請求項26に記載の物品。
【請求項30】
前記その他の汚染物質が、1つまたは複数の病原菌、ウイルス、微生物有機体、DNA、RNA、天然有機分子、カビ、菌、天然および合成の毒素、重金属、エンドトキシン、蛋白質、プリオンおよび酵素を含む、請求項29に記載の物品。
【請求項31】
前記その他の汚染物質が、アンチモン、砒素、アルミニウム、セレン、水素、リチウム、ホウ素、炭素、酸素、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素、ニオブ、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、臭素、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、ヨウ素、銀、カドミウム、インジウム、スズ、セシウム、タングステン、イリジウム、ハフニウム、レニウム、オスミウム、プラチナ、金、水銀、タリウム、鉛、ポロニウム、ラドン、ラジウム、トリウム、ウランおよびプルトニウムの中から選択される少なくとも1つの原子またはイオンを含む、請求項29に記載の物品。
【請求項32】
前記流体が、水である、請求項1に記載の物品。
【請求項33】
前記流体が、空気を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項34】
ガラス、石英、アルミナおよび水酸化アルミニウムの中から選択される少なくとも1つのファイバをさらに有する、請求項1に記載の物品。
【請求項35】
流体中の汚染物質の量を減少させるための方法であって、
(a)流体を、過半数がそれに付着またはその中に位置している少なくとも1つの分子またはクラスターを含むカーボンナノチューブを含む物品であって、カーボンナノチューブが物品と接触する流体中の少なくとも1つの汚染物質の濃度を減少させるのに十分な量で物品中に存在している物品と接触させる工程と、
(b)流体から少なくとも1つの汚染物質を除去する工程と、
を含む方法。
【請求項36】
前記物品が、前記カーボンナノチューブの複数の異なる層を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記複数の異なる層のそれぞれが、異なる汚染物質の量を減少させる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
カーボンナノチューブの複数の異なる層をさらに有し、該層の少なくとも2層の間に電圧の差がある、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
交流電圧、直流電圧またはそれらの組合せのいずれかが、汚染物質の除去、分離、固定および/または破壊を促進するために少なくとも1つの前記カーボンナノチューブ層に印加される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記電圧が、前記流体中の少なくとも1つの帯電汚染物質を取り囲むデバイ雰囲気を破壊するのに十分な周波数および振幅の信号を有する交流電圧を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
直流電圧の差が、0.0を超えて200kVまでの範囲にある、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
交流電圧のピーク間振幅が、0.0を超えて200kVまでの範囲にある、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
AC周波数が、1.0ミリヘルツ〜1.0テラヘルツである、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記帯電汚染物質が、海水中および汽水性の水の中の塩を含むイオンである、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記イオンが、ナトリウム、塩化物、カリウム、カルシウム、マンガン、硫酸塩、重炭酸塩、マンガン、鉄、銅、水銀、金、銀、プラチナ、鉛、砒素、ウランおよびパラジウムを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
前記帯電汚染物質が、真水、廃液および排水の中にあるイオンである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記流体が、塩水を含み、前記複数の層のうち少なくとも1つが水を脱塩でき、少なくとも1つの他の層が、前記塩水中のそ他の汚染物質を除去、分離、固定および/または破壊できる、請求項35に記載の方法。
【請求項48】
前記その他の汚染物質が、1つまたは複数の病原体、ウイルス、微生物有機体、DNA、RNA、天然有機分子、カビ、菌、天然および合成の毒素、重金属、エンドトキシン、蛋白質、プリオンおよび酵素を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記その他の汚染物質が、アンチモン、砒素、アルミニウム、セレン、水素、リチウム、ホウ素、炭素、酸素、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素、ニオブ、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、臭素、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、ヨウ素、銀、カドミウム、インジウム、スズ、セシウム、タングステン、イリジウム、ハフニウム、レニウム、オスミウム、プラチナ、金、水銀、タリウム、鉛、ポロニウム、ラドン、ラジウム、トリウム、ウランおよびプルトニウムの中から選択される少なくとも1つの原子またはイオンを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記流体が、水である、請求項35に記載の方法。
【請求項51】
前記流体が、空気を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項52】
ガラスまたはアルミナから選択される少なくとも1つのファイバをさらに有する、請求項35に記載の方法。
【請求項53】
カーボンナノチューブを含むナノメッシュ材料を製造するための方法であって、
(a)カーボンナノチューブについて少なくとも1つの化学的処理、放射処理または機械的処理を施すことにより、カーボンナノチューブを処理する工程と、
(b)水性、無機、有機の溶剤の中から選択される少なくとも1つの溶剤中でカーボンナノチューブをすすぐ工程と、
(c)前記カーボンナノチューブを水性、無機、有機の溶剤の中から選択される少なくとも1つの溶剤と混合してカーボンナノチューブの懸濁液を形成する工程であって、前記懸濁液が、任意にファイバ、微粒子またはその組合せを含む工程と、
(d)多孔質の基体に懸濁液を堆積させて、多孔質の基体上にカーボンナノチューブのナノメッシュ層を形成する工程と、
を含む方法。
【請求項54】
前記化学的処理が、酸化剤による処理を含み、前記放射処理が、マイクロ波、電子ビームおよび熱処理のうち少なくとも1つを含み、前記機械的処理が、超音波分解および攪拌のうち少なくとも1つを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記(a)の処理が、欠陥を作り出すのに十分な量であり、前記カーボンナノチューブが、前記欠陥の少なくとも1つまたは前記カーボンナノチューブの欠陥のない表面に付着させた少なくとも1つの官能基を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記官能化学基のカーボンナノチューブへの付着が、得られる官能基化カーボンナノチューブのゼータ電位を調整するのに十分な量である、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記カーボンナノチューブが、マルチウォールであって、長さが0.1μm〜100mm、直径が1〜300nmである、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記酸化剤が、硝酸、硫酸、塩化水素酸またはフッ化水素酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素またはその混合物の中から選択される1つまたは複数の酸化剤を含み、カーボンナノチューブの表面に少なくとも1つの官能基を付着させるのに十分な量である、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
少なくとも1つの官能基が、カルボキシル基である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
少なくとも1つの官能基が、アミン基またはポリアミン基である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記少なくとも1つの溶剤が、水、アルコールまたはそれらの混合物である、請求項53に記載の方法。
【請求項62】
前記懸濁液が、差圧堆積によって堆積される、請求項53に記載の方法。
【請求項63】
前記懸濁液が、カーボンを基礎とする基体に堆積される、請求項53に記載の方法。
【請求項64】
少なくとも1つの追加懸濁液を形成する工程をさらに含み、前記追加懸濁液が、第1の懸濁液とは異なる官能基化カーボンナノチューブとファイバとの比率を有する、請求項55に記載の方法。
【請求項65】
少なくとも2層交互のナノメッシュ層を形成する工程を含み、少なくとも1つの層は第1の懸濁液から形成され、少なくとも1つの追加層は前記追加懸濁液から形成される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記多孔質の支持基体が、セラミック、カーボン、金属、プラスチックおよび繊維素材の中から選択される材料のシートまたはブロックから形成され、前記繊維質素材が織素材または不織素材である、請求項53に記載の方法。
【請求項67】
少なくとも1つの分子またはクラスターが、アルミニウム、セレン、水素、リチウム、ホウ素、炭素、酸素、カルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、臭素、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ロジウム、パラジウム、ヨウ素、銀、インジウム、スズ、セシウム、バリウム、ランタン、タンタル、タングステン、イリジウム、ハフニウム、レニウム、オスミウム、プラチナ、金、水銀、タリウム、ビスマスの中から選択される少なくとも1つの原子を含む無機化合物を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項68】
前記クラスターが、量子ドットを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項69】
少なくとも1つの分子またはクラスターが、1つまたは複数の蛋白質、炭水化物、重合体、芳香族アルコールまたは脂肪族アルコール、および、核酸または非核酸を含む有機化合物を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項70】
少なくとも1つの分子またはクラスターが、カルボキシル、アミン、アレーン、ニトリル、アミド、アルカン、アルケン、アルキン、アルコール、エーテル、エステル、アルデヒド、ケトン、ポリアミド、ポリアンフィフィル、ジアゾニウム塩、金属塩、ピレニル、チオール、チオエーテル、スルフヒドリル、シランおよびそれらの組合せの中から選択される1つまたは複数の化学基を含む有機化合物を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項71】
前記ファイバが、
(a)ナイロン、アクリル、メタクリル、エポキシ、シリコーンゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アラミド、ポリクロロプレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−パラフィレンテレフタルアミド、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、およびポリエステルエステルケトン、ポリエステル類、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、バイトンフッ素ゴム、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、およびそれらの組合せの中から選択される単成分または多成分重合体から選択される少なくとも1つの重合体素材、
(b)炭化ホウ素、窒化ホウ素、酸化ホウ素、尖晶石、ガーネット、フッ化ランタン、フッ化カルシウム、ガラス、石英、炭化珪素、窒化珪素、炭素およびその同素体、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、ホウ化ハフニウム、酸化トリウム、酸化イットリウム、酸化マンガン、水酸化マンガン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、菫青石、ムライト、フェライト、サファイヤ、凍石、炭化チタン、窒化チタン、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、およびそれらの組合せの中から選択される少なくとも1つのセラミック素材、
(c) アルミニウム、ホウ素、銅、コバルト、金、プラチナ、パラジウム、珪素、鋼、チタン、ロジウム、イリジウム、インジウム、鉄、パラジウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、タングステン、ニオブ、マンガン、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、銀、ジルコニウム、イットリウム、および、それらの酸化物、水酸化物および/または合金の中から選択される少なくとも1つの金属素材、および
(d)綿、セルロース、ウール、絹、羽毛およびそれらの組合せの中から選択される少なくとも1つの生物材料またはその誘導体、
から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項72】
金属でコーティングまたはデコレーションしたガラスファイバ中の金属が、水酸化鉄を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項73】
前記ファイバが、金属、金属酸化物、または金属水酸化物でコーティングまたはデコレーションした、直径が0.1μm〜5μmのガラスファイバである、請求項53に記載の方法。
【請求項74】
前記カーボンナノチューブが、他のカーボンナノチューブ、微粒子、ファイバまたはそれらの組合せに対する誘引力を制御するために、そのゼータ電位を調整するために官能基化される、請求項55に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【図21】
【図22】
【公表番号】特表2008−538531(P2008−538531A)
【公表日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507613(P2008−507613)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/014025
【国際公開番号】WO2006/115486
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(505335854)セルドン テクノロジーズ,エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/014025
【国際公開番号】WO2006/115486
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(505335854)セルドン テクノロジーズ,エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】
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