説明

カーボンナノチューブを用いた伸縮装置とその製造方法

【課題】従来技術による、伸縮を検出できる伸縮装置は、金属・半導体等のいわば、十分に伸縮可能な部材を用いていなかったために、繰り返し検出できる伸縮は5%程度に限られており、このような従来技術の問題点に鑑み、本発明では、従来よりも格段に大きな伸縮を、繰り返し検出できる、伸縮装置を提供する。
【解決手段】本発明によると、伸縮可能な基材上に配置され、所定の方向に配向した複数のCNTを備える配向CNT膜構造体を備え、かつ該配向CNT膜構造体は、伸びにより裂け目を生じて亀裂帯を形成してなる伸縮装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮可能な基材上に配置された、配向カーボンナノチューブ膜構造体(以下、配向CNT膜構造体という)から構成された伸縮装置、及びそれの製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既存の歪みゲージなどの、伸縮を検出する伸縮装置は、主として、金属もしくは、半導体から作製されている。これらの伸縮装置は、金属及び半導体が伸縮(歪み)した際の抵抗変化から、伸縮を検出し、伸縮量を測定している。半導体や金属は、ゴムなどの伸縮材料と比して、本質的に伸縮可能な変形量が極めて小さく、繰り返し歪みを測定できる弾性変形では、測定可能な伸縮量(歪み量)は、5%程度である。材料を塑性変形させれば、30%程度の伸びを測定することが可能であるが、塑性変形により材料が不可逆に変形するため、1回しか伸縮を測定できない。この大きな伸縮を繰り返し測定できないという技術的課題は、伸縮を検出する伸縮装置の適応範囲を制限していた。たとえば、人間の皮膚は最大で20%程度も伸縮する。従来技術による伸縮装置では、人間の皮膚や衣服に貼り付け、人間の大きな動きを繰り返し検出する、伸縮装置は実現できなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術による、伸縮を検出できる伸縮装置は、金属・半導体等のいわば、十分に伸縮可能な部材を用いていなかったために、繰り返し検出できる伸縮は5%程度に限られていた。このような従来技術の問題点に鑑み、本発明では、従来よりも格段に大きな伸縮を、繰り返し検出できる、伸縮装置を提供する。
【0004】
なお本明細書で、伸縮性、伸縮可能とは、伸縮を受けても物が破壊されないで伸長、収縮する性質を意味し、対し、剛直性とは、伸縮性を有する物よりも、伸縮性が低い有様を示す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態によると、伸縮可能な基材上に配置され、所定の方向に配向した複数のCNTを備える配向CNT膜構造体を備え、かつ該配向CNT膜構造体は、伸びにより裂け目を生じて亀裂帯を形成してなる伸縮装置が提供される。
【0006】
前記亀裂帯は、少なくとも1本のCNTの架橋構造を備えてもよい。
【0007】
前記架橋構造を構成している少なくとも1本のCNTは、伸縮方向に対して傾斜して配設されてもよい。
【0008】
前記亀裂帯は、所定の伸びに達した後、網目状に配置されてもよい。
【0009】
前記配向CNT膜構造体は、高密度化処理されてもよい。
【0010】
前記複数のCNTは、前記伸縮可能な基材上に反りのない状態で貼り付けて配置されてもよい。
【0011】
前記配向CNT膜構造体は、ヘルマンの配向係数:0以上、好ましくは0.3以上、1以下であってもよい。
【0012】
前記配向CNT膜構造体は、重量密度0.1〜1.5g/cmを有し、及び又は厚さ10nm〜100μmを有してもよい。
【0013】
また、本発明の一実施形態によると、伸縮可能な基材上に配置され、所定の方向に配向した複数のCNTを備える配向CNT膜構造体と、該配向CNT膜構造体は、伸びにより裂け目を生じて亀裂帯を形成してなり、前記配向CNT膜構造体に伸縮力を供給するための伸縮力供給用部材と、を備える伸縮装置が提供される。
【0014】
前記伸縮力供給用部材は、伸縮駆動装置に取り付けるための取り付け具であってもよい。
【0015】
伸縮装置は、伸縮を検知する検知装置を備えてもよい。
【0016】
また、本発明の一実施形態によると、伸縮可能な基材上に配置され、所定の方向に配向した複数のCNTを備える配向CNT膜構造体を備え、かつ該配向CNT膜構造体は、伸びにより裂け目を生じて亀裂帯を形成してなる伸縮装置と、該伸縮装置を駆動する駆動装置とを備える伸縮駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法によれば、配向CNT膜構造体を備える伸縮装置であって、配向CNT膜構造体の構造変化(CNTの伸縮の度合い)を検出することで、従来手法に比べ、格段に、200%を凌駕する大きな伸縮を繰り返し検出できる伸縮装置を提供できる。また、本伸縮装置を用いて、人間の皮膚に貼り付け、人間の動きを検出する伸縮装置などが実現でき、新しい産業界への利用が十分に期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施形態に係る本発明の伸縮装置の模式図である。
【図2】一実施形態に係る本発明の伸縮駆動装置の模式図である。
【図3】一実施形態に係る本発明の基板の形状の模式図である。
【図4】一実施形態に係る本発明のCNTマイクロ膜構造体を作成するプロセスを示す模式図である。
【図5】一実施形態に係る本発明の亀裂帯発生モデルを示す図である。
【図6】一実施形態に係る本発明の伸縮装置の模式図である。
【図7】一実施形態に係る本発明の配向CNT膜構造体に生じた亀裂帯と架橋体の原子顕微鏡写真である。
【図8】一実施形態に係る本発明の配向CNT膜構造体に生じた亀裂帯と架橋体の原子顕微鏡写真である。
【図9】一実施形態に係る本発明の配向CNT膜構造体に生じた亀裂帯と架橋体の原子顕微鏡写真である。
【図10】伸縮装置の動作機構を示す図である。
【図11】配向CNT膜構造体に亀裂体が形成される様子を示す図である。
【図12】伸縮装置の動作機構を示す図である。
【図13】一実施形態に係る本発明の検知装置付きの伸縮装置の動作特性を示す図である
【図14】一実施形態に係る本発明の配向CNTフィルム配置工程を示す図である。
【図15】一実施形態に係る本発明のCNT載置法を示す図である。
【図16】一実施形態に係る本発明のCNT載置法を示す図である。
【図17】実施例1の基材の形状を示す図である。
【図18】実施例1の伸縮装置の製造プロセスの一例を示す図である。
【図19】実施例1の基材の製造方法を示す模式図である。
【図20】実施例1の成形した基材の形状を示す模式図である。
【図21】実施例1の成形した基材の形状を示す模式図である。
【図22】実施例1の成形した基材の形状を示す模式図である。
【図23】実施例1の成形した基材の形状を示す模式図である。
【図24】実施例1のCNT載置法を示す模式図である。
【図25】実施例2のCNTマイクロ膜構造体を用いた伸縮装置の模式図である。
【図26】実施例3の剛直域に設けられた検知装置を備える伸縮装置の模式図である。
【図27】実施例3の検知装置を製造する工程を示す図である。
【図28】実施例4の伸縮性を有する検知装置を備える伸縮装置の模式図である。
【図29】実施例4の検知装置を製造する工程を示す図である。
【図30】実施例5の剛直な伸縮力供給用部を備える伸縮装置の模式図である。
【図31】実施例6の伸縮性を有する伸縮力供給用部を備える伸縮装置の模式図である。
【図32】実施例7の伸縮力供給用部材付きの伸縮装置。
【図33】実施例7の伸縮力供給用部材付きの伸縮装置。
【図34】実施例7の伸縮力供給用部材付きの伸縮装置による動き検出例。
【図35】実施例8の伸縮力供給用部材付きの伸縮装置。
【図36】実施例8の伸縮力供給用部材付きの伸縮装置による振動の検出例。
【図37】実施例9の伸縮力供給用部材付きの伸縮装置。
【図38】実施例10の伸縮駆動装置。
【図39】実施例10の伸縮駆動装置の製造方法を示す図である。
【図40】実施例10の駆動装置。
【図41】実施例10の伸縮力供給用部材製造工程を示す図である。
【図42】実施例10の伸縮可能な検知装置の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明に係るカーボンナノチューブを用いた伸縮装置とその製造方法について説明する。但し、本発明のカーボンナノチューブを用いた伸縮装置とその製造方法は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0020】
(実施形態1)
以下に本発明による伸縮装置、及び伸縮駆動装置の一例を添付の図1を参照して詳細に説明する。図1は、実施形態1に係る本発明の伸縮装置の概略図である。
【0021】
本明細書での伸縮装置とは、伸縮可能な装置のことを示す。特に本発明の伸縮装置1は、伸縮可能な基材上2に配置され、所定の方向に配向した複数のカーボンナノチューブ(CNT)を備える配向CNT膜構造体3を備えることを特徴とする。伸縮装置1は、配向CNT膜構造体3に伸縮力を供給するための部材である、伸縮力供給用部材4を備えていてもよい。また、例えば配向CNT膜構造体3の構造変化を、測定することで伸縮を検出する、検知装置5を備えていてもよい。
【0022】
さらに本発明では、上記の伸縮装置1を備え、さらに、伸縮装置1を駆動するための駆動装置を備える、伸縮駆動装置10をも提供する(図2)。このような配向CNT膜構造体3を備える伸縮装置1、及び伸縮駆動装置10は大きな伸縮を検出できるのみならず、繰り返し使用が可能で、従来の伸縮装置を大きく凌駕する性能を示す。
【0023】
(伸縮可能な基材)
本発明における基材とは、少なくとも一方向に伸縮性を有し、かつ配向CNT膜構造体3が配置できればよく、形状、材質、装着方法に左右されない。材質は、伸縮可能であればよく、例えば、樹脂、ゴム、弾性体などが例示できる。特に、伸縮性が非常に高い材料、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)は大きな伸縮を検出できるため好ましい。伸縮による配向CNT膜構造体3の抵抗変化を検出する場合には、基材2は、それ自体が電気伝導性を有しないことが好ましい。
【0024】
基材の形状として、伸縮による応力集中の生じない、板状の直方体などの、立体形状が特に好ましいが、これに限定されない。例えば配向CNT膜構造体20と基材21とによる基板の形状は平面(図3(a))のほか、曲面(図3(b))やフレキシブルなもの(図3(c))が考えられ、基材の厚みは問わない。また基材21の全面が配向CNT膜構造体20で被覆されている必要はない。例えば配向CNT膜構造体20がパターニングされているもの(図3(d))、部分的に基材表面が露出しているもの(図3(e))、電子回路22が形成されたもの(図3(f))などが考えられる。また配向CNT膜構造体20が基材21に直接接触して装着されている必要はなく、基材との間に接着性などの向上を目的として中間層23を設けてもよい(図3(g))。配向CNT膜構造体20と基材21の接触面積を減らすため、中間層として間隙24を設けてもよい(図3(h))。
【0025】
(配向CNTフィルム)
本明細書で言うCNTフィルムとは、成長用基材から成長した複数のCNTの集合体を言い、このCNT配向集合体を成長用基材から剥離して得られる。CNTフィルムの少なくとも一部において、複数のCNTが一定の方向が配向していると、伸縮性に優れた伸縮装置が得られる。本明細書では、上記のCNTフィルムを、配向CNTフィルムと定義する。配向CNTフィルムの形状、形態は伸縮可能な上述した基材に配置可能で、高密度化工程が実施可能であればよく、例えば、薄板状、シート状、フォイル状、リボン状の形状でも良い。
【0026】
配向CNTフィルムの密度が、0.01g/cm以上、0.1g/cm以下の範囲にあれば、配向CNTフィルムを成長用基材から取り外した時に、ばらばらにならず、また、後述する高密度化処理が行えるほど低密度であり好適である。
【0027】
配向CNTフィルムは、公知の化学気相合成法により製造できる。これは、成長用基材上に触媒層を形成し、その触媒に複数のCNTを化学気相成長(CVD)させて得られる。配向CNTフィルムは、特願2009−001586、特願2006−527894に記載の方法などを用い、成長用基材上にパターニングされた触媒から、一定の方向に配向した複数のCNTを成長させて得られる。特願2009−001586、特願2006−527894に記載の方法で製造された、配向CNTフィルムの特性は、製造条件の詳細に依存するが、典型値として、単層CNT含有率99%(2層CNT、多層CNTに対する単層CNTの本数割合であり、合成した単層CNT配向集合体を透過型電子顕微鏡で観察し画像から求める)、密度:0.03g/cm、G/D比:2.5〜40、BET−比表面積:1150m/g、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、絶対純度98%、ヘルマンの配向係数0.3〜0.7である。
【0028】
(配向CNT膜構造体)
配向CNT膜構造体とは、伸縮可能な基材上に配置可能な、複数のCNTを高密度に充填してなるCNTの構造体をいう。このような配向CNT膜構造体は、上記配向CNTフィルムを成長用基材から取り外し、伸縮可能な別の基材へ配置し、高密度化処理を行うことで得られる。位置、及び配向が制御され、反り返りがなく基材上に配置され、かつ厚さが均一なフィルム状の配向CNT膜構造体は、伸縮時の構造変化の制御が容易なため、好ましい。
【0029】
(配向CNT膜構造体の配置)
配向CNT膜構造体はその位置、及び配向を制御され、かつ反り返りがない状態で基材上に配置されることが、特性を制御するために大事である。ここで、配向CNT膜構造体の位置を制御された状態とは、配向CNT膜構造体が基材上の所望領域に、配置されている状態を指す。さらに、「配向CNT膜構造体の配向を制御された状態」とは、配向CNT膜構造体の配向方向が許容可能な範囲で揃っている状態を指す。さらに、「配向CNT膜構造体に反り返りがない状態」とは、配向CNT膜構造体が基板上の所望領域に、配向CNTフィルムの各CNTが上下方向の許容範囲内にある状態を指す。
【0030】
配向CNT膜構造体は、領域が基材上に1つ形成されてもよいし、また複数形成されていてもよいし、さらにそれらの領域が互いに離間した形態として形成されていてもよい。
【0031】
(配向CNT膜構造体の重量密度)
配向CNT膜構造体における体積と重量との比であり、厚さが一様の場合には下式で与えられる。
重量密度=CNT集合体の重量/(CNT集合体の面積×CNT集合体の厚さ)
【0032】
配向CNT膜構造体を構成する複数のCNTは、互いに隣り合うCNT同士がファン・デア・ワールス力によって強く結合しており、配向CNT膜構造体におけるCNTの重量密度は、一般には0.1〜1.5g/cm、より好ましくは0.2〜1.5g/cmである。このように、配向CNT膜構造体におけるCNTの重量密度が上記の下限値以上であると、均一に且つ隙間なくCNTが充填され、配向CNT膜構造体が固体としてのリジッドな様相を呈し、伸縮時に後述の所要の構造変化が得られるようになる。この逆に、CNTの重量密度が上記の値に満たないと、配向CNT膜構造体を構成するCNT同士間に有意な隙間が発生する。そのため、配向CNT膜構造体がリジッドな固体ではなくなり、伸縮時に後述の所要の構造変化が得られなくなる。また、レジスト等の液剤を塗布しようとしても、CNT同士間の隙間に液剤が浸み込んでしまうので、周知のパターニング技術やエッチング技術の適応が困難となり、所望の形状、特性を有する配向CNT膜構造体の製造が困難となる。ここで配向CNT膜構造体におけるCNTの重量密度は、一般的には大きければ大きいほど好ましいが、製造上の制限から、その上限値は1.5g/cm程度である。
【0033】
(配向CNT膜構造体の配向)
さらには、配向CNT膜構造体の少なくとも一部領域において、複数のCNTが一定の方向に配向していると、伸縮時に配向CNT膜構造体に後述の亀裂帯が好適に発生し、従来よりも格段に大きな伸縮を、繰り返し検出できる、優れた伸縮装置が製造できる。
【0034】
配向CNT膜構造体の配向度は、ヘルマンの配向係数(Herman’s orientation Factor)で評価できる。本発明の伸縮装置においては、ヘルマンの配向係数が0以上、より好ましくは0.3以上、1以下であることが好ましい。少なくとも一つの配向領域の、ヘルマンの配向係数が0以上、1以下の範囲にあると、伸縮時に配向CNT膜構造体に亀裂帯が好適に発生する。少なくとも一つの配向領域の、ヘルマンの配向係数が0.3以上、1以下の範囲にあり、配向の方向が、伸縮の方向に対して90度に近い角度であると、CNTへの歪みの集中を緩和し、大きな伸縮を受けても、破断しない配向CNT膜構造体を得ることができる。
【0035】
(配向CNT膜構造体の厚み)
配向CNT膜構造体の厚さは、伸縮装置の要望に応じてその望ましい値を任意に設定することができる。配向CNT膜構造体の厚さが10nm以上であると、膜としての一体性を保持できるようになり、配置工程、高密度化工程を実施することができる。逆に、10nm以下であると、連続性、均一性を持つ配向CNT膜構造体の製造が困難であった。膜厚の上限値に格別な制限はないが、このような伸縮装置に利用する場合は、伸縮性と柔軟性を兼ね備えるために、100μm程度が好ましい。
【0036】
配向CNT膜構造体の伸縮する領域はできるだけ、厚さが均一であることが好ましい。配向CNT膜構造体の厚さが均一であると、伸縮時に、亀裂帯が伸縮領域に均一に発生しやすく、網目状の亀裂帯に発展しやすい。そのようにすれば、大きな伸縮を受けても、破断しない、配向CNT膜構造体を得ることができる。
【0037】
(配向CNT膜構造体を構成するCNT)
CNT層を構成するCNTは、単層CNTであってもよいし、多層CNTであってもよい。いずれの種類のCNTを用いるかは、配向CNT膜構造体の必要とされる特性に応じて決めることができ、例えば、高い導電性や可撓性などが要求される場合には単層CNTを用いることができ、剛性や金属的性質などが重視される場合には多層CNTを用いることができる。
【0038】
(パターニングされた配向CNT膜構造体)
次に、CNTマイクロ膜構造体について述べる。ここで、「CNTマイクロ膜構造体」とは、パターニングし加工された配向CNT膜構造体を指す。パターニングは、基材上の所望領域に配向CNT膜構造体を配置するのに好適であり、これにより制御性よく所望の性能を示す伸縮装置を製造できる。配向CNT膜構造体が上記のような密度及び厚さであると、配向CNT膜構造体上にレジストを塗布し、リソグラフィーでレジストに任意のパターンを描き、レジストをマスクとして配向CNT膜構造体の不用部分をエッチングし、任意形状の回路あるいはデバイスを形成することが容易に実行可能となる。すなわちこれによれば、周知のパターニング技術やエッチング技術の適用が可能となり、形状が厳密に制御され、所望の特性を有する配向CNT膜構造体を製造することが可能となる。
【0039】
CNTマイクロ膜構造体を作成する方法について述べると、先ず、図4(a)に示すように、配向CNT膜構造体51にレジスト膜52を塗布する。レジスト膜52は、電子線レジスト、フォトレジスト等、形状を構築するレジストであれば任意のものを使用することができ、また、CNTに対してエッチングの選択比が低いものであっても、選択比以上に配向CNT膜構造体51よりも十分に厚いレジストを形成すればよい。
【0040】
次に、配向CNT膜構造体51の上に塗布したレジスト膜52に対し、レジスト膜52の性質に合わせた描画(例えば電子線描画や、フォトリソグラフィー)を行い、CNTマイクロ膜構造体51として構築したい所望の形状のレジスト膜52Aを描画する(図4(b))。
【0041】
次に、描画したレジストを現像し、配向CNT膜構造体51の上にレジストマスク53を形成する(図4(c))。そして、配向CNT膜構造体51に対してエッチングを行い、レジストマスク53を用いて、所望した形状に配向CNT膜構造体51を加工する(図4(d))。配向CNT膜構造体51を加工した後、レジストマスク53を除去し、所望の形状のCNTマイクロ膜構造体50を得る(図4(e))。
【0042】
本発明において、配向CNT膜構造体をパターニングする場合、次のことを考慮する必要がある。
(1)高密度化した配向CNTフィルムでも、例えばエッチングの選択比の稼げるシリカ系のレジストHSQ(hydrogen silsesquioxane)(FOX16:ダウコーニング社製)を均一に塗布できないことがある。また、HSQレジストの再現性を得るのが難しいことがある。
(2)配向の異なる配向CNTフィルムから成るマイクロ膜構造体を、一つの基板内に構築できることが望まれる。
【0043】
これに対して、本発明者らの検討の結果、HSQを塗布する前に、希釈したポリメチルメタクリレート(PMMA)もしくはレジスト(ZEP520A/日本ゼオン社製)を塗布固化して配向CNT膜構造体上に膜を形成し、その上にHSQを塗布することにより、配向CNTフィルムの下側へのHSQの流入を防ぎ、HSQを均一に塗布することができる。
【0044】
また、HSQを2度もしくは3度塗布し、配向CNT膜構造体内及びその下側に十分にしみこませ、配置した配向CNT膜構造体の上側にマスクを形成するに十分なHSQを供給することによりマスクを形成してもよい。さらに、HSQを不活性ガス雰囲気のグローブボックス内で扱い、レジスト塗布時のみ必要な量だけ空気中に暴露して使用することも有効である。また、後述の配置、高密度化工程(転写)を行うことが好ましい。
【0045】
次に、配向CNT膜構造体のエッチングについて述べると、配向CNT膜構造体を例えば、Oによる反応性イオンエッチング(RIE)で加工する際、焼き切れない毛羽だった残渣が残ることがある(Oプラズマに対するCと何らかの元素の不動態と推認される)。これに対しては、OとArを用いたRIE、もしくはOとCHFを用いたRIE、もしくはこれら3つのRIE条件を組み合わせて加工を行うと効果的である。
【0046】
(配向CNT膜構造体の亀裂帯)
物体は、伸縮力により歪みを受けた場合、変形する。初め、伸縮されたことのない、配向CNT膜構造体3には、裂け目や亀裂帯はない。(図5(a))。配向CNT膜構造体を伸張すると、伸張された初回は、図5(b)の模式図に示すように、CNTが配向している領域の、高密度に充填されたCNTの間に複数の裂け目が生じる。伸張量の増加とともに、各々の裂け目はCNTの配向方向に沿って帯状・縦長に急速に大きくなる。さらに伸張量が増加すると、裂け目は、次々と融合し始める(図5(c))。CNTが繊維状の物質であるために、図5(d)に示すように、裂け目の境界にあるCNTは、裂け目が融合した際に、融合した裂け目を架橋する形で残る。本明細書では、架橋するCNTを含む、このような裂け目を亀裂帯と呼ぶ。また架橋CNTとは、亀裂帯を架橋するCNTのことを示す。
【0047】
一般の物体は、裂け目が一度発生すると、裂け目に歪みが集中し、伸張の増加とともに裂け目は急速に発展し大きくなり、最終的には物体は破断してしまう。本発明の製造法による、配向CNT膜構造体は、伸張の増加とともに裂け目が大きくなると、裂け目同士が融合し、架橋CNTを含む亀裂帯へと発展し、亀裂帯を架橋するCNTが出現する。切れ目の発生、亀裂帯の構造と成長を制御することで、極めて大きな伸張を受けても、連続的な構造を維持し、破断しない、配向CNT膜構造体を製造することが可能である。
【0048】
大きな伸張下でも、破断することなく、CNT架橋構造を備える亀裂帯を発生することで、伸張を吸収しつつ、連続的な構造として存在しうる、配向CNT膜構造体は本発明で初めて実現した、革新的な伸縮機能を示す材料である。
【0049】
図6に示すように、裂け目、亀裂体7のCNTの密度は、配向CNT構造体8のCNTの密度と比較すると著しく低密度である。また、裂け目が発生しなかった部分は、CNTは高密度に充填されたままである。このように、伸張下でも、構造がほとんど変化しない、高密度の領域は、基材との密着性を保持する。そのため、伸縮時に、配向CNT膜構造体が基材から剥離しない。一方、CNTの密度が低い、CNT架橋構造8(CNT架橋体)を備える亀裂帯は伸縮の変形を吸収する。具体的には、大きな伸張は、CNTの密度が低い、CNT架橋構造8を備える亀裂帯が増加することで吸収される。このような高密度領域と低密度領域に配向CNT膜構造体が分離することで、大きな伸縮を繰り返し受けても、破断、破壊、剥離しない、配向CNT膜構造体を得ることができる。
【0050】
CNT架橋構造を備える亀裂帯が発生するメカニズムは現時点では明らかではないが、以下の要因が大事と推察される。まず、CNTが一次元の繊維状の物質であることは、裂け目同士が融合した際に、境界部が繊維状になり、亀裂帯を架橋するために肝要である。また、CNT同士が適切に絡み合っていて、お互いファンデルワールス力で強固に物理吸着していることが大事である。このCNT同士の相互作用は、切れ目が発生し、大きく発展して、配向CNT膜構造体を断裂することを防止する。以上のように、CNT架橋構造を備える亀裂帯は、様々な構造、特性の要因の複雑な関わりあいが制御されて、はじめて可能となる。
【0051】
配向CNT膜構造体を伸縮可能な基材に配置し、伸張すると、配向CNT膜構造体は容易に破断するという問題がある。そこで、この課題を解決するために、本発明者は以下に述べる鋭意工夫を重ねた。まずは、配向CNT膜構造体として、配向CNT膜構造体の少なくとも一部領域において、複数のCNTが一定の方向に配向しているものを用いた。これにより、伸張を受けたときに、歪みが集中して、配向CNT膜構造体が破断することになしに、多くの裂け目が配向CNT膜構造体中に発生し、それらの融合により、亀裂帯が発生した。
【0052】
次に、配向CNT膜構造体3の少なくとも一つの配向領域の配向の方向6(CNTの配向方向)が、伸縮の方向に対して90度(図6参照)、もしくは90度に近い角度となるように、高密度化工程、配置工程を工夫し、配向CNT膜構造体の位置及び、配向を制御した。これにより、伸縮を受けた時に、より裂け目が発生しやすくなると同時に、CNT自体に歪みが集中することを防いだ。さらには、反り返りがない状態で基材2上に配向CNT膜構造体3を配置することで、伸縮時に、配向CNT膜構造体3が基材2から剥離することを防いだ。
【0053】
また、配向CNT膜構造体の膜の厚みが10nm以上、100μm以下とした。膜が薄すぎると、配向CNT膜構造体の製造が著しく困難となり、また、膜の厚みが100μm以上であると、配向CNT膜構造体は固体状となり柔軟性を失い、破断がおきやすい。配向CNT膜構造体の膜の厚みが10nm以上、100μm以下であると、以下に詳細を記述する配置工程、高密度化工程などが実施でき、破断しづらく、亀裂帯が好適に発生する、配向CNT膜構造体を得ることができた。
【0054】
さらには、配向CNT膜構造体の密度を、0.01g/cm以上、0.1g/cm以下の範囲にすると、均一に且つ隙間なくCNTが充填され、配向CNT膜構造体が固体としてのリジッドな様相を呈し、伸縮時に亀裂帯が発生した。
【0055】
伸縮を受けた際に、裂け目、及び亀裂帯が、一つしか発生しないと、伸縮による、歪みの吸収が困難となり、大きな伸縮を受けると、歪みが亀裂帯に集中し、配向CNT膜構造体は破断してしまう。そこで、伸縮性基材の伸縮部の厚みをできるだけ均一にし、かつ配置される配向CNT膜構造体の形状、厚みをできるだけ均一にすることで、基材、及び配向CNT膜構造体が均一に伸縮するようにした。このようにすると、配向CNT膜構造体が伸張を受けた時に、多くの亀裂帯が網目状に発生し、大きな伸縮を受けても破断せず、かつ繰り返し伸縮可能な配向CNT膜構造体を得ることができた(図7)。
【0056】
さらには、CNT架橋構造は亀裂帯(裂け目)に対して傾斜していると、繰り返し大きな伸縮可能な配向CNT膜構造体が得られる(図8、図9)。これは、架橋CNTが傾斜していると、伸張時に発生した傾斜CNTは、縮小時に、可逆的に、元の構造に戻るからである。これは、あたかも果物を梱包する、高発泡ポリエチレンネットを伸縮させた時の構造変化と類似している。もしも、架橋CNTが、亀裂帯に対して垂直に配置していると、伸縮時に、元の形状へは戻らず、再現性よく、繰り返し伸縮可能な伸縮装置を得ることができない。
【0057】
(伸縮装置の動作機構)
後述の実施例1の方法で製造した、伸縮装置1の動作機構について、図10を用いて説明する。実施例1の方法で製造した伸縮装置を、図6で示すように、配向CNT膜構造体3のCNTの配向の方向6に対して、90度の方向で伸縮させた。図10は、様々な伸縮をうけている伸縮装置の配向CNT膜構造体の写真である。配向CNT膜構造体中のCNTは、図の上下方向に配向している。図のサイズは一辺60μmであり、各図の左上の数値は伸長率を示している。
【0058】
伸縮をうけたことのない、配向CNT膜構造体3には、亀裂帯は存在せず、均一の構造を示す(図10(上段伸長0%))。このような、配向CNT膜構造体に伸長を加えていくと、配向CNT膜構造体のCNT配向方向6に座屈が生じ、配向CNT膜構造体3のCNT並び方向に、前述のように裂け目が生じ、裂け目同士が融合し、亀裂帯7を形成する(図10(上段伸長27%))。亀裂帯は図11に示すように、亀裂帯に対して傾斜した架橋CNTを複数含み、そのために配向CNT膜構造体が伸長を受けても破断しない。
【0059】
伸びをさらに増大させていくと、配向CNT膜構造体3のCNT配向方向6の座屈がさらに増大し、配向CNT膜構造体3の亀裂帯7の密度と本数が増加する(図10左上から右)。亀裂帯7は、配向CNT膜構造体3の配向した領域全体に均一に発生し、網目状の亀裂帯となった(図10(上段伸長100%))。これらのため、配向CNT膜構造体3は伸長を受けても破断しなかった。
【0060】
配向CNT膜構造体3が初回に伸長を受けた時の、亀裂帯7の幅(図12(a))と、亀裂帯(裂け目)7を含まない配向CNT膜構造体3の高密度領域の幅(図12(a))の伸長に対する変化を計測し、図12(b)の左図にプロットした。伸長が大きくなるにつれ、配向CNT膜構造体3の高密度領域の幅は急激に小さくなる、亀裂帯7の幅は逆に、少しずつ大きくなるが、その増加量は高密度領域の幅の減少量ほどではない。そのため、図10に観察されたように、亀裂帯7の本数と密度が伸長とともに増加する。
【0061】
次に、伸長率100%まで伸長させた配向CNT膜構造体3を、少しずつ、収縮させていくと、亀裂帯7は少しずつ、サイズが小さくなっていくが、基本的に、密度と本数は、それほど減少しなかった(図10右下図から左下図へ)。伸縮ゼロの元の状態に戻った時には、亀裂帯7は消滅するものの、その痕跡は残余していた。
【0062】
次に、伸長させた場合には、初回とは異なり、この痕跡から、亀裂帯7が発生し、伸長を大きくするにつれ、図10の左下図から右下図へ示すように、亀裂帯7が大きくなっていったが、基本的に、密度と本数は、それほど増加しなかった。
【0063】
配向CNT膜構造体が2回目以後に伸長を受けた時の、亀裂帯7の幅(図12(a)参照)と、亀裂帯(裂け目)7を含まない配向CNT膜構造体3の高密度領域の幅(図12(a)参照)の伸長に対する変化を計測し図12(b)の右図にプロットした。伸長が大きくなるにつれ、配向CNT膜構造体3の高密度領域の幅はほとんど変化しない。逆に亀裂帯7の幅は伸長に比例して大きくなっていく。亀裂帯7の幅が大きくなることで、伸長を亀裂帯7が吸収している様子がわかる。
【0064】
以上の動作機構により、2回目以後の伸縮においては、亀裂帯は可逆的に発生、成長、縮小する。この原理により、本発明による、伸縮装置は、大きな伸縮で繰り返し使用できる。
【0065】
(検知装置)
本明細書での検知装置とは、伸縮装置の伸縮を検出する装置のことである。検知装置は、伸縮装置の伸縮を検出できれば、構造、形状、材質を問わず、適宜選択することができ、伸縮装置と非接触で配置されていてもよい。
【0066】
例えば、配向CNT膜構造体に二つの電極をつけ、伸縮により構造が変化した、配向CNT膜構造体の抵抗変化を検出することで、伸縮を検出する装置でもよい。また、配向CNT膜構造体の構造変化を透過率の変化で検出する光学装置でもよい。
【0067】
伸縮装置の伸縮可能な基材上に、検知装置を配置する場合には、基材が伸縮するため、検知装置が変形して検出値が変化したり、検知装置そのものが破壊されたり、検知装置が基材から剥離するという問題があった。これらの問題を解決するために、以下の二通りの解決手段を本発明では提供した。
【0068】
(解決方法1)
伸縮が抑制された、剛直域を設けて、その領域に検知装置を設置した。このようにすれば、伸縮装置が伸縮する際に、検知装置は、伸縮の影響を受けず、上記問題が解決できた。具体的には、配向CNT膜構造体に二つの電極から構成される検知装置をつけ、伸縮による配向CNT膜構造体の抵抗変化を検出する伸縮装置を製造した。伸縮可能な基材の、配向CNT膜構造体を配置した面と、反対側の面に、硬い基板であるガラスを接着剤で接合した。このようにして伸縮しない、剛直域を形成した。このような剛直域を、2つの離間する領域に、形成した。次に、その反対面にある、剛直域上の配向CNT膜構造体上に、導電性ペーストと、導電性フィルムを接合し、電極を構成した。このような、構成の検知装置を用いると、検知装置は、伸縮により変形しないため、上記の課題が解決できた。
【0069】
(解決方法2)
伸縮性を有する電極を用いて検知装置を構成することで、伸縮可能な検知装置を得ることができた。このような伸縮可能な検知装置は、伸縮装置が伸縮する際に、検知装置自体も伸縮するため、伸縮の影響を受けず、上記問題が解決できた。具体的には、配向CNT膜構造体に二つの電極から構成される検知装置をつけ、伸縮による配向CNT膜構造体の抵抗変化を検出する検知装置を製造した。基材を形成後に、伸縮可能な基材上の一部の領域に、スパッタ法で成膜したチタン/金/チタンの薄膜を成膜し密着層とした。この密着層は、後述の伸縮性電極と伸縮可能な基材を強く密着させるために必要であり、これがないと、伸縮性電極は容易に基材から剥離した。次に、密着層上に、金属配線(リード線)を配置し、その上に、配向CNT膜構造体を形成した。次に、密着層上に、金属配線を覆うように、伸縮性と導電性を有する材料である、導電性CNTゴムペーストを塗り、伸縮性電極を形成した。導電性ゴムペーストは非特許文献(Nature Materials,8(6),494−499(2009))に記載の方法を用いて製造した。最後に、伸縮性電極をPDMS封止材で覆った。このPDMS封止材は、伸縮時に検知装置に発生する応力を軽減する効果があった。
【0070】
上記の方法で製造した検知装置は、伸縮装置が伸縮する際に発生する配向CNT膜構造体の構造変化による抵抗変化を精度よく、再現性よく、かつ、繰り返し検出することが可能であった。
【0071】
(検知装置付きの伸縮装置の動作特性)
後述の実施例3の方法で製造した、検知装置付きの伸縮装置の動作特性について、図13を用いて説明する。実施例3の方法で生成した伸縮装置を、図6で示すように、配向CNT膜構造体3のCNTの配向の方向6に対して、90度の方向で伸縮させた。
【0072】
(伸縮限界)
本伸縮装置を2面間で伸縮力を発生する伸縮駆動装置に取り付け、伸縮に対する伸縮装置の抵抗変化率を検知装置で測定した。具体的には、伸長に伴う、配向CNT膜構造体中の亀裂帯の発生、及び成長に伴う、構造変化に起因した、配向CNT膜構造体の抵抗変化を検出している。図13(a)内のaligned CNTで示してあるように250%以上の伸長に対して、測定可能な抵抗変化率を示している。これは、本伸縮装置は、250%程度まで伸長させても、配向CNT膜構造体中が破断せず、伸長を測定可能であった。
【0073】
比較例として、同様に、既存の伸縮測定素子である、歪みゲージを、2面間で伸縮力を発生する伸縮駆動装置に取り付け、伸縮に対する抵抗変化率(初期抵抗値からの抵抗変化/初期抵抗値X100)を測定した。その結果、図13(a)の右小グラフ内のStrain Gaugeで示すように、5%程度までの歪み量に対し、直線的な抵抗変化率を示した。5%以上では、急激に抵抗変化率が上昇しており、歪みゲージが断線していることを示唆している。
【0074】
本結果は、本発明による、伸縮装置は、従来と比較して、格段に大きな伸縮を検出できることを示している。
【0075】
(伸縮特性)
図13(b)に、実施例3の方法で作製した検知装置付きの伸縮装置を、2面間で伸縮力を発生する伸縮駆動装置に取り付け、繰り返し伸長―縮小のサイクルをおこなった時の、伸縮装置の抵抗変化率を測定した。その結果、本伸縮装置は、初回の伸長過程とその後の伸縮過程で抵抗変化の様子が異なっていた。これは、上述した通り、初回の伸長過程と、その後の伸縮過程で、伸長に伴う配向CNT膜構造体の構造変化の様子が異なるためである。初回の伸長過程では、抵抗は伸長に対してほぼ直線的に単調増加する。一方で、初回の伸長以降は、抵抗は伸長に対して単調増加するものの、伸長率が小さい領域と伸長率が大きな領域とで抵抗が変化する度合いが異なる。伸長に対して、抵抗が単調増加することは、本伸縮装置を用いて、大きな伸縮の伸縮量を定量的に評価できることを意味する。
【0076】
(繰り返し特性)
図13(c)に、実施例3の方法で作製した、検知装置付きの伸縮装置を、2面間で伸縮力を発生する伸縮駆動装置に取り付け、2回目以後、500回までの伸縮を繰り返した際の抵抗変化率を示す。繰り返し大きな伸縮を受けても、伸縮に伴う抵抗変化は非常に再現性が良く、また、配向CNT膜構造体も破断しなかった。これにより、本発明による伸縮装置は、大きな伸縮を繰り返し検出することが可能なことが分かる。
【0077】
(伸縮力供給用部材)
本明細書での伸縮力供給用部材とは、配向CNT膜構造体に伸縮力を供給するための部材である。伸縮力供給用部材4は、駆動装置9に取り付けるための取り付け具として用いることもでき、その場合、駆動装置9により発生した伸縮力を効率よく伸縮装置1に供給する役割を果たす。伸縮力供給用部材は、伸縮装置の配向CNT膜構造体に伸縮力を供給できれば、構造、形状、材質を問わず、適宜選択することができる。
【0078】
伸縮力供給用部材として、伸縮可能な基材に接着された伸縮性基材よりも硬い部材を用いてもよい。伸縮力供給用部材は例えば、板状、ロッド状の金属、ガラスなどの剛直性を有する材質から構成すればよく、また接着剤などを用いて、伸縮可能な基材に接着すれば良い。このような剛直性を有する伸縮力供給用部材はつまんで、ひっぱることができ、そのため伸縮装置の所望の領域に、均一で制御された伸縮力を提供できる。
【0079】
また、伸縮力供給用部材が、配向CNT膜構造体が配置された基材とは別の伸縮可能な部材でも良い。伸縮可能な別の部材としては、例えば、絆創膏や網タイツなどを例示できる。その場合、接着材を用いて、伸縮可能な基材の裏面に絆創膏や網タイツを接着すればよい。配向CNT膜構造体は伸縮可能な基材の表面に配置する。PDMS接着剤などのような、伸縮性を有する接着剤を用いると、絆創膏/網タイツと、伸縮可能な基材間の剥離を防ぐことができ、好ましい。
【0080】
伸縮力供給用部材として、絆創膏を用いた伸縮装置は、人体などの任意の物体に貼り付けることができ、その物体の変形、変位、動きを検出できる。また、伸縮力供給用部材として、網タイツを用いた伸縮装置は、人間が衣服として着ることができる。これらの伸縮装置を、人体、ロボットなどに貼り付けたり、着せたりした場合、人間、ロボットの動き、移動、発声などを検出できる。
【0081】
(伸縮駆動装置)
伸縮駆動装置とは、伸縮装置と、伸縮装置を駆動する駆動装置を備える装置である。駆動装置は、伸縮装置に伸縮力を加え、伸縮装置を伸縮させることができれば、構造、形状、材質を問わず、適宜選択することができる。例えば、適当な駆動力により変位する二つの物体の間に伸縮装置を接続した場合、二物体間の距離を伸縮装置の伸縮量を検知装置で計測することで測定できる。このような構成の装置においては、二つの物体が駆動装置となる。駆動装置として、ロボット、アームや関節を備える機械加工装置、などの可動部を備える機械を例示できる。また、伸縮装置を含む装置全体が、伸縮駆動装置と定義される。適宜必要があれば、効率よく伸縮力を伸縮装置に供給するために、伸縮力供給用部材を用いても良い。
【0082】
(伸縮装置製造法)
本発明の一実施形態に係る伸縮装置製造方法の詳細を、図1を参照しながら、以下に具体的に説明する。先ず、予め、公知の手法を用いて伸縮可能な基材2を製造する(基材製造工程)。基材は、配向CNTフィルムを配置できる伸縮可能な基材であればよい。また、予め、配向CNTフィルムを製造する(配向CNTフィルム製造工程)。一般的に、配向CNTフィルムの製造に用いる成長用基材は高温に晒されるため、伸縮性を有さない材料から成る。そのため、成長用基材の上に製造した配向CNTフィルムを成長用基材から取り外し、それを伸縮可能な基材に貼り付けることで配置し(配向CNTフィルム配置工程)、高密度化処理を行うことで、配向CNT膜構造体3を製造する(高密度化工程)。この時、配向CNT膜構造体3はその位置、及び配向を制御され、かつ反り返りがない状態で基材2上に配置されることが、特性を制御するために大事である。さらには必要に応じて、伸縮を検出するための検知装置5を製造する(検知装置製造工程)。また、基材2を通して、配向CNT膜構造体3に伸縮を与えるための伸縮力供給用部材4を製造する(伸縮力供給用部材製造工程)。さらには、このように製造された、伸縮装置1を備えかつ、伸縮装置1を駆動する駆動装置9を備える伸縮駆動装置10を製造しても良い(伸縮駆動装置製造工程)。
【0083】
(配向CNTフィルム配置工程)
配向CNTフィルム配置工程とは、成長用基材の上に合成された、配向CNTフィルムを、成長基材から取り外し、別の伸縮可能な基材上に、配向CNTフィルムを貼り付けて配置する工程である。配向CNTフィルム取り外し工程は、配向CNTフィルムを所望の形状、特性を著しく損なわない程度で、成長用基材から取り外せることができる方法であれば、何でもよい。具体的には、成長用基材に形成された配向CNTフィルムをピンセットで把持して直接取り外す方法や、合成樹脂製のメンブレンをピンセットの先端に貼り付けておき、このメンブレンに配向CNTフィルムを貼りつかせて取り外す方法を、状況に応じて実施者が適宜に選ぶことによって実現することができる(図14)。
【0084】
取り外し工程において、密集した配向CNTフィルム群から、CNTを取り出すことが困難な問題があった。また、取り出した配向CNTフィルムを1枚ごとに分けることが困難な問題があった。これらの問題を解決するため、実体顕微鏡とメンブレンフィルターを用い、実体顕微鏡下で観察しながら、メンブレンフィルターにて配向CNTフィルムをつけ、配向CNTフィルム群からCNTを取り出した。また、メンブレンフィルターで取り出したCNTは、1枚の時もあれば、複数枚ある時もあるが、本手法により、メンブレンフィルターで1枚ごとの取り出しが可能となった。さらに、実体顕微鏡とピンセット及び、合成する配向CNTフィルムの厚みを2μm以上とすると、ピンセットで配向CNTフィルム1枚を取り出すことが可能となった。
【0085】
次に取り出した配向CNTフィルムを伸縮可能な基材2上に貼り付けて配置し、且つ配向CNTフィルムを液体に晒すが、この工程にも、状況に応じて実施者が適宜に選ぶことができる複数通りの実現方法がある。
【0086】
第一は、取り外し工程で取り外した配向CNTフィルムを、液体が予め滴下された伸縮可能な基材2の上に移動させてピンセットから離す。その後、メンブレンのついたピンセットで配向CNTフィルムを液体中の任意の位置に合わせる、という方法である。
【0087】
第二は、配向CNTフィルムを伸縮可能な基材2の上に移動させてピンセットから離した後、伸縮可能な基材2上の配向CNTフィルムが浸るように液体を滴下し、メンブレンのついたピンセットで液体中の配向CNTフィルムの位置合わせを行う、という方法である(図15)。
【0088】
なお、ここでは1枚の配向CNTフィルムを伸縮可能な基材の上に貼り付けて配置する例を示したが、複数の配向CNTフィルムを少なくとも一部重ねて貼り付けて配置するようにしてもよい。また、配向CNTフィルムを液体に晒すのは伸縮可能な基材以外の場所としても構わない(図16)。
【0089】
ここで配向CNTフィルムを晒す液体としては、CNTと親和性があり、蒸発後に残留する成分がないものを使用することが好ましい。そのような液体としては、例えば水、アルコール類(イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール)、アセトン類(アセトン)、ヘキサン、トルエン、シクロヘキサン、DMF(ジメチルホルムアミド)等を用いることができる。また液体に晒す時間としては、配向CNTフィルムの内部に気泡が残らずに全体が満遍なく濡れるのに十分な時間であればよい。
【0090】
(高密度化工程)
次の高密度化処理(工程)においては、液体に晒して伸縮可能な基材2の表面に載置した状態にある配向CNTフィルムを高密度化し、伸縮可能な基材2の表面に被着した配向CNT膜構造体3を形成する。この工程は、典型的には、液体が付着した配向CNTフィルムを乾燥させることで行う。配向CNTフィルムを乾燥させる手法としては、たとえば室温空気中での自然乾燥、室温窒素雰囲気下での自然乾燥、真空引き乾燥、アルゴン等の不活性ガス存在下での自然乾燥、及びこれらの雰囲気状態での加熱乾燥などを用いることができる。
【0091】
配向CNTフィルムは、液体に浸されると、各CNT同士が密着して全体の体積が少し収縮し、液体が蒸発するときに密着度がより一層高まって体積がかなり収縮し、結果として高密度化した配向CNT膜構造体3が形成される。このとき、伸縮可能な基材2との接触抵抗により、伸縮可能な基材2と平行な面の面積収縮はほとんど無く、専ら配向CNT膜構造体3の厚さ方向に収縮するように、高密度化工程を制御する。
【0092】
このようにして得られた配向CNT膜構造体3は、配向CNTフィルムに比して高密度化によってもその配向性が損なわれることはない。
【0093】
また、基材2から、配向CNT膜構造体3の部分的な浮きや、裂け、破れの原因となるしわと、基材2の放線方向以外の方向へのカーボンナノチューブフィルムの高密度化や、配向CNT膜構造体3へのレジスト塗布時に配向CNT膜構造体3の折り返りの原因となる、反り返りを抑止した処理が施されたものが望ましい。
【0094】
(高密度化工程の原理)
高密度化処理(高密度化工程)とは、配向CNTフィルムをCNTと親和性のある液体に浸し、CNT集合体中のCNT間に浸漬した液体の蒸発と、それに伴う液体の表面張力により、CNT集合体中のCNT同士の凝集を誘発し、CNT集合体の本数密度を向上させる方法である。配向CNTフィルムの高密度化処理によって、液体が浸漬もしくは付着したCNT集合体を乾燥させると、高密度化が進む。この現象は、個々のCNTに付着した液体が蒸発する際の表面張力によって互いに隣接するCNT同士がくっつき合うことで起こるものと考えられる。さらにCNT集合体をフィルム状にし、その配向方向を基材の表面と平行にして高密度化処理を施すと、配向CNTフィルムの収縮方向が基材に垂直な方向の1次元上に規定される。これは、基材の表面に沿っての個々のCNTの移動が配向CNTフィルムと基材との密着力によって制限されるのみならず、配向CNTフィルムの側部からなされる液体の蒸発が専ら高さ方向に表面張力を発生させることによる。これらにより、配向CNTフィルムは厚さ方向のみに均一に高密度化されるので、成長用基材から垂直に成長したバルク状のCNT集合体に高密度化処理を施した際の島状に収縮するという問題が起こらない。
【0095】
上記の高密度化工程は、配向CNTフィルムを液体に晒した後に乾燥させる手法としたが、高密度化工程において配向CNTフィルムが収縮するメカニズムは、上述した通り、各CNT同士間に入り込んだ液体の表面張力によって各CNT同士が引き寄せられ、液体が蒸発した後も各CNT同士のくっついた状態が維持されるからであると推定される。従って、高密度化工程は、CNT同士間に表面張力を生じさせる手法であればよく、例えば高温蒸気などを用いる手法を適用することができる。
【0096】
(高密度化工程の課題)
高密度化工程において、高密度化する際に溶液に浸したカーボンナノチューブフィルムもしくはカーボンナノチューブを扱うピンセット、カーボンナノチューブフィルムを扱っているメンブレンに泡が生じると、高密度化する際にシワができることがある問題があった。また、高密度化する際に配向CNTフィルムを所望の方向に合わせるのが難しい問題があった。さらに、高密度化乾燥する際に溶媒が高密度化した配向CNTフィルム内に残ることがある問題があった。さらには、配向CNTフィルムを配置、高密度化する際には、基板表面上に液体の表面張力で基板の法線方向に収縮するだけでなく、一部の配向CNTフィルムが基板表面で反り返り高密度化することがある問題があった。
【0097】
(高密度化工程の課題解決法)
これらの問題を解決するために、配向CNTフィルムの厚みを100μm以下に薄くするとともに、観察に用いる顕微鏡の照明の強度を、乾燥する直前に照明強度を最大から最小に変化させた。これは、実体顕微鏡の照度を調整することにより、配向CNTフィルムの乾燥状態が制御され、反り返りを抑制できているものと推認される。
【0098】
また、高密度化に用いる基板上に載せた溶液に、配向CNTフィルム、もしくは配向CNTフィルムを扱うピンセット、配向CNTフィルムを扱っているメンブレンを十分に浸し、実体顕微鏡にて観察し、泡が生じないようにすることができる。さらに、ピンセットの先に、メンブレンフィルターを把持して、配向CNTフィルム同様基板上の溶液に浸し、顕微鏡で配向CNTフィルムの配向方向を観察しながら、ピンセットすなわちメンブレンフィルターを操作し、溶液中で配向CNTフィルムを動かすことにより、所望の位置、所望の配向に配置することができる。
【0099】
また、ピンセットで把持した配向CNTフィルムを、針がついたマニュピュレーターの針先に移し、同様に針のついたマニュピュレーターとともに、所望の位置、所望の配向で、マニュピュレーターを制御しながら、配置し、マニュピュレーターで押さえ、その後、高密度化に用いる溶液を滴下し、高密度化を行うことができる。位置制御が可能な先端として、タングステンのような高度を有する針状もしくは棒状の先端でも良く、または樹脂のような柔軟性のある先端でも良い。さらには、ピンセットのような端可能な治具を先端として利用しても良い。
【0100】
またその際、反り返りのより効果的な防止を行うには、特に高密度化のための溶液として、メタノールを使用することが好ましい。
【0101】
このようにすると、下地にすでにCNTマイクロ構造体があった場合であっても、そのCNTマイクロ構造体の配向CNTフィルムを掃くことなく、2層目以降の配向CNTフィルムを容易に配置することができる。マニュピュレーターは乾燥後に外せばよい。このような方法は、厚みが4μm以下の配向CNTフィルムを扱う場合に効果的である。
【0102】
複数の配向CNTフィルムを積層し、高密度化し、所望の厚さのCNT層を形成しても良い。前者の場合は、1枚の配向CNTフィルムによって目的とする密度の配向CNT膜構造体が得られる利点があり、後者の場合は、複数の配向CNTフィルムを、配向方向を同じくして積層することもでき、また配向方向を異ならせて積層することもでき、多様にラミネートされた配向CNT膜構造体が得られる利点がある。
【実施例】
【0103】
(実施例1:伸縮装置)
以下に具体的な実施例を挙げて本発明による伸縮装置、及びその製造方法についてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明による伸縮装置を、図1を参考に説明する。
【0104】
伸縮装置1は、伸縮可能な基材上2に配置され、所定の方向に配向した複数のCNTを備える配向CNT膜構造体3を備える。
【0105】
具体的に、製造した伸縮装置1は、均一な厚さ1mmで、形状図17に示す板状のPDMS伸縮基材2の上に、厚さ600nm、サイズ1mm(長さ:配向CNTフィルムの高さ)×30mm(幅)の配向CNT膜構造体3を配置してなる。
【0106】
配向CNT膜構造体3を構成するCNTは全面に渡って均一にヘルマン係数0.7の配向度で配向していた。配向CNT膜構造体3は密度:0.5g/cm、BET−比表面積:1150m/gであった。配向CNT膜構造体3を構成するCNTは、典型値として、G/D比:2.5〜40、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、絶対純度98%であった。なお、これらの値は、製造に用いた配向CNTフィルムの特性と同一とした。
【0107】
このような配向CNT膜構造体3は、複数枚の高さ(長さ)1mm、厚み6μm、幅18mmのサイズの配向CNTフィルムを用いて製造した。配向CNTフィルムは、1mm程度の重ね部分を設けて配置し、高密度化し、配向CNT膜構造体3を得た。
【0108】
配向CNTフィルムは、典型値として、単層CNT含有率99%(2層CNT、多層CNTに対する単層CNTの本数割合であり、合成した単層CNT配向集合体を透過型電子顕微鏡で観察して画像から求める)、密度:0.03g/cm、G/D比:2.5〜40、BET−比表面積:1150m/g、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、絶対純度98%、ヘルマンの配向係数0.7である。
【0109】
このようにして得た伸縮可能な基材2上に配向CNT膜構造体3を備える伸縮装置1は、250%もの大きな伸長でも壊れず、500回以上、繰り返し使用が可能で、従来の伸縮装置を、大きく凌駕する性能を示す。
【0110】
(伸縮装置製造法)
本発明の伸縮装置の製造方法のうち、特に好ましいプロセスの一例を、図18を参照しながら、以下に具体的に説明する。
【0111】
この製造方法においては、先ず、予め、公知の手法を用いて伸縮可能な基材2を製造する(基材製造工程)。基材2は、配向CNTフィルムを配置できる伸縮可能な基材であればよい。また、予め、配向CNTフィルムを製造する(配向CNTフィルム製造工程)。配向CNTフィルムは成長用基材の上で設置された触媒からCNTを成長すると良いが、所望の形態と形状の配向CNTフィルムが製造できる何れの手法も適宜用いることが可能である。一般的に、配向CNTフィルムの製造に用いる成長用基材は高温に晒されるため、伸縮性を有さない材料から成る。そのため、成長用基材の上に製造した配向CNTフィルムを成長用基材から取り外し、それを伸縮可能な基材2に貼り付けることで配置し(配向CNTフィルム配置工程)、高密度化処理を行うことで、配向CNT膜構造体3を製造する(高密度化工程)。配向CNTフィルム配置工程と高密度化工程は逐次行ってもよいし、同時に行っても良い。また、伸縮性基材2との密着性が確保できれば、高密度化工程を配向CNTフィルム配置工程の前に行っても良い。この時、配向CNT膜構造体3はその位置、及び配向を制御され、かつ反り返りがない状態で基材2上に配置されることが、特性を制御するために大事である。さらには必要に応じて、伸縮を検出するための検知装置5を製造する(検知装置製造工程)。具体的には例えば、配向CNT膜構造体3に二つの電極を製造し、伸縮した時の、配向CNT膜構造体3の構造変化により抵抗値の変化を検出する。さらに必要に応じて、伸縮可能な基材2、及び、配向CNT膜構造体3に、伸縮力(歪み)を供給するための伸縮力供給用部材4を製造しても良い。伸縮力供給用部材として、例えば、ガラス板等の、堅い伸縮性を有さない堅い基材で伸縮性基材の両端を固定することが例示できる。このようにすれば、伸縮性基材と伸縮力供給用部材の接点部で伸縮が生じないため、安定した性能を示し、繰り返し伸縮可能な伸縮装置が製造できる。このような工程により、従来よりも格段に性能が向上した、伸縮装置を提供することができる。
【0112】
本発明の伸縮装置を得るための製造プロセスや手順は上記の例に限定されるものではなく、適宜必要に応じて、一部の工程を省略したり、順序を変更したりしても良い。
【0113】
例えば、検知装置製造工程、伸縮力供給用部材製造工程は、適宜適切な順序、もしくは同時に行えばよく、さらには、基材製造工程の後、または前に行い、その後、配向CNTフィルム配置工程を後に行ってもよい。
【0114】
(基材製造工程)
基材の材質として、電気伝導性を有さず、優れた伸長性を示す、ポリジメチルシロキサン(PDMS)であるシルポット184(東レ・ダウコーニング株式会社製)を選んだ。また、形状としては、均一な伸縮を実現するために、均一な厚みを有する板状に成形した。以下に示す、脱泡工程、板状成形工程、剥離工程、成形工程によりかかる基材を製造した。
【0115】
脱泡工程は以下の手順で行った。基材(PDMS)の前駆体を、真空中で攪拌し調製した。使用したシルポット184は、未反応液体と触媒液体に分割されており、未反応液体30g、触媒液体3gをテフロン(登録商標)製の容器に入れた。シルポットの両溶液を入れたテフロン(登録商標)容器ごと、真空攪拌機(真空ミキサー あわとり練太郎 ARV-200/株式会社シンキー社製)を用い、真空中で脱泡攪拌した。
【0116】
真空中で攪拌することで、大気中で攪拌するのに比べて、前駆体が固化(ゲル化)し、基材となる際の、基材中への泡の混入を抑制できた。基材中に泡が混入すると、基材を伸縮させた際に、泡に応力が集中し、基材が断裂する。そのため、大きな伸張性を示す基材を得ることができない。
【0117】
板状成形工程は以下の手順で行った。脱泡調製した前駆体を、平らで歪みが極小な板である1辺が30cm、厚みが4.8mmのガラス板の上に滴下した(図19左上)。前駆体を滴下する際は、容器から直接ガラス板の上に滴下した。また、滴下に際し、スパチュラ等で書き出すことは基材中への泡の混入を招くため行わない。板に歪みがある場合は、基材と板との接触面で形成される基材の主表面に板の歪みが現れるため、基材の伸縮時に基材の主表面において均一な歪みを発生させることが困難となる。
【0118】
前駆体を滴下した板(下部ガラス板)の、滴下した面の四隅に、間隔材料(スペーサー)を入れた。間隔材料として、厚みが1mmであるシリコンゴム製の板を、縦28〜30cm、幅0.8〜1cmの短冊状にして4つ用意し、短冊の長辺が辺に沿うように、4辺に配置した。(図19右上)
【0119】
次に、滴下した前駆体を押し伸ばすために、前駆体を滴下した板と同様の板である、1辺が30cm、厚みが4.8mm以上のガラス板を、間隔材料の上に置くようにして載せ、前駆体を平滑化するように押しつぶした(図19左下)。これにより、基材を1mmの厚みを有する厚みが均一な板状に成形した。このような、基材に配向CNT膜構造体を配置すると、配向CNT膜構造体に均一な伸縮を与えることができる。
【0120】
間隔材料は、この様に4辺に設置しても良いし、形状を変え、四隅に設置しても良い。また、間隔材料の厚みを変えることで、得られる基材の厚みを、0.5mmから10mm程度まで変化できる。さらに、十分な重量と同様の平滑性を有する板を用いることにより、このガラス板と同様の効果が得られる。また、上に載せるガラス板に重量を加えることにより、0.5mm以下の厚みを有する基材を作成することも可能である。
【0121】
前駆体を押しつぶしたまま、前駆体が固化(ゲル化)するまで、数時間から、数日間置く。PDMSの種類にもよるが、本実施例で用いたPDMSの場合は、室温で、1日もしくは2日程度置く。
【0122】
これより短いと、固化が不十分となり、基材は形状を維持できないか、均一な歪みを発生させることが困難となる。これ以上長いと、基材がガラス基板に固着してしまい、下記の剥離工程が困難となる。
【0123】
剥離工程は以下の手順で行った。板状成形工程終了後、基材を利用するため、基材を押しつぶしたガラス板(上部ガラス板)もしくは下部ガラス板を基材から剥離する(図19中下)。次に残った下部もしくは上部ガラス板を剥離して、均一な膜厚を有する基材を取りだす(図19右下)。剥離した直後に、基材のガラス基板によって形成されていた面、両面をアルミ箔で覆う。こうすることにより、基材の汚れを防止し、清浄な伸縮面を保てる。
【0124】
成形工程は以下の手順で行った。均一な膜厚を有する基材を、基材の形状により応力集中が生じない、図20に示すドッグボーン型や、図21、図22、及び図23に示す板状の直方体型に加工する。加工は、剥離工程で付けたアルミフォイルがある状態で行う。成形工程は、公知の技術を用いることができ、はさみできりだしたり、機械的に加工したり、レーザーで切り出してもよい。
【0125】
(配向CNTフィルム製造工程)
配向CNTフィルムは、公知の化学気相合成法により製造できる。これは、基材上に触媒を製造し、その触媒に複数のCNTを化学気相成長(CVD)させるものである。配向CNTフィルムは、特願2009−001586に記載の方法などを用い、基材上にパターニングされた触媒から、一定の方向に配向した複数のCNTを成長させた。
【0126】
本実施例で用いた配向CNTフィルムは、高さ1mm、厚み6μm、幅18mmの形状を有する。
【0127】
本製造法で得られた単層CNTの配向集合体である配向CNTフィルムの特性は、製造条件の詳細に依存するが、特願2009−001586の実施例1の記述の製造条件では、典型値として、単層CNT含有率99%(2層CNT、多層CNTに対する単層CNTの本数割合であり、合成した単層CNT配向集合体を透過型電子顕微鏡で観察し画像から求める)、密度:0.03g/cm、G/D比:2.5〜40、BET−比表面積:1150m/g、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、絶対純度98%、ヘルマンの配向係数0.3〜0.7である。
【0128】
このような条件で製造した配向CNTフィルムは、基材から剥離した後でも、その一体性を保持した。
【0129】
(配向CNTフィルム配置工程)
次に、成長用基材の上に合成された、配向CNTフィルムを、成長用基材から取り外し、別の伸縮可能な基材2上に、配向CNTフィルムを貼り付けて配置した。
【0130】
取り外す際に、密集した配向CNTフィルム群から、CNTを取り出すことが困難であった。また、取り出した配向CNTフィルムを1枚ごとに分けることが困難であった。さらに、下記高密度化工程において、配向CNTフィルムを所望の位置に所望の方向で合わせるのが難しかった。
【0131】
これらの問題を解決するため、予め上記の方法で製造した配向CNTフィルムを、合成した基材ごと、実体顕微鏡の視野に入るようにセットし、顕微鏡で観察しながら、配向CNTフィルムを合成用基材から取り外した。合成用基材からの配向CNTフィルムの取り外しは、顕微鏡で観察しながら、ピンセットで直接行った。
【0132】
次に取り出した配向CNTフィルムを、配向CNT膜構造体として伸縮装置に利用するため、取り出した配向CNTフィルムの配向方向を制御して、基材2に配置し、且つ液体に晒す必要があった。そのため、取り出し工程で取り出した配向CNTフィルムを、液体が予め滴下された伸縮可能な基材2の上に移動させて、ピンセットから放し、その後、メンブレンのついたピンセットで配向CNTフィルムを液体中の任意の位置に合わせるという方法を用いた(図18)。この際に、滴下する液体の量は、パスツールピペットで1〜5滴程度である。また、伸縮可能な基材2の製造工程で用いた、基材を覆っているアルミ箔の、一方を取り外し、CNTの配置面とした。また、後述する高密度化工程において、溶液に晒した配向CNTフィルム、もしくは溶液に晒したピンセットやメンブレンに泡が発生すると、配向CNT膜構造体3にシワができることがあった。そのため、高密度化に用いる基材2上に溶液を配置し、配向CNTフィルムや、配向CNTフィルムを扱うピンセット、配向CNTフィルムを扱っているメンブレンを十分に溶液に浸し、実体顕微鏡にて観察し、泡が生じないようにした。配向CNTフィルムを晒す液体として、イソプロピルアルコールを用いた。このようにして、配向CNTフィルムの位置と配向方向を制御して、基材2上に配置した。
【0133】
また、基材2の伸縮方向である、図17で示す基材の中心軸と、配向CNTフィルムのCNTが配向した方向とのなす角を90度となるようにし、さらに、この基材2の中心軸に沿うように配向CNTフィルムを配置した。これにより、亀裂体や、CNT架橋体等が均一に発生し、かつ基材を大きく伸長させても、配向CNT膜構造体が破断しなかった。
【0134】
また、下記に示す、配向CNTフィルムの重ね配置工程を用いて、大きな配向CNT膜構造体を作製してもよい。このようにすれば、大きな領域での伸縮を検知できる。
【0135】
(配向CNTフィルム高密度化工程)
配向CNTフィルムを液体に晒して、乾燥させることで、高密度化させ、配向CNT膜構造体を得た。配向CNTフィルムの配置、高密度化は、同時行っても良い。その際、配向CNTフィルムの周囲から溶液が乾燥していると、配向CNTフィルムの一部のみが、高密度化され、配向CNT膜構造体となって基材に密着することがある。その場合、配向CNTフィルムを任意の位置に配置したり、所望の配向方向を得たりすることが困難となる。そのため、溶液が乾燥し、高密度工程が完了する前に、配向CNTフィルムの配置を完了した。
【0136】
溶液が室温の空気中で自然蒸発し、配向CNTフィルムが固定化されたら、配向CNTフィルム表面を観察し、配向CNTフィルムの表面が見えるまで溶液を自然乾燥させ、配向CNTフィルムを高密度化させた。
【0137】
溶液として、イソプロピルアルコール、もしくはメタノールを用いた。イソプロピルアルコール、およびメタノールは配向CNTフィルム内のCNT間に容易に侵入し、配向CNTフィルム全体が均一に高密度化された。
【0138】
また、配向CNTフィルムが高密度化する際には、配向CNTフィルムの一部が基材表面で反り返ることがあった。その際には、配向CNTフィルムの乾燥時に照明を当て、配向CNTフィルムの乾燥時にCNTの表面が見える際に、照明を弱くすることで、溶液の蒸発を制御して、高密度化処理の速度を制御することで、反り返りを抑止した。
【0139】
配向CNTフィルムの配置、高密度化を行う別の手順としては、予め配置した配向CNTフィルムに、後から溶液を滴下し、高密度化を行った。
【0140】
(配向CNTフィルムの重ね配置工程)
大きな配向CNT膜構造体を得るため、前述した配向CNTフィルム配置工程及び、配向CNTフィルム高密度化工程を繰り返し、複数の配向CNT膜構造体を、同一の配向方向に、僅かな重ねをもってつなぎ合わせて配置した。
【0141】
同一の配向方向にわずかな重ねをもってつなぎ合わせることで、全体として構造が均一な大きな伸縮装置を得ることが出来た。
【0142】
重ね配置は以下の手順で行った。まず、予め、上記方法で基材2上に配置されている配向CNT膜構造体3の、重ね合わせする領域にかかるように、イソプロピルアルコールを、パスツールピペットで1〜5滴程度滴下した。
【0143】
ついで、別の配向CNTフィルムを、滴下したイソプロピルアルコールの中に浸し、1〜5mm程度の重ね合わせで重なるように、配向CNTフィルムの位置、及び配向の向きを揃えて配置し、高密度化を行った。この操作を1〜2回繰り返し行い、CNTの並び方向に30〜40mmの長さを有する配向CNT膜構造体を作製した。
【0144】
配向CNTフィルムの重ね配置工程のさらなる利点は、配向CNT膜構造体に断裂が生じ、壊れてしまった伸縮装置も、その断裂部を修復できることである。
【0145】
このようにして、重ね合わせた配向CNT膜構造体全体が一体で連続した構造を有し、かつ重ね合わせる配向CNT膜構造体それぞれが、機能を損なわない、大きな配向CNT膜構造体を備える伸縮装置を得た。
【0146】
(配向CNT膜構造体の密度)
高密度化工程での配向CNTフィルムの圧縮率を〈圧縮率=元の厚さ÷高密度化後の厚さ〉と定義すると、配向CNT膜構造体の重量密度は、〈CNT密度=圧縮率×0.03g/cm〉となる。配向CNTフィルムの元の厚さを制御することにより、重量密度を0.11g/cmから0.54g/cmまで制御することができた。
【0147】
このようにして得られた重量密度が0.11g/cmの配向CNT膜構造体においても、基材上に配置、高密度化が十分可能であり、上述の各実施例と同様に伸縮装置の製造が可能であった。
【0148】
本発明において制御可能な配向CNT膜構造体の重量密度の上限は、本例に用いた0.54g/cmに限定されない。本明細書では明記しないが、原理的には、CNTの直径を制御することによってさらに幅広い範囲での重量密度を実現することが可能である。すべてのCNTが等しい直径を有し、且つ高密度化工程によってすべてのCNTが最密充填されるものと仮定すると、CNTの直径寸法が小さくなるに従って高密度化後のCNT密度は増加することが容易に計算できる。上述した各実施例で用いた配向CNT膜構造体におけるCNTの平均直径は2.8nm程度であるが、この場合のCNTが最密充填したときの重量密度は、0.78g/cm程度である。この点に関しては、すでに非特許文献(Ya−Qiong Xu, et al, Vertical Array Growth of Small Diameter Single−Walled Carbon Nanotubes, J. Am. Chem. Soc., 128 (20),6560−6561,2006)に報告されている技術を用いることにより、CNTの直径をより小さいもの(1.0nm程度)にすることは可能であることが分かっている。このことから、CNTの直径を小さくすることにより、最大1.5g/cm程度までは重量密度を高めることが可能であると考えられ、上記密度の、配向CNT膜構造体を用いて伸縮装置を製造することは、製造法が同一であるため、容易であると考えられる。
【0149】
(配向CNT膜構造体の厚み)
配向CNTフィルムの元の厚さと高さを制御することにより、配向CNT膜構造体の厚さを100nmから100μmまで制御することができた。高密度化処理での圧縮率は約10であるため、おおまかに、配向CNT膜構造体の10倍の厚みを有する配向CNTフィルムを合成すればよい。配向CNTフィルムの厚みは、公知の半導体の微細加工技術を用いて、触媒のパターニングをすることで制御する。そのため、厚みは、公知の半導体微細加工技術の精度と分解能で制御可能である。配向CNT膜構造体の厚さを100nmとする場合には、約配向CNT膜構造体の厚さを500nm〜1μmの厚さに触媒をパターニングすればよい。また、高さを制御することで、厚い配向CNT膜構造体を得ることもできる。このようにして得た、厚みが100nmから100μmの配向CNT膜構造体から、好適に伸縮装置を製造することができた。
【0150】
(配向CNT膜構造体の配向度評価)
配向CNT膜構造体を構成しているCNTの配向度を評価するたには、走査型電子顕微鏡(SEM)画像などを用いるのがよい。配向CNT膜構造体は、その機能を損なわない程度に一部等方的な構造を含んでいてもかまわない。
【0151】
観察された配向CNT膜構造体のSEM画像に基づきFFT(高速フーリエ変換)画像を計算した。これらのFFT画像は、SEM画像の倍率、場所により程度は異なるものの、それぞれが異方性を示した。これは配向CNT膜構造体のCNTが配向していることを示す。
【0152】
FFT画像の原点から等距離を保って動径方向に参照方向(φ=0)からφ=π/2までの変換強度を求め、強度プロフィールを得た。この強度プロフィールを用いてヘルマンの配向係数Fを算出したところ、0.7の値が得られ、配向CNT膜構造体中のCNTが配向していることが判った。
【0153】
(実施例2:CNTマイクロ膜構造体を用いた伸縮装置)
以下に具体的な実施例を挙げて本発明によるCNTマイクロ膜構造体を用いた伸縮装置、及びその製造方法についてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明による伸縮装置を、図25を参考に説明する。
【0154】
伸縮装置60は、伸縮可能な基材2上に配置され、所定の方向に配向した複数のCNTを備えるCNTマイクロ膜構造体50を備える。
【0155】
具体的に、製造した伸縮装置60は、均一な厚さ1mmで、形状図17に示す、板状のPDMS伸縮基材2の上に、厚さ600nm、サイズ0.8mm(長さ:配向CNTフィルムの高さ)×250mm(幅)のCNTマイクロ膜構造体50を配置してなる。
【0156】
CNTマイクロ膜構造体50を構成するCNTは全面に渡って均一にヘルマン係数0.7の配向度で配向していた。CNTマイクロ膜構造体50は密度:0.5g/cm、BET−比表面積:1150m/g、であった。CNTマイクロ膜構造体3を構成するCNTは、典型値として、G/D比:2.5〜40、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、絶対純度98%であった。なおこれらの値は、製造に用いた配向CNTフィルムの特性と同一であるとした。
【0157】
このようなCNTマイクロ膜構造体50は、複数枚の、高さ(長さ)1mm、厚み6μm、幅18mmのサイズの配向CNTフィルムを用いて製造した。配向CNTフィルムは、1mm程度の重ね部分を設けて配置し、高密度化した後、所望の形状にパターニングされ、CNTマイクロ膜構造体50を得た。
【0158】
配向CNTフィルムは、典型値として、単層CNT含有率99%(2層CNT、多層CNTに対する単層CNTの本数割合であり、合成した単層CNT配向集合体を透過型電子顕微鏡で観察し画像から求める)、密度:0.03g/cm、G/D比:2.5〜40、BET−比表面積:1150m/g、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、絶対純度98%、ヘルマンの配向係数0.7である。
【0159】
このようにして得た、伸縮可能な基材2上にCNTマイクロ膜構造体50を備える伸縮装置60は、250%もの大きな伸長でも壊れず、500回以上、繰り返し使用が可能で、従来の伸縮装置を、大きく凌駕する性能を示す。
【0160】
CNTマイクロ膜構造体50を作成する方法について述べると、実施例1の方法で、伸縮装置を製造した後に、配向CNT膜構造体をリソグラフィーでパターニングして、所望の形状の配向CNT膜構造体を得ることができる。配向CNT膜構造体を構成する配向CNTフィルムの高さ、長さは合成条件等に依存するため、厳密に所望の高さ(長さ)の配向CNTフィルムを合成することは困難である。本実施例の手法で、配向CNT膜構造体の不要部分をエッチングすることで、微細加工技術の精度で、所望の形状を有する配向CNT膜構造体を容易に得ることができ、所望の特性を有する伸縮装置を製造する上で格段の効果がある。
【0161】
配向CNT膜構造体の乾燥を十分に行うため、レジスト塗布前に、真空中180℃で10分間乾燥を行う。レジストPMMA495を希釈液にて重量換算で5倍希釈した液を塗布し、4700rpmで1分間スピンコートを行い、180℃で1分間ベークし、副レジスト層を形成させた。これにより2層目の主レジストが高密度化した配向CNT膜構造体に浸み込むことを抑制した。副レジスト層は、2層目の主レジスト層が配向CNT膜構造体に、染み込むことを抑制する機能を有しかつ、配向CNT膜構造体と同等にエッチング出来る材料であれば何でもよく、例えば、ZEP−520AやAZP−1357でも良い。希釈液は、副レジスト層として使うレジストを希釈可能であれば何でもよく、希釈量も、2層目の主レジストが描画できる範囲であれば、希釈量、塗布方法、ベーク条件は問わない。
【0162】
2層目の主レジストとして、さらにFOX16を塗布し、4500rpmで1分間スピンコートを行い、360nmのレジスト層を形成した。
【0163】
次に、電子線描画装置(CABL8000/クレステック)にてレジスト層に所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%のZTMA−100)で現像してFOX16のマスクを形成した。
【0164】
これを反応性イオンエッチング装置(RIE-200L/サムコ)にて、先ず、O(10sccm、80W、10Pa、7min)を、次に、O及びAr(10sccm、80W、10Pa、3min)を供給し、1層目の副レジスト層および配向CNT膜構造体のマスクから露出している部分、すなわち不用部分を除去した。ここでArを導入することにより、CNTのケバがきれいに除去され、シャープなエッジが得られた。
【0165】
最後に、2層目の主レジスト層を緩衝弗酸(110−BHF(4.7%HF,36.2%NHF,59.1%HO)/森田化学工業)を用いて除去し、且つ純水でリンスした後、1層目の副レジスト層を剥離液(PG/マイクロケム)で除去し、且つIPA(イソプロピルアルコール)で洗浄して自然乾燥させることにより、所望の形状を有するCNTマイクロ構造体50を備える伸縮装置60を得た。
【0166】
(実施例3:剛直域に設けられた検知装置を備える伸縮装置)
以下に具体的な実施例を挙げて本発明による検知装置を備える伸縮装置、及びその製造方法についてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明による検知装置を備える伸縮装置70を、図面26を参考に説明する。
【0167】
伸縮装置70は、伸縮可能な基材上2に配置され、所定の方向に配向した複数のCNTを備える配向CNT膜構造体3を備える。基材の配向CNT膜構造体3を配置した裏側の2カ所に、ガラスからなる硬い基板11が接着されている。硬い基板11は、配向CNT膜構造体3に伸縮力を供給するための部材である伸縮力供給用部材ともなる。硬い基板11は伸縮しないため、伸縮しない剛直域12が、基材2上に形成される。検知装置は、配向CNT膜構造体3を配置した面の、剛直域12上に設置されており、導電性ペースト14と、導電性フィルム15から成る。このような検知装置70を、配向CNT膜構造体3と電気的に接続して、二つ離間して剛直域12に取り付け、伸縮による、配向CNT膜構造体3の抵抗変化を検出することで、伸縮を検出する伸縮装置70を得た。
【0168】
具体的に、製造した伸縮装置70は、均一な厚さ1mmで、形状図17に示す、板状のPDMS伸縮基材の上に、厚さ600nm、サイズ1mm(長さ:配向CNTフィルムの高さ)×30mm(幅)の配向CNT膜構造体を配置してなる。
【0169】
配向CNT膜構造体3を構成するCNTは全面に渡って均一にヘルマン係数0.7の配向度で配向していた。配向CNT膜構造体3は密度:0.5g/cm、BET−比表面積:1150m/g、であった。配向CNT膜構造体3を構成する、CNTは、典型値として、G/D比:2.5〜40、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、絶対純度98%であった。なおこれらの値は、製造に用いた配向CNTフィルムの特性と同一であるとした。
このような配向CNT膜構造体3は、複数枚の、高さ(長さ)1mm、厚み6μm、幅18mmのサイズの配向CNTフィルムを用いて製造した。配向CNTフィルムは、1mm程度の重ね部分を設けて配置し、高密度化し、配向CNT膜構造体を得た。
【0170】
配向CNTフィルムは、典型値として、単層CNT含有率99%(2層CNT、多層CNTに対する単層CNTの本数割合であり、合成した単層CNT配向集合体を透過型電子顕微鏡で観察し画像から求める)、密度:0.03g/cm、G/D比:2.5〜40、BET−比表面積:1150m/g、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、絶対純度98%、ヘルマンの配向係数0.7である。
【0171】
検知装置は、図20に示す基材上に、伸縮しない剛直域を設けて、その剛直域に配向CNT膜構造体と電気的に接続された、銀ペーストとアルミ箔とリード線から構成される検知装置を備える。
【0172】
検知装置付きの伸縮装置を作成する方法について述べると、実施例1、もしくは実施例2の方法で、配向CNT膜構造体、もしくはCNTマイクロ膜構造体を備える、伸縮装置を製造した後に、検知装置を製造した。
【0173】
検知装置を、伸縮装置の伸縮可能な基材上に配置する場合は、基材が伸縮するため、検知装置が変形して検出値が変化したり、検知装置そのものが破壊されたり、検知装置が基材から剥離するという問題があった。これらの問題を解決するために、検知装置は、伸縮装置の配向CNT膜構造体と、安定的に接触されている必要があった。配向CNT膜構造体と、安定的に接触されているとは、伸縮装置の伸縮時に、伸縮装置の抵抗変化に比して、検知装置の抵抗変化が十分に小さい状態を指し、伸縮装置と検知装置の接合部での解離を生じない状態を指す。このような課題を解決するため、伸縮装置に、伸縮しない剛直域を設け、その上に検知装置を製造した。
【0174】
実施例1、及び2の方法で製造された伸縮装置に、伸縮しない剛直域を設け、その上に検知装置を製造する工程を、図27を用いて詳述する。伸縮装置70の剛直域12上に、伸縮が抑制された剛直域を設けて、その領域に検知装置75を設置した。剛直域12は、図20に示す領域に形成し、実施例5で示す伸縮力供給用部材にて、伸縮が起こらないようにした。この様にすることで、検知装置75が変形して検出値が変化したり、検知装置75そのものが破壊されたり、検知装置75が基材2から剥離するという問題を解決した。
【0175】
配置されている配向CNT膜構造体3と、密着してかつ、配向CNT膜構造体3と電気的に接続された検知装置75を製造するため、導電性ペースト14を配向CNT膜構造体3の配置されている剛直域12に塗布し電極とした。導電性ペースト14には、良好な導電性と電極形成の容易さから、銀ペーストを用いた。本実施例では、銀ペーストを図20の基材上の剛直域に、配置されている配向CNT膜構造体の上から塗り、厚み0.5mm程度の銀ペースト層を形成した。銀ペーストは、スパチュラで剛直域12の配向CNT膜構造体3上に塗布し、一様な厚みを形成するようスパチュラで均等に伸ばした。この銀ペーストが固化する前に、良好な導電性があり、抵抗計等の他の測定器との接続を容易とするため、アルミ箔を載せ接点を構築した。このアルミ箔と抵抗計を、リード線を用いて接続した。
【0176】
このようにして得た、剛直域12を有する、検知装置75を備える伸縮装置70は、250%もの大きな伸縮を検出できるのみならず、500回以上、繰り返し使用が可能で、従来の伸縮装置を大きく凌駕する性能を示す。
【0177】
(実施例4:伸縮性を有する検知装置を備える伸縮装置)
本発明による検知装置付きの伸縮装置、及びその製造方法についての別の実施例について、詳細に説明する。本発明による検知装置付きの伸縮装置80を、図面28を参考に説明する。
【0178】
伸縮装置80は、伸縮可能な基材上2に配置され、所定の方向に配向した複数のCNTを備える配向CNT膜構造体3を備える。伸縮装置80は配向CNT膜構造体3の構造変化を、測定することで伸縮を検出する、検知装置85を備える。検知装置85は、配向CNT膜構造体3と伸縮性電極の基材への密着性をよくする密着層18と、伸縮性電極16と、封止材19とから構成され、伸縮性を有する。
【0179】
このような検知装置80を、配向CNT膜構造体3と電気的に接続して、二つ離間して取り付け、伸縮による配向CNT膜構造体3の抵抗変化を検出することで、伸縮を検出する伸縮装置80を得た。このような、伸縮性を有する検知装置85を備える伸縮装置80は、伸縮装置全体が伸縮性を有するために、装置を適応できる応用範囲が大きく拡大し、産業応用上非常に大事である。具体的に基材2は、実施例1の方法で、均一な厚さ1mmで、形状図21に示す、板状のPDMS伸縮基材2の上に、厚さ600nm、サイズ1mm(長さ:配向CNTフィルムの高さ)×30mm(幅)で製造した。実施例1の方法で、基材2上の図28に示す位置に配向CNT膜構造体3を配置した。配向CNT膜構造体3を構成するCNTは全面に渡って均一にヘルマン係数0.7の配向度で配向していた。配向CNT膜構造体3は密度:0.5g/cm、BET−比表面積:1150m/g、であった。配向CNT膜構造体を構成する、CNTは、典型値として、G/D比:2.5〜40、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、絶対純度98%であった。なおこれらの値は、製造に用いた配向CNTフィルムの特性と同一であるとした。
【0180】
このような配向CNT膜構造体3は、複数枚の、高さ(長さ)1mm、厚み6μm、幅18mmのサイズの配向CNTフィルムを用いて製造した。配向CNTフィルムは、1mm程度の重ね部分を設けて配置し、高密度化し、配向CNT膜構造体3を得た。
【0181】
配向CNTフィルムは、典型値として、単層CNT含有率99%(2層CNT、多層CNTに対する単層CNTの本数割合であり、合成した、単層CNT配向集合体を透過型電子顕微鏡で観察し画像から求める)、密度:0.03g/cm、G/D比:2.5〜40、BET−比表面積:1150m/g、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、絶対純度98%、ヘルマンの配向係数0.7である。
【0182】
伸縮性可能な検知装置85を備える伸縮装置80を作成する方法について述べると、実施例1の方法で、図21の形状を備える伸縮基材2上を製造した後に、検知装置85の一部である密着層18を設け、その後、実施例1、もしくは実施例2の方法で、配向CNT膜構造体3、もしくはCNTマイクロ膜構造体50を基材2上に配置した後に、検知装置85を製造した。
【0183】
検知装置を、伸縮装置の伸縮可能な基材上に配置する場合は、基材が伸縮するため、検知装置が変形して検出値が変化したり、検知装置そのものが破壊されたり、検知装置が基材から剥離するという問題があった。これらの問題を解決するために、検知装置は、伸縮装置の配向CNT膜構造体と、安定的に接触されている必要があった。配向CNT膜構造体と、安定的に接触されているとは、伸縮装置の伸縮時に、伸縮装置の抵抗変化に比して、検知装置の抵抗変化が十分に小さい状態を指し、伸縮装置と検知装置の接合部での解離を生じない状態を指す。このような課題を解決するため、伸縮可能な検知装置85を製造した。
【0184】
伸縮可能な検知装置85を製造する工程を、図29を用いて詳述する。伸縮可能な検知装置85は、伸縮性電極16を用いて構成する。伸縮性電極16は、伸縮性と導電性を有し、さらに、伸縮に対する伸縮性電極自体の抵抗変化と、被設置物との接触抵抗変化が、配向CNT膜構造体3の抵抗変化に比して、小さい物を指す。このような伸縮性電極16を用いた伸縮可能な検知装置85は、伸縮装置80が伸縮する際に、検知装置自体も伸縮するため、伸縮の影響を受けず、上記問題が解決できる。
【0185】
具体的には、図21に成形した基材製造後、配向CNT膜構造体3を配置する前に、図21で示す基材の中心軸の両端から7〜10mmの密着域上に、スパッタ法でチタン3nm、金100nm、チタン3nmと、続けて成膜し、密着層18を製造した。続けて成膜するとは、スパッタ法において、一つの成膜が終了した後、大気解放しないで次の成膜をすることを指す。本スパッタ法で用いたスパッタ装置は、CFS-4EP-LL/芝浦メカトロニクス株式会社製を用いた。また、密着層成膜前に、予め基材を覆っているアルミ箔の一方を取り除き、成膜面とする。この密着層18は、後述の伸縮性電極16と伸縮可能な基材2を強く密着させるために必要であり、これがないと、伸縮性電極16は、容易に基材2から剥離した。
【0186】
次に、配向CNT膜構造体3を、中心軸に沿い、片側の密着域から、もう一方の密着域18にかけて、密着層18のある面に、実施例1、もしくは実施例2の方法をもって製造した。配向CNT膜構造体製造後、両密着層上で配向CNT膜構造体3を覆うように、伸縮性電極16となる、導電性CNTゴムペーストを1mm位の厚みで、密着層18の外周から内側へ1mm位の範囲になるように、スパチュラでペーストを垂らし、伸ばして塗る。その後、金属配線(リード線)17を、塗った導電性CNTゴムペーストに差し込み、再度導電性CNTゴムペーストを1mm程度になるように垂らし、伸ばして塗った。これら塗った導電ペーストが固化し、伸縮性電極16を製造した。ここで用いた導電性CNTゴムペーストは非特許文献(Nature Materials,8(6),494−499(2009))に記載の方法を用い、ゴムに対するCNTの量を4.8%として製造した。
【0187】
そして、1成分形シリコーンシーラント SH780(東レ・ダウコーニング株式会社製)のPDMS接着剤を、封止材19として用い、伸縮性電極16と基材2との境界線で且つ配向CNT膜構造体3のない部分と、伸縮性電極16と金属配線17との境界線を、封止材19で覆う。このとき封止材19の厚みが1mm位になるようにし、伸縮性電極16で配向CNT膜構造体3が覆われていない部分を除き、密着層18全域に塗る。ここで用いた封止材19は、乾燥に1日を有するので、封止の後、1日おいて、封止完了とした。また、この剛直域に形成した二つの領域にあるガラス基板の間隔は、4mmとし、伸縮域を決定した。この封止材19には、伸縮装置80の伸縮時に、伸縮性電極16に発生する応力を軽減し、基材2からの伸縮性電極16の剥離を抑止する効果がある。
【0188】
このようにして得た、伸縮性を有する検知装置85を備える、伸縮装置80は、250%もの大きな伸縮を検出できるのみならず、500回以上、繰り返し使用が可能で、従来の伸縮装置を大きく凌駕する性能を示す。
【0189】
(実施例5:剛直な伸縮力供給用部を備える伸縮装置)
本発明による剛直な伸縮力供給用部を備える伸縮装置、及びその製造方法について、詳細に説明する。本発明による剛直な伸縮力供給用部を備える伸縮装置を、図30を参考に説明する。
【0190】
伸縮装置90は、伸縮可能な基材上2に配置され、所定の方向に配向した複数のCNTを備える配向CNT膜構造体3を備える。基材2の配向CNT膜構造体3を配置した裏側の2カ所に、硬い基板からなる伸縮力供給用部材94が、接着材95で、強固に基材2に接着されている。伸縮力供給用部材94は、容易に固定化し、引っ張ることができ、配向CNT膜構造体3に伸縮力を供給するために用いられる。
【0191】
伸縮装置90はそれ単体では機能せず、伸縮が発生する伸縮駆動装置に取り付けて用いる。伸縮力供給用部材94を用いると、伸縮装置90を伸縮駆動装置に設置し、伸縮力を伸縮装置90に供給できる。そのため、基材2上の二つ以上の離間した剛直域に、硬い伸縮力供給用部材94を設けて、伸縮駆動装置から伸縮力を供給した。
【0192】
このような伸縮力供給用部材94を用いると、所望の領域のみに伸縮する領域を調整することが可能となり、配向CNT膜構造体3に与える伸縮を制御する上で、格段の効果がある。具体的に、製造した伸縮装置90は、均一な厚さ1mmで、形状図17に示す、板状のPDMS伸縮基材の上に、厚さ600nm、サイズ1mm(長さ:配向CNTフィルムの高さ)×30mm(幅)の配向CNT膜構造体を配置してなる。
【0193】
配向CNT膜構造体3を構成するCNTは全面に渡って均一にヘルマン係数0.7の配向度で配向していた。配向CNT膜構造体3は密度:0.5g/cm、BET−比表面積:1150m/g、であった。配向CNT膜構造体3を構成するCNTは、典型値として、G/D比:2.5〜40、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、絶対純度98%であった。なおこれらの値は、製造に用いた配向CNTフィルムの特性と同一であるとした。
【0194】
このような配向CNT膜構造体3は、複数枚の、高さ(長さ)1mm、厚み6μm、幅18mmのサイズの配向CNTフィルムを用いて製造した。配向CNTフィルムは、1mm程度の重ね部分を設けて配置し、高密度化し、配向CNT膜構造体3を得た。
【0195】
配向CNTフィルムは、典型値として、単層CNT含有率99%(2層CNT、多層CNTに対する単層CNTの本数割合であり、合成した単層CNT配向集合体を透過型電子顕微鏡で観察し画像から求める)、密度:0.03g/cm、G/D比:2.5〜40、BET−比表面積:1150m/g、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、絶対純度98%、ヘルマンの配向係数0.7である。
【0196】
剛直な伸縮力供給用部94を備える、伸縮装置90を作成する方法について述べると、実施例1、もしくは実施例2の方法で、配向CNT膜構造体3、もしくはCNTマイクロ膜構造体50を備える、伸縮装置90を製造した後に、剛直な伸縮力供給用部94を製造した。しかし、基材2を製造した後に、剛直な伸縮力供給用部94を製造し、その後、実施例1、もしくは実施例2の方法で、配向CNT膜構造体3、もしくはCNTマイクロ膜構造体50を製造してもよい。
【0197】
基材2上の二つ以上の離間した剛直域12に、硬い伸縮力供給部材94を製造する方法を、図30を用いて詳述する。伸縮駆動装置からの伸縮力を、伸縮装置90に伝えるため、伸縮装置90を二つの離間した、伸縮を抑制した剛直域12と、それら剛直域12の間に挟まれ、伸縮力が供給される伸縮域13に分ける。伸縮装置の各剛直域12の配向CNT膜構造体配置面の裏面に、接着剤95を用いて、硬い基板を固定する。これにより、伸縮装置に伸縮を抑制した剛直域12を製造した。
【0198】
本実施例では、実施例1で製造した基材の図17に記されている形状を用い、基材2を覆っているアルミ箔の一方をとる。このアルミ箔を取った面の基材2の二つの剛直域12のそれぞれの面全体に、PDMS接着剤95(1成分形シリコーンシーラント SH780/東レ・ダウコーニング株式会社製)を0.1〜0.5mm位の厚みで塗布した。次に、長さ30〜40mm程度、幅26mm、1〜1.2mm程度の厚みを有するガラス基板96を、剛直域12上にある接着剤95全面に、ガラス基板96の辺と基材2の中心軸が平行になるように接着させ、二つの剛直域12を製造した。この接着剤95を用いた場合、接着には1日を有するので、接触させた後1日おいて、接着完了とした。また、この剛直域12に形成した二つの領域にあるガラス基板96の間隔は4mmとし、伸縮域13を決定した。これら、ガラス基板96と、PDMS接着剤95を含め、伸縮力供給用部材94とした。このようにして伸縮力供給用部材94を形成することにより、所望の位置に伸縮域を調整することが可能である。また、ガラス基板96の厚みが1mm以下の場合は、伸縮力を供給する際に、伸縮力供給用部材94に割れなどが生じ、伸縮力を供給不可能となる。
【0199】
このようにして得た、剛直な伸縮力供給用部94を備える伸縮装置90は、250%もの大きな伸長でも壊れず、500回以上、繰り返し使用が可能で、従来の伸縮装置を大きく凌駕する性能を示す
【0200】
(実施例6:伸縮性を有する伸縮力供給用部を備える伸縮装置)
本発明による伸縮力供給用部付きの伸縮装置、及びその製造方法について、別の実施例を詳細に説明する。本発明による伸縮力供給用部付きの伸縮装置を、図面31を参考に説明する。
【0201】
伸縮装置100は、伸縮可能な基材上2に配置され、所定の方向に配向した複数のCNTを備える配向CNT膜構造体3を備える。基材の配向CNT膜構造体3を配置した裏側に、伸縮可能なゴムシート等からなる伸縮力供給用部材104が、接着材で基材2に接着されている。
【0202】
伸縮装置100はそれ単体では機能せず、伸縮が発生する伸縮駆動装置に取り付けて用いる。伸縮可能な伸縮力供給用部材104を用いると、伸縮装置100を伸縮駆動装置に設置することが容易になり、伸縮駆動装置で発生した伸縮力を効率良く伸縮装置100に供給できる。
【0203】
このような伸縮力供給用部材104を用いると、後述のデータグローブ、絆創膏型デバイス等様々な伸縮装置を製造する上で格段の効果がある。具体的に、製造した伸縮装置は均一な厚さ1mmで、形状図21に示す板状のPDMS伸縮基材2の上に、厚さ600nm、サイズ1mm(長さ:配向CNTフィルムの高さ)×30mm(幅)の配向CNT膜構造体3を配置してなる。
【0204】
配向CNT膜構造体3を構成するCNTは全面に渡って均一にヘルマン係数0.7の配向度で配向していた。配向CNT膜構造体3は密度:0.5g/cm、BET−比表面積:1150m/gであった。配向CNT膜構造体を構成するCNTは、典型値として、G/D比:2.5〜40、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、絶対純度98%であった。なおこれらの値は、製造に用いた配向CNTフィルムの特性と同一であるとした。
【0205】
このような配向CNT膜構造体3は、複数枚の高さ(長さ)1mm、厚み6μm、幅18mmのサイズの配向CNTフィルムを用いて製造した。配向CNTフィルムは、1mm程度の重ね部分を設けて配置し、高密度化し、配向CNT膜構造体3を得た。
【0206】
配向CNTフィルムは、典型値として、単層CNT含有率99%(2層CNT、多層CNTに対する単層CNTの本数割合であり、合成した単層CNT配向集合体を透過型電子顕微鏡で観察し画像から求める)、密度:0.03g/cm、G/D比:2.5〜40、BET−比表面積:1150m/g、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、絶対純度98%、ヘルマンの配向係数0.7である。
【0207】
伸縮性を有する伸縮力供給用部104を備える伸縮装置100を作成する方法について述べると、実施例1もしくは実施例2の方法で、配向CNT膜構造体3もしくはCNTマイクロ膜構造体50を備える伸縮装置100を製造した後に、伸縮性を有する伸縮力供給用部104を製造した。しかし、基材2を製造した後に、伸縮性を有する伸縮力供給用部104を製造し、その後、実施例1もしくは実施例2の方法で、配向CNT膜構造体3もしくはCNTマイクロ膜構造体50を製造してもよい。
【0208】
伸縮性を有する伸縮力供給用部104を備える伸縮装置100を、図31を用いて詳述する。伸縮駆動装置の伸縮力を、伸縮可能な伸縮力供給用部材104を通して、伸縮装置100に供給する。そのため、伸縮可能な伸縮力供給用部材104を用意し、伸縮装置100の配向CNT膜構造体3の配置してある面の裏面の一部もしくは全面を、伸縮可能なゴムシート106に、伸縮性と接着性を併せ持つPDMS接着材105で接着する。これらゴムシート106と接着剤105を併せて、伸縮力供給用部材104として用いた。具体的には、図21に示す基材に、実施例1もしくは実施例2の方法で、配向CNT膜構造体3もしくはCNTマイクロ膜構造体50を備える伸縮装置100を製造した後に、配向CNT膜構造体3を配置した基材2の裏側の面全体に、PDMS接着剤105(1成分形シリコーンシーラント SH780/東レ・ダウコーニング株式会社製)を0.1〜0.5mm位の厚みで塗布する。そして、図21の基材より大きなゴムシート106を用意し、このゴムシート106に基材2が収まり、接着剤105の面をゴムシート106と接するようにして、基材2を置く。その後、十分接着するように基材2全体を指先で押さえ、1日おき、PDMS接着剤105を乾燥させる。接着剤105に伸縮性がない場合は、伸縮力供給用部材104が伸縮した際、接着面に割れが生じ、伸縮力供給用部材104と伸縮を伸縮装置100に均一に伝えることが困難となる。
【0209】
このようにして得た伸縮性を有する伸縮装置100は、250%もの大きな伸長でも壊れず、500回以上、繰り返し使用が可能で、従来の伸縮装置を大きく凌駕する性能を示す
【0210】
(実施例7:伸縮力供給用部材付きの伸縮装置)
本発明による伸縮力供給用部付きの伸縮装置、及びその製造方法について、グローブを伸縮力供給用部材として用いた、実施例6の別の形態について、詳細に説明する。本発明によるデータグローブ伸縮装置を、図32及び33を参考に説明する。
【0211】
伸縮力供給用部材114として、伸縮性を有するニトリルゴム製グローブ(クリーンノール・ニトリル手袋/アズワン株式会社製)を用いた。このグローブの手を入れた際に手の甲の側になる、親指以外の指の先端から数えて二つ目の関節と、親指の最も先端に近い関節の計9カ所に、実施例4の方法で製造した伸縮性を有する検知装置85を備える伸縮装置110を、実施例6の方法でグローブ上に配置した。このようにして、図34に示すように、人間の手の動きを正確、かつ精密に検出できる伸縮装置110を得ることができた。
【0212】
この伸縮力供給用部材114により、当該装置110を用いて、人間の手の動きや、人間の手の動きと同様の動きをするロボットの手の動きを観測する伸縮装置の製造を可能とした。
【0213】
(実施例8:伸縮力供給用部材付きの伸縮装置)
本発明による伸縮力供給用部付きの伸縮装置、及びその製造方法について、絆創膏を伸縮力供給用部材として用いた、実施例6の別の形態について詳細に説明する。本発明による絆創膏伸縮装置を、図35を参考に説明する。
【0214】
伸縮力供給用部材124として、粘着力と伸縮力を有する絆創膏(バンドエイド/ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社製)を用いて、絆創膏の粘着力を有しない面に、実施例4の方法で製造した伸縮性を有する検知装置85を、接着面が接し、且つ基材2が絆創膏内に収まるように実施例6の方法で接着した。用いた基材2の形状は図16に示す。
【0215】
既存の歪み測定素子は、被測定物にしっかり貼り付けなくてはならず、使い勝手が悪かった。また、人間の呼吸変動等の、体の大きな変動を観測するのには、あまり適していなかった。本実施例による伸縮装置120は、絆創膏が粘着性と伸縮性を有するために、任意の物体に密着性よく貼り付き、その伸縮を検出できる。
【0216】
例えば、人間の胸や、喉などの皮膚に貼り付けると、図36、従来の測定装置にない簡便さで、人間の呼吸の振動や、声の振動などを検出することが可能となる。
【0217】
(実施例9:伸縮力供給用部材付きの伸縮装置)
本発明による伸縮力供給用部付きの伸縮装置、及びその製造方法について、ストッキングを伸縮力供給用部材として用いた、実施例6の別の形態について詳細に説明する。本発明によるストッキングデバイスを、図37を参考に説明する。
【0218】
既存の歪み測定素子では、人間の関節などの大きな変異を繰り返し検出するのは困難であった。また、大きな変異を繰り返し検出可能な素子があっても、人間の関節のように、大きな変異をする部位で、当該駆動物に接着や、固定が出来ない物体に対しては、検出素子を検出したい場所に留めておくことも困難であった。これらの理由から、関節の動きを直接観測することは出来なかった。そのため、伸縮駆動装置もしくは、伸縮を発生する物体に、伸縮力供給用部材の密着性をもって密着し、伸縮装置の伸縮位置を留めておく必要があった。また、駆動物に密着した伸縮力供給用部材が、駆動物の駆動に対し、伸縮性を有する必要があった。そのため、これら密着性と伸縮性を併せ持つ伸縮力供給用部材134として、ストッキングを用いた。
【0219】
このストッキングに、伸縮装置130を、伸縮性と接着性を併せ持つPDMS接着剤を用いて設置した。これにより、人間の膝等の大きな関節域に於いて、伸縮装置130の位置を関節からずらすことなく設置可能とし、さらに膝関節の駆動という大きな駆動及び、その動きを直接観測することに成功した。従来技術においては、これら関節の動きを観測する場合は、モーションキャプチャーや、大がかりなリンク機構により観測を行っていた。また、これらの装置を用いても、伸縮表面の動きを観測することは難しかった。しかしながら当該伸縮装置により、知りたい部位の動きを、直接、しかも装着するだけで、測定可能となった。
【0220】
伸縮力供給用部材134として、伸縮性を有する市販のストッキングを用いた。ストッキングの膝の関節部に、実施例4の方法で製造した伸縮性を有する検知装置137を備える伸縮装置130を、実施例6の方法でストッキングに接着した。このストッキングデバイスを人間が着て動きくと、図37に示すように、人間の動きを正確、かつ精密に検出できた。
【0221】
具体的には、伸縮力供給用部材134として用いるストッキング(レイアリス社)の膝関節の膝のさら部分に、関節を跨ぐように、伸縮する軸上に2カ所テープをはり、印を付ける。このテープは、剥離の際、ストッキング134の繊維を破壊しない程度の粘着力を有する物を使う。次に、図23の基材を用いて、実施例1もしくは実施例2の方法で、伸縮装置130を製造する。
【0222】
PDMS接着剤(1成分形シリコーンシーラント SH780/東レ・ダウコーニング株式会社製)を0.1〜0.5mm位の厚みで基材2の裏側に塗布する。接着剤を塗布後、用意したストッキング134に付けたテープを剥がし、これらテープが示していた伸縮する軸と、基材2の中心軸を併せるように基材2を置く。また、基材2の中心軸の中心が、ストッキング134に印として用いた二つのテープの中間に来るようにする。その後、基材2とストッキング134が、十分接着するように基材2全体を指先で押さえ、1日おき、PDMS接着剤を乾燥させ、伸縮装置130を製造する。
【0223】
伸縮力供給用部材134として、ストッキングだけでなく、下半身に密着可能なタイツや、上半身に密着可能なタイツ、体に密着するボディスーツ、水着を用いても、上記課題を解決し、同様の効果を得られる。
【0224】
(実施例10:伸縮駆動装置:ねじれデバイス)
以下に具体的な実施例を挙げて、本発明によるねじれを検出することができる、伸縮駆動装置、及びその製造方法についてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0225】
本発明による伸縮駆動装置を、図38を参考に説明する。伸縮駆動装置140は、伸縮装置141および、駆動装置142を備える。伸縮装置141は、伸縮可能な棒状の伸縮基材143上と、それに巻き付けて配置された、所定の方向に配向した複数のCNTを備える配向CNT膜構造体3を備える。また、伸縮装置141は、棒状の基材143の両端に、配向CNT膜構造体3に伸縮力を供給するための部材である伸縮力供給用部材144を備える。また、伸縮装置141は、棒状の基材143の両端、配向CNT膜構造体3と電気的に接続されていて、配向CNT膜構造体3の抵抗変化を検出することで、伸縮を検出する検知装置147を備える。
【0226】
駆動装置142は、棒状の基材143の両端に設置された、伸縮力供給用部材144を、片方の端にある伸縮力供給用部材144を固定化する部品145と、他方の端にある伸縮力供給用部材144を、棒状の基材143に対して垂直な面内で、ある所望の角度回転させる回転部品146を備える。回転部品146を回転させることで、他方の端にある伸縮力供給用部材144が所望の角度回転し、所望のねじれを基材143と配向CNT膜構造体3に供給することができる。ねじれを受けた基材143と、配向CNT膜構造体3は伸縮力を供給され、伸縮する。
【0227】
伸縮駆動装置140で用いられた配向CNT膜構造体3を構成するCNTは、全面に渡って均一にヘルマン係数0.7の配向度で配向していた。配向CNT膜構造体3は密度:0.5g/cm、BET−比表面積:1150m/g、であった。配向CNT膜構造体3を構成するCNTは、典型値として、G/D比:2.5〜40、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、絶対純度98%であった。なおこれらの値は、製造に用いた配向CNTフィルムの特性と同一であるとした。
【0228】
このような配向CNT膜構造体3は、複数枚の高さ(長さ)1mm、厚み6μm、幅18mmのサイズの配向CNTフィルムを用いて製造した。配向CNTフィルムは、1mm程度の重ね部分を設けて配置し、高密度化し、配向CNT膜構造体3を得た。
【0229】
伸縮駆動装置140で用いられた配向CNTフィルムは、典型値として、単層CNT含有率99%(2層CNT、多層CNTに対する単層CNTの本数割合であり、合成した単層CNT配向集合体を透過型電子顕微鏡で観察し画像から求める)、密度:0.03g/cm、G/D比:2.5〜40、BET−比表面積:1150m/g、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、絶対純度98%、ヘルマンの配向係数0.7である。本発明の伸縮駆動装置製造方法の詳細を、図39を参照しながら、以下に具体的に説明する。
【0230】
平面形状の転写用基板148上に実施例1の方法で配向CNT膜構造体3、もしくはCNTマイクロ膜構造体50を配置した。得られた、配向CNT膜構造体3、もしくはCNTマイクロ膜構造体50を、予め、公知の手法を用いて製造した棒状の伸縮可能な基材143に転写した。次いで、基材143を通して、配向CNT膜構造体3に伸縮を与えるための伸縮力供給部材を製造し(伸縮力供給部材製造工程)、次いで、伸縮を検出するための検知装置147を製造した(検知装置製造工程)。伸縮装置141を駆動する駆動装置142を製造した(伸縮駆動装置製造工程)。
【0231】
本発明の伸縮駆動装置140を得るための製造プロセスや手順は上記の例に限定されるものではなく、適宜必要に応じて一部工程を省略したり、順序を変更したりしても良い。
【0232】
例えば、検知装置製造工程、伸縮力供給用部材製造工程、駆動装置製造工程は、適宜適切な順序、もしくは同時に行えばよく、さらには、基材製造工程の後、または前に行い、その後、配向CNTフィルム配置工程を行ってもよい。
【0233】
次に、ねじれを検出できる伸縮駆動装置の具体的な製造方法を説明する。基材製造工程、配向CNT膜構造体製造工程、伸縮力供給用部材製造工程、検知装置製造工程から成る。
【0234】
(基材製造工程)
本発明における基材143とは、少なくとも一方向にねじれ性を有し、かつ配向CNT膜構造体3が配置できる物であればよい。材質は、ねじれ可能であればよい。それらを利用し、好ましくは、均一なねじれを実現する形状及び材質にする。そのため、均一なねじれを実現する形状として、均一な直径を有する棒状に成形し、大きな伸びを実現する材質として、ポリジメチルシロキサン(PDMS)であるシルポット184(東レ・ダウコーニング株式会社製)を採用した。さらに、伸縮による配向CNT膜構造体3の抵抗変化を検出する場合には、基材143は、それ自体が電気伝導性を有しないことが好ましく、その点においても、PDMSは好適である。これらの形状及び、材質を有する基材製造工程は、実施例1に示す脱泡工程を経て、以下に示す棒成形工程からなる。
【0235】
(棒状成形工程)
調製した前駆体に、基材成形加工用のテフロン(登録商標)から成る、内径3mmのチューブの一端を射す。チューブの他端を真空ポンプに繋ぎ、真空に引き、前駆体をチューブ内に引き込む。十分に引き込んだら、真空ポンプの繋ぎを外し、M3のネジを用いて栓をする。その後、前駆体に挿入した方のチューブ端を前駆体から取り出し、同様にM3のネジを用いて栓をする。両端を密栓後、前駆体が固化するまで1日置く。前駆体が固化した後、栓を外し、基材を傷つけないように一端からチューブを切開して、基材の一部を露出させる。基材の一部を露出させた後、露出部をピンセット等で把持し、基材をチューブから引き抜き、取り出す。取り出した基材は、5〜8cm程度の長さに、はさみを用いて切断し、棒状の基材2とした。この製造工程で、基材成形加工用のチューブにシリコンゴムを用いた場合、基材の成分であるPDMSと反応し、棒状の基材をチューブから取り出すことが困難になる。また、この基材に回転対称性を与える軸を、この基材の中心軸とする。
【0236】
(配向CNT膜構造体製造工程)
配向CNT膜構造体製造工程は、実施例1の配向CNTフィルム製造工程で製造した配向CNTフィルムを、以下に示す配向CNTフィルム配置工程、配向CNTフィルム高密度化工程を、図39に示す転写用基板148に行い、実施例1と同様の配向CNTフィルムの重ね配置工程を行った。転写用基板148とは、配向CNT膜構造体3を、反り返りが無く作製可能で且つ、作製した配向CNT膜構造体3を、基材2に転写可能な基板である。これらの工程により、実施例1と同様の配向CNT膜構造体3の特徴を得た。さらに、配向CNT膜構造体転写工程により、棒状の基材143上に配向CNT膜構造体3を製造した。
【0237】
(配向CNTフィルム配置工程)
配向CNTフィルム配置工程とは、成長用基材の上に合成された配向CNTフィルムを、成長基材から取り外し、別の転写用基板148上に、配向CNTフィルムを貼り付けて配置する工程である。転写用基板148とは、この基材143上に配向CNT膜構造体3を、反り返りが無く作製可能で且つ、作製した配向CNT膜構造体3を基材143に転写可能な材質の基板ならば何でも良い。本実施例では、転写用基板148として、縦20cm、横20cm、厚み1mmのテフロン(登録商標)製の板を用いた。
【0238】
取り外し工程において、密集した配向CNTフィルム群からCNTを取り出すことが困難な問題があった。また、取り出した配向CNTフィルムを1枚ごとに分けることが困難な問題があった。さらに、下記高密度化工程において、配向CNTフィルムを所望の位置に、所望の方向で合わせるのが難しかった。これらの問題を解決するため、予め上記の方法で製造した配向CNTフィルムを、合成した基材ごと、実体顕微鏡の視野に入るようにセットし、顕微鏡で観察しながら、配向CNTフィルムを合成用基材から取り外した。合成用基材から配向CNTフィルムの取り外しは、顕微鏡で観察しながら、ピンセットで直接取り外した。
【0239】
次に取り出した配向CNTフィルムを、配向CNT膜構造体3として伸縮装置141に利用するため、取り出した配向CNTフィルムの配向方向を制御して、基材143に配置し、且つ液体に晒す必要があった。そのため、取り出し工程で取り出した配向CNTフィルムを、液体が予め滴下された伸縮可能な基材143の上に移動させて、ピンセットから放し、その後、メンブレンのついたピンセットで配向CNTフィルムを液体中の任意の位置に合わせるという方法を用いた(図24)。この際に、後述する高密度化工程において、溶液に晒した配向CNTフィルムもしくはCNTを扱うピンセットやメンブレンに泡が生じると、配向CNT膜構造体になる際にシワができることがあり、問題であった。そのため、高密度化に用いる基板上に載せた溶液に、配向CNTフィルムや、配向CNTフィルムを扱うピンセット、配向CNTフィルムを扱っているメンブレンを十分に浸し、実体顕微鏡にて観察し、泡が生じないようにした。配向CNTフィルムを晒す液体として、イソプロピルアルコールを用いた。この方法により、取り出し工程で取り出した配向CNTフィルムを制御して、任意の位置に配置すること、配向方向を合わせることが可能となった。
【0240】
また、大きな領域での伸縮を検知するため、上記配向CNTフィルム製造工程で、予め大きな配向CNTフィルム製造しても良いし、下記に示す、配向CNTフィルムの重ね配置工程を用いても良い。本実施例では、実施例1で製造した配向CNTフィルムを用い、実施例1に示す重ね配置工程で、CNTの並び方向を転写用基板148の対角線に沿わせ、10cm程度の大きさとなるように、5〜10回配向CNTフィルムの重ね配置を行い、配向CNT膜構造体を作製した。
【0241】
(配向CNTフィルム高密度化工程)
前述した配向CNTフィルム配置工程で、配向CNT膜構造体3を配置するための転写用基板148上で液体に晒して、液体が付着した配向CNTフィルムを乾燥させることで、配向CNTフィルムの高密度化工程を行う。前述した配向CNTフィルム配置工程は、この高密度化工程で、溶液に晒されている配向CNTフィルムの周囲から溶液が乾燥する前に行い、任意の位置に配向方向をそろえる。配向CNTフィルムの周囲から溶液が乾燥していると、配向CNTフィルムの一部が高密度化され、配向CNT膜構造体となって転写用基板に密着していることがあり、その場合は、配向CNTフィルムを任意の位置に配置することや、配向方向をそろえることは困難となる。
【0242】
溶液が室温の空気中で自然蒸発し、配向CNTフィルムが移動不可能になったら、配向CNTフィルム表面を観察し、CNTの表面が見えるまで溶液を自然乾燥させ、配向CNTフィルムを高密度化させる。本実施例では、溶液として、配向CNTフィルム内のCNT間の浸入を容易とし、高密度化を行う蒸発も容易とする、イソプロピルアルコールを用いた。また、この配向CNTフィルムが高密度化する際には、一部の配向CNTフィルムが基材表面で反り返り高密度化することがあった。その際には、溶液をメタノールなどの他の溶液に変えたり、配向CNTフィルムの乾燥時に照明を当て、配向CNTフィルムの乾燥時にCNTの表面が見える際に、照明を弱くしたりして、溶液の乾燥、蒸発を制御して、この基材表面での反り返りを抑止した。本実施例では、溶液として、配向CNTフィルム内のCNT間の浸入を容易とし、高密度化を行う蒸発も容易とする、イソプロピルアルコールもしくメタノールを用いた。
【0243】
このように、配向CNTフィルムの配置、高密度化は、同時行っても良いし、予め配置した配向CNTフィルムに、後から溶液を滴下し、配向CNTフィルム内への溶液の浸入と蒸発に伴う高密度化のみを行っても良い。
【0244】
(配向CNT膜構造体転写工程)
転写用基板上に配向CNTフィルム配置工程及び、配向CNTフィルム高密度化工程で製造した配向CNT膜構造体の端を、棒状の基材の端に接触させる。そこから、図39に示す様に、棒状の基材143を転写用基板148の辺と平行にゆっくり転がし、配向CNT膜構造体3を巻き付ける事を目視で確認しながら、棒状の基材143に配向CNT膜構造体3を巻き付けて転写する。棒状の基材143の初めに配向CNT膜構造体3を接触させた端ともう一方の端まで、配向CNT膜構造体3を巻き付けて到達するまで、棒状の基材143を回転させ、配向CNT膜構造体3を転写する。この様にして伸縮装置141を製造する。
【0245】
(駆動装置製造工程)
駆動装置142は、伸縮装置141に均一なねじれを与えるため、伸縮装置141に重力の影響を与えないように、基材143の中心軸を鉛直方向に沿うように、図40のように駆動装置142を製造する。また、下記に示す伸縮装置141の基材143の中心軸の両端を把持するため、把持機構であるスウェージロック149を、図40左図で示すように、駆動装置142の上側と下側で固定できるようにする。ねじれを供給するため、駆動装置142の下側に、棒状の基材143に対して垂直な面内で、ある所望の角度回転させる、ねじれを与える回転機構を持たせる。光学的回転ステージ等、公知の物を用いればよい。スウェージロックは導電性のある金属であるステンレス製を用いる。
【0246】
回転部品146を回転させることで、他方の端にある伸縮力供給用部材144が所望の角度回転し、所望のねじれを基材143と配向CNT膜構造体3に供給することができる。ねじれを受けた、基材143と配向CNT膜構造体3は伸縮力を供給され、伸縮する。
【0247】
(伸縮力供給用部材製造工程)
棒状表面への伸縮力である、ねじれを伸縮装置に供給するため、伸縮装置141を駆動装置142に取り付けられる形態にする必要があった。そのため、伸縮力供給用部材144を通して、駆動装置142に伸縮装置141を設置し、ねじれを供給可能にする必要があった。駆動装置142から伸縮装置141にねじれを供給可能とするためには、基材143上の二つ以上の離間した剛直域に、硬い伸縮力供給用部材144を設けて、駆動装置142からねじれを供給する方法がある。そのため、その製造法について図41及び42を用い以下に詳述する。
【0248】
伸縮装置141の二つの端面から10mm程度の領域を剛直域とし、金属パイプやフレキシブルチューブを固定するパイプ把持具149で把持する。この把持具149で把持した後、伸縮性と粘着性を有するPDMS接着剤150で、把持具149に棒状の基材143を固定する。具体的には、パイプ把持具149として、雌のスウェージロック(日本スウェージロック株式会社製)を用い、雌のスウェージロック内にPDMS接着剤150(1成分形シリコーンシーラント SH780/東レ・ダウコーニング株式会社製)をチューブから2mm程度だし、穴に挿入する。次に、このPDMS接着剤150の入ったスウェージロック149の穴に、上記で作製した伸縮装置141を差し込む。接着剤150と共にスウェージロック149に挿入した、伸縮装置141を、スウェージロック149で通常パイプを固定するように閉め1日おき、PDMS接着剤150を乾燥させる。この際、棒状の基材143の中心軸が、鉛直方向と沿うようにして乾燥させる。
【0249】
乾燥した後、このスウェージロック149を駆動装置142の上部にセットして、伸縮装置141を鉛直方向につるす。次に、駆動装置142の下側にスウェージロック149を固定し、このスウェージロック149に、上記同様、PDMS接着剤150を穴に挿入する。駆動装置142を操作し、伸縮装置141の下側を駆動装置下側に用意したスウェージロック149の穴に挿入させる。挿入後、スウェージロック149で通常パイプを固定するように閉め1日おき、PDMS接着剤150を乾燥させる。乾燥後、伸縮駆動装置140となる。
【0250】
ここで、把持具のみを用い、接着剤を用いない場合は、ねじれにより、伸縮装置が把持具、すなわち駆動装置から外れてしまう。さらに、伸縮性のみのPDMS(シルポット184/東レ・ダウコーニング株式会社製)を、上記PDMS接着剤の代わりに用いた場合は、やはり伸縮装置が把持具、すなわち駆動装置から外れてしまう。
【0251】
(検知装置製造工程)
本実施例では、検知装置として、配向CNT膜構造体に二つの電極をつけ、ねじれにより、CNT架橋構造を備える亀裂帯の発生により構造が変化した、配向CNT膜構造体の抵抗変化を検出することで、伸縮を検出する装置を示す。検知装置を、伸縮装置のねじれ可能な基材上に配置する場合は、基材がねじれるため、検知装置が変形して検出値が変化したり、検知装置そのものが破壊されたり、検知装置が基材から剥離するという問題があった。これらの問題を解決するために、検知装置は、伸縮装置の配向CNT膜構造体と安定的に接触されている必要があった。配向CNT膜構造体と安定的に接触されているとは、伸縮装置の伸縮時に、伸縮装置の抵抗変化に比して、検知装置の抵抗変化が十分に小さい状態を指し、伸縮装置と検知装置の接合部での解離を生じない状態を指す。このような課題を解決するため、伸縮可能な検知装置を製造する工程を実施したので、以下に詳述する。
【0252】
検知装置が変形して検出値が変化したり、検知装置そのものが破壊されたり、検知装置が基材から剥離するという問題を、伸縮装置に、伸縮可能な検知装置を製造することで解決した。伸縮装置に、伸縮可能な検知装置を製造する工程を、図41及び42を用いて詳述する。
【0253】
伸縮可能な検知装置147は、伸縮性電極を用いて構成する。伸縮性電極16は、伸縮性、ねじれ性と導電性を有し、さらに、伸縮やねじれに対する伸縮性電極自体の抵抗変化と、被設置物との接触抵抗変化が、配向CNT膜構造体3の抵抗変化に比して、小さい物を指す。このような伸縮性電極16を用いた伸縮可能な検知装置147は、伸縮装置141がねじれる際に、検知装置自体もねじれるため、ねじれの影響を受けず、上記問題が解決できる。
【0254】
具体的には、上記の伸縮駆動装置140の図42に、伸縮性電極16となる、導電性CNTゴムペースト14を1mm位の厚みで、伸縮装置に配置された配向CNT膜構造体3から、駆動装置142のスウェージロック149の露出部(PDMS接着剤150で覆われていない部分)まで、スパチュラで伸ばして塗り、図40左図のまる枠のようにする。導電性CNTゴムペーストは非特許文献(Nature Materials,8(6),494−499(2009))に記載の方法を用い、ゴムに対するCNTの量を4.8%として製造した。導電性CNTゴムのペースト乾燥後、固定された上下のスウェージロック149に、30cm程度長さに余裕のある電線(リード線)17を固定した。
【0255】
これにより、駆動装置142のねじれ駆動に際し、電線17を駆動装置142に巻き付けるようにして、電線17に架かる応力を回避した。最後に、スウェージロック149に固定した二つの電線17を、ねじれによる配向CNT膜構造体3の抵抗変化を検出する検知装置147に接続して、検知装置147を製造した。導電性CNTゴムペーストの代わりに銀ペーストのような固化性導電性ペースト14を用いると、ねじれにより電極が破壊されてしまう。そのため、伸縮性、ねじれ性と、導電性及び、ねじれに対する抵抗変化の小さい導電性CNTゴムペーストを検知装置として用いた。
【0256】
このようにして製造した、ねじれを検出する、伸縮駆動装置140を所望の角度ねじった時の、抵抗値変化率(dR/R)を図40右図に示す。抵抗は、ねじれに対して単調増加し、360度のねじれが検出できた。この結果は、伸縮駆動装置140を用いて、大きなねじれを定量的に検出できることを意味する。
【0257】
(比較例1:配向していない配向CNT膜構造体を利用した例)
CNTを公知の化学気相合成法により製造した。これは、基材上に触媒を製造し、その触媒に複数のCNTを化学気相成長(CVD)させるものである。CNTは、特願2009−001586、特願2006−527894に記載の方法などを用い、基材上に成膜した触媒から、一定の方向に配向した複数のCNTを成長させることで製造すればよい。
【0258】
このようにして製造したCNTを、エタノール中で分散させ、その分散液からCNTを濾紙を用いて濾過した。分散液から濾過されたものを濾紙から剥がし、配向していない配向CNT膜構造体を作製した。
【0259】
配向していない配向CNT膜構造体を用いた場合は、伸縮に対し、配向している場合と同様にCNT間の裂け目が生じると考えられる。しかしながら、これらの裂け目は、伸縮の増大に伴い、CNT架橋体を含んだ亀裂帯に成らず、架橋したCNTがない断裂体になる。たとえ伸縮量の小さい際に、CNT架橋体を含んだ亀裂帯を構成していても、伸縮の増大に伴い、CNT架橋体は断裂し、亀裂帯ではなく、断裂体になる。そのため、抵抗値が伸縮量によって、不規則に増大している。
【符号の説明】
【0260】
1 伸縮装置
2 基材
3 配向CNT膜構造体
4 伸縮力供給用部材
5 検知装置
6 CNTの配向方向
7 亀裂帯
8 CNT架橋体
9 駆動装置
10 伸縮駆動装置
11 硬い基板
12 剛直域
13 伸縮域
14 導電性ペースト
15 導電性フィルム
16 伸縮性電極
17 配線
18 密着層
19 封止材
20 配向CNT膜構造体
21 基材
22 電子回路
23 中間層
24 間隙
50 CNTマイクロ膜構造体
51 配向CNT膜構造体
52 レジスト膜
53 レジストマスク
60 実施例2の伸縮装置
70 実施例3の伸縮装置
75 検知装置
80 実施例4の伸縮装置
85 検知装置
90 実施例5の伸縮装置
94 伸縮力供給用部材
95 接着剤
96 ガラス基板
100 実施例6の伸縮装置
104 伸縮力供給用部材
105 接着剤
106 ゴムシート
110 実施例7の伸縮装置
114 伸縮力供給用部材
120 実施例8の伸縮装置
124 伸縮力供給用部材
130 実施例9の伸縮装置
134 伸縮力供給用部材
137 検知装置
140 実施例10の伸縮駆動装置
141 伸縮装置
142 駆動装置
143 基材
144 伸縮力供給用部材
145 固定部品
146 回転部品
147 検知装置
148 転写用基材
149 把持機構
150 接着剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮可能な基材上に配置され、所定の方向に配向した複数のCNTを備える配向CNT膜構造体を備え、かつ該配向CNT膜構造体は、伸びにより裂け目を生じて亀裂帯を形成してなる伸縮装置。
【請求項2】
前記亀裂帯は、少なくとも1本のCNTの架橋構造を備えることを特徴とする請求項1記載の伸縮装置。
【請求項3】
前記架橋構造を構成している少なくとも1本のCNTは、伸縮方向に対して傾斜して配設されていることを特徴とする請求項2記載の伸縮装置。
【請求項4】
前記亀裂帯は、所定の伸びに達した後、網目状に配置されることを特徴とする請求項1記載の伸縮装置。
【請求項5】
前記配向CNT膜構造体は、高密度化処理されていることを特徴とする請求項1記載の伸縮装置。
【請求項6】
前記複数のCNTは、前記伸縮可能な基材上に反りのない状態で貼り付けて配置されていることを特徴とする請求項1記載の伸縮装置。
【請求項7】
前記配向CNT膜構造体は、ヘルマンの配向係数:0以上、好ましくは0.3以上、1以下であることを特徴とする請求項1記載の伸縮装置。
【請求項8】
前記配向CNT膜構造体は、重量密度0.1〜1.5g/cmを有し、及び又は厚さ10nm〜100μmを有することを特徴とする請求項1記載の伸縮装置。
【請求項9】
伸縮可能な基材上に配置され、所定の方向に配向した複数のCNTを備える配向CNT膜構造体と、該配向CNT膜構造体は、伸びにより裂け目を生じて亀裂帯を形成してなり、
前記配向CNT膜構造体に伸縮力を供給するための伸縮力供給用部材と、を備える伸縮装置。
【請求項10】
前記伸縮力供給用部材は、伸縮駆動装置に取り付けるための取り付け具であることを特徴とする請求項9記載の伸縮装置。
【請求項11】
伸縮を検知する検知装置を備えることを特徴とする請求項9記載の伸縮装置。
【請求項12】
請求項1記載の伸縮装置と、該伸縮装置を駆動する駆動装置とを備える伸縮駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2011−47702(P2011−47702A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194537(P2009−194537)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人科学技術振興機構委託研究費「自己組織プロセスにより創製された機能性・複合CNT素子による柔らかいナノMEMSデバイス」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】