カーボンナノチューブ強化ナノコンポジット
カーボンナノチューブ(CNT)は長過ぎて、プリプレグの作製プロセス中に炭素繊維の間に入り込むことができないので、炭素繊維によって濾過されないように短尺化させる。これは、純エポキシと比較して機械的特性(曲げ強度及び曲げ弾性率)の大幅な改善をもたらす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第60/819319号及び第60/810394号の優先権を主張する米国特許出願第11/757272号の一部継続出願であり、これらは全て参照として本願に組み込まれる。本願は、米国仮特許出願第60/788234号及び第60/810394号の優先権を主張する米国特許出願第11/693454号の一部継続出願であり、これらは全て参照として本願に組み込まれる。本願は、米国仮特許出願第60/789300号及び第60/810394号の優先権を主張する米国特許出願第11/695877号の一部継続出願であり、これらは全て参照として本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
1991年の初観測以来、カーボンナノチューブ(CNT,carbon nanotube)は、重要な研究対象となっている(非特許文献1)。多くの研究者がこの新形状の炭素の顕著な物理的及び機械的特性について報告している。CNTの直径は典型的に、単層CNT(SWNT,single wall CNT)に対して0.5〜1.5nmであり、二層CNT(DWNT,double wall CNT)に対して1〜3nmであり、多層CNT(MWNT,multi wall CNT)に対して5nmから100nmである。その固有の電子的特性及びダイヤモンドよりも高い熱伝導性に始まり、その剛性、強度及び弾性が現存する如何なる物質よりも優れているという機械的性質に至り、CNTは、全く新しい材料システムの開発に対する非常に大きな機会を提供する。特に、CNTの並外れた機械的性質(E>1.0TPa、また、50GPaの引張強度)が低密度(1〜2.0g/cm3)と組み合わさって、CNT強化コンポジット材料の開発を魅力的なものにしている(非特許文献2)。CNTは地球上の既知の物質の中で最も強固である。MWNTと比較すると、SWNT及びDWNTは、それらのより大きな表面積及びより高いアスペクトひによって、コンポジット用の強化材料としてより有力である。表1に、SWNT、DWNT及びMWNTの表面積及びアスペクト比を挙げる。
【0003】
【表1】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S.Iijima、“Helical microtubules of graphitic carbon”、Nature、1991年、第354巻、p.56
【非特許文献2】Eric W.Wong、Paul E.Sheehan、Charles M.Lieber、“Nanobeam Mechanics: Elasticity, Strength, and Toughness of Nanorods and Nanotubes”、Science、1997年、第277巻、p.1971
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
問題は、CNTは、成長させた時には通常かなり長くて(数マイクロメートルから100μm以上)、このことが、CNTを繊維強化プラスチック(FRP,fiber reinforced plastic)のマトリクス内に入り込ませることを難しくしている。何故ならば、最近接の繊維間の距離が非常に小さいからである。例えば、一方向炭素繊維又は織物強化エポキシコンポジットに対して、炭素繊維の含有率は60体積パーセント程度であり、最近接の炭素繊維間のギャップは1マイクロメートル程度となる(炭素繊維の直径が7〜8μmで、密度が1.75〜1.80g/cm3程度であり、エポキシマトリクスの密度が1.2g/cm3であるとした)。ガラス繊維、及びコンポジットを作製するのに使用される他の種類の繊維についても同じことがあてはまる。CNTは、ポリマー樹脂を強化して、強度及び弾性等の機械的特性を改善することができるが、FRP作製中に繊維によって濾過されてしまうので、CNTはFRPを強化できない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施形態によるナノコンポジットを製造するための方法を示す。
【図2】MWNTのSEMデジタル画像を示す。
【図3A】MWNT強化エポキシの破面のSEMデジタル画像を示す。
【図3B】DWNT強化エポキシの破面のSEMデジタル画像を示す。
【図3C】SWNT強化エポキシの破面のSEMデジタル画像を示す。
【図4A】DWNT強化CFRPの破面のSEMデジタル画像を示し、DWNTが炭素繊維の間に入り込んでいない様子を示す。
【図4B】DWNT強化CFRPの破面のSEMデジタル画像を示し、DWNTがプリプレグの末端層に濾過されている様子を示す。
【図5A】短尺化MWNTのSEMデジタル画像を示す。
【図5B】短尺化DWNTのSEMデジタル画像を示す。
【図5C】短尺化SWNTのSEMデジタル画像を示す。
【図6A】MWNT強化CFRPの破面のSEMデジタル画像を示す。
【図6B】DWNT強化CFRPの破面のSEMデジタル画像を示す。
【図6C】SWNT強化CFRPの破面のSEMデジタル画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
2μmの短さ又はそれよりも短いCNTを繊維間に入り込ませることによって、FRPの機械的特性を顕著に改善することができる。
【0008】
本発明の一実施形態では、本発明をより良く例示するために本実施形態の詳細な例を与える。
【0009】
〈エポキシ、SWNT、DWNT、MWNT、及び硬化剤〉
エポキシ樹脂(ビスフェノールA)を日本のアリサワ(Arisawa)社から入手した。エポキシナノコンポジットを硬化させるために用いられる硬化剤(ジシアンジアミド)を同社から入手した。SWNT、DWNT及びMWNTを、ベルギーのNanocyl社から入手した。CNTは、>90%のCNT含有率へと精製し得る。しかしながら、元の状態のCNT、又はカルボキシル官能基やアミノ官能基等の官能基によって官能化されたものも使用可能である。CNTの長さは、5〜20μm程度であり得る。図2は、MWNTのSEMのデジタル画像を示す。エポキシ以外の他の熱硬化性樹脂(ポリイミド、フェノール樹脂、シアン酸エステル、ビスマレイミド等)や熱可塑性樹脂(ナイロン等)も使用可能である。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態によるエポキシ/CNTナノコンポジットを製造するプロセスフローの概略図を示す。全ての原料を真空オーブン内で70℃で16時間乾燥させて、湿気を取り除き得る。CNTの添加量は各樹脂に対して1.0重量%であり得る。CNTをアセトン内に入れて101、ステップ102においてマイクロ流体マシーン(micro−fluidic machine)(Microfluidics社製、型番Y110)によって分散させる。マイクロ流体マシーンは、正確に定められたミクロンサイズのチャネル内に超高速で衝突する高圧流を用いる。そのせん断及び衝撃の組み合わさった力が製品に作用して、一様な分散を生じさせる。CNT/アセトンはゲル103とされ、アセトン溶媒中に良く分散したCNTがもたらされる。しかしながら、超音波処理プロセスや高せん断混合プロセス等の他の方法も使用可能である。溶液中にCNTを分散させるために、界面活性剤を使用することもできる。その後、ステップ104でCNT/アセトンゲルにエポキシを加えて、エポキシ/CNT/アセトン溶液105を生成する。これに、バス内で70℃で1時間にわたる超音波処理プロセス(ステップ106)が続いて、エポキシ/CNT/アセトン懸濁液107を生成する。ステップ108において、70℃で三十分間にわたる1400回転/分の速度での撹拌器による混合プロセスを用いて、CNTをエポキシ中に更に分散させて、エポキシ/CNT/アセトンゲル109を生成し得る。その後、ステップ110で硬化剤を、4.5wt%の比率でエポキシ/CNT/アセトンゲル109に加えて、これに続いて、70℃で1時間撹拌する。ステップ112において、真空オーブン内で70℃で48時間にわたって、結果物のゲル111のガス抜きを行い得る。その後、材料113を160℃で2時間にわたって硬化させ得る。材料113をテストするために、その材料をテフロン(登録商標)のモールド内に注いで、試片の機械的性質(曲げ強度及び曲げ弾性率)を、研磨プロセスの後に特性評価し得る115。
【0011】
70℃で48時間にわたってガス抜きされた後の上記樹脂(エポキシ/CNT/硬化剤)を用いて、ホットメルト(熱溶融)プロセスでFRPを作製することもできる。炭素繊維(東レ社製、型番T700‐12k)を、プリプレグの作製用に使用することができる。プリプレグ(prepreg)とは、“プリ含浸(preimpregnated)”コンポジット繊維に対する用語として当該分野では知られている。プリプレグは、織物状になり得て、又は一方向性である。プリプレグは、或る量のマトリクス材料を含み、これらを互いに結合させ、また、製造中の他の構成要素に結合させるために使用される。プレプレグは、熱によって通常活性化されるので、冷所に保管され得る。従って、プリプレグのコンポジット構造は、硬化のためのオーブン又はオートクレーブを必要とすることが多い。
【0012】
CNT強化エポキシ樹脂は、まずリリースペーパー上にコーティングされる。そして、一方向炭素繊維をCNT強化エポキシ樹脂薄膜に含浸させることによって、プリプレグが得られる。炭素繊維の体積は60%に制御された。プリプレグは180g/m2の面積重量を有していた。
【0013】
〈ナノコンポジットの機械的特性〉
表2は、CNT強化エポキシの機械的特性(曲げ強度及び曲げ弾性率)を、一方向炭素繊維の強化によるものと共に示す。樹脂の場合、純エポキシと比較して機械的特性の大幅な改善が見て取れる(それぞれ、30%を超える曲げ強度の向上、少なくとも10%の曲げ弾性率の向上)。しかしながら、炭素繊維強化ポリマー(CFRP,carbon fiber reinforced polymer)の場合、CNT強化CFRPに対しては、純エポキシCFRPと比較して、どちらの特性も改善されなかった。
【0014】
【表2】
【0015】
次に、走査型電子顕微鏡(SEM,scanning electron microscopy)を使用して、樹脂サンプル及びCFRPサンプルの両方のCNTの分散を調べることができる。樹脂の場合、全てのCNT強化エポキシサンプルが非常に優れたCNTの分散を示した(図3A〜図3Cを参照)。しかしながら、CNTは、一方向炭素繊維によってプリプレグの末端層に濾過されていた(DWNT強化エポキシCFRPに対して図4A〜図4Bを参照)。これは、CNTが長過ぎて、炭素繊維の間に入り込ませることができないからである。そして、これは、最近接の炭素繊維のギャップがわずか1μm程度だからである。これが、樹脂中のCNTの強化がCFRPに転用されない理由である。
【0016】
〈CNTの短尺化及びエポキシ樹脂及びCFRPの強化〉
CNTが長過ぎて、プリプレグの作製プロセス中に炭素繊維の間に入り込ませることができないので、CNTが炭素繊維によって濾過されないように短尺化する必要がある。MWNT、DWNT、SWNTを濃酸混合物(HNO3:H2SO4=3:1)と混合して、120℃で4時間にわたって撹拌し得る。CNTを、濾紙(酸を濾過するための2マイクロメートルの開口を備えたポリカーボネート濾紙)を用いて濾過する。そして、CNTを脱イオン水で4〜5回洗浄して、50℃以上で12時間にわたって真空中で乾燥させ得る。図5A〜図5Cはそれぞれ、2μm以下の長さに短尺化されたMWNT、DWNT、SWNTのSEM像を示す。
【0017】
表3は、CNT強化エポキシ樹脂の機械的特性(曲げ強度及び曲げ弾性率)を、一方向炭素繊維の強化によるものと共に示す。樹脂の場合、純エポキシと比較して機械的特性の大幅な改善が見て取れ(それぞれ、30%を超える曲げ強度の向上、少なくとも10%の曲げ弾性率の向上)、これは、上述の長いCNT強化エポキシ樹脂の場合と同様である。CFRPの場合、両特性が、純エポキシCFRPと比較して改善した。例えば、SWNT強化CFRPの曲げ強度は、純エポキシCFRPと比較して17%向上した。
【0018】
【表3】
【0019】
走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、CFRPサンプル中のCNTの分散を調べることができる。図6A〜図6Cに示されるように、短尺化MWNT、DWNT、SWNTは、炭素繊維の間に入り込んでよく分散している。
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第60/819319号及び第60/810394号の優先権を主張する米国特許出願第11/757272号の一部継続出願であり、これらは全て参照として本願に組み込まれる。本願は、米国仮特許出願第60/788234号及び第60/810394号の優先権を主張する米国特許出願第11/693454号の一部継続出願であり、これらは全て参照として本願に組み込まれる。本願は、米国仮特許出願第60/789300号及び第60/810394号の優先権を主張する米国特許出願第11/695877号の一部継続出願であり、これらは全て参照として本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
1991年の初観測以来、カーボンナノチューブ(CNT,carbon nanotube)は、重要な研究対象となっている(非特許文献1)。多くの研究者がこの新形状の炭素の顕著な物理的及び機械的特性について報告している。CNTの直径は典型的に、単層CNT(SWNT,single wall CNT)に対して0.5〜1.5nmであり、二層CNT(DWNT,double wall CNT)に対して1〜3nmであり、多層CNT(MWNT,multi wall CNT)に対して5nmから100nmである。その固有の電子的特性及びダイヤモンドよりも高い熱伝導性に始まり、その剛性、強度及び弾性が現存する如何なる物質よりも優れているという機械的性質に至り、CNTは、全く新しい材料システムの開発に対する非常に大きな機会を提供する。特に、CNTの並外れた機械的性質(E>1.0TPa、また、50GPaの引張強度)が低密度(1〜2.0g/cm3)と組み合わさって、CNT強化コンポジット材料の開発を魅力的なものにしている(非特許文献2)。CNTは地球上の既知の物質の中で最も強固である。MWNTと比較すると、SWNT及びDWNTは、それらのより大きな表面積及びより高いアスペクトひによって、コンポジット用の強化材料としてより有力である。表1に、SWNT、DWNT及びMWNTの表面積及びアスペクト比を挙げる。
【0003】
【表1】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S.Iijima、“Helical microtubules of graphitic carbon”、Nature、1991年、第354巻、p.56
【非特許文献2】Eric W.Wong、Paul E.Sheehan、Charles M.Lieber、“Nanobeam Mechanics: Elasticity, Strength, and Toughness of Nanorods and Nanotubes”、Science、1997年、第277巻、p.1971
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
問題は、CNTは、成長させた時には通常かなり長くて(数マイクロメートルから100μm以上)、このことが、CNTを繊維強化プラスチック(FRP,fiber reinforced plastic)のマトリクス内に入り込ませることを難しくしている。何故ならば、最近接の繊維間の距離が非常に小さいからである。例えば、一方向炭素繊維又は織物強化エポキシコンポジットに対して、炭素繊維の含有率は60体積パーセント程度であり、最近接の炭素繊維間のギャップは1マイクロメートル程度となる(炭素繊維の直径が7〜8μmで、密度が1.75〜1.80g/cm3程度であり、エポキシマトリクスの密度が1.2g/cm3であるとした)。ガラス繊維、及びコンポジットを作製するのに使用される他の種類の繊維についても同じことがあてはまる。CNTは、ポリマー樹脂を強化して、強度及び弾性等の機械的特性を改善することができるが、FRP作製中に繊維によって濾過されてしまうので、CNTはFRPを強化できない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施形態によるナノコンポジットを製造するための方法を示す。
【図2】MWNTのSEMデジタル画像を示す。
【図3A】MWNT強化エポキシの破面のSEMデジタル画像を示す。
【図3B】DWNT強化エポキシの破面のSEMデジタル画像を示す。
【図3C】SWNT強化エポキシの破面のSEMデジタル画像を示す。
【図4A】DWNT強化CFRPの破面のSEMデジタル画像を示し、DWNTが炭素繊維の間に入り込んでいない様子を示す。
【図4B】DWNT強化CFRPの破面のSEMデジタル画像を示し、DWNTがプリプレグの末端層に濾過されている様子を示す。
【図5A】短尺化MWNTのSEMデジタル画像を示す。
【図5B】短尺化DWNTのSEMデジタル画像を示す。
【図5C】短尺化SWNTのSEMデジタル画像を示す。
【図6A】MWNT強化CFRPの破面のSEMデジタル画像を示す。
【図6B】DWNT強化CFRPの破面のSEMデジタル画像を示す。
【図6C】SWNT強化CFRPの破面のSEMデジタル画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
2μmの短さ又はそれよりも短いCNTを繊維間に入り込ませることによって、FRPの機械的特性を顕著に改善することができる。
【0008】
本発明の一実施形態では、本発明をより良く例示するために本実施形態の詳細な例を与える。
【0009】
〈エポキシ、SWNT、DWNT、MWNT、及び硬化剤〉
エポキシ樹脂(ビスフェノールA)を日本のアリサワ(Arisawa)社から入手した。エポキシナノコンポジットを硬化させるために用いられる硬化剤(ジシアンジアミド)を同社から入手した。SWNT、DWNT及びMWNTを、ベルギーのNanocyl社から入手した。CNTは、>90%のCNT含有率へと精製し得る。しかしながら、元の状態のCNT、又はカルボキシル官能基やアミノ官能基等の官能基によって官能化されたものも使用可能である。CNTの長さは、5〜20μm程度であり得る。図2は、MWNTのSEMのデジタル画像を示す。エポキシ以外の他の熱硬化性樹脂(ポリイミド、フェノール樹脂、シアン酸エステル、ビスマレイミド等)や熱可塑性樹脂(ナイロン等)も使用可能である。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態によるエポキシ/CNTナノコンポジットを製造するプロセスフローの概略図を示す。全ての原料を真空オーブン内で70℃で16時間乾燥させて、湿気を取り除き得る。CNTの添加量は各樹脂に対して1.0重量%であり得る。CNTをアセトン内に入れて101、ステップ102においてマイクロ流体マシーン(micro−fluidic machine)(Microfluidics社製、型番Y110)によって分散させる。マイクロ流体マシーンは、正確に定められたミクロンサイズのチャネル内に超高速で衝突する高圧流を用いる。そのせん断及び衝撃の組み合わさった力が製品に作用して、一様な分散を生じさせる。CNT/アセトンはゲル103とされ、アセトン溶媒中に良く分散したCNTがもたらされる。しかしながら、超音波処理プロセスや高せん断混合プロセス等の他の方法も使用可能である。溶液中にCNTを分散させるために、界面活性剤を使用することもできる。その後、ステップ104でCNT/アセトンゲルにエポキシを加えて、エポキシ/CNT/アセトン溶液105を生成する。これに、バス内で70℃で1時間にわたる超音波処理プロセス(ステップ106)が続いて、エポキシ/CNT/アセトン懸濁液107を生成する。ステップ108において、70℃で三十分間にわたる1400回転/分の速度での撹拌器による混合プロセスを用いて、CNTをエポキシ中に更に分散させて、エポキシ/CNT/アセトンゲル109を生成し得る。その後、ステップ110で硬化剤を、4.5wt%の比率でエポキシ/CNT/アセトンゲル109に加えて、これに続いて、70℃で1時間撹拌する。ステップ112において、真空オーブン内で70℃で48時間にわたって、結果物のゲル111のガス抜きを行い得る。その後、材料113を160℃で2時間にわたって硬化させ得る。材料113をテストするために、その材料をテフロン(登録商標)のモールド内に注いで、試片の機械的性質(曲げ強度及び曲げ弾性率)を、研磨プロセスの後に特性評価し得る115。
【0011】
70℃で48時間にわたってガス抜きされた後の上記樹脂(エポキシ/CNT/硬化剤)を用いて、ホットメルト(熱溶融)プロセスでFRPを作製することもできる。炭素繊維(東レ社製、型番T700‐12k)を、プリプレグの作製用に使用することができる。プリプレグ(prepreg)とは、“プリ含浸(preimpregnated)”コンポジット繊維に対する用語として当該分野では知られている。プリプレグは、織物状になり得て、又は一方向性である。プリプレグは、或る量のマトリクス材料を含み、これらを互いに結合させ、また、製造中の他の構成要素に結合させるために使用される。プレプレグは、熱によって通常活性化されるので、冷所に保管され得る。従って、プリプレグのコンポジット構造は、硬化のためのオーブン又はオートクレーブを必要とすることが多い。
【0012】
CNT強化エポキシ樹脂は、まずリリースペーパー上にコーティングされる。そして、一方向炭素繊維をCNT強化エポキシ樹脂薄膜に含浸させることによって、プリプレグが得られる。炭素繊維の体積は60%に制御された。プリプレグは180g/m2の面積重量を有していた。
【0013】
〈ナノコンポジットの機械的特性〉
表2は、CNT強化エポキシの機械的特性(曲げ強度及び曲げ弾性率)を、一方向炭素繊維の強化によるものと共に示す。樹脂の場合、純エポキシと比較して機械的特性の大幅な改善が見て取れる(それぞれ、30%を超える曲げ強度の向上、少なくとも10%の曲げ弾性率の向上)。しかしながら、炭素繊維強化ポリマー(CFRP,carbon fiber reinforced polymer)の場合、CNT強化CFRPに対しては、純エポキシCFRPと比較して、どちらの特性も改善されなかった。
【0014】
【表2】
【0015】
次に、走査型電子顕微鏡(SEM,scanning electron microscopy)を使用して、樹脂サンプル及びCFRPサンプルの両方のCNTの分散を調べることができる。樹脂の場合、全てのCNT強化エポキシサンプルが非常に優れたCNTの分散を示した(図3A〜図3Cを参照)。しかしながら、CNTは、一方向炭素繊維によってプリプレグの末端層に濾過されていた(DWNT強化エポキシCFRPに対して図4A〜図4Bを参照)。これは、CNTが長過ぎて、炭素繊維の間に入り込ませることができないからである。そして、これは、最近接の炭素繊維のギャップがわずか1μm程度だからである。これが、樹脂中のCNTの強化がCFRPに転用されない理由である。
【0016】
〈CNTの短尺化及びエポキシ樹脂及びCFRPの強化〉
CNTが長過ぎて、プリプレグの作製プロセス中に炭素繊維の間に入り込ませることができないので、CNTが炭素繊維によって濾過されないように短尺化する必要がある。MWNT、DWNT、SWNTを濃酸混合物(HNO3:H2SO4=3:1)と混合して、120℃で4時間にわたって撹拌し得る。CNTを、濾紙(酸を濾過するための2マイクロメートルの開口を備えたポリカーボネート濾紙)を用いて濾過する。そして、CNTを脱イオン水で4〜5回洗浄して、50℃以上で12時間にわたって真空中で乾燥させ得る。図5A〜図5Cはそれぞれ、2μm以下の長さに短尺化されたMWNT、DWNT、SWNTのSEM像を示す。
【0017】
表3は、CNT強化エポキシ樹脂の機械的特性(曲げ強度及び曲げ弾性率)を、一方向炭素繊維の強化によるものと共に示す。樹脂の場合、純エポキシと比較して機械的特性の大幅な改善が見て取れ(それぞれ、30%を超える曲げ強度の向上、少なくとも10%の曲げ弾性率の向上)、これは、上述の長いCNT強化エポキシ樹脂の場合と同様である。CFRPの場合、両特性が、純エポキシCFRPと比較して改善した。例えば、SWNT強化CFRPの曲げ強度は、純エポキシCFRPと比較して17%向上した。
【0018】
【表3】
【0019】
走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、CFRPサンプル中のCNTの分散を調べることができる。図6A〜図6Cに示されるように、短尺化MWNT、DWNT、SWNTは、炭素繊維の間に入り込んでよく分散している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブと、ポリマーと、炭素繊維とを備えたコンポジット材料であって、前記カーボンナノチューブの平均長さが2μm以下である、コンポジット材料。
【請求項2】
前記ポリマーが熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂である、請求項1に記載のコンポジット材料。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂が、ポリイミド、フェノール樹脂、シアン酸エステル及びビスマレイミドからなる群から選択されている、請求項2に記載のコンポジット材料。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブが官能化されていない、請求項1に記載のコンポジット材料。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブが、カルボキシル官能基又はアミノ官能基によって官能化されている、請求項1に記載のコンポジット材料。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブがアミノ官能基によって官能化されている、請求項1に記載のコンポジット材料。
【請求項7】
前記炭素繊維が一方向炭素繊維である、請求項1に記載のコンポジット材料。
【請求項1】
カーボンナノチューブと、ポリマーと、炭素繊維とを備えたコンポジット材料であって、前記カーボンナノチューブの平均長さが2μm以下である、コンポジット材料。
【請求項2】
前記ポリマーが熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂である、請求項1に記載のコンポジット材料。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂が、ポリイミド、フェノール樹脂、シアン酸エステル及びビスマレイミドからなる群から選択されている、請求項2に記載のコンポジット材料。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブが官能化されていない、請求項1に記載のコンポジット材料。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブが、カルボキシル官能基又はアミノ官能基によって官能化されている、請求項1に記載のコンポジット材料。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブがアミノ官能基によって官能化されている、請求項1に記載のコンポジット材料。
【請求項7】
前記炭素繊維が一方向炭素繊維である、請求項1に記載のコンポジット材料。
【図1】
【図2】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図2】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【公表番号】特表2011−529113(P2011−529113A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520015(P2011−520015)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/078306
【国際公開番号】WO2010/011234
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(505131522)アプライド・ナノテック・ホールディングス・インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/078306
【国際公開番号】WO2010/011234
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(505131522)アプライド・ナノテック・ホールディングス・インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】
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